(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138589
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】パッケージ品の検査装置およびパッケージ品の検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 25/72 20060101AFI20220915BHJP
【FI】
G01N25/72 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021038553
(22)【出願日】2021-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000227836
【氏名又は名称】日本アビオニクス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304028346
【氏名又は名称】国立大学法人 香川大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丹治 栄二郎
(72)【発明者】
【氏名】木村 彰一
(72)【発明者】
【氏名】宇田 康
(72)【発明者】
【氏名】石井 明
【テーマコード(参考)】
2G040
【Fターム(参考)】
2G040AA07
2G040AB08
2G040BA12
2G040BA14
2G040BA26
2G040CA02
2G040DA06
2G040DA12
2G040EA08
2G040HA06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】搬送ベルトの温度変化を抑制することで、また、パッケージ品の表面温度を均等に変化させることでパッケージ品の封止不良を高精度に検知することが可能なパッケージ品の検査装置を提供する。
【解決手段】容器の開口部が封止されたパッケージ品200の封止不良を検査する検査装置1であって、搬送面10aを有し搬送面10a上に載置されたパッケージ品200を搬送する搬送部10と、搬送面10aに対して平行に温調風を吹き出すことにより、搬送部10によって搬送されるパッケージ品200に温調風を供給してパッケージ品200の温度を変化させる送風部20と、温調風の供給によって温度が変化したパッケージ品200の表面温度の分布を検出する検出部30とを備えた検査装置1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の開口部が封止されたパッケージ品の封止不良を検査する検査装置であって、
搬送面を有し前記搬送面上に載置されたパッケージ品を搬送する搬送部と、
前記搬送面に対して平行に温調風を吹き出すことにより、前記搬送部によって搬送される前記パッケージ品に前記温調風を供給して前記パッケージ品の温度を変化させる送風部と、
前記温調風の供給によって温度を変化させた前記パッケージ品の表面温度の分布を検出する検出部とを備えた
検査装置。
【請求項2】
前記送風部は、前記搬送部による前記パッケージ品の搬送方向とは反対の方向に、前記温調風を吹き出す
請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記送風部は、前記温調風を吹き出す吹き出し口を有する送風ノズルと、前記吹き出し口に取り付けられ前記温調風の流速と流速分布を制御するための調整板とを備えた
請求項1または2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記調整板は、前記送風ノズルの吹き出し口を狭めるように設置されている
請求項3に記載の検査装置。
【請求項5】
さらに、前記送風部から吹き出された前記温調風の吹き出し方向を維持するためのガイド部材を備えた
請求項1~4のうちの何れか1項に記載の検査装置。
【請求項6】
前記ガイド部材は、前記温調風の吹き出し方向に対する延設長さを可変とする機構を備えている
請求項5に記載の検査装置。
【請求項7】
前記ガイド部材は、前記温調風の吹き出し方向の遠位端の移動により前記搬送面に対する配置角度を可変とする機構を備えている
請求項5または6に記載の検査装置。
【請求項8】
さらに、前記送風部における前記温調風の吹き出し方向における前記ガイド部材の下流側から前記温調風を回収して前記送風部に供給するための送風回収部を備えた
請求項5~7のうちの何れか1項に記載の検査装置。
【請求項9】
前記検出部は、
前記パッケージ品を撮像する赤外線カメラと、
