(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138538
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】機械式駐車設備の充電システムおよびこれを備えた機械式駐車設備
(51)【国際特許分類】
E04H 6/18 20060101AFI20220915BHJP
E04H 6/42 20060101ALI20220915BHJP
B60L 53/14 20190101ALI20220915BHJP
B60L 53/30 20190101ALI20220915BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
E04H6/18 601Z
E04H6/42 H
B60L53/14
B60L53/30
H02J7/00 P
H02J7/00 301B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021038471
(22)【出願日】2021-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 哲也
(72)【発明者】
【氏名】境野 茉莉
【テーマコード(参考)】
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA02
5G503BB01
5G503FA03
5G503FA06
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC24
5H125FF14
(57)【要約】
【課題】 受電側接点や送電側接点に付着した水が凍ることによる動作不良を防止することができる機械式駐車設備の充電システムおよびこれを備えた機械式駐車設備を提供する。
【解決手段】 電気車両を搭載したパレットを搬送して駐車棚に格納する機械式駐車設備に付設される充電システムであって、パレット20に設けられ、複数の受電側接点73を有する受電装置62と、駐車棚に設けられ、パレット20が駐車棚の所定位置に格納されることにより複数の受電側接点73と接触する複数の送電側接点86を有し、交流電力を送電側接点86から受電側接点73へ送電する送電装置61と、駐車棚に設けられ、パレット20が駐車棚の所定位置に格納されているときに複数の受電側接点73を熱輻射によって加熱する輻射式ヒータ(赤外線ヒータ206)と、を備えている。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気車両を搭載したパレットを搬送して駐車棚に格納する機械式駐車設備に付設される充電システムであって、
前記パレットに設けられ、複数の受電側接点を有する受電装置と、
前記駐車棚に設けられ、前記パレットが前記駐車棚の所定位置に格納されることにより前記複数の受電側接点と接触する複数の送電側接点を有し、交流電力を前記送電側接点から前記受電側接点へ送電する送電装置と、
前記駐車棚に設けられ、前記パレットが前記駐車棚の所定位置に格納されているときに前記複数の受電側接点を熱輻射によって加熱する輻射式ヒータと、
を備えた、機械式駐車設備の充電システム。
【請求項2】
前記受電装置は、
前記複数の受電側接点が長板状であり、前記複数の受電側接点をその長手方向が上下方向となり、かつ、前記長手方向とは直交する方向に並べて支持するよう構成され、
前記送電装置は、
前記パレットが前記駐車棚の所定位置に格納されたときに前記送電側接点が前記受電側接点の下半部分と接触するよう構成され、
前記輻射式ヒータは、
前記受電側接点の上半部分を目標にして電磁波を照射するように配置された、
請求項1に記載の機械式駐車設備の充電システム。
【請求項3】
気温が第1の所定温度以下になると前記輻射式ヒータをオンし、前記輻射式ヒータがオンであるとき、気温が前記第1の所定温度以上である第2の所定温度よりも高くなると前記輻射式ヒータをオフするヒータ制御器をさらに備えた、
請求項1または2に記載の機械式駐車設備の充電システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の充電システムを備えた機械式駐車設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気車両のバッテリの充電を行うことができる機械式駐車設備の充電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の車両を駐車させるための機械式駐車設備として、エレベータ式、平面往復式、縦横パズル移動式、多段式などの種々の形式の駐車設備がマンションやビジネス街、及びショッピング街等に設置されている。
【0003】
