(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138595
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】メモリシステムおよび制御方法
(51)【国際特許分類】
G06F 12/06 20060101AFI20220915BHJP
G06F 12/00 20060101ALI20220915BHJP
G11C 5/04 20060101ALI20220915BHJP
G06F 3/00 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
G06F12/06 524
G06F12/00 550K
G11C5/04 220
G06F3/00 A
G06F3/00 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021038560
(22)【出願日】2021-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】岸川 純也
【テーマコード(参考)】
5B160
【Fターム(参考)】
5B160MM10
(57)【要約】
【課題】ホスト装置と接続可能なメモリシステムにおいて入出力ポートが開放状態となった場合でも信号線を保護可能なメモリシステムおよび制御方法を提供する。
【解決手段】実施形態のメモリシステムは、データを記憶する不揮発性のメモリを備える。そのメモリシステムは、ホストに接続可能なコネクタ部と、ホストからコネクタ部を介して受信したメモリに対する命令を実行するメモリコントローラとを備える。メモリコントローラは、ホストからコネクタ部を介して送られる信号を伝送する信号線と、信号線とメモリシステムの基準電位となる配線との間に電気的に接続される抵抗器と、抵抗器と直列に接続され信号線および基準電位となる配線間の接続を開閉可能なスイッチと、信号線の電位の状態に変化があった場合にスイッチを開放し、信号線の電位の状態に変化がない場合にスイッチを閉じるスイッチ制御回路とを具備する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを記憶する不揮発性のメモリを備えるメモリシステムであって、
ホストに接続可能なコネクタ部と、
前記ホストから前記コネクタ部を介して受信した前記メモリに対する命令を実行するメモリコントローラと、
を備え、
前記メモリコントローラは、
前記ホストから前記コネクタ部を介して送られる信号を伝送する信号線と、
前記信号線と前記メモリシステムの基準電位となる配線との間に電気的に接続される抵抗器と、
前記抵抗器と直列に接続され、前記信号線および前記基準電位となる配線間の前記接続を開閉可能なスイッチと、
前記信号線の電位の状態に変化があった場合に前記スイッチを開放し、前記信号線の前記電位の状態に変化がない場合に前記スイッチを閉じるスイッチ制御回路と
を具備するメモリシステム。
【請求項2】
前記抵抗器は、前記信号線を前記基準電位である前記メモリシステムのグランド線に電気的に接続し、
前記スイッチ制御回路は、前記信号線上に正の電源電圧に対応する電位が発生した場合に前記スイッチを開放する請求項1記載のメモリシステム
【請求項3】
前記抵抗器は、前記信号線を前記基準電位である前記メモリシステムの正の電源電圧線に電気的に接続し、
前記スイッチ制御回路は、前記信号線上に論理値「H」レベルに対応する電位から論理値「L」レベルに対応する電位への変化があった場合に前記スイッチを開放する請求項1記載のメモリシステム。
【請求項4】
前記信号線は、クロック信号を伝送するクロック信号線と、データ信号を伝送するデータ信号線とを含み、
前記スイッチ制御回路は、前記クロック信号線上または前記データ信号線上に論理値「H」レベルに対応する電位から論理値「L」レベルに対応する電位への変化があった場合に前記スイッチを開放する請求項1記載のメモリシステム。
【請求項5】
前記ホストは、前記信号線と前記ホストの基準電位となる配線との間に電気的に接続される抵抗器を備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のメモリシステム。
【請求項6】
前記コントローラは、互いに異なるインタフェース規格に準拠した複数の信号線を備えることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のメモリシステム。
【請求項7】
前記複数の信号線は、前記メモリに対する命令に関する信号を伝送する第1信号線と、前記ホストから送られる前記信号を伝送する前記信号線である第2信号線と、を含むことを特徴とする請求項6に記載のメモリシステム。
【請求項8】
データを記憶する不揮発性のメモリを備えるメモリシステムの制御方法であって、前記メモリシステムは、ホストに接続可能なコネクタ部と、前記ホストから送られる信号を伝送する信号線と前記メモリシステムの基準電位となる配線との間に電気的に接続される抵抗器と、を備え、
前記信号線上の電位の状態を監視し、
前記信号線の前記電位の状態に変化があった場合に前記信号線と前記基準電位となる配線との間の接続を電気的に開放することと、
前記信号線の電位の状態に変化がない場合に前記信号線と前記基準電位となる配線との間の接続を電気的に閉じることと、