前記赤外線カメラで得られた画像を出力する出力部とを備えた
請求項1~8のうちの何れか1項に記載の検査装置。
【請求項10】
前記検出部は、
前記赤外線カメラで得られた画像に基づいて、前記パッケージ品の封止不良を検出する解析部を備えた
請求項9に記載の検査装置。
【請求項11】
前記送風部は、前記温調風によって前記パッケージ品を加熱する
請求項1~10のうちの何れか1項に記載の検査装置。
【請求項12】
前記送風部は、
前記温調風を吹き出す送風ノズルと、
前記送風ノズルの高さ位置を制御して前記温調風の吹き出し高さを可変とする保持部とを備えた
請求項1~11のうちの何れか1項に記載の検査装置。
【請求項13】
前記パッケージ品は、上部に開口を有する容器本体と、前記容器本体の開口を封止する蓋とを備え、
前記検出部は、前記蓋の温度分布を検出する
請求項1~12のうちの何れか1項に記載の検査装置。
【請求項14】
容器の開口部が封止されたパッケージ品の封止不良を検査する検査方法であって、
搬送面を有する搬送部により、前記搬送面上に載置した前記パッケージ品を搬送し、
送風部により、前記搬送面に対して平行に温調風を吹き出すことにより、前記搬送部によって搬送される前記パッケージ品に前記温調風を供給して前記パッケージ品の温度を変化させ、
検出部により、前記送風部によって前記温調風が吹き当てられたパッケージ品の表面温度の分布を検出する
検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の開口が封止されたパッケージ品の検査装置およびパッケージ品の検査方法に関し、特には容器の封止不良を検査するためのパッケージ品の検査装置およびパッケージ品の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内容物を収容する容器の開口が封止されたパッケージ品の封止不良を検査する技術として、下記特許文献1に開示の技術がある。この特許文献1には、容器本体と、容器本体の開口部を封止する蓋とを備えたパッケージ品を搬送する過程で、パッケージ品の蓋の温度を変化させる熱を付与し、赤外線カメラを用いて蓋の表面温度の分布を表すサーモグラフィ画像を撮影し、この画像に基づいて容器本体と蓋とシール部の不良を検出する技術が記載されている。また特許文献1には、パッケージ品の蓋に温度変化を生じさせる熱付与装置は、パッケージ品を搬送する搬送ベルトの搬送面に対向して配置され、ふく射伝熱または対流熱伝達によって、パッケージ品の蓋に熱を付与すると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したように、単に搬送ベルトの搬送面に対向して配置された熱付与装置による加熱では、ふく射伝熱もしくは対流熱伝達によって搬送ベルトが加熱され、パッケージ品と背景となる搬送面との温度差が確保できなくなる問題が生じる。温度差が確保できないと、パッケージ品と背景との識別が困難になる。その対策として、上記特許文献1には、搬送ベルトの温度調整手段として送風機を設けること、さらには、熱付与装置に対向する搬送ベルトと赤外線カメラに対向する搬送ベルトとを分離することが記載されているが、送風機の設置や搬送ベルトの分離が必要である。
【0005】
また、搬送ベルトの搬送面に対向して配置された熱付与装置による加熱では、パッケージ品に温度ムラが生じ、この温度ムラがサーモグラフィ画像に反映されて封止不良部の検出精度を低下させることがあった。特に、ふく射伝熱による加熱では、熱付与される面に印刷された印刷色や材質による熱吸収の違いによって温度ムラが発生することがあった。また、対流熱伝達による加熱であっても、検査対象であるパッケージ品の移動などに起因する気流によって不均一な加熱や冷却が発生し、温度ムラが発生することがあった。
【0006】
そこで本発明は、搬送ベルトの温度変化を抑制することで、また、パッケージ品の表面温度を均等に変化させることでパッケージ品の封止不良を高精度に検知することが可能なパッケージ品の検査装置およびパッケージ品の検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するための本発明は、容器の開口部が封止されたパッケージ品の封止不良を検査する検査装置であって、搬送面を有し前記搬送面上に載置されたパッケージ品を搬送する搬送部と、前記搬送面に対して平行に温調風を吹き出すことにより、前記搬送部によって搬送される前記パッケージ品に前記温調風を供給して前記パッケージ品の温度を変化させる送風部と、前記温調風の供給によって温度が変化した前記パッケージ品の表面温度の分布を検出する検出部とを備えた検査装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、搬送ベルトの温度変化を抑制することで、また、パッケージ品の表面温度を均等に変化させることでパッケージ品の封止不良を高精度に検知することが可能なパッケージ品の検査装置およびパッケージ品の検査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係るパッケージ品の検査装置の構成を説明するための模式図(その1)である。
