(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138502
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】重ね合わせマーク、位置ずれ検出方法及び装置、半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 9/00 20060101AFI20220915BHJP
H01L 21/68 20060101ALI20220915BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20220915BHJP
G01B 11/22 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
G03F9/00 H
H01L21/68 F
G01B11/00 A
G01B11/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021038418
(22)【出願日】2021-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川田原 奨
【テーマコード(参考)】
2F065
2H197
5F131
【Fターム(参考)】
2F065AA01
2F065AA17
2F065BB27
2F065CC17
2F065DD03
2F065FF44
2F065GG04
2F065MM02
2F065QQ25
2H197HA03
2H197JA05
2H197JA23
5F131AA02
5F131BA13
5F131BA19
5F131CA07
5F131CA32
5F131DA32
5F131DA33
5F131DA36
5F131DA42
5F131DB62
5F131DB72
5F131DB76
5F131EA02
5F131EA03
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5F131EA23
5F131EB72
5F131GA14
5F131KA12
5F131KA44
5F131KA72
5F131KB07
5F131KB12
5F131KB22
5F131KB53
(57)【要約】
【課題】プロセスによる影響を受け難く精度良く検出が可能な重ね合わせマークを提供する。
【解決手段】実施形態による重ね合わせマークは、基板又はその上に形成された層の表面から第1の方向に段階的に降下する複数の第1の段を含む第1の段差部と、前記表面から前記第1の方向と異なる第2の方向に段階的に降下し、前記複数の第1の段の数と同数の複数の第2の段を含み、前記第1の段差部に対して離間し、かつ回転対称に配置される第2の段差部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板又はその上に形成された層の表面から第1の方向に段階的に降下する複数の第1の段を含む第1の段差部と、
前記表面から前記第1の方向と異なる第2の方向に段階的に降下し、前記複数の第1の段の数と同数の複数の第2の段を含み、前記第1の段差部に対して離間し、かつ回転対称に配置される第2の段差部と
を備える、重ね合わせマーク。
【請求項2】
前記第1の方向と前記第2の方向が互いに逆向きであり、
前記第1の段差部と前記第2の段差部とが、前記第1の方向及び前記第2の方向と交差する方向に離間する、請求項1に記載の重ね合わせマーク。
【請求項3】
前記交差する方向に離間した前記第1の段差部と前記第2の段差部との間に、レジストで形成されるパターンが配置されるべき領域を更に備える、請求項1又は2に記載の重ね合わせマーク。
【請求項4】
基板又はその上に形成された層に、その表面から第1の方向に段階的に降下する複数の第1の段を含む第1の段差部と、前記表面から前記第1の方向と異なる第2の方向に段階的に降下し、前記複数の第1の段の数と同数の複数の第2の段を含み、前記第1の段差部に対して離間し、かつ回転対称に配置される第2の段差部と、前記交差する方向に離間した前記第1の段差部と前記第2の段差部との間に、レジストで形成されるパターンが配置されるべき領域とを含む重ね合わせマークを形成し、
