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特開2022-138394非水電解質二次電池の製造方法、および負極活物質
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  • 特開-非水電解質二次電池の製造方法、および負極活物質 図1
  • 特開-非水電解質二次電池の製造方法、および負極活物質 図2
  • 特開-非水電解質二次電池の製造方法、および負極活物質 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138394
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池の製造方法、および負極活物質
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/587 20100101AFI20220915BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20220915BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20220915BHJP
   H01M 4/1393 20100101ALI20220915BHJP
   H01M 10/0525 20100101ALN20220915BHJP
【FI】
H01M4/587
H01M10/0566
H01M4/36 D
H01M4/1393
H01M10/0525
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021038258
(22)【出願日】2021-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松尾 雄太
(72)【発明者】
【氏名】石川 香織
(72)【発明者】
【氏名】林 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】寺内 真澄
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ05
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL07
5H029AL11
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029AM16
5H029HJ01
5H029HJ05
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA17
5H050BA18
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB08
5H050CB11
5H050HA01
5H050HA05
(57)【要約】
【課題】サイクル耐久性を改善する。
【解決手段】第1黒鉛粒子と第2黒鉛粒子とが混合されることにより負極活物質が調製される。負極活物質を含む負極が製造される。負極と正極と電解液とを含む非水電解質二次電池が製造される。第1黒鉛粒子は個数基準の第1粒度分布を有する。第2黒鉛粒子は個数基準の第2粒度分布を有する。「D250/D150≦0.50」の関係が満たされている。D150は第1粒度分布におけるD50を示す。D250は第2粒度分布におけるD50を示す。「R2≦R1」の関係が満たされている。R1は第1黒鉛粒子の円形度の算術平均を示す。R2は第2黒鉛粒子の円形度の算術平均を示す。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1黒鉛粒子と第2黒鉛粒子とを混合することにより負極活物質を調製すること、
前記負極活物質を含む負極を製造すること、
および、
前記負極と正極と電解液とを含む非水電解質二次電池を製造すること、
を含み、
前記第1黒鉛粒子は、個数基準の第1粒度分布を有し、
前記第2黒鉛粒子は、個数基準の第2粒度分布を有し、
式(I):
250/D150≦0.50 …(I)
の関係が満たされており、
前記式(I)中、
150は前記第1粒度分布におけるD50を示し、
250は前記第2粒度分布におけるD50を示し、かつ、
式(II):
2≦R1 …(II)
の関係が満たされており、
前記式(II)中、
1は前記第1黒鉛粒子の円形度の算術平均を示し、
2は前記第2黒鉛粒子の円形度の算術平均を示す、
非水電解質二次電池の製造方法。
【請求項2】
式(III)および式(IV):
0.94≦R1 …(III)
0.90≦R2<R1 …(IV)
の関係が満たされている、
請求項1に記載の非水電解質二次電池の製造方法。
【請求項3】
式(V):
0.05≦M2/M1≦0.10 …(V)
の関係が満たされており、
前記式(V)中、
1は、前記負極活物質に含まれる前記第1黒鉛粒子の質量を示し、
2は、前記負極活物質に含まれる前記第2黒鉛粒子の質量を示す、
請求項1または請求項2に記載の非水電解質二次電池の製造方法。
【請求項4】
式(VI):
0.70≦(D190-D110)/D150≦0.80 …(VI)
の関係が満たされており、
前記式(VI)中、
110は前記第1粒度分布におけるD10を示し、
190は前記第1粒度分布におけるD90を示し、かつ、
式(VII):
0.97≦(D290-D210)/D250 …(VII)
の関係が満たされており、
前記式(VII)中、
210は前記第2粒度分布におけるD10を示し、
