IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大阪瓦斯株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-燃料製造方法及び燃料製造装置 図1
  • 特開-燃料製造方法及び燃料製造装置 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138453
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】燃料製造方法及び燃料製造装置
(51)【国際特許分類】
   C10L 5/44 20060101AFI20220915BHJP
   C10B 53/02 20060101ALI20220915BHJP
   C10B 53/08 20060101ALI20220915BHJP
   B09B 3/70 20220101ALI20220915BHJP
   B09B 3/00 20220101ALI20220915BHJP
【FI】
C10L5/44
C10B53/02
C10B53/08
B09B3/00 304Z
B09B3/00 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021038340
(22)【出願日】2021-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】服部 沙織
(72)【発明者】
【氏名】若林 努
【テーマコード(参考)】
4D004
4H012
4H015
【Fターム(参考)】
4D004AA12
4D004AC05
4D004BA03
4D004CA04
4D004CA13
4D004CA14
4D004CA22
4D004CA40
4D004CA42
4D004CC03
4D004DA03
4D004DA06
4D004DA07
4H012JA03
4H012KA04
4H015AA13
4H015AB01
4H015BA09
4H015BA11
4H015BA13
4H015BB04
4H015CA03
4H015CB01
(57)【要約】
【課題】植物性バイオマスを原料とする燃料を短時間で製造でき、ランニングコストの増加を抑えられる燃料製造方法を提供する。
【解決手段】原料を反応容器内に供給する供給工程と、反応容器内に供給された原料に対して、水と接触して加熱する処理を施す水熱処理工程と、水と接触して加熱する処理が施された原料を固形分と液体分とに分離する第一固液分離工程と、第一固液分離工程で分離された固形分を洗浄液で洗浄する洗浄工程と、洗浄された固形分から液体を分離する第二固液分離工程と、第二固液分離工程で分離された固形分を乾燥させる乾燥工程と、乾燥された固形分を造粒する造粒工程とを行い、水熱処理工程後に反応容器から排出される熱により、水熱処理工程で使用する水を加熱する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物性バイオマス由来の原料から燃料を製造する方法であって、
前記原料を反応容器内に供給する供給工程と、
前記反応容器内に供給された前記原料に対して、水と接触して加熱する処理を施す水熱処理工程と、
前記水と接触して加熱する処理が施された前記原料を固形分と液体分とに分離する第一固液分離工程と、
前記第一固液分離工程で分離された前記固形分を洗浄液で洗浄する洗浄工程と、
洗浄された前記固形分から液体を分離する第二固液分離工程と、
前記第二固液分離工程で分離された前記固形分を乾燥させる乾燥工程と、
乾燥された前記固形分を造粒する造粒工程とを、行い、
前記水熱処理工程後に前記反応容器から排出される熱により、前記水熱処理工程で使用する水を加熱する燃料製造方法。
【請求項2】
前記水熱処理工程後に前記反応容器から排出される熱により、前記供給工程前の前記原料を加熱する請求項1に記載の燃料製造方法。
【請求項3】
前記水熱処理工程は、反応温度170~240℃、圧力0.7~3.4MPa、保持時間1~120分で水熱処理を行い、
前記造粒工程は、乾燥後の前記固形分をバインダーレスにて造粒する請求項1又は2に記載の燃料製造方法。
【請求項4】
前記水熱処理工程で使用する前記水を、乾燥後又は造粒後の前記固形分をエネルギー源として加熱する請求項1~3のいずれか一項に記載の燃料製造方法。
【請求項5】
