IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 辻本 幸司の特許一覧

<>
  • 特開-動物捕獲用罠 図1
  • 特開-動物捕獲用罠 図2
  • 特開-動物捕獲用罠 図3
  • 特開-動物捕獲用罠 図4
  • 特開-動物捕獲用罠 図5
  • 特開-動物捕獲用罠 図6
  • 特開-動物捕獲用罠 図7
  • 特開-動物捕獲用罠 図8
  • 特開-動物捕獲用罠 図9
  • 特開-動物捕獲用罠 図10
  • 特開-動物捕獲用罠 図11
  • 特開-動物捕獲用罠 図12
  • 特開-動物捕獲用罠 図13
  • 特開-動物捕獲用罠 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138396
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】動物捕獲用罠
(51)【国際特許分類】
   A01M 23/20 20060101AFI20220915BHJP
【FI】
A01M23/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021038263
(22)【出願日】2021-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】521102007
【氏名又は名称】辻本 幸司
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(74)【代理人】
【識別番号】100148910
【弁理士】
【氏名又は名称】宮澤 岳志
(72)【発明者】
【氏名】島田 暁令
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA01
2B121BA13
2B121BA16
2B121BA19
2B121BA51
2B121BA58
2B121EA21
2B121FA14
(57)【要約】
【課題】捕獲した動物から強い衝撃を受けたとしても動物を逃さないような、より確実性、安全性に優れた罠を実現する。
【解決手段】動物を捕獲する内部空間を囲繞するパネルを要素とする罠本体1と、前記罠本体1の開口部位に配され、罠本体1の内部空間を外部に開通させる浮上位置と、自重により浮上位置から落下して罠本体1の内部空間を外部から隔絶する閉止位置とをとり得るシャッタ21を備えたゲート2と、前記ゲート2に付設され、前記シャッタ21に干渉せずシャッタ21の上下動を許容する解禁位置と、自重により解禁位置から変位して閉止位置にあるシャッタ21に係合しシャッタ21の上下動を抑止する拘束位置とをとり得るストッパ25とを具備する動物捕獲用罠を構成した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物を捕獲する内部空間を囲繞するパネルを要素とする罠本体と、
前記罠本体の開口部位に配され、罠本体の内部空間を外部に開通させる浮上位置と、自重により浮上位置から落下して罠本体の内部空間を外部から隔絶する閉止位置とをとり得るシャッタを備えたゲートと、
前記ゲートに付設され、前記シャッタに干渉せずシャッタの上下動を許容する解禁位置と、自重により解禁位置から変位して閉止位置にあるシャッタに係合しシャッタの上下動を抑止する拘束位置とをとり得るストッパと
を具備する動物捕獲用罠。
【請求項2】
前記シャッタが浮上位置にあり、前記ストッパが拘束位置をとるときに、当該ストッパがシャッタに係合しシャッタの上下動を抑止する請求項1記載の動物捕獲用罠。
【請求項3】
前記ストッパと、前記ゲートにおける解禁位置をとるストッパに面する箇所とのうち一方に磁石が設けられ、他方にその磁石に吸着する磁石または金属部が設けられている請求項1または2記載の動物捕獲用罠。
【請求項4】
前記ゲートは、前記シャッタの左右両側に対をなして設立されシャッタの側端部を保持する支柱を備えており、
前記支柱は、上下に伸びるパイプ材の内側方に臨む周壁の一部を上下方向に沿って切り欠くことにより前記シャッタの側端部が差し入る溝が形成されたものである請求項1、2または3記載の動物捕獲用罠。