前記領域に前記パターンを形成し、
前記複数の第1の段の第1の深度情報を取得し、
前記複数の第2の段の第2の深度情報を取得し、
前記第1の深度情報と前記第2の深度情報に基づき、前記第1の段差部と前記第2の段差部の回転中心を求め、
前記領域に配置された前記パターンの重心を求め、
前記回転中心と前記重心とのずれを検出する、位置ずれ検出方法。
【請求項5】
前記第1の深度情報が、前記第1の段差部にレーザ光を照射することにより取得され、
前記第2の深度情報が、前記第2の段差部にレーザ光を照射することにより取得される、請求項4に記載の位置ずれ検出方法。
【請求項6】
前記第1の深度情報に基づいて前記複数の第1の段の各段の第1の位置情報を取得し、
前記第2の深度情報に基づいて前記複数の第2の段の各段の第2の位置情報を取得し、
前記第1の位置情報と前記第2の位置情報に基づき、前記第1の段差部と前記第2の段差部の回転中心が求められる、請求項5に記載の位置ずれ検出方法。
【請求項7】
前記第1の深度情報及び前記第2の深度情報は、前記レーザ光が照射された点の位置と、その点からの反射光の受光強度との関係で表され、
前記第1の位置情報と前記第2の位置情報は、前記関係に基づいて求められる、請求項6に記載の位置ずれ検出方法。
【請求項8】
位置ずれ検査を行う対象である基板を保持する基板保持部と、
前記基板保持部を少なくとも2次元的に移動する駆動部と、
前記基板保持部に保持される前記基板に対してレーザ光を出射する出射部、及び前記レーザ光の反射光を受光する受光部を含むセンサと、
少なくとも前記駆動部と前記センサとを制御する制御部であって、
前記基板又はその上に形成された層の表面から第1の方向に段階的に降下する複数の第1の段を含む第1の段差部と、前記表面から前記第1の方向と異なる第2の方向に段階的に降下し、前記複数の第1の段の数と同数の複数の第2の段を含み、前記第1の段差部に対して離間し、かつ回転対称に配置される第2の段差部と、前記交差する方向に離間した前記第1の段差部と前記第2の段差部との間に、レジストで形成されるパターンが配置されるべき領域とを含む重ね合わせマークと、前記領域に形成される前記パターンとについて、
前記複数の第1の段の第1の深度情報を取得し、
前記複数の第2の段の第2の深度情報を取得し、
前記第1の深度情報と前記第2の深度情報に基づき、前記第1の段差部と前記第2の段差部の回転中心を求め、
前記領域に配置された前記パターンの重心を求め、
前記回転中心と前記重心とのずれを検出するように構成された当該制御部と
を備える、位置ずれ検出装置。
【請求項9】
基板又はその上に形成された層に、その表面から第1の方向に段階的に降下する複数の第1の段を含む第1の段差部と、前記表面から前記第1の方向と異なる第2の方向に段階的に降下し、前記複数の第1の段の数と同数の複数の第2の段を含み、前記第1の段差部に対して離間し、かつ回転対称に配置される第2の段差部と、前記交差する方向に離間した前記第1の段差部と前記第2の段差部との間に、レジストで形成されるパターンが配置されるべき領域とを含む重ね合わせマークを形成し、
前記表面上にエッチングマスクを形成するとともに、前記パターンを前記領域に形成し、
前記複数の第1の段の第1の深度情報を取得し、
前記複数の第2の段の第2の深度情報を取得し、
前記第1の深度情報と前記第2の深度情報に基づき、前記第1の段差部と前記第2の段差部の回転中心を求め、
前記領域に配置された前記パターンの重心を求め、
前記回転中心と前記重心とのずれを検出し、
前記ずれが基準の範囲内かどうかを判断し、
前記基準の範囲内と判断された場合に、前記エッチングマスクを用いてエッチングを行い、