290は前記第2粒度分布におけるD90を示す、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池の製造方法。
【請求項5】
前記第2黒鉛粒子の円形度の標準偏差は0.08以上である、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池の製造方法。
【請求項6】
前記負極活物質は、個数基準の第3粒度分布を有し、
式(VIII):
0.87≦(D390-D310)/D350≦0.99 …(VIII)
の関係が満たされており、
前記式(VIII)中、
310は前記第3粒度分布におけるD10を示し、
350は前記第3粒度分布におけるD50を示し、
390は前記第3粒度分布におけるD90を示す、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池の製造方法。
【請求項7】
非水電解質二次電池用の負極活物質であって、
第1黒鉛粒子と第2黒鉛粒子とを含み、
前記第1黒鉛粒子は、個数基準の第1粒度分布を有し、
前記第2黒鉛粒子は、個数基準の第2粒度分布を有し、
式(I):
250/D150≦0.50 …(I)
の関係が満たされており、
前記式(I)中、
150は前記第1粒度分布におけるD50を示し、
250は前記第2粒度分布におけるD50を示し、かつ、
式(II):
2≦R1 …(II)
の関係が満たされており、
前記式(II)中、
1は前記第1黒鉛粒子の円形度の算術平均を示し、
2は前記第2黒鉛粒子の円形度の算術平均を示す、
負極活物質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、非水電解質二次電池の製造方法、および負極活物質に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2013-197082号公報(特許文献1)は、球形化黒鉛を含む電池用炭素材を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-197082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非水電解質二次電池(以下「電池」と略記され得る。)の負極活物質として、球形化黒鉛粒子が開発されている。球形化黒鉛粒子は、文字通り、球形に近似した外形を有する。球形化の指標として、例えば粒子画像の円形度等が使用されている。
【0005】
球形化黒鉛粒子は充填性が良好である。球形化黒鉛粒子の採用により、例えばエネルギー密度等の向上が期待される。さらに球形化黒鉛粒子は圧潰し難い傾向もある。一般に電池の負極には圧縮加工が施される。圧縮時に粒子が圧潰し難いことにより、負極内に空隙が形成されやすい傾向がある。空隙には電解液が浸透し得る。空隙の形成により、例えば、入出力特性の向上が期待される。また粒子が圧潰すると、黒鉛の活性面(エッジ面)が露出し、保存特性が低下することもある。粒子が圧潰し難いことにより、保存特性の向上も期待される。
【0006】
ただし、球形化黒鉛粒子はサイクル耐久性に改善の余地がある。すなわち、球形化黒鉛粒子を含む負極においては、粒子同士の接触が点状になりやすい傾向がある。充放電に伴って各粒子は膨張と収縮とを繰り返す。粒子の体積変化により、粒子同士の接点が喪失する可能性がある。粒子同士の接点が喪失することにより、導電パスが途切れると考えられる。その結果、容量維持率が低下すると考えられる。
【0007】
例えば、導電材(カーボンブラック等)の使用により、導電パスを形成することも考えられる。しかし導電材は電池容量に実質的に寄与しない。負極に導電材が添加されることにより、電池のエネルギー密度が低下する可能性がある。
【0008】
本技術の目的は、サイクル耐久性を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、本技術の構成および作用効果が説明される。ただし本明細書の作用メカニズムは推定を含む。作用メカニズムは本技術の範囲を限定しない。
【0010】
〔1〕非水電解質二次電池の製造方法は、下記(A)、(B)および(C)を含む。
(A)第1黒鉛粒子と第2黒鉛粒子とを混合することにより負極活物質を調製する。
(B)負極活物質を含む負極を製造する。
(C)負極と正極と電解液とを含む非水電解質二次電池を製造する。
第1黒鉛粒子は個数基準の第1粒度分布を有する。第2黒鉛粒子は個数基準の第2粒度分布を有する。
下記式(I):
250/D150≦0.50 …(I)
の関係が満たされている。
上記式(I)中、D150は第1粒度分布におけるD50を示す。D250は第2粒度分布におけるD50を示す。
なおかつ、下記式(II):
2≦R1 …(II)
の関係が満たされている。
上記式(II)中、R1は第1黒鉛粒子の円形度の算術平均を示す。R2は第2黒鉛粒子の円形度の算術平均を示す。
【0011】
本技術の負極活物質は第1黒鉛粒子と第2黒鉛粒子とを含む。第2黒鉛粒子は、いわば小粒子である。上記式(I)に示されるように、第2黒鉛粒子は、第1黒鉛粒子に比して1/2以下のD50を有する。第2黒鉛粒子が第1黒鉛粒子同士の隙間に入り込むことにより、導電パスが形成されることが期待される。一般的な導電材(カーボンブラック等)と異なり、第2黒鉛粒子は電池容量に寄与し得る。
【0012】