【請求項5】
動物を捕獲する内部空間を囲繞するパネルを要素とする罠本体と、
前記罠本体の開口部位に配され、罠本体の内部空間を外部に開通させる浮上位置と、自重により浮上位置から落下して罠本体の内部空間を外部から隔絶する閉止位置とをとり得るシャッタを備えたゲートとを具備し、
前記ゲートは、前記シャッタの左右両側に対をなして設立されシャッタの側端部を保持する支柱を備えており、
前記支柱は、上下に伸びるパイプ材の内側方に臨む周壁の一部を上下方向に沿って切り欠くことにより前記シャッタの側端部が差し入る溝が形成されたものである動物捕獲用罠。
【請求項6】
前記シャッタの側端部に、前方または後方に突出しており前記支柱内に挿入される突片が設けられている請求項4または5記載の動物捕獲用罠。
【請求項7】
前記罠本体は、複数枚の前記パネルと、それらパネルの縁部同士を連結する連結杆とを備えており、
前記パネルの縁部には、その縁辺が伸びる方向に沿って間欠的に配列された複数の環状体が設けられ、
複数の前記パネルの一方の環状体及び他方の環状体に同一の前記連結杆を挿通することで両パネルが連結され、
かつ、前記連結杆の端部に、当該連結杆の外周よりも外方に張り出し当該連結杆の前記環状体からの抜出を抑制するための抜止部材が止着される請求項1、2、3、4、5または6記載の動物捕獲用罠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有害獣等の動物を捕獲するべく使用される罠(または、檻)に関する。
【背景技術】
【0002】
前方に開口し前方以外の五方(左右両側方、後方、上方及び下方)が閉鎖されている筐体状の罠本体の前方部位に、上下動するシャッタを備えるゲートを配した、いわゆる箱罠が公知である(例えば、下記特許文献を参照)。使用時には、シャッタを浮上させた位置に維持し、罠本体の内部空間に捕獲対象の動物を誘い込む。動物が内部空間に侵入したならば、シャッタを落下させて罠本体の開口を閉止し、動物を閉じ込める。
【0003】
箱罠は、罠本体を構築する複数枚のパネルの縁部同士を連結し、その上で罠本体の前方にゲートを配設することにより完成する。ゲートは、シャッタの左右両側に対をなして設立された支柱を備える。各支柱はそれぞれ、平断面視内側方に開放する等断面形状のチャネル状即ちコ字形をなして上下に伸長しており、その内にシャッタの側端部をくわえ込んで保持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3220739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、捕獲した動物から強い衝撃を受けたとしても動物を逃さないような、より確実性、安全性に優れた罠を実現することを所期の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、動物を捕獲する内部空間を囲繞するパネルを要素とする罠本体と、前記罠本体の開口部位に配され、罠本体の内部空間を外部に開通させる浮上位置と、自重により浮上位置から落下して罠本体の内部空間を外部から隔絶する閉止位置とをとり得るシャッタを備えたゲートと、前記ゲートに付設され、前記シャッタに干渉せずシャッタの上下動を許容する解禁位置と、自重により解禁位置から変位して閉止位置にあるシャッタに係合しシャッタの上下動を抑止する拘束位置とをとり得るストッパとを具備する動物捕獲用罠を構成した。
【0007】
動物が罠本体の内部空間に侵入してシャッタが浮上位置から閉止位置に落下すると、自動的にストッパが解禁位置から拘束位置に変位して、閉止位置にあるシャッタを拘束する。これにより、罠本体またはゲートが捕獲した動物から強い衝撃を受けたとしても、シャッタが不意に持ち上がることが抑制され、動物の脱走を阻止することができる。
【0008】
前記シャッタが浮上位置にあり、前記ストッパが拘束位置をとるときに、当該ストッパがシャッタに係合してシャッタの上下動を抑止するものとすれば、ストッパがシャッタを浮上位置に拘束する安全装置の役割をも兼ねることになる。これを利用して、罠本体の内部空間に動物を誘引する餌等を仕掛ける作業時に、シャッタが不意に落下して作業者が閉じ込められてしまう事故を回避することが可能になる。