【
図2】実施形態に係るパッケージ品の検査装置の要部の構成を説明するための平面模式図である。
【
図3】実施形態に係るパッケージ品の検査装置の構成を説明するための模式図(その2)である。
【
図4】実施形態の変形例に係るパッケージ品の検査装置の構成を説明するための模式図である。
【
図5】実施形態の他の変形例に係るパッケージ品の検査装置の構成を説明するための模式図である。
【
図6】実施形態の効果を説明するための赤外線画像である。
【
図8】実施形態の効果を説明するための表面温度の分布を示すグラフである。
【
図9】実施形態の効果を説明するための搬送面の温度変化を示すグラフである。
【
図10】実施形態の効果を説明するためのガイド部材からの高さ距離に対する温調風の流速分布を示すグラフである。
【
図11】実施形態の効果を説明するための吹き出し口からの距離と温調風の流速との関係を、ガイド部材からの高さ距離ごとに示すグラフである。
【
図12】実施形態の効果を説明するためのガイド部材からの高さ距離と温調風の流速との関係を、吹き出し口からの距離ごとに示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のパッケージ品の検査装置およびパッケージ品の検査方法の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
≪パッケージ品の検査装置≫
図1は、実施形態に係るパッケージ品200の検査装置1の構成を説明するための模式図(その1)である。また
図2は、実施形態に係るパッケージ品200の検査装置1の要部の構成を説明するための平面模式図であり、
図1の要部を上方から見た図である。これらの図に示すパッケージ品200の検査装置(以下、単に検査装置1と記す)は、パッケージ品200の封止不良を検出するための装置である。以下、検査装置1の構成の説明に先立ち、検査対象となるパッケージ品200の構成を説明する。
【0012】
-パッケージ品200の構成-
検査装置1の検査対象となるパッケージ品200は、内容物[A]を収容した容器の開口部が封止された状態のものである。このようなパッケージ品200は、一例としてカップ麺のように、麺および加薬袋などの内容物[A]を収容する容器本体201と、その開口を閉塞する蓋202とによって容器が構成されたものが例示される。
【0013】
容器本体201は、上部に開口を有するカップ状のものである。容器本体201の材質は、発泡または非発泡のプラスチック類、紙類などが例示される。また、蓋202は、容器本体201の開口を塞いで設けられたシート状のものであり、容器本体201から蓋202を剥がし取る際のつまみ部分202a(
図2参照)を有する場合もある。このような蓋202の材質は、プララスチックや紙、あるいは、これらとアルミニウム箔とをラミネート加工により積層したキャップシールで形成されたものとすることができるが、これらに限らず、可視光および赤外線不透過性のものに対して本発明は有効に適用できる。
【0014】
このような容器本体201と蓋202とを備えたパッケージ品200の封止は、例えば図示したように、容器本体201の開口周縁部と蓋202の周縁部との接着によってなされている。接着の方式は、熱圧着や超音波振動などの様々な方式のなかから容器本体201および蓋202の材質によって適宜に選択され、例えばプラスチックを用いて構成されている場合には熱圧着が選択される。
【0015】
以上のようなパッケージ品200においては、容器本体201と蓋202との接着部200aに、内容物[A]の一部が噛み込まれたり、シート状の蓋202の一部が縒れて噛み込まれる場合がある。このような異物(ここでは蓋202の一部も異物とする)の噛み込みの発生部分は、容器本体201と蓋202との接着不良個所200x(