また、近年、電動モータを動力源とした電気車両の普及が進んでいる。なお、本明細書及び特許請求の範囲における「電気車両」は、電動モータの動力(エンジンの併用を含む)で走行することのできる自動車であり、「電気自動車」、「電動機と内燃機関とを組合わせたハイブリッド車」等を含む。このような電気車両は、従来燃料の代わりに電気を使用するので、電気車両に搭載された蓄電池(バッテリ)を充電する必要がある。そこで、従来、駐車装置に駐車している時間を利用して蓄電池を充電することの可能な充電機能付きの機械式駐車設備が提案されている。
【0004】
特許文献1,2には、電気車両を搭載したパレットが駐車棚へ収納されることによって、パレットに設けられた受電側接点が駐車棚に設けられた送電側接点(集電子、供給側接点)と自動的に接触し、充電ケーブルを介して電気車両のバッテリが充電される充電機能付きの駐車設備が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-134079号公報
【特許文献2】特許第5400092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の充電機能付きの駐車設備では、受電側接点および送電側接点が露出しているため、パレットの格納中に入庫車に付着した雪が融けた水や雨等の水が接点等に付着する可能性がある。そのため、冬季等において気温が低下し、受電側接点や送電側接点等に付着した水が凍ると、接点間の接触不良等によって良好な充電ができなくなる、すなわち、動作不良が生じるという問題がある。
【0007】
なお、特許文献2には、送電側接点(供給側接点)の上方を覆うカバー部材が設けられているが、パレットに設けられた受電側接点等には、パレットの搬送時等において、車両から落ちて駐車設備内において設備内の部材を伝わって落下する雪や雨水等が付着する可能性がある。また、車両をパレットに乗入れる乗入れ部の床部分に雪融け水や雨水がたまったりしていれば、運転手が乗車あるいは下車するために歩いた時に、床部分にたまった水がはねかえる等してパレットの受電側接点等に水等が付着する可能性がある。
【0008】
また、湿度が高い状態から気温が低下した場合には、結露が生じ、空気中の水蒸気が水滴となって受電側接点や送電側接点等に付着して凍る場合もある。
【0009】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、受電側接点や送電側接点に付着した水が凍ることによる動作不良を防止することができる機械式駐車設備の充電システムおよびこれを備えた機械式駐車設備を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明のある態様に係る機械式駐車設備の充電システムは、電気車両を搭載したパレットを搬送して駐車棚に格納する機械式駐車設備に付設される充電システムであって、前記パレットに設けられ、複数の受電側接点を有する受電装置と、前記駐車棚に設けられ、前記パレットが前記駐車棚の所定位置に格納されることにより前記複数の受電側接点と接触する複数の送電側接点を有し、交流電力を前記送電側接点から前記受電側接点へ送電する送電装置と、前記駐車棚に設けられ、前記パレットが前記駐車棚の所定位置に格納されているときに前記複数の受電側接点を熱輻射によって加熱する輻射式ヒータと、を備えている。
【0011】
この構成によれば、パレットが駐車棚の所定位置に格納されているときに、輻射式ヒータによって複数の受電側接点を加熱することにより、これと接触している送電側接点も加熱されるので、冬季等において気温が低下しても、受電側接点や送電側接点等に付着した水や水滴が凍るのを防止し、これら接点間の接触不良等による動作不良(充電不良)を防止することができる。
【0012】
なお、本明細書及び特許請求の範囲における「上下方向」は、「上下方向」及び「略上下方向」を含む。
【0013】
また、前記受電装置は、前記複数の受電側接点が長板状であり、前記複数の受電側接点をその長手方向が上下方向となり、かつ、前記長手方向とは直交する方向に並べて支持するよう構成され、前記送電装置は、前記パレットが前記駐車棚の所定位置に格納されたときに前記送電側接点が前記受電側接点の下半部分と接触するよう構成され、前記輻射式ヒータは、前記受電側接点の上半部分を目標にして電磁波を照射するように配置されていてもよい。
【0014】
このように、送電側接点が受電側接点の下半部分と接触するよう構成されている場合には、輻射式ヒータを受電側接点の上半部分を目標にして電磁波を照射するように配置することにより、受電側接点を効率よく加熱することができる。
【0015】
また、気温が第1の所定温度以下になると前記輻射式ヒータをオンし、前記輻射式ヒータがオンであるとき、気温が前記第1の所定温度以上である第2の所定温度よりも高くなると前記輻射式ヒータをオフするヒータ制御器をさらに備えていてもよい。これにより、省電力化を図ることができる。
【0016】
