(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138421
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】船舶
(51)【国際特許分類】
B63J 99/00 20090101AFI20220915BHJP
B63H 21/17 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
B63J99/00 A
B63H21/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021038299
(22)【出願日】2021-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】503218067
【氏名又は名称】住友重機械マリンエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】溝越 貴章
(72)【発明者】
【氏名】井本 康之
(57)【要約】
【課題】大型化を抑制しつつ、蓄電池を有効に利用することができる船舶を提供する。
【解決手段】船舶1は、電力を蓄電する蓄電池30を備えている。蓄電池30は、舵機室7に配置されている。このように、蓄電池30を配置するための専用のバッテリー室を新たに追加で設けることを抑制し、船舶1において既存のスペースである舵機室7に蓄電池30を配置することで、船内の省スペース化を図ることができる。また、蓄電池30の配置場所には換気が求められるものに対し、舵機室7には既存の換気機構(通気部33)が設けられている。従って、蓄電池30を舵機室7に配置して既存の換気機構を流用することで、設備の増加による船舶1の大型化を抑制することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
換気機構が設けられる換気室と、
電力を蓄電する蓄電池と、を備え、
前記蓄電池は、前記換気室内に配置される、船舶。
【請求項2】
前記換気室は、舵を操作するための舵取機が配置される舵機室であり、
前記蓄電池は、前記舵機室内に配置される、請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
前記蓄電池は、前記舵取機よりも船首側に配置される、請求項2に記載の船舶。
【請求項4】
前記舵機室は複数階に構成され、前記蓄電池は、少なくともいずれかの階に配置される、請求項2又は3に記載の船舶。
【請求項5】
前記蓄電池は、推進軸系のプロペラの回転軸の回転によって発生した電力を蓄電可能である、請求項1~4の何れか一項に記載の船舶。
【請求項6】
前記蓄電池は、推進軸系のプロペラの回転軸を回転させる機器へ電力を供給可能である、請求項1~5の何れか一項に記載の船舶。
【請求項7】
前記蓄電池は、荷役時に作動する機器へ電力を供給可能である、請求項1~5の何れか一項に記載の船舶。
【請求項8】
前記船舶はタンカーである、請求項1~7の何れか一項に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の船舶として、特許文献1に記載されたものが知られている。この船舶は、荷を収容する荷役部、メインエンジンを配置する機関室、ポンプを配置するポンプ室などを含んでいる。船舶内では、船体の推進や、荷役のためのポンプの駆動などのために、様々な機器が、必要なタイミングで作動している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述の様な船舶においては、蓄電池が搭載される場合がある。この場合、蓄電池は、船舶内の所定の動作(メインエンジンによるプロペラの回転など)のエネルギーによって発電された電力を蓄電し、各種機器の動作のために電力を供給することができる。しかしながら、船舶の限られたスペースに配置することが困難になる場合がある。その一方、蓄電池を配置するための、独立したバッテリー室などを設けた場合、船舶が大型化してしまうという問題が発生する。
【0005】
そこで、本発明は、大型化を抑制しつつ、蓄電池を有効に利用することができる船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る船舶は、換気機構が設けられる換気室と、電力を蓄電する蓄電池と、を備え、蓄電池は、換気室内に配置される。
【0007】