図2参照)となり、このような噛み込みの発生によってパッケージ品200の封止不良が引き起こされる。また、容器本体201と蓋202との接着部200aに、内容物[A]の一部(例えば加薬袋[A1]の端部)が噛み込まれて接着処理が行われた場合、内容物[A]の一部は接着されない。このため、振動などによって、容器本体201の内部に噛み込まれた内容物[A](例えば加薬袋[A1])が落下する場合があり、これによって容器本体201と蓋202との接着部200aに空洞が形成される。さらに封止装置の状態により、容器本体201と蓋202の間に封止不良が引き起こされた場合でも空洞が形成される。これらの空洞もパッケージ品200の封止不良となる。
【0016】
なお、検査装置1の検査対象となるパッケージ品200は、図示したような容器本体201と蓋202とを備えたものに限定されることはなく、内容物[A]を収容した容器の開口部が封止された構成のものに広く適用可能である。
図3は、実施形態に係るパッケージ品200の検査装置1の構成を説明するための模式図(その2)である。この図に示すように、パッケージ品200の他の構成の一例として、キャンディ袋のように可撓性のシート材料で構成された袋状の容器203を用いたものが例示される。袋状の容器203は、内容物[A]を収容するための開口縁において対向する袋状の端縁同士を、熱圧着や超音波振動などによって接着させた構成であり、接着の方式は適宜に選択された方式であってよい。この場合であっても、接着部への異物の噛み込みの発生や、未接着といった接着不良の発生によって封止不良が引き起こされることは同様である。
【0017】
検査装置1は、以上のようなパッケージ品200の封止不良を検出するための装置であって、搬送部10と、送風部20と、検出部30とを備えている。次に、これらの各構成要素の詳細を順に説明する。
【0018】
<搬送部10>
搬送部10は、パッケージ品200を搬送するための装置部分であり、例えばベルト搬送装置によって構成されている。この搬送部10は、一方向に駆動する駆動ローラー12と、従動ローラー11との間に無端ベルト13を張架させた構成のものである。このような搬送部10は、無端ベルト13の外周面のうち上側の面を搬送面10aとし、この搬送面10a上に載置されたパッケージ品200を、搬送面10aの移動方向に搬送する。したがって、搬送面10aの移動方向が、パッケージ品200の搬送方向[x1]となる。このような搬送部10は、パッケージ品200を、接着部200aが上方に向けられた状態で搬送する。
【0019】
なお、搬送部10は、複数のベルト搬送装置を組み合わせたものであってもよい。また搬送部10は、ベルト搬送装置に限定されることはなく、例えば搬送方向[x]に複数のローラーを配列したローラー搬送装置であってもよい。
【0020】
<送風部20>
送風部20は、搬送部10によって搬送されるパッケージ品200に対し、パッケージ品200の表面温度を変化させるように温度調整された温調風[w]を、所定状態で吹き出す装置部分である。このような送風部20は、例えば温調風[w]を吹き出す送風ノズル21と、保持部材22と、ガイド部材23と、送風回収部24とを備えている。
【0021】
[送風ノズル21]
送風ノズル21は、温調風[w]を吹き出す吹き出し口21aを有する。送風ノズル21の吹き出し口21aは、パッケージ品200の表面に、さらに詳しくは搬送部10で搬送されるパッケージ品200において上方に向けられている面(上面)であって、接着部200aを含む面の全面に温調風[w]が供給されるように、搬送面10aに対向して配置されている。
【0022】
このような吹き出し口21aは、一例として
図2に示すように、搬送面10aにおいて搬送方向[x1]とは垂直な幅方向長さ[y]にわたって配置され、搬送面10aの幅方向長さ[y]にわたって温調風[w]を吹き出すこととする。
【0023】
以上のような吹き出し口21aを有する送風ノズル21の一例として、吹き出し口21aに調整板21bが取り付けられた構成が例示される(
図1、
図3参照)。調整板21bは、その取り付け角度によって、吹き出し口21aから吹き出される温調風[w]の流速と流速分布を制御するためのものである。
【0024】
また、調整板21bの取り付け角度は、吹き出し口21aから搬送面10aに対して平行に温調風[w]が吹き出される範囲に設定されていることとする。ここで、搬送面10aに対して平行とは、送風ノズル21から吹き出された温調風[w]が、パッケージ品200には供給されるが、搬送面10aには供給されない範囲であることとし、搬送面10aに対して完全に平行な状態に限定されることはない。
【0025】
なお、調整板21bは、吹き出し口21aの実質的な開口面積を狭め、これにより温調風[w]の吹き出し速度を速める。このため、調整板21bは、パッケージ品200の上面に温調風[w]を作用させることができ、パッケージ品200の上面を加熱もしくは冷却することができる。