【0009】
前記ストッパと、前記ゲートにおける解禁位置をとるストッパに面する箇所とのうち一方に磁石が設けられ、他方にその磁石に吸着する磁石または金属部が設けられていれば、罠を仕掛けた際にストッパを解禁位置に安定して保定することができ、動物を捕える前にストッパが拘束位置に変位してシャッタに干渉することを避けられる。そして、動物が罠本体の内部空間に侵入してシャッタが落下したときには、その衝撃でストッパの磁着が解除されて自動的にストッパが解禁位置から拘束位置に変位し、閉止位置にあるシャッタを拘束する。
【0010】
前記ゲートは、前記シャッタの左右両側に対をなして設立されシャッタの側端部を保持する支柱を備えている。その支柱が、上下に伸びるパイプ材の内側方に臨む周壁の一部を上下方向に沿って切り欠くことにより前記シャッタの側端部が差し入る溝が形成されたものであるならば、支柱の剛性がより高まる。
【0011】
また、前記シャッタの側端部に、前方または後方に突出しており前記支柱内に挿入される突片が設けられていれば、捕獲した動物から強い衝撃を受けたとしても、シャッタの側端部が支柱から抜出することが抑制される。加えて、突片の存在により、シャッタ自体の剛性も強化される。
【0012】
前記罠本体は、例えば、複数枚の前記パネルと、それらパネルの縁部同士を連結する連結杆とを備えている。前記パネルの縁部には、その縁辺が伸びる方向に沿って間欠的に配列された複数の環状体が設けられ、複数の前記パネルの一方の環状体及び他方の環状体に同一の前記連結杆を挿通することで両パネルが連結される。しかして、前記連結杆の端部に、当該連結杆の外周よりも外方に張り出し当該連結杆の前記環状体からの抜出を抑制するための抜止部材が止着されるならば、罠本体を構築するパネル及び連結杆の分解をより確実に防止できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、捕獲した動物から強い衝撃を受けたとしても動物を逃さないような、より確実性、安全性に優れた罠を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態の動物捕獲用罠の斜視図。
図2】同実施形態の動物捕獲用罠の本体の要素であるパネルを示す分解斜視図。
図3】同実施形態の動物捕獲用罠の前方部位を拡大して示す側面図。
図4】同実施形態の動物捕獲用罠の連結杆の下端部を拡大して示す側断面図。
図5】同実施形態の動物捕獲用罠の連結杆の後端部を拡大して示す斜視図。
図6】同実施形態の動物捕獲用罠のゲートのシャッタ及び支柱を示す平端面図。
図7】同実施形態の動物捕獲用罠の上方部位を拡大して示す正面図。
図8】同実施形態の動物捕獲用罠のゲートを拡大して示す側断面図。
図9】同実施形態の動物捕獲用罠の正面図。
図10】同実施形態の動物捕獲用罠のゲートを拡大して示す側断面図。
図11】同実施形態の動物捕獲用罠の仕掛け装置を拡大して示す斜視図。
図12】同実施形態の動物捕獲用罠の仕掛け装置を拡大して示す側断面図。
図13】同実施形態の動物捕獲用罠の仕掛け装置を拡大して示す側断面図。
図14】本発明の変形例の一に係る動物捕獲用罠の連結杆の後端部を拡大して示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。図1ないし図13に示す本実施形態の動物捕獲用罠は、動物、特にイノシシ、シカ、サル等といった有害獣を捕獲する目的で使用される、いわゆる箱罠である。
【0016】
本実施形態の動物捕獲用罠は、動物を捕獲する内部空間を包有する罠本体1の開口部位にシャッタ21を備えたゲート2を配設してなる。動物捕獲用罠の使用時には、図1図3図7及び図8に示すように、罠本体1の開口部位を開放しその内部空間を外部に連通させるようシャッタ21を浮上させた位置に維持し、その状態で捕獲対象の動物を誘い込む。そして、動物が内部空間に侵入した後、図9及び図10に示すように、シャッタ21を浮上位置から閉止位置に落下させて罠本体1の内部空間を外部から隔絶して動物を閉じ込める。
【0017】