を特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、メモリシステムおよび制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホスト装置と接続可能なメモリシステムは、あるインタフェース規格に準拠した信号線を介して、ホスト装置と通信する。このような信号線は、高速な通信を行うための信号線の他に、オプションの信号線として低速な通信を行うための信号線を含むことがある。オプションの信号線は、例えば、クロック信号やデータ信号などを転送する信号線を含む。ホスト装置は、オプションの信号線を処理する回路を備えないことがある。このようなホスト装置に接続されたメモリシステムでは、オプションの信号線を処理する回路が未接続状態になるため、その回路の入出力ポートは開放状態となる。
【0003】
入出力ポートが開放状態となった場合であっても、信号線の電位が不定となることは好ましくない。このため、インタフェース規格では、メモリシステムは、オプションの信号線を、電源線やグランド線などの基準電位に抵抗器等を介して接続することが規定されている。また、インタフェース規格では、ホスト装置に備えらえたオプションの信号線を処理する回路の入出力ポートは、プルアップ(正の電源線に抵抗器等を介して接続)やプルダウン(グランド線や負の電源線に抵抗器等を介して接続)されることが規定されている。すなわち、プルアップやプルダウンされた入出力ポートを含む回路を備えるホスト装置が接続された場合は、メモリシステムにおいて、その回路と接続される回路の電位の状態は保護される。そのような回路を備えないホスト装置と接続されるメモリシステムにおいても何らかの保護手段が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許明細書第10,551,897号
【特許文献2】米国特許明細書第10,719,435号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一つの実施形態は、ホスト装置と接続可能なメモリシステムにおいて入出力ポートが開放状態となった場合でも信号線を保護可能なメモリシステムおよび制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態のメモリシステムは、データを記憶する不揮発性のメモリを備える。そのメモリシステムは、ホストに接続可能なコネクタ部と、ホストからコネクタ部を介して受信したメモリに対する命令を実行するメモリコントローラとを備える。メモリコントローラは、ホストからコネクタ部を介して送られる信号を伝送する信号線と、信号線とメモリシステムの基準電位となる配線との間に電気的に接続される抵抗器と、抵抗器と直列に接続され信号線および基準電位となる配線間の接続を開閉可能なスイッチと、信号線の電位の状態に変化があった場合にスイッチを開放し、信号線の電位の状態に変化がない場合にスイッチを閉じるスイッチ制御回路とを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】ホスト装置と接続された実施形態に係るメモリシステムの構成を示すブロック図である。
【
図2】第1の実施形態に係るメモリシステムにおけるホストインタフェースの構成の一部を示すブロック図である。
【
図3】第1の実施形態に係るメモリシステムにおけるホストインタフェースをホスト装置と接続した状態の構成を示すブロック図である。
【
図4】第1の実施形態に係るメモリシステムにおけるホストインタフェースを他のホスト装置と接続した状態の構成を示すブロック図である。
【
図5】第1の実施形態に係るメモリシステムにおけるホストインタフェースの動作を示すフローチャートである。
【
図6】第2の実施形態に係るメモリシステムにおけるホストインタフェースの構成の一部を示すブロック図である。
【
図7】第2の実施形態に係るメモリシステムにおけるホストインタフェースをホスト装置と接続した状態の構成を示すブロック図である。
【
図8】実施形態に係るメモリシステムにおけるシリアルバスのデータ形式の一例を示す図である。
【
図9】第2の実施形態に係るメモリシステムにおけるホストインタフェースの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施形態の構成)
図1は、実施形態のメモリシステム1の構成の一例を示す図である。
図1に示すように、メモリシステム1は、あるインタフェース規格に準拠したバス100を介してホスト装置30と接続可能である。ホスト装置30は、例えば、サーバ、パーソナルコンピュータ、またはモバイル型の情報処理装置である。メモリシステム1は、ホスト装置30の外部記憶装置として機能する。ホスト装置30は、メモリシステム1に対して要求を発行することができる。要求は、リード要求およびライト要求を含む。
【0009】
メモリシステム1は、NAND型フラッシュメモリ10と、コントローラ(メモリコントローラの一例)20と、RAM(Random Access Memory)220を備えている。NAND型フラッシュメモリ10は1以上のメモリチップ11を含む。メモリチップ11は、複数のメモリセルトランジスタを備え、データを不揮発に記憶することができる。メモリチップ11は、NANDバス40によってコントローラ20と接続されている。
【0010】
コントローラ20は、ホストインタフェース(HOST I/F)210、CPU(Central Processing Unit)230、バッファメモリ(Buffer)240、NANDインタフェース(NAND I/F)250、およびRAMインタフェース(RAM I/F)260を備えている。これらの各部は、内部バスにより互いに通信可能に接続される。
