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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138426
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】造作材
(51)【国際特許分類】
   E04F 19/00 20060101AFI20220915BHJP
【FI】
E04F19/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021038306
(22)【出願日】2021-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000213769
【氏名又は名称】朝日ウッドテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】林 嗣人
(72)【発明者】
【氏名】功刀 湧太
(57)【要約】
【課題】意匠性を損なわずに、基材を腐りにくくして、かつ、カビの発生による変色を防止できる、框に用いられる造作材を提供する。
【解決手段】框に用いられる造作材1であって、木質基材10と、木質基材の天面に設けられる天面化粧材11と、木質基材10の前面に設けられる前面化粧材12と、木質基材10の底面に設けられる防湿シート13と、防湿シート13の表面に設けられる木質シート14と、を備える。防湿シート13は、前面化粧材12の底面を覆うように、木質基材10の底面に設けられている。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
框に用いられる造作材であって、
木質基材と、
前記木質基材の天面に設けられる天面化粧材と、
前記木質基材の前面に設けられる前面化粧材と、
前記木質基材の底面に設けられる防湿シートと、
前記防湿シートの表面に設けられる木質シートと、
を備え、
前記防湿シートは、前記前面化粧材の底面を覆っている、
造作材。
【請求項2】
前記木質シートの端部には、前記木質基材の底面に対して傾斜する面取り部が形成されている、
請求項1に記載の造作材。
【請求項3】
前記面取り部は、前記前面化粧材の底面に前記防湿シートが残るように、前記木質シート及び前記防湿シートの端部に形成されている、
請求項2に記載の造作材。
【請求項4】
前記防湿シートは、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、又はアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合合成樹脂を成型したものである、
請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の造作材。
【請求項5】
前記木質シートは、突板、単板、挽き板、MDF又はHDFである、
請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の造作材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造作材に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建物では、段差のある部位に框が設置される。框とは、段差のある部位の高い方の部材の端部に設けられた化粧材のことである。例えば、玄関においては、玄関の床部(以下、「玄関床」という。)と廊下の床部(以下、「床」という。)との間に段差がある。その段差がある部分の高い方の端には、玄関框と呼ばれる造作材が取り付けられている。また、階段においては、階上の床部と一段下の踏板との間に段差がある。その段差がある部分の高い方の端には、上段框と呼ばれる造作材が取り付けられている。框には、集成木材からなる基材に、前面及び天面に化粧材が貼られているものがある。この基材は吸水性が高く、基材が吸水した湿気により化粧材にカビが発生し変色したり、腐ったりすることがある。特に施工時では、玄関床にはモルタルが塗布され、そのモルタル上に玄関框が設置される。このような場合、玄関框の基材がモルタルの水分を吸水し、化粧材にカビ等が発生し、玄関框の意匠性に問題が生じてしまう。
【0003】