さらに、上記式(II)に示されるように、第1黒鉛粒子と第2黒鉛粒子との間で、円形度の算術平均(以下「平均円形度」とも記される。)が特定の関係を満たす。すなわち、小粒子の平均円形度(R2)が、大粒子の平均円形度(R1)以下である。充放電により小粒子も膨張と収縮とを繰り返す。小粒子の体積変化により、小粒子と大粒子との接点が喪失する可能性もある。本技術の新知見によると、小粒子の平均円形度(R2)が、大粒子の平均円形度(R1)以下であることにより、小粒子と大粒子との接点が喪失し難くなることが期待される。
以上より、本技術の電池においては、サイクル耐久性の改善が期待される。
【0013】
〔2〕下記式(III)および式(IV):
0.94≦R1 …(III)
0.90≦R2<R1 …(IV)
の関係が満たされていてもよい。
【0014】
上記式(III)および式(IV)の関係がさらに満たされることにより、サイクル耐久性の改善が期待される。
【0015】
〔3〕下記式(V):
0.05≦M2/M1≦0.10 …(V)
の関係が満たされていてもよい。
上記式(V)中、M1は、負極活物質に含まれる第1黒鉛粒子の質量を示す。M2は、負極活物質に含まれる第2黒鉛粒子の質量を示す。
【0016】
上記式(V)の関係がさらに満たされることにより、サイクル耐久性の改善が期待される。
【0017】
〔4〕下記式(VI):
0.70≦(D190-D110)/D150≦0.80 …(VI)
の関係が満たされていてもよい。
上記式(VI)中、D110は第1粒度分布におけるD10を示す。D190は第1粒度分布におけるD90を示す。
なおかつ、下記式(VII):
0.97≦(D290-D210)/D250 …(VII)
の関係が満たされていてもよい。
上記式(VII)中、D210は第2粒度分布におけるD10を示す。D290は第2粒度分布におけるD90を示す。
【0018】
「(D90-D10)/D50」は、例えば「スパン値」等とも称される。スパン値は、粒度分布の広がりの指標である。スパン値が小さい程、粒度分布がシャープであると考えられる。上記式(VI)および式(VII)の関係がさらに満たされることにより、サイクル耐久性の改善が期待される。
【0019】
〔5〕第2黒鉛粒子の円形度の標準偏差は0.08以上であってもよい。
【0020】
第2黒鉛粒子の円形度の標準偏差が0.08以上であることにより、サイクル耐久性の改善が期待される。小粒子の円形度に特定のバラツキがあることにより、小粒子と大粒子との接点が喪失し難くなるためと考えられる。
【0021】
〔6〕負極活物質は、個数基準の第3粒度分布を有する。
下記式(VIII):
0.87≦(D390-D310)/D350≦0.99 …(VIII)
の関係が満たされていてもよい。
上記式(VIII)中、D310は第3粒度分布におけるD10を示す。D350は第3粒度分布におけるD50を示す。D390は第3粒度分布におけるD90を示す。
【0022】
負極活物質は、第1黒鉛粒子と第2黒鉛粒子との混合物である。上記式(VIII)の関係が満たされるように、第1黒鉛粒子と第2黒鉛粒子とが混合されることにより、サイクル耐久性の改善が期待される。
【0023】
〔7〕負極活物質は非水電解質二次電池に使用される。負極活物質は第1黒鉛粒子と第2黒鉛粒子とを含む。第1黒鉛粒子は個数基準の第1粒度分布を有する。第2黒鉛粒子は個数基準の第2粒度分布を有する。
下記式(I):
250/D150≦0.50 …(I)
の関係が満たされている。
上記式(I)中、D150は第1粒度分布におけるD50を示す。D250は第2粒度分布におけるD50を示す。
なおかつ下記式(II):
2≦R1 …(II)
の関係が満たされている。
上記式(II)中、R1は第1黒鉛粒子の円形度の算術平均を示す。R2は第2黒鉛粒子の円形度の算術平均を示す。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本実施形態における非水電解質二次電池の製造方法の概略フローチャートである。
図2図2は、本実施形態における電極体の構成の一例を示す概略図である。
図3図3は、本実施形態における非水電解質二次電池の構成の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本技術の実施形態(本明細書においては「本実施形態」とも記される。)が説明される。ただし以下の説明は、本技術の範囲を限定しない。例えば本明細書中の作用効果についての言及は、当該作用効果を全て奏する範囲内に、本技術の範囲を限定しない。
【0026】
<用語の定義等>
本明細書において、「備える、含む(comprise, include)」、「有する(have)」およびこれらの変形〔例えば「から構成される(be composed of)」、「包含する(encompass,involve)」、「含有する(contain)」、「担持する(carry, support)」、「保持する(hold)」等〕の記載は、オープンエンド形式である。オープンエンド形式は必須要素に加えて、追加要素をさらに含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。「からなる(consist of)」との記載はクローズド形式である。「実質的に…からなる(consist essentially of)」との記載はセミクローズド形式である。セミクローズド形式は、本技術の目的を阻害しない範囲で、必須要素に加えて追加要素をさらに含んでいてもよい。例えば、本技術の属する分野において通常想定される要素(例えば不可避不純物等)が、追加要素として含まれていてもよい。
【0027】
本明細書において、「…してもよい(may)、…し得る(can)」との表現は、義務的な意味「…しなければならない(must)の意味」ではなく、許容的な意味「…する可能性を有するの意味」で使用されている。