【0011】
コントローラ20は、NAND型フラッシュメモリ10に対してプログラム処理、リード処理、イレース処理などを行う。コントローラ20は、例えばSoC(System-On-a-Chip)として構成される半導体回路である。コントローラ20は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)として構成されてもよい。コントローラ20は、複数のチップによって構成されてもよい。コントローラ20の各機能は、ソフトウェア(ファームウェア)を実行するCPU230、専用ハードウェア、またはこれらの組み合わせによって実現され得る。
【0012】
ホストインタフェース210は、例えばSATA(Serial Advanced Technology Attachment)規格、SAS(Serial Attached SCSI)(登録商標)規格、PCI(Peripheral Components Interconnect) Express(登録商標)(PCIe)規格、またはSMBus(System Management Bus)(登録商標)規格などのインタフェース規格に準拠したバス100を介してホスト装置30と接続され、コントローラ20とホスト装置30との間の通信を実行する。
【0013】
メモリシステム1は、ホスト装置30との接続に用いられる入出力ポート35を有している。入出力ポート35は、ホスト装置30とホストインタフェース210とを中継する機能をもち、例えばコネクタなどである。入出力ポート35は、高速通信(PCIe、SATAなど)と低速通信(SMBusなど)の二つ以上のインタフェース規格に準拠してもよい。入出力ポート35は、バス100が対応するインタフェース規格のうち1以上の規格に対応している。
【0014】
NANDインタフェース250は、NANDバス40を介してNAND型フラッシュメモリ10のメモリチップ11と接続され、コントローラ20とメモリチップ11との通信を実行する。RAMインタフェース260は、RAM220と接続され、コントローラ20とRAM220との通信を実行する。
【0015】
CPU230は、コントローラ20の動作を制御する。
【0016】
RAM220は、RAMインタフェース260を介してCPU230に作業領域を提供する。バッファメモリ240は、NAND型フラッシュメモリ10のメモリチップ11に送信されるデータ、およびメモリチップ11から受信したデータを一時的に保持する。RAM220およびバッファメモリ240は、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)、またはこれらの組み合わせによって実現され得る。なお、RAM220およびバッファメモリ240を構成するメモリの種類は、これらに限定されない。バッファメモリ240は、コントローラ20の外部に実装されてもよい。
【0017】
(ホストインタフェースが準拠するインタフェース規格)
ホスト装置30とメモリシステム1とを接続するインタフェース規格では、ハードウェアやソフトウェアの観点から諸々の仕様が制定されている。ホスト装置30のような主たる装置とメモリシステム1のような従たる装置とを接続するインタフェース規格では、高速通信のPCIeなどの他に低速通信のためにデータを伝送するデータ信号線やクロック信号を伝送するクロック信号線などが規定されている。
【0018】
ホスト装置30やメモリシステム1におけるデータ信号線やクロック信号線は、装置の動作を安定させ外部からの過大な入力などから装置を保護するため、それらの信号線に接続される端子(入出力ポート)を無接続時(開放時)において、プルアップまたはプルダウンさせることが必要である。プルアップとは、対象となるデータ信号線やクロック信号線をある抵抗値の抵抗器等を介して正極の基準電位線に接続することをいう。プルダウンとは、対象となるデータ信号線やクロック信号線をある抵抗値の抵抗器等を介して負極の基準電位線に接続することをいう。以下の説明では、抵抗器を介して正極の電源線に接続することをプルアップと呼び、抵抗を介してグランド線に接続することをプルダウンと呼ぶ。グランド線は、負極の電源線と共通であっても異なっていてもよい。
【0019】
主たる装置と従たる装置を接続するインタフェース規格では、通常、主たる装置側においてデータ信号線やクロック信号線をプルアップまたはプルダウンさせるよう規定されている。しかしこれだけでは、従たる装置のデータ信号線やクロック信号線を保護することができない。
【0020】
また、近年では一つの入出力ポートに複数のインタフェース規格を準拠させることも行われている。この場合、すべてのホスト装置が当該入出力ポートが対応するすべてのインタフェース規格に対応しているとは限らないため、従たる装置のデータ信号線やクロック信号線の一部が保護されないという事態が生じ得る。
【0021】
実施形態のメモリシステム1では、ホストインタフェース210が特徴的な構成を具備することで、メモリシステム1の保護を図っている。以下、
図2を参照して、第1の実施形態のメモリシステム1におけるホストインタフェース210の構成の一部を詳細に説明する。
【0022】