【0026】
また、
図1~
図3においては、搬送部10によるパッケージ品の200搬送方向[x1]とは反対の方向に、パッケージ品200の搬送方向[x1]の上流方向に向かって、温調風[w]が吹き出されるように、調整板21bを取り付けた構成を示した。
【0027】
しかしながら、温調風[w]の吹き出し方向がこれに限定されることはない。ここで、温調風[w]の吹き出し方向とは、搬送面10aを上方から見た場合の温調風[w]の吹き出し方向である。温調風[w]の吹き出し方向は、次に説明する検出部30においての検出に影響が無く、パッケージ品の上面を適切に加熱もしくは冷却できる範囲であればよい。例えば、送風部20を、パッケージ品200の搬送方向[x1]の上流側に向かう方向から、搬送面10aと平行な面内において回転させた位置に配置してもよい。
【0028】
また、送風ノズル21が吹き出す温調風[w]は、パッケージ品200の温度を所定状態に変化させるように温度調整された気体であり、冷風または温風である。このような温調風[w]は、典型的には温風であって、パッケージ品200を加熱する。また、パッケージ品200の温度を所定状態に変化させるとは、次に説明する検出部30において、接着不良個所200xと、接着部200aにおける他の部分との「温度差」を検出可能な程度に、少なくともパッケージ品200の接着部200aを加熱または冷却することである。検出部30で検出される「温度差」は、接着不良個所200xに異物の噛み込みや未接着による空間部が存在することで生じる熱容量の変化に依存する。
【0029】
[保持部材22]
保持部材22(
図1、
図3参照)は、送風ノズル21を保持する。この保持部材22の高さ位置は調整可能とする。これにより、保持部材22の高さ位置によって、搬送面10aに対する送風ノズル21の吹き出し口21aの高さ、すなわち温調風[w]の吹き出し高さを制御する。保持部材22による温調風[w]の吹き出し高さの制御は、例えば、パッケージ品200の高さ[h]に依存し、パッケージ品200の高さ[h]が高いほど、搬送面10aに対する送風ノズル21の吹き出し口21aの高さを高くする。
【0030】
[ガイド部材23]
ガイド部材23は、制御された温調風[w]の流速と流速分布を維持するためのものである。このようなガイド部材は、送風部20における温調風[w]の吹き出し方向に配置され、送風ノズル21の吹き出し口21aの上端の高さ位置において、搬送部10の搬送面10aに対して平行に設置されている。
【0031】
ここで
図4は、実施形態の変形例に係るパッケージ品の検査装置2の構成を説明するための模式図である。
図4に示すように、送風部20’に設けられるガイド部材23’は、保持部材22の下面によって構成されたものであり、保持部材22の下面がガイド部材23’を兼ねてもよい。
【0032】
また
図5は、実施形態の他の変形例に係るパッケージ品の検査装置3の構成を説明するための模式図である。
図5に示すように、送風部20”に設けたガイド部材23”は、温調風[w]の吹き出し方向に対する延設長さ、すなわち搬送面10aの搬送方向[x1]に沿った延設方向の長さを可変とする機構を備えてもよい。これにより、温調風[w]が、搬送面10aと平行な状態に維持される時間を変化させることができる。すなわち、ガイド部材23”は、搬送面10aに沿った延設方向の長さを長くすることで、温調風[w]が、搬送面10aと平行な状態に維持される時間を長くすることができる。
【0033】
また、送風部20”に設けたガイド部材23”は、温調風[w]の吹き出し方向の遠位端の移動により搬送面10aに対する配置角度を可変とする機構を備えてもよい。これにより、温風風[w]の流速と流速分布を変化させることが可能であり、検査対象となるパッケージ品200の加熱時間や加熱量を調整し、温度制御することが可能である。
【0034】
[送風回収部24]
図1および
図3に戻り、送風回収部24は、送風ノズル21から吹き出された温調風[w]を、温調風[w]の吹き出し方向に対するガイド部材23の下流側において回収し、送風部20の送風ノズル21に供給するためのものである。このような送風回収部24は、温調風[w]の吹き出し方向に対するガイド部材23の下流側に回収口24aを備えており、この回収口24aから取り込んだ温調風[w]を、送風ノズル21に戻すための流路24bを有する。流路24bは、その一部にガイド部材23を流用してもよい。このような送風回収部24を設けたことにより、温調風[w]を回収し再利用することが可能となる。