また、本発明のある態様の機械式駐車設備は、上記充電システムを備えている。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、以上に説明した構成を有し、受電側接点や送電側接点に付着した水が凍ることによる動作不良を防止することができる機械式駐車設備の充電システムおよびこれを備えた機械式駐車設備を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本実施形態の機械式駐車設備の一例であるエレベータ式駐車設備の全体概略正面図である。
【
図2】
図2は、充電用パレットの概略斜視図である。
【
図3】
図3(A)は、充電用パレットを駐車棚に格納完了直前の送電装置および受電装置等の状態を
図1において正面方向からみた透視図であり、
図3(B)は、充電用パレットを駐車棚に格納完了後の送電装置および受電装置等の状態を
図1において正面方向から見た透視図である。
【
図4】
図4(A)は、充電用パレットを駐車棚に格納完了後の送電装置および受電装置等の状態を
図1において正面方向から見た透視図であり、
図4(B)は、
図4(A)において、左側から右向きに送電装置およびその近傍部分を見た図である。
【
図5】
図5(A)は、
図4(B)から送電装置を抜き出した図であり、
図5(B)は、
図5(A)の送電装置の一部を上方から見た図である。
【
図6】
図6(A)は、
図5(A)のA-A断面を示す図であり、
図6(B)は、
図5(A)のB-B断面を示す図である。
【
図7】
図7(A)は、受電装置を
図1において棚レールが延びる方向である第1方向から見た図であり、
図7(B)は、
図7(A)に示す受電装置を上方から見た図であり、
図7(C)は、
図7(A)に示す受電装置を側方から見た図である。
【
図8】
図8(A)は、
図7(A)のC-C断面を示す図であり、
図8(B)は、
図7(A)のD-D断面を示す図である。
【
図9】
図9は、本実施形態における凍結防止構造を説明するための図である。
【
図10】
図10は、電気車両が充電されるときの電気的な接続関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。なお、図面には、一部部品を省略している図面もある。また、本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0020】
(実施形態)
本実施形態では、機械式駐車設備の一例としてエレベータ式駐車設備を挙げて説明する。
図1は、本実施形態の機械式駐車設備の一例であるエレベータ式駐車設備の全体概略正面図である。
図2は、充電用パレットの概略斜視図である。
【0021】
この機械式駐車設備1は、下部90°回転乗入れ方式のエレベータ式駐車設備であって、一般車両V(非電気車両、ガソリン車等)を搭載する標準パレット90と、電気車両EVを搭載する充電用パレット20とを混載したものである。なお、この充電用パレット20には一般車両Vを搭載することもできる。以下では、
図1に示すような、昇降路10を挟んで左右に複数の駐車棚11が上下に並んでいる状態が見える面を機械式駐車設備1の正面とし、
図1を機械式駐車設備1の正面図として説明する。
【0022】
機械式駐車設備1は、鉄骨構造体の外面に外装板が設けられた駐車塔2を有し、この駐車塔2の地上1階が乗入れ部3となっている。この乗入れ部3の乗入れ床4には、ピット5が形成されている。また、乗入れ部3には入出庫口6が設けられ、この入出庫口6には、開閉式の入出庫口扉7が設けられている。また、入出庫口6の外部側方には、運転操作盤8が配設されている。さらに、乗入れ部3の反入出庫口側には、入庫誘導案内灯18が設けられている。
【0023】
駐車塔2の中央部には鉛直方向の昇降路10が形成されている。この昇降路10を挟んで図の左右両側には、鉛直方向に複数段の駐車棚11が設けられている。これらの駐車棚11は、鉛直方向に設けられた棚柱9に支持されている。各駐車棚11は、一対の棚レール17を有し、この一対の棚レール17の間にパレット20,90が架け渡された状態で支持される。以下では、棚レール17の延びる方向を第1方向Xとし、第1方向Xと直交する水平方向を第2方向Yとする。
【0024】
この機械式駐車設備1では、上層4階が標準パレット90の駐車棚11となっており、下層3階が充電用パレット20の駐車棚11となっている。充電用パレット20と標準パレット90は、共通の形態(
図2参照)として、左右両側端部に形成された立上がり側端部21,21と、左右の立上がり側端部21,21の間に形成された中央突条部22と、立上がり側端部21,21と中央突条部22との間にそれぞれ形成された凹状の車路23,23とを備えている。立上がり側端部21,21、中央突条部22、および車路23,23は略平行に並んでいる。
【0025】
昇降路10には、パレット20,90を搬送する搬器12が設けられている。この搬器12は、駐車塔2の上部に設けられた昇降駆動部13の駆動シーブ14で巻かれるワイヤロープ15によって昇降路10を昇降させられる。ワイヤロープ15の反エレベータ側には、巻上げ力を軽減するカウンタウエイト16が設けられている。
