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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138562
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】貼付製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/70 20060101AFI20220915BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20220915BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20220915BHJP
   A61K 47/58 20170101ALI20220915BHJP
【FI】
A61K9/70 401
A61K47/26
A61K47/02
A61K47/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021038505
(22)【出願日】2021-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤峰 隆之
(72)【発明者】
【氏名】川村 大地
(72)【発明者】
【氏名】緒方 雄大
(72)【発明者】
【氏名】戸田 智基
(72)【発明者】
【氏名】岡本 尚毅
【テーマコード(参考)】
4C076
【Fターム(参考)】
4C076AA74
4C076BB31
4C076DD27
4C076DD29
4C076EE13
4C076EE16
4C076FF34
(57)【要約】
【課題】有効成分の経皮吸収性を高めることができ、しかも皮膚に貼り付けた際に剥がれの問題が生じ難い、貼付製剤を提供する。
【解決手段】基材2と、基材2の主面2a上に設けられている、粘着剤層3と、を備え、粘着剤層3が、有効成分と、界面活性剤と、無機フィラーと、粘着剤とを含み、界面活性剤が、炭素数7以上、15以下の炭化水素基を有し、界面活性剤が、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、及び脂肪酸アルカノールアミドからなる群から選択される少なくとも1種を含み、界面活性剤の含有量が、粘着剤層3全体に対し、35重量%以下であり、界面活性剤の含有量に対する無機フィラーの含有量の比(無機フィラーの含有量/界面活性剤の含有量)が、0.15以上である、貼付製剤1。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の主面上に設けられている、粘着剤層と、
を備え、
前記粘着剤層が、有効成分と、界面活性剤と、無機フィラーと、粘着剤とを含み、
前記界面活性剤が、炭素数7以上、15以下の炭化水素基を有し、
前記界面活性剤が、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、及び脂肪酸アルカノールアミドからなる群から選択される少なくとも1種を含み、
前記界面活性剤の含有量が、前記粘着剤層全体に対し、35重量%以下であり、
前記界面活性剤の含有量に対する前記無機フィラーの含有量の比(無機フィラーの含有量/界面活性剤の含有量)が、0.15以上である、貼付製剤。
【請求項2】
前記粘着剤層が、前記有効成分を含有するコア部と、前記界面活性剤を含有し、かつ前記コア部の少なくとも一部を被覆しているシェル部とを有する、コアシェル構造体を含む、請求項1に記載の貼付製剤。
【請求項3】
前記粘着剤が、第1のエラストマーと、前記第1のエラストマーとは異なる第2のエラストマーとを含む、請求項1又は2記載の貼付製剤。
【請求項4】
前記無機フィラーが、疎水性フィラーである、請求項1~3のいずれか1項に記載の貼付製剤。
【請求項5】
前記無機フィラーが、シリカ、酸化チタン、軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、含水二酸化ケイ素、酸化亜鉛、及び二酸化ケイ素からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1~4のいずれか1項に記載の貼付製剤。
【請求項6】
前記粘着剤層が、水溶性ポリマーをさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の貼付製剤。
【請求項7】
前記水溶性ポリマーが、ポリビニルピロリドン及びアミノアルキルメタクリレート共重合体のうち少なくとも一方である、請求項6に記載の貼付製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有効成分を含有する、粘着剤層を備える、貼付製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薬物等の有効成分を経皮吸収させることが可能な貼付製剤の開発が益々盛んに行われている。
【0003】
例えば、下記の特許文献1には、有効成分及び界面活性剤を含有するコアシェル構造体と、2種類のエラストマーとを含む、粘着剤組成物が開示されている。上記コアシェル構造体は、有効成分を含有するコア部と、コア部の表面の少なくとも一部を覆っており、かつ界面活性剤を含有するシェル部とにより構成されている。特許文献1では、このような粘着剤組成物を用いた貼付剤によれば、有効成分の経皮吸収性と、保持力などの粘着特性との双方を高めることができる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2020/013241号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような貼付剤を用いた場合においても、経皮吸収性を高めようとすると、皮膚に貼り付けた際に、なお剥がれの問題が生じることがあった。
【0006】
本発明の目的は、有効成分の経皮吸収性を高めることができ、しかも皮膚に貼り付けた際に剥がれの問題が生じ難い、貼付製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る貼付製剤は、基材と、前記基材の主面上に設けられている、粘着剤層と、
を備え、前記粘着剤層が、有効成分と、界面活性剤と、無機フィラーと、粘着剤とを含み、前記界面活性剤が、炭素数7以上、15以下の炭化水素基を有し、前記界面活性剤が、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、及び脂肪酸アルカノールアミドからなる群から選択される少なくとも1種を含み、前記界面活性剤の含有量が、前記粘着剤層全体に対し、35重量%以下であり、前記界面活性剤の含有量に対する前記無機フィラーの含有量の比(無機フィラーの含有量/界面活性剤の含有量)が、0.15以上である。
【0008】
本発明に係る貼付製剤のある特定の局面では、前記粘着剤層が、前記有効成分を含有するコア部と、前記界面活性剤を含有し、かつ前記コア部の少なくとも一部を被覆しているシェル部とを有する、コアシェル構造体を含む。
【0009】
本発明に係る貼付製剤の他の特定の局面では、前記粘着剤が、第1のエラストマーと、前記第1のエラストマーとは異なる第2のエラストマーとを含む。
【0010】
本発明に係る貼付製剤のさらに他の特定の局面では、前記無機フィラーが、疎水性フィラーである。
【0011】
本発明に係る貼付製剤のさらに他の特定の局面では、前記無機フィラーが、シリカ、酸化チタン、軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、含水二酸化ケイ素、酸化亜鉛、及び二酸化ケイ素からなる群から選択される少なくとも1種である。
【0012】
本発明に係る貼付製剤のさらに他の特定の局面では、前記粘着剤層が、水溶性ポリマーをさらに含む。
【0013】
本発明に係る貼付製剤のさらに他の特定の局面では、前記水溶性ポリマーが、ポリビニルピロリドン及びアミノアルキルメタクリレート共重合体のうち少なくとも一方である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、有効成分の経皮吸収性を高めることができ、しかも皮膚に貼り付けた際に剥がれの問題が生じ難い、貼付製剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る貼付製剤を示す模式的断面図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る貼付製剤の変形例を示す模式的断面図である。
図3図3は、本発明の一実施形態に係るコアシェル構造体を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る貼付製剤を示す模式的断面図である。
【0018】
図1に示すように、貼付製剤1は、基材2と粘着剤層3とを備える。基材2は、対向している第1の主面2a及び第2の主面2bを有する。基材2の第1の主面2a上に、粘着剤層3が積層されている。また、粘着剤層3の基材2とは反対側の主面3a上には、ライナー4が積層されている。このように、本実施形態において、貼付製剤1は、テープ剤である。
【0019】