【0028】
本明細書において、単数形(a, an, the)は、特に断りの無い限り、複数形も含む。例えば「粒子」は「1つの粒子」のみならず、「粒子の集合体(粉体、粉末、粒子群)」も含み得る。
【0029】
本明細書において、方法に含まれる2個以上のステップ、動作および操作等は、特に断りのない限り、その記載された順序に限定されない。例えば、2個以上のステップが同時進行することもあり得る。
【0030】
本明細書において、例えば「1%から10%」および「1~10%」等の数値範囲は、特に断りのない限り、上限値および下限値を含む。すなわち「1%から10%」および「1~10%」は、いずれも「1%以上10%以下」の数値範囲を示す。また、数値範囲内から任意に選択された数値が、新たな上限値および下限値とされてもよい。例えば、数値範囲内の数値と、本明細書中の別の部分、表中、図中等に記載された数値とが任意に組み合わされることにより、新たな数値範囲が設定されてもよい。
【0031】
本明細書において、全ての数値は用語「約」によって修飾されている。用語「約」は、例えば±5%、±3%、±1%等を意味し得る。全ての数値は、本技術の利用形態によって変化し得る近似値である。全ての数値は有効数字で表示される。全ての測定値等は有効数字の桁数を考慮して、四捨五入により処理され得る。全ての数値は、例えば検出限界等に伴う誤差を含み得る。
【0032】
本明細書において、例えば「LiCoO2」等の化学量論的組成式によって化合物が表現されている場合、該化学量論的組成式は代表例に過ぎない。組成比は非化学量論的であってもよい。例えば、コバルト酸リチウムが「LiCoO2」と表現されている時、特に断りのない限り、コバルト酸リチウムは「Li/Co/O=1/1/2」の組成比に限定されず、任意の組成比でLi、CoおよびOを含み得る。また微量元素によるドープ、置換も許容され得る。
【0033】
本明細書における幾何学的な用語(例えば「垂直」等)は、厳密な意味に解されるべきではない。例えば「垂直」は、厳密な意味での「垂直」から多少ずれていてもよい。本明細書における幾何学的な用語は、例えば、設計上、作業上、製造上等の公差、誤差等を含み得る。各図中の寸法関係は、実際の寸法関係と一致しない場合がある。本技術の理解を助けるために、各図中の寸法関係(長さ、幅、厚さ等)が変更されている場合がある。さらに一部の構成が省略されている場合もある。
【0034】
本明細書においては、「第1黒鉛粒子および第2黒鉛粒子の少なくとも一方」が「黒鉛粒子」と総称され得る。「第1黒鉛粒子のD50に対する、第2黒鉛粒子のD50の比」が「粒子径比」とも記される。「円形度の算術平均」が「平均円形度」とも記される。「第1黒鉛粒子の質量に対する、第2黒鉛粒子の質量の比」が「配合比」とも記される。
【0035】
本明細書における「粒度分布」に関して、「D10」、「D50」および「D90」は次のように定義される。D10は、個数基準の粒度分布において、粒子径が小さい方からの累積頻度が10%になる粒子径を示す。D50は、個数基準の粒度分布において、粒子径が小さい方からの累積頻度が50%になる粒子径を示す。D90は、個数基準の粒度分布において、粒子径が小さい方からの累積頻度が90%になる粒子径を示す。
【0036】
本明細書においては、体積基準の粒度分布が個数基準の粒度分布に変換される。体積基準の粒度分布は、レーザ回折式粒度分布測定装置により測定され得る。測定手順は次のとおりであり得る。測定対象(黒鉛粒子)が準備される。測定対象と分散剤と分散媒とが混合されることにより、測定試料(粒子分散液)が調製される。分散剤は、製品名「トリトンX-100」であり得る。分散媒はイオン交換水であり得る。測定試料がレーザ回折式粒度分布測定装置に導入されることにより、体積基準の粒度分布が測定される。
【0037】
本明細書における「円形度」は、下記式(IX):
R==L0/L …(IX)
により求まる。
【0038】
上記式(IX)中、「R」は円形度を示す。「L0」は、粒子画像と同じ面積を有する円の円周の長さを示す。「L」は、粒子画像の周囲長を示す。真円の円形度は1である。
【0039】
粒子画像はフロー式粒子画像分析装置により取得され得る。例えば、シスメックス社製の湿式フロー式粒子径・形状分析装置「型式名 FPIA-3000」等が使用されてもよい。測定手順は次のとおりであり得る。測定対象(黒鉛粒子)が準備される。測定対象と分散剤と分散媒とが混合されることにより、測定試料(粒子分散液)が調製される。測定試料がフロー式粒子画像分析装置のフローセルに供給される。フローセルを通過する測定試料が、ストロボおよび光学顕微鏡により撮像される。画像に含まれる個々の粒子画像が解析されることにより、個々の粒子の円形度が求められる。検出範囲は0.25~100μmである。100個以上の粒子の円形度の算術平均が、「円形度の算術平均(平均円形度)」とみなされる。さらに100個以上の粒子の円形度から、標準偏差が求められる。
【0040】
<非水電解質二次電池の製造方法>
図1は、本実施形態における非水電解質二次電池の製造方法の概略フローチャートである。本実施形態における非水電解質二次電池の製造方法(以下「本製造方法」とも記される。)は、「(A)負極活物質の調製」、「(B)負極の製造」および「(C)電池の製造」を含む。
【0041】
《(A)負極活物質の調製》
本製造方法は、第1黒鉛粒子と第2黒鉛粒子とを混合することにより、負極活物質を調製することを含む。本製造方法においては、任意の粉体混合機が使用され得る。本製造方法においては、乾式混合が実施されてもよいし、湿式混合が実施されてもよい。
【0042】
(配合比)