前記乾燥工程は、分離された前記固形分を天日干しにより乾燥させる工程である請求項1~4のいずれか一項に記載の燃料製造方法。
【請求項6】
前記供給工程前に、前記原料を破砕する破砕工程を行う請求項1~5のいずれか一項に記載の燃料製造方法。
【請求項7】
前記供給工程は、前記原料を昇圧しながら、前記反応容器内の圧力を維持するように、当該反応容器内に前記原料を圧入する工程である請求項1~6のいずれか一項に記載の燃料製造方法。
【請求項8】
前記水熱処理工程では、前記原料を前記反応容器内で連続的に移動させる請求項7に記載の燃料製造方法。
【請求項9】
植物性バイオマス由来の原料から燃料を製造する装置であって、
反応容器内に供給された前記原料に対して、水と接触して加熱する処理を施す水熱処理手段と、
前記水と接触して加熱する処理が施された前記原料を固形分と液体分とに分離する第一固液分離手段と、
前記第一固液分離手段で分離された前記固形分を洗浄液で洗浄する洗浄手段と、
洗浄された前記固形分から液体を分離する第二固液分離手段と、
前記第二固液分離手段で分離された前記固形分を乾燥させる乾燥手段と、
乾燥された前記固形分を造粒する造粒手段と、
前記水熱処理手段の前記反応容器から排出される熱により、前記水熱処理手段で使用する水を加熱する熱交換手段と、を備える燃料製造装置。
【請求項10】
前記原料を昇圧しながら、前記反応容器内に圧入する供給手段を備え、
前記水熱処理手段は、前記供給手段により前記原料が圧入される際に、前記反応容器内の圧力を維持可能に構成されている請求項9に記載の燃料製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物性バイオマス由来の原料から燃料を製造する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CO排出量削減の観点から、再生可能エネルギー源としてバイオマスの利用拡大が望まれている。燃料として利用可能なバイオマスには、森林系バイオマスや農業系バイオマス、回収廃棄物系バイオマスが挙げられるが、このようなバイオマスの中でも、その利用方法が確立されているものは一部に過ぎない。
【0003】
とりわけ、バイオマスを発電所で使用される固形燃料として利用する上では燃料性状を向上させることが重要である。例えば、固形燃料中における灰分の含有量が多いと、燃焼時に配管にスケールが付着するという問題が生じるため、バイオマス中に含まれる灰分を除去することが重要となる。
【0004】
燃料性状を向上させる技術としては、例えば、バイオマスを半炭化圧密燃料に加工する技術が知られている(特許文献1)。半炭化圧密燃料は、原料であるバイオマスに対して半炭化処理を施し、得られた半炭化物を加圧成形して製造されるものであり、体積当たりのエネルギー密度及び重量当たりのエネルギー収率が高く、保存性などに優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3837490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、半炭化処理は比較的時間を要する処理であるため、半炭化圧密燃料の製造に時間を要するという問題があり、バイオマスを原料とする燃料をより短時間で製造できる手法の開発が求められている。
【0007】
ここで、バイオマスを原料とする燃料を短時間で製造できる手法として、水熱処理を利用する手法がある。
【0008】
しかしながら、水熱処理を利用する場合、投入するエネルギーが多くなり、ランニングコストが増加し易いという問題がある。
【0009】
本発明は以上の実情に鑑みなされたものであり、植物性バイオマスを原料とする燃料を短時間で製造でき、ランニングコストの増加を抑えられる燃料製造方法及び燃料製造装置の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係る燃料製造方法の特徴構成は、
植物性バイオマス由来の原料から燃料を製造する方法であって、
前記原料を反応容器内に供給する供給工程と、
前記反応容器内に供給された前記原料に対して、水と接触して加熱する処理を施す水熱処理工程と、
前記水と接触して加熱する処理が施された前記原料を固形分と液体分とに分離する第一固液分離工程と、
前記第一固液分離工程で分離された前記固形分を洗浄液で洗浄する洗浄工程と、
洗浄された前記固形分から液体を分離する第二固液分離工程と、