罠本体1は、図1及び図2に示すように、複数枚のパネル即ち左右の側面パネル11、背面パネル12、天井面パネル13及び底面パネル14が、当該罠本体1の左右両側方、後方、上方及び下方を閉鎖して罠本体1の内部空間を囲繞する、前方に開口した筐体状のものである。各パネル11、12、13、14は、金属線材を格子状に組んで溶接した網状をなす。互いに隣接するパネル11、12、13、14同士は、棒状の連結杆を介して相互に連結する。
【0018】
側面パネル11の上縁部及び下縁部には、その縁辺が伸びる前後方向に沿って間欠的に複数の環状体111、112を設けている。それら環状体111、112は、前後方向に開通している。側面パネル11の後縁部及び前縁部には、その縁辺が伸びる上下方向に沿って間欠的に複数の環状体113、114を設けている。それら環状体113、114は、上下方向に開通している。
【0019】
背面パネル12の上縁部及び下縁部には、その縁辺が伸びる左右方向に沿って間欠的に複数の環状体121、122を設けている。それら環状体121、122は、左右方向に開通している。背面パネル12の左右の側縁部には、その縁辺が伸びる上下方向に沿って間欠的に複数の環状体123を設けている。それら環状体123は、上下方向に開通している。
【0020】
天井面パネル13の左右の側縁部には、その縁辺が伸びる前後方向に沿って間欠的に複数の環状体131を設けている。それら環状体131は、前後方向に開通している。天井面パネル13の後縁部及び前縁部には、その縁辺が伸びる左右方向に沿って間欠的に複数の環状体132、133を設けている。それら環状体132、133は、左右方向に開通している。
【0021】
底面パネル14の左右の側縁部には、その縁辺が伸びる前後方向に沿って間欠的に複数の環状体141を設けている。それら環状体141は、前後方向に開通している。底面パネル14の後縁部には、その縁辺が伸びる左右方向に沿って間欠的に複数の環状体142を設けている。それら環状体142は、左右方向に開通している。
【0022】
罠本体1を構築するにあたっては、まず、底面パネル14に左右の側面パネル11及び背面パネル12を連結する。そのために、底面パネル14の側縁部の環状体141及び側面パネル11の下縁部112の環状体に、前後方向に伸びる連結杆15を挿通する。並びに、底面パネル14の後縁部の環状体142及び背面パネル12の下縁部の環状体122に、左右方向に伸びる連結杆16を挿通する。
【0023】
次に、左右の側面パネル11及び背面パネル12を起立させ、それら側面パネル11と背面パネル12とを連結する。そのために、側面パネル11の後縁部の環状体113及び背面パネル12の側縁部の環状体123に、上下方向に伸びる連結杆17を挿通する。この連結杆17の下端部は、地中(土中)に打ち込み埋設することで、罠本体1ひいては動物捕獲用罠を地面に固定する役割をも担う。
【0024】
続いて、背面パネル12に天井面パネル13を連結する。そのために、背面パネル12の上縁部の環状体121及び天井面パネル13の後縁部の環状体132に、左右方向に伸びる連結杆16を挿通する。
【0025】
さらに、天井面パネル13と左右の側面パネル11とを連結する。そのために、天井面パネル13の側縁部の環状体131及び側面パネル11の上縁部の環状体111に、前後方向に伸びる連結杆15を挿通する。
【0026】
ゲート2は、図1図3及び図6ないし図10に示すように、浮上位置と閉止位置との間で上下動して罠本体1の開口部位を開閉するシャッタ21と、シャッタ21の左右両側に対をなしシャッタ21の側端部を保持する支柱22と、左右方向に伸長し両支柱22の下端部同士を連結するベース23と、左右方向に伸長し両支柱22の上下方向の中間よりも上方の部位同士を連結する横桟24とを備える。
【0027】
各支柱22の後向面にはそれぞれ、上下方向に沿って間欠的に複数の環状体221を設けている。それら環状体221は、上下方向に開通している。
【0028】
加えて、横桟24の後向面にも、左右方向に沿って間欠的に複数の環状体241を設けている。それら環状体241は、左右方向に開通している。
【0029】
罠本体1の開口部位即ち前方部位にゲート2を配置するには、罠本体1の天井面パネル13とゲート2の横桟24とを連結する。そのために、天井面パネル13の前縁部の環状体133及び横桟24の後背の環状体241に、左右方向に伸びる連結杆16を挿通する。
