(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138497
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】内視鏡用ハンガー及び内視鏡保管庫
(51)【国際特許分類】
A61B 1/00 20060101AFI20220915BHJP
G02B 23/24 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
A61B1/00 653
G02B23/24 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021038413
(22)【出願日】2021-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】392033842
【氏名又は名称】タイホー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】椎名 敬一
【テーマコード(参考)】
2H040
4C161
【Fターム(参考)】
2H040EA02
4C161AA00
4C161BB00
4C161CC00
4C161GG13
(57)【要約】
【課題】感染対策、医療器具の誤使用対策が求められている医療現場の要請にこたえることができる内視鏡用のハンガーを開発すること。
【解決手段】板状体製であって、軸部、フック部、取付部、プレート部を備えたJ型の内視鏡用のハンガーであって、
1枚の折板製であって、軸部の上部に取付部が設けられており、軸部の側部にプレート部が設けられており、軸部の下部にフック部が設けられており、
フック部は、板状体を湾曲状であって、軸部の一方の側部側が高く、反対側が低くなるように傾斜している傾斜底部を有することを特徴とする内視鏡用のハンガー。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状体製であって、軸部、フック部、取付部、プレート部を備えたJ型の内視鏡用のハンガーであって、
1枚の折板製であって、軸部の上部に取付部が設けられており、軸部の側部にプレート部が設けられており、軸部の下部にフック部が設けられており、
フック部は、板状体を湾曲状であって、軸部の一方の側部側が高く、反対側が低くなるように傾斜している傾斜底部を有することを特徴とする内視鏡用のハンガー。
【請求項2】
軸部とプレート部は、直角~鈍角の折角度を有することを特徴とする請求項1記載の内視鏡用のハンガー。
【請求項3】
一枚の折板製であることを特徴とする請求項1又は2記載の内視鏡用のハンガー。
【請求項4】
板状体は、金属製であり、全体が樹脂で一体に被覆されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の内視鏡用のハンガー。
【請求項5】
取付部は、軸部の上部に設けられた折り曲げ形成された水平取付部であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の内視鏡用のハンガー。
【請求項6】
取付部は、軸部の側部から上方に延設された吊り下げ形の取付部であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の内視鏡用のハンガー。
【請求項7】
取付部は、プレート部が設けられている側部と反対側であって、軸部上部の側部に延長された腕部と該腕部の先端側に接合部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の内視鏡用のハンガー。
【請求項8】
前面に開閉部を有し、内視鏡用のハンガーのフック部を内視鏡の先端が底部に接触しない高さに設置してある内視鏡保管庫であって、
請求項5に記載された内視鏡用のハンガーが天井部に取り付けられている、
あるいは、請求項6に記載された内視鏡用のハンガーが、左右方向に設けた係止棒に吊り下げて取り付けられている、
又は、請求項7に記載された内視鏡用のハンガーが、奥側の壁面側に取り付けられている、
ことを特徴とする内視鏡保管庫。
【請求項9】
請求項1~7のいずれかに記載された内視鏡用のハンガーは、フック部が内視鏡保管庫の開閉部に対して斜めに取り付けられていることを特徴とする請求項8記載の内視鏡保管庫。