前記基準の範囲内でないと判断された場合に、前記エッチングマスクと前記パターンを形成し直す、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、重ね合わせマーク、位置ずれ検出方法及び装置、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体メモリなどの半導体装置では、高密度集積化のため、3次元構造が採用されている。このため、シリコンウエハなどの半導体基板の上には、幾つもの層が重ね合わされ、上下に隣接する2つの層の間で精度良く位置合わせを行うことが重要となっている。高精度の位置合わせのために重ね合わせマークが用いられるが、一つの層を形成する間に行われる複数のプロセスにより重ね合わせマークそのものが影響を受け、重ね合わせマークを精度良く検出することが難しくなる場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一つの実施形態は、プロセスによる影響を受け難く、精度良く検出が可能な重ね合わせマークを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの実施形態による重ね合わせマークは、第1の段差部と第2の段差部とを備える。第1の段差部は、基板又はその上に形成された層の表面から第1の方向に段階的に降下する複数の第1の段を含む。第2の段差部は、前記表面から前記第1の方向と異なる第2の方向に段階的に降下し、前記複数の第1の段の数と同数の複数の第2の段を含み、前記第1の段差部に対して離間し、かつ回転対称に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、本実施形態による重ね合わせマークを説明するための模式図である。
【
図2】
図2は、本実施形態による半導体装置の製造方法を説明するフローチャートである。
【
図3】
図3は、本実施形態による半導体装置の製造方法で行われるステップの原理を説明するための模式図である。
【
図4】
図4は、本実施形態による半導体装置の製造方法で行われるステップの原理を説明するための模式図である。
【
図5】
図5は、本実施形態による半導体装置の製造方法で行われるステップの原理を説明するための模式図である。
【
図6】
図6は、比較例の重ね合わせマークを説明するための模式図である。
【
図7】
図7は、本実施形態による重ね合わせマークの効果を説明する模式図である。
【
図8】
図8は、本実施形態による重ね合わせマークの形成方法を模式的に示す断面図である。
【
図9】
図9は、本実施形態による重ね合わせマークの形成方法を模式的に示す断面図である。
【
図10】
図10は、第2の実施形態による位置合わせ装置を示す模式図である。
【
図11】
図11は、第1の実施形態による実施形態による重ね合わせマークの変形例を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の限定的でない例示の実施形態について説明する。添付の全図面中、同一または対応する部材または部品については、同一または対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面は、部材もしくは部品間、または、種々の層の厚さの間の相対比を示すことを目的とせず、したがって、具体的な厚さや寸法は、以下の限定的でない実施形態に照らし、当業者により決定されてよい。
【0008】
(第1の実施形態)
初めに、
図1から
図5までを参照しながら、第1の実施形態による重ね合わせマーク及びこれを用いた、半導体装置の製造方法について説明する。
図1は、本実施形態による重ね合わせマークを説明するための模式図であり、
図2は、本実施形態による半導体装置の製造方法を説明するフローチャートである。
図3から
図5までは、この製造方法で行われるステップの原理を説明するための模式図である。
【0009】
図1(a)は、ショット領域を概略的に示す上面図である。図示のとおり、ショット領域SRは、例えば6つの半導体チップ領域TRを含むことができる。また、図示の例では、ショット領域SRの周囲、例えばスクライブライン(カーフ領域とも言う)には、8つのオーバーレイマークOM(以下、単にマークOMと言う)が配置されている。これらのマークOMは、半導体基板上に形成される半導体装置のレイヤーの間の位置ずれを検出するために設けられる。
【0010】
本実施形態において、マークOMは、
図1(b)及び
図1(c)に示すように、基板Sの表層にx軸方向に延び、y軸方向に互いに離間して配置される2列の段差マーク(段差部)MS1,MS2を有している。段差マークMS1は、