【0026】
さらに、搬器12は、パレット移載兼持上げ旋回手段25を備えている。パレット移載兼持上げ旋回手段25は、パレット20,90を持上げて旋回させる機能と、パレット20,90を駐車棚11の棚レール17との間で移載させる機能とを有している。各パレット20,90は、四隅に車輪24を備えパレット移載兼持上げ旋回手段25により、各駐車棚11と搬器12との間を車輪24で移載されるとともに、乗入れ部3で旋回させられる。このパレット移載兼持上げ旋回手段25は、公知の手段が採用される。
【0027】
この機械式駐車設備1は、さらに、充電システム60を備えている。充電システム60は、充電用パレット20を格納する各駐車棚11に設けられた送電装置61と、充電用パレット20に設けられた受電装置62と、給電ケーブル40を介して送電部61Aと電気的に接続された充電電源装置42とを備えている。充電電源装置42は、乗入れ部3に設けられた制御装置41に内蔵されている。この充電システム60では、充電用パレット20が駐車棚11に格納されることにより、送電装置61の後述の送電側接点86と受電装置62の後述の受電側接点73とが接触し電気的に接続されるようになっている。
【0028】
図2に示すように、受電装置62は充電用パレット20の立上がり側端部21の下部に固定されており、この受電装置62の直上の立上がり側端部21上にケーブル接続箱30が設けられ、立上がり側端部21上でケーブル接続箱30の隣にコントロールボックス収納部30bが設けられている。このコントロールボックス収納部30bには、
図10に示す充電ケーブル34の途中に設けられているコントロールボックス34aを収納できるようになっている。なお、
図2では、受電装置62およびケーブル接続箱30は簡略化されて模式的に図示されている。
【0029】
図3(A)は、充電用パレット20を駐車棚11に格納完了直前の送電装置61および受電装置62等の状態を
図1において正面方向(第2方向Y)からみた透視図であり、
図3(B)は、充電用パレット20を駐車棚11に格納完了後の送電装置61および受電装置62等の状態を
図1において正面方向(第2方向Y)から見た透視図である。
【0030】
送電装置61は、電気接点である複数の送電側接点86を有する送電部61Aを備えており、受電装置62は、電気接点である複数の受電側接点73を有する受電部62Aを備えている。
【0031】
前述のパレット移載兼持上げ旋回手段25により、充電用パレット20は、車輪24に支持されて駐車棚11の棚レール17上を、例えば矢印x1方向へ移動して格納される。このとき、受電部62Aの複数の受電側接点73が送電部61Aの複数の送電側接点86に当接した後、受電部62Aがさらにx1方向へ移動することにより送電部61Aが押されて、送電部61Aの位置が
図3(A)の状態から
図3(B)の状態に変更されて充電用パレット20が所定の格納位置に格納される。
【0032】
このようにして充電用パレット20が駐車棚11に格納されると(充電用パレット20が駐車棚11の所定の格納位置にあるときに)、複数の受電側接点73が複数の送電側接点86とが接触して電気的に接続され、交流電力を送電側接点86から受電側接点73へ送電し、充電用パレット20に搭載された電気車両EVを充電することができる。
【0033】
図10は、電気車両EVが充電されるときの電気的な接続関係を示す図である。なお、
図10では、電気的な接続関係を示しているため、各部の形状および位置関係等は正確ではない。例えば、ケーブル接続箱30は、本例では、
図2に示すように、受電装置62の直上に設けられている。
【0034】
図10に示すように、充電電源装置42には、駐車棚11毎の開閉器43が設けられており、各開閉器43の一端は外部交流電源44に接続されている。各開閉器43の他端は、ケーブル887を介して所定の駐車棚11の送電装置61の送電側接点86に接続されている。
【0035】
また、受電装置62の受電側接点73に接続された中継ケーブル31Aがケーブル接続箱30へ導かれている。ケーブル接続箱30では、中継ケーブル31Aの先端に設けられたコネクタ32に、充電ケーブル34のコネクタ35が接続されている。そして、この充電ケーブル34の先端に設けられた充電アダプタ36が、電気車両EVの充電口51に接続されている。
【0036】
充電用パレット20が駐車棚11に格納されると、送電装置61の複数(本例では5個)の送電側接点86と受電装置62の複数(本例では5個)の受電側接点73とが電気的に接続される。このとき、外部交流電源44から、開閉器43、ケーブル887、送電側接点86及び受電側接点73等を介して、電気車両EVの充電口51へ交流電力が送られる。この交流電力は、AC/DC変換回路52で直流電力に変換されてバッテリ53へ送られ、バッテリ53が充電される。バッテリ53の充電状況等は、電子コントロールユニット54(ECU)によって管理されている。
【0037】
以下、送電装置61および受電装置62等の構成について詳細に説明する。