本実施形態においては、粘着剤層3が、有効成分と、界面活性剤と、無機フィラーと、粘着剤とを含んでいる。上記界面活性剤は、炭素数7以上、15以下の炭化水素基を有している。上記界面活性剤は、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、及び脂肪酸アルカノールアミドからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいる。界面活性剤の含有量は、粘着剤層3全体に対し、35重量%以下である。また、界面活性剤の含有量に対する無機フィラーの含有量の比(無機フィラーの含有量/界面活性剤の含有量)は、0.15以上である。
【0020】
本実施形態の貼付製剤1は、上記の構成を備えるので、有効成分の経皮吸収性を高めることができ、しかも皮膚に貼り付けた際に剥がれの問題が生じ難い。
【0021】
従来、有効成分及び界面活性剤を含有する粘着剤層を用いた貼付製剤においても、経皮吸収性を高めようとすると、皮膚に貼り付けた際に、なお剥がれの問題が生じることがあった。
【0022】
この点に関し、本発明者らが鋭意検討した結果、特に経皮吸収性を高めようとして、界面活性剤の含有量を多くした場合に、保持力等の粘着特性が低下し易く、ひいては上記のような剥がれの問題が生じ易くなることを見出した。
【0023】
そして、本発明者らは、貼付製剤1を構成する粘着剤層3に着目し、粘着剤層3に上記特定の界面活性剤を上記特定の含有量で含有させ、さらには界面活性剤の含有量に対する無機フィラーの含有量の比を上記特定の範囲とすることにより、有効成分の経皮吸収性を高めることができ、しかも皮膚に貼り付けた際に剥がれの問題を生じ難くできることを見出した。
【0024】
なお、上記実施形態のように、粘着剤層3は、基材2の一方側の主面2a上にのみ積層されていてもよいし、両側の主面2a,2b上に積層されていてもよい。また、図2に示す変形例における貼付製剤11のように、ライナー4は設けられていなくてもよい。もっとも、ライナー4を設けることにより、貼付製剤11を皮膚に適用するまで、粘着剤層3をより確実に保護することができるので、ライナー4を設けることが好ましい。そして、ライナー4は、容易に剥離できるものであることが好ましい。
【0025】
本発明の貼付製剤は、上記実施形態のように、プラスター剤、硬膏剤等のテープ剤(リザーバー型、マトリックス型等)であることが好ましい。もっとも、本発明の貼付製剤は、例えば、パップ剤、パッチ剤、又はマイクロニードル等であってもよく、特に限定はされない。
【0026】
本発明の貼付製剤は、使用用途に応じて、例えば、楕円形、円形、正方形、又は長方形などの形状に適宜裁断して用いることができる。
【0027】
以下、本発明の貼付製剤を構成する各部材について詳細に説明する。
【0028】
[基材]
基材は、粘着剤層を支持するものであれば、特に限定はされず、樹脂フィルム、繊維、不織布等が挙げられる。樹脂フィルムとしては、ポリエステル、ポリオレフィン等のフィルムが挙げられる。樹脂フィルムは、好ましくはポリエステルのフィルムである。ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート等が挙げられ、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0029】
基材の厚みとしては、特に限定されず、例えば、20μm以上、100μm以下とすることができる。
【0030】
[粘着剤層]
粘着剤層は、有効成分と、界面活性剤と、無機フィラーと、粘着剤とを含む。また、粘着剤層は、有効成分を含有するコア部と、界面活性剤を含有するシェル部とを備える、コアシェル構造体の形態で、有効成分及び界面活性剤を含んでいてもよい。この場合、有効成分の経皮吸収性をより一層高めることができる。また、粘着剤層は、さらに水溶性ポリマーを含んでいてもよい。この場合、汗などの水分が付着した場合においても、保持力を高いレベルで維持することができ、汗などの水分に起因する貼付製剤の剥がれをより一層抑制することができる。この点については、粘着剤層が、さらに水溶性ポリマーを含有することにより、耐汗保持力をより一層高めることができるためであると考えられる。
【0031】
(有効成分)
有効成分の具体例としては、特に限定されないが、例えば、認知症治療薬、抗てんかん薬、抗鬱薬、抗パーキンソン病薬、抗アレルギー薬、抗癌剤、糖尿病治療薬、降圧剤、呼吸器疾患薬、ED治療薬、皮膚疾患薬、又は局所麻酔薬等が挙げられる。なお、有効成分は、1種類を単独で用いてもよく、複数種類を併用してもよい。
【0032】
より具体的には、メマンチン、ドネペジル、ジフェンヒドラミン、バルデナフィル、オクトレオチド、リバスチグミン、ガランタミン、ニトログリセリン、リドカイン、フェンタニル、男性ホルモン類、女性ホルモン類、ニコチン、クロミプラミン、ナルフラフィン、メトプロロール、フェソテロジン、タンドスピロン、ベラプロストナトリウム、タルチレリン、ルラシドン、ネファゾドン、リファキシミン、ベニジピン、ドキサゾシン、ニカルジピン、フォルモテロール、ロメリジン、アムロジピン、テリパラチド、ブクラデシン、クロモグリク酸、リキセナチド、エキセナチド、リラグルチド、ランレオタイド、グルカゴン、オキシトシン、カルシトニン、エルカトニン、グラチラマー、リセドロン酸、ジクロフェナク、又はアスコルビン酸等や、これらの薬学上許容される塩等が挙げられる。
【0033】
薬学上許容される塩としては、特に限定されるものではなく、酸性塩及び塩基性塩のいずれも採用することができる。酸性塩の例としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩又はパラトルエンスルホン酸塩等の有機酸塩が挙げられる。また、塩基性塩の例としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、又はカルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。具体的な有効成分の塩としては、例えば、メマンチン塩酸塩、塩酸ドネペジル、酒石酸リバスチグミン、臭化水素酸ガランタミン、クロミプラミン塩酸塩、ジフェンヒドラミン塩酸塩、ナルフラフィン塩酸塩、メトプロロール酒石酸塩、フェソテロジンフマル酸塩、バルデナフィル塩酸塩水和物、ナルフラフィン塩酸塩、タンドスピロンクエン酸塩、ベラプロストナトリウム、ルラシドン塩酸塩、ネファゾドン塩酸塩、ベニジピン塩酸塩、ドキサゾシンメシル酸塩、ニカルジピン塩酸塩、フォルモテロールフマル酸塩、ロメリジン塩酸塩、又はアムロジピンベシル酸塩等が挙げられる。
【0034】
有効成分は、親水性であることが好ましい。有効成分が親水性薬物である場合、通常、全身作用又は局所作用が求められるものが用いられる。
【0035】
有効成分は、経皮吸収されやすい薬物であれば好ましい。有効成分は、特に限定されないが、オクタノール水分配係数が-2~6を示す化合物であることが好ましい。この場合、有効成分の皮膚透過性がより一層向上される。有効成分の皮膚透過性をさらに一層向上させる観点から、オクタノール水分配係数が、-1以上であることが好ましく、0以上であることがより好ましい。また、有効成分のオクタノール水分配係数は、4以下であることが好ましく、1以下であることがより好ましい。有効成分のオクタノール水分配係数が、上記上限以下である場合、有効成分の皮膚透過性がより一層向上する。
【0036】
なお、本発明において、オクタノール水分配係数は、オクタノールとpH7の水系緩衝液を入れたフラスコ中に有効成分を添加後、振とうし、それぞれの相の有効成分濃度から求められる。具体的には、式:オクタノール水分配係数=Log10(オクタノール相中濃度/水相中濃度)により算出して求めることができる。
【0037】
粘着剤層に含まれる有効成分の量は、有効成分の種類にもよるが、粘着剤層全体に対し、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは2.5重量%以上、好ましくは50重量%以下、より好ましくは30重量%以下である。
【0038】
(界面活性剤)
界面活性剤のHLB値は、特に限定されないが、好ましくは4以上、14以下、より好ましくは5以上、12以下である。複数の界面活性剤を含む場合は、HLB値の加重平均値が上記範囲内にあることが好ましい。
【0039】
HLB(Hydrophile Lypophile Balanceの略)値は、乳化剤が親水性か親油性かを知る指標となるもので、0~20の値をとる。HLB値が小さい程、親油性が強いことを示す。
【0040】
HLB値は、下記Griffin式より算出される。
【0041】
HLB値=20×{(親水部分の分子量)/(全分子量)}
【0042】
HLB値の加重平均値は、例えば以下の算出式を用いて算出することができる。
【0043】
HLB値A、B、Cの界面活性剤があり、それぞれの界面活性剤の重量がx、y、zであったときの加重平均値の算出式は、(xA+yB+zC)÷(x+y+z)である。
【0044】
界面活性剤は、アルキル基等の飽和炭化水素基と、アルケニル基やアルキニル基等の不飽和炭化水素基との少なくとも一方を有するものであることが好ましい。なかでも、上記界面活性剤の炭化水素基が、炭素数7以上、11以下の飽和炭化水素、又は炭素数7以上、11以下の不飽和炭化水素を含んでいることが好ましい。
【0045】
界面活性剤が複数の炭化水素基を含有する場合、該界面活性剤が含有する割合が最も多い炭化水素基を、本発明における界面活性剤の炭化水素基とする。
【0046】