特許文献1には、玄関框に最適な床部材が開示されている。特許文献1に記載の床部材は、木質基材の裏面に防水層を形成している。これにより、基材が床下の湿気を吸湿することを防止して、基材を腐りにくくして、かつ、カビの発生による変色を防止できるようにしてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭63-187664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、客を招き入れる玄関という限られたスペースでは、見栄えをよくすることが望まれる。このため、特許文献1に記載の床部材のように、天面と反対側の裏面(底面)に防水層を設けると、むき出しの防水層が視認されることで玄関の意匠性を損ねるおそれがある。特に、上段框の裏面は階下から上ってくる人から視認されやすい部位である。
【0006】
また、特許文献1に記載の床部材は、水分を含んだモルタルに直接接触する部分ではない後面に防湿層が設けられているが、後面を防湿する効果がほぼないにもかかわらず、加工工程及び材料が増えるのでコスト増となり、費用対効果が低くなってしまう。さらに、後面に処理を施すことで、製造工程で前面化粧面に傷が付くおそれがある。また、特許文献1では、具体的に、ウレタン樹脂塗料を塗布して形成した防水層が例示されているが、このような防水層には防湿効果が低く、製造時の塗膜厚又は塗布ムラで防湿性能にばらつきが発生するという問題がある。さらに、塗料は紫外線又は経年劣化で黄変するため、経年での意匠性の低下が懸念されるとともに、塗膜割れが発生すると防湿性能が低下するおそれがある、と言う問題もある。
【0007】
そこで、本発明の目的の一例は、意匠性を損なわずに、基材を腐りにくくして、かつ、カビの発生による変色を防止できる、框に用いられる造作材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一側面における造作材は、
框に用いられる造作材であって、
木質基材と、
前記木質基材の天面に設けられる天面化粧材と、
前記木質基材の前面に設けられる前面化粧材と、
前記木質基材の底面に設けられる防湿シートと、
前記防湿シートの表面に設けられる木質シートと、
を備え、
前記防湿シートは、前記前面化粧材の底面を覆っている、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、意匠性を損なわずに、基材を腐りにくくして、かつ、カビの発生による変色を防止できる、框に用いられる造作材を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、造作材を施工した状態を示す図である。
図2図2は、実施形態の造作材を示す図である。
図3図3は、防湿シートに面取り部を形成した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0012】
本実施形態の造作材は、例えば、框、より具体的には、玄関の上がり框、又は、階段の上段框などとして用いられる。以下では、造作材は、玄関の框に用いるものとして説明する。
【0013】
図1は、造作材1を施工した状態を示す図である。
【0014】
造作材1は、玄関100から室内の床101に上がるコーナー部分に設置される。玄関100は、タイル又はセメント等の仕上げ材で施工されている。玄関100から床101に上がる部分では、基礎102上に土台103が施工される。その土台103の上には、根太104が設けられ、その根太104に床部下地105及び床化粧材106が施工されている。
【0015】
造作材1は前記コーナー部分に施工される。基礎102の上には、木下地107が設けられる。また、基礎102の前面(玄関100側)には、モルタル108が設けられている。造作材1は、木下地107とモルタル108との上に載置され、ウレタン系接着剤により木下地107及び土台103に固定される。
【0016】
本実施形態の造作材1は、図1のように施工した場合において、モルタル108の水分を吸湿することによる、カビの発生、変色などを抑制することができる構成となっている。
【0017】
図2は、本実施形態の造作材を示す図である。図2では、造作材1の一部を拡大して表示している。
【0018】
造作材1は木質基材10を備えている。木質基材10は柱状である。木質基材10は、例えば、無垢材、集成材、合板、LVL(Laminated Veneer Lumber:単板積層材)、MDF(Medium Density Fiberboard:中密度繊維板)又はHDF(High Density Fiberboard:高密度繊維板)などの木質繊維板で形成されてもよいし、パーティクルボード、OSB(配向性ストランドボード)及びこれらの積層体などで形成されてもよい。