【0038】
図4(A)は、
図3(B)と同じ状態で、充電用パレット20を駐車棚11に格納完了後の送電装置61および受電装置62等の状態を
図1において正面方向から見た透視図であり、
図4(B)は、
図4(A)において、x2方向から送電装置61およびその近傍部分を見た図である。
【0039】
送電装置61の背面側(充電用パレット20と反対側)には、背面カバー部材201が取付部材200,200b等によって基台81に固定されている。この基台81は駐車塔2の梁等に固定されている。
【0040】
背面カバー部材201は、背板部201aと、背板部201aの両側の側板部201bと、背板部201aの上端と両側の側板部201bの上端とで接続される天板部201cとを有する。
【0041】
背面カバー部材201の上部には、ケーブル接続箱30の上方から送電装置61等を覆う上部カバー部材202が取り付けられている。上部カバー部材202の屋根部分には、冬季等に自動車から落下して上部カバー部材202に付着した雪を融かすためのフィルムヒータ203が設けられている。
【0042】
背面カバー部材201の天板部201c上には所定の取付部材204が取り付けられ、この取付部材204に弾性部材205がY方向に沿って取り付けられている。この弾性部材205は、ゴム等の弾性を有する部材、例えば自動車のドア等に使用されるゴムパッキンを用いて形成されており、充電用パレット20が格納されたときに、
図4(A)のようにケーブル接続箱30の側部に当接するようになっている。この弾性部材205は、雪や水等がケーブル接続箱30と上部カバー部材202との間を通って送電部61A上へ落下するのを防止するために設けられている。
【0043】
また、背面カバー部材201の背板部201aの上部部分の送電部61A側には、所定のヒータ設置部材を用いて凍結防止用の赤外線ヒータ206が取り付けられている。この赤外線ヒータ206と背面カバー部材201との間には、反射板207が取り付けられている。赤外線ヒータ206及び反射板207は、充電用パレット20が格納状態のときに赤外線ヒータ206から放射した赤外線が、主に受電部62Aの複数の受電側接点73等に照射されるように取り付けられている。赤外線ヒータ206には、例えば、カーボンヒータ等を用いることができる。
【0044】
〔送電装置〕
次に、
図5(A)は、
図4(B)から送電装置61を抜き出した図であり、
図5(B)は、
図5(A)の送電装置61の一部を上方から見た図である。また、
図6(A)は、
図5(A)のA-A断面を示す図であり、
図6(B)は、
図5(A)のB-B断面を示す図である。
【0045】
この送電装置61では、基台81上に2つの支承部811,811が固定されており、各支承部811では、アーム82の基端部(下部)が回転軸821を中心にして回動可能に支承されている。2本の平行なアーム82,82の上部及び中央部には、2本のスライド軸83a,83bが平行に架け渡されている。
【0046】
各スライド軸83a,83bはスライダ84の2つの軸受部842,842に挿通され、2つの軸受部842,842はスライド軸83a,83bに対して第2方向Yにスライド可能である。上側のスライド軸83aには、2つの軸受部842,842と2つのアーム82,82との間にスライダ付勢ばね93が装着されている。スライダ84は、基板841と、基板841に固定された2つの軸受部842,842とで構成されている。スライダ84の基板841には、2つのガイド87,87が取り付けられている。
【0047】
また、スライダ84の基板841には、送電部61Aの集電子ホルダ85が固定されている。
【0048】
送電部61Aは、複数の集電子86A(
図6(B))が集電子ホルダ85に組みつけられたものである。集電子ホルダ85には、集電子86Aの数(本例では5個)に対応した複数の保持溝851が形成されており、この保持溝851の各々に送電側接点86を構成する集電子86Aが配置されている。
【0049】
集電子86Aの受電側接点73と接触する部分(接触部分)は、上下方向に長尺に形成されており、送電側接点86(86r、86n、86t)を構成している。本実施形態では、単相3線式で送電し、送電側接点86として、2個のR相接点86rと、N相(中性線)接点86nと、2個のT相接点86tとが設けられている。2個のR相接点86r同士、および2個のT相接点86t同士は、それぞれ渡り線(図示せず)で電気的に接続されている。ここで、本例では、R相接点86rおよびT相接点86tは2個ずつ設けられているが、これに限らない。
【0050】
図6(B)に示すように、集電子86Aの下部には端子886が設けられており、この端子886にケーブル887が接続されている。ケーブル887は、