特に、界面活性剤が炭素数の異なる複数の炭化水素基を含有する場合、該界面活性剤が含有する割合が最も多い炭化水素基の炭素数を、界面活性剤の炭化水素基の炭素数とする。
【0047】
例えば、具体的には、界面活性剤がヤシ油脂肪酸エステルである場合、該界面活性剤において炭素数11の飽和炭化水素基を最も多く含むことから、ヤシ油脂肪酸エステルの炭化水素基は飽和炭化水素基であり、炭化水素基における炭素数は11である。
【0048】
炭化水素基における炭素数は、7以上、15以下であり、好ましくは7以上、11以下、より好ましくは7又は9である。炭化水素基における炭素数が上記範囲内又は好ましい数である場合、有効成分の経皮吸収性をより一層高めることができる。
【0049】
界面活性剤の親水部分における分子量は、好ましくは100g/mol以上、350g/mol以下であり、より好ましくは100g/mol以上、300g/mol以下、さらに好ましくは100g/mol以上、200g/mol以下である。界面活性剤の親水部分における分子量が上記範囲内である場合、有効成分の経皮吸収性をより一層高めることができる。
【0050】
界面活性剤は、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、及び脂肪酸アルカノールアミドからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいる。なかでも、経皮吸収性と、皮膚低刺激性とをより一層高いレベルで両立する観点から、界面活性剤は、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、及びプロピレングリコール脂肪酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいることが好ましい。
【0051】
ソルビタン脂肪酸エステルとしては、特に限定されないが、ソルビタンと、脂肪酸とのエステル等が挙げられる。
【0052】
脂肪酸としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ウンデシレン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸等が挙げられる。また、このような脂肪酸は、牛脂、豚脂、ヤシ油、パーム油、パーム核油、オリーブ油、菜種油、米ぬか油、大豆油、又はヒマシ油等の天然油脂から得られる脂肪酸であってもよい。
【0053】
具体的には、ソルビタン脂肪酸エステルとしては、有効成分の経皮吸収性をより一層高める観点から、好ましくはモノラウリン酸ソルビタン(NIKKOL SL-10、日本サーファクタント工業社製)、ヤシ油脂肪酸ソルビタン(EMALEX SPC-10、日本エマルジョン社製)、又はソルビタンラウレート(リケマール L-250A、理研ビタミン社製)等が挙げられる。
【0054】
本発明におけるグリセリン脂肪酸エステルとしては、特に限定されないが、グリセリンと、脂肪酸とのエステル等が挙げられる。
【0055】
グリセリンは、ポリグリセリンであってもよい。ポリグリセリンの重合度nは、特に限定されないが、好ましくは5以下、より好ましくは4以下、さらに好ましくは3以下である。なかでも、グリセリンとしては、モノグリセリン、ジグリセリン、又はトリグリセリンが好ましい。具体的に、グリセリン脂肪酸エステルとしては、モノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、又はトリグリセリン脂肪酸エステルであることが好ましい。この場合、有効成分の経皮吸収性をより一層高めることができる。
【0056】
脂肪酸としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ウンデシレン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸等が挙げられる。また、このような脂肪酸は、牛脂、豚脂、ヤシ油、パーム油、パーム核油、オリーブ油、菜種油、米ぬか油、大豆油、又はヒマシ油等の天然油脂から得られる脂肪酸であってもよい。
【0057】
具体的にグリセリン脂肪酸エステルとしては、有効成分の経皮吸収性をより一層高める観点から、好ましくはトリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル(NIKKOL トリエスター F-810、日本サーファクタント工業社製)、モノカプリル酸グリセリル(サンソフトNo.700P-2-C、太陽化学社製)、モノカプリル酸グリセリル(Capmul 808G、ABITEC社製)、モノカプリル酸グリセリル(Capmul MCM C8、ABITEC社製)、モノカプリン酸グリセリル(サンソフトNo.760-C、太陽化学社製)、カプリン酸グリセリル(Capmul MCM C10、ABITEC社製)、カプリル酸/カプリン酸グリセリル(Capmul MCM、ABITEC社製)、カプリル酸/カプリン酸グリセリル(Capmul 471、ABITEC社製)、カプリン酸モノ・ジグリセリド(サンソフトNo.707-C、太陽化学社製)、カプリン酸ジグリセリド(サンファットGDC-S、太陽化学社製)、モノラウリン酸グリセリル(サンソフトNo.750-C、太陽化学社製)、又はモノウンデシレン酸グリセリル(NIKKOL MGU、日本サーファクタント工業社製)等が挙げられる。
【0058】
プロピレングリコール脂肪酸エステルは、特に限定されないが、プロピレングリコールと、脂肪酸とのエステル等が挙げられる。
【0059】
脂肪酸としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ウンデシレン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸等が挙げられる。また、このような脂肪酸は、牛脂、豚脂、ヤシ油、パーム油、パーム核油、オリーブ油、菜種油、米ぬか油、大豆油、又はヒマシ油等の天然油脂から得られる脂肪酸であってもよい。
【0060】
具体的にプロピレングリコール脂肪酸エステルとしては、有効成分の経皮吸収性をより一層高める観点から、好ましくはモノラウリン酸プロピレングリコール(リケマール PL-100、理研ビタミン社製)、ジカプリル酸プロピレングリコール(NIKKOL SEFSOL-228、日本サーファクタント工業社製)、又はジラウリン酸プロピレングリコール(EMALEX PG-M-L、日本エマルジョン社製)等が挙げられる。
【0061】
脂肪酸アルカノールアミドは、Nを中心として、R-COと、2つの-CHCHOHとが結合した構造を有し、R-CON(CHCHOH)の化学式で表されるものをいう。
【0062】
具体的に脂肪酸アルカノールアミドとしては、ラウリン酸ジエタノールアミド、ラウリン酸モノイソプロパノールアミド、ラウリン酸ミリスチン酸ジエタノールアミド、パルミチン酸モノエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸モノイソプロパノールアミド、ヤシ油脂肪酸N-メチルエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、又はパーム核油脂肪酸ジエタノールアミド等が挙げられる。皮膚透過性をより一層高める観点から、脂肪酸アルカノールアミドは、ラウリン酸ジエタノールアミドなどのジエタノールアミドであることが好ましい。
【0063】
本発明において、界面活性剤は、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、又は脂肪酸アルカノールアミド以外の界面活性剤をさらに含んでいてもよく、これらは用途に応じて適宜選択できる。例えば、医薬品として使用可能なもののなかから幅広く選択することができる。また、複数種類の界面活性剤を併用してもよい。
【0064】
ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、プロリレングリコール脂肪酸エステル、又は脂肪酸アルカノールアミド以外の界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤又は両性界面活性剤のいずれであってもよい。
【0065】
非イオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、脂肪酸エステル、脂肪アルコールエトキシレート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アルキルグリコシド、ポリオキシエチレンヒマシ油、又は硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0066】
脂肪酸エステルとしては、特に限定されないが、グリセリン、ポリグリセリン、ポリオキシエチレングリセリン、ポリオキシエチレン、ソルビタン、プロピレングリコール及びポリオキシエチレンソルビット等のうち少なくとも1種と、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、ウンデシレン酸、リシノレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノレン酸、エルカ酸等とのエステルが挙げられる。このような脂肪酸エステルは、牛脂、豚脂、ヤシ油、パーム油、パーム核油、オリーブ油、菜種油、米ぬか油、大豆油、ヒマシ油等の天然油脂から得られる脂肪酸とのエステルであってもよい。