図1(c)に示すように、基板Sの表面から図中のx軸の+方向に沿って段階的に降下する8つの段S1~S8を有している。一方、段差マークMS2は、基板Sの表面からx軸の-方向に沿って段階的に降下する8つの段S1~S8を有している。すなわち、段差マークMS1,MS2の段S1~S8は、x軸に沿って互いに反対向きに降下している。また、段差マークMS1,MS2はy軸方向に離間している。したがって、段差マークMS1,MS2は、領域RMA内の任意の点を中心として互いに回転対称(詳細には点対称)に配置されることとなる。なお、
図1(b)では、便宜上、段S1~S8のうち深い段ほど濃いグレーで示している。
【0011】
また、段差マークMS1,MS2における各段S1~S8の幅(x軸方向の長さ)は、製造する半導体装置にもよるが、例えば1~2μmであってよく、高さ(y軸方向の長さ)は、例えば50nm程度であってよい。マークOMは、一辺の長さが例えば25~35μmの矩形形状を有してよい。
【0012】
また、本実施形態では、段差マークMS1,MS2の間には領域RMAが設けられ、ここにはレジストマークRMが形成されて良い。レジストマークRMは、領域RMAにフォトレジストで形成されてよく、それぞれy軸方向に延び、x軸に並んだ複数のストライプStを有することができる。レジストマークRMは、基板S上にこれから形成されるレイヤーのためのフォトレジストマスクとともに形成され、段差マークMS1,MS2は、そのレイヤーの下層のレイヤーを形成する際に形成されている。すなわち、レジストマークRMは、下層のレイヤーが形成されるときにはなく、その一層上のレイヤーを形成する際に形成される。
【0013】
次に、
図2から
図5までを参照しながら、本実施形態によるマークOMを用いた半導体装置の製造方法について説明する。
図2は、本実施形態による製造方法を説明するフローチャートである。
図3は、この製造方法で行われる、マークOMに対するレーザ光の走査を説明する模式図であり、
図4は、レーザ光の走査で得られた信号及びその処理について説明する模式図であり、
図5は、この製造方法で行われる位置ずれ判定を説明する模式図である。以下の説明では、まず、マークOMが形成された後に下層のレイヤーが形成され、最表面に酸化シリコン膜SOが露出しているものとする。すなわち、マークOMの段差マークMS1,MS2は酸化シリコン膜SOにより埋め込まれている。
【0014】
まず、ステップS11において、下層のレイヤーが形成された基板Sの上にフォトレジスト膜が形成され、フォトレジスト膜がパターン化されて、これから形成されるレイヤーのためのエッチングマスク(不図示)が形成される。エッチングマスクは、フォトマスク(レチクル)を用いてフォトレジスト膜を露光することにより形成されてよい。または、ナノインプリントテンプレートを用いてフォトレジスト膜をパターニングすることにより、エッチングマスクが形成されてもよい。エッチングマスクが形成される際には、マークOMのレジストマーク領域RMAにレジストマークRMもまた形成される。なお、フォトレジスト膜が形成される前に、その下地層として反射防止膜等が形成された場合には、エッチングマスク及びレジストマークRMが形成された後に、反射防止膜等が除去されることが望ましい。
【0015】
次に、マークOMの段差マークMS1,MS2の深度情報が取得される。具体的には、ステップS12において、
図3(a)に示すように、まず、マークOMの段差マークMS1に対してレーザ光が走査される。具体的には、図示のように、センサCSRの出射部EMTから段差マークMS1に向けてレーザ光ILが出射され、レーザ光ILが照射された点からの反射光RLが受光部RCVにより受光される。センサCSRが段差マークMS1に沿って移動していくと、段S1から段S8までがレーザ光ILにより順次照射され、それぞれの段S1~S8からの反射光RLが検出される。
【0016】
ここで、段S1~S8が深くなるに従って、レーザ光IL及び反射光RLの酸化シリコン膜SOによる吸収量が増大するため、反射光RLの強度が小さくなる。したがって、