実施形態のホストインタフェース210は、高速通信のインタフェース規格の一例としてPCIe規格、および低速通信のインタフェース規格の一例としてSMBus規格に準拠している。SMBus規格は、I2C(登録商標)規格から派生したシリアルバス規格である。SMBus規格では、伝送線としてクロック信号を伝送するSCL線と、データ信号を伝送するSDA線とを用いている。この実施形態のホストインタフェース210は、低速通信のSMBus規格に準拠するホストインタフェース210aと、高速通信のPCIe規格に準拠するホストインタフェース210bとを有している。
【0023】
図2に示すように、メモリシステム1において、SMBus規格に準拠したSCL線およびSDA線を介して、入出力ポート35とホストインタフェース210aとが接続される。また、PCIe規格に準拠した複数の信号線を介して、入出力ポート35とホストインタフェース210bとが接続される。
図2に示す例では、入出力ポート35は、高速通信のPCIe規格、および低速通信のSMBus規格に対応しているが、これには限定されない。例えば、入出力ポート35はさらにUSB規格などに対応してもよい。
【0024】
ホストインタフェース210aは、SCL線からクロック信号を受信する入力バッファ211と、SDA線からデータ信号を受信する入力バッファ213とを有している。入力バッファ211は、受信したクロック信号をコントローラ20の他の機能要素に送る。入力バッファ213は、受信したデータ信号をコントローラ20の他の機能要素に送る。
【0025】
また、ホストインタフェース210aは、コントローラ20の他の機能要素から受けたクロック信号についてSCL線を介してホスト装置30に送る出力バッファ212を有している。同様に、ホストインタフェース210aは、コントローラ20の他の機能要素から受けたデータ信号についてSDA線を介してホスト装置30に送る出力バッファ214を有している。
【0026】
ホストインタフェース210aは、更に、抵抗器RC、抵抗器RD、スイッチSWC、およびスイッチSWDを有している。抵抗器RCは、グランド線に接続された一端とスイッチSWCに接続された他端とを有している。スイッチSWCは、入出力ポート35に接続されるSCL線と抵抗器RCとの間に配される。抵抗器RDは、グランド線に接続された一端とスイッチSWDに接続された他端とを有している。スイッチSWDは、入出力ポート35に接続されるSDA線と抵抗器RDとの間に配される。グランド線は、基準電位線であり、負極の電源線であってもよい。スイッチSWCおよびスイッチSWDは、例えば電子スイッチやトランジスタにより構成され、スイッチ制御回路215によりその開閉が制御される。
【0027】
入出力ポート35に接続されるSCL線は、入力バッファ211の入力、出力バッファ212の出力、およびスイッチSWCの一端と接続されている。スイッチSWCの他端は、抵抗器RCを介してグランド線と接続されている。入力バッファ211の出力および出力バッファ212の入力は、コントローラ20の他の機能要素と接続されている。
【0028】
入出力ポート35に接続されるSDA線は、入力バッファ213の入力、出力バッファ214の出力、およびスイッチSWDの一端と接続されている。スイッチSWDの他端は、抵抗器RDを介してグランド線と接続されている。入力バッファ213の出力および出力バッファ214の入力は、コントローラ20の他の機能要素と接続されている。
【0029】
スイッチ制御回路215は、開閉条件に基づいてスイッチSWCおよびスイッチSWDの開閉を制御する。開閉条件は、ホスト装置30がメモリシステム1に接続されているか否かを基準とする。より具体的には、スイッチ制御回路215は、スイッチSWCおよびスイッチSWDを閉じた状態で、SCL線またはSDA線がホスト装置30(またはメモリシステム1)の電源線と同等の電位であればスイッチSWCおよびスイッチSWDを開放し、そうでなければスイッチSWCおよびスイッチSWDを閉じた状態を維持する。SCL線やSDA線の電位の検出は、入力バッファ211や入力バッファ213の出力をスイッチ制御回路215が監視することにより実現できる。
【0030】
すなわち、まず、スイッチ制御回路215は、スイッチSWCおよびスイッチSWDを閉じてSCL線およびSDA線を抵抗器RCおよび抵抗器RDを介してグランド線にプルダウンする。この状態で、スイッチ制御回路215は、ホスト装置30がメモリシステム1の入出力ポート35に接続されずにSCL線およびSDA線が浮遊状態であることを検出する。この場合、スイッチ制御回路215は、スイッチSWCおよびスイッチSWDを閉じたままとしてSCL線およびSDA線を抵抗器RCおよび抵抗器RDを介してグランド線にプルダウンした状態を維持する。ここで、信号線が「浮遊状態」にあるとは、入出力ポート35の外部(すなわちホスト装置30側)が、正極の電源線、負極の電源線、グラウンド線等の基準電位を持つ基準電位線と電気的に接続されず、ホストインタフェース210a内で信号線をプルダウンした状態としなければ、その信号線の電位が定まらない状態(不定の状態)にあることをいう。
【0031】
一方、スイッチ制御回路215は、ホスト装置30がメモリシステム1の入出力ポート35に接続されSCL線またはSDA線が正極の電源線と同等の電位になった場合、スイッチSWCおよびスイッチSWDを開放してSCL線およびSDA線のホストインタフェース210a内におけるプルダウン状態を解除する。
【0032】
SMBus規格に準拠したSCL線およびSDA線は、バス100を介して複数のデバイスとワイヤードOR接続され得る。そのため、ホストインタフェース210aにおけるプルダウンは、相対的に大きな値の抵抗器を介して行われる。
【0033】