【0067】
陰イオン性界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪酸塩、又はリン酸エステル塩等が挙げられる。
【0068】
陽イオン性界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、又はアミン塩類等が挙げられる。
【0069】
両性界面活性剤としては、アルキルアミノ脂肪酸塩、アルキルベタイン、又はアルキルアミンオキシド等が挙げられる。
【0070】
ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、又は脂肪酸アルカノールアミド以外の界面活性剤としては、特に、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、又は硬化ヒマシ油が好ましい。
【0071】
ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、又は脂肪酸アルカノールアミド以外の界面活性剤は、アルキル鎖、アルケニル鎖、又はアルキニル鎖等の炭化水素鎖を有するものであってもよい。
【0072】
界面活性剤の含有量は、本発明の効果が奏される範囲内において適宜設定することができるが、有効成分との重量比(有効成分:界面活性剤)を、1:0.5~1:100とすることが好ましく、1:5~1:100とすることがより好ましい。この場合、有効成分の経皮吸収性をより一層高めることができる。有効成分の経皮吸収性をさらに一層高める観点からは、有効成分と界面活性剤との重量比(有効成分:界面活性剤)を、1:0.5~1:50とすることがさらに好ましく、1:0.5~1:30とすることが特に好ましい。有効成分の吸収性をさらに一層高める観点からは、有効成分と界面活性剤との重量比(有効成分:界面活性剤)を、1:5~1:50とすることがさらに好ましく、1:5~1:30とすることが特に好ましい。
【0073】
また、本発明においては、有効成分と界面活性剤との重量比(有効成分:界面活性剤)が、1:0.5~1:2であってもよい。通常、テープ剤などの貼付製剤においては、有効成分の含有量が多くなると、テープ剤への有効成分の分散性が悪くなる傾向にある。しかしながら、上記のHLB値や飽和炭化水素基又は不飽和炭化水素基を有する界面活性剤を用いた場合、有効成分の含有量が多くとも、テープ剤への分散性をより一層向上させることができる。
【0074】
粘着剤層に含まれる界面活性剤の含有量は、粘着剤層全体に対し、好ましくは7重量%以上、より好ましくは10重量%以上であり、35重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは25重量%以下である。界面活性剤の含有量が上記下限値以上である場合、有効成分の経皮吸収性をより一層高めることができる。また、界面活性剤の含有量が上記上限値以下である場合、保持力などの粘着特性をより一層高めることができる。
【0075】
(コアシェル構造体)
コアシェル構造体は、上述した有効成分を含有するコア部と、上述した界面活性剤を含有するシェル部とを備える。有効成分として、必要に応じて、2種以上の有効成分を含有していてもよい。また、界面活性剤として、必要に応じて、2種以上の界面活性剤を含有していてもよい。
【0076】
コア部とシェル部とは、分子間力などによって結び付きあって集合体を形成していてもよい。もっとも、有効成分の経皮吸収性をより一層高める観点から、コア部の表面の少なくとも一部がシェル部によって被覆されていることが好ましい。
【0077】
以下、本発明で用いるコアシェル構造体の一例について図面を参照して説明する。
【0078】
図3は、本発明の一実施形態に係るコアシェル構造体を示す模式的断面図である。
【0079】
図3に示すように、コアシェル構造体21は、コア部22及びシェル部23を備える。コア部22の表面は、シェル部23により被覆されている。
【0080】
コア部22の表面の30%以上が、シェル部23によって被覆されていることが好ましく、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上、さらに好ましくは85%以上、特に好ましくは95%以上、最も好ましくは99%以上被覆されていることが好ましい。もっとも、コア部22の表面がシェル部23によって完全に被覆されていてもよい。コアシェル構造体21は、上記のような構成を有しているので、例えば、皮膚に適用した場合、コア部22に含有される有効成分を体内に放出することができる。
【0081】
本発明においては、上記コア部が、固体であることが好ましい。コア部が固体である場合、粘着剤層中での安定性をより一層向上させることができる。また、この場合、コアシェル構造体を油相である粘着剤層中に分散させることで、S/O(Solid-in-Oil)型の構造を有する貼付製剤を形成することができる。
【0082】
なお、後述する製造方法の欄で説明するように、コア部が固体(上記S/O(Solid-in-Oil)型のS)であるコアシェル構造体は、例えば、W/Oエマルションを乾燥させ、溶媒(水性溶媒及び油性溶媒)を除去することにより得られる。なお、W/Oエマルションを乾燥させる工程により、水分を実質的に完全に除去することが好ましい。具体的には、例えば、カールフィッシャー法による測定で、コアシェル構造体の含水率が、好ましくは5重量%以下、より好ましくは2重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。従って、コアシェル構造体は、W/Oエマルションとは異なることが好ましい。
【0083】
コアシェル構造体の形状は、特に限定されず、例えば、球状の粒子とすることができる。もっとも、コアシェル構造体は、ロッド状、キュービック状、レンズ状、ミセル状、ラメラ状、ヘキサゴナル状、バイセル状、スポンジ状、又はウニ状の形状を有する粒子であってもよく、不定形状であってもよい。
【0084】
また、コアシェル構造体のサイズは、特に限定されない。有効成分の経皮吸収性をより一層高める観点から、コアシェル構造体の平均サイズは、好ましくは、1nm~100μmとすることができる。
【0085】
なお、コアシェル構造体の平均サイズとは、溶媒(例えば、スクワラン等)分散時の動的光散乱法により、例えば、Malvern Panalytical社製「ゼータサイザーナノ S」を用いて数平均径を算出したものとする。
【0086】
本発明において、コアシェル構造体の含有量は、特に限定されないが、粘着剤層全体に対し、好ましくは30重量%以上、より好ましくは35重量%以上、好ましくは55重量%以下、より好ましくは50重量%以下である。コアシェル構造体の含有量が上記下限値以上である場合、有効成分の経皮吸収性をより一層高めることができる。コアシェル構造体の含有量が上記上限値以下である場合、保持力などの粘着特性をより一層高めることができる。
【0087】
コアシェル構造体は、有効成分及び界面活性剤に加えて、さらに少なくとも1種の他の成分を含有していてもよい。他の成分としては、特に限定されないが、例えば、安定化剤、経皮吸収促進剤、皮膚刺激低減剤、防腐剤、又は鎮痛剤等が挙げられる。
【0088】
安定化剤は、粒子構造を安定化させる作用を有する。また、安定化剤は、粒子構造の意図せぬ早期の崩壊を防止し、有効成分の徐放効果をより一層高める役割を有する。
【0089】
安定化剤としては、特に限定されないが、例えば、多糖類、タンパク質、又は親水性高分子材料等が挙げられる。安定化剤は、1種又は2種以上を含有してもよい。安定化剤の含有量は、その種類にもより、適宜設定できる。例えば、有効成分と安定化剤の重量比(有効成分:安定化剤)が、1:0.1~1:10となるように配合することができる。
【0090】
経皮吸収促進剤としては、特に限定されないが、例えば、高級アルコール、N-アシルサルコシン若しくはその塩、高級モノカルボン酸、高級モノカルボン酸エステル、芳香族モノテルペン脂肪酸エステル、炭素数2~10の2価カルボン酸若しくはその塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル若しくはその塩、乳酸、乳酸エステル、又はクエン酸等が挙げられる。経皮吸収促進剤は、1種又は2種以上を含有してもよい。経皮吸収促進剤の含有量は、その種類にもより、適宜設定できる。例えば、有効成分と経皮吸収促進剤の重量比(有効成分:経皮吸収促進剤)が、1:0.01~1:50となるように配合することができる。
【0091】
皮膚刺激低減剤としては、特に限定されないが、例えば、ハイドロキノン配糖体、パンテチン、トラネキサム酸、レシチン、酸化チタン、水酸化アルミニウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸水素ナトリウム、大豆レシチン、メチオニン、グリチルレチン酸、BHT、BHA、ビタミンE若しくはその誘導体、ビタミンC若しくはその誘導体、ベンゾトリアゾール、没食子酸プロピル、又はメルカプトベンズイミダゾール等が挙げられる。皮膚刺激低減剤は、1種又は2種以上を含有してもよい。皮膚刺激低減剤の含有割合は、その種類にもより、適宜設定できる。皮膚刺激低減剤は、例えば、コアシェル構造体全体に対して0.1重量%~50重量%となるように配合することができる。
【0092】