前記第二固液分離工程で分離された前記固形分を乾燥させる乾燥工程と、
乾燥された前記固形分を造粒する造粒工程とを、行い、
前記水熱処理工程後に前記反応容器から排出される熱により、前記水熱処理工程で使用する水を加熱する点にある。
【0011】
また、上記目的を達成するための本発明に係る燃料製造装置の特徴構成は、
植物性バイオマス由来の原料から燃料を製造する装置であって、
反応容器内に供給された前記原料に対して、水と接触して加熱する処理を施す水熱処理手段と、
前記水と接触して加熱する処理が施された前記原料を固形分と液体分とに分離する第一固液分離手段と、
前記第一固液分離手段で分離された前記固形分を洗浄液で洗浄する洗浄手段と、
洗浄された前記固形分から液体を分離する第二固液分離手段と、
前記第二固液分離手段で分離された前記固形分を乾燥させる乾燥手段と、
乾燥された前記固形分を造粒する造粒手段と、
前記水熱処理手段の前記反応容器から排出される熱により、前記水熱処理手段で使用する水を加熱する熱交換手段と、を備える点にある。
【0012】
上記特徴構成によれば、水と接触して加熱する処理(水熱処理)の処理時間が半炭化処理と比較して短いため、植物性バイオマスを原料とする燃料を短時間で製造することができる。また、水熱処理において水と接触して原料を加熱するため、原料中からアルカリ金属成分が溶出し易く、燃料中の灰分の含有量を低減できる。
また、上記特徴構成によれば、水熱処理において必要となる水蒸気を水から発生させるために必要なエネルギーの一部を排熱によって賄うことができる。そのため、燃料の製造に要するエネルギーを低減でき、ランニングコストの増大を抑えられる。
【0013】
本発明に係る燃料製造方法の更なる特徴構成は、
前記水熱処理工程後に前記反応容器から排出される熱により、前記供給工程前の前記原料を加熱する点にある。
【0014】
上記特徴構成によれば、反応容器供給前の原料を排熱によって予熱し、反応容器供給後に原料を所定温度まで加熱するのに要するエネルギーを低減できる。そのため、燃料の製造に要するエネルギーを低減でき、ランニングコストの増大を抑えられる。
【0015】
本発明に係る燃料製造方法の更なる特徴構成は、
前記水熱処理工程は、反応温度170~240℃、圧力0.7~3.4MPa、保持時間1~120分で水熱処理を行い、
前記造粒工程は、乾燥後の前記固形分をバインダーレスにて造粒する点にある。
【0016】
本願発明者は、水熱処理工程にて、上記条件で水熱処理を行うことにより、乾燥後の固形分をバインダーレスにて造粒できることを見出した。即ち、上記特徴構成によれば、バインダー成分が含まれない燃料を製造でき、バインダー成分が含まれることによる燃料性状の悪化を防止できる。
【0017】
本発明に係る燃料製造方法の更なる特徴構成は、
前記水熱処理工程で使用する前記水を、乾燥後又は造粒後の前記固形分をエネルギー源として加熱する点にある。
【0018】
上記特徴構成によれば、水熱処理工程で使用する水蒸気の製造に必要なエネルギーを本製造方法により製造されるもので賄うことができる。
【0019】
本発明に係る燃料製造方法の更なる特徴構成は、
前記乾燥工程は、分離された前記固形分を天日干しにより乾燥させる工程である点にある。
【0020】
上記特徴構成によれば、乾燥機等を使用した場合に必要となるエネルギーを削減できる。
【0021】
本発明に係る燃料製造方法の更なる特徴構成は、
前記供給工程前に、前記原料を破砕する破砕工程を行う点にある。
【0022】
上記特徴構成によれば、原料が破砕されていることで、原料の嵩密度が増加し、単位時間当たりの処理量を増大させることができる。
【0023】
本発明に係る燃料製造方法の更なる特徴構成は、
前記供給工程は、前記原料を昇圧しながら、前記反応容器内の圧力を維持するように、当該反応容器内に前記原料を圧入する工程である点にある。
【0024】
また、本発明に係る燃料製造装置の更なる特徴構成は、
前記原料を昇圧しながら、前記反応容器内に圧入する供給手段を備え、
前記水熱処理手段は、前記供給手段により前記原料が圧入される際に、前記反応容器内の圧力を維持可能に構成されている点にある。
【0025】
水熱処理は反応容器の内部を高圧にして行うが、上記特徴構成によれば、反応容器内の圧力を大きく変動させることなく当該反応容器内に原料を供給することができる。したがって、復圧操作を行うことなく、連続して水熱処理を行うことが可能であり、効率よく燃料を製造できる。
【0026】