船舶は、電力を蓄電する蓄電池を備えている。蓄電池は、船舶内の所定の動力(プロペラを回転させるメインエンジンの動力)によって発電された電力を蓄電しておくことができる。また、蓄電池は、各種機器の動作のために、適切なタイミングにて、蓄電しておいた電力を供給することができる。ここで、蓄電池は、換気機構が設けられる換気室に配置されている。このように、蓄電池を配置するための専用のバッテリー室を新たに追加で設けることを抑制し、船舶において既存のスペースである換気室に蓄電池を配置することで、船内の省スペース化を図ることができる。また、蓄電池の配置場所には換気が求められるものに対し、換気室には既存の換気機構(ファンによる換気)が設けられている。従って、蓄電池を舵機室に配置して既存の換気機構を流用することで、設備の増加による船舶の大型化や機器の増加を抑制することができる。以上より、大型化を抑制しつつ、蓄電池を有効に利用することができる。なお、ファンによる換気機構が設けられる他の部屋としては、機関室があげられる。このため、蓄電池を機関室に設けても良い。
【0008】
換気室は、舵を操作するための舵取機が配置される舵機室であり、蓄電池は、舵機室内に配置されてよい。この場合、舵機室に既存の設備として設けられている換気機構(ファンによる換気)を用いて、蓄電池の配置場所を換気することができる。
【0009】
蓄電池は、舵取機よりも船首側に配置されてよい。舵取機は、船尾側に設けられた舵の直上に配置される。従って、舵機室内では、舵取機に対する船尾側よりも船首側の方がスペースに余裕がある。このように、蓄電池が、スペースに余裕がある場所に配置されることで、配置の自由度を向上することができる。
【0010】
舵機室は複数階に構成され、蓄電池は、少なくともいずれかの階に配置されてよい。この場合、舵機室の高さ方向の空間も有効に利用して蓄電池を配置することが可能となる。
【0011】
蓄電池は、推進軸系のプロペラの回転軸の回転によって発生した電力を蓄電可能であってよい。プロペラの回転軸は、高効率なメインエンジンの動力によって回転する。そのため、高効率なメインエンジンの動力の一部を電力として回収し、蓄電池が当該電力を蓄電しておくことができる。
【0012】
蓄電池は、推進軸系のプロペラの回転軸を回転させる機器へ電力を供給可能であってよい。例えば港湾で船舶を低速で推進する場合などに、メインエンジンを停止して、蓄電池の電力によってプロペラを回転することができる。このように、メインエンジンを停止させておくことができるため、港湾などにおいて煙が発生することを抑制し、港湾での大気汚染が低減できる。
【0013】
蓄電池は、荷役時において作動する機器へ電力を供給可能であってよい。例えば、荷役時に作動する機器が、ボイラの蒸気によるタービン駆動や、発電機の電力によるモータ駆動で作動する場合、荷役時にしか使用しないにも関わらず、駆動源となるボイラや発電機を大型化する必要が生じる。これに対し、荷役時に作動する機器が、蓄電池で蓄電された電力を用いることで、上述のような駆動源の大型化を抑制し、港湾での大気汚染が低減することができる。
【0014】
船舶はタンカーであってよい。これにより、タンカーの大型化を抑制し、タンカー内の蓄電池を有効に利用できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、大型化を抑制しつつ、蓄電池を有効に利用することができる船舶を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る船舶を示す側面図である。
【
図3】舵機室における蓄電池の配置の一例を示す概略図である。
【
図4】舵機室における蓄電池の配置の一例を示す概略図である。
【
図5】船舶における各電気機器間の接続構造を示す模式図である。
【
図6】各通電モードにおける電気の流れを示す模式図である。
【
図7】各通電モードにおける電気の流れを示す模式図である。
【
図8】各通電モードにおける電気の流れを示す模式図である。
【
図9】各通電モードにおける電気の流れを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る船舶を示す側面図である。
図2は、
図1の船舶の船尾部分を示す拡大図である。
図1に示すように、本実施形態の船舶1は、荷を収容する収容部を有するタンカー等であり、船体2、推進軸系3及び舵4を備えている。なお、以降の説明において、船首側の方向を「前」と称し、船尾側の方向を「後」と称する場合がある。