防腐剤としては、特に限定されないが、例えば、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、フェノキシエタノール、又はチモール等が挙げられる。防腐剤のコア部における含有割合は、その種類にもより、適宜設定できる。防腐剤は、例えば、コアシェル構造体全体に対して0.01重量%~10重量%となるように配合することもできる。防腐剤は、1種又は2種以上を含有してもよい。
【0093】
鎮痛剤としては、特に限定されないが、例えば、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、ジブカイン若しくはプリロカイン等の局所麻酔薬又はその塩等が挙げられる。鎮痛剤は、1種又は2種以上を含有してもよい。鎮痛剤のコアシェル構造体における含有割合は、その種類にもより、適宜設定できる。鎮痛剤は、例えば、コアシェル構造体全体に対して0.1重量%~30重量%となるように配合することができる。
【0094】
コアシェル構造体の製造方法は、特に限定されないが、例えば水相に有効成分を含有するW/Oエマルションを乾燥する工程を備える方法によって、製造することができる。
【0095】
W/Oエマルションは、いわゆる油中水滴エマルション、具体的には水性溶媒の液滴が油性溶媒中に分散した状態のエマルションである限り、特に制限されない。
【0096】
水相に有効成分を含有するW/Oエマルションは、例えば、有効成分を含有する水や緩衝水溶液等の水性溶媒と、界面活性剤を含有するシクロヘキサン、ヘキサン、又はトルエン等の油性溶媒とを混合することによって得ることができる。有効成分を含有する水性溶媒は、有効成分の他に、必要に応じて安定化剤、吸収促進剤又は刺激低減剤等の添加成分を含有していてもよい。また、界面活性剤を含有する油性溶媒は、界面活性剤の他に、必要に応じて、刺激低減剤、鎮痛剤、吸収促進剤又は安定化剤等の添加成分を含有していてもよい。混合の方法としては、W/Oエマルションを形成できる方法である限り特に限定されず、例えばホモジナイザー等による撹拌が挙げられる。
【0097】
ホモジナイザー撹拌時の条件は、例えば、5000rpm~50000rpm程度、好ましくは、10000rpm~30000rpm程度である。
【0098】
上記W/Oエマルションにおける有効成分と界面活性剤との重量比(有効成分:界面活性剤)は、1:0.5~1:100の範囲内にあることが好ましく、1:5~1:100の範囲内にあることがより好ましい。上記重量比(有効成分:界面活性剤)は、1:0.5~1:50の範囲内にあることがさらに好ましく、1:5~1:50の範囲にあることが特に好ましい。また、上記重量比(有効成分:界面活性剤)は、1:0.5~1:30の範囲内にあることがさらに好ましく、1:5~1:30の範囲にあることが特に好ましい。有効成分と界面活性剤との重量比(有効成分:界面活性剤)は、1:0.5~1:2であってもよい。
【0099】
水相に有効成分を含有するW/Oエマルションの乾燥の方法としては、該エマルション中の溶媒(水性溶媒及び油性溶媒)を除去できる方法である限り特に限定されない。W/Oエマルションの乾燥の方法としては、例えば凍結乾燥又は減圧乾燥等が挙げられ、好ましくは凍結乾燥が挙げられる。
【0100】
また、得られるコアシェル構造体の個数平均粒子径をより一層小さくする観点から、W/Oエマルション又は該W/Oエマルションの乾燥物を加熱処理する工程をさらに備えることが好ましい。加熱処理温度は、例えば30℃~60℃、好ましくは35℃~50℃、より好ましくは35℃~45℃である。
【0101】
加熱処理時間は、加熱処理温度に応じて適宜調整されるものであるが、例えば1日間~30日間、好ましくは2日間~15日間、より好ましくは3日間~7日間である。
【0102】
また、得られるコアシェル構造体の個数平均粒子径をより一層小さくする別の方法としては、W/Oエマルション又は該W/Oエマルションの乾燥物を必要に応じて溶媒等に分散後、フィルタ等で濾過する方法や、遠心処理分離を行う方法が挙げられる。フィルタ濾過の場合のフィルタ孔径は、例えば1μm以下、好ましくは0.2μm以下、より好ましくは0.1μm以下である。
【0103】
(粘着剤)
粘着剤は、エラストマーを含んでいることが好ましい。もっとも、粘着剤は、必要に応じて、粘着付与樹脂やその他の添加剤を含んでいてもよい。
【0104】
エラストマー;
エラストマーとしては、特に限定されないが、例えば、アクリル系エラストマー、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ウレタン系エラストマー、又はシリコーン系エラストマー等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0105】
アクリル系エラストマーとしては、例えば、(メタ)アクリルモノマーの重合体を挙げることができる。なお、メタ(アクリル)とは、メタクリル又はアクリルのことをいうものとする。
【0106】
(メタ)アクリルモノマーの具体例としては、アクリル酸、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチルエステル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸エステル、アクリル酸オクチル、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸n-オクタデシル、アクリル酸エチル、アクリル酸アルキル、アクリル酸アルキルエステル、アクリル酸オクチルアミド、アクリル酸2-メトキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸、メタクリル酸エチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸アセトアセトキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸2-メトキシエチル、メタクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキル、又はメタクリル酸n-オクタデシル等が挙げられる。これらは、単独重合体であってもよく、2種以上の上記(メタ)アクリルモノマーの共重合体であってもよい。
【0107】
アクリル系エラストマーは、(メタ)アクリルモノマーと他のモノマーとの共重合体であってもよい。他のモノマーとしては、酢酸ビニル、ビニルピロリドン、アクリルアミドモノマー、スチレンモノマー、ビニルエーテルモノマー、ジアセトンアクリルアミドモノマー又はアクリルアミドモノマー等が挙げられる。
【0108】
また、(メタ)アクリルモノマーを重合させる方法は、従来公知の方法を使用でき、例えば重合開始剤を使用する方法が挙げられる。重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス-(2,4’-ジメチルバレロニトリル)などのアゾビス系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド(BPO)、ラウロイルパーオキサイド(LPO)、及びジターシャルブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物が挙げられる。好ましくは、ラウロイルパーオキサイド、又はベンゾイルパーオキサイド等である。これらの重合開始剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0109】
アクリル系エラストマーとしては、例えば、アクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体、アクリル酸2-エチルヘキシル・酢酸ビニル・アクリル酸ヒドロキシエチル・メタクリル酸グリシジル共重合体、アクリル酸エステル・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸2-エチルヘキシル・アクリル酸メチル・アクリル酸・メタクリル酸グリシジル共重合体、アクリル酸2-エチルヘキシル・ジアセトンアクリルアミド・メタクリル酸アセトアセトキシエチル・メタクリル酸メチル共重合体、アクリル酸2-エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体、アクリル酸2-エチルヘキシル・メタクリル酸2-エチルヘキシル・メタクリル酸ドデシル共重合体、アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合体、アクリル酸・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合体、アクリル酸・アクリル酸ブチル共重合体、アクリル酸・アクリル酸2-エチルヘキシル・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸・アクリル酸2-エチルヘキシル・アクリル酸ヒドロキシエチル共重合体、アクリル酸・アクリル酸ヒドロキシエチル・ビニルピロリドン共重合体、アクリル酸・アクリル酸2-エチルヘキシル・アクリル酸ヒドロキシエチル・ビニルピロリドン共重合体、アクリル酸・アクリル酸アミド・アクリル酸エチル共重合体、アクリル酸・アクリル酸2-エチルヘキシル・スチレン共重合体、アクリル酸アミド・スチレン共重合体、アクリル酸アルキルエステル・メタクリル酸アルキルエステル・ジアセトンアクリルアミド・メタクリル酸共重合体、アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸アルキル・スチレン共重合体、アクリル酸オクチルアミド・アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸ヒドロキシエチル・アクリル酸ブチル・アクリル酸メトキシエチル共重合体、アクリル酸ヒドロキシエチル・アクリル酸メトキシエチル共重合体、アクリル酸ブチル・アクリロニトリル・スチレン共重合体、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体等が挙げられる。また、必要に応じて架橋剤を加えてもよい。架橋剤としては、アミノ化合物、フェノール化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、有機過酸化物、金属アルコラート、金属キレート等が挙げられる。