また、本発明に係る燃料製造方法の更なる特徴構成は、
前記水熱処理工程では、前記原料を前記反応容器内で連続的に移動させる点にある。
【0027】
上記特徴構成によれば、反応容器内を連続的に移動させながら、原料に対して水熱処理を施し、水熱処理後の原料を反応容器から排出することが可能となる。したがって、より効率よく燃料を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】第一実施形態に係る燃料製造装置の概略構成を示す図である。
図2】第二実施形態に係る燃料製造装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
〔第一実施形態〕
以下、図面を参照して本発明の第一実施形態に係る燃料製造方法及び燃料製造装置について説明する。
【0030】
〔第一実施形態に係る燃料製造装置〕
図1は、第一実施形態に係る燃料製造装置1の概略構成を示す図である。図1に示すように、燃料製造装置1は、植物性バイオマス由来の原料から燃料を製造する装置であって、反応容器内に供給された原料に対して、水と接触して加熱する処理(水熱処理)を施す水熱処理部3(水熱処理手段)と、水と接触して加熱する処理が施された原料を固形分と液体分とに分離する第一固液分離部4(第一固液分離手段)と、第一固液分離部4で分離された固形分を洗浄液で洗浄する洗浄部5(洗浄手段)と、洗浄された固形分から液体を分離する第二固液分離部6(第二固液分離手段)と、第二固液分離部6で分離された固形分を乾燥させる乾燥部7(乾燥手段)と、乾燥された固形分を造粒する造粒部8(造粒手段)と、水熱処理部3の反応容器から排出される熱により、水熱処理部3で使用する水を加熱する第一熱交換部H1(熱交換手段)とを備えている。
【0031】
植物性バイオマス由来の原料とは、間伐材などの森林系バイオマスやサトウキビなどの農業系バイオマス、廃木材などの回収廃棄物系バイオマス由来の原料全般を含む概念である。尚、本実施形態ではEFB(Empty Fruit Bunch、パーム椰子空果房)である。
【0032】
また、燃料製造装置1は、当該燃料製造装置1の乾燥部7で乾燥させた固形分をエネルギー源として、水熱処理部3で使用する水蒸気を発生させるボイラーBや、水熱処理部3に供給される前の原料が一時的に収容される受入部2を備えている。
【0033】
更に、燃料製造装置1は、水熱処理部3の反応容器から排出される熱により、供給工程前の原料を加熱する第二熱交換部H2を備える。
【0034】
受入部2は、受入れホッパなどから構成されている。この受入部2には、作業者による手作業や搬送装置による自動搬送によって外部から供給される原料が一時的に収容される。
【0035】
水熱処理部3は、耐熱性・耐圧性を有する反応容器などから構成されている。本実施形態において、水熱処理部3の反応容器は、受入部2に収容された原料がコンベヤなどから構成される搬送機構(図示せず)によって供給された後、ボイラーBで発生した高温の水蒸気が供給され、内部が高温(例えば220℃)且つ高圧(例えば2.3MPa)の状態に維持される。これにより、原料に水熱処理が施される。
【0036】
第一固液分離部4は、公知の固液分離手法により固形分と液体分とを分離可能に構成されており、本実施形態では脱水機で構成される。第一固液分離部4によれば、水熱処理後のスラリー状の原料が供給され、当該原料が固形分と液体分とに分離される。尚、第一固液分離部4で分離された液体分は、タンクなどから構成される第一回収部9aに貯留される。
【0037】
本実施形態における洗浄部5は、洗浄液として水を用いる洗浄機で構成されている。洗浄部5によれば、第一固液分離部4で分離された固形分が搬送され、当該搬送された固形分が水で洗浄される。洗浄部5で発生した廃液は、第二回収部9bに貯留される。
【0038】
第二固液分離部6は、上記第一固液分離部4と同様に、固形分と液体分とを分離可能に構成され、本実施形態では脱水機で構成される。第二固液分離部6によれば、洗浄部5で洗浄された固形分が搬送され、当該搬送された固形分から洗浄液としての水などの液体が分離される。尚、第二固液分離部6で分離された液体分についても、第三回収部9cに貯留される。
【0039】
本実施形態において、乾燥部7は、対象物を所謂天日干しにより乾燥させるように構成される。乾燥部7によれば、第二固液分離部6で液体が分離された固形分が搬送され、当該搬送された固形分が乾燥される。
