(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138530
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】アルカリ二次電池用電極及びアルカリ二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/24 20060101AFI20220915BHJP
H01M 10/28 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
H01M4/24 J
H01M10/28 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021038460
(22)【出願日】2021-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】佐口 明
【テーマコード(参考)】
5H028
5H050
【Fターム(参考)】
5H028AA05
5H028CC08
5H028CC10
5H028CC12
5H028EE01
5H050AA19
5H050BA14
5H050CA04
5H050CB16
5H050DA03
5H050FA05
5H050FA08
5H050FA12
5H050HA12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電池内圧上昇を抑制するアルカリ二次電池用電極を提供する。
【解決手段】アルカリ二次電池用電極は、帯状の芯体と、芯体に担持された電極合剤層とを備える。電極は、ガス発生電極にセパレータ28を介して対向し、ガス発生電極及びセパレータ28とともに巻回されて渦巻き状をなす。電極は、渦巻き状における巻き始めの第一周部58であって、ガス発生電極とのみ対向する第一周部58と、二周目以降の中間部56であって、内面54及び外面52がガス発生電極と対向する中間部56と、最外周部50であって、内面54のみがガス発生電極と対向する最外周部50とを有する。電極合剤層は、電池の充電末期に発生するガスを消費する反応を起こす物質を含む。この物質は、第一周部58に最も多く含まれる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ二次電池の容器の中に収容されている電極群に含まれるアルカリ二次電池用電極であって、
帯状の芯体と、
前記芯体に担持された電極合剤層と、を備えて構成され、
前記アルカリ二次電池用電極は、前記アルカリ二次電池の充電末期にガスを発生させるガス発生電極にセパレータを介して対向し、前記ガス発生電極及び前記セパレータとともに巻回されて渦巻き状をなしており、前記渦巻き状における巻き始めの第一周部であって、外面のみが前記ガス発生電極と対向している第一周部と、前記渦巻き状における巻回の二周目以降の中間部であって、内面及び外面が前記ガス発生電極と対向している中間部と、前記渦巻き状における巻回の最外周部であって、内面のみが前記ガス発生電極と対向している最外周部と、を有しており、
前記電極合剤層は、前記アルカリ二次電池の充電末期に発生する前記ガスを消費する反応を起こす反応物質を含んでおり、
前記反応物質は、前記中間部及び前記最外周部に比べ前記第一周部に多く含まれている、アルカリ二次電池用電極。
【請求項2】
前記反応物質は、前記第一周部に最も多く存在し、前記中間部の前記反応物質は前記第一周部の前記反応物質よりも少なく、前記最外周部の前記反応物質は前記中間部の前記反応物質よりも少ない、請求項1に記載のアルカリ二次電池用電極。
【請求項3】
前記ガスは、酸素ガスであり、前記反応物質は、水素である、請求項1又は2に記載のアルカリ二次電池用電極。
【請求項4】
前記電極合剤層は、前記水素を吸蔵及び放出することができる水素吸蔵合金を含んでおり、
前記水素吸蔵合金は、前記中間部及び前記最外周部に比べ前記第一周部に多く存在する、請求項3に記載のアルカリ二次電池用電極。
【請求項5】
前記水素吸蔵合金は、前記第一周部に最も多く存在し、前記中間部の前記水素吸蔵合金は前記第一周部の前記水素吸蔵合金よりも少なく、前記最外周部の前記水素吸蔵合金は前記中間部の前記水素吸蔵合金よりも少ない、請求項4に記載のアルカリ二次電池用電極。