【0110】
スチレン系エラストマーとしては、例えば、スチレン-イソプレン-スチレン・ブロック共重合体(SIS)、スチレン-ブタジエン-スチレン・ブロック共重合体(SBS)、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレン・ブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン・ブロック共重合体(SEPS)、スチレン-イソブチレン-スチレン・ブロック共重合体(SIBS)等が挙げられる。
【0111】
オレフィン系エラストマーとしては、例えば、結晶性オレフィン-エチレン・ブテン-結晶性オレフィン(CEBC)共重合体、又はスチレン-エチレン・ブテン-結晶性オレフィン(SEBC)共重合体等が挙げられる。
【0112】
粘着剤は、第1のエラストマー及び第2のエラストマーを含んでいてもよい。上記第2のエラストマーは、上記第1のエラストマーとは異なるエラストマーである。
【0113】
第1のエラストマーは、上述したエラストマーの中から適宜選択することができるが、好ましくはアクリル系エラストマー又はスチレン系エラストマーであり、より好ましくはアクリル系エラストマーである。
【0114】
第2のエラストマーは、上述したエラストマーの中から適宜選択することができるが、好ましくはアクリル系エラストマー又はスチレン系エラストマーであり、より好ましくはアクリル系エラストマーである。
【0115】
なお、第2のエラストマーは、第1のエラストマーと同じ種類のエラストマーであってもよい。具体的には、第1のエラストマーがアクリル系エラストマーである場合、第2のエラストマーは他のアクリル系エラストマーであってもよい。
【0116】
また、本発明においては、第1のエラストマーのSP値と第2のエラストマーのSP値との差が、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは1.0以上であり、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.5以下、さらに好ましくは2.0以下である。第1のエラストマーのSP値と第2のエラストマーのSP値との差が上記範囲内にある場合、有効成分の経皮吸収性と、保持力などの粘着特性との双方をより一層高めることができる。
【0117】
なお、本明細書においてSP値とは、Fedorsの式δ=ΣE/ΣV(δはSP値、Eは蒸発エネルギー、Vはモル体積を意味する。)により算出される計算値を意味する。なお、SP値の単位は(cal/cm0.5である。Fedorsの方法については、日本接着協会誌、1986年22巻566ページに記載されている。
【0118】
第1のエラストマーのSP値は、好ましくは8.0以上、より好ましくは8.5以上、さらに好ましくは9.0以上、特に好ましくは9.5以上、好ましくは12.0以下、より好ましくは11.5以下、さらに好ましくは11.0以下、特に好ましくは10.5以下である。第1のエラストマーのSP値が上記範囲内にある場合、有効成分の経皮吸収性と、保持力などの粘着特性との双方をより一層高めることができる。
【0119】
第2のエラストマーのSP値は、好ましくは6.5以上、より好ましくは7.0以上、さらに好ましくは7.5以上、特に好ましくは8.0以上、好ましくは11.0以下、より好ましくは10.5以下、さらに好ましくは10.0以下、特に好ましくは9.5以下である。第2のエラストマーのSP値が上記範囲内にある場合、有効成分の経皮吸収性と、保持力などの粘着特性との双方をより一層高めることができる。
【0120】
本発明において、第1のエラストマー及び第2のエラストマーの含有量の和は、特に限定されないが、粘着剤全体100重量部に対し、好ましくは20重量部以上、より好ましくは30重量部以上、好ましくは80重量部以下、より好ましくは70重量部以下、さらに好ましくは60重量部以下である。第1のエラストマー及び第2のエラストマーの含有量の和が上記範囲内にある場合、有効成分の経皮吸収性と、保持力などの粘着特性との双方をより一層高めることができる。
【0121】
第1のエラストマーと第2のエラストマーとの組合せとしては、好ましくは一方がアクリル系エラストマーであり、他方がスチレン系エラストマーである組合せ、又は両者ともにアクリル系エラストマーである組合せであり、より好ましくは両者ともにアクリル系エラストマーである組合せである。この場合、上記コアシェル構造体の分散性をより効果的に高めることができる。
【0122】
第1のエラストマーに対する第2のエラストマーの重量比(第2のエラストマー/第1のエラストマー)は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、好ましくは10以下、より好ましくは5以下である。重量比(第2のエラストマー/第1のエラストマー)が上記範囲内にある場合、有効成分の経皮吸収性と、保持力などの粘着特性との双方をより一層高めることができる。
【0123】
なお、粘着剤が、3種類以上のエラストマーを含む場合は、粘着剤中における重量割合が大きい2種類のエラストマーを選択し、SP値が大きいものを第1のエラストマー、SP値が小さいものを第2のエラストマーとする。
【0124】
粘着付与樹脂;
粘着剤は、さらに粘着付与樹脂を含んでいてもよい。粘着付与樹脂としては、特に限定されず、脂環族飽和炭化水素樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、水添テルペン樹脂、水添テルペンフェノール樹脂、又はロジン誘導体等を挙げることができる。好ましくは、脂環族飽和炭化水素樹脂又はロジン誘導体等である。なお、これらの粘着付与樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、複数種類を併用してもよい。
【0125】
粘着付与樹脂の含有量としては、特に限定されず、粘着剤全体100重量部に対し、例えば、1重量部以上、40重量部以下とすることができる。粘着付与樹脂の含有量が上記範囲内にある場合、有効成分の経皮吸収性と、保持力などの粘着特性との双方をより一層高めることができる。
【0126】
その他の添加剤;
粘着剤は、使用目的等に応じてその他の添加剤等を含んでいてもよい。その他の添加剤としては、例えば、上述のエラストマーとは異なるエラストマーや樹脂、可塑剤、ゲル化剤、賦形剤、着色剤、滑沢剤、結合剤、乳化剤、増粘剤、湿潤剤、安定剤、保存剤、溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、緩衝剤、pH調整剤、酸化防止剤、経皮吸収促進剤、刺激緩和剤、防腐剤、キレート剤又は分散剤等が挙げられる。
【0127】
可塑剤としては、油性の液剤を用いることが好ましい。もっとも、可塑剤は、水性の液剤であってもよい。
【0128】
可塑剤としての油性の液剤としては、例えば、植物油、動物油、中性脂質、合成油脂、ステロール誘導体、ワックス、炭化水素、アルコールカルボン酸エステル、オキシ酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル、シリコーン、高級アルコール、高級脂肪酸又はフッ素系油剤等が挙げられる。水性の液剤としては、例えば、水、(多価)アルコール等が挙げられる。好ましくは、炭化水素、アルコールカルボン酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル、又はオキシ酸エステル等の油性の液剤である。これらの可塑剤は、1種類を単独で用いてもよく、複数種類を併用してもよい。
【0129】
可塑剤は、ゲル化されていてもよい。ここでゲル化とは、低分子若しくは高分子を含む、又は低分子若しくは高分子からなる液体中の分子同士が部分的に架橋し、三次元網目構造を形成することをいう。ゲル化は、物理的架橋によって行われても化学的架橋によって行われてもよい。
【0130】
ゲル化剤としては、可塑剤をゲル化できる限り特に限定されないが、例えば1種以上の脂肪酸と1種の多糖類とのエステルが挙げられる。脂肪酸としては、好ましくは炭素数が5~26である脂肪酸、より好ましくは炭素数が6~18である脂肪酸である。多糖類としては、好ましくはデキストリン、イヌリン、又はスクロース等が挙げられる。これらのゲル化剤は、1種類を単独で用いてもよく、複数種類を併用してもよい。
【0131】
その他の添加剤の含有量としては、特に限定されないが、例えば、粘着剤全体100重量部に対し、例えば、0.1重量部以上、20重量部以下とすることができる。