【0019】
以下の説明において、造作材1を施工した際に、施工したときの上面であって、床101の一部となる側の木質基材10の面は、天面という。また、天面と反対側の面であって、造作材1を施工した際に、モルタル108及び基礎102側となる面は、底面という。さらに、天面と底面とに隣接し、造作材1を施工した際に、玄関100側を向き、玄関100の床部と略直交する木質基材10の面は、前面という。
【0020】
木質基材10の天面には、天面化粧材11が設けられている。天面化粧材11は、造作材1を施工した際に、床101の一部を構成する。天面化粧材11は、例えば、0.1mm~5.0mm程度の厚さを有している。天面化粧材11の材質は特に限定されないが、例えば、突板又は挽板などの木質化粧、オレフィンシート又は塩化ビニルシートなどの樹脂シート、あるいは、絵柄を印刷した紙シートなどで形成される。
【0021】
木質基材10の前面には、前面化粧材12が貼られている。前面化粧材12は、例えば、0.1mm~5.0mm程度の厚さを有している。前面化粧材12の材質は特に限定されないが、例えば、突板又は挽板などの木質化粧、オレフィンシート又は塩化ビニルシートなどの樹脂シート、あるいは、絵柄を印刷した紙シートなどで形成される。図2の拡大部分で示すように、木質基材10の底面側の前面化粧材12の端面は、木質基材10の底面と略面一となっている。
【0022】
木質基材10の底面には防湿シート13が貼られている。木質基材10の底面と、その底面側となる前面化粧材12の端面とは、面一となっている。防湿シート13は、面一となった、木質基材10の底面、及び、前面化粧材12の端面を覆うように、貼られている。後述するが、防湿シート13は、造作材1をモルタル108上に載置した際に、木質基材10及び前面化粧材12がモルタル108から水分を吸湿することを防止する部材である。このため、防湿シート13は、防湿・耐水性を有する材料から形成される。防湿シート13は、その防湿・防水性能が、JIS Z0208に準拠して測定した透湿度が30g/(m・24h)以下、より好ましくは20g/(m・24h)以下、さらに好ましくは10g/(m・24h)以下であることが好ましい。透湿度の値が小さいほど水分移動による変色、腐朽又はカビの発生に対する効果が高くなるからである。
【0023】
防湿シート13としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合合成樹脂(ABS樹脂)をシート状又は板状に成型したものが挙げられる。なお、防湿シート13は、これらの樹脂を複数積層させて一体化したものであってもよいし、アルミ箔などの金属層(金属をシート状にしたもの)であってもよい。さらに、樹脂と紙とを積層したラミネート紙、又はポリサンド紙であってもよい。なお、防湿の観点からは、シート状物に限らず、樹脂塗料を塗布することも考えられるが、樹脂塗料では防湿効果が低く、製造時の塗膜厚又は塗布ムラで防湿性能にばらつきが発生するという問題がある。さらに、塗料は紫外線又は経年劣化で黄変するため、経年での意匠性の低下が懸念されるとともに、塗膜割れが発生すると防湿性能が低下するおそれがある、という問題がある。
【0024】
防湿シート13の厚みは、0.1mm~1.0mm程度であり、より好ましくは厚み0.1mm~0.5mmであり、さらに好ましくは0.1mm~0.3mmである。防湿シート13の接着方法は特に限定されないが、例えば、水系接着剤、樹脂系接着剤、ホットメルト接着剤、又は粘着剤などが用いられる。
【0025】
防湿シート13の表面には木質シート14が貼られている。木質シート14は、強度及び耐久性が確保される限り材料は特に限定されないが、例えば突板、単板、挽き板、MDF、HDFなどの繊維板が挙げられる。木質シート14の厚みは、材料費及び製造時の作業性を考慮すると薄い方が好ましいが特に限定されない。木質シート14の厚みは、0.1mm~5.0mmであり、より好ましくは0.1mm~3.0mm、さらに好ましくは0.1mm~1.0mmである。木質シート14の接着方法は特に限定されないが、例えば、水系接着剤、樹脂系接着剤、ホットメルト接着剤、又は粘着剤などが用いられる。
【0026】
防湿シート13及び木質シート14が貼られた造作材1をモルタル108上に載置した際に、モルタル108の水分が木質シート14へ吸湿される。しかしながら、防湿シート13が木質基材10の底面を覆っているため、モルタル108の水分が木質基材10へ浸透することが防止される。これにより、木質基材10から前面化粧材12へ水分が浸透することによる前面化粧材12でのカビ等の発生が防止されるようになっている。
