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特開2022-13852積層コアの軸線方向固定性が改良された電気機械用のロータ、ならびに、そのようなロータを含む電気機械および車両
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  • 特開-積層コアの軸線方向固定性が改良された電気機械用のロータ、ならびに、そのようなロータを含む電気機械および車両 図1
  • 特開-積層コアの軸線方向固定性が改良された電気機械用のロータ、ならびに、そのようなロータを含む電気機械および車両 図2
  • 特開-積層コアの軸線方向固定性が改良された電気機械用のロータ、ならびに、そのようなロータを含む電気機械および車両 図3
  • 特開-積層コアの軸線方向固定性が改良された電気機械用のロータ、ならびに、そのようなロータを含む電気機械および車両 図4
  • 特開-積層コアの軸線方向固定性が改良された電気機械用のロータ、ならびに、そのようなロータを含む電気機械および車両 図5
  • 特開-積層コアの軸線方向固定性が改良された電気機械用のロータ、ならびに、そのようなロータを含む電気機械および車両 図6
  • 特開-積層コアの軸線方向固定性が改良された電気機械用のロータ、ならびに、そのようなロータを含む電気機械および車両 図7
  • 特開-積層コアの軸線方向固定性が改良された電気機械用のロータ、ならびに、そのようなロータを含む電気機械および車両 図8
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022013852
(43)【公開日】2022-01-18
(54)【発明の名称】積層コアの軸線方向固定性が改良された電気機械用のロータ、ならびに、そのようなロータを含む電気機械および車両
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/28 20060101AFI20220111BHJP
【FI】
H02K1/28 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021107549
(22)【出願日】2021-06-29
(31)【優先権主張番号】10 2020 117 219.2
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】521219051
【氏名又は名称】ヴァレオ、シーメンス、イーオートモーティブ、ジャーマニー、ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】VALEO SIEMENS EAUTOMOTIVE GERMANY GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー、シュレーレス
【テーマコード(参考)】
5H601
【Fターム(参考)】
5H601AA08
5H601BB20
5H601DD01
5H601DD11
5H601DD25
5H601EE20
5H601GA02
5H601GA45
5H601GC02
5H601GC12
5H601JJ05
5H601KK08
5H601KK13
5H601KK17
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ロータ積層コアの扇状分離、すなわち、ロータ積層体どうしが互いに離間する向きに移動してしまうことを、効果的に防止するロータを提供する。
【解決手段】ロータ1aは、ロータシャフト2aと、ロータシャフトに圧力嵌めされたロータ積層コア3と、ロータ積層コアに隣接又は近接してロータ積層コアの第1面上に位置する第1ロータホルダ5aと、ロータ積層コアに隣接又は近接してロータ積層コアの反対側の第2面上に位置する第2ロータホルダ6aと、を備える。さらに、ロータは、ロータシャフトの第1溝内に位置し且つロータ積層コアを軸線方向に固定する第1シャフト固定リング7を備える。加えて、ステータ、ロータ1aと、を備える電気機械を規定するとともに、少なくとも2つの軸部材を有する車両であって、少なくとも一方の軸部材が駆動される車両を規定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械(14)用のロータ(1、1a~1f)であって、
-ロータシャフト(2、2a~2f)と、
-前記ロータシャフト(2、2a~2f)上に圧力嵌めにより位置するロータ積層コア(3)と、
-前記ロータ積層コア(3)に隣接又近接して前記ロータ積層コア(3)の第1面上に配置された第1ロータホルダ(5a~5c)、および、前記ロータ積層コア(3)に隣接又は近接して前記ロータ積層コア(3)の反対側の第2面上に配置された第2ロータホルダ(6a~6d)と、を備え、
