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特開2022-138575電源装置の制御方法、無停電電源装置、電源装置、電源システム、及び組み込み系ソフトウェアプログラム
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  • 特開-電源装置の制御方法、無停電電源装置、電源装置、電源システム、及び組み込み系ソフトウェアプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138575
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】電源装置の制御方法、無停電電源装置、電源装置、電源システム、及び組み込み系ソフトウェアプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 8/656 20180101AFI20220915BHJP
【FI】
G06F8/656
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021038530
(22)【出願日】2021-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】中島 貴浩
(72)【発明者】
【氏名】竹原 俊之
【テーマコード(参考)】
5B376
【Fターム(参考)】
5B376CA22
5B376FA11
5B376GA13
(57)【要約】
【課題】ファームウェア更新を適切に実行する電源装置の制御方法、無停電電源装置、電源装置、電源システム、及びファームウェアを提供する。
【解決手段】電源装置1の制御方法は、電源装置1が備える充放電回路12の運転を継続させることで電力出力及び電力入力の少なくともいずれかを継続し、電源装置1のファームウェアの更新データを、電源装置1の電力出力及び電力入力の少なくともいずれかを継続しつつ取得して電源装置1が備えるROM101に記憶させ、更新データのROM101への記憶の完了後に、電源装置1が備える制御部10に、更新後のファームウェアに基づく処理を開始させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源装置が備える電力変換器の運転を継続させることで電力出力及び電力入力の少なくともいずれかを継続し、
前記電源装置のファームウェアの更新データを、前記電源装置の電力出力及び電力入力の少なくともいずれかを継続しつつ取得して前記電源装置が備える非一時記憶媒体に記憶させ、
前記更新データの前記非一時記憶媒体への記憶の完了後に、前記電源装置が備える制御部に、更新後のファームウェアに基づく処理を開始させる、
電源装置の制御方法。
【請求項2】
システムに含まれる複数の前記電源装置にて前記ファームウェアの更新データの取得及び前記非一時記憶媒体への記憶が完了した後、
複数の前記電源装置における更新後のファームウェアをまとめて実行可能にする
請求項1に記載の電源装置の制御方法。
【請求項3】
前記ファームウェアが記憶されている領域と異なる、前記非一時記憶媒体における記憶領域に、前記更新データを記憶させ、
前記更新データの前記非一時記憶媒体への記憶が完了した後、
前記制御部は、前記更新データが記憶された記憶領域を動作領域とする
請求項1又は請求項2に記載の電源装置の制御方法。
【請求項4】
前記制御部は、前記電源装置の電力出力及び電力入力の少なくともいずれかを継続するため、前記ファームウェアの少なくとも一部を一時記憶媒体に複製し実行する
請求項3に記載の電源装置の制御方法。
【請求項5】
電力変換器と、
非一時記憶媒体と、
ファームウェアに基づく制御を実行する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記電力変換器の運転を継続させることで電力出力を継続し、
前記ファームウェアの更新データを、電力出力を継続しつつ取得して前記非一時記憶媒体に記憶させ、
前記更新データの前記非一時記憶媒体への記憶の完了後に、バイパス給電に切り換え、
更新後のファームウェアに基づく処理を開始する、
無停電電源装置。
【請求項6】
電力変換器と、
非一時記憶媒体と、
ファームウェアに基づく制御を実行する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記電力変換器の運転を継続させることで電力出力及び電力入力の少なくともいずれかを継続し、
前記ファームウェアの更新データを、電力出力及び電力入力の少なくともいずれかを継続しつつ取得して前記非一時記憶媒体に記憶させ、
前記更新データの前記非一時記憶媒体への記憶の完了後に更新後のファームウェアに基づく処理を開始する、
電源装置。
【請求項7】
請求項6に記載の電源装置を複数接続した、電源システム。
【請求項8】
電源装置が備える制御部に、