【0132】
(無機フィラー)
無機フィラーとしては、特に限定されず、例えば、シリカ、酸化チタン、軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、含水二酸化ケイ素、酸化亜鉛、及び二酸化ケイ素等を用いることができる。なかでも、無機フィラーは、疎水性の無機フィラーであることが好ましく、疎水性シリカであることがより好ましい。疎水性の無機フィラーを用いることにより、保持力と接着力(剥離力)の双方をより一層高めることができる。
【0133】
また、無機フィラーは、親水性フィラーであってもよい。この場合、保持力をより一層高めることができ、特に上述した耐汗保持力をより一層高めることができる。
【0134】
また、無機フィラーは、1種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。また、親水性の無機フィラーと疎水性の無機フィラーとを併用してもよい。例えば、疎水性シリカとメタケイ酸アルミン酸マグネシウムとを併用して用いることができる。
【0135】
無機フィラーの含有量は、特に限定されず、粘着剤層全体に対し、好ましくは1重量%以上、より好ましくは3重量%以上であり、好ましくは10重量%以下、より好ましくは8重量%以下である。無機フィラーの含有量が上記下限値以上である場合、保持力等の粘着特性をより一層高めることができる。一方、無機フィラーの含有量が上記上限値以下である場合、有効成分の経皮吸収性をより一層高めることができる。
【0136】
また、本発明においては、界面活性剤の含有量に対する無機フィラーの含有量の比(無機フィラーの含有量/界面活性剤の含有量)が、0.15以上、好ましくは0.2以上、さらに好ましくは0.25以上であり、好ましくは0.6以下、より好ましくは0.5以下である。上記比(無機フィラーの含有量/界面活性剤の含有量)が、上記下限値以上である場合、保持力等の粘着特性をより一層高めることができる。また、上記比(無機フィラーの含有量/界面活性剤の含有量)が、上記上限値以下である場合、有効成分の経皮吸収性をより一層高めることができる。
【0137】
(水溶性ポリマー)
水溶性ポリマーとしては、特に限定されず、例えば、ポリビニルピロリドン、酢酸ビニル・ビニルピロリドン共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリエチレングリコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、クラスターデキストリン、シクロアミロース、寒天、ゼラチン、メタクリル酸ジメチルアミノエチル・メタクリル酸ブチル・メタクリル酸メチル共重合体、メタクリル酸・アクリル酸エチル共重合体、メタクリル酸メチル・メタクリル酸共重合体、アクリル酸メチル・メタクリル酸メチル・メタクリル酸共重合体、アクリル酸・アクリルアミド共重合体、アクリル酸・メタクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル・メタクリル酸ジエチルアミノエチル共重合体等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、耐汗保持力をより一層高めることができる観点から、ポリビニルピロリドン、又はメタクリル酸ジメチルアミノエチル・メタクリル酸ブチル・メタクリル酸メチル共重合体などのアミノアルキルメタクリレート共重合体が好適に用いられる。
【0138】
水溶性ポリマーの含有量は、特に限定されず、粘着剤層全体に対し、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上であり、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。水溶性ポリマーの含有量が上記下限値以上である場合、耐汗保持力をより一層高めることができる。一方、水溶性ポリマーの含有量が上記上限値以下である場合、有効成分の経皮吸収性をより一層高めることができる。
【0139】
(粘着剤層)
粘着剤層の厚みは、特に限定されず、例えば、10μm以上、150μm以下とすることができる。
【0140】
[ライナー]
ライナーは、貼付製剤を皮膚に適用するまで、粘着剤層を保護するもので、かつ、容易に剥離できるようにする観点から、例えば、シリコーン等をコートしたものであれば、特に限定されない。ライナーとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリプロピレンに、シリコーンをコートしたものなどが挙げられる。もっとも、ライナーは、設けられていなくてもよい。また、粘着剤層の形成時において、後述する粘着剤層溶液は基材側に塗布してもよく、ライナー側に塗布してもよい。
【0141】
[貼付製剤の製造方法]
以下、本発明の貼付製剤の製造方法の具体例について、説明する。
【0142】
本発明の貼付製剤の製造方法としては、特に限定されず、溶液塗工法により製造することができる。溶液塗工法においては、まず、粘着剤層溶液を用意する。
【0143】
粘着剤層溶液を用意する方法としては、例えば、まず、上述の粘着剤と、有効成分と、界面活性剤と、無機フィラーと、必要に応じて水溶性ポリマーとを溶剤中で混合する。それによって、粘着剤層溶液を用意することができる。
【0144】
各成分の混合方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、マグネチックスターラーにて500rpm、1時間の条件で撹拌することにより混合することができる。
【0145】
溶剤としては、例えば、シクロヘキサン、ヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、ヘプタン、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸メチル、酢酸プロピル、テトラヒドロフラン、アセトン、ペンタン、メチルイソブチルケトン、又はメチルエチルケトン等が挙げられる。
【0146】
粘着剤層溶液中の固形分濃度は、好ましくは10重量%~80重量%、より好ましくは20重量%~60重量%である。
【0147】
次に、粘着剤層溶液を、例えば、ナイフコーター、コンマコーター、又はリバースコーターなどの塗工機を用いて、ライナー上に均一に塗布し、乾燥させる。それによって、溶剤を除去して粘着剤層を完成させ、粘着剤層の層上に基材をラミネートすることにより、貼付製剤を得ることができる。なお、さらに養生工程を設けてもよい。養生は、例えば、20℃~80℃で1日間~7日間行ってもよい。養生は、粘着剤層溶液を塗布し、乾燥した後に行ってもよいし、粘着剤層上に基材をラミネートした後に行ってもよい。なお、ライナー及び基材としては、上述のライナー及び基材をそれぞれ用いることができる。
【0148】
次に、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げることにより本発明を明らかにする。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0149】
(実施例1)
有効成分としてのバルデナフィル塩酸塩水和物(Atomax Chemicals社製、分子量:579g/mol)1gを40gの純水に溶解し、これに、界面活性剤としてのモノカプリル酸グリセリル(太陽化学社製、商品名「サンソフトNo.700P-2-C」、HLB値:10.9、飽和炭化水素基の炭素数:7)0.5gをシクロヘキサン80gに溶解した溶液を加え、ホモジナイザー撹拌(25000rpm)した。この後に2日間凍結乾燥し、コア部に有効成分を含有し、シェル部に界面活性剤を含有するコアシェル構造体である粒子を得た。
【0150】
また、別途、第1のエラストマーとしてのアクリル系エラストマー40重量部と、第2のエラストマーとしてのアクリル系エラストマー60重量部とを含む粘着剤(1)を用意した。なお、第1のエラストマーとしてのアクリル系エラストマーは、コスメディ製薬社製、商品名「MAS-683」(アクリル酸2-エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体、ポリマーのSP値:10.4)を用いた。第2のエラストマーとしてのアクリル系エラストマーは、コスメディ製薬社製、商品名「MAS811B」(アクリル酸2-エチルヘキシル・メタクリル酸2-エチルヘキシル・メタクリル酸ドデシル共重合体、ポリマーのSP値:9.1)を用いた。
【0151】
用意した粘着剤(1)52.5重量部に、用意した粒子45重量部と、無機フィラーとしての疎水性シリカ(AERSIL R972)2.5重量部を配合し、固形分の濃度が35重量%になるようにトルエンを加えた。その後、均一になるまで混合して、粘着剤層溶液を調製した。無機フィラーとしての疎水性シリカは、EVONIC社製、商品名「AERSIL R972」を用いた。
【0152】
次に、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる剥離基剤の一面にシリコーンが塗布されることにより離型処理が施された剥離シートを用意した。この剥離シートの離型処理面に調製した粘着剤層溶液を塗布し、90℃で20分間乾燥させることにより、剥離シートの離型処理面に100μmの粘着剤層が形成された積層体を作製した。そして、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる基材を用意した。この基材の一面と、上記積層体の粘着剤層とが対向するように重ね合わせて、積層体の粘着剤層を基材に転写させて積層一体化させることによって貼付製剤を製造した。