図10に示す開閉器43に接続される。集電子86Aの上下方向の略中央には、支持軸881の一方の端部が支承ピン882によって回動可能に接続されている。この支承ピン882を中心として集電子86Aが個別に回動することにより、集電子86Aの接触部分である送電側接点86が上下方向に傾動する。集電子86Aの回動範囲は、レバー89により規制されている。レバー89は、スライド軸83bに所定部材を用いて取り付けられており、集電子86Aがレバー89と当接してから更に下方へ回動しないように設けられている。
【0051】
支持軸881の集電子86Aと接続されていない方の端部は、スライダ84に取り付けられたバネケース883に挿入されている。バネケース883内において、支持軸881の他方の端部とバネケース883の奥部との間にはバネ884が設けられている。支持軸881は、バネケース883から進出および退入する方向へ移動することができ、バネ884によりバネケース883から進出する方向へ付勢されている。このようにして、集電子86Aは、集電子ホルダ85に対して個別に進退方向へ移動可能に保持されている。このように、本実施形態では、個々の集電子86Aが個別に集電子ホルダ85に対して進退する方向へ移動でき、個々の集電子86Aの送電側接点86が個別に上下方向に傾動することができるように構成されているが、これに限られない。
【0052】
また、各アーム82には、アーム付勢機構91が設けられ、このアーム付勢機構91によって第1方向Xのパレット向き(充電用パレット20側へ向かう向き)に付勢されている。アーム付勢機構91は、基台81上に適宜の部材で固定されたバネ受部813を有している。
【0053】
アーム付勢機構91は、
図6(A)に示すように、バネ911、ボルト912、調整ナット914、座金917,918などで構成されている。ボルト912には、座金917、バネ911、座金918、基台81上に固定されたバネ受部813、アーム82のバネ軸支承部913、および調整ナット914が順に通されている。アーム82のバネ軸支承部913によりボルト912の先端部が第1方向Xに回動可能に支承されている。調整ナット914を締めたり緩めたりすることによって、バネ911の圧縮具合を変化させ、バネ911によるアーム82の付勢力を調節することができる。
【0054】
このアーム付勢機構91において、アーム82の先端部側が第1方向Xへ反パレット向き(充電用パレット20と反対側へ向かう向き)に回動すると、ボルト912の頭部とバネ受部813との間でバネ911が縮み、縮んだバネ911の弾性回復力によってアーム82がパレット向きに付勢される。なお、バネ911は非接続時(受電側接点73と送電側接点86とが接触していない状態)で縮んでいるように組み付けられている。このようにして、アーム82の先端部側は常に第1方向Xのパレット向きに付勢されている。
【0055】
上記非接続時のアーム82の回動位置は、バネ911の付勢力と、バネ受部813に螺設されたアーム位置調整ボルト915と、アーム82に設けられたストッパ822によって定められている。上記非接続時において、アーム位置調整ボルト915の先端がストッパ822と当接している。このようにストッパ822がアーム位置調整ボルト915と当接することによって、アーム82の先端部側が第1方向Xへパレット向きにそれ以上回動しないように規制されて、アーム82の非接続時の回動位置が定められている。
【0056】
〔受電装置〕
図7(A)は、受電装置62を第1方向Xから見た図であり、
図7(B)は、
図7(A)に示す受電装置62を上方から見た図であり、
図7(C)は、
図7(A)に示す受電装置62を側方から見た図である。また、
図8(A)は、
図7(A)のC-C断面を示す図であり、
図8(B)は、
図7(A)のD-D断面を示す図である。
【0057】
受電装置62は、受電部62Aおよびホルダ取付部材71を備えている。
受電部62Aは、複数(5個)の受電側接点73(73r,73n,73t)が複数(3個)の接点ホルダ72に組みつけられたものである。各接点ホルダ72はホルダ取付部材71に固定されている。
【0058】
受電側接点73は、長板状の銅板で形成されており、送電側接点86(86r,86n,86t)同様、R相接点73rと、N相(中性線)接点73nと、T相接点73tとが設けられている。R相接点73rおよびT相接点73tは、それぞれ2個ずつ設けられて、
図8(A)に示すように、渡り線311,312で電気的に接続されている。
【0059】
充電用パレット20が駐車棚11の所定の格納位置に格納されると、受電側と送電側の対応する接点73,86同士が接触する。すなわち、2個の受電側R相接点73rと2個の送電側R相接点86rとが接触し、受電側N相接点73nと送電側N相接点86nとが接触し、2個の受電側T相接点73tと2個の送電側T相接点86tとが接触し、電気的に接続される。複数の受電側接点73(73r,73n,73t)における送電側接点86との接触面は同一面内に位置するよう構成されている。
【0060】
各受電側接点73は、