【請求項10】
請求項1~7のいずれかに記載された内視鏡用のハンガーが、取り外し自在に取り付けられていることを特徴とする請求項8又は9に記載された内視鏡保管庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡の保管技術に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡は繰り返して使用される機器である。再使用に伴う感染のおそれがあるため、消毒や保管が大切である。
日本消化器内視鏡技師会安全管理委員会から内視鏡の洗浄・消毒に関するガイドライン(第2版、2004年)が示されている。このガイドラインには、内視鏡を介した医療関連感染を防ぐための基本的な内容、感染対策の原則、内視鏡の構造、効果的な洗浄・消毒の方法と使用薬剤、職業安全などが体系的に記載されている。内視鏡洗浄後の消毒方法として、2%グルタラール10分間、0.55%フタラール5分間、0.3%過酢酸5分間の消毒等が紹介されている。消毒後の保管について次のように記載されている。内視鏡のチャンネル内に水分が残っていると保管中に細菌が増加するので、細菌の増加を防ぐために乾燥させる。そのため内視鏡は、送気・送水ボタン、吸引ボタン、鉗子栓などを装着せずにハンガーに掛けて保管する。
【0003】
本出願人は、衛生的に内視鏡を保管する技術に関し、いくつかの提案をしている。
例えば、クリーンにしたエア換気を行う内視鏡保管庫を特許文献1(特許第5476512号公報)に提案した。さらに、クリーン性を保つ内視鏡の保管に関する技術の開発を進めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、感染対策、医療器具の誤使用対策が求められている医療現場の要請にこたえることができる内視鏡用のハンガーを開発することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、次の事項を要旨とする。
1.板状体製であって、軸部、フック部、取付部、プレート部を備えたJ型の内視鏡用のハンガーであって、
1枚の折板製であって、軸部の上部に取付部が設けられており、軸部の側部にプレート部が設けられており、軸部の下部にフック部が設けられており、
フック部は、板状体を湾曲状であって、軸部の一方の側部側が高く、反対側が低くなるように傾斜している傾斜底部を有することを特徴とする内視鏡用のハンガー。
2.軸部とプレート部は、直角~鈍角の折角度を有することを特徴とする1.記載の内視鏡用のハンガー。
3.一枚の折板製であることを特徴とする1.又は2.記載の内視鏡用のハンガー。
4.板状体は、金属製であり、全体が樹脂で一体に被覆されていることを特徴とする1.~3.のいずれかに記載の内視鏡用のハンガー。
5.取付部は、軸部の上部に設けられた折り曲げ形成された水平取付部であることを特徴とする1.~4.のいずれかに記載の内視鏡用のハンガー。
6.取付部は、軸部の側部から上方に延設された吊り下げ形の取付部であることを特徴とする1.~4.のいずれかに記載の内視鏡用のハンガー。
7.取付部は、プレート部が設けられている側部と反対側であって、軸部上部の側部に延長された腕部と該腕部の先端側に接合部が設けられていることを特徴とする1.又は2.記載の内視鏡用のハンガー。
8.前面に開閉部を有し、内視鏡用のハンガーのフック部を内視鏡の先端が底部に接触しない高さに設置してある内視鏡保管庫であって、
5.に記載された内視鏡用のハンガーが天井部に取り付けられている、
あるいは、6.に記載された内視鏡用のハンガーが、左右方向に設けた係止棒に吊り下げて取り付けられている、
又は、7.に記載された内視鏡用のハンガーが、奥側の壁面側に取り付けられている、
ことを特徴とする内視鏡保管庫。
9.1.~7.のいずれかに記載された内視鏡用のハンガーは、フック部が内視鏡保管庫の開閉部に対して斜めに取り付けられていることを特徴とする8.記載の内視鏡保管庫。
10.1.~7.のいずれかに記載された内視鏡用のハンガーが、取り外し自在に取り付けられていることを特徴とする8.又は9.に記載された内視鏡保管庫。
【発明の効果】
【0007】
