(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138506
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】ケーブル保持具
(51)【国際特許分類】
H02G 3/32 20060101AFI20220915BHJP
F16B 2/08 20060101ALI20220915BHJP
F16B 19/00 20060101ALI20220915BHJP
F16B 2/10 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
H02G3/32
F16B2/08 U
F16B19/00 Q
F16B2/10 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021038422
(22)【出願日】2021-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】592077121
【氏名又は名称】竹内工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081433
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 章夫
(72)【発明者】
【氏名】佐野 公生
【テーマコード(参考)】
3J022
3J036
5G363
【Fターム(参考)】
3J022EA16
3J022EA32
3J022EB14
3J022EC14
3J022EC22
3J022FB07
3J022FB08
3J022FB12
3J022GA04
3J022GA16
3J022GB45
3J022GB56
3J036AA03
3J036DA06
3J036DA14
3J036DB04
5G363AA12
5G363BA01
5G363DA13
5G363DA15
5G363DC08
(57)【要約】
【課題】複数本のケーブルを束ねたケーブル束の保持力を高めることが可能なケーブル保持具を提供する。
【解決手段】機器等CHに固定するための固定部2と、固定部2と一体に形成されてケーブル束CAを保持する保持部3を備える。保持部3は、互いに対向配置されてそれぞれ基部31a,32aを支点にして開閉移動される一対のカバー片31,32と、カバー片31,32の基部に所要の長さで立設された一対の挟持片35,36と、カバー片35,36の基部を互いに連結する連結片6を備える。挟持片35,36はカバー片31,32が閉方向に移動されたときに互いに近接する方向に移動され、挟持片35,36と連結片6で囲まれる空間内に所要本数のケーブルCを保持する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器等に固定するための固定部と、この固定部と一体に形成されてケーブルを保持する保持部を備え、前記保持部は、互いに対向配置されてそれぞれ基部を支点にして開閉移動される一対のカバー片と、前記各カバー片の内側において各カバー片の前記基部に所要の長さで立設された一対の挟持片と、前記各カバー片の基部を互いに連結する連結片を備え、前記一対の挟持片は前記一対のカバー片が閉方向に移動されたときに互いに近接する方向に移動され、これら挟持片と前記連結片で囲まれる空間内に所要本数のケーブルを保持する構成であることを特徴とするケーブル保持具。
【請求項2】
前記挟持片と前記カバー片で囲まれる空間内にケーブルを保持することが可能である請求項1に記載のケーブル保持具。
【請求項3】
前記ケーブルは複数本のケーブルが結束されたケーブル束であり、当該複数本のケーブルのうち少なくとも一部のケーブルが前記両挟持片と連結片により保持され、他のケーブルは前記挟持片と前記カバー片との間に保持される請求項2に記載のケーブル保持具。
【請求項4】
前記一対の挟持片は、前記カバー片に接続されている基端部と、この基端部から延長された先端部と、前記先端部を前記基端部に対して外側に向けてくさび状に屈曲された屈曲部を備え、両挟持片が閉方向に移動されたときに互いの屈曲部が近接される構成である請求項3に記載のケーブル保持具。
【請求項5】
前記一対の挟持片は、閉方向に移動されたときに各挟持片の屈曲部は前記ケーブル束の一部のケーブルと他のケーブルとの間に進入され、各挟持片によりこれらのケーブルを分離させる請求項4に記載のケーブル保持具。
【請求項6】