【0035】
なお、送風回収部24は必須の構成ではないため、
図4および
図5においては図示を省略しているが、送風回収部24は、
図4に示した構成の検査装置2および
図5に示した構成の検査装置3に設置されてもよい。
【0036】
<検出部30>
検出部30は、送風部20において温調風[w]を吹き当てられたパッケージ品200の表面温度の分布を検出する装置部分である。このような検出部30は、搬送部10によるパッケージ品200の搬送方向[x1]において、送風部20の下流側に配置された赤外線カメラ31と、赤外線カメラ31で得られた画像を出力する出力部32とを有する。
【0037】
赤外線カメラ31は、搬送部10によって搬送されるパッケージ品200の蓋202が撮像視野内に収まる赤外線画像を撮像可能となっている。
【0038】
出力部32は、例えば記録媒体を有する表示装置であり、赤外線カメラ31で得られた画像に基づいて、搬送面10aおよび搬送面10a上に載置されたパッケージ品200の上面の温度分布を示す赤外線画像を出力する。
【0039】
またこの検出部30は、赤外線カメラ31で得られた画像に基づいて、パッケージ品200の封止不良を検出する解析部を備えてもよい。この解析部は、例えば封止不良が発生していないことが確認されているパッケージ品200から取得された画像を基準画像とし、この基準画像と赤外線カメラ31で得られた画像との比較により、検査対象となるパッケージ品200が接着不良個所200xを有するか否かを判断する。このような解析部は、例えば演算部を有するマイクロコンピュータのような計算機によって構成されている。
【0040】
≪パッケージ品の検査方法≫
次に、以上の検査装置1を用いたパッケージ品の検査方法を説明する。まず、パッケージ品200を適切に加熱もしくは冷却することを目的に、検査対象となるパッケージ品200の高さを考慮し、送風ノズル21の高さ位置と調整板21bの取り付け角度とを調整する。送風ノズル21の高さと調整板21bの取り付け角度を因子とした予備の検査を実施してもよい。
【0041】
以上の後、搬送部10の搬送面10a上に検査対象となるパッケージ品200を載置し、搬送部10によってパッケージ品200を搬送方向[x1]に搬送する。その搬送過程において、所定高さに保持された送風ノズル21の吹き出し口21aから、搬送面10aに対して平行に温調風[w]を吹き出し、搬送面10aへの温調風[w]の吹き付けを抑えつつ、パッケージ品200の上面に対して温調風[w]を吹き付ける。これにより、搬送面10aの温度変化を抑えつつ、パッケージ品200を対流熱伝達によって加熱または冷却し、パッケージ品200の上面の表面温度を所定状態に変化させる。なお、調整板21bの取り付け角度によって調整される温調風[w]の吹き出し角度は、搬送面10aに対して平行とする。ここで平行とは、搬送面10aに対して温調風[w]が供給されない程度の範囲である。
【0042】
また、搬送部10による搬送方向[x1]への搬送過程において、送風部20によって温調風[w]を吹きつけられた後のパッケージ品200の赤外線画像を、検出部30の赤外線カメラ31によって撮像し、出力部32に出力する。そして、この赤外線画像に基づいて、以下のようにパッケージ品200の封止不良を検知する。
【0043】
すなわち、温調風[w]が吹き付けられたパッケージ品200の上面の表面温度は、各部の熱容量に依存して変化する。このため、パッケージ品200における接着部200aに、噛み込みや未接着によって他の部分とは熱容量が異なる接着不良個所200xがあれば、その接着不良個所200xの温度分布は他の部分と異なる。したがって、赤外線画像において、接着部200aに対応する部分に温度分布が異なる箇所があれば、その箇所が接着不良個所200xであり、パッケージ品200に封止不良が発生していると判断する。
【0044】
なお、検査装置1の検出部30が解析部を備えている場合、この解析部は、例えば封止不良が発生していないときの基準画像と赤外線カメラ31で得られた画像とを比較することにより、検査対象となるパッケージ品200が接着不良個所200xを有するか否かを判断し、判断の結果を出力部32に出力する。
【0045】
≪実施形態の効果≫