【請求項6】
容器と、
前記容器内にアルカリ電解液とともに収容された電極群とを備え、
前記電極群は、正極及び負極がセパレータを介して重ね合わされた状態で巻回された渦巻き状をなしており、
前記正極は、請求項1に記載されたガス発生電極であり、
前記負極は、請求項1~5の何れかに記載されたアルカリ二次電池用電極である、アルカリ二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ二次電池用電極及び係る電極を用いたアルカリ二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
アルカリ二次電池の一つとして、ニッケル水素二次電池が知られている。ニッケル水素二次電池は、ニッケルカドミウム二次電池に比べて、高容量であり、且つ環境安全性にも優れている。そこで、ニッケル水素二次電池は、各種のポータブル機器やハイブリッド電気自動車等、さまざまな用途に使用されている。ニッケル水素二次電池に対し、さまざまな用途が見出されている一方で、低コスト化が望まれている。
【0003】
例えば、水素吸蔵合金を含む負極のうち、正極と対向しない巻始部分及び巻終部分の合剤層を薄くすることで、電池性能を維持したままニッケル水素二次電池の低コスト化を図ることが提案されている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、負極のうち、正極と対向しない巻始部分の合剤層を薄くしたニッケル水素二次電池では、電池内圧が高くなる傾向があった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みて、その目的は、電池内圧上昇の抑制に寄与するアルカリ二次電池用電極及びアルカリ二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のアルカリ二次電池用電極は、アルカリ二次電池の容器の中に収容されている電極群に含まれるアルカリ二次電池用電極であって、帯状の芯体と、前記芯体に担持された電極合剤層と、を備えて構成され、前記アルカリ二次電池用電極は、前記アルカリ二次電池の充電末期にガスを発生させるガス発生電極にセパレータを介して対向し、前記ガス発生電極及び前記セパレータとともに巻回されて渦巻き状をなしており、前記渦巻き状における巻き始めの第一周部であって、外面のみが前記ガス発生電極と対向している第一周部と、前記渦巻き状における巻回の二周目以降の中間部であって、内面及び外面が前記ガス発生電極と対向している中間部と、前記渦巻き状における巻回の最外周部であって、内面のみが前記ガス発生電極と対向している最外周部と、を有しており、前記電極合剤層は、前記アルカリ二次電池の充電末期に発生する前記ガスを消費する反応を起こす反応物質を含んでおり、前記反応物質は、前記中間部及び前記最外周部に比べ前記第一周部に多く含まれている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のアルカリ二次電池用電極によれば、第一周部の反応物質が、ガス発生電極から生じて電池内の余剰空間に溜まるガスを消費するので、電池内圧の上昇を抑制する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施の形態に係るアルカリ二次電池を部分的に破断して示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すアルカリ二次電池の横断面図である。
【
図3】
図1に示すアルカリ二次電池に用いられる負極を示す展開図である。
【
図4】負極の第一周部に塗布される水素吸蔵合金量と電池内圧との関係を示す表である。
【
図5】負極の第一周部に塗布される水素吸蔵合金量と電池内圧との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、一実施の形態に係る電極を含むニッケル水素二次電池(以下、単に電池と称する)を詳細に説明する。本発明が適用される電池は、特に限定されないが、例えば、
図1に示すAAサイズの円筒型電池2である。
【0011】