第2黒鉛粒子は、所定の配合比で第1黒鉛粒子と混合される。本実施形態における「配合比」は、第1黒鉛粒子の質量(M1)に対する、第2黒鉛粒子の質量(M2)の比(M2/M1)である。配合比は、例えば0.025~0.125であってもよい。配合比は、例えば0.05~0.10であってもよい。配合比が0.05~0.10であることにより、サイクル耐久性の改善が期待される。
【0043】
(黒鉛粒子)
本実施形態における黒鉛粒子は黒鉛を含む。例えば黒鉛粒子は、実質的に黒鉛からなっていてもよい。黒鉛は人造黒鉛および天然黒鉛等を含んでいてもよい。黒鉛粒子は黒鉛を含む限り、追加の成分を含んでいてもよい。例えば、黒鉛粒子は表面皮膜を含んでいてもよい。表面皮膜は、例えば非晶質炭素等を含んでいてもよい。
【0044】
(第1黒鉛粒子)
第1黒鉛粒子は、いわば大粒子である。第1黒鉛粒子は、第2黒鉛粒子に比して相対的に大きい粒子径を有する。第1黒鉛粒子はエネルギー密度、入出力特性、保存特性等の向上に寄与し得る。第1黒鉛粒子は、個数基準の第1粒度分布を有する。D150は、第1粒度分布におけるD50である。D150は、例えば15~20μmであってもよい。
【0045】
(第2黒鉛粒子)
第2黒鉛粒子は、いわば小粒子である。第2黒鉛粒子は、第1黒鉛粒子に比して相対的に小さい粒子径を有する。第2黒鉛粒子は、大粒子同士の間で導電パスを形成し得る。第2黒鉛粒子はサイクル耐久性の改善に寄与し得る。第2黒鉛粒子は、個数基準の第2粒度分布を有する。D250は、第2粒度分布におけるD50である。D250は、例えば5~9μmであってもよい。
【0046】
(粒子径比)
本実施形態における「粒子径比(D250/D150)」は、第2黒鉛粒子のD250が第1黒鉛粒子のD150で除されることにより求まる。粒子径比は0.50以下である。粒子径比が0.50以下であることにより、サイクル耐久性の向上が期待される。小粒子が大粒子同士の隙間に入り込みやすいためと考えられる。粒子径比は、例えば0.45以下であってもよいし、0.43以下であってもよいし、0.41以下であってもよい。粒子径比は、例えば0.39以上であってもよい。
【0047】
(平均円形度)
平均円形度は、円形度の算術平均である。本実施形態においては、第2黒鉛粒子の平均円形度(R2)が、第1黒鉛粒子の平均円形度(R1)以下である。すなわち「R2≦R1」の関係が満たされている。これにより、小粒子と大粒子との接点が喪失し難くなることが期待される。第2黒鉛粒子の平均円形度(R2)は、第1黒鉛粒子の平均円形度(R1)未満であってもよい。すなわち「R2<R1」の関係が満たされていてもよい。
【0048】
第1黒鉛粒子の平均円形度(R1)は、例えば0.94以上であってもよいし、0.95以上であってもよいし、0.94~0.95であってもよい。第1黒鉛粒子の平均円形度(R1)が高くなる程、例えば入出力特性の向上が期待される。第2黒鉛粒子の平均円形度(R2)は、例えば0.90以上であってもよいし、0.92以上であってもよいし、0.94未満であってもよいし、0.90~0.92であってもよい。
【0049】
(円形度の標準偏差)
第2黒鉛粒子の円形度の標準偏差(σ2)は、例えば0.08以上であってもよい。標準偏差(σ2)が0.08以上であることにより、サイクル耐久性の向上が期待される。小粒子の円形度に特定のバラツキがあることにより、小粒子と大粒子との接点が喪失し難くなるためと考えられる。標準偏差(σ2)は、例えば0.15以下であってもよい。
【0050】
第1黒鉛粒子の円形度の標準偏差(σ1)は、例えば0.05以下であってもよい。標準偏差(σ1)は、例えば0.03以上であってもよい。
【0051】
(スパン値)
第1粒度分布は、第2粒度分布に比してシャープな分布であってもよい。すなわち第1粒度分布は、第2粒度分布に比して小さいスパン値を有していてもよい。これによりサイクル耐久性の改善が期待される。
【0052】
110は、第1粒度分布におけるD10である。D190は、第1粒度分布におけるD90である。例えば、第1粒度分布のスパン値〔(D190-D110)/D150〕は、0.70~0.80であってもよい。
【0053】
210は、第2粒度分布におけるD10である。D290は、第2粒度分布におけるD90である。第2粒度分布のスパン値〔(D290-D210)/D250〕は、例えば0.97以上であってもよいし、1.05以上であってもよいし、0.97~1.05であってもよい。
【0054】
負極活物質(第1黒鉛粒子と第2黒鉛粒子との混合物)は、第3粒度分布を有する。D310は、第3粒度分布におけるD10である。D350は、第3粒度分布におけるD50である。D390は、第3粒度分布におけるD90である。
【0055】
第3粒度分布が特定のスパン値を有していてもよい。すなわち、第3粒度分布のスパン値〔(D390-D310)/D350〕は、例えば0.87~0.99であってもよい。これによりサイクル耐久性の改善が期待される。第3粒度分布のスパン値は、例えば0.89~0.99であってもよい。
【0056】
(任意の成分)
第1黒鉛粒子と第2黒鉛粒子とを含む限り、負極活物質は追加の成分を含むように調製されてもよい。例えば、第1黒鉛粒子および第2黒鉛粒子に加えて、珪素(Si)、酸化珪素(SiO)、錫(Sn)、酸化錫(SnO)、Li4Ti512等が混合されてもよい。負極活物質における、第1黒鉛粒子と第2黒鉛粒子との合計質量分率は、例えば50%以上であってもよいし、80%以上であってもよいし、90%以上であってもよいし、95%以上であってもよいし、実質的に100%であってもよい。第1黒鉛粒子と第2黒鉛粒子との合計質量分率は、第1黒鉛粒子と第2黒鉛粒子との合計質量が、負極活物質全体の質量で除されることにより求まる。