前記電源装置の組み込み系ソフトウェアプログラムの更新データを、前記電源装置の電力出力及び電力入力の少なくともいずれかを継続しつつ取得して非一時記憶媒体に記憶させ、
更新後の組み込み系ソフトウェアプログラムに基づく処理を開始させる、
処理を実行させる組み込み系ソフトウェアプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置の組み込み系ソフトウェアプログラム(以下、ファームウェアともいう)の更新技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、車両制御装置の制御プログラムのリプログラミングを行なうための方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-052960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
無停電電源装置、パワーコンディショナ、電気自動車充電器といった種々の電源装置が、社会的インフラストラクチャーとして利用されている。電源装置は、内蔵する記憶部に記憶されたファームウェアによって制御される。電源装置のファームウェアの更新は従来、影響が少ないと予想される時間に、電源装置を停止して実施されている。
【0005】
電源装置の使用目的を鑑みれば、ファームウェアの更新のために、電源装置の電力入出力を長期間停止することは好ましくない。
【0006】
本発明は、ファームウェア更新を適切に実行する電源装置の制御方法、無停電電源装置、電源装置、電源システム、及び組み込み系ソフトウェアプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る電源装置の制御方法は、前記電源装置が備える電力変換器の運転を継続させることで電力出力及び電力入力の少なくともいずれかを継続し、前記電源装置のファームウェアの更新データを、前記電源装置の電力出力及び電力入力の少なくともいずれかを継続しつつ取得して前記電源装置が備える非一時記憶媒体に記憶させ、前記更新データの前記非一時記憶媒体への記憶の完了後に、前記電源装置が備える制御部に、更新後のファームウェアに基づく処理を開始させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】電源装置の構成を示すブロック図である。
図2】制御部によるファームウェアの更新処理手順の一例を示すフローチャートである。
図3】電源装置の状態のタイミングチャートである。
図4】第2実施形態に係る電源装置の構成を示すブロック図である。
図5】制御部によるファームウェアの更新処理手順の他の一例を示すフローチャートである。
図6】複数の電源装置が備えられるシステムの概要図である。
図7】複数の電源装置が備えられるシステムの概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
電源装置の制御方法は、前記電源装置が備える電力変換器の運転を継続させることで電力出力及び電力入力の少なくともいずれかを継続し、前記電源装置のファームウェアの更新データを、前記電源装置の電力出力及び電力入力の少なくともいずれかを継続しつつ取得して前記電源装置が備える非一時記憶媒体に記憶させ、前記更新データの前記非一時記憶媒体への記憶の完了後に、前記電源装置が備える制御部に、更新後のファームウェアに基づく処理を開始させる。
【0010】
ここで、電源装置は、無停電電源装置(以下、UPSという)であってもよいし、パワーコンディショナ(以下、PCSという)であってもよいし、電気自動車等に搭載された蓄電素子に対する充電器(又は充放電器)であってもよい。電源装置は、これらに限定されない。
電力変換器は、交流電力を直流電力に変換する所謂コンバータであってもよいし、直流電力を交流電力に変換する所謂インバータであってもよい。電力変換器は、直流電力を異なる電圧値の直流電力へ変換するコンバータであってもよい。電源装置は、複数の電力変換器(例えば、コンバータと、インバータ)を備えていてもよい。
非一時記憶媒体は、制御部の一部であってもよい。
【0011】
電源装置は、ファームウェアの更新データを取得するに際し、複数に分割されたファームウェアのデータを複数回に分けて取得してもよい。
【0012】
電源装置にてファームウェアの更新データが記憶される非一時的記憶媒体は、コンピュータ(例えば、マイクロコンピュータ)に組み込まれた記憶媒体であってもよいし、外付けの記憶媒体であってもよい。
【0013】
更新後のファームウェアに基づく処理を開始する際は、例えば、再起動したコンピュータのCPUが、更新されたファームウェアの最初に実行すべきコードが記憶された領域にアクセスする。これは、更新後のファームウェアを実行可能にする処理に相当する。
【0014】