図1に示すように、電池2は、上端が開口した有底円筒形状をなす外装缶10を備えている。外装缶10の底壁35は、導電性を有し、負極端子として機能する。外装缶10の開口内には、導電性を有する円板形状の蓋板14及びこの蓋板14を囲むリング形状の絶縁パッキン12が配置され、絶縁パッキン12は外装缶10の開口縁をかしめ加工することにより外装缶10の開口縁に固定されている。即ち、蓋板14及び絶縁パッキン12は、互いに協働して外装缶10の開口を気密に閉塞している。
【0012】
蓋板14は、中央にガス抜き孔16を有し、蓋板14の外面上には、ガス抜き孔16を塞ぐゴム製の弁体18が配置されている。更に、蓋板14の外面上には、弁体18を覆うようにしてフランジ付き円筒形状の正極端子20が固定され、正極端子20は、弁体18を蓋板14に向けて押圧している。なお、正極端子20には図示しない通気口が設けられている。従って、通常時、ガス抜き孔16は、弁体18によって気密に閉じられている。一方、外装缶10内にガスが発生し、その内圧が高まれば、弁体18は、内圧によって圧縮されてガス抜き孔16を開き、外装缶10内からガス抜き孔16及び正極端子20の通気口を介してガスが放出される。すなわち、ガス抜き孔16、弁体18及び正極端子20は、電池のための安全弁を形成している。
【0013】
外装缶10には、電極群22が収容されている。この電極群22は、それぞれ帯状の正極24、負極26及びセパレータ28からなり、正極24と負極26との間に、セパレータ28が挟み込まれた状態で、渦巻状に巻回されている。すなわち、正極24及び負極26は、セパレータ28を介して互いに重ね合わせられている。
【0014】
外装缶10内では、電極群22の一端と蓋板14との間に正極リード30が配置され、正極リード30の各端部は、それぞれ正極24及び蓋板14に接続されている。すなわち、蓋板14の正極端子20と正極24とは、正極リード30及び蓋板14を介して互いに電気的に接続されている。なお、蓋板14と電極群22との間には、円形の絶縁部材32が配置され、正極リード30は、絶縁部材32に設けられたスリットを通して延びている。電極群22と外装缶10の底部との間にも、円形の絶縁部材34が配置されている。
【0015】
外装缶10内には、所定量のアルカリ電解液(図示せず)が注入されている。アルカリ電解液は、正極24、負極26及びセパレータ28に含浸され、正極24と負極26との間での充放電反応を進行させる。なお、アルカリ電解液の種類としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、及びこれらのうち2つ以上を混合した水溶液等をあげることができ、またアルカリ電解液の濃度についても特には限定されず、例えば、8N(規定度)のものを用いることができる。
【0016】
図2を参照すると、電極群22において、正極24及び負極26は、セパレータ28を間に挟んだ状態で電極群22の径方向に交互に重ね合わされている。
【0017】
詳しくは、電極群22は、それぞれ帯状の正極24、負極26及びセパレータ28を用意し、これら正極24及び負極26を、セパレータ28を介してそれらの一端側から巻芯を用いて渦巻状に巻回して形成される。このため、正極24及び負極26の一端(巻き始め端)36,38が電極群22の中心側に位置付けられ、正極24及び負極26の他端(巻き終わり端)40,42が電極群22の外周側に位置付けられている。巻き始め端36から渦巻状に略360°の角度に巻かれる第一周部(最内周部)58は、負極26の一方の面、すなわち外周面側のみが正極24にセパレータ28を介して対向し、負極26の他方の面、すなわち内周面側は正極24には対向しない。
【0018】
一方、電極群22の外周にはセパレータ28は、巻回されておらず、負極26の最外周部50が電極群22の外周を形成している。すなわち、負極26の最外周部50における電極群の径方向外側の面(外面)52は、セパレータ28で覆われずに露出した状態であり、この外面52と外装缶の周壁とが接触することにより、負極26と外装缶10とが互いに電気的に接続される。また、負極26の最外周部50における電極群の径方向内側の面(内面)54は、セパレータ28を介して正極24と対向している。すなわち、負極26の最外周部50は、内面54でのみ正極24と対向している。
【0019】