【0057】
《(B)負極の製造》
本製造方法は、負極活物質を含む負極を製造することを含む。負極は任意の方法により製造され得る。例えば、スラリーの塗布により負極が製造されてもよい。例えば、負極活物質とバインダと分散媒とが混合されることによりスラリーが調製され得る。スラリーの調製には、任意の攪拌機、分散機等が使用され得る。スラリーの固形分は、例えば負極活物質とバインダとを含んでいてもよい。例えば、スラリーの固形分は、実質的に、質量分率で0.1~10%のバインダと、残部の負極活物質とからなっていてもよい。スラリーは、例えば40~80%の固形分濃度を有していてもよい。「固形分濃度」は、分散媒以外の成分の合計質量分率を示す。
【0058】
バインダは任意の成分を含み得る。バインダは、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)およびスチレンブタジエンゴム(SBR)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。分散媒は、バインダの種類等に応じて適宜選択され得る。分散媒は、例えば水等を含んでいてもよい。
【0059】
図2は、本実施形態における電極体の構成の一例を示す概略図である。
例えば負極基材21が準備され得る。負極基材21は、例えば銅(Cu)箔等を含んでいてもよい。負極基材21は、例えば5~30μmの厚さを有していてもよい。負極基材21の表面にスラリーが塗布され、乾燥されることにより負極活物質層22が形成され得る。本実施形態においては、任意の塗工機が使用され得る。負極活物質層22は負極基材21の片面のみに形成されてもよいし、表裏両面に形成されてもよい。負極基材21の一部が露出するように、負極活物質層22が形成されてもよい。負極基材21が露出した部分は、例えば集電加工等に利用され得る。以上より負極原反が製造される。
【0060】
負極原反は、電極体50の形態に応じて、所定の形状に加工され得る。例えば圧延機等により、負極活物質層22が圧縮されてもよい。圧縮後の負極活物質層22は、例えば10~200μmの厚さを有していてもよい。圧縮後の負極活物質層22は、例えば0.8~1.6g/cm3の密度を有していてもよい。例えばスリッター等により、負極原反が切断されてもよい。例えば負極原反が帯状に切断されてもよい。以上より負極20が製造され得る。
【0061】
《(C)電池の製造》
図3は、本実施形態における非水電解質二次電池の構成の一例を示す概略図である。
本製造方法は、負極20と正極10と電解液(不図示)とを含む電池100を製造することを含む。
【0062】
(正極)
本製造方法は正極10を準備することを含む(図2参照)。正極10は任意の方法により準備され得る。例えば負極20と同様に、スラリーの塗布により正極10が製造されてもよい。正極10は正極基材11と正極活物質層12とを含む。正極基材11は、例えばアルミニウム(Al)箔等を含んでいてもよい。正極基材11は、例えば10~30μmの厚さを有していてもよい。正極活物質層12は、正極基材11の表面に形成される。正極活物質層12は、正極基材11の片面のみに形成されてもよいし、表裏両面に形成されてもよい。正極活物質層12は、例えば10~200μmの厚さを有していてもよい。正極活物質層12は、例えば正極活物質と導電材とバインダとを含んでいてもよい。例えば正極活物質層12は、実質的に、質量分率で0.1~10%のバインダと、0.1~10%の導電材と、残部の正極活物質とからなっていてもよい。
【0063】
正極活物質は任意の成分を含み得る。正極活物質は、例えばLiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiMn24、Li(NiCoMn)O2、Li(NiCoAl)O2、およびLiFePO4からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。ここで、例えば「Li(NiCoMn)O2」等の組成式においては、括弧内の組成比の合計が1である(Ni+Co+Mn=1)。組成比の合計が1である限り、各元素(Ni、Co、Mn)の組成比は任意である。導電材は任意の成分を含み得る。導電材は、例えばカーボンブラック等を含んでいてもよい。バインダは任意の成分を含み得る。バインダは、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)等を含んでいてもよい。
【0064】
(電極体)
本製造方法は、電極体50を形成することを含む(図2参照)。電極体50は任意の形態を有し得る。電極体50は例えば積層型であってもよいし、巻回型であってもよい。例えばセパレータ30が準備される。1枚のセパレータ30が使用されてもよいし、2枚のセパレータ30が使用されてもよい。例えば、セパレータ30、負極20、セパレータ30および正極10がこの順序で積層されることにより積層体が形成され得る。積層体が渦巻状に巻回されることにより、電極体50が形成され得る。電極体50は、例えば扁平状に成形されてもよい。
【0065】
(セパレータ)
セパレータ30は多孔質シートである。セパレータ30は電解液を透過する。セパレータ30は、例えば100~400s/100mLの透気度を有していてもよい。本明細書における「透気度」は、「JIS P 8117:2009」に規定される「透気抵抗度(air resistance)」を示す。透気度はガーレー試験法により測定され得る。
【0066】