【0019】
船体2は、船尾側に機関室6を有している。機関室6は、メインエンジン等の機器を配置するためのスペースである。メインエンジンは、推進軸系3のプロペラを駆動するものである。機関室6の船首側には、ポンプ室5が設けられている。船体2は、機関室6よりも船尾側に上から順に舵機室7、舵機室下スペース8、及び船尾構造9を有している。舵機室7は、舵4を操舵するための舵取機などを配置するためのスペースである。舵機室下スペース8は、舵機室7の下側に設けられるスペースである。船尾構造9は、舵機室下スペース8の下側に設けられ、推進軸系3の一部を構成する部分である。なお、ポンプ室5の船首側には、荷油槽、バラストタンクなどが設けられる。
【0020】
次に、
図2を参照して、船尾側の構造について更に詳細に説明する。
図2に示すように、舵機室下スペース8は、船体2の船尾側の後端部から、船首側へ向かって下方へ傾斜するように設けられる。従って、船尾構造9の後端部は、船体2の後端部よりも船首側に配置される。船尾構造9の後端部は、船尾側へ突出する形状を有しており、当該突出形状の先端部に推進軸系3のプロペラ11が設けられる。
【0021】
推進軸系3は、船舶1の推進力を発生する機構である。推進軸系3は、船尾構造9に対して設けられる。推進軸系3は、舵機室下スペース8の下方に配置され、船舶1の運転時に少なくとも水面よりも低い位置に配置される。推進軸系3は、プロペラ11と、回転軸12と、を備える。プロペラ11は、回転軸12の回転に伴って回転することで、後側へ向かって水流を発生させる。回転軸12は、プロペラ11から船首側へ向かって船尾構造9内を水平方向に延びる。回転軸12の船首側の端部は、機関室6内のメインエンジン21から回転力を付与される。
【0022】
舵4は、船舶1の方向転換を行うための機構である。舵4は、舵板13と、回転軸14と、を備える。舵板13は、舵機室下スペース8及び船尾構造9の船尾側に配置され、船舶1の運転時に少なくとも水面よりも低い位置に配置される。また、舵板13は、プロペラ11に対して船尾側で対向する位置に配置される。
【0023】
舵板13は、前後方向に広がった状態で、上下方向に延在している。舵板13は、上端部にて回転軸14に接続されている。回転軸14は、舵板13の上端部から上方へ向かって延びる。回転軸14は、舵機室下スペース8を貫通して船体2の内部まで延びる。回転軸14は、舵機室7まで延びており、当該舵機室7内に設けられた舵取機16と接続されている。舵取機16は、回転軸14を回転させることによって、当該回転軸14周りに舵板13を回転させて向きを変更することができる。
【0024】
機関室6には、メインエンジン21に加えて、主配電盤22、ディーゼル発電機23、軸発電機24、及び荷油ポンプ用モータ26が設けられている。主配電盤22は、船舶1の各電気機器に電力を分配するための機器である。主配電盤22は、船内で発電された電力を給電されると共に、電力を船内における適切な機器に分配する。なお、本実施形態では、ディーゼル発電機23、軸発電機24、または蓄電池30の何れからかの給電であるかを自動的、または手動にて切替可能である。ディーゼル発電機23は、燃料を用いて電力を発生するための機器である。ディーゼル発電機23は、発電した電力を主配電盤22へ供給する。
【0025】
軸発電機24は、プロペラ11の回転軸12の回転力を電力に変換する機器である。軸発電機24は、プロペラ11とメインエンジン21との間において、回転軸12に設けられる。軸発電機24は、メインエンジン21が回転軸12を回転させているときに、当該回転力の一部を電力に変換することによって発電を行う。軸発電機24は、発電した電力を主配電盤22へ供給する。また、軸発電機24は、主配電盤22から電力を供給される。軸発電機24は、電力が供給されることで、回転軸12を回転させるモータとして機能することもできる。荷油ポンプ用モータ26は、ポンプ室5内のポンプ27を駆動させるための駆動力を発生する機器である。
【0026】
ここで、船舶1は、船内で発電された電力を蓄電する蓄電池30を備えている。蓄電池30は、軸発電機24、及びディーゼル発電機23が発電した電力を主配電盤22を介して供給され、当該電力を蓄電する。また、蓄電池30は、船内で電力が必要なタイミングにて、放電を行うことで、主配電盤22を介して船内における必要な機器に電力を供給する。なお、蓄電池30と主配電盤22との間には、蓄電池30の充放電の管理を行う充放電盤31が設けられている。