更に、負極26においては、最外周部50よりも内側に中間部56が連続しており、この中間部56よりも更に内側の電極群22の巻回中心付近に、第一周部58が連続する。この中間部56は、負極26の外面52及び内面54の両方の面がセパレータ28を介して正極24と対向している部分であり、渦巻き状に巻回されて、電極群22の巻回中心付近まで延びている。第一周部58は、電極群22の中心部に位置付けられており、その外面52がセパレータ28を介して正極24と対向している。
【0020】
このように、渦巻き状に巻回された負極26は、巻回中心から、外面52のみが正極24と対向する第一周部58と、第一周部58に連続するとともに第一周部58の径方向外側に位置して外面52及び内面54の両方が正極24と対向する中間部56と、中間部56に連続すると共に中間部56よりも径方向外側に位置して内面54のみが正極24に対向する最外周部50とからなる。
【0021】
なお、巻回後に巻芯は引き抜かれるので、電極群22の中心部には、巻芯の形状に対応した空間44が存在している。
【0022】
セパレータ28の材料としては、例えば、ポリアミド繊維製不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン繊維製不織布に親水性官能基を付与したものを用いることができる。
【0023】
正極24は、多孔質構造を有する導電性の正極基板と、正極基板の空孔内に保持された正極合剤とからなる。正極基板としては、例えば、ニッケルめっきが施された網状、スポンジ状若しくは繊維状の金属体を用いることができる。
【0024】
正極合剤は、正極活物質粒子、導電剤及び結着剤を含む。この結着剤は、正極活物質粒子及び導電剤を互いに結着させると共に、正極合剤を正極基板に結着させる働きをなす。正極活物質粒子は、水酸化ニッケル粒子又は高次水酸化ニッケル粒子である。なお、水酸化ニッケル粒子は、コバルト、亜鉛、カドミウム等を含む固溶体の形態をなすものであってもよい。正極合剤は、正極基板の空孔内に保持されると正極合剤層を構成する。
【0025】
導電剤としては、例えば、コバルト酸化物(CoO)やコバルト水酸化物(Co(OH)2)などのコバルト化合物及びコバルト(Co)から選択された1種又は2種以上を用いることができる。この導電剤は、必要に応じて正極合剤に添加されるものであり、添加される形態としては、粉末の形態のほか、正極活物質の表面を覆う被覆の形態で正極合剤に含まれていてもよい。
【0026】
負極26は、
図3に示すように、帯状をなす導電性の負極芯体60を有し、この負極芯体60に負極合剤62が担持されている。負極芯体60は、貫通孔が分布されたシート状の金属材からなり、例えば、パンチングメタルシートや、金属粉末を型成形して焼結した焼結基板を用いることができる。なお、負極芯体60は、芯体の一例である。負極合剤は、負極芯体に保持されると負極合剤層を構成する。負極合剤層は、電極合剤層の一例である。
【0027】
負極合剤62は、負極活物質としての水素を吸蔵及び放出可能な水素吸蔵合金粒子、導電剤、及び結着剤を含む。ここで、結着剤としては親水性若しくは疎水性のポリマー等を用いることができ、導電剤としては、黒鉛、カーボンブラック、ケッチェンブラック等を用いることができる。負極合剤62は、負極芯体60の貫通孔内に充填されるばかりでなく、負極芯体60の両面上にもそれぞれ層状にして保持されている。
【0028】
水素吸蔵合金粒子における水素吸蔵合金としては、特に限定されず、一般的な水素吸蔵合金が用いられる。
【実施例0029】
1.電池の作製
<実施例1>
(1)正極24の作製
2.5質量%の亜鉛と1.0質量%のコバルトとを含有する水酸化ニッケル粉末を、硫酸コバルト水溶液に投入した。この硫酸コバルト水溶液を攪拌しながら、1mol/lの水酸化ナトリウム水溶液を徐々に滴下して反応させ、この反応中、pHを11に維持しながら沈殿物を生成させた。次に、生成した沈殿物を濾別して水洗したのち、真空乾燥させることにより、表面が5質量%の水酸化コバルトで被覆された水酸化ニッケル粉末を得た。
【0030】
得られた水酸化コバルトで被覆された水酸化ニッケル粉末を、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液中に投入した。このとき、水酸化コバルトで被覆された水酸化ニッケル粉末の質量をPとし、水酸化ナトリウム水溶液の質量をQとするとき、これらの質量比がP:Q=1:10となるようにした。この水酸化ニッケル粉末が加えられた水酸化ナトリウム水溶液を、温度を85℃に維持した状態で8時間撹拌しながら加熱処理した。