以上説明した実施形態の検査装置1および検査方法では、送風ノズル21の吹き出し口21aに調整板21bを設けたことにより、パッケージ品200を搬送する搬送面10aに対して、平行に温調風[w]を吹き出す構成となっている。これにより、搬送面10aへの温調風[w]の吹き付けによる温度変化を抑えつつ、パッケージ品200のみに温調風[w]を吹き付けてパッケージ品200の上面の表面温度を所定状態に変化させることができる。この結果、送風機の設置や搬送ベルトの分離と言った大掛かりな改良を行うことなく、検査対象となるパッケージ品200の輪郭が鮮明な画像を得ることが可能になり、パッケージ品の封止不良を高精度に検知することが可能となる。また、この構成により、パッケージ品200の上面に対する温調風[w]の供給量を均一化することが可能になり、送風部20によるパッケージ品200の加熱ムラまたは冷却ムラの発生が防止され、パッケージ品200の封止不良の検出精度の向上を図ることが可能になる。
【0046】
ここで
図6は、実施形態の効果を説明するための赤外線画像であって、
図1および
図2に示した容器本体201を蓋202で封止したパッケージ品200を、以上の実施形態を適用した検査装置1を用いて検査して得られた赤外線画像である。また
図7は、比較例の赤外線画像であって、実施形態を適用せず、検査装置1から調整板21bを取り外し、搬送部10の搬送面10aに対して垂直に温調風[w]を吹き出して検査した場合の赤外線画像である。
【0047】
検査に用いたパッケージ品200は、容器本体201が発泡プラスチック製であり、蓋202が紙とアルミニウム箔とをラミネート加工により積層したキャップシール製であり、これらを熱圧着によって接着した構成のものである。また、内容物と蓋202との間は空洞である。このような構成のパッケージ品200は、容器本体201の熱容量は空洞と同程度に大きく温度変化し難い一方、蓋202の熱容量は小さく温度変化し易い。またこのパッケージ品200は、接着部200aの一箇所に、内容物の一種である加薬袋の一部(
図2参照)を噛み込んだ接着不良個所200xを有する。この検査においては、検査装置1の送風部20から、温調風[w]として加熱された温風を供給した。
【0048】
図6に示すように、本実施形態の検査装置1を用いた検査によって得られた赤外線画像によれば、パッケージ品200の上面を構成する蓋202が均一に加熱されていることがわかる。またこの赤外線画像においては、接着部200aの一箇所に、内容物の一種である加薬袋の一部の噛み込みによって周囲とは熱容量が異なる接着不良個所200xが、周囲とは異なる温度に加熱されている箇所として明確になっていることがわかる。この結果、実施形態の適用により、接着不良個所200xの検知が容易になり、パッケージ品200の封止不良が高精度に検出可能となることが確認された。
【0049】
一方、実施形態を適用していない検査装置および検査方法によって得られた
図7の赤外線画像では、搬送面10aの温度変化により検査対象となるパッケージ品200の輪郭が不鮮明で、かつパッケージ品200の上面を構成する蓋202に加熱ムラが生じている。これにより、接着不良個所200xの検知が困難であることがわかる。
【0050】
また
図8は、実施形態の効果を説明するための表面温度の分布を示すグラフであって、赤外線カメラからの情報に基づく温度分布のグラフである。(1)は、実施形態を適用した場合の赤外線カメラによる撮像部の温度分布であり、
図6におけるA-Aの各位置の温度を示す。(2)は、比較例の場合の赤外線カメラによる撮像部の温度分布であり、
図7におけるA-Aの各位置の温度を示す。
【0051】
このグラフから、パッケージ品200の上面の温度分布は、(1)の実施形態を適用した場合には温度差が0.7℃の範囲であり、(2)の比較例の場合には温度差2.6℃の範囲であった。これにより、実施形態の適用により、調整板21bを設けて搬送面10aに対して平行に温調風[w]を吹き出すことにより、パッケージ品200の上面を均一に加熱できることがわかる。
【0052】
また、パッケージ品200の上面の温度の平均値と、パッケージ品200の下部であって搬送面10aの温度の平均値との差は、(1)の実施形態を適用した場合には3.1℃であり、(2)の比較例の場合には1.2℃である。さらには、パッケージ品輪郭部での加熱又は冷却ムラによって最大2.6℃の温度差が混在するため、パッケージ品の輪郭とムラであるのかが判別が困難となっている。これにより、実施形態である調整板21bを設けて搬送面10aに対して平行に温調風[w]を吹き出すことにより、搬送面10aに温調風[w]が供給され難くなり、検査対象となるパッケージ品200と搬送面10aとの温度差を大きくできる。
【0053】
これにより、実施形態の検査装置および検査方法を適用して得られる赤外線画像においては、検査対象となるパッケージ品200の輪郭が鮮明となり、接着不良個所200xの検知が容易となることがわかった。つまり、パッケージ品200の輪郭が鮮明であることにより、接着部200aの特定が容易になり、この接着部200aに生じている接着不良個所200xの特定が容易となるのである。