前記固定部はベースに設けられており、前記一対のカバー片はそれぞれ当該ベースに対して弾性変形可能な支持片により支持され、前記一対のカバー片は前記支持片と前記連結片の弾性変形により各カバー片の開閉移動が可能である請求項5に記載のケーブル保持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はワイヤあるいはケーブル等(以下、ケーブルと総称する)を保持するためのケーブル保持具に関し、特に複数本のケーブルが束状に結束されたケーブル束を保持するのに好適なケーブル保持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器や電気機器では、電気系統のケーブルを機器本体の一部に保持させるためにケーブル保持具が用いられる。このようなケーブル保持具として、特許文献1は、U字型をした保持部本体とカバー部との内部にケーブルを挿通させ、保持部本体に設けた弾性の支持片と、カバー部に設けた弾性の押さえ片とでケーブルを挟持する構成がとられている。また、特許文献2は、U字型をしたベース部とこれを塞ぐ蓋部のそれぞれの内面にケーブルを囲むように複数の弾性部材からなるクランプ部が配設され、ベース部に内挿したケーブルの周囲をこれら複数のクランプ部で挟持することにより保持する構成がとられている。
【0003】
このように弾性部材を利用してケーブルを保持すると、径寸法が異なるケーブルを保持する場合でも、弾性部材が弾性変形する範囲であれば弾性部材の弾性力がそのままケーブルを挟持する際の挟持力として利用でき、好適なケーブルの保持が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-112092号公報
【特許文献2】国際公開WO2010/001477公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2のケーブル保持具は、いずれも弾性部材の形状や寸法は保持具本体やベース部の形状や寸法により制限を受ける。そのため、好適に保持することができるケーブルの径寸法には制限がある。例えば、径寸法が小さいケーブルは径寸法が大きいケーブルに対して弾性部材の弾性変形量が少ないために大きな挟持力が得られ難く、保持力が低下することがある。また、径寸法が大きなケーブルは弾性部材の弾性変形量が限界を超えてしまうことがあり、挟持力が低下して保持力が低下することがある。
【0006】
ケーブルの保持力が低下すると、ケーブルが外力を受けたとき、例えば引っ張り力を受けたときに、ケーブルがケーブル保持具に対して長さ方向に容易に移動されてしまう。ケーブルが長さ方向に移動されると、ケーブルに設けられているコネクタやプラグ等の接続具に力が及ぶことになり、接続相手の接続具から離脱され、ケーブルが接続される機器に障害が生じる要因になる。このような課題は、複数本のケーブルを束ねたケーブル束についても同様であるが、特に、ケーブル束の場合にはケーブル束を構成するケーブル本数の違いによりケーブル束の全体としての径寸法が1本のケーブル径単位で変化される。そのため、保持するケーブル束の径寸法が多様なものになり、好適な保持力を得ることが益々難しくなってケーブル束が接続される機器に障害が生じる要因になる。
【0007】
本発明の目的は、特にケーブル束を保持する場合に有効であり、ケーブル束の保持力を高めることが可能なケーブル保持具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のケーブル保持具は、機器等に固定するための固定部と、この固定部と一体に形成されてケーブルを保持する保持部を備えており、保持部は、互いに対向配置されてそれぞれ基部を支点にして開閉移動される一対のカバー片と、各カバー片の内側において各カバー片の基部に所要の長さで立設された一対の挟持片と、各カバー片の基部を互いに連結する連結片を備える。一対の挟持片は一対のカバー片が閉方向に移動されたときに互いに近接する方向に移動され、これら挟持片と連結片で囲まれる空間内に所要本数のケーブルを保持する構成である。このケーブル保持具は、さらに、挟持片とカバー片で囲まれる空間内にケーブルを保持することが可能である。
【0009】
本発明の好ましい形態として、ケーブルは複数本のケーブルが結束されたケーブル束であり、当該複数本のケーブルのうち少なくとも一部のケーブルが両挟持片と連結片により保持され、他のケーブルは挟持片とカバー片との間に保持される。この形態においては、一対の挟持片は、カバー片に接続されている基端部と、この基端部から延長された先端部と、先端部を基端部に対して外側に向けてくさび状に屈曲された屈曲部を備え、両挟持片が閉方向に移動されたときに互いの屈曲部が近接される構成とすることが好ましい。すなわち、一対の挟持片は、閉方向に移動されたときに各挟持片の屈曲部がケーブル束の一部のケーブルと他のケーブルとの間に進入され、各挟持片によりこれらのケーブルを分離させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ケーブル束を保持する場合には、ケーブル束を構成している複数本のケーブルの全部あるいは一部のケーブルを確実に挟持することができる。これによりケーブル本数が異なるケーブル束を好適に保持することができる。また、径寸法が異なるケーブルを好適に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のケーブル保持具の実施形態の斜視図。