図3は、この実施形態においてホスト装置30がメモリシステム1に入出力ポート35を介して接続された状態を示している。
図3に示すように、ホスト装置30は、そのインタフェース部IFにおいて、SCL線およびSDA線をそれぞれ抵抗器R
HCおよび抵抗器R
HDを介して電源線V
DDにプルアップしている。これは、クロック信号線たるSCL線やデータ信号線たるSDA線を電源線やグランド線と接続せず浮遊状態とすると、正常な信号伝送を行うことができないばかりかホスト装置30の素子を破壊するおそれがあるためである。
【0034】
通常、ホスト装置30が準拠するインタフェース規格では、データ信号線およびクロック信号線は電源線へのプルアップがなされており、プルアップのための抵抗器の抵抗値もあらかじめ決められている。すなわち、抵抗器RHCおよび抵抗器RHDの抵抗値は規定値である。
【0035】
コントローラ20のスイッチ制御回路215は、SCL線またはSDA線に電源電圧VDDと同等の電位を検出すると、スイッチSWCおよびスイッチSWDを開放する。これにより、SCL線およびSDA線は抵抗器RCおよび抵抗器RDから切断され、SCL線およびSDA線はホスト装置30の電源線VDDにのみプルアップされる。
【0036】
図3に示すように、ホスト装置30のSCL線およびSDA線は、電源線V
DDにプルアップされ安定状態にある。ホスト装置30がメモリシステム1に接続されていると、無信号時のSCL線およびSDA線は電源線V
DDの電位に固定される。実施形態のメモリシステムでは、SCL線またはSDA線に現れる電源電位(例えば1.8V)を検出することで、ホスト装置30がメモリシステム1に接続されたことを検出する。これにより、インタフェース規格に特段の付加機能を設けることなく、ホスト装置30の接続の有無を検出することが可能になる。
【0037】
(スイッチの意義)
ここで、ホストインタフェース210aにおけるスイッチSWCおよびスイッチSWDの意義について考察する。仮に、スイッチSWCおよびスイッチSWDを常時接続状態とした場合を考えると、ホスト装置30が接続されていない状態においては抵抗器RCおよび抵抗器RDによりSCL線およびSDA線がプルダウンされて保護される。
【0038】
一方、
図3に示すようにホスト装置30が入出力ポート35に接続されている場合、SCL線およびSDA線の電位は、それぞれ、抵抗器R
HCおよび抵抗器R
Cにより分圧され電圧降下された電位、および抵抗器R
HDおよび抵抗器R
Dにより分圧され電圧降下された電位となる。この場合、SCL線およびSDA線の電位レベルは安定するが、インタフェース部IFに備えられる抵抗器R
HDおよび抵抗器R
HCやホストインタフェース210a内に備えられる抵抗器R
Cおよび抵抗器R
Dは一般に抵抗値の精度がよくないことから、所望の電位レベルとすることが困難となる。また、高速データ伝送時においてホストインタフェース210a内の抵抗器R
Cおよび抵抗器R
Dはデータの波形を変形させてしまう(波形の立ち上がりの遅れや急峻な立ち上がりによる歪が発生する)弊害も挙げられる。そのため、データ伝送時においてはSCL線およびSDA線にはホスト装置30のインタフェース部IFにおいてプルアップしている抵抗器R
HDおよび抵抗器R
HC以外は、スイッチSW
CおよびスイッチSW
Dによりホストインタフェース210a内の抵抗器R
Cおよび抵抗器R
Dを切り離すことが望ましい。
【0039】
なお、入出力ポート35を介してホスト装置30がメモリシステム1に接続されている場合、SCL線およびSDA線の電位レベルは、厳密にはそれぞれ抵抗器RHCおよび抵抗器RCにより分圧された電位、および抵抗器RHDおよび抵抗器RDにより分圧された電位である。ここで、ホストインタフェース210aが備えるプルダウン用の抵抗器RCおよび抵抗器RDの抵抗値をホスト装置30が備えるプルアップ用の抵抗器RHCおよび抵抗器RHDの抵抗値よりも十分に大きな値としておく。これにより、ホストインタフェース210aはSCL線およびSDA線の電位レベルが電源電圧VDDと同等であるか否かの判定を容易に行うことができる。
【0040】
ここで、
図4を参照して、SCL線およびSDA線が浮遊状態となる例を説明する。
図4に示すように、メモリシステム1がホスト装置31と接続される場合を考える。ホスト装置31は、低速通信のSMBus規格に準拠しておらず、バス100aにおいてSMBus規格の信号線が含まれていない。すなわち、ホスト装置31は、USB規格とPCI Express規格には対応するがSMBus規格には対応していない。この場合、ホスト装置31が入出力ポート35を介してメモリシステム1に接続されているのにも関わらず、ホストインタフェース210aのSCL線およびSDA線は浮遊状態となってしまうことになる。
【0041】
実施形態のメモリシステム1は、スイッチSWCおよびSWDとスイッチ制御回路215を備える。このため、入出力ポート35のホスト装置31側において、SMBus規格に準拠した端子への結線がなされていない場合であっても、信号線が浮遊状態となることを防ぐことができる。
【0042】
(第1の実施形態の動作)
続いて、
図5を参照して、この実施形態のメモリシステム1の動作を説明する。ホスト装置30が入出力ポート35に接続されていない初期状態において、スイッチ制御回路215は、スイッチSW
CおよびスイッチSW
Dを閉状態に維持する(S500)。これは、
図2に示す状態であり、ホストインタフェース210aのSCL線およびSDA線は、ホストインタフェース210a内部の抵抗器R
Cおよび抵抗器R