1.板状体を折り曲げ形成してハンガーを形成したので全体を消毒でき、細菌等が増殖できる隙間が無く衛生的なハンガーを提供できる。例えば、複数の部品を組み立てるハンガーでは、部品間に生ずる隙間などに細菌等が侵入して繁殖、残存しやすく、消毒が不十分になるリスクがあるが、本発明の内視鏡用のハンガーは全体が一様なので、消毒漏れの恐れは少ない。特に、金属製の板を型どりして、折り曲げ加工したハンガーは、消毒ができないような部品間の狭い隙間をなくすことができる。金属板などを折り曲げ加工して形成された内視鏡用のハンガーは、リブ機能により、曲げ強度が向上するので、本発明の内視鏡用ハンガーは、薄い板でも十分に内視鏡を係止することができる。特に、軸部に対して、外折りとなるプレート部、軸部に対して内側に折り返されるフック部の折り曲げ関係は、この内視鏡用のハンガーの強度を向上する。
2.折り曲げ加工した幅を持つ板状体で形成されたハンガーは、しっかりと取り付けることができ、高強度であり、J型の先端フック部に内視鏡のコネクタ側に分岐部を係止するタイプであるので、掛外し操作が容易である。軸部に対してプレートを折り曲げる角度を直角~鈍角にすると内視鏡の着脱操作性及びプレートの視認性が向上する。
3.そして、面状に傾斜しているフック部の傾斜底部が内視鏡のコネクタ側の分岐部を安定して支持することができるので、内視鏡の重さを無理のない姿勢で受け止めることができる。
4.プレート部を設けたので、内視鏡の種類や整理符号を表示でき、内視鏡管理が容易になる。フック部を保管庫の開閉部に対して斜めに向くように取り付けた場合、プレート部が開閉部に正対するような角度で軸部とプレート部を折り曲げてあると、プレートが見やすくなり、管理が容易である。
5.全体をナイロンなどの樹脂で被覆してあるので、アルコールなどを使用した消毒に対する耐性が強く、内視鏡と同じ消毒剤を使うことができる。金属板を折り曲げてできるプレート部の折曲げ片と取付部との対向部に生ずる狭い隙間などを、樹脂が埋めて一体に被覆するので、表面に隙間ができず、細菌が侵入しないようにすることができる。
6.本発明の内視鏡用のフックは、保管庫の天井、壁面あるいは係止棒に吊り下げて取り付けることができる。通風孔などの他の設備が天井あるいは壁面にある場合、選択して設置することができる。
7.保管庫内にフックを1350mm以上の高さに設置すると、内視鏡の挿入部及びコネクタのコードをフリー状態で係止することができ、人体への挿入部に曲げくせが生じない。コネクタのコードも曲げくせがつかないので、内視鏡の使用中に必要となる微妙な操作への影響が少なくなる。
そして、鉛直状態になっているので、管の内部に水分等が残らないので、衛生的である。
8.内視鏡用のハンガーのフック部を保管庫の開閉部に対して斜め(=軸部の表面が斜めになる)になるように保管庫に内視鏡用のハンガーを取り付けた内視鏡保管庫は、内視鏡の着脱作業が容易になるとともに、内視鏡用のハンガーの取り付け間隔を狭くすることができ、収納効率が向上する。そして、プレート部が開閉部に正対するように軸部とプレート部の折角にしたものは、プレートが見やすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1の内視鏡用のハンガーの斜視図を示す図。
【
図2】実施例1の内視鏡用のハンガーの展開図及び側面図を示す図。
【
図3】実施例1の内視鏡用のハンガーの使用状態を示す図。
【
図4】実施例2の内視鏡用のハンガーの斜視図及び壁側結合部を示す図。
【
図5】実施例2の内視鏡用のハンガーの展開図を示す図。
【
図6】実施例2の内視鏡用のハンガーの使用状態を示す図。
【
図7-1】内視鏡用のハンガー実施例3の1(内視鏡用ハンガー13A)を示す図。
【
図7-2】内視鏡用のハンガー実施例3の2(内視鏡用ハンガー13B)を示す図。
【
図11】実施例5の内視鏡用のハンガーの展開図及び加工図を示す。
【
図14】内視鏡用のハンガーのフック部の他の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、簡便な構造で、消毒がしやすく取り扱いが容易な内視鏡用のハンガー(以下「内視鏡用ハンガー」、「内視鏡ハンガー」と称する場合がある)である。