【0040】
本実施形態において、造粒部8は、乾燥部7で乾燥された固形分をバインダーレスにて造粒可能に構成されており、具体的には所謂ペレット成形機で構成される。造粒部8によれば、乾燥部7で乾燥された固形分が搬送され、当該搬送された固形分がバインダーレスにてペレット状に成形される。
【0041】
第一熱交換部H1は、水熱処理部3から第一固液分離部4へと原料が搬送される搬送路に介装された二重管式熱交換器で構成されており、内管内を水熱処理部3から排出されたスラリー状の原料が流通し、外管内をボイラーBに供給される水が流通する。つまり、第一熱交換部H1では、水熱処理部3の反応容器から排出される処理済み原料と、ボイラーBに供給される水との間で熱交換が行われる。この第一熱交換部H1によれば、水熱処理部3から排出された高温の原料の持つ熱によって水が予熱される。
【0042】
第二熱交換部H2は、内管内を水熱処理部3から排出されたスラリー状の原料が流通し、外管内を熱媒体としての水が流通する二重管式熱交換器と、当該二重管式熱交換器の外管内を流通する水が受入部2から水熱処理部3へと搬送される原料に接触して当該原料が予熱される予熱部とから構成されている。つまり、第二熱交換部H2では、水熱処理部3の反応容器から排出される処理済み原料と、反応容器に供給される前の原料との間で熱交換が行われる。この第二熱交換部H2によれば、水熱処理部3から排出された高温の原料の持つ熱によって熱媒体としての水が加熱され、この加熱された水が原料と接触することで、当該原料が予熱される。
【0043】
このように、第一熱交換部H1及び第二熱交換部H2を備えていることにより、ボイラーBで水から水蒸気を発生させるために必要なエネルギーの一部及び原料を水熱処理に必要な温度まで上昇させるために必要なエネルギーの一部を排熱により賄うことができる。これにより、これら2つの熱交換部H1,H2の双方を備えていない場合を基準とした場合と比較して、23.1%のエネルギーを削減できる。
【0044】
〔第一実施形態に係る燃料製造方法〕
本実施形態に係る燃料製造方法は、供給工程、水熱処理工程、第一固液分離工程、洗浄工程、第二固液分離工程、乾燥工程及び造粒工程とを順に行い、所謂バッチ式にて燃料を製造する方法である。また、本実施形態では、供給工程の前に、受入部2に植物性バイオマス由来の原料を収容する受入工程を行う。
【0045】
供給工程は、原料を反応容器内に供給する工程である。本実施形態において、供給工程では、受入部2から原料を搬出し、搬出した原料を搬送路を通して水熱処理部3の反応容器内に供給する。ここで、本実施形態においては、受入部2内の原料が第二熱交換部H2を経由して反応容器へと供給される。そのため、反応容器に供給される原料は、第二熱交換部H2において、後述する水熱処理工程後に反応容器から排出される高温の原料により加熱された水によって予熱された状態になる(言い換えれば、反応容器から排出される熱により、供給工程前の原料が加熱された状態になる)。具体的に、本実施形態では、常温(25℃)の原料を、反応容器から排出される100℃程度の原料の持つ熱を利用して80℃まで予熱する。このように、反応容器に供給される前の原料を予熱することで、反応容器供給後に原料を所定温度まで加熱するのに要するエネルギーを低減できる。
【0046】
水熱処理工程は、反応容器内に供給された原料に対して、水と接触して加熱する処理(水熱処理)を施す工程である。具体的に、本実施形態における水熱処理工程では、供給工程後、原料が供給された反応容器内に、ボイラーBで発生させた高温の水蒸気(例えば230℃程度)を供給し、反応容器内を所定温度及び所定圧力に維持し、当該反応容器内に原料を所定時間(保持時間)置くことで水熱処理し、その後、反応容器からスラリー状の原料を排出する。尚、反応容器内の温度としては、170~240℃が好ましく、180~230℃がより好ましい。また、反応容器内の圧力は、0.7~3.4MPaが好ましく、1.0~2.8MPaがより好ましい。また、保持時間は、1~120分が好ましく、現実的にはランニングコストの観点から1~60分がより好ましい。
【0047】