上記構成の電源装置の制御方法によれば、電力変換器(コンバータ及び/又はインバータ)の運転を継続させて、ファームウェアの更新データを取得して電源装置の非一時的記憶媒体に記憶させている間、電源装置の電力出力及び/又は電力入力を継続できる。これにより、電源装置の電力入出力が長期間停止される可能性を低減できる。
【0015】
UPSやPCSといった電源装置は、インフラストラクチャーとして用いられており、ファームウェアの更新のために、電源装置の電力入出力を長期間停止することは好ましくない。従来のUPSは、ファームウェアの更新中に停電が生じた場合、電気負荷に対するバックアップ電力供給を行なえず、期待されている機能を果たせない。従来のPCSは、ファームウェアの更新中は電力変換・電力入出力を行なえず、機会損失が生じる(例えば、太陽電池で発電された電力を売電又は蓄電できなかったり、デマンドレスポンスに応じる機会を逸したりする)。
【0016】
上記構成の電源装置の制御方法により、ファームウェアの更新に要する全期間の内、比較的長時間(例えば数分~数時間)を要する更新データの取得処理中は、電源装置が電力入出力を継続できる。データの取得完了後に更新後のファームウェアを実行可能にする処理は、比較的短時間(例えば1秒~数十秒)で行なえる。そのため、電源装置の電力入出力が長期間停止される可能性を低減できる。
【0017】
電源装置の制御方法では、システムに含まれる複数の電源装置にて前記ファームウェアの更新データの取得及び前記非一時記憶媒体への記憶が完了した後、それら複数の電源装置における更新後のファームウェアをまとめて実行可能にしてもよい。
【0018】
例えば、大容量(高VA)の電力出力が求められる状況では、複数の電源装置を並列接続してシステムが構成される。ファームウェアの更新は、複数の電源装置それぞれで行なう必要がある。複数の電源装置が順次、上位の制御装置(例えば、ネットワークインターフェースカード)から通信でファームウェア更新データを受信する場合、複数の電源装置すべてにおいて取得及び記憶が完了するまでに長時間を要する。
上記構成の電源装置の制御方法によれば、長時間を要する複数の電源装置におけるデータの取得及び記憶処理中は、それぞれの電源装置の電力入出力を継続させる。これにより、電力入出力の停止期間を必要最小限にとどめられる。
【0019】
電源装置にて、前記更新データは、前記ファームウェアが記憶されている領域と異なる、前記非一時記憶媒体の記憶領域に記憶されてもよい。更新データの前記非一時記憶媒体への記憶の完了後、前記制御部は、前記更新データが記憶された記憶領域を動作領域とする。
これにより、電力入出力の停止期間を必要最小限にとどめつつ、更新データの記憶完了後に、電源装置は更新されたファームウェアでの動作が可能である。
【0020】
前記制御部は、電力出力及び電力入力の少なくともいずれかを継続するため、前記ファームウェアの少なくとも一部を一時記憶媒体に複製してもよい。前記制御部による一時記憶媒体上のファームウェアに基づく制御中に、非一時記憶媒体への更新データの記憶が行なわれてもよい。
上記構成により、非一時記憶媒体の記憶容量が、更新データ分と実行中のファームウェア分との両方を同時に非一時記憶媒体に記憶できるほど潤沢に利用できない場合であっても、電源装置の電力入出力を継続できる。ファームウェアの内の電力入出力のための最低限のコードを一時記憶媒体に記憶して一時的に動作領域とすることで、電源装置は、電力入出力を継続できる。
【0021】
UPSは、電力変換器と、非一時記憶媒体と、ファームウェアに基づく制御を実行する制御部と、を備え、前記制御部は、前記電力変換器の運転を継続させて電力出力を継続し、ファームウェアの更新データを、電力出力を継続しつつ取得して前記非一時記憶媒体に記憶させ、前記更新データの前記非一時記憶媒体への記憶の完了後に、バイパス給電に切り換え、更新後のファームウェアに基づく処理を開始する。非一時記憶媒体は、制御部の一部であってもよい。
【0022】
例えば、常時インバータ給電方式のUPSは、商用電源などの系統電源から供給される交流電力をコンバータで直流電力に変換する。コンバータは、直流電力を、蓄電池等の蓄電素子へ供給する(蓄電池を充電する)とともに、インバータへ供給する。インバータは、直流電力を交流電力に変換し、整流して電気負荷へ供給する。UPSは、代替的に、パラレルプロセッシング方式であってもよいし、常時商用給電方式であってもよい。
上記構成のUPSによれば、ファームウェアの更新に要する全期間の内、比較的長時間を要する更新データの取得処理中は、電力変換器の運転が継続され、停電が生じてもUPSがバックアップ電力を電気負荷に供給できる。そのため、UPSに期待されている機能を果たすことができる。
【0023】
電源装置は、電力変換器と、非一時記憶媒体と、ファームウェアに基づく制御を実行する制御部と、を備え、前記制御部は、前記電力変換器の運転を継続させて電力出力及び電力入力の少なくともいずれかを継続し、ファームウェアの更新データを、電力出力及び電力入力の少なくともいずれかを継続しつつ取得して非一時記憶媒体に記憶させ、前記更新データの前記非一時記憶媒体への記憶の完了後に更新後のファームウェアに基づく処理を開始する。非一時記憶媒体は、制御部の一部であってもよい。