【0027】
本実施形態では、蓄電池30は、舵機室7内に配置される。また、充放電盤31も、舵機室7内に配置される。舵機室7には、外部との通気部33が設けられている。通気部33は、舵機室7の天井、すなわち甲板に設けられた通気機によって構成される。通気部33は、ファンなどのように、舵機室7内からの排気を行う機構を備えている。なお、舵機室7には、吸気用の開口も設けられている。これにより、外気を通気部33は、舵機室7内の換気を行うことができる。通気部33は、舵取機16の設置空間を換気する設備として機能することができると同時に、蓄電池30の設置空間を換気する設備としても機能することができる。
【0028】
次に、
図3を参照して、舵機室7における蓄電池30の配置の具体例について説明する。
図3(a)は上方から見たときの舵機室7内の様子を示す概略図である。
図3(b)は右舷側から見たときの舵機室7内の様子を示す概略図である。
図3(a)に示すように、舵機室7は、船首側の前壁部7aと、船尾側の後壁部7bと、右舷側の側壁部7cと、左舷側の側壁部7dと、床部7eと、天井部7f(
図3(b)参照)と、を備える。なお、前壁部7aは、機関室6との隔壁部としても機能する。床部7eは、舵機室下スペース8との隔壁部としても機能する。天井部7fは、甲板としても機能する。舵機室7は、船首側へ向かうに従って、左右の幅が広くなるような構成を有している。従って、後壁部7bよりも前壁部7aの方が、左右の幅寸法が大きい。また、左右の側壁部7c,7dは、後壁部7bから前壁部7aへ向かうに従って、幅方向へ広がるような形状を有する。
【0029】
舵取機16は、舵4の直上に配置される機器である。そのため、舵取機16は、舵機室7のうち、船尾側に配置される。このように、大きなスペースを占める舵取機16が船尾側に寄った位置に配置されるため、舵機室7の船首側は、前後方向にスペースの余裕がある。さらに、舵機室7は、船首側の方が左右の幅が広いため、更にスペースの余裕がある。従って、蓄電池30及び充放電盤31は、舵取機16よりも船首側に配置される。ここでは、蓄電池30及び充放電盤31は、前後方向において、前壁部7aと舵取機16との間のスペースに配置される。また、蓄電池30は左右に長細い形状を有し、当該スペースに配置されている。充放電盤31は、蓄電池30と左右方向に隣り合う位置に配置される。蓄電池30及び充放電盤31に接続される通電ラインL1の電線は、前壁部7aを介して機関室6の主配電盤22へはい回される。蓄電池30及び充放電盤31が船首側に配置されているため、舵機室7内における通電ラインL1の電線の長さを短くすることができる。
【0030】
図3(b)に示すように、舵取機16、蓄電池30、及び充放電盤31は、床部7e上に設置される。舵取機16、蓄電池30、及び充放電盤31が配置されている空間は、天井部7fまで連続している。従って、舵取機16、蓄電池30、及び充放電盤31周辺の空気は、通気部33を介して換気される。
【0031】
また、
図4に示すような配置が採用されてもよい。
図4に示す例では、舵機室7は複数階(ここでは二階)に構成されている。このような構成は、舵機室7の天井部7fが高い場合に採用可能である。
図4(a)は上方から見たときの舵機室7の一階部分の様子を示す概略図である。
図4(b)は上方から見たときの舵機室7の二階部分の様子を示す概略図である。
図4(c)は右舷側から見たときの舵機室7内の様子を示す概略図である。
図4(c)に示すように、舵機室7は、床部7eと天井部7fとの間の空間が、二階床部7gで仕切られることによって、二階建ての空間として構成されている。二階床部7gは、二階部分の床部を構成すると共に、一階部分の天井部を構成する。
【0032】
図4(a)に示すように、舵機室7の一階部分には、舵取機16と、充放電盤31と、蓄電池30と、が配置されている。舵取機16及び充放電盤31の位置及び形状は、
図3に示すものと同様である。一方、蓄電池30は、複数のユニットに分割されて配置されている。一階部分では、舵機室7のうち、船首側の位置であって、左右の側壁部7c,7d寄りの位置に、一対の蓄電池30のユニットが配置されている。
図4(b)に示すように、二階部分では、複数の蓄電池30が全域にわたって並ぶように配置されている。二階部分では、船尾側の列、及び船首側の列をなすように蓄電池30のユニットが並べられている。なお、船首側の列は、船尾側の列よりも蓄電池30のユニットの数が多い。なお、蓄電池30の各階における配列態様は、