図8(B)に示すように、その折れ曲がった上端部である接続部731に、中継ケーブル31Aの各リード線31(31r,31n,31t)および/または渡り線311,312が、皿小ねじ103とナット104で固定されている。このように受電側接点73には、中継ケーブル31Aが接続されており、中継ケーブル31Aはケーブル接続箱30まで導かれている(
図10参照)。また、
図7(A)に示すように、各受電側接点73の下端部である先端部732は、先細り形状に形成されている。
【0061】
ホルダ取付部材71は、平行に対向配置された2つの支持部711,711と、2つの支持部711,711に架け渡されたパレット取付部712及びホルダ取付板710とを有している。
【0062】
また、2つの支持部711,711の外側面には、ガイド74,74が各々固定されている。各ガイド74は、樹脂製の厚板状部材であって、支持部711から第1方向Xへ受電側接点73および接点ホルダ72よりも突き出している。各ガイド74には、被案内面741が形成されている。したがって、受電部62Aが送電部61Aに近づいて接続されるときには、受電部62A側の2つの被案内面741,741が送電部61A側の2つのガイド87,87(
図5(B)等)に案内されて、受電側接点73が送電側接点86に接触(当接)して電気的に接続される。
【0063】
パレット取付部712は、ボルト75(
図4(A)等)が螺合する2つのねじ穴712aが設けられ、充電用パレット20の立上り側端部21の下面にボルト75,75で固定されている。
【0064】
ホルダ取付板710に板状の絶縁性部材であるゴム板713を介して3個の接点ホルダ72(72r,72n,72t)が平行に配置され、それぞれ2個のボルト101(
図8(B)等)で裏側から固定されている。各接点ホルダ72は、樹脂等の絶縁性部材で形成されている。また、ホルダ取付板710には、受電側接点73の上端部の上方を覆うカバー714がボルト105(
図7(C))で固定されている。
【0065】
本例では、接点ホルダ72は、R,N,T相用の3個の接点ホルダ72r,72n,72tに分離されている。各接点ホルダ72は、
図8に示すように、接点配置面側に上下方向に延びる溝状の凹部721が形成されており、各凹部721の底面に長方形状の接点載置部722が突出して形成され、この接点載置部722上に受電側接点73が配置されて、受電側接点73の上下2か所が皿小ねじ102で接点ホルダ72に固定されている。このようにして、各受電側接点73は、接点ホルダ72の凹部721の両側の表面72gよりも奥まった位置に固定されている。
【0066】
〔凍結防止構造〕
次に、本実施形態における凍結防止構造について説明する。
【0067】
本実施形態では、前述の赤外線ヒータ206および反射板207によって凍結防止構造を実現している。
図9は、本実施形態における凍結防止構造を説明するための図であり、
図4(A)において凍結防止構造の凍結防止構造の主要部分を拡大した図である。
【0068】
本実施形態では、充電用パレット20が駐車棚11の所定の格納位置に格納されているときに、充電用パレット20に設けられた受電装置62の複数の受電側接点73等を加熱するための赤外線ヒータ206を駐車棚11に設けている。この赤外線ヒータ206は、送電装置61の背面側(送電側接点86とは反対側)の斜め上方の位置に、背面カバー部材201等を介して駐車棚11に設けられている。この赤外線ヒータ206は、バルブ(内管)206aの外側に、防水機能を有する外管バルブ206bが設けられた二重管構造になっている。そして、反射板207が、赤外線ヒータ206の受電側接点73に対する背面側(充電用パレット20が格納位置にあるときの受電側接点73とは反対側)の位置に、背面カバー部材201等を介して駐車棚11に設けられている。
【0069】
この赤外線ヒータ206は、ヒータ制御器(図示せず)によってオンオフ制御されるよう構成されている。ヒータ制御器は、送電装置61近傍の気温(送電装置61の周囲温度)を検出する温度センサが備えられており、例えば、温度センサで検出される気温が、第1の所定温度(例えば0℃)以下になると、赤外線ヒータ206をオン(動作)させて、オンさせた後、検出される気温が、第2の所定温度(例えば5℃)よりも高い温度になると赤外線ヒータ206をオフ(動作を停止)させるように制御する。この場合、第2の所定温度が第1の所定温度よりも高い温度である。なお、このような制御に限らず、前述の第1の所定温度と第2の所定温度とが同じ温度に設定された構成、すなわち、温度センサで検出される気温が、所定温度(例えば1℃)以下になると、赤外線ヒータ206をオンさせて、オンさせた後、検出される気温が、上記所定温度よりも高い温度になると赤外線ヒータ206をオフさせるように制御するようにしてもよい。以上のような制御を行うことにより省電力化を図ることができる。
【0070】
本実施形態の受電装置62では、複数の受電側接点73が長板状であり、複数の受電側接点73をその長手方向が上下方向となり、かつ、長手方向とは直交する方向に並べて支持するよう構成されている。また、送電装置61では、複数の送電側接点86が上下方向に長い長尺に形成され、複数の送電側接点86を長手方向とは直交する方向に並べて支持するよう構成され、各送電側接点86の幅が各受電側接点73の幅より狭いように構成されている。