【0030】
しかる後、罠本体1の左右の側面パネル11とゲート2の支柱22とを連結する。そのために、側面パネル11の前縁部の環状体114及び支柱22の後背の環状体221に、上下方向に伸びる連結杆17を挿通する。この連結杆17の下端部は、地中に打ち込み埋設することで、罠本体1及びゲート2ひいては動物捕獲用罠を地面に固定する役割をも担う。
【0031】
因みに、図4に示すように、上下方向に伸びる連結杆17の下端部に、その下端よりは上方の高さ位置にあり、上下方向に対し交差または直交する外方に張り出した支持片171を固定して設けてもよい。支持片171は、地面Gに当接して、当該連結杆17が地中に深く入り込み過ぎることを抑制する。
【0032】
また、図5に示すように、罠本体1のパネル11、12、13、14同士、またはパネル11、13とゲート2とを連結する連結杆15、16、17の端部に、当該連結杆15、16、17の延伸方向に対して交差または直交する外方に張り出した抜止部材18を着脱できるようにしてもよい。抜止部材18は、例えばワッシャ及びボルトであり、連結杆15、16、17の端部に形成されたナット穴(図示せず)に螺着することで連結杆15、16、17の端部に固定する。ワッシャがボルト18の頭部に溶接等により一体化している態様もとり得る。抜止部材18は、罠本体1のパネル11、12、13、14またはゲート2が強い衝撃を受けたときに環状体111、112、113、114、121、122、123、131、132、133、141、142、221、241から連結杆15、16、17が抜出して罠が分解してしまうことを防止する働きをする。図5は、前後方向に伸びる連結杆15の後端部に抜止部材18を固着する例を示している。これは、当該連結杆15が動物捕獲用罠の前方または後方に変位して抜出されることを抑止するものである。が、同連結部材15の前端部に、同様の抜止部材18を固着してもよいことは言うまでもない。また、左右方向に伸びる連結杆16の左方及び/または右方の側端部に抜止部材18を固着してもよく、上下方向に伸びる連結杆17の上端部に抜止部材18を固着してもよい。
【0033】
ゲート2の構造について補記する。ゲート2の支柱22は、図1及び図6に示すように、上下に伸びる金属製のパイプ材、特に方形状の等断面(平断面)を有して伸長する角パイプ材における、内側方に臨む周壁の一部を上下方向に沿って切り欠くことにより、その内空を内側方に連通させる溝222を形成したものである。支柱22の平断面形状は、単純なチャネル状即ちコ字形ではなく、その前側の内側壁が当該支柱22の前縁よりも後方に延出し、かつその後側の内側壁が当該支柱22の後縁よりも前方に延出した様相を呈する。換言すれば、溝222の前縁が支柱22の前縁よりも後方に位置し、溝222の後縁が支柱22の後縁よりも前縁に位置しており、溝222の前後方向に沿った開口幅寸法が支柱22の前後寸法よりも狭小になっている。
【0034】
翻って、支柱22内に収容されるシャッタ21の側端部には、当該シャッタ21の前面よりも前方かつ同シャッタ21の後面よりも後方に突出している、上下に拡張した突片211を形成してある。突片211の前縁は溝222の前縁よりも前方に位置し、突片211の後縁は溝222の後縁よりも後方に位置しており、突片211の前後方向に沿った幅寸法は溝222の前後方向に沿った開口幅寸法よりも大きい。シャッタ21の側端部及び突片211は、支柱22に対して上方から挿入する。
【0035】
ゲート2には、シャッタ21の上下動を規制するストッパ25を付設している。ストッパ25は、図1図3及び図7ないし図10に示すように、基体251と、基体251の上端部にあって支柱22に保定される被保定部252と、基体251の下端部にあってシャッタ21に係合する係合部253とを有している。ストッパ25は、その上下方向の中間よりも下方の部位が、各支柱22の前向面に設けた軸受ブラケット223及び支軸224により支持されており、左右方向に伸びる水平な軸回りに回動可能となっている。
【0036】