図4に示すものに限定されない。また、蓄電池30のユニットは、少なくともいずれかの階に配置されればよく、例えば、二階部分だけに蓄電池30のユニットが配置されていてもよい。
【0033】
通気部33からは、舵機室7の空間に延びるダクト36が設けられている。ダクト36は、そのまま下方へ延びて一階部分の空間で開口する開口部36aと、分岐して二階部分の空間で開口する開口部36bと、を有する。これにより、一階部分の空間は開口部36aを介して換気がなされ、二階部分の空間は開口部36bを介して換気がなされる。
【0034】
次に、蓄電池30を利用するための、主配電盤22による電気の配電態様の一例について、
図5~
図9を参照して説明する。
図5は、船舶1における各電気機器間の接続構造を示す模式図である。
図6~
図9は、各通電モードにおける電気の流れを示す模式図である。
図5に示すように、蓄電池30及び充放電盤31と主配電盤22とは、通電ラインL1を介して接続されている。ディーゼル発電機23と主配電盤22とは、通電ラインL2を介して接続されている。軸発電機24と主配電盤22とは、通電ラインL3を介して接続されている。荷油ポンプ用モータ26と主配電盤22とは、通電ラインL4を介して接続されている。船舶1のその他の機器29と主配電盤22とは、通電ラインL5を介して接続されている。なお、
図6~
図9では、各通電ラインのうち、電気が流れている通電ラインを実線で示し、電気が流れていない通電ラインを破線で示す。
【0035】
図6は、航海時の通電モードにおける電気の流れを示す模式図である。航海時は、船舶1の推進のために、メインエンジン21が回転軸12を介してプロペラ11を回転させている。このとき、軸発電機24は、回転軸12の回転力を電力に変換して発電を行う。軸発電機24は、通電ラインL3を介して主配電盤22へ電力を供給する。主配電盤22は、通電ラインL5を介してその他の機器29へ電力を供給する。また、主配電盤22は、通電ラインL1を介して蓄電池30へ電力を供給する。これにより、蓄電池30は、軸発電機24で発電された電力を蓄電する。
【0036】
図7は、荷役時の通電モードにおける電気の流れを示す模式図である。荷役時は、港湾で停船しているため、メインエンジン21は停止している。蓄電池30は、放電を行うことで、通電ラインL1を介して主配電盤22へ電力を供給する。主配電盤22は、通電ラインL4を介して荷油ポンプ用モータ26へ電力を供給する。これにより、荷油ポンプ27が作動して、荷役作業が行われる。主配電盤22は、通電ラインL5を介してその他の機器29へ電力を供給する。このとき、軸発電機24及びディーゼル発電機23は、発電を停止している。従って、港湾でのボイラや発電機の使用が控えられ、港湾で発生する煙を低減することができる。
【0037】
図8は、港湾での低速航海時の通電モードにおける電気の流れを示す模式図である。港湾では、メインエンジン21や発電機の使用は大気汚染低減の観点から控えることが好ましいため、メインエンジン21及びディーゼル発電機23は停止している。そのため、蓄電池30の電力を用いることで、船舶1の低速での推進がなされる。具体的に、蓄電池30は、放電を行うことで、通電ラインL1を介して主配電盤22へ電力を供給する。主配電盤22は、通電ラインL3を介して軸発電機24へ電力を供給する。これにより、軸発電機24が、モータとして作動して、回転軸12に回転力を付与する。従って、蓄電池30での電力で可能な範囲でプロペラ11が低速回転する。主配電盤22は、通電ラインL5を介してその他の機器29へ電力を供給する。上述のように、メインエンジン21及びディーゼル発電機23は停止している。従って、港湾でのボイラや発電機の使用が控えられ、港湾で発生する煙を低減することができる。
【0038】
図9は、軸発電機24の故障時や、蓄電池30の容量低下時の通電モードにおける電気の流れを示す模式図である。このとき、
図8のように、軸発電機24で発電を行うことができない。従って、ディーゼル発電機23が発電を行い、電力を通電ラインL2を介して主配電盤22へ電力を供給する。主配電盤22は、通電ラインL5を介してその他の機器29へ電力を供給する。
【0039】
次に、本実施形態に係る船舶1の作用・効果について説明する。
【0040】