-前記ロータシャフト(2、2a~2f)の第1溝内に位置し、かつ、前記ロータ積層コア(3)を軸線方向に固定する第1シャフト固定リング(7)と、を備える、ロータ(1、1a~1f)。
【請求項2】
前記ロータシャフト(2、2a~2f)の第2溝内に位置し且つ前記ロータ積層コア(3)を軸線方向に固定する第2シャフト固定リング(8)を備え、
前記第2溝は、前記ロータ積層コア(3)に関して前記第1溝とは反対側に配置されている、請求項1に記載のロータ(1、1a~1f)。
【請求項3】
前記ロータシャフト(2、2a~2f)上にシャフトショルダ(11)を備え、
前記シャフトショルダは、前記ロータ積層コア(3)とは反対側から前記第2ロータホルダ(6a~6d)に隣接又は近接して配置され、前記ロータ積層コア(3)を軸線方向に固定する、請求項1に記載のロータ(1、1a~1f)。
【請求項4】
前記第1シャフト固定リング(7)および前記第1溝は、前記ロータ積層コア(3)とは反対側から前記第1ロータホルダ(5a~5c)に隣接又は近接して配置され、及び/又は、前記第2シャフト固定リング(8)および前記第2溝は、前記ロータ積層コア(3)とは反対側から前記第2ロータホルダ(6a~6d)に隣接又は近接して配置されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のロータ(1、1a~1f)。
【請求項5】
前記第1シャフト固定リング(7)及び/又は前記第2シャフト固定リング(8)は、前記ロータシャフト(2、2a~2f)のシャフト突起に配置されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のロータ(1、1a~1f)。
【請求項6】
第1ベアリング(9)を備え、
前記第1ベアリング(9)の内輪は、前記ロータ積層コア(3)とは反対側から前記第1ロータホルダ(5a~5c)に隣接または近接して配置され、
前記第1シャフト固定リング(7)は、前記第1ベアリング(9)の前記内輪の外側に配置されている、請求項1~5のいずれか一項に記載のロータ(1、1a~1f)。
【請求項7】
第2ベアリング(10)を備え、
前記第2ベアリング(10)の内輪は、前記ロータ積層コア(3)とは反対側から前記第2ロータホルダ(6a~6d)に隣接して配置され、
前記第2シャフト固定リング(8)は、前記第2ベアリング(10)の前記内輪の外側に配置され、
前記第2ベアリング(10)は、前記ロータ積層コア(3)に関して前記第1ベアリング(9)とは反対側に配置されている、請求項6に記載のロータ(1、1a~1f)。
【請求項8】
前記第1ベアリング(9)の前記内輪と前記第1ロータホルダ(5a~5c)との間の第1スペーサディスク(12)または第1スペーサスリーブ、及び/又は、前記第2ベアリング(10)の前記内輪と前記第2ロータホルダ(6a~6d)との間の第2スペーサディスク(13)または第2スペーサスリーブ、をさらに備える、請求項6または7に記載のロータ(1、1a~1f)。
【請求項9】
ステータ(15)を備える電気機械(14)であって、前記ステータ(15)に対して前記ロータ(1、1a~1f)の回転軸線(A)まわりに回転可能に取り付けられる、請求項1~8のいずれか一項に記載のロータ(1、1a~1f)を備える、電気機械(14)。
【請求項10】
少なくとも2つの軸部材を有する車両(16)であって、少なくとも一方の前記軸部材が駆動され、前記駆動が、請求項9に記載の電気機械(14)によって、少なくとも部分的にまたは一時的に実行される、車両(16)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械用のロータに関し、このロータは、ロータシャフトと、ロータシャフト上に圧力嵌めにより位置する(そして、複数のロータ積層体を有した)ロータ積層コアと、このロータ積層コアに隣接又は近接してこのロータ積層コアの第1面上に配置された第1ロータホルダと、ロータ積層コアに隣接又は近接してロータ積層コアの反対側の第2面上に配置された第2ロータホルダと、を備える。さらに、本発明は、ステータと上記のタイプのロータとを含む電気機械に関し、ロータは、ステータに対してロータの回転軸線まわりに回転可能に取り付けられている。そして、本発明は、少なくとも2つの軸部材を有した車両であって、少なくとも一方の軸部材が駆動され、この駆動が、上記のタイプの電気機械によって少なくとも部分的にまたは一時的に実行される車両に関する。
【背景技術】
【0002】