図3(b)に示すように、レーザ光ILの照射位置と反射光RLの受光強度との関係を表すグラフにおいて、反射光RLの受光強度は、横軸に対して(センサCSRの移動距離に従って)段階的に減少していく。このような段階的な減少は、マークOMの段差マークMS1の各段S1~S8の深度を反映しており、したがって、段差マークMS1の深度情報が取得される。次いで、段差マークMS2に対してレーザ光が走査され、同様に段差マークMS2の深度情報が取得される。
【0017】
次に、ステップS13において、ステップS12で取得された深度情報に基づき、段差マークMS1の段S1~S8の位置が検出される。すなわち、
図4(a)に示すように、x軸に対して反射光RLの強度を微分すると、微分値が急激に変化し、極大値LMVが現れる。これらの極大値LMVの位置が段S1~S8それぞれの縁に対応している。これにより、
図4(b)に示すように、段S1~S8の縁のそれぞれの位置P1~P8が検出される。このような検出(ステップS13)は、段差マークMS2についても行われ、段差マークMS2の段S1~S8の縁の位置が検出される。
【0018】
次いで、ステップS14において、ステップS13で検出された段差マークMS1の各段S1~S8の縁の位置P1~P8に基づき、段差マークMS1,MS2の回転中心が求められる。具体的には、
図5(a)に示すように、例えば段差マークMS1における段差マークMS2に対向する辺と段S1の縁の位置P1との交点CPと、段差マークMS2おける段差マークMS1に対向する辺と段S1の縁の位置P1との同様の交点とを線分L1で結ぶ。これが段差マークMS1,MS2の残りの段についても行われ、これらの線分が交わる点C1が求められる。この点は、段差マークMS1と段差マークMS2の回転中心(以下、回転中心C1という場合がある)に相当する。
【0019】
なお、回転中心は、
図4(a)に示す曲線CVLに基づいて求めてもよい。具体的には、段差マークMS1とMS2のそれぞれについて曲線CVLを任意の点で座標系(x軸、y軸)ごと180°回転させたときに、両者の曲線CVLが重なる場合、その点が回転中心として求まる。また、曲線CVLの代わりに、(階段状の)反射光強度曲線(例えば
図3(b)、
図4(a)、
図4(b)参照)を用いてもよい。
【0020】
続けて、ステップS15においてレジストマークRMの重心C2が求められる。次に、ステップS16にて、段差マークMS1,MS2の回転中心C1とレジストマークRMの重心との差異(ずれ)が求められる。続けて、ステップS17において、その差異が基準の範囲内に収まるかが判断される。基準範囲内に収まっていると判断された場合(ステップS17:Yes)、ステップS11にて形成されていたエッチングマスクを用いたエッチングが行われる。一方、差異が基準の範囲に収まっていないと判断された場合(ステップS17:No)、レジストマスクが剥離され、ステップS11において再びエッチングマスクが形成される。この後、上述のステップS12以降のステップが、ステップS17にて差異が基準の範囲内に収まると判断されるまで繰り返される。差異が基準の範囲内に収まると判断されると(ステップS17:Yes)、そのエッチングマスクを用いたエッチングが行われ、本実施形態による半導体装置の製造方法が終了する。なお、この製造方法は、半導体装置におけるレイヤー間の位置ずれ検出方法を含んでいる。すなわち、上述のステップS11からS17までは位置ずれ検出方法として実施され得る。
【0021】
次に、比較例を参照しながら、本実施形態によるマークOM及びこれを用いた半導体装置の製造方法の効果について説明する。
図6は、比較例によるオーバーレイマークOMC(マークOMCと言う)を模式的に示す断面図である。図示のとおり、比較例によるマークOMCでは、実施形態によるマークOMとは異なり、ほぼ同じ深さを有する4つの凹部が周期的に形成されている。作製される半導体装置によっては、例えば下地層としての基板SにマークOMCが形成された後、その下地層の上に例えば酸化シリコンを含む薄膜SOが堆積される場合がある。このとき、例えば、
図6(a)に示すように、パーティクルPCLが堆積中に薄膜SOに付着してしまい、薄膜SO中に取り込まれることが起こり得る。この場合、薄膜SOの堆積が進行していくのに伴って、その形状が反映されて薄膜SOの表面に例えば凸状の欠陥BMPが生じることがある。そのような欠陥BMPは、後続の例えばフォトリソグラフィ工程などのプロセスに悪影響を与えるおそれがある。そのため、薄膜SOの堆積後に、