金属製の板材から、展開した形状に切り出した板材を折り曲げ加工してJ型の内視鏡用のハンガーを製造する。内視鏡のコネクタ側の分岐部の根本をハンガーにかけて使用される。基本は、軸部の上部側に取付部を設け、軸部の下部側は折り曲げてフック部を形成する。軸部の一方の側部にプレート部を設ける。フック部の底部は、傾斜が設けられている。底部の傾斜は、例えば、プレート部が形成される側の側部が高く、他の側部側が低くなるように斜めに形成されている。この傾斜は、逆向きに形成することもでき、逆向きにした場合は、内視鏡のコネクタ部が手前になるように、内視鏡がハンガーに係止されるようになる。
折り曲げ加工終了後、ナイロンなどの樹脂で全体を被覆する。被覆樹脂材料は、溶剤を用いない熱可塑性樹脂が適している。フック部は、コネクタの操作部側の分岐部の根本を収容できる湾曲とし、フック部の底部は、プレート側が高く、他方が低くなるように傾斜をつけて、安定した姿勢で吊り下げられるようになっている。フック部は、角度をつけた屈曲あるいは円弧状に形成される。
取付部は、保管庫などの天井部に取り付ける場合は、軸部の上部を直角に折り曲げて水平状に形成して水平取付部とする。取り付け手段は、ビス、ボルト、差し込みなどの手段を採用することができる。あるいは、軸部から側方に延長した腕状部材を設けて壁などに取り付ける。取り付け手段は、ビスやボルト、差し込みなど手段を用いることができる。
また、保管庫の上部で左右方向に取り付けてある係止棒に吊り下げて係止する取り付け構造とすることができるように、内視鏡用ハンガーの軸部上部に懸垂部材、あるいは挿入部材を形成する。
軸部の側部にプレート部が折り曲げ加工されて形成される。折り曲げ角度は、直角~鈍角が適している。特に、内視鏡用ハンガーを斜めに取り付ける場合は、斜めの分を直角に加えた鈍角に折り曲げることにより、プレートは作業者に正対する。
本発明の内視鏡用ハンガーは、展開上に切り出した(打ち抜きも含む)一枚の金属板を、折りや曲げなどの加工を行って成形することができる。内視鏡用ハンガーの部材間の隙間がほとんど無いように折り曲げるか、あるいは、消毒できるような間隔を設けるように加工する。部材間が接近している場合は、樹脂で全体が被覆されて、表面からは一体に見えるようになる。金属板は幅広であって、軸部からフック部は、3~10cmの巾が適している。本発明の内視鏡用ハンガーは、軸部に対してプレート部やフック部が角度をもって折り曲げられている為、リブ加工のように強度が向上しているので、比較的薄い(=軽量)金属板を用いることができる。
金属板を折り曲げて成形したのち、全体を樹脂被覆する。用いる樹脂材料は、溶剤を使用しない熱可塑性樹脂が望ましく、ナイロン樹脂などが適している。被覆手段は、各種適用できる。例えば、粉末を静電付着して加熱溶融して膜状に形成する静電塗装、フィルムを溶着する方法、溶融した樹脂液にどぶ付けする方法などである。
【0010】
フック部の例を
図14にいくつか例示する。
図14(a)は、
図2(a)に示す展開図においてフック部3を右に曲げていたものを、軸部から曲げずに延長したフック部を、傾斜底面を形成するように4本の折線84で屈曲させたフック部35に形成したものを示すものである。側面は
図2に示すフック3と同様であるが、正面図はフック部35が左に偏ることとなり、先端も傾斜底面33と同様に傾斜することとなる。
図14(b)は、フック部の折線84を2か所にしたフック部36の例を示す。フック部37の先端の開きを大きくすることにより、内視鏡の分岐部を係止する余裕を作ることができる。
図14(c)は、フック部の折線84以下を湾曲形成したフック部37の例を示す。湾曲したフック部37も傾斜した折線84を始端部とすることにより、底部を傾斜させることができる。
なお、フック部36とフック部37も、
図2(a)に示すように、軸部2から右に曲げた展開図から形成することもできる。
【0011】
本発明の内視鏡用ハンガーは、保管庫などの天井部、壁部、係止棒などに取り付けられる。取り付けられた内視鏡用ハンガーに内視鏡をぶら下げられる。
そして、本発明の内視鏡用のハンガーは、内視鏡の挿入部やコネクタがフリーとなる状態で吊り保持できる高さに取り付けることが望ましい。現状の内視鏡では、挿入部長が1330mmまでのものが多いので、フック部3を挿入部やコネクタ部の先端が保管庫の底に接触しないようにそれ以上の高さにハンガーを設置する。職員が取り扱い易い高さで底面に触れない程度の高さに設定すると良い。これによって、内視鏡に、保管に伴う曲がりくせを防止できる。また、内視鏡の挿入部が吊り下げられているので、管内に水分が残ることがなく、乾燥し、衛生的に保つことができる。内視鏡保管庫としては、本出願人が提案した特許第5476512号に開示する保管庫などに適用することができる。