Dを介してグランド線にプルダウンされる(S510)。これにより、入力バッファ211および213の入力と出力バッファ212および214の出力はともにグランド線の電位に固定され、ホストインタフェース210aの動作が安定し回路が保護される。
【0043】
スイッチ制御回路215は、入力バッファ211および213を介して、SCL線およびSDA線の入力信号の電位を監視している(S520)。SCL線およびSDA線のレベルに変化がなければ(グランド線の電位が検出されれば)監視が継続される(S530でNo)。
【0044】
SCL線またはSDA線に電源線VDDと同等の電位を検出すると(S530でYes)、スイッチ制御回路215は、スイッチSWCおよびスイッチSWDを開放する(S540)。その結果、SCL線およびSDA線は、抵抗器RCおよび抵抗器RDによるプルダウン状態から解除される。SCL線またはSDA線に電源線VDDの電位が検出されたということは、ホスト装置30内の抵抗器RHCまたは抵抗器RHDによりSCL線またはSDA線が電源線VDDにプルアップされたことを意味するから、ホスト装置30が入出力ポート35に接続されたことがわかる(S550)。
【0045】
こうした一連の動作により、ホスト装置30とメモリシステム1とを結ぶインタフェース線のデータ信号線(SDA線)およびクロック信号線(SCL線)は、常に電源線VDDにプルアップまたはグランド線にプルダウンされ、回路が安定動作するとともに回路を保護することができる。
【0046】
実施形態のメモリシステム1によれば、ホスト装置30が接続された場合にデータ信号線およびクロック信号線のメモリシステム1内におけるプルダウンが解除される。すなわち、ホスト装置30に備えられた抵抗器RHCおよび抵抗器RHDにより電源線VDDにプルアップされる。一方、ホスト装置30がメモリシステム1から切断されると、データ信号線およびクロック信号線がメモリシステム1内においてプルダウンされる。この動作により、ホストインタフェース210aの入出力素子を安定化し破壊から保護することができる。
【0047】
(第2の実施形態の構成)
続いて、
図6および
図7を参照して、第2の実施形態のメモリシステムを説明する。
図2および
図3に示す第1の実施形態に係るメモリシステム1では、SCL線およびSDA線をプルダウンさせるスイッチおよび抵抗器を備えているが、
図6および
図7に示す第2の実施形態に係るメモリシステム2では、SCL線およびSDA線をプルアップさせるスイッチおよび抵抗器を備えている。以下の説明において第1の実施形態と共通する機能要素については共通の符号を付して示し、重複する説明を省略する。
【0048】
図6および
図7に示すように、第2の実施形態に係るメモリシステム2は、コントローラ20aを備えており、コントローラ20aは、ホストインタフェース210cを備えている。ホストインタフェース210cは、低速通信のSMBus規格に準拠するホストインタフェース210dと、高速通信のPCIe規格に準拠するホストインタフェース210bとを有している。
【0049】
ホストインタフェース210dは、SCL線からクロック信号を受信する入力バッファ211と、SDA線からデータ信号を受信する入力バッファ213とを有している。入力バッファ211は、受信したクロック信号をコントローラ20aの他の機能要素に送る。入力バッファ213は、受信したデータ信号をコントローラ20aの他の機能要素に送る。また、ホストインタフェース210dは、コントローラ20aの他の機能要素から受けたクロック信号についてSCL線を介してホスト装置30に送る出力バッファ212を有している。同様に、ホストインタフェース210dは、コントローラ20aの他の機能要素から受けたデータ信号についてSDA線を介してホスト装置30に送る出力バッファ214を有している。
【0050】
ホストインタフェース210dは、更に、抵抗器RCa、抵抗器RDa、スイッチSWCa、およびスイッチSWDaを有している。スイッチSWCaは、電源線VDDに接続された一端と抵抗器RCaに接続された他端とを有している。抵抗器RCaは、入出力ポート35に接続されるSCL線とスイッチSWCaとの間に配される。スイッチSWDaは、電源線VDDに接続された一端と抵抗器RDaに接続された他端とを有している。抵抗器RDaは、入出力ポート35に接続されるSDA線とスイッチSWDaとの間に配される。スイッチSWCaおよびスイッチSWDaは、例えば電子スイッチやトランジスタにより構成され、スイッチ制御回路215aによりその開閉が制御される。
【0051】
入出力ポート35に接続されるSCL線は、入力バッファ211の入力、出力バッファ212の出力、および抵抗器RCaの一端と接続されている。抵抗器RCaの他端は、スイッチSWCaを介して電源線VDDと接続されている。入力バッファ211の出力および出力バッファ212の入力は、コントローラ20aの他の機能要素と接続されている。
【0052】
入出力ポート35に接続されるSDA線は、入力バッファ213の入力、出力バッファ214の出力、および抵抗器RDaの一端と接続されている。抵抗器RDaの他端は、スイッチSWDaを介して電源線VDDと接続されている。入力バッファ213の出力および出力バッファ214の入力は、コントローラ20aの他の機能要素と接続されている。
【0053】