【
図2】ケーブル保持具の、(a)正面図、(b)平面図、(c)右側面図。
【
図3】3本のコードを保持する動作を説明する正面図。
【
図5】多数本のコードを保持する動作を説明する正面ず。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の実施形態のケーブル保持具1の斜視図である。ケーブル保持具1は、機器のパネルやシャーシ等(以下、シャーシと称する)に固定させるための固定部2と、ケーブルを保持するための保持部3とが幾分の弾性を有する樹脂の成形により一体形成されている。この実施形態では、保持するケーブルはコネクタCOに接続された複数本のケーブルCが結束具(結束バンド)Bにより束状に結束されたケーブル束CAとして構成されている。
【0013】
図2は当該ケーブル保持具1の、(a)正面図と、(b)平面図と、(c)右側面図である。なお、以降の説明において上下方向と左右方向は
図2(a)を基準にした方向である。固定部2は、矩形の板状をしたベース4の下面中央から下方に突出された柱21の先端から両側に突出される一対の嵌合片22を備えており、これらの嵌合片22はシャーシCHに設けられた嵌合穴Hに嵌入される。嵌合片22の先端近傍には段部22aが形成されており、この段部22aが嵌合穴Hの内縁に係合される。また、ベース4の両端からそれぞれ外側下方に突出された一対の弾接片23を備えている。これら弾接片23はシャーシCHの表面に当接されて弾性変形される。
【0014】
前記保持部3は、前記ベース4に支持されて左右方向に対向配置された一対のカバー片31,32を備えている。各カバー片31,32は、それぞれ長さ方向の中間位置において屈曲されておいる。この屈曲位置から前記ベース4側の基部31a,32aまでの領域を基端領域と称し、反対の先端側の領域を先端領域と称する。先端領域は基端領域に対して内側に向けてほぼ直角に屈曲されている。そして、これら一対のカバー片は、基部31a,32aにおいて前記ベースの左右の各端部に設けられた一対の支持片5により当該ベース4に支持されている。これらの支持片5は薄肉の細板状に形成されて厚み方向に弾性変形が可能であり、一対のカバー片31,32はそれぞれこの支持片5を支点にして左右方向に傾動可能とされている。
【0015】
また、前記一対のカバー片31,32は、それぞれの基部31a,32aが内側に向けて突出するように延長されており、この基部31a,32aにおいて連結片6によって相互に連結されている。この連結片6は薄肉に形成されて厚み方向に弾性変形が可能であり、この連結片6は常態では真直であり、外力を受けたときに厚み方向に弾性変形される。
【0016】
さらに、前記一対のカバー片31,32について、
図2(a)の左側のカバー片(以下、左カバー片と称する)31は、その先端領域がテーパ状に形成され、その外面に係合凹部33aが設けられた係合部33として構成される。また、同図の右側のカバー片(以下、右カバー片と称する)3は、その先端領域が厚肉に形成されるとともに、先端面には前記係合部33が挿入される係合溝34が形成される。この係合溝34の外側の内面には前記係合部33に設けられた係合凹部33aに係合される係合凸部34aが突出形成されている。
【0017】
前記一対のカバー片31,32の各基部31a,32aには、それぞれ挟持片35,36が立設されている。ここでは、左カバー片31に設けられた挟持片を左挟持片35と称し、右カバー片32に設けられた挟持片を右挟持片36と称する。これら左右の挟持片35,36は、長さ方向のほぼ中間位置を屈曲部35a,36aとして外側に向けてほぼ直角に近い角度、ここでは120度の角度でくさび状に屈曲されている。各挟持片35,36は屈曲部35a,36aよりも下側の基端部が各カバー片31,32の基部31a,32aに連結され、屈曲部35a,36aよりも上側の先端部はそれぞれ連結されているカバー片31,32の上端領域に接近する位置まで延長されている。
【0018】
また、左右の挟持片35,36はその幅方向(左右方向に直交する方向であり、
図2(b)の上下方向)の寸法が前記各カバー片31,32の幅寸法のほぼ1/2とされている。そして、左右の挟持片35,36はそれぞれ各カバー片31,32において互いに幅方向には重ならない位置に配置されている。ここでは、左挟持片35は左カバー片31の幅方向の一方の縁部から幅方向の中央までの領域に配置され、右挟持片36は右カバー片32の幅方向の他方の縁部から幅方向の中央までの領域に配置されている。