【実施例0012】
図1~
図3に実施例1の内視鏡用ハンガーの例を示す。
本願発明の内視鏡用のハンガー1の実施例1は、上部に取付部4を設けた天井取り付け用の内視鏡用ハンガー11である。
図1に内視鏡用ハンガー11の斜視図、
図2に内視鏡用ハンガー11の展開図(a)及び側面図(b)、
図3に内視鏡用ハンガー11の使用状態図を示す。
内視鏡用ハンガー11は、幅広の板状である軸部2の下部にフック部3、軸部2の上部に水平状になっている取付部4、軸部2の側部にプレート部5が設けられている。この内視鏡用ハンガー11の表面は全体に樹脂被覆6が設けられている。
【0013】
この内視鏡用ハンガー11は、大きな金属板から切断(あるいは、打ち抜き)などの手段で
図2(a)に示す展開図を基礎にして、折り曲げ加工によって基本形状を作成する。その後、塗装などに手段により表面に樹脂皮膜6を形成して製造する。
図2(a)に示されるように、軸部2を中心部として、上部に取付部4となる部分と下部にフック部3となる部分、右側部にプレート部5となる長辺部が設けられている金属板8を金属板81とする。取付部4にはビス用の穴41bを形成する
この一枚の展開した金属板81を折線にしたがって折り曲げ加工する。折り曲げ加工した内視鏡用ハンガー11の右側の側面図が
図2(b)に示されている。フック部3側を内折りとすると、取付部折線85aとプレート部折線85bは外折りとなる。
軸部2は、上部は水平となる内視鏡用ハンガー11の本体部であって、上部は水平辺、プレート部5側の側部長L1よりも反対側の側部長L2を長くして傾斜した下部辺とする、変形四辺形である。
金属板は、1.6mm厚程度の亜鉛メッキ鋼板を使用することができる。端面は、バリ取りなどを行い滑らかに仕上げる。
【0014】
フック部3の底部は傾斜した傾斜底部33に形成される。本例では、傾斜をつけるために、フック部折線84の軸部2との境界部に形成されるフック部折線84aを斜めに設け、軸部2のプレート側5側の側部長L2よりも反対側の側部長L2をΔL分長く設けている。
この傾斜したフック部折線84aから同じ幅でフック部折線84b、84c、84dを設けている。これらのフック部折線84にしたがって順に折ることによってフック部3が形成される。傾斜底部33の傾斜はΔLの長さによって決めることができる。この傾斜は掛けられた内視鏡が安定するように設けられている。後述するが、操作部から分岐しているコネクタのコードの根元部の傾斜角度に沿うように傾斜底部33を形成するのが適している。
【0015】
展開形のフック部3の外形は、傾斜底部33に合わせてフック先端辺34が水平になり、かつ、軸部2からフック部3の幅が同幅になるように形成したので、軸部2に対してプレート部5側に傾斜している。なお、必ずしも、フック先端辺34を水平にする必要はなく、軸部2からフック部3を直線にして、フック部を傾斜させて屈曲させることも可能である。
この図では、フック部折線を4本例示しているが、これに限ることはない。また、円弧とすることもできる。
フック部の形状は、内視鏡が掛かる分岐部よりも余裕を持った大きさが望ましい。分岐部とフック部は面的に密着すると、密着部の隙間に水分が残り、細菌が増殖する危険性があるので、接触を小さくして、乾燥できる隙間を多くすることが望ましい。フック部を折加工することにより、角部が内視鏡の分岐部との間に隙間が生じ、通気性を確保し、清潔に内視鏡を補完することができる。
フック部3は、掛ける内視鏡を安定させるために幅が必要であるが、軸部2を細くすることも可能である。複数設けられているフックの折線84間の幅は同一とする必要はない。
【0016】
プレート部5には、内視鏡の管理記号等を表示する。プレート部5は、軸部2の側部の一方又は両方に設けることができる。通常は、内視鏡を保管庫の扉などの開閉部に対して幅をとらない姿勢に保管する。プレート部は、保管庫の扉(開閉部)に対して正対することが望ましいので、軸部(フック部)を扉に対して斜めに取り付ける場合は、プレート部を軸部に取り付ける角度を、90度よりも取り付ける斜め角度分大きくすると、プレート部が正対する。図示の例では、一方の側部で軸部2に対して、プレート部折線85bで屈曲させて、直角に設けている。プレート部5の長さは軸部2の側部長L2より短い範囲で必要な長さをとることができる。しかし、側部長L2よりも長くすることも可能である。幅は、取付部4の長さよりも短くしているが、これに限る必要はない。プレート部5の上端を下げて設けることもでき、その場合は、取付部4との間を数センチメートル開けて、隙間の消毒ができるようにするのが適切である。