【0027】
また、防湿シート13は、前面化粧材12の端面を覆っているため、モルタル108の直上に前面化粧材12が位置するように施工された場合であっても、モルタル108の水分が前面化粧材12へ直接浸透することが防止される。また、造作材1が施工された後に、モルタル108が施工される場合もある。この場合は、前面化粧材12の真下までモルタル108が施工されることが多く、モルタル108が施工された後にある程度乾燥が進んだ状態で造作材1が載置され施工される場合よりもモルタル108が水分を多く含んだ状態である。このため、防湿シート13が前面化粧材12の端面を覆っていることが前面化粧材に水分が直接浸透することに対して特に高い効果を奏する。これにより、前面化粧材12でのカビ等の発生が防止されるようになっている。つまり、防湿シート13は、モルタル108の水分が、木質基材10を介して前面化粧材12へ間接的に浸透すること、及び、前面化粧材12へ直接浸透することを防止している。
【0028】
また、防湿シート13の表面に木質シート14を設けることで、造作材1の底面側の意匠性を損なわないようにすることができる。さらに、木質シート14は防湿シート13の温度(特に着色、塗装工程での乾燥時の熱)による延び縮みを抑制する働きがあるため、防湿シート13が、木質基材10から剥がれ落ちることを防止することができる。
【0029】
また、木質シート14の端部において、木質基材10の底面に対して傾斜する面取り部14Aが形成されている。面取り部14Aを形成することで、製造時に発生するバリ又は毛羽立ちを除去でき、造作材1の施工後に、衣類などが引っ掛かることを防止でき、また、造作材の運搬時の角当てなどによる木質シート14のワレを防止することができる。
【0030】
面取り部14Aを形成する面取り加工は、平坦面のみで形成されるC面加工(45°)、糸面加工、45°以外の角度の面取り加工、又は、曲面を含むR面加工、平坦面と曲面を組み合わせた形状の面取り加工であってもよい。
【0031】
また、面取り部14Aは予め木質シート14に形成されていてもよいし、木質シート14を防湿シート13の表面に貼り付けられた際に形成されてもよい。また、図3に示すように、防湿シート13にも面取り部14Aが形成されていてもよい。図3は、防湿シート13に面取り部14Aを形成した図である。この場合、面取り部14Aは、前面化粧材12の端面に防湿シート13が残るように、木質シート14及び防湿シート13の端部に形成される。このため、防湿シート13に面取り部14Aを形成した場合であっても、モルタル108の水分が前面化粧材12へ直接浸透することを防止することができる。
【0032】
次に、造作材1の製造方法について説明する。
【0033】
まず、木質基材10の前面に、前面化粧材12を貼り付ける。木質基材10の底面側の前面化粧材12の端面は、木質基材10の底面と略面一とする。そして、貼り付けた前面化粧材12のバリ取りを行う。
【0034】
次に、木質基材10の底面に防湿シート13を貼り付ける。防湿シート13の接着方法は特に限定されないが、例えば、水系接着剤、樹脂系接着剤、ホットメルト接着剤、又は粘着剤などを用いて、木質基材10と防湿シート13とを接着する。このとき、防湿シート13は、木質基材10の底面、及び、その底面と面一となる前面化粧材12の端面を覆うように、貼り付ける。その後、防湿シート13のバリ取りを行う。
【0035】
続いて、防湿シート13の表面に木質シート14を貼り付ける。木質シート14の接着方法は特に限定されないが、例えば、水系接着剤、樹脂系接着剤、ホットメルト接着剤、又は粘着剤などを用いて、木質シート14と防湿シート13とを接着する。そして、木質シート14の面取り加工を行う。面取り加工は、刃物による加工であってもよいし、サンドペーパーによる加工であってもよい。なお、防湿シート13と、木質シート14とは予め一体化されていてもよい。
【0036】
木質基材10の天面に天面化粧材11を貼り付ける。そして、貼り付けた天面化粧材11のバリ取りを行う。また、天面化粧材11の面取り加工を行う。その後、造作材1の着色及び乾燥と、塗装及び乾燥を行なう。
【符号の説明】
【0037】
1 造作材
10 木質基材
11 天面化粧材
12 前面化粧材
13 防湿シート
14 木質シート
14A 面取り部
100 玄関
101 床
102 基礎
103 土台
104 根太
105 床部下地
106 床化粧材
107 木下地
108 モルタル

図1
図2
図3