図6(b)に示すように、化学機械平坦化(CMP)法を用いて薄膜SOの表面を平坦化することにより、除去される場合がある。
【0022】
ここで、比較例のマークOMCの場合、平坦化による研磨量が偶発的に大きくなったときには、マークOMCの上端部の角が削られてしまうことがある。具体的には、CMP装置のパッドの移動方向に対向する角部が特に削られ易く、
図6(c)に示すように、角部に傾斜面SEが生じる場合がある。マークOMCは、上方から例えば撮像素子で撮像することにより検出されるため、傾斜面SEが生じると、
図6(d)に示すようにマークOMCの各凹部の境界が曖昧になってしまうおそれがある。このため、マークOMCを精度良く検出することが難しくなる可能性がある。
【0023】
これに対し、本実施形態によるマークOMは段差マークMS1,MS2を有し、これらは下地層に形成され、互いに逆向きに段階的に降下する各段S1~S8を有している。この場合、仮に、
図7(a)に示すように薄膜SOの平坦化が行われ、
図7(b)に示すように、上端部が削られて傾斜面SEが生じたとしても、これよりも深い部分に位置する段S1~S8が削られることは殆どない。すなわち、各段S1~S8の縁に傾斜面は生じることは殆どない。そして、センサCSRにより、各段S1~S8がレーザ光で走査されて、段差マークMS1,MS2の各段S1~S8の縁の位置が検出される。このため、平坦化の影響を受けることなく、精度良くマークOMを検出することが可能となる。したがって、段差マークMS1,MS2の回転中心C1を精度よく検出することが可能となり、この重心と、レジストマークRMの重心C2とが基準の範囲内に収まるかどうかの判断も精度よく行われる。よって、レイヤー間で顕著な位置ずれが生じたままエッチングが行われる可能性が低減され、その結果として、レイヤー間の位置ずれが低減される。以上より、本実施形態によるマークOM及びこれを用いた半導体装置の製造方法の効果が理解される。
【0024】
次に、
図8及び
図9を参照しながら、段差マークMS1(MS2)の形成方法について説明する。
図8及び
図9は、段差マークMS1の形成方法の各工程を説明する模式的な断面図である。ここでは、下地層としての基板Sに段差マークMS1を形成する場合を例にとる。まず、
図8(a)に示すように、基板Sの上にレジスト膜RFが形成され、このレジスト膜RFに対してテンプレートTPが押し付けられている。テンプレートTPは、段差マークMS1の各段S1~S8に対応した8つの段を有している。レジスト膜RFに押し付けられたテンプレートTPを通して当該レジスト膜RFに対して紫外光を照射すると、レジスト膜RFが硬化する。この後、
図8(b)に示すように、テンプレートTPをレジスト膜RFから剥離すると、パターン化され階段状のパターンを有したレジスト膜RFが得られる。この後、パターン化されたレジスト膜RFの最も低い段において、基板Sの表面に所定の残膜厚(RLT)で残るレジストが除去され、基板Sの表面が露出する。
【0025】
続けて、
図8(c)に示すように、パターン化されたレジスト膜RFをマスクとして用い、基板Sに対して、例えばプラズマを利用したエッチングが行われる。このエッチングにおいては、レジスト膜RFの最も低い段(の踏板面)において露出した基板Sの表面からエッチングされていく。エッチングが進むにつれて、レジスト膜RFが次第に薄くなっていくため、
図9(a)に示すように、レジスト膜RFの2番目、3番目、・・・に低い段において基板Sの表面が順次露出していき、露出した表面が順次エッチングされていく。レジスト膜RFのうちの最も高い段において基板Sの表面が露出し、その露出面からエッチング始まった後、所定の時間が経過した時にエッチングが終了する。レジスト膜RFの各段が順次消失することにより基板Sの表面は局所的に露出され、露出した表面からエッチングされていくため、露出していた時間が長い部分ほど、深くエッチングされる。このため、