【0153】
(実施例2)
粘着剤(1)50重量部に、粒子45重量部と、無機フィラーとしての疎水性シリカ(AERSIL R972)5重量部を配合したこと以外は、実施例1と同様にして貼付製剤を製造した。
【0154】
(実施例3)
粘着剤(1)47.5重量部に、粒子45重量部と、無機フィラーとしての疎水性シリカ(AERSIL R972)7.5重量部を配合したこと以外は、実施例1と同様にして貼付製剤を製造した。
【0155】
(実施例4)
粒子を作製するに際し、有効成分の添加量を1gとし、界面活性剤の添加量を0.3gとしたこと以外は、実施例2と同様にして貼付製剤を製造した。
【0156】
(実施例5)
粒子を作製するに際し、有効成分の添加量を1gとし、界面活性剤の添加量を2gとしたこと以外は、実施例2と同様にして貼付製剤を製造した。
【0157】
(実施例6)
粘着剤(1)67.5重量部に、粒子30重量部と、無機フィラーとしての疎水性シリカ(AERSIL R972)2.5重量部を配合したこと以外は、実施例4と同様にして貼付製剤を製造した。
【0158】
(実施例7)
粘着剤(1)35重量部に、粒子60重量部と、無機フィラーとしての疎水性シリカ(AERSIL R972)5重量部を配合したこと以外は、実施例4と同様にして貼付製剤を製造した。
【0159】
(実施例8)
粘着剤(1)32.5重量部に、粒子60重量部と、無機フィラーとしての疎水性シリカ(AERSIL R972)7.5重量部を配合したこと以外は、実施例1と同様にして貼付製剤を製造した。
【0160】
(実施例9)
無機フィラーとして、疎水性シリカの代わりに軽質無水ケイ酸(フロイント産業社製、品番「アドソリダー101」)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして貼付製剤を製造した。
【0161】
(実施例10)
無機フィラーとして、疎水性シリカの代わりに含水二酸化ケイ素(SiO、フロイント産業社製、品番「アドソリダー102」)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして貼付製剤を製造した。
【0162】
(実施例11)
無機フィラーとして、疎水性シリカの代わりに酸化チタン(TiO、フロイント産業社製、品番「酸化チタンFG」)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして貼付製剤を製造した。
【0163】
(実施例12)
無機フィラーとして、疎水性シリカの代わりに親水性シリカ(EVONIC社製、品番「AERSIL200」)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして貼付製剤を製造した。
【0164】
(実施例13)
無機フィラーとして、疎水性シリカの代わりにメタケイ酸アルミン酸マグネシウム(Mg)(富士化学工業社製、品番「ノイシリンUFL2」)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして貼付製剤を製造した。
【0165】
(実施例14)
無機フィラーとして、疎水性シリカ5重量部の代わりに、疎水性シリカ2.5重量部及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウム(Mg)(富士化学工業社製、品番「ノイシリンUFL2」)2.5重量部を用いたこと以外は、実施例2と同様にして貼付製剤を製造した。
【0166】
(実施例15)
粘着剤(1)の代わりに、第1のエラストマーとしてのアクリル系エラストマー20重量部と、第2のエラストマーとしてのアクリル系エラストマー80重量部とを含む粘着剤(2)を用意したこと以外は、実施例2と同様にして貼付製剤を得た。
【0167】
(実施例16)
粘着剤(1)の代わりに、第1のエラストマーとしてのアクリル系エラストマー80重量部と、第2のエラストマーとしてのアクリル系エラストマー20重量部とを含む粘着剤(3)を用意したこと以外は、実施例2と同様にして貼付製剤を得た。
【0168】
(実施例17)
粘着剤層溶液を調製するに際し、疎水性シリカのうち2.5重量部の代わりに水溶性ポリマーとしてのポリビニルピロリドン(富士フィルム和光純薬社製、商品名「ポリビニルピロリドンK90」)2.5重量部を配合したこと以外は、実施例2と同様にして貼付製剤を得た。
【0169】
(実施例18)
粘着剤層溶液を調製するに際し、疎水性シリカのうち2.5重量部の代わりに水溶性ポリマーとしてのメタクリル酸ジメチルアミノエチル・メタクリル酸ブチル・メタクリル酸メチル共重合体(EVONIK社製、商品名「EUDRAGIT EPO」)2.5重量部を配合したこと以外は、実施例2と同様にして貼付製剤を得た。
【0170】
(比較例1)
粘着剤(1)55重量部に、粒子45重量部を配合し、無機フィラーを用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして貼付製剤を製造した。
【0171】
(比較例2)
粒子を作製するに際し、有効成分の添加量を1gとし、界面活性剤の添加量を5gとしたこと以外は、実施例2と同様にして貼付製剤を製造した。
【0172】
(比較例3)
粘着剤(1)32.5重量部に、粒子60重量部と、無機フィラーとしての疎水性シリカ(AERSIL R972)7.5重量部を配合したこと以外は、実施例5と同様にして貼付製剤を製造した。
【0173】
(比較例4)
粘着剤(1)67.5重量部に、粒子30重量部と、無機フィラーとしての疎水性シリカ(AERSIL R972)2.5重量部を配合したこと以外は、実施例5と同様にして貼付製剤を製造した。
【0174】
(比較例5)
粘着剤(1)50重量部に、粒子45重量部と、水溶性ポリマーとしてのポリビニルピロリドン5重量部を配合し、無機フィラーを用いなかったこと以外は、実施例17と同様にして貼付製剤を製造した。
【0175】
(比較例6)
粘着剤(1)50重量部に、粒子45重量部と、水溶性ポリマーとしてのメタクリル酸ジメチルアミノエチル・メタクリル酸ブチル・メタクリル酸メチル共重合体(EVONIK社製、商品名「EUDRAGIT EPO」)5重量部を配合し、無機フィラーを用いなかったこと以外は、実施例18と同様にして貼付製剤を製造した。
【0176】
(評価)
45℃保持力(保持時間);
JIS Z 0237:2009に準じ、貼付製剤を12mmの幅及び12mmの長さでSUS板に貼り付けた。45℃の環境下において、貼付製剤の端部に1.0kgの錘をつけてから貼付製剤が完全にSUS板から剥がれ落ちるまでの経過時間(保持時間)を測定した。保持力試験機としては、テスター産業社製、品番「BE-502」を用いた。
【0177】
剥離力;
実施例2,9,10~12について、JIS Z 0237:2009に準じ、貼付製剤を24mmの幅及び100mmの長さでSUS板に貼り付け試験片を作製し、90°方向に引き剥がしたときの剥離時の強度を剥離力とした。剥離力は、引張試験機で測定することにより求めた。引張試験機としては、今田製作所社製、品番「SVZ-50NB-1R1」を用いた。なお、剥離する速度は、300mm/minとした。
【0178】
耐汗保持力;
実施例2,13,14,17,18及び比較例5,6について、20μLの人口汗液をたらしたSUS板に貼付製剤を貼り付けたこと以外は、上記45℃保持力の評価と同様の条件で、耐汗保持力(保持時間)を測定した。
【0179】
ヘアレスラット皮膚透過性試験;
薬物皮膚透過試験セルにヘアレスラット皮膚(日本エスエルシー社、HWY/Slc 8週齢より摘出)をセットした。この装置の上部に、実施例1~3、9、10、13及び比較例1で得られた貼付製剤を1.33cm適用した。また、蒸留水中にNaHPOを5×10-4M、NaHPOを2×10-4M、NaClを1.5×10-4M、硫酸ゲンタマイシン(和光純薬社製、G1658)を10ppm含有させた液をNaOHでpH7.2に調整して緩衝液を調製し、これを下部のレセプター層に投入した。また、試験開始後より32℃に保たれた恒温槽中に装置を設置した。試験開始後、所定時間後に下部のレセプター層より槽中の液のうち1mlを採取した直後に、同じ組成の液を1ml補充した。回収した各々のレセプター液試料にメタノールを添加して溶出脂質等を抽出し遠心分離した。遠心分離後、上清中の有効成分濃度を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により定量した。定量した有効成分量に基づき、24時間累積皮膚透過量を算出した。
【0180】
官能試験;
成人5名の上腕に実施例1~3、9、10、13及び比較例1で得られた貼付製剤を1.33cm貼付してもらい、12時間後の剥がれの有無を確認した。5名とも剥がれないものを◎とし、4名剥がれがないものを〇とし、2名以上剥がれがあるものを×とした。
【0181】
結果を下記の表1~表3に示す。
【0182】
【表1】
【0183】
【表2】
【0184】
【表3】
【符号の説明】
【0185】
1,11…貼付製剤
2…基材
2a,2b…第1,第2の主面
3…粘着剤層
3a…主面
4…ライナー
21…コアシェル構造体
22…コア部
23…シェル部
図1
図2
図3