ロータ積層コアをロータシャフトに取り付ける際には、ロータ積層体どうしを、プレスデバイスによって互いにプレスし、これにより、ロータ積層体どうしの間には、可能な限り空隙がない、あるいは、わずかな空隙しか生じないものとする。平面形状からの必然的な逸脱のために、ロータ積層体は、スプリングパックとして機能する。扇状分離(ファンアウト、fanning out)は、ロータシャフトへのロータ積層コアの圧力嵌めを適切に選択することによって解消される。それにもかかわらず、時間の経過とともに、電気機械の動作の際に、ロータ積層コアの扇状分離、すなわち、ロータ積層体どうしが互いに離間する向きに移動してしまうことが、起こり得る。
【発明の概要】
【0003】
したがって、本発明の1つの目的は、改良されたロータ、改良された電気機械、および改良された車両、を規定することである。格別の目的は、(特に、電気機械の動作の際に発生するような)ロータ積層コアの扇状分離、すなわち、ロータ積層体どうしが互いに離間する向きに移動してしまうことを、効果的に防止することである。
【0004】
本発明の目的は、上記のタイプのロータによって達成され、このロータは、第1シャフト固定リングを備える。第1シャフト固定リングは、ロータシャフトの第1溝内に位置し、かつ、ロータ積層コアを軸線方向に固定する。
【0005】
また、本発明の目的は、ステータと上記のタイプのロータとを含む電気機械によって達成され、ロータは、ステータに対してロータの回転軸線まわりに回転可能に取り付けられている。
【0006】
さらに、本発明の目的は、少なくとも2つの軸部材を含む車両であって、少なくとも一方の軸部材が駆動される車両によって達成され、この駆動は、上記のタイプの電気機械によって少なくとも部分的にまたは一時的に実行される。
【0007】
提案した対策を利用することにより、ロータ積層コアの扇状分離、すなわち、ロータ積層体どうしが互いに離間する向きに移動してしまうことを、効果的に回避することができる。そのプロセスにおいて、2つのロータホルダは、軸線方向の力を外部の径方向領域へと逃がすようにも機能し、これは、シャフト固定リングだけでは実現していなかった機能である。一般に、シャフト固定リングは、第1に、発生する軸線方向の力を吸収し得るように、第2に、電気機械の定格速度においては、浮き上がらないようにすなわち脱離しないように、選択される。例えば、シャフト固定リングは、DIN471に基づいて設計することができる。
【0008】
ロータホルダは、ロータ積層コアの外縁あたりにまで延びている限りにおいては、それらの形状に関してあまり制限はない。所与の文脈では、「外縁あたりにまで」という用語は、特に、第1ロータホルダまたは第2ロータホルダがロータ積層コアに対して接触している最大直径が、ロータ積層コアの外径に対して少なくとも0.7倍であることを意味するものとして、理解することができる。特に、ロータホルダは、ディスク状、ホイール状(スポーク付き)、または星状、とすることができる。
【0009】
ロータシャフトの第2溝内に位置し且つロータ積層コアを軸線方向に固定する第2シャフト固定リングを、ロータが有している場合には、第2溝が、ロータ積層コアに関して第1溝とは反対側に配置されていることが好都合である。このようにして、積層コアは、シャフト固定リングによって両側において軸線方向に固定される。しかしながら、ロータが、ロータシャフトにシャフトショルダを有し、シャフトショルダが、ロータ積層コアを軸線方向に固定することも、また、想定される。このようにして、ロータ積層コアは、一方の側では、シャフトショルダによって軸線方向に固定され、他方の側では、第1シャフト固定リングによって軸線方向に固定される。
【0010】
特に、第1シャフト固定リングおよび第1溝は、ロータ積層コアとは反対側から第1ロータホルダに隣接又は近接して配置され得る、及び/又は、第2シャフト固定リングおよび第2溝は、ロータ積層コアとは反対側から第2ロータホルダに隣接又は近接して配置され得る。シャフトショルダは、また、第1ロータホルダに隣接又は近接して配置され得る、あるいは、第2ロータホルダに隣接又は近接して配置され得る。
【0011】
本発明のさらに有利な改良点および進展は、従属請求項の中に、および、図面と一緒に参照した際の本明細書の中に、見出すことができる。
【0012】
第1シャフト固定リング及び/又は第2シャフト固定リングが、ロータシャフトのシャフト突出部上に配置されていることが有利である。電気機械の超高速回転時には、ロータシャフトのうちの、ロータ積層コアが位置しているシャフト径から、シャフト固定リングが、浮き上がったり脱離したりすることがあり得る。この理由のために、シャフト固定リングを、ロータシャフトのうちの、直径がより小さなシャフト突出部上に配置することが好都合であり得る。この対策により、浮き上がり発生速度を増大させる。
【0013】