スイッチ制御回路215aは、開閉条件に基づいてスイッチSWCaおよびスイッチSWDaを開閉する。開閉条件は、ホスト装置30とメモリシステム2との間の通信が開始されたか否かを基準とする。より具体的には、スイッチ制御回路215aは、スイッチSWCaおよびスイッチSWDaを閉じた状態で、SCL線またはSDA線からクロック信号またはデータ信号の伝送開始を検出すれば、スイッチSWCaおよびスイッチSWDaを開放し、そうでなければスイッチSWCaおよびスイッチSWDaを閉じた状態を維持する。
【0054】
すなわち、まず、スイッチ制御回路215aは、スイッチSWCaおよびスイッチSWDaを閉じてSCL線およびSDA線を抵抗器RCaおよび抵抗器RDaを介して電源線VDDにプルアップする。この状態で、スイッチ制御回路215aは、ホスト装置30がメモリシステム2の入出力ポート35に接続されずにSCL線およびSDA線が浮遊状態であることを検出する。この場合、スイッチ制御回路215aは、スイッチSWCaおよびスイッチSWDaを閉じたままとしてSCL線およびSDA線を抵抗器RCaおよび抵抗器RDaを介してメモリシステム2内において電源線VDDにプルアップした状態を維持する。また、スイッチ制御回路215aは、ホスト装置30がメモリシステム2の入出力ポート35に接続されSCL線またはSDA線からクロック信号またはデータ信号の伝送開始を検出した場合、スイッチSWCaおよびスイッチSWDaを開放してSCL線およびSDA線のメモリシステム2内におけるプルアップ状態を解除する。
【0055】
図7は、第2の実施形態においてホスト装置30がメモリシステム2に入出力ポート35を介して接続された状態を示している。
図7に示すように、ホスト装置30は、インタフェース部IFにおいて、SCL線およびSDA線をそれぞれ抵抗器R
HCおよび抵抗器R
HDにより電源線V
DDにプルアップしている。
【0056】
スイッチ制御回路215aは、SCL線またはSDA線にクロック信号またはデータ信号の伝送開始を検出すると、スイッチSWCaおよびスイッチSWDaを開放する。これにより、SCL線およびSDA線のメモリシステム2内の抵抗器RCaおよび抵抗器RDaは電源線VDDから切断され、SCL線およびSDA線はホスト装置30の電源線VDDにのみプルアップされる。
【0057】
(信号伝送開始の検出)
図7に示すように、ホスト装置30のSCL線およびSDA線は、電源線V
DDにプルアップされ安定状態にある。ホスト装置30がメモリシステム2に接続されると、無信号時のSCL線およびSDA線は電源線V
DDの電位に固定される。無信号時のSCL線およびSDA線とは、ホスト装置30からSCL線またはSDA線にクロック信号またはデータ信号の伝送が開始されていない状態である。一方、ホスト装置30からSCL線またはSDA線にクロック信号またはデータ信号の伝送が開始されると、SCL線やSDA線の電位が「L」となる。
【0058】
図8は、実施形態におけるSMBus規格に準拠したデータ波形を示している。
図8に示すように、この規格に従って伝送されるデータ(SCL線に流れるクロック信号に基づくSDA線に流れるデータ信号)の波形は、7ビットのSlaveアドレス・1ビットのコマンド・1ビットのACKからなるデータ列と、8ビットのレジスタアドレス・1ビットのACKからなるデータ列と、8ビットのデータ列・1ビットのACKからなるデータ列がこの順に連なっている。これらのデータ列は、スタートSにおけるSCL線およびSDA線の「H」電位から「L」電位への遷移からスタートし、ストップPにおけるSCL線およびSDA線の「L」電位から「H」電位への遷移により終了する。第2の実施形態に係るスイッチ制御回路215aは、かかるスタートSにおけるSCL線またはSDA線の「H」レベルから「L」レベルへの遷移を検出する。
【0059】
ここで、「H」レベル(または電位)とは、論理値「H」を示し一般に電源線VDDの電位、「L」レベル(または電位)とは、論理値「L」を示し一般にグランド電位を意味するが、これには限定されない。例えば、「H」レベルは電源線VDDの電位に準じた高さの電位でもよい。「L」レベルはグランド線の電位に準じた高さの電位であってもよい。また、グランド線の電位は、負の電源線の電位であってもよい。具体的には、電源線VDDの電位の70~100%を「H」レベル、電源線VDDの電位の30%から0%(グラウンド電位または電源線の負極電位)を「L」レベルとしてもよい。
【0060】
すなわち、第2の実施形態に係るメモリシステム2は、SCL線やSDA線に流れるクロック信号やデータ信号によるデータ列の伝送直前に現れる「H」レベルから「L」レベルへの電位の変化を検出し、スイッチSWCaおよびスイッチSWDaを開放する。従って、クロック信号やデータ信号の伝送時においては、SCL線やSDA線はホスト装置30内でのみのプルアップ状態となり、安定した信号伝送を行うことが可能になる。
【0061】
なお、
図8に示すように、データ伝送の開始に際しては、SCL線上の「H」レベルから「L」レベルへの電位の遷移よりも、SDA線上の「H」レベルから「L」レベルへの電位の遷移の方が、時間的に先に現れる。従って、スイッチ制御部215aは、SDA線に現れる「H」レベルから「L」レベルへの電位の遷移を検出する方が好ましい。
【0062】
実施形態の変形例に係るメモリシステム2では、SCL線またはSDA線に現れる「H」レベルから「L」レベルへの電位の遷移を検出することで、ホスト装置30がオプションの低速通信(例えばSMBus)における伝送開始を検出する。これにより、インタフェース規格に特段の付加機能を設けることなく、ホスト装置30の接続の有無を検出することが可能になる。
【0063】
(第2の実施形態の動作)
続いて、