電源システムは、上記電源装置を複数接続して構成される。複数の電源装置は、電力入力及び/又は電力出力のために、電気的に並列に接続されてもよいし、電気的に直列に接続されてもよい。
組み込み系ソフトウェアプログラムは、電源装置が備える制御部に、前記電源装置が備える電力変換器の運転を継続し、前記電源装置のファームウェアの更新データを取得して非一時記憶媒体に記憶させ、前記更新データの前記非一時記憶媒体への記憶の完了後に更新後のファームウェアに基づく処理を開始する、処理を実行させる。
【0024】
本発明をその実施形態を示す図面を参照して具体的に説明する。
【0025】
(第1実施形態)
図1は、電源装置1の構成を示すブロック図である。電源装置1は、制御部10、蓄電部11、充放電回路12、及び通信部13を備える。
【0026】
制御部10は、マイクロコントローラである。制御部10は、CPU(Central Processing Unit )100、ROM(Read Only Memory)101、RAM(Random Access Memory)102及びI/O(入出力)103を含む。
【0027】
CPU100は、実行部であり、ROM101に記憶されているファームウェアを逐次読み出してファームウェアで定義されている制御手順で制御処理を実行する。ROM101は、CPU100からは原則として読み出し専用の非一時的なメモリである。ROM101の動作領域は、書き換え可能である。ROM101は動作領域外に、一時保存領域を有する。ROM101は、読み出しのみが許可される読み出しモードと、書き換えが可能だが読出しができない消去書き換えモードとで使用される。ROM101は例えばフラッシュメモリである。ROM101は上述の通り、CPU100が読み出すファームウェアを記憶する。CPU100が読み出すファームウェアは、ROM101内の動作領域に記憶される。ROM101には、充放電制御用の制御ファームウェア2Pと、以下に説明する更新処理を、電源装置1動作中に実行するための書き換え用ファームウェア1Pとが記憶されている。
【0028】
RAM102は、CPU100が演算に用いる一時的なメモリである。CPU100は、RAM102に演算の結果を書き込み、読み出しながら処理を進める。RAM102に記憶されるデータは、制御部10の再起動で揮発する。
【0029】
蓄電部11は、蓄電素子を含む。蓄電部11は、系統電源Eと直接、又は充放電回路12を介して接続されている。制御部10は、蓄電部11からの電力供給を受けてもよい。
【0030】
充放電回路12は、インバータ及び/又はコンバータを含む。充放電回路12は、電気負荷と接続される。充放電回路12は、制御部10からの指令に応じて、系統電源Eから電気負荷への電力供給、系統電源Eから蓄電素子への充電、又は蓄電素子から電気負荷への電力供給を実行する。充放電回路12は、電源装置1の種類(UPS、PCS、又は直流電源装置)によって構成が異なる。
【0031】
通信部13は、上位装置2、又は図示しない外部記憶媒体(例えば、USBメモリ)との通信のための通信デバイスである。通信部13は例えば、ネットワークインターフェースカードであってもよいし、外部記憶媒体を装着可能な構成であってもよい。例えば制御部10は、通信部13を介して上位装置2からの指示を受信する。制御部10は、通信部13を介してファームウェアの更新データを受信する。上位装置2は、ローカルネットワークを介して電源装置1へ制御ファームウェア2Pの更新データを送信する保守用端末装置であってもよいし、複数の電源装置1に接続されたネットワークインターフェースカードであってもよい。上位装置2は、インターネットを含む通信網経由で電源装置1に指示を与えるか、又は電源装置1からデータを収集するサーバ装置であってもよい。
【0032】
図2は、制御部10によるファームウェアの更新処理手順の一例を示すフローチャートである。制御部10のCPU100は、書き換え用ファームウェア1P及び制御ファームウェア2Pの一部をRAM102にコピーし、以下の処理を実行する。RAM102にコピーする制御ファームウェア2Pの一部とは、充放電回路12の制御、停電・異常検出等の最低限の機能に対応する部分である。
【0033】
CPU100は、通信部13によってファームウェアの更新データを受信したか否かを判断する(ステップS101)。ファームウェアの更新データを受信していないと判断した場合(S101:NO)、CPU100は、ステップS101に戻り、受信したと判断するまで処理を繰り返す。この場合制御部10は、ROM101の制御ファームウェア2Pによる充放電制御を続行する。ROM101は読み出しモードである。
【0034】