ストッパ25の被保定部252は、図1図3図7及び図8に示しているように、支柱22の前向面に当接し得る。しかして、ストッパ25の被保定部252と、支柱22の前向面における当該被保定部252に面する箇所とのうち一方に磁石254を、他方にその磁石254に吸着する磁石または金属部を、それぞれ設けることにより、ストッパ25の被保定部252を支柱22の前向面に磁着させて保定できるようにする。本実施形態では、ストッパ25の被保定部252に磁石254を設けながら、支柱22を鉄鋼製としている。
【0037】
ストッパ25の係合部253は、側面視後方に突き出したフック状をなす。対して、支柱22には、その前壁を前後方向に貫通する窓25を穿ち設けてある。ストッパ25の係合部253は、図9及び図10に示すように、窓25を通じて前方から支柱22内に突入し得る。
【0038】
そして、シャッタ21の側端部の上方の隅角部及び下方の隅角部にそれぞれ、係合孔212、213を形成している。これら係合孔212、213には、ストッパ25の係合部253が係合し得る。何れかの係合孔212、213に係合部253が係合すると、シャッタ21の上下動がストッパ25により規制されることとなる。
【0039】
既に述べた通り、本実施形態の動物捕獲用罠を使用する際には、シャッタ21を浮上位置に維持しておき、罠本体1の内部空間に動物が侵入した後にシャッタ21を浮上位置から閉止位置に落下させる。このシャッタ21の上下動の妨げとならないよう、罠を仕掛けたならば、ストッパ25を図1図3図7及び図8に示す解禁位置に位置付ける。ストッパ25が解禁位置をとるとき、その係合部253は支柱22の前壁よりも前方即ち支柱22外にあり、同時にその被保定部252が支柱22の前向面に磁着してストッパ25が当該解禁位置に保定される。
【0040】
罠本体1の内部空間に動物が侵入し、シャッタ21が落下すると、その衝撃でストッパ25の被保定部252が支柱22の前向面から脱離する。さすれば、ストッパ25が自重により、基体251の上端側を前方に、下端側を後方に変位させるように前方に傾倒、つまりは水平軸回りに垂直回転する(そのようにストッパ25の重心位置及びストッパを支える支軸224の位置が予め設定されている)。結果、ストッパ25が図9及び図10に示す拘束位置をとるようになる。拘束位置では、ストッパ25の係合部253が支柱22の前壁の窓25から支柱22内に突入し、閉止位置に落下したシャッタ21に形成されている上側の係合孔212に入り込んで係合する。この状態でシャッタ21を持ち上げようとしても、ストッパ25が係合孔212に引っ掛かるために、シャッタ21を持ち上げて開くことができない。
【0041】
シャッタ21を開いて捕獲した動物を運び出すためには、図10中に鎖線で描画しているようにストッパ25の基体251の上端側を後方に、下端側を前方に変位させるように垂直回転させる操作を行い、ストッパ25を拘束位置から解禁位置に復帰させ、ストッパ25の係合部253をシャッタ21の係合孔212から脱出させればよい。
【0042】
なお、このストッパ25は、閉止位置に落下したシャッタ21を同閉止位置に拘束するだけでなく、浮上位置に上昇させたシャッタ21を同浮上位置に拘束するためにも利用できる。シャッタ21が浮上位置にあるときに、図8中に鎖線で描画しているようにストッパ25の基体251の上端側を前方に、下端側を後方に変位させるように垂直回転させる操作を行い、ストッパ25を解禁位置から拘束位置まで傾倒させれば、その係合部253が支柱22の前壁の窓25から支柱22内に突入し、シャッタ21に形成されている下側の係合孔213に入り込み係合するようになる。この状態では、ストッパ25が係合孔213に引っ掛かるためにシャッタ21が落下せず、シャッタ21が閉じない。
【0043】
ストッパ25とは別に、本実施形態の動物捕獲用罠は、シャッタ21を浮上位置に支持しつつ、罠本体1の内部空間に動物が侵入した事実を感知してシャッタ21の支持を解除しシャッタ21を浮上位置から閉止位置へと落下させるための仕掛け(落とし、トリガ)装置3を具備する。本実施形態における仕掛け装置3は、図1図3及び図11ないし図13に示すように、罠本体1(の天井面パネル13)に対して固定される仕掛け本体31と、仕掛け本体31に可動に支持される係留部材32と、浮上位置にあるシャッタ21自体またはシャッタ21を浮上位置に支持する他の部材に結着されるとともに係留部材32に係留されるロープまたはワイヤ33と、仕掛け本体31に保持されつつ係留部材32に係合するピン34とを要素とする。