加えて、ロータが第1(回転)ベアリングを有する場合には、第1ベアリングの内輪が、ロータ積層コアとは反対側から第1ロータホルダに隣接又は近接して配置され、第1シャフト固定リングが、第1ベアリングの内輪の外側に配置されていることが有利である。さらに、ロータが第2(回転)ベアリングを有する場合には、第2ベアリングの内輪が、ロータ積層コアとは反対側から第2ロータホルダに隣接して配置され、第2シャフト固定リングが、第2ベアリングの内輪の外側に配置され、さらに、第2ベアリングが、ロータ積層コアに関して第1ベアリングとは反対側に配置されていることが有利である。この設計では、第1ベアリングの内輪、および/または、第2ベアリングの内輪は、ロータ積層コアと一緒に軸線方向に固定されている。このようにして、複数の機能が実現される。第1に、ロータ積層コア及びベアリングの両方が、軸線方向に固定され、第2に、シャフト固定リングが、比較的小さな直径の部分に位置しており、その結果、これらシャフト固定リングの浮き上がり発生速度を増大させる。この設計は、また、特にコンパクトである。この設計では、ベアリングの内輪が軸線方向に固定されているので、必要とされ得るフローティングベアリングは、一方のベアリングの外輪によって実装することができる。一般に、ベアリングは、ロールベアリングまたはスライドベアリングとして設計することができる。
【0014】
また、第1ベアリングの内輪と第1ロータホルダとの間に第1スペーサディスクまたは第1スペーサスリーブが配置されることが好都合であり、ならびに/もしくは、第2ベアリングの内輪と第2ロータホルダとの間に第2スペーサディスクまたは第2スペーサスリーブが配置されることが好都合である。その結果、ベアリングの外輪は、自由に回転し得るものとされ、ロータホルダが対応する突出部またはクリアランスを何ら有していない場合には、ロータホルダを擦ってしまうことがない。
【0015】
本発明における上記の改良点および進展は、任意の所望の態様で組み合わせることができる。
【0016】
本発明について、添付図面における概略図において規定された例示的な実施形態を参照して、以下においてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、電気機械用のロータを示しており、このロータにおいて、ロータ積層コアは、2つのシャフト固定リングによって軸線方向に固定されている。
図2図2は、電気機械用のロータを示しており、このロータにおいて、ロータ積層コアは、シャフト固定リングと、ロータシャフトのシャフトショルダと、によって軸線方向に固定されている。
図3図3は、電気機械用のロータを示しており、このロータにおいて、ロータ積層コアは、2つのシャフト固定リングによって軸線方向に固定されており、これらのシャフト固定リングは、シャフトの突出部上に位置している。
図4図4は、図3におけるロータと同様のロータを示しているものの、ロータ積層コアは、シャフト固定リングと、ロータシャフトのシャフトショルダと、によって軸線方向に固定されている。
図5図5は、電気機械用のロータを示しており、このロータでは、ロータ積層コアは、2つのシャフト固定リングによって、ロータのロールベアリングと一緒に、軸線方向に固定されている。
図6図6は、図5のロータと同様のロータを示しているものの、ロータ積層コアは、シャフト固定リング及びロータシャフトのシャフトショルダによって軸線方向に固定されている。
図7図7は、図5のロータと同様のロータを示しているものの、ロータホルダとロールベアリングとの間にスペーサディスクが設けられている。
図8図8は、提案したタイプのロータを備える電気機械を示しており、この電気機械は、車両に搭載されている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
最初に、様々に説明する例示的な実施形態では、同一の部材には、同じ参照符号が付されていること、あるいは同じ部材名称が付されていること、場合によっては異なるインデックスが付されていることに、言及しておく。本明細書内に含まれている部材に関する開示内容は、同じ参照符号または同じ部材名称を有した別の部材に対しても、同様に適用することができる。また、本明細書において位置を示すために選択された用語は、例えば、「上」、「下」、「後」、「前」、「横」等の用語は、直接的に説明して図示されている図面を参照しており、位置の変更があった場合には、新しい位置に対して同様に適用することができる。
【0019】
図1は、電気機械用のロータ1aを示しており、このロータ1aは、ロータシャフト2aと、多数のロータ積層体4を含むロータ積層コア3であり、ロータシャフト2aに圧力嵌めによって固定されたロータ積層コア3と、このロータ積層コア3に隣接又は近接してこのロータ積層コア3の第1面上に配置された第1ロータホルダ5aと、ロータ積層コア3に隣接又は近接してロータ積層コア3の反対側の第2面上に配置された第2ロータホルダ6aと、を備えている。