図9(b)に示すように、基板Sに階段状の段が形成され、これにより段差マークMS1が得られる。ここで、テンプレートTPは、段差マークMS2に対応した8つの段を有することができ、これにより、段差マークMS1とともに段差マークMS2も得られる。
【0026】
(第2の実施形態)
次に、
図10を参照しながら、第2の実施形態による位置ずれ検出装置について説明する。
図10(a)は、本実施形態による位置ずれ検出装置10を模式的に示す上面図であり、
図10(b)は、位置ずれ検出装置10を模式的に示す側面図である。
図10(a)及び
図10(b)に示すように、位置ずれ検出装置10は、半導体ウエハなどの基板が収容される容器FOUP1~FOUP4(Front Opening Unified Pod)が載置されるテーブル10Tを有し、テーブル10Tに載置された容器FOUP1~FOUP4は、位置ずれ検出装置10の本体部10Mに対して気密に接続される。本体部10M内には、搬送ロボット10R、支持ステージ10S、駆動部10D、及びセンサCSRが設けられている。
【0027】
搬送ロボット10Rは、例えば先端にピックが設けられたアーム10Aを有する。搬送ロボット10Rは、このアーム10Aを用いて、容器FOUP1~FOUP4のいずれかから半導体ウエハなどの基板を取り出し、その基板を支持ステージ10Sへ受け渡す。また、搬送ロボット10Rは、支持ステージ10Sから基板を受け取り、その基板をもとの容器に搬入する。支持ステージ10Sは、その表面上に基板を静電的に支持する静電チャックなどの保持機構を有することができ、これにより基板は支持ステージ10Sの表面上に確実に固定される。また、支持ステージ10Sは、表面から出没する支持ピン(不図示)を有することができる。これにより、搬送ロボット10Rのアーム10Aと支持ステージ10Sとの間で基板の受け渡しが可能となる。駆動部10Dは支持ステージ10Sを上下方向及び水平方向に駆動する。駆動部10D、例えばエンコーダを含むことができ、これにより、支持ステージ10Sひいては支持ステージ10Sに支持される基板を高精度かつ高速に移動させることが可能となる。したがって、上述の段差マークMS1,MS2の深度情報を精度よく確実に取得することが可能となる。
【0028】
制御部10Cは、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを含むコンピュータとして実現され得る。また、制御部10Cは、特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブルゲートアレイ(PGA)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を始めとするハードウェアにより実現されてもよい。制御部10Cは、所定の処理プログラムに従って、搬送ロボット10R、駆動部10D、及びセンサCSRなどを制御する。具体的には、処理プログラムは、上述の半導体装置の製造方法又は位置ずれ検出方法を位置ずれ検出装置10に実施させる命令群を含む。すなわち、制御部10Cは、処理プログラムに基づいて位置ずれ検出装置10の各部を制御することにより、半導体装置の製造方法又は位置ずれ検出方法を実施するように構成されている。なお、処理プログラムや、これに関連する各種のデータは、例えばハード・ディスク・ドライブ(HDD)や半導体メモリ、サーバなどの非一時的なコンピュータ可読記憶媒体から有線又は無線で制御部10Cにダウンロードされ得る。
【0029】
以上のように構成された位置ずれ検出装置10によれば、上述の半導体装置の製造方法又は位置ずれ検出方法が好適に実施され得、したがって、これらの方法により発揮される効果は位置ずれ検出装置10によって発揮され得る。
【0030】
(変形例)
以下、上述の実施形態によるマークOMの変形例について説明する。
図11(a)は、変形例1によるオーバーレイマークを示す上面図である。図示のとおり、オーバーレイマークOM1(単にマークOM1と言う)は、いわゆるアドヴァンスト・イメージング・計測(AIM)マークに相当する。