セパレータ30は電気絶縁性である。セパレータ30は、例えばポリオレフィン系樹脂等を含んでいてもよい。セパレータ30は、例えば、実質的にポリオレフィン系樹脂からなっていてもよい。ポリオレフィン系樹脂は、例えばポリエチレン(PE)およびポリプロピレン(PP)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。セパレータ30は、例えば単層構造を有していてもよい。セパレータ30は、例えば、実質的にPE層からなっていてもよい。セパレータ30は、例えば多層構造を有していてもよい。セパレータ30は、例えばPP層とPE層とPP層とがこの順序で積層されることにより形成されていてもよい。セパレータ30の表面に、例えば耐熱層(セラミック粒子層)等が形成されていてもよい。
【0067】
(外装体)
外装体90が準備される(図3参照)。外装体90は任意の形態を有し得る。外装体90は、例えば、Al合金製の容器であってもよいし、Alラミネートフィルム製のパウチ等であってもよい。外装体90は、例えば角形であってもよいし、円筒形であってもよい。
【0068】
外装体90は、例えば封口板91と外装缶92とを含んでいてもよい。封口板91は、正極端子81と負極端子82とを有していてもよい。正極端子81および負極端子82に、電極体50が接続される。電極体50が外装缶92に収納される。例えばレーザ溶接により、封口板91と外装缶92とが接合される。封口板91は注入口(不図示)を有していてもよい。注入口から電解液が外装体90内に注入され得る。電解液は電極体50に含浸され得る。電解液の注入後、注入口が閉塞されることにより、外装体90が密閉される。以上より、電池100が製造され得る。
【0069】
電池100は、例えば1~400Ahの定格容量を有していてもよい。電池100は、任意の用途で使用され得る。電池100は、例えば電動車両等において、主電源または動力アシスト用電源として使用されてもよい。複数個の電池100が連結されることにより、電池モジュールまたは組電池が形成されてもよい。
【0070】
(電解液)
電解液は液体電解質である。電解液が使用される限り、例えばゲル電解質等が形成されてもよい。電解液は溶媒と支持電解質とを含む。溶媒は非プロトン性である。溶媒は任意の成分を含み得る。溶媒は、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、1,2-ジメトキシエタン(DME)、メチルホルメート(MF)、メチルアセテート(MA)、メチルプロピオネート(MP)、およびγ-ブチロラクトン(GBL)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0071】
支持電解質は溶媒に溶解している。支持電解質は、例えば、LiPF6、LiBF4、およびLiN(FSO22からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。支持電解質は、例えば0.5~2.0mоl/Lのモル濃度を有していてもよいし、0.8~1.2mоl/Lのモル濃度を有していてもよい。
【0072】
電解液は、溶媒および支持電解質に加えて、任意の添加剤をさらに含んでいてもよい。例えば電解液は、質量分率で0.01~5%の添加剤を含んでいてもよい。添加剤は、例えば、ビニレンカーボネート(VC)、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO22)、フルオロスルホン酸リチウム(FSO3Li)、およびリチウムビスオキサラトボラート(LiBOB)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【実施例0073】
以下、本技術の実施例(本明細書においては「本実施例」とも記される。)が説明される。ただし以下の説明は本技術の範囲を限定しない。
【0074】
下記No.1~12に係る製造方法により、各種の試験セル(パウチセル)が製造された。
【0075】
<No.1>
《(A)負極活物質の調製》
下記材料が準備された。
第1黒鉛粒子:黒鉛A(粉体物性は下記表1に示される。)
第2黒鉛粒子:黒鉛C(粉体物性は下記表1に示される。)
【0076】
95質量部の第1黒鉛粒子と、5質量部の第2黒鉛粒子とが混合されることにより、負極活物質が調製された。すなわち配合比(M2/M1)は0.05である。負極活物質の粉体物性(スパン値)は、下記表1に示される。
【0077】
《(B)負極の製造》
下記材料が準備された。
バインダ:CMC-Na、SBR
分散媒:水
負極基材:Cu箔
【0078】
100質量部の負極活物質と、0.7質量部のCMC-Naと、1質量部のSBRと、適量の分散媒とが混合されることにより、スラリーが調製された。スラリーが負極基材の表面に塗布されることにより負極活物質層が形成された。負極活物質層が乾燥された。圧延機により負極活物質層が圧縮された。これにより負極原反が製造された。負極原反が帯状に切断されることにより、負極が製造された。
【0079】
《(C)電池の製造》
下記材料が準備された。
正極活物質:Li(NiCoMn)O2
導電材:アセチレンブラック
バインダ:PVdF
分散媒:N-メチル-2-ピロリドン
正極基材:Al箔
【0080】
97.5質量部の正極活物質と、1質量部の導電材と、1.5質量部のバインダと、適量の分散媒とが混合されることにより、スラリーが調製された。スラリーが正極基材の表面に塗布されることにより正極活物質層が形成された。正極活物質層が乾燥された。圧延機により正極活物質層が圧縮された。これにより正極原反が製造された。正極原反が帯状に切断されることにより、正極が製造された。