【0020】
さらに、ロータ1aは、ロータ積層コア3を軸線方向に固定する第1シャフト固定リング7と、ロータ積層コア3を軸線方向に固定する第2シャフト固定リング8と、を備えている。第1シャフト固定リング7は、ロータシャフト2aの第1溝内に位置している。第2シャフト固定リング8は、ロータシャフト2aの第2溝内に位置している。第2溝は、ロータ積層コア3に関して第1溝とは反対側に配置されている。
【0021】
ロータ積層コア3をロータシャフト2aに取り付ける際には、ロータ積層体4どうしを、プレスデバイスによって互いにプレスし、これにより、ロータ積層体3どうしの間には、可能な限り空隙がない、あるいは、わずかな空隙しか生じないものとする。平面形状からの必然的な逸脱のために、ロータ積層体4は、スプリングパックとして機能する。扇状分離(ファンアウト、fanning out)は、ロータシャフト2aへのロータ積層コア3の圧力嵌めを適切に選択することで解消される。それにもかかわらず、時間の経過とともに電気機械の動作時に、ロータ積層コア3の扇状分離、すなわち、ロータ積層体4どうしが互いに離間する向きに移動してしまうことが、起こり得る。これを防止するために、提案するロータ1aは、第1シャフト固定リング7に対して軸線方向に固定された第1ロータホルダ5aと、第2シャフト固定リング8に対して軸線方向に固定された第2ロータホルダ6aと、を有している。したがって、ロータ積層コア3の扇状分離、すなわち、ロータ積層体4どうしが互いに離間する向きに移動してしまうことを、効果的に回避することができる。そのプロセスでは、2つのロータホルダ5a、6aは、軸線方向の力を外部の径方向領域へと逃がすようにも機能し、これは、シャフト固定リング7、8だけでは実現しない機能である。一般に、シャフト固定リング7、8は、第1に、発生する軸線方向の力を吸収し得るように、第2に、電気機械の定格速度においては、浮き上がらないようにすなわち脱離しないように、選択される。図1に示すロータ1aの場合には、第1シャフト固定リング7および第1溝は、ロータ積層コア3とは反対側から第1ロータホルダ5aに隣接又は近接して配置され、第2シャフト固定リング8および第2溝は、ロータ積層コア3とは反対側から第2ロータホルダ6aに隣接又は近接して配置されている。しかしながら、これは、必須要件ではない(図5および図6とも比較されたい)。さらに、ロータ1aは、ロータシャフト2aのシャフト突出部上に位置した2つのロールベアリング9、10であり、電気機械のステータ内においてロータ1aを回転可能に取り付けるように機能するロールベアリング9、10を備える(図8も参照されたい)。ロールベアリング9、10に代えて、この例では、ならびに以下のすべての例では、原理的に、スライドベアリングを使用することもできる。
【0022】
図2は、わずかに改変されたロータ1bを示しており、このロータ1bは、図1に示すロータ1aと極めて同様であり、第2シャフト固定リング8に代えて、第2ロータホルダ6aを支持するシャフトショルダ11が設けられている点において相違している。シャフトショルダ11は、ロータ積層コア3とは反対側から第2ロータホルダ6aに隣接又は近接して、ロータ2b上に配置されている。
【0023】
電気機械の超高速回転時には、ロータシャフト2cのうちの、ロータ積層コア3が位置しているシャフト径から、シャフト固定リング7、8が、浮き上がったり脱離したりすることがあり得る。この理由のために、図3に示すように、シャフト固定リング7、8を、ロータシャフト2cのうちの、直径がより小さな更なるシャフト突出部(突起)上に配置することが好都合であり得る。この対策により、浮き上がり発生速度を増大させるけれども、直径が小さくなっても、シャフト固定リング7、8が、発生する軸線方向の力を逃がし得ることが確保されるべきである。さらに、ロータホルダ5b、6bは、ロータ積層体4がロータシャフト2cの中央部分に位置することを保証でき、かつ、そこから滑り落ち得ないように、内側へとわずかにオフセットされている。
【0024】
図4は、再び、わずかに改変されたロータ1dを示しており、このロータ1dは、図3に示すロータ1cと極めて同様であり、第2シャフト固定リング8に代えて、第2ロータホルダ6aを支持するシャフトショルダ11が設けられている点において相違している。シャフトショルダ11は、ロータ積層コア3とは反対側から第2ロータホルダ6aに隣接又は近接して、ロータシャフト2d上に配置されている。この場合、第2ロータホルダ6aは、オフセットされている必要はない。
【0025】