船舶1は、電力を蓄電する蓄電池30を備えている。蓄電池30は、船舶1内の所定の動力、例えばプロペラ11を回転させるメインエンジン21の高効率な動力によって発電された電力を蓄電しておくことができる。また、蓄電池30は、各種機器の動作のために、適切なタイミングにて、蓄電しておいた電力を供給することができる。ここで、蓄電池30は、舵機室7(換気室)に配置されている。このように、蓄電池30を配置するための専用のバッテリー室を新たに追加で設けることを抑制し、船舶1において既存のスペースである舵機室7に蓄電池30を配置することで、船内の省スペース化を図ることができる。また、蓄電池30の配置場所には換気が求められるものに対し、舵機室7には既存の換気機構(ファンによる換気が可能な通気部33)が設けられている。従って、蓄電池30を舵機室7に配置して既存の換気機構を流用することで、設備の増加による船舶1の大型化や機器の増加を抑制することができる。以上より、大型化を抑制しつつ、蓄電池30を有効に利用することができる。
【0041】
蓄電池30は、舵取機16よりも船首側に配置されてよい。舵取機16は、船尾側に設けられた舵4の直上に配置される。従って、舵機室7内では、舵取機16に対する船尾側よりも船首側の方がスペースに余裕がある。このように、蓄電池30が、スペースに余裕がある場所に配置されることで、配置の自由度を向上することができる。
【0042】
舵機室7は複数階に構成され、蓄電池は、少なくともいずれかの階に配置されてよい。この場合、舵機室7の高さ方向の空間も有効に利用して蓄電池30を配置することが可能となる。
【0043】
蓄電池30は、推進軸系3のプロペラ11の回転軸12の回転によって発生した電力を蓄電可能であってよい。プロペラ11の回転軸12は、高効率なメインエンジン21の動力によって回転する。そのため、軸発電機24が高効率なメインエンジン21の動力の一部を電力に変換して回収し、蓄電池30が当該電力を蓄電しておくことができる。
【0044】
蓄電池30は、推進軸系3のプロペラ11の回転軸12を回転させる機器(軸発電機24)へ電力を供給可能であってよい。例えば港湾で船舶1を低速で推進する場合などに、メインエンジン21を停止して、蓄電池30の電力によってプロペラ11を回転することができる。このように、メインエンジン21を停止させておくことができるため、港湾などにおいて煙が発生することを抑制し、港湾での大気汚染が低減できる。
【0045】
蓄電池30は、荷役時において作動する機器(荷油ポンプ27)へ電力を供給可能であってよい。例えば、荷役時に作動する荷油ポンプ27が、ボイラの蒸気によるタービン駆動や、発電機の電力によるモータ駆動で作動する場合、荷役時にしか使用しないにも関わらず、駆動源となるボイラや発電機を大型化する必要が生じる。これに対し、荷役時に作動する荷油ポンプ27が、蓄電池30で蓄電された電力を用いることで、上述のような駆動源の大型化を抑制することができる。また、港湾などにおいて煙が発生することを抑制し、港湾での大気汚染が低減できる。
【0046】
船舶1はタンカーであってよい。これにより、タンカーの大型化を抑制し、タンカー内の蓄電池を有効に利用できる。
【0047】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0048】
例えば、
図3及び
図4に示される蓄電池30の舵機室7内での配置は一例に過ぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更してもよい。
【0049】
また、
図5~
図9に示す船舶1の電気系統の構成、及び通電態様は一例に過ぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更してもよい。
【0050】
また、上記実施形態においては、特に好適であるとして、船舶をタンカーとしているが、油だけでなく鉱石や石炭等の固形貨物(バルク)も積める兼用船、その他などに対しても適用可能である。
【0051】
上述の実施形態では、換気室として、舵機室が例示された。しかし、換気室は、少なくともファン機能がついている部屋であればよい。このような換気室は、舵機室の他、ファンなどの換気機構が設けられた機関室も該当する場合がある。従って、機関室に蓄電池を設けてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…船舶(タンカー)、3…推進軸系、4…舵、7…舵機室(換気室)、11…プロペラ、12…回転軸、16…舵取機、30…蓄電池。