図9を参照して、この実施形態のメモリシステム2の動作を説明する。第2の実施形態に係るメモリシステム2は、第1の実施形態に係るメモリシステム1を変形したものであるから、共通する動作は共通の符号を付して示し、重複する説明を省略する。
【0064】
ホスト装置30が入出力ポート35に接続されていない初期状態において、スイッチ制御回路215aは、スイッチSW
CaおよびスイッチSW
Daを閉状態に維持する(S500)。これは、
図6に示す状態であり、ホストインタフェース210dのSCL線およびSDA線は、ホストインタフェース210d内部の抵抗器R
Caおよび抵抗器R
Daを介して電源線V
DDにプルアップされる(S515)。これにより、入力バッファ211および213の入力と出力バッファ212および214の出力はともに電源線V
DDに接続され、ホストインタフェース210dの素子は保護される。
【0065】
ホストインタフェース210dのスイッチ制御回路215aは、入力バッファ211および213を介して、SCL線およびSDA線における入力信号の電位を監視する(S520)。SCL線およびSDA線のレベルに変化がなければ監視が継続される(S535でNo)。この時点では、ホスト装置30は入出力ポート35を介してメモリシステム2に接続されているが、SCL線やSDA線を介した通信はまだ開始されていない。
【0066】
SCL線またはSDA線においてクロック信号またはデータ信号の「H」から「L」への電位変化が検出されると(S535でYes)、スイッチ制御回路215aは、スイッチSWCaおよびスイッチSWDaを開放する(S540)。その結果、SCL線およびSDA線は、抵抗器RCaおよび抵抗器RDaによるプルアップ状態から解除される。一方、SCL線またはSDA線に「H」から「L」への電位変化が検出されたということは、ホスト装置30内の抵抗器RHCまたは抵抗器RHDによりSCL線またはSDA線が電源線VDDにプルアップされたこと(およびその結果データ等の伝送が開始されたこと)を意味するから、ホスト装置30がオプションの低速通信(例えばSMBus)における伝送を開始したことがわかる(S550)。
【0067】
ホストインタフェース210dのスイッチ制御回路215aは、入力バッファ211および213を介して、SCL線およびSDA線における入力信号の電位を監視する(S560)。具体的には、スイッチ制御回路215aは、低速通信における伝送が完了したことを示すストップPに関する入力信号の電位を監視する。入力信号の電位に変化がなければ監視が継続される(S570でNo)。低速通信における伝送が完了した後、ストップPにおけるSCL線およびSDA線の「L」電位から「H」電位への遷移を検出すると(S570でYes)、スイッチ制御回路215aは、スイッチSWCaおよびスイッチSWDaを閉じる(S580)。この動作により、ホストインタフェース210dのSCL線およびSDA線は、ホストインタフェース210d内部の抵抗器RCaおよび抵抗器RDaを介して電源線VDDにプルアップされる(S590)。これにより、入力バッファ211および213の入力と出力バッファ212および214の出力はともに電源線VDDに再び接続され、ホストインタフェース210dの素子は保護される。
【0068】
こうした一連の動作により、ホスト装置30とメモリシステム2とを結ぶインタフェース線のデータ信号線(SDA線およびクロック信号線(SCL線)は、常に電源線VDDにプルアップされ、回路が安定動作するとともに回路を保護することができる。
【0069】
なお、第2の実施形態に係るメモリシステム2では、ホスト装置30が入出力ポート35に接続されSCL線およびSDA線にデータ伝送がない場合においても、メモリシステム2内でのSCL線およびSDA線のプルアップがなされている。すなわち、ホスト装置30内とメモリシステム2内の両方においてプルアップがなされているが、SCL線およびSDA線の電位が安定している点でホストインタフェース210dに含まれる素子の保護には支障がない。また、データ伝送の開始以降には、メモリシステム2内のプルアップが解除されるから、データ伝送における不具合も生じない。スイッチの意義については、第1の実施形態に係るメモリシステム1と同様である。
【0070】
実施形態の変形例に係るメモリシステム2によれば、ホスト装置30がオプションの低速通信(例えばSMBus)におけるデータ伝送が開始された場合に、データ信号線およびクロック信号線のメモリシステム2内におけるプルアップが解除される。すなわち、ホスト装置30に備えられた抵抗器RHCおよび抵抗器RHDだけにより電源線VDDにプルアップされる。一方、ホスト装置30からメモリシステム2へのデータ伝送が終了すると、データ信号線およびクロック信号線がホスト装置30内およびメモリシステム2内においてプルアップされる。この一連の動作により、ホストインタフェース210dに含まれる素子を保護することができる。
【0071】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0072】
1,2…メモリシステム、
10…NAND型フラッシュメモリ、
11…メモリチップ、
20,20a…コントローラ、
210,210a,210b,210c,210d…ホストインタフェース、
220…RAM、
230…CPU、
240…バッファ、
250…NANDインタフェース、
260…RAMインタフェース
30,31…ホスト装置、
35…入出力ポート、
40…NANDバス、
100,100a…バス。