図11(a)に示すマークOM1は、4つの角部に段差マークMS1(MS2)を有している。図示のとおり、隣接する段差マークMS1とMS2は互いに4回対称の関係にあり、対角線上に位置する2つの段差マークMS1(MS2)は互いに点対称の関係にある。したがって、各段差マークMS1又はMS2(段S1~S8)についての深度情報を取得し、これに基づいて各段S1~S8の縁の位置情報を取得し、回転中心を求めることができる。各段S1~S8は段階的に降下しているため、例えばCMPなどによる平坦化の影響を受け難い。したがって、変形例によるマークOM1によっても、実施形態によるマークOMにより発揮される効果が発揮される。なお、段差マークMS1,MS2の内側には、レジストマークRMが形成されるべき領域が確保されている。ここには、4つのレジストマークRMが回転対称に配置される。
【0031】
図11(b)は、変形例2によるオーバーレイマークを示す上面図である。図示のとおり、オーバーレイマークOM2(単にマークOM2と言う)は、いわゆるバーインバー(BIB)マークに相当する。マークOM2においては、矢印SDXに沿って段階的に降下する段S1,S2,S3,S4が配置されて一つの段差マークが形成され、矢印SDYに沿って段階的に降下する段S1,S2,S3,S4が配置されて他の段差マークが形成されている。段S1~S4が互いに交差する方向(SDX方向とSDY方向)に沿って配置されているため、2つの段差マークが回転対称に配置されることとなる。矢印SDXに沿って例えばレーザ光(IL)を走査することにより、段S1~S4の深度情報が取得される。また、矢印SDYに沿って例えばレーザ光(IL)を走査することにより、段S1~S4の深度情報が取得される。そして、それぞれの深度情報に基づき2つの段差マークの回転中心を求めることが可能となる。具体的には、例えば両者の反射光強度曲線を任意の点を中心に座標系ごと90°回転させ、両曲線が重なった場合に、その点を回転中心とすることができる。マークOM2においても各段S1~S4が段階的に降下しているため、例えばCMPなどによる平坦化の影響を受け難い。したがって、変形例によるマークOM2によっても、実施形態によるマークOMにより発揮される効果が発揮される。
【0032】
(その他の変形例)
基板Sに形成されたマークOMを例にとって説明したが、マークOMは、半導体装置の製造工程のいずれかのステップにおいて、そのステップ時に露出した、例えば酸化シリコン層や窒化シリコン層などの絶縁層、又は金属や多結晶シリコン層などの導電層に形成されてもよい。
【0033】
また、ショット領域の周囲(スクライブライン)にマークOMが形成される場合を例示したが、マークOMは、ショット領域内の半導体チップ領域の内部に形成されてもよい。これによれば、半導体チップ領域内の例えばビアやメモリピラーなどの素子要素に関し、レイヤー間での微細な位置ずれを検出することが可能となる。
【0034】
さらに、段差マークMS1,MS2はそれぞれ8つの段S1~S8までを有していたが、段の数は8つに限らず、マークOMが形成されるべき位置や、その位置に形成可能なマークOMの大きさ、使用するセンサCSRの分解能などに応じて適宜決定されてよい。
【0035】
また、上述の実施形態においては、センサCSRにより検出された反射光RLの強度に基づいて深度情報が得られたが、センサCSRの代わりに、飛行時間(TOF)型のセンサが利用されてもよい。これによれば、レーザ光の出射後、各段S1~S8で反射して戻ってくるまでの時間を距離に換算することにより、反射光RLの強度に依らずに、深度情報を取得することが可能となる。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0037】
OM,OM1,OM2…オーバーレイマーク、SR…ショット領域、TR…半導体チップ領域、MS1,MS2…段差マーク(段差部)、S1~S8…段、RM…レジストマーク、RMA…領域、St…ストライプ、CSR…センサ、EMT…出射部、RCV…受光部、IL…レーザ光、RL…反射光、P1~P8…位置、CP…交点、C1…回転中心、C2…重心、SO…薄膜、SE…傾斜面、RF…レジスト膜、TP…テンプレート、S…基板、10…位置ずれ検出装置、10A…アーム、10M…本体部、10R…搬送ロボット、10S…支持ステージ、10D…駆動部、FOUP1~FOUP4…容器。