ファームウェアの更新データを受信したと判断した場合(S101:YES)、CPU100は、受信したデータを解析する(ステップS102)。CPU100は、受信したデータが規定のバイト数に到達したか否かを判断する(ステップS103)。受信したデータが規定のバイト数に到達しないと判断した場合(S103:NO)、CPU100は処理をステップS101へ戻す。受信したデータが規定のバイト数に到達したと判断した場合(S103:YES)、CPU100はROM101を消去書き換えモードに切り替え(ステップS104)、受信した更新データをROM101に直接的に書き込む(ステップS105)。この間CPU100はRAM102上で、例えば電気負荷への電力供給を維持するための充放電制御を続行する。書き込みが完了した後、CPU100はROM101を読み出しモードへ切り替える(ステップS106)。
【0035】
ステップS105においてCPU100は、ファームウェアの更新データをROM101の一時保存領域に記憶してもよい。この場合、更新前の制御ファームウェア2PのデータがROM101の動作領域に残っているため、仮に書き込み中にエラーが発生した場合であっても、更新前の制御ファームウェア2Pによる動作を開始できる。
書き込みが実行される間、CPU100はRAM102上で、例えば電気負荷への電力供給を維持するための充放電制御を続行する。
【0036】
CPU100は、データ受信が完了したか否かを判断する(ステップS107)。データ受信が完了していないと判断した場合(S107:NO)、CPU100は、処理をステップS101へ戻し、受信及び書き込みの処理を続行する。
【0037】
ステップS107でデータ受信が完了したと判断した場合(S107:YES)、CPU100は、充放電回路12の動作を一旦停止させる(ステップS108)。電源装置1がUPSである場合、CPU100は電気負荷への給電方法を、バイパス給電へ切り替える。
【0038】
CPU100は、内部リセットなどを用いて電源装置1を再起動する(ステップS109)。再起動によって、更新処理はリセットされ、電源装置1は、通常動作を開始する。再起動によって、RAM102にコピーされていた書き換え用ファームウェア及び制御ファームウェアの一部もリセットされる。
【0039】
CPU100は、ROM101の一時保存領域に制御ファームウェア2Pのデータを記憶している場合、ステップS108で充放電回路12の動作を一旦停止させた後、ステップS109の再起動により、更新後の制御ファームウェア2Pのデータを、ROM101の動作領域へ移動する。制御ファームウェア2Pのデータの移動は1秒未満ないし1秒程度で終了する。
【0040】
これにより、長時間を要するファームウェア更新データの受信及び記憶中も、電源装置1としての機能を継続させることができる。ファームウェア更新データの受信には、数分~数時間を要する場合がある。電源装置1がその機能(電力入出力)を停止するのは、ROM101の一時保存領域から動作領域へ更新後の制御ファームウェア2Pをコピー(移動)する間を含む、再起動の期間のみであり、長くても数十秒である。
【0041】
図3は、電源装置1の状態のタイミングチャートである。図3は、縦軸の上部から下部に向けて時間が経過することを示す。図3では、電源装置1がUPSである場合と、PCSである場合とに分けて、状態の経過を示す。
【0042】
電源装置1が常時インバータ給電方式のUPSである場合、更新要求(更新データ)を上位装置2から受信した後、制御ファームウェア2Pの更新データの受信完了まではインバータから電気負荷への給電を維持する。制御ファームウェア2Pの更新データの受信完了後、UPSは充放電回路12(インバータ)を停止させる間、バイパス給電を維持する。更新後の制御ファームウェア2Pのデータの動作領域へのコピーが完了した後、UPSは、インバータを含む充放電回路12の制御を開始し、インバータからの給電を開始できる。このように、UPSのインバータ給電を停止する時間を最小限に抑えることができる。
【0043】
電源装置1がPCSである場合、更新要求(更新データ)を上位装置2から受信した後、停止時間を最小限に抑えることができる。PCSは、制御ファームウェア2Pの更新データの受信完了までは運転を維持できる。制御ファームウェア2Pの更新データの受信完了後、PCSは速やかに、データの移動を含む再起動を実行する。この間、PCSはその機能を停止するが、従来の更新方法に比べて、停止時間は短時間で済む。
【0044】
図3に示す従来の更新方法では、更新要求(更新データ)を受信したタイミングでROM101からファームウェアが読み出し不可能となり、UPS又はPCSの動作は停止する。ファームウェアの更新データの受信及びROM101の動作領域へのコピーが完了後、UPS又はPCSは動作を再開する。データの受信に数分~数時間かかる場合、その間UPS又はPCSは、期待されている機能を発揮できない。
【0045】
これに対し、図2の処理手順で電源装置1が制御ファームウェア2Pを更新すると、電源装置1の機能が停止する時間を最小限に抑制できる。