【0054】
搬送面10aの温度変化を抑制する効果は、
図9のグラフからもわかる。
図9は、実施形態の効果を説明するための搬送面10a(
図1~
図3参照)の温度変化を示すグラフであり、検査対象物となるパッケージ品200を搬送せずに、搬送面10a(
図1~
図3参照)の表面温度の変化を測定したグラフである。(1)は実施形態を適用した場合の搬送面10aの温度変化であり、(2)は比較例の場合の搬送面10aの温度変化である。
【0055】
図9のグラフから、搬送面10aの温度は、(1)の実施形態を適用した場合には検査の経過時間が過ぎてもほとんど変化せず、一方(2)の比較例の場合には検査の経過時間と共に上昇することがわかる。これにより、実施形態を適用して調整板21bを設けて搬送面10aに対して平行に温調風[w]を吹き出すことで、搬送面10aに温調風[w]が供給され難くなって、搬送面10aを初期の温度に保つことができ、検査の時間が経過しても検査対象となるパッケージ品200と搬送面10aとの温度差を大きく保つことが可能であることがわかる。この結果、本実施形態の適用により、長期に安定して、高精度なパッケージ品200の封止不良の検出が可能であることが確認された。このような効果は、パッケージ品200の高さによって送風ノズル21の高さ位置を調整することで、さらに確実となる。
【0056】
図10は、実施形態の効果を説明するためのガイド部材23(
図1、
図3参照)からの高さ距離に対する温調風の流速分布を示すグラフである。ガイド部材23は、温調風[w]の吹き出し方向に105mmの長さで設置し、温調風[w]の吹き出し速度を8.9m/s、温調風[w]の吹き出し温度を80℃とした。
図10に示すように、搬送面10aに対して温調風[w]を平行に吹き出した場合、ガイド部材23に近い高さ位置では、温調風[w]がある程度の流速を保って流れることがわかる。これに対し、搬送面10aに近い高さでは温調風[w]の流速はほぼゼロであり、搬送面10aへの温調風[w]の供給を制限する効果が得られていることがわかる。
【0057】
図11は、実施形態の効果を説明するための吹き出し口からの距離と温調風の流速との関係を、ガイド部材からの高さ距離ごとに示すグラフである。
図11に示すように、ガイド部材からの高さ距離が近い位置では、吹き出し口からの距離がはなれても温調風の流速が、ある程度に保たれ、温調風を長期にわたって供給できる効果が期待されることがわかる。これに対し、ガイド部材からの高さ距離が遠く、搬送面に近い位置では、吹き出し口からの距離にかかわらず、温調風の速度が遅く、搬送面10aへの温調風[w]の供給を制限する効果が得られていることがわかる。
【0058】
図12は、実施形態の効果を説明するためのガイド部材からの高さ距離と温調風の流速との関係を、吹き出し口からの距離ごとに示すグラフである。
図12に示すように、温調風の流速は、吹き出し口からの距離が何れの距離であっても、ガイド部材からの距離が遠く、搬送面に近い位置では、温調風の速度が遅いことがわかる。これにより、搬送面10aに対して温調風[w]を平行に吹き出すことにより、搬送面10aへの温調風[w]の供給を制限して搬送面10aの温度変化を防止する効果が得られていることがわかる。
【0059】
なお、本発明は上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、さらに様々な変形例が含まれる。例えば上述した実施形態においては、調整板を設けた構成を説明したが、搬送面10aに対して温調風[w]を搬送面10aに対して平行に吹き出す構成であれば、これに限定されることはない。この一例として、例えば、送風ノズル21自体が、搬送面10aに対して平行に設置された構成であってもよい。ただし、調整板21bを設けた構成であれば、搬送面10aに垂直に温調風を送風する既存の検査装置に対して調整板を取り付けるだけで、本願の効果を得ることが可能となる。また上述した実施形態は本発明をわかり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0060】
1,2,3…検査装置
10…搬送部
10a…搬送面
20,20’,20”…送風部
21…送風ノズル
21a…吹き出し口
21b…調整板
22…保持部材
23,23’,23”…ガイド部材
24…送風回収部
30…検出部
31…赤外線カメラ
32…出力部
200…パッケージ品
201…容器本体(容器)
202…蓋(容器)
203…容器