図2(c)は、ハンガーの中間部の断面図であり、軸部2とプレート部5の折角θを示している。前述のように、この折角(θ)は、直角~鈍角に設定される。
【0017】
取付部4は、保管庫の天井などに取り付けることを想定して、取付部折線85aで直角に屈曲させて水平取付部41を形成している。取付部4には、平板の状態でビス用の穴41bを形成する。
本例では、取付部側辺41aとプレート部上辺51は、基端部が一致するように設けられており、双方とも直角に屈曲して、両辺は接触するように形成される。樹脂皮膜6は両方にまたがって形成され、両辺は一体となり、消毒がしやすく、細菌等が増殖する隙間ができない。
あるいは、プレート上辺51を下に下げて、取付部側辺41aとの間に大きな隙間が形成することによっても、細菌等が増殖するような狭い隙間を形成せずに、消毒を容易にすることもできる。
【0018】
樹脂皮膜6は、アルコールなど医療現場で使用される消毒剤に耐久性のある樹脂材料が望ましい。例えば、ナイロン樹脂などが適している。
また、溶剤などを使用せずに、屈曲形成した金属状態の内視鏡用ハンガー11を高温に熱して、ナイロン粉末を被覆して、金属表面で溶融させて、皮膜を形成することができる。
樹脂に色を付けることによって、内視鏡用ハンガーを色によっても識別、管理することができる。
【0019】
図3に内視鏡用ハンガー11を保管庫などの天井部74に取りつけた使用状態を示す。内視鏡用ハンガー11の取付部を天井部74にビスなどで固定する。内視鏡は挿入部長が1330mmまでのものが多いので、フック部3を挿入部やコネクタ部の先端が保管庫の底に接触しないような高さになるようにハンガーを設置する。この固定された内視鏡用ハンガー11のフック部3に内視鏡9をかける。一般に使用されている軟性の内視鏡9は、操作部91から体内への挿入部92とコネクタ93側のコネクタコード94が分岐している。この分岐部95をフック部3にかけて保管する。内視鏡の挿入部92、コネクタ93はフリーの状態で吊られている。内視鏡は、分岐部だけで内視鏡用ハンガーと接触しているので、他部材からの菌の移植を防止できる。
また、前述したように、挿入部のコード(内部のファイバーなどを含む)やコネクタコードに癖がつかず、内視鏡保管による内視鏡の操作性に与える障害を防止できる。挿入部92の内部には、各種処置具(生検鉗子等)により採取された組織片が通過する生検鉗子チャネル(管路)があり、吸引、送気・送水チャネル(管路)はコネクター部93から挿入部92の先端まで達している。コネクターコード部94内部は吸引チューブ、送気・送水チューブ、ライトガイド(グラスファイバー)を内蔵している。内視鏡は使用後、洗浄・消毒をし、水分を取って保管されるが、挿入部及びコネクターコードを垂下して保管することにより、管内に残留した水分が完全に抜けるので、細菌の繁殖を抑止でき感染を防止することができる。
【0020】
本願発明の内視鏡用のハンガーは、金属板で一体的に形成されており、狭い溝などの隙間がないので、ハンガー自体を衛生的に保つことができる。
そして、医療器具を介した感染を防止することが重要であり、本発明によって、分岐部だけで接触した状態で、ほぼ孤立した状態で保管されており、挿入部の内部にも水分や異物が残りにくいように吊り下げられているので、衛生的に保管することができる。
また、内視鏡用ハンガーは、掛け外しの動作が簡単・単純であるので、作業性が良く、また、プレートに管理表示をすることができるので、誤認が生ずることがない。ナイロンなどの樹脂被覆を行うことによって、内視鏡用ハンガーと内視鏡本体を同じ薬剤で清掃(消毒)できることができる。同じ薬剤を使うことができることは、作業が容易になり、人材不足のなか、日本語の不案内な人材の活用も容易になる。
何種類かに着色したハンガーを使用することにより色別管理もでき、内視鏡の誤選定のリスクを低減することができる。
感染対策、医療器具の誤使用対策が求められている医療現場の要請にこたえることができる。