図5は、ロールベアリング9、10の内輪がロータ積層コア3と一緒に軸線方向に固定されたロータ1eを示している。この場合、第1ロールベアリング9の内輪は、ロータ積層コア3とは反対側から第1ロータホルダ5cに隣接又は近接して配置されており、第1ロールベアリング9の内輪の外側には、第1シャフト固定リング7が配置されている。同様に、第2ロールベアリング10の内輪は、ロータ積層コア3とは反対側から第2ロータホルダ6cに隣接又は近接して配置されており、第2ロールベアリング10の内輪の外側には、第2シャフト固定リング8が配置されている。第2ロールベアリング10は、既に図示した他の実施形態と同様に、ロータ積層コア3に関して第1ロールベアリング9とは反対側に配置されている。提案した対策により、複数の機能が達成される。第1に、ロータ積層コア3とロールベアリング9、10との両方が、軸線方向に固定され、第2に、シャフト固定リング7、8が、比較的小さな直径に位置しており、その結果、これらシャフト固定リングの浮き上がり発生速度を増大させる。この設計は、また、特にコンパクトである。この設計では、ロールベアリング9、10の内輪が軸線方向に固定されているので、必要とされ得るフローティングベアリングは、一方のロールベアリング9、10の外輪によって実装することができる。
【0026】
図6は、再び、わずかに改変されたロータ1fを示しており、このロータ1fは、図5に示すロータ1eと極めて同様であり、第2シャフト固定リング8に代えて、第2ロータホルダ6dを支持するシャフトショルダ11が再び設けられている点において相違している。シャフトショルダ11は、ロータ積層コア3とは反対側から第2ロータホルダ6dに隣接又は近接して、ロータシャフト2f上に配置されている。
【0027】
図5および図6に示す実施形態では、ロータホルダ5c、6cは、ロールベアリング9、10に対面した内側端部のところが少しだけ突出しており、このため、ロールベアリング9、10の外輪が解放されていて、自由に回転できるようになっている。これは有利ではあるが、必須要件ではない。これに代えて、図7に示すように、第1ロールベアリング9の内輪と第1ロータホルダ5bとの間には、第1スペーサディスク12または第1スペーサスリーブを設けることができ、そして、第2ロールベアリング10の内輪と第2ロータホルダ6bとの間には、第2スペーサディスク13または第2スペーサスリーブを設けることができる。
【0028】
そして、図8は、ステータ15と、ステータ15に対して回転軸線Aまわりにロールベアリング9、10を利用して回転可能に取り付けられたロータ1と、を備える電気機械14を示している。この例では、電気機械14(すなわち、電気モータ)は、少なくとも2つの軸部材を有した車両16であって少なくとも一方の軸部材が駆動される車両16に、搭載されている。具体的には、電気モータ14は、任意選択的なギヤ機構17と、差動ギヤ機構18と、に対して接続されている。後方の軸部材の半軸部材19が、差動ギヤ機構18に隣接している。さらに、被駆動ホイール20が、半軸部材19に取り付けられている。車両16の駆動は、電気機械14によって少なくとも部分的にまたは一時的に実行される。すなわち、電気機械14は、車両16の単独駆動のために機能することができる、あるいは、例えば、内燃機関と組み合わせて提供することができる(ハイブリッド駆動)。
【0029】
さらに、保護範囲が特許請求の範囲によって決定されることに留意されたい。しかしながら、明細書および図面は、特許請求の範囲を解釈するために使用することができる。図面に含まれる特徴点は、互換的なものとすることができ、所望に応じて互いに組み合わせることができる。特に、実際には、図示したデバイスが、図示したものよりも多数のあるいは少数の構成要素を含み得ることにも留意されたい。場合によっては、図示したデバイスまたはその構成部材は、縮尺に忠実でない態様で図示されたり、および/または、サイズが拡大されたり、および/または、サイズが縮小されたり、されることもある。
【符号の説明】
【0030】
1、1a~1f: ロータ
2、2a~2f: ロータシャフト
3: ロータ積層コア
4: ロータ積層体
5a~5c: 第1ロータホルダ
6a~6d: 第2ロータホルダ
7: 第1シャフト固定リング
8: 第2シャフト固定リング
9: 第1ロールベアリング
10: 第2ロールベアリング
11: シャフトショルダ
12: 第1スペーサディスク
13: 第2スペーサディスク
14: 電気機械
15: ステータ
16: 車両
17: ギヤ機構
18: 差動ギヤ機構
19: 半車軸
20: ホイール
A: ロータ軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【外国語明細書】