【0031】
その後、加熱処理した水酸化ニッケル粉末を水洗し、65℃で乾燥して、水酸化ニッケル粒子の表面が高次コバルト酸化物で被覆されたニッケル正極活物質粉末を得た。
【0032】
得られたニッケル正極活物質粉末95質量部に、酸化亜鉛の粉末3質量部と、水酸化コバルトの粉末2質量部と、結着剤としてのヒドロキシプロピルセルロースの粉末を0.2質量%含む水溶液50質量部とを添加して混練し、正極合剤スラリーを作製した。この活物質スラリーを正極基板としての発泡ニッケルに充填し、乾燥後圧延して、所定のサイズで裁断し、ニッケル正極板を得た。
【0033】
(2)負極26の作製
La、Sm、Mg、Ni、Alの各金属材料を、所定のモル比となるように混合した後、誘導溶解炉に投入して溶解させ、これを冷却してインゴットを作製した。
【0034】
このインゴットに対し、温度1000℃のアルゴンガス雰囲気下にて10時間加熱する熱処理を施して均質化した後、アルゴンガス雰囲気下で機械的に粉砕して、希土類-Mg-Ni系水素吸蔵合金粉末を得た。得られた希土類-Mg-Ni系水素吸蔵合金粉末について、レーザー回折・散乱式粒径分布測定装置(装置名:Microtrac社製SRA-150)により粒径分布を測定した。その結果、質量基準による積算が50%にあたる平均粒径は35μmであった。
【0035】
この水素吸蔵合金粉末の組成を高周波プラズマ分光分析法(ICP)によって分析したところ、組成は、La0.30 Sm0.70 Mg0.10 Ni3.30 Al0.2であった。また、この水素吸蔵合金粉末についてX線回折測定(XRD測定)を行ったところ、結晶構造は、Ce2Ni7型であった。
【0036】
得られた水素吸蔵合金の粉末100質量部に対し、ケッチェンブラックの粉末0.5質量部、スチレンブタジエンゴムの粉末1.0質量部、ポリアクリル酸ナトリウムの粉末0.25質量部、カルボキシメチルセルロースの粉末0.05質量部、水20質量部を添加して25℃の環境下において混練し、負極合剤ペーストを調製した。
【0037】
この負極合剤ペーストを、負極芯体としてのパンチングメタルシートの両面に塗布して負極合剤層を作製した。合材の塗布量は、第一周部58を180mg/cm2とし、中間部56を174mg/cm2とし、最外周部50を105mg/cm2とした。このときの水素吸蔵合金の合金換算量は、第一周部58が177mg/cm2と、中間部56が171mg/cm2と、最外周部50が103mg/cm2となった。ペーストの乾燥後、水素吸蔵合金の粉末が付着した負極芯体を更にロール圧延して、体積当たりの合金量を高め、所定のサイズで裁断し、板状の負極合剤シートを作製した。
【0038】
(3)ニッケル水素二次電池の組立
上記工程で作製した正極24及び負極26をセパレータを介して対向させて渦巻状に巻き上げて外装缶10に収容し、KOH、NaOH、LiOHが重量比11:2.6:1.0で混合された8Nの電解液を所定量注液して、蓋板14で外装缶10の開口を塞ぎ、公称容量1500mAhの円筒型ニッケル水素二次電池(電池A)を作製した。
【0039】
<実施例2>
実施例1と同様に正極24を作製した。負極26は、負極合材の塗布量を、第一周部58を193mg/cm2とし、中間部56を173mg/cm2とし、最外周部50を105mg/cm2として作成した。このときの水素吸蔵合金の合金換算量は、第一周部58が189mg/cm2と、中間部56が170mg/cm2と、最外周部50が103mg/cm2となった。負極合剤の塗布量を実施例1とは変えたこと以外は、実施例1の電池と同様なニッケル水素二次電池(電池B)を作製した。
【0040】
<実施例3>
実施例1と同様に正極24を作製した。負極26は、負極合材の塗布量は、第一周部58を220mg/cm2とし、中間部56を169mg/cm2とし、最外周部50を105mg/cm2として作成した。このときの水素吸蔵合金の合金換算量は、第一周部58が216mg/cm2と、中間部56が166mg/cm2と、最外周部50が103mg/cm2となった。負極合剤の塗布量を実施例1とは変えたこと以外は、実施例1の電池と同様なニッケル水素二次電池(電池C)を作製した。