ここで、本実施形態においては、水が第一熱交換部H1を経由してボイラーBへと供給されて、当該水を加熱して高温の水蒸気を発生させる。つまり、水熱処理工程で使用する水蒸気の基となる水は、第一熱交換部H1において、水熱処理工程後に反応容器から排出される高温の原料により予熱される(言い換えれば、反応容器から排出される熱により、水熱処理工程で使用する水蒸気となる水が加熱される)。具体的に、本実施形態では、常温(25℃)の水を、反応容器から排出される100℃程度の原料によって80℃まで予熱する。このように、水熱処理工程で使用する水蒸気の基となる水を予熱することで、ボイラーBで水蒸気を発生させる際に必要となるエネルギーを低減できる。更に、本実施形態においては、後述する乾燥工程で得られる乾燥させた固形分をボイラーBのエネルギー源として使用するため、本製造方法により製造される燃料で、水熱処理工程で使用する水蒸気の製造に必要なエネルギーを賄うことができるようになっている。
【0048】
また、本実施形態においては、反応容器内へ原料を供給した後、原料投入口を閉じて反応容器を密閉し、所定時間水熱処理を実施した後、原料排出口を開いて原料を排出するとともに、原料投入口を開いて原料を再度投入して反応容器を密閉してから水熱処理を開始する。
【0049】
第一固液分離工程は、水熱処理が施された原料を固形分と液体分とに分離する工程である。本実施形態における第一固液分離工程では、水熱処理工程後、反応容器から排出されたスラリー状の原料を、第一熱交換部H1で水により冷却し(即ち、水は原料により加熱され)、第一固液分離部4に供給する。そして、第一固液分離部4において、スラリー状の原料を固形分と液体分とに分離し、固形分を第一固液分離部4から排出する。また、液体分は、第一回収部9aに貯留する。
【0050】
洗浄工程は、第一固液分離工程で分離された固形分を洗浄液で洗浄する工程である。本実施形態の洗浄工程では、分離された固形分を洗浄部5に供給する。そして、洗浄部5において、洗浄液として水を用いて固形分を洗浄し、洗浄後の固形分を洗浄部5から排出する。尚、洗浄により発生する廃液は、第二回収部9bに貯留する。
【0051】
第二固液分離工程は、洗浄された固形分から液体を分離する工程である。本実施形態における第二固液分離工程では、洗浄された固形分を第二固液分離部6に供給する。そして、第二固液分離部6において、固形分から水などの液体を分離し、当該固形分を第二固液分離部6から排出する。尚、分離した液体は、第三回収部9cに貯留する。
【0052】
乾燥工程は、第二固液分離工程で分離された固形分を乾燥させる工程である。本実施形態では、分離された固形分を乾燥部7に供給する。そして、乾燥部7において、固形分を天日干しにより乾燥させる。このように、分離された固形分を天日干しにより乾燥させることで、乾燥機等を使用した場合に必要となるエネルギーを削減できる。
【0053】
造粒工程は、乾燥された固形分を造粒する工程である。本実施形態の造粒工程では、天日干しにより乾燥させた固形分を造粒部8としてのペレット成形機に供給し、当該ペレット成形機によってペレット状に成形する。
【0054】
ここで、本願発明者は、水熱処理を上記条件で行うことにより、バインダーレスにて造粒できることを見出した。そこで、本実施形態の造粒工程では、乾燥させた固形分をバインダーレスにてペレット状に成形する。このように、バインダーレスにて造粒を行うことで、バインダー成分によって燃料性状が悪化するという問題が生じない。
【0055】
以上のように、第一実施形態に係る燃料製造装置及び燃料製造方法によれば、植物性バイオマス由来の原料に比較的短時間での処理が可能な水熱処理を施して燃料を製造するため、半炭化処理を行う場合と比較して、燃料を短時間で製造できる。また、水から水蒸気を発生させるために必要なエネルギーの一部を排熱によって賄うことができる。そのため、燃料の製造に要するエネルギーを低減でき、ランニングコストの増大を抑えられる。
【0056】
(実験例)
以下、実験例を示す。
木質バイオマス由来の原料に対して、処理温度及び保持時間を変えて水熱処理を施した後、乾燥重量ベースに対し、10倍重量の水で洗浄して固形分を得て、この固形分について、灰分としてのNa及びKの含有量、低位発熱量、嵩密度、回収率を測定した。表1には、実験例1~5の水熱処理条件、並びに処理前の原料及び実験例1~5で得られた固形分のNa及びKの含有量、低位発熱量、嵩密度、回収率をまとめた。尚、「d.b.」とは、乾燥重量ベースであることを意味する。また、表1中の回収率とは、処理前の原料の乾燥重量に対する水熱処理後に得られた固形分の乾燥重量の割合である。
【0057】
【表1】
【0058】