【0071】
充電用パレット20が駐車棚11の所定の格納位置に格納されているときには、
図9に示すように、送電側接点86が受電側接点73の下半部分と接触するように構成されている。そこで、赤外線ヒータ206は、受電側接点73の上半部分を主な目標にして電磁波を照射するように配置されている。また、反射板207によっても赤外線ヒータ206から放射される電磁波が受電側接点73の方向等へ反射される。このように、赤外線ヒータ206および反射板207からの電磁波が照射されて受電側接点73が加熱されることにより、受電側接点73と接触している送電側接点86および送電側接点86を構成する集電子86Aも加熱される。また、集電子86Aの上部部分は、赤外線ヒータ206及び反射板207からの電磁波が照射され、これによっても加熱される。
【0072】
よって、冬季等において気温が低下しても、受電側接点73や送電側接点86等に付着した水や水滴が凍るのを防止し、これら接点73,86間の接触不良等による動作不良(充電不良)を防止することができる。
【0073】
また、本実施形態における送電装置61では、
図6(A)を参照して説明したようにアーム82が回転軸821を中心に回動可能な構成であり、
図6(B)を参照して説明したように集電子86Aが支承ピン882を中心に上下方向に回動可能であるとともに進退方向(支持軸881の軸方向)に移動可能な構成である。このような可動部分も赤外線ヒータ206がオンすることによってある程度加熱されるので、これらが凍結して動作不良となるのを防止できる。
【0074】
なお、受電側接点73等の形状は、適宜変更してもよい。そして、受電側接点73の形状に適応するように送電側接点86の形状を適宜変更してもよい。赤外線ヒータ206から、受電側接点73を主な目標にして電磁波を照射することにより、受電側接点73が加熱され、これと接触している送電側接点86も加熱されるので、これら接点73,86間の接触不良等による動作不良(充電不良)を防止することができる。
【0075】
赤外線ヒータ206は、熱輻射によって加熱する輻射式ヒータである。従来の機械式駐車設備では、フィルムヒータのような接触型のヒータは用いられることはあるが、非接触型でかつ輻射式ヒータは用いられていない。受電側接点73および送電側接点86等は大気中に露出しているので、赤外線ヒータ206のような輻射式ヒータを用いることで、受電側接点73および送電側接点86等を効率よく加熱することができる。
【0076】
また、赤外線ヒータ206として、本実施形態では、カーボンヒータを用いているが、ハロゲンヒータ等の他の赤外線ヒータを用いてもよいし、電熱線ヒータを用いてもよい。
【0077】
なお、本実施形態では、R相とT相については送電側接点86および受電側接点73が2個ずつ設けられているが、それぞれ1個ずつ設けられていてもよい。2個ずつ設けられていることにより、送電側接点86と受電側接点73との接触圧をより良好に保ち、電力供給の安定化を図ることができる。
【0078】
また、本実施形態では、充電用パレット20が駐車棚に格納されているときにケーブル接続箱30の上方から送電装置61の情報を覆う上部カバー部材202が設けられている。これにより、自動車等に付着した雪や水等が送電装置61の送電部61A上へ落下するのを防止することができる。さらに、背面カバー部材201の天板部201c上に取り付けられた弾性部材205によって、ケーブル接続箱30と上部カバー部材202との隙間が塞がれるので、雪や水等がケーブル接続箱30と上部カバー部材202との間を通って送電部61A上へ落下するのをより防止することができる。
【0079】
なお、本実施形態では、機械式駐車設備1として、エレベータ式駐車設備を例に説明したが、充電用パレット20を一定時間定位置に格納する方式であればどのような方式の機械式駐車設備であってもよく、例えば、平面往復式、縦横パズル移動式、多段式等、種々の機械式駐車設備に適用することができる。また、本実施形態の機械式駐車設備1では、電気車両EV用の充電用パレット20と、充電付帯器具無しの一般的な標準パレット90とを混載した例を示したが、全て電気車両EV搭載用の充電用パレット20としてもよい。
【0080】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、受電側接点や送電側接点に付着した水が凍ることによる動作不良を防止することができる機械式駐車設備の充電システムおよびこれを備えた機械式駐車設備等として有用である。
【符号の説明】
【0082】
1 機械式駐車設備
11 駐車棚
20 充電用パレット
60 充電システム
61 送電装置
62 受電装置
72 接点ホルダ
73,73r,73n,73t 受電側接点
86,86r,86n,86t 送電側接点
206 赤外線ヒータ
207 反射板