【0019】
なお、左右の挟持片35,36の中央側の縁部にはそれぞれ対向する挟持片に向けて突出された縦リブ35b,36bが形成されている。また、各挟持片35,36の上端に近い部位には外側に向けて突出された横リブ35c,36cが形成されている。これら縦リブ35b,36bと横リブ35c,36cにより、各挟持片35,36の板厚方向の機械的な強度が高められ、各挟持片35,36が板厚方向に弾性変形される際の弾性力を高めることが可能とされている。また、縦リブ35b,35bにより、後述するようにケーブルの挟持力が高められる。なお、各挟持片35p36が所要の弾性力を有している場合には横リブを省略してもよい。
【0020】
以上の構成のケーブル保持具によるケーブル束CAの保持形態について説明する。
図3はケーブル束CAを構成しているケーブルCの本数が少ない場合、ここでは3本の場合の例である。
図3(a)に示すように、ケーブル保持具1はシャーシCHに固定される。この固定に際しては、シャーシCHに開口された嵌合穴Hに、ケーブル保持具1の柱21と嵌合片22が嵌入される。嵌合片22はシャーシCHの裏面側において段部22aが嵌合穴Hの内縁に係合される。同時に、一対の弾接片23がシャーシCHの表面に当接されて弾性変形され、この弾接片23の弾性力により段部22aでの係合が保持される。これにより、嵌合片22と弾接片23とでシャーシCHを板厚方向に挟持することになり、ケーブル保持具1がシャーシCHに固定される。
【0021】
シャーシCHに固定されたケーブル保持具1は、連結片6が常態、すなわち真直であるので、左右の両カバー片31,32の各下端領域は互いに離れる方向の習性が与えられている。そのため、両カバー片31,32は上端領域が所要の間隔で離されており、開放された状態にある。また、これに伴って一対の挟持片35,36も先端部は開いた状態にある。すなわち、ベース4の真上に沿った領域において各一対のカバー片31,32と挟持片35,36はそれぞれの間が開放されている。
【0022】
そして、保持するケーブル束CAを両カバー片31、32の間に内挿する。このとき、両カバー片31,32と両挟持片35,36はベース4の真上方向が開放されているので、ケーブル束CAの内挿を垂直下方向に向けて行うことができる。したがって、特許文献1,2のように、押さえ片や蓋部のような片持ち構造に比較すると、ケーブルの内挿に際して押さえ片や蓋部が邪魔になることはなく、ケーブル束CAの内挿を容易に行うことができる。例えば、自動機によるケーブル束の内挿を行うことも可能である。
【0023】
このようにケーブル束CAが3本のケーブルCの場合には、全てのケーブルCは両挟持片35,36の間に内挿される。ケーブル束CAが内挿されると、
図3(b)のように、作業者は左右のカバー片31,32を指等で摘んで互いに内側に向けて屈曲させる。このとき、両側の支持片5は内側に向けて弾性変形され、連結片6は上方に凹となるように弾性変形される。そして、両カバー31,32の上端領域を互いに嵌合させる。すなわち、左カバー片31の係合部33を右カバー片32の係合溝34に挿入させ、係合凹部33aに係合凸部34aを係合させる。これにより、両カバー片31、32の先端領域が連結された状態とされる。
【0024】
両カバー片31,32の内側に向けての屈曲と同時に、各カバー片31,32の基部31a,32aは下方に向けて移動されるので、各基部31a,32aに立設されている左右の挟持片35,36は互いに近接される。これにより、ケーブル束CAは両挟持片35,36と連結片6とで囲まれる空間に閉じ込められ、両挟持片35,36と連結片6によって保持される。
図4はこの保持した状態の斜視図である。この保持は主に両挟持片35,36の弾性力による挟持により行われるが、挟持片35,36は所定の強度に形成されており、その弾性力を任意の大きくに設定することができるので、ケーブル束CAの挟持力、すなわち保持力を大きくすることができる。
【0025】
また、両挟持片35、36は幅寸法がカバー片31,32の幅寸法の1/2であり、近接されたときにはそれぞれの縦リブ35b,36bが幅方向にほぼ重なるので、これら縦リブ35b,36bにより挟持されるケーブル束CAは各縦リブ35b,36bに側方から押圧されて表面が凹状に変形される。これにより、両挟持片35、36によるケーブル束CAの挟持力が大きくなり、ケーブル束CAが確実に保持されて長さ方向に移動されることが防止される。このように、ケーブル束CAはケーブル保持具1によって抜け出ることが防止され、また長さ方向に移動されることが防止され、安定した保持が行われる。
【0026】
一方、
図5はケーブルの本数が4本以上、ここでは11本のケーブル束CAを保持する形態を示す図である。
図5(a)は