【0044】
仕掛け本体31は、左右両側に対をなし前後方向に拡張した起立壁311と、それら起立壁311の前端部間に架け渡すように固定して設けた支軸312とを有する。各起立壁311の後端部には、後方から前方に向かって凹むように切り欠いた凹欠313を形成してある。
【0045】
係留部材32は、その基端部が仕掛け本体31の支軸312に支持されており、左右方向に伸びる水平な軸回りに回動可能となっている。シャッタ21を浮上位置に吊り上げているロープまたはワイヤ33の端部には輪331を設け、その輪331に係留部材32を通す。
【0046】
ピン34は、左右方向に伸びる細い棒状体である。ピン34の端部には、環341を一体成形してある。この環341には、ピアノ線のような繊細で動物の目に見えにくい蹴り糸等(図示せず)が結着される。
【0047】
動物捕獲用罠の使用時には、図11及び図12に示すように、ロープまたはワイヤ33を係留する係留部材32の先端部を後方に向けた上で、仕掛け本体31の両起立壁311の凹欠313にピン34を挿通して、ピン34により上方から係留部材32を押さえつける。ロープまたはワイヤ33には、浮上位置に支持させたシャッタ21の自重による、前方に向かう張力が作用している。その張力は、係留部材32の先端部を後方から前方に引っ張り込もうとする。だが、起立壁311の凹欠313の上縁にピン34が係合し、そのピン34の下向面に係留部材32の上縁が係合することで、係留部材32の先端部が後方から前方に向かって変位するように係留部材32が回転することが阻まれる。従って、ロープまたはワイヤ33の輪331が係留部材32に係留されたままとなり、シャッタ21が浮上位置に維持される。
【0048】
罠本体1の内部空間に捕獲対象の動物が侵入し、その動物がピン34に接続している蹴り糸等を介してピン34に機械的な力を及ぼすと、ピン34が仕掛け本体31の起立壁311の凹欠313から脱出する。すると、図13に示すように、ロープまたはワイヤ33に引っ張られている係留部材32が、その先端部の向きを後方から前方に変化させるように水平軸回りに垂直回転する。その帰結として、それまで係留部材32に係留されていたロープまたはワイヤ33の輪331が係留部材32の先端部から抜出し、支えを失ったシャッタ21が浮上位置から閉止位置に向かって落下することになる。
【0049】
本実施形態では、動物を捕獲する内部空間を囲繞するパネル11、12、13、14を要素とする罠本体1と、前記罠本体1の開口部位に配され、罠本体1の内部空間を外部に開通させる浮上位置と、自重により浮上位置から落下して罠本体1の内部空間を外部から隔絶する閉止位置とをとり得るシャッタ21を備えたゲート2と、前記ゲート2に付設され、前記シャッタ21に干渉せずシャッタ21の上下動を許容する解禁位置と、自重により解禁位置から変位して閉止位置にあるシャッタ21に係合しシャッタ21の上下動を抑止する拘束位置とをとり得るストッパ25とを具備する動物捕獲用罠を構成した。
【0050】
動物が罠本体1の内部空間に侵入してシャッタ21が浮上位置から閉止位置に落下すると、自動的にストッパ25が解禁位置から拘束位置に変位して、閉止位置にあるシャッタ21を拘束する。これにより、罠本体1またはゲート2が捕獲した動物から強い衝撃を受けたとしても、シャッタ21が不意に持ち上がることが抑制され、動物の脱走を阻止することができる。
【0051】
加えて、本実施形態では、前記シャッタ21が浮上位置にあり、前記ストッパ25が拘束位置をとるときに、当該ストッパ25がシャッタ21に係合してシャッタ21の上下動を抑止するものとしている。つまり、ストッパ25は、シャッタ21を浮上位置に拘束する安全装置の役割をも兼ねることになる。これを利用して、罠本体1の内部空間に動物を誘引する餌等を仕掛ける作業時に、シャッタ21が不意に落下して作業者が閉じ込められてしまう事故を回避することが可能になる。
【0052】