水熱処理を施すことで、特に実験例2では嵩密度が170kg-d.b./mへと大幅に増加し、処理温度を実験例1よりも低くした場合(実験例4及び5)や保持時間を短くした場合(実験例3)でも、嵩密度が大幅に増加している。このことから、水熱処理を施すことにより、嵩密度が増加し、製造した固形燃料の輸送効率が向上することがわかる。
【0059】
また、低位発熱量についても、実験例1~5のいずれもが処理前の原料よりも大幅に増加している。このことから、水熱処理を施すことにより、低位発熱量も増加することがわかる。
【0060】
更に、灰分としてのNa及びKの含有量については、実験例1~5のいずれもが処理前の原料よりも大幅に減少しており、Na及びKの総量が2000mg/kg-d.b.以下になっている。このことから、水熱処理を施すことにより、灰分の含有量が大きく減少し、2000mg/kg-d.b.以下まで下げられることがわかる。
【0061】
また、回収率については、実験例1~5のいずれも50%を超えており、原料から比較的効率よく固形分を得られている。
【0062】
〔第二実施形態〕
以下、図面を参照して本発明の第二実施形態に係る燃料製造方法及び燃料製造装置について説明する。
【0063】
〔第二実施形態に係る燃料製造装置〕
まず、第二実施形態に係る燃料製造装置10について説明する。図2は、第二実施形態に係る燃料製造装置10の概略構成を示す図である。第二実施形態に係る燃料製造装置10は、主として、水熱処理を行う反応容器内の圧力を大きく変動させることなく、反応容器内に原料を供給して水熱処理を行うことが可能な構成を備える点が第一実施形態と異なっている。以下、第二実施形態に係る燃料製造装置10について説明するが、第一実施形態に係る燃料製造装置1と同様の構成については説明を省略する。
【0064】
図2に示すように、第二実施形態に係る燃料製造装置10は、受入部2から供給される原料を破砕する破砕部11と、原料を昇圧しながら反応容器内に圧入する供給部12(供給手段)とを備える。また、第二実施形態に係る燃料製造装置10は、供給部12により原料が圧入される際に、反応容器内を圧力の維持を可能にする構成として、ゲートバルブG1,G2を備えている。
【0065】
本実施形態において、破砕部11は、二軸せん断式破砕機で構成されており、原料を数センチから数10センチ程度のサイズに破砕する。原料を破砕することによって、原料の嵩密度が増加し、単位時間当たりの処理量を増大させることができ、また、水熱処理部3への連続的な原料供給が可能となる。
【0066】
本実施形態の供給部12は、水熱処理中の反応容器内の圧力(例えば、2.3MPa)以上の圧力で原料を吐出可能な油圧式のピストンポンプで構成されており、破砕部11で破砕された原料を昇圧しながらゲートバルブG1を通して反応容器内に原料を圧入する。
【0067】
また、本実施形態に係る燃料製造装置10は、水熱処理部3の反応容器が横型の反応容器で構成されており、当該反応容器内にスクリューフィーダなどが配設されている。また、反応容器の原料投入口側及び原料排出口側に、ゲートバルブG1,G2が設けられている。そして、当該燃料製造装置10では、破砕部11で破砕された原料を、供給部12から水熱処理部3の反応容器内に供給し、原料投入口側から原料排出口側に連続的に移動させて原料排出口から排出する。
【0068】
したがって、本実施形態に係る燃料製造装置10では、水熱処理中の高圧の反応容器内に、当該反応容器内の圧力を大きく変動させることなく原料を供給し、反応容器内を搬送中の原料に対して水熱処理を施し、反応容器から排出できる。
【0069】
また、本実施形態において、第二熱交換部H2の予熱部は、二重管式熱交換器の外管内を流通する水が破砕後の原料に接触して当該燃料を予熱するように構成されている。即ち、本実施形態における第二熱交換部H2によれば、水熱処理部3から排出された高温の原料の持つ熱によって破砕後の原料が予熱される。
【0070】
〔第二実施形態に係る燃料製造方法〕
次に、第二実施形態に係る燃料製造方法について説明する。第二実施形態に係る燃料製造方法は、主として、水熱処理を行う反応容器内の圧力を大きく変動させることなく、連続して水熱処理を行うことが可能である点が第一実施形態に係る燃料製造方法と異なっている。尚、以下の説明において、第一実施形態に係る燃料製造方法と同様の工程については詳細な説明を省略する。
【0071】
第二実施形態に係る燃料製造方法は、受入工程、供給工程、水熱処理工程、第一固液分離工程、洗浄工程、第二固液分離工程、乾燥工程及び造粒工程に加え、受入工程後、供給工程前に、原料を破砕する破砕工程を行って燃料を製造する方法である。