図3(a)と同様の図であり、ケーブル保持具1を固定部2によりシャーシCHに固定する。そして、直上からケーブル束CAが両挟持片31,32の間に内挿される。この状態から作業者が左右のカバー片31,32を指等で摘んで互いに内側に向けて屈曲させると、
図5(b)のように、カバー片31,32の内側に向けての屈曲と同時に左右の挟持片35,36が互いに近接されて行く。このとき、くさび状をした両挟持片35,36の屈曲部35a,36aは、くさび作用によってケーブル束CAの複数のケーブルCの間に進入される。
【0027】
そして、
図5(c)のように、両挟持片35,36の屈曲部35a,36aが正面方向から見てほぼ重なる状態にまで近接されるのに従ってケーブルCは屈曲部よりも下側のケーブルCと上側のケーブルCとに分離される。分離された下側のケーブルCは両挟持片35,36の基端部と連結片6とで囲まれる空間に閉じ込められ、両挟持片35,36と連結片6によって保持される。このとき、下側に分離されるケーブルCの本数は両挟持片35,36の基端部の寸法により決められる。この実施形態では、前記したように3本のケーブルを好適に保持することができるように両挟持片35,36の基端部の寸法を設定しているので、この場合においては3本のケーブルを下側に分離することになる。このように両挟持片35,36で3本のケーブルCを保持する形態は、
図3に示した場合と同じになり、下側のケーブルCを確実に保持することができ、ケーブルCが長さ方向に移動されることが防止される。
【0028】
一方、上側に分離されたケーブルCは、両挟持片35,36の先端部と両カバー片31,32との間において、これらにより囲まれるようにして保持される。両挟持片35,36は屈曲部35a,36aを支点にして外側から下側に向けて屈曲されるので、先端部は上方に向けて、すなわちカバー片31,32に向けての弾性復帰力が生じており、この弾性復帰力により両カバー片31,32との間でケーブルCを保持することになる。これにより、上側に分離されたケーブルCも確実に保持され、ケーブルCの長さ方向の移動が有効に防止される。
【0029】
結果として、ケーブル束CAを構成する全てのケーブルCがケーブル保持具1により保持されることになり、ケーブル束CAの長さ方向の移動が有効に防止される。なお、ケーブル束CAを構成しているケーブルCの本数によっては、上側に分離されたケーブルが僅かな本数となる場合がある。この場合には、両挟持片35,36の先端部の弾性変形量が少なくなり、両挟持片35,36と両カバー片31,32による挟持力が小さくなる。しかし、下側に分離されるケーブルの本数は挟持片35,36の寸法により所定の本数、ここでは3本に設定されているので、ケーブル束CAを構成している3本のケーブルCは確実に保持される。前記したように、ケーブル束CAは複数本のケーブルCが結束されているので、一部のケーブルCが保持されて長さ方向の移動が防止されれば、他のケーブルも一体的に長さ方向の移動が防止され、結果としてケーブル束CAの長さ方向の移動が防止されることになる。
【0030】
以上のように、実施形態のケーブル保持具1は、ケーブル束を構成するケーブルの本数が異なる場合においても、全部のケーブル又は一部のケーブルを確実に保持することができるので、ケーブル束を確実に保持することができ、ケーブル束が接続される機器における障害を未然に防止することができる。
【0031】
以上の実施形態は、両挟持片の間に複数本(3本)のケーブルを保持する例であるが、ケーブル束を構成しているケーブルの径寸法によっては両挟持片の間に1本のケーブルを保持する構成であってもよい。この場合には、当該1本以外のケーブルは両挟持片の先端部とカバー片との間に保持されることになる。
【0032】
本発明は実施形態に記載の構成に限定されるものではない。例えば、一対のカバー片の各先端領域を係合させる構成は、両カバー片を着脱可能に連結させる構成であればよい。また、一対の挟持片はそれぞれの幅寸法がカバー片と同じ幅寸法であってもよい。この場合には両挟持片は互いに対向状態に近接されてケーブルを挟持することになる。また、挟持片の屈曲部は、ケーブル束を構成するケーブルの間に進入してケーブルを上側と下側に分離させることができるくさび状であればよい。
【0033】
本発明におけるケーブル保持具では、機器等に固定するための固定部の構造は、実施形態の構造に限られるものでなく、異なる嵌合形態での固定構造、あるいはネジ等の固定部材を用いた固定構造であってもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 ケーブル保持具
2 固定部
3 保持部
4 ベース
5 支持片
6 連結片
31,32 カバー片
31a,32a 基部
33 係合部
34 係合溝
35,36 挟持片
35a,36a 屈曲部
CA ケーブル束(ケーブル)
C ケーブル
CH シャーシ(機器)