前記ストッパ25と、前記ゲート2における解禁位置をとるストッパ25に面する箇所とのうち一方に磁石254が設けられ、他方にその磁石254に吸着する磁石または金属部が設けられているので、罠を仕掛けた際にストッパ25を解禁位置に安定して保定することができ、動物を捕える前にストッパ25が拘束位置に変位してシャッタ21に干渉することが避けられる。動物が罠本体1の内部空間に侵入してシャッタ21が落下したときには、その衝撃でストッパ25の磁着が解除されて自動的にストッパ25が解禁位置から拘束位置に変位し、閉止位置にあるシャッタ21を拘束する。
【0053】
前記ゲート2は、前記シャッタ21の左右両側に対をなして設立されシャッタ21の側端部を保持する支柱22を備えている。その支柱22が、上下に伸びるパイプ材の内側方に臨む周壁の一部を上下方向に沿って切り欠くことにより前記シャッタ21の側端部が差し入る溝222が形成されたものであるため、支柱22の剛性がより高まる。
【0054】
また、前記シャッタ21の側端部に、前方または後方に突出しており前記支柱22内に挿入される突片211が設けられているので、捕獲した動物から強い衝撃を受けたとしても、シャッタ21の側端部が支柱22から抜出することが抑制される。さらに、突片211の存在により、シャッタ21自体の剛性も強化される。
【0055】
前記罠本体1は、複数枚の前記パネル11、12、13、14と、それらパネル11、12、13、14の縁部同士を連結する連結杆15、16、17とを備えている。前記パネル11、12、13、14の縁部には、その縁辺が伸びる方向に沿って間欠的に配列された複数の環状体111、112、113、114、121、12、123、131、132、133、141、142が設けられ、複数の前記パネル11、12、13、14の一方の環状体111、112、113、114、121、12、123、131、132、133、141、142及び他方の環状体111、112、113、114、121、12、123、131、132、133、141、142に同一の前記連結杆15、16、17を挿通することで両パネル11、12、13、14が連結される。しかして、前記連結杆15、16、17の端部に、当該連結杆15、16、17の外周よりも外方に張り出し当該連結杆15、16、17の前記環状体からの抜出を抑制するための抜止部材18が止着されることから、罠本体1を構築するパネル11、12、13、14及び連結杆15、16、17の分解をより確実に防止できる。
【0056】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。上記実施形態では、連結杆15、16がそれぞれ剛性の高い棒状体であったが、図14に示すように、連結杆15、16のうち何れか少なくとも一本または全てを、ある程度以上変形可能な可撓性を有する金属製のワイヤロープ等を用いて作製することも許される。連結杆15、16が可撓性を有していることにより、これをパネル11、12、13、14やゲート2の環状体111、112、113、114、121、122、123、131、132、133、141、142、241に挿通する作業がより容易となる。
【0057】
さらに、図14に示すように、連結杆15の前端部及び/または後端部、あるいは連結杆16の左端部及び/または右端部に、連結杆17を挿通可能な環状体151、161を設けておくことも考えられる。連結杆15、16の環状体151、161に連結杆17を挿通すれば、連結杆15、16がパネル11、12、13、14やゲート2から脱離して動物捕獲用罠が分解するおそれがより一層低減する。
【0058】
その他、各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変形が可能である。
【符号の説明】
【0059】
1…罠本体
11、12、13、14…パネル
111、112、113、114、121、12、123、131、132、133、141、142…環状体
15、16、17…連結杆
18…抜止部材
2…ゲート
21…シャッタ
211…突片
22…支柱
25…ストッパ
254…磁石
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14