【0081】
PP製のセパレータが準備された。セパレータは単層構造であった。正極および負極にそれぞれリードタブが接合された。正極とセパレータと負極とがこの順序で積層されることにより積層体が形成された。積層体が渦巻状に巻回されることにより、電極体が形成された。
【0082】
外装体が準備された。外装体は、Alラミネートフィルム製のパウチであった。外装体に電極体が収納された。電解液が準備された。電解液は下記成分からなっていた。
【0083】
溶媒:「EC/EMC=3/7(体積比)」
支持電解質:LiPF6(1.0mоl/L)
添加剤:VC(体積分率で2%)
【0084】
外装体に電解液が注入された。電解液の注入後、ヒートシーラにより外装体が密封された。以上より試験セルが製造された。
【0085】
<No.2>
黒鉛Aに代えて黒鉛Bが第1黒鉛粒子として使用されることを除いては、No.1に係る製造方法と同様に、試験セルが製造された。黒鉛Bの粉体物性は下記表1に示される。
【0086】
<No.3>
配合比(M2/M1)が0.10に変更されることを除いては、No.1に係る製造方法と同様に、試験セルが製造された。
【0087】
<No.4>
黒鉛Aに代えて黒鉛Gが第1黒鉛粒子として使用されることを除いては、No.1に係る製造方法と同様に、試験セルが製造された。黒鉛Gの粉体物性は下記表1に示される。
【0088】
<No.5>
黒鉛Cに代えて黒鉛Fが第2黒鉛粒子として使用されることを除いては、No.1に係る製造方法と同様に、試験セルが製造された。黒鉛Fの粉体物性は下記表1に示される。
【0089】
<No.6>
黒鉛Aに代えて黒鉛Bが第1黒鉛粒子として使用されることを除いては、No.5に係る製造方法と同様に、試験セルが製造された。
【0090】
<No.7>
配合比(M2/M1)が0.025に変更されることを除いては、No.1に係る製造方法と同様に、試験セルが製造された。
【0091】
<No.8>
配合比(M2/M1)が0.125に変更されることを除いては、No.1に係る製造方法と同様に、試験セルが製造された。
【0092】
<No.9>
黒鉛Cに代えて黒鉛Dが第2黒鉛粒子として使用されることを除いては、No.1に係る製造方法と同様に、試験セルが製造された。黒鉛Dの粉体物性は下記表1に示される。
【0093】
<No.10>
黒鉛Cに代えて黒鉛Eが第2黒鉛粒子として使用されることを除いては、No.1に係る製造方法と同様に、試験セルが製造された。黒鉛Eの粉体物性は下記表1に示される。
【0094】
<No.11>
黒鉛Cに代えて黒鉛Dが第2黒鉛粒子として使用されることを除いては、No.2に係る製造方法と同様に、試験セルが製造された。
【0095】
<No.12>
配合比(M2/M1)が0に変更されることを除いては、No.1に係る製造方法と同様に、試験セルが製造された。すなわち、No.12に係る負極活物質は、第1黒鉛粒子(黒鉛A)のみからなる。
【0096】
<評価>
25℃の温度環境下において、充放電が200サイクル実施された。1サイクルは、次の充電と放電との一巡を示す。
【0097】
1/3Itの定電流充電により試験セルが4.25Vまで充電される。その後、電流が1/20Itに減衰するまで、4.25Vの定電圧充電により試験セルが充電される。充電終了後、1/3Itの定電流放電により試験セルが3.0Vまで放電される。なお「1It」は、試験セルの定格容量を1時間で流し切る電流と定義される。
【0098】
200サイクル目の放電容量が1サイクル目の放電容量で除されることにより、200サイクル時点での容量維持率が求められた。容量維持率は百分率で表示される。容量維持率が高い程、サイクル耐久性が良好であると考えられる。
【0099】
【表1】
【0100】
<結果>
No.1~8に係る製造方法により製造された試験セルは、No.9~12に係る製造方法により製造された試験セルに比して、サイクル耐久性が良好である。No.1~8に係る製造方法においては、「D250/D150≦0.50」かつ「R2≦R1」の関係が満たされている。
【0101】
「0.05≦M2/M1≦0.10」の関係が満たされることにより、サイクル耐久性が改善する傾向がみられる(No.1、3、7、8参照)。
【0102】
「0.70≦(D190-D110)/D150≦0.80」かつ「0.97≦(D290-D210)/D250」の関係が満たされることにより、サイクル耐久性が改善する傾向がみられる(No.1、3、4参照)。
【0103】
「0.08≦σ2」の関係が満たされることにより、サイクル耐久性が改善する傾向がみられる(No.1、2、5、6参照)。
【0104】
「0.87≦(D390-D310)/D350≦0.99」の関係が満たされることにより、サイクル耐久性が改善する傾向がみられる(No.1~3、7、8参照)。
【0105】
本実施形態および本実施例は全ての点で例示である。本実施形態および本実施例は、制限的ではない。本技術の範囲は、特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内における全ての変更を包含する。例えば、本実施形態および本実施例から、任意の構成が抽出され、それらが任意に組み合わされることも当初から予定されている。
【符号の説明】
【0106】
10 正極、11 正極基材、12 正極活物質層、20 負極、21 負極基材、22 負極活物質層、30 セパレータ、50 電極体、81 正極端子、82 負極端子、90 外装体、91 封口板、92 外装缶、100 電池(非水電解質二次電池)。
図1
図2
図3