【0072】
本実施形態の破砕工程では、受入部2から原料を搬出し、搬出した原料を適宜搬送機構によって破砕部11に供給して、当該破砕部11において、原料を所定のサイズとなるように破砕する。
【0073】
また、本実施形態の供給工程は、原料を昇圧しながら反応容器内に圧入する工程である。具体的には、破砕部11で破砕し、第二熱交換部H2において予熱した原料を、油圧式シリンダポンプによって反応容器内の圧力よりも吐出圧力が高くなるように昇圧しながらゲートバルブG1を通して反応容器内へ圧入する。
【0074】
また、本実施形態では、水熱処理部3の反応容器内への水蒸気の供給を制御することで、当該反応容器内の温度及び圧力を所定の範囲内に維持しており、水熱処理工程では、この温度及び圧力を所定範囲内に維持した反応容器内へ、当該反応容器内の圧力を大きく変動させることなく原料が圧入され、当該反応容器内を移動中の原料に対して水熱処理を施す。そして、スラリー状の原料を反応容器からゲートバルブG2を通して排出する。尚、水熱処理工程での反応容器内の温度及び圧力の好ましい範囲は、第一実施形態と同じである。また、原料投入口から原料排出口に到達するまでの時間が水熱処理に必要な保持時間と同じになる。そのため、反応容器内での原料の移動速度は、原料投入口から原料排出口に到達するまでの時間が1~120分となる速度であることが好ましく、1~60分となる速度であることがより好ましい。
【0075】
以上のように、第二実施形態に係る燃料製造装置及び燃料製造方法によれば、植物性バイオマス由来の原料に比較的短時間での処理が可能な水熱処理を施して燃料を製造するため、半炭化処理を行う場合と比較して、燃料を短時間で製造できる。また、水から水蒸気を発生させるために必要なエネルギーを排熱によって賄うことができる。そのため、燃料の製造に要するエネルギーを低減でき、ランニングコストの増大を抑えられる。更に、水熱処理を行う反応容器内の圧力を大きく変動させることなく、当該反応容器内に原料を供給できるため、復圧操作を行うことなく、連続して水熱処理を行うことが可能であり、効率よく燃料を製造できる。
【0076】
〔別実施形態〕
〔1〕第一実施形態及び第二実施形態では、第一熱交換部H1及び第二熱交換部H2を備える態様としたが、これに限られるものではない。例えば、第一熱交換部H1のみを備える態様であってもよい。尚、第一熱交換部H1及び第二熱交換部H2の双方を備えていない態様を基準とした場合、第一熱交換部H1のみを備える態様でも、8.5%のエネルギーを削減できる。
【0077】
〔2〕第一実施形態及び第二実施形態では、バインダーレスにて造粒する態様としたが、バインダーを用いて造粒する態様であってもよい。
【0078】
〔3〕第二実施形態では、供給工程前に原料を破砕する破砕工程を行う態様としたが、破砕工程を行わない態様であってもよい。また、第一実施形態では、破砕工程を行わない態様としたが、破砕工程を行う態様であってもよい。
【0079】
〔4〕第一実施形態及び第二実施形態では、ボイラーBの燃料として、乾燥させた固形分を使用する態様としたが、これに限られるものではなく、造粒後のペレット状の燃料を使用してもよい。
【0080】
〔5〕第一実施形態及び第二実施形態では、洗浄液として水を用いる態様としたが、これに限られるものではない。
【0081】
〔6〕第一実施形態及び第二実施形態では、分離後の固形分を天日干しにより乾燥させる態様としたが、これに限られるものではなく、他の手段によって乾燥させる態様であってもよい。
【0082】
〔7〕第二実施形態では、反応容器内にスクリューフィーダなどを配設し、原料投入口側から原料排出口側に連続的に原料を移動させる態様としたが、これに限られるものではない。
【0083】
上記実施形態(別実施形態を含む)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、植物性バイオマス由来の原料から燃料を製造する方法及び装置に利用できる。
【符号の説明】
【0085】
1,10:燃料製造装置
3 :水熱処理部(水熱処理手段)
4 :第一固液分離部(第一固液分離手段)
5 :洗浄部(洗浄手段)
6 :第二固液分離部(第二固液分離手段)
7 :乾燥部(乾燥手段)
8 :造粒部(造粒手段)
12 :供給部(供給手段)
H1 :第一熱交換部(熱交換手段)
図1
図2