【0046】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態における電源装置1の構成を示すブロック図である。制御部10は、CPU100から読み出し可能なROM101を複数(2個)備える。電源装置1の構成は、ROM101の数及び以下の処理手順以外、第1実施形態の電源装置1の構成と同様である。共通する構成については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0047】
図5は、制御部10によるファームウェアの更新処理手順の他の一例を示すフローチャートである。図5に示す処理手順の内、図2と共通する手順については同一のステップ番号を付して詳細な説明を省略する。
【0048】
CPU100は、受信した更新データが規定のバイト数に到達したと判断した場合(S103:YES)、動作領域として読み出しモードで使用している一方のROM101と異なる、他方のROM101を消去書き換えモードとし(ステップS124)、データを書き込む(ステップS125)。
【0049】
CPU100は、データ受信が完了したか否かを判断し(S107)、完了していないと判断した場合(S107:NO)、CPU100は処理をステップS101へ戻して受信及び書き込みを続行する。
【0050】
データ受信が完了したと判断した場合(S107:YES)、CPU100は、充放電回路12の動作を一旦停止し(S108)、内部リセットなどを用いて再起動する(ステップS109)。再起動によって、更新後の制御ファームウェア2Pを記憶したROM101がCPU100の動作領域となり、使用されていたROM101は次に制御ファームウェア2Pの更新対象となる。
【0051】
第2実施形態の電源装置1の構成により、長時間を要するファームウェアの更新データの受信及び記憶中も、充放電回路12の動作を継続させることができる。第2実施形態においても、電源装置1としての機能を停止するのは、再起動の期間のみである。
【0052】
電源装置1が、第1実施形態又は第2実施形態に示したような処理手順で制御ファームウェア2Pを更新することで、以下に説明するように、電源装置1を含むシステム全体での、電気負荷への電力供給の停止時間を最小限に抑えることができる。
【0053】
図6及び図7は、複数の電源装置1が備えられるシステム200,300の概要図である。図6のシステム200は、UPS1を複数含む。複数のUPS1は、並列で接続される。システム200は、ローカルネットワークLNのルータ3を含む。システム200では、保守担当者が携帯する保守端末装置(上位装置)2がルータ3に接続し、ルータ3経由で複数のUPS1に更新処理を実施させる。上位装置2は、1台ずつ、UPS1に制御ファームウェア2Pの更新データを記憶させる。更新データの受信及び記憶には、1台当たり、数分から数時間必要である。各UPS1における更新データの受信及び記憶の間、第1実施形態又は第2実施形態のファームウェア更新方法を用いることによって、各UPS1は電気負荷への電力供給を継続できる。複数のUPS1においてROM101(図1及び図4参照)への更新データの記憶が完了した後、それら複数のUPS1における更新後のファームウェアをまとめて実行可能にする。
【0054】
図7のシステム300は、シリアル通信接続された複数のPCS1を含む。システム300は、ローカルネットワークLNと外部ネットワークとを接続するルータ3を含む。PCS1は通信部13(図1及び図4参照)により、公衆通信網Nを介して電力サーバ4と通信接続が可能である。システム300では、複数のPCS1の内、特定のPCS1の通信部13が、ルータ3を介して保守担当者が携帯する保守端末装置(上位装置)2と接続する。他のPCS1は、シリアル通信ケーブルを介して通信可能に接続される。上位装置2は、PCS1それぞれに対し順に、制御ファームウェア2Pの更新データを送信する。第1実施形態又は第2実施形態のファームウェア更新方法によって、各PCS1への更新データの記憶が完了した後、それら複数のUPS1における更新後のファームウェアをまとめて実行可能にする。
【0055】
図示しないが、電源装置1は複数の制御部10(CPU100)を搭載してもよい。この場合、上位装置2は、各制御部10に対してファームウェア更新を要求してもよいし、複数の制御部10全てを対象としてファームウェア更新を要求し、平行的に更新が実施されてもよい。
【0056】
上述のように開示された実施形態は全ての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0057】
1 電源装置
10 制御部
100 CPU(実行部)
101 ROM(非一時記憶媒体)
102 RAM(一時記憶媒体)
1P 書き換え用ファームウェア
2P 制御ファームウェア
12 充放電回路
13 通信部
2 上位装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7