【0041】
<比較例1>
実施例1と同様に正極24を作製した。負極26は、負極合材の塗布量は、第一周部58を175mg/cm2とし、中間部56を175mg/cm2とし、最外周部50を105mg/cm2として作成した。このときの水素吸蔵合金の合金換算量は、第一周部58及び中間部56が172mg/cm2となり、最外周部50が103mg/cm2となった。負極合剤の塗布量を実施例1とは変えたこと以外は、実施例1の電池と同様なニッケル水素二次電池(電池D)を作製した。
【0042】
<比較例2>
実施例1と同様に正極24を作製した。負極26は、負極合材の塗布量は、第一周部58を230mg/cm2とし、中間部56を168mg/cm2とし、最外周部50を105mg/cm2として作成した。このときの水素吸蔵合金の合金換算量は、第一周部58が226mg/cm2と、中間部56が165mg/cm2と、最外周部50が103mg/cm2となった。負極合剤の塗布量を実施例1とは変えたこと以外は、実施例1の電池と同様なニッケル水素二次電池(電池E)を作製した。
【0043】
2.ニッケル水素二次電池の評価
(1)初期活性化処理
電池A~Eに対し、0.4A(0.1C)の充電電流で16時間の充電を行い、0.8A(0.2C)の放電電流で電池電圧が1.0Vになるまで放電させる操作を1サイクルとする充放電サイクルを5回行うことにより、各電池に対して初期活性化処理を行った。
【0044】
(2)電池内圧特性
電池A~Eに対し、外装缶10の底に圧力センサを取り付け、環境温度25℃において1.5Aの充電電流で90分間充電し、各電池A~Eの電池内圧を測定した。
図4に、各電池の負極26の第一周部58、中間部56及び最外周部50の各々における負極合剤量と、水素吸蔵合金量と、中間部56に対する第一周部58及び最外周部50の合金量比と、電池内圧と、電池製造時の歩留まりとの関係を示す。
図5に、第一周部58における水素吸蔵合金量と電池内圧との関係を示す。
【0045】
図4及び5から分かるように、電池内圧は、実施例1,2,3の電池A、B、Cでは、それぞれ0.69MPa、0.58MPa、0.50MPaであり、比較例1の電池Dでは、0.99MPaであった。実施例1~3の電池A~Cと、比較例1の電池Dとを比較すると、渦巻き状の負極26の第一周部58の合剤量の塗布量を増やすことで、電池内圧が低減していることが分かる。ニッケル水素電池では、充電末期に正極24からガスとして酸素ガスが発生し、この酸素ガスが負極26の表面で水素と反応して、水となって消費される。電極群22は、渦巻状に巻回され外装缶10に収容された状態では、中心部が空洞になっている空間44が存在する。電池2の内部で発生したガスは、この空間44に溜まるため、空間44に近い負極26の第一周部58では、ガス消費反応が起こりやすい。このため、負極26の第一周部58の水素吸蔵合金量を増やすことで、酸素ガスと反応する水素の量を増やすことができるので、ガス消費反応の反応速度が速くなる。その結果、外装缶10内部の酸素量を減らして、電池内圧を低減することができたと考えられる。
【0046】
一方、負極26の最外周部50近傍の酸素ガスは、空間44に留まる酸素ガスに比べて少ないため、最外周部50の単位面積当たりに塗布された合金量が、中間部56に比較して少なくても、電池内圧の上昇に対する影響は小さい。
【0047】
具体的には、実施例1の電池Aは、第一周部58の合金量が、比較例1の電池Dに比較して3%増えているが、電池内圧が約30%下がっている。実施例2の電池B及び実施例3の電池Cの測定値から分かるように、第一周部58の水素吸蔵合金量をさらに増やすと、電池内圧が徐々に低下する。
【0048】
しかしながら、比較例2の電池Eから分かるように、第一周部58の合剤量が所定量を超えて増えると、電池内圧は比較例1の電池Dに比較して高くはないが、電池製造の歩留まりが下がる。これは、電極群22が収納されている外装缶10のサイズが一定であるために、中間部56に対する第一周部58の合剤量が30質量部を超えると短絡不良が増加するためである。
【0049】
このように、本発明によれば、負極26に塗布する負極合剤の第一周部58の塗布量を増やすことで、電池内圧の上昇を防いで、安全性の高いニッケル水素二次電池を製造することができる。