(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138631
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】電子装置
(51)【国際特許分類】
H05K 5/02 20060101AFI20220915BHJP
【FI】
H05K5/02 L
H05K5/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021038617
(22)【出願日】2021-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 義孝
【テーマコード(参考)】
4E360
【Fターム(参考)】
4E360AC23
4E360EA03
4E360EB03
4E360ED02
4E360ED23
4E360GA28
4E360GB92
4E360GC08
(57)【要約】
【課題】固定対象物から伝わる振動でケースが揺動することを抑制することができる電子装置を提供する。
【解決手段】電力装置1は、電子部品が実装された基板と、基板を内部に収容する樹脂製のケース3と、を備え、ケースは、ブラケット6の平板状の固定部62が挿入されて、当該固定部62と係合することにより、ケース3を固定部62に取り付ける取付け部5を有し、取付け部5は、挿入された固定部62の凹部に挿入される凸部を有する第一押え部55と、挿入された固定部62の両側面を挟持する一対の第二押え部53とを有し、一対の第二押え部53の先端側が、挿入される固定部62と当接して互いに離れる方向に弾性変形され、当該弾性変形された状態で固定部62の両側面を挟持する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が実装された基板と、
前記基板を内部に収容する樹脂製のケースと、を備え、
前記ケースは、固定対象物の平板状の固定部が挿入されて前記固定部と係合することにより、前記ケースを前記固定部に取り付ける取付け部を有し、
前記取付け部は、挿入された前記固定部の凹部に挿入される凸部を有する第一押え部と、挿入された前記固定部の両側面を挟持する一対の第二押え部とを有し、
前記一対の第二押え部の先端側が、挿入される前記固定部と当接して互いに離れる方向に弾性変形され、当該弾性変形された状態で前記固定部の両側面を挟持する電子装置。
【請求項2】
前記固定部には、前記一対の第二押え部の先端側と当接する面に固定部側傾斜面が形成されており、
前記一対の第二押え部は、前記固定部が挿入されると、先端側が前記固定部側傾斜面に当接して前記固定部側傾斜面に沿って摺動することにより、前記一対の第二押え部の先端側が互いに離れる方向に弾性変形する請求項1に記載の電子装置。
【請求項3】
前記一対の第二押え部にはそれぞれ、互いに対向する面の先端側に押え部側傾斜面が形成されており、
前記一対の第二押え部は、前記固定部が挿入されると、前記押え部側傾斜面が前記固定部の前記固定部側傾斜面に当接する請求項2に記載の電子装置。
【請求項4】
前記取付け部は、前記一対の第二押え部の両側に配置され、前記一対の第二押え部の前記弾性変形を規制する一対の規制部を有する請求項1~3のいずれかに記載の電子装置。
【請求項5】
前記一対の第二押え部はそれぞれ、挿入された前記固定部の側面を挟持する側面挟持部と、挿入された前記固定部の表面を覆う表面覆い部とを有し、
前記一対の規制部はそれぞれ、前記取付け部に前記固定部が挿入された状態において、前記固定部の基端部側を板厚方向に挟持し、当該挟持した状態で前記固定部の表面を前記第二押え部の前記表面覆い部に押し当てる請求項4に記載の電子装置。
【請求項6】
前記取付け部は、前記第一押え部の両側に配置される一対の第三押え部を有し、
前記一対の第三押え部の先端側が、挿入された前記固定部の前記凹部の内側面に当接して互いに近づく方向に弾性変形された状態で前記凹部の内側面を押える請求項1~5のいずれかに記載の電子装置。
【請求項7】
前記一対の第三押え部の先端側にはそれぞれ、挿入された前記固定部の前記凹部に挿入される弾性凸部が設けられ、
前記弾性凸部には、前記凹部の内側面と対向する面に案内傾斜面が形成されており、
前記一対の第三押え部は、前記固定部が挿入されると、前記案内傾斜面によって前記弾性凸部が前記凹部に挿入されることにより、前記一対の第三押え部の先端側が互いに近づく方向に弾性変形される請求項6に記載の電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電子部品が実装された基板と、当該基板が収容された樹脂製のケースを備える電子装置(車両用電子制御装置)が開示されている。この電子装置では、ケース側の支持部に固定対象物である取付け部材の中央プレート部を差し込むと、中央プレートに形成された係合部の凹部(開口部)に支持部の凸部(突起部)が係合して固定対象物にケースを取り付けることができる。この際、中央プレートは支持部に設けられたスロープ部に案内され、弾性変形された状態で突起部に押し当てられる。これにより、固定対象物から伝わる振動でケースが揺動することを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/179262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載された技術のように、固定対象物に設けられた凹部をケースの凸部に係合させる場合、実際の製品における寸法のバラつきを考慮してクリアランスを設けることが望ましい。しかし、上記先行技術のように凹部が形成された中央プレートを、凸部を有する支持部に押し当てる限りでは、上記クリアランスによるケースの揺動を規制し難いという課題がある。
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、固定対象物から伝わる振動でケースが揺動することを抑制することができる電子装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る電子装置は、電子部品が実装された基板と、前記基板を内部に収容する樹脂製のケースと、を備え、前記ケースは、固定対象物の平板状の固定部が挿入されて前記固定部と係合することにより、前記ケースを前記固定部に取り付ける取付け部を有し、前記取付け部は、挿入された前記固定部の凹部に挿入される凸部を有する第一押え部と、挿入された前記固定部の両側面を挟持する一対の第二押え部とを有し、前記一対の第二押え部の先端側が、挿入される前記固定部と当接して互いに離れる方向に弾性変形され、当該弾性変形された状態で前記固定部の両側面を挟持する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る電子装置によれば、固定対象物の平板状の固定部が、ケースに設けられた取付け部に挿入されて係合する。この取付け部には、第一押え部が設けられており、第一押え部は、挿入された前記固定部の凹部に挿入される凸部を有している。従って、固定部が取付け部に挿入されると、第一押え部に設けられた凸部が固定部の凹部に挿入されて係合するため、ケースを固定対象物に取り付けることができる。また、取付け部は、一対の第二押え部を有しており、一対の第二押え部は、固定部が取付け部に挿入されると先端側が固定部の両側面に当接して互いに離れる方向に弾性変形される。従って、第一押え部と異なる位置で固定部の両側面が一対の第二押え部で挟持されるため、第一押え部のクリアランスによるケースの揺動を抑制することができる。これにより、固定対象物から伝わる振動でケースが揺動することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る電子装置であり、電子装置を固定対象物に取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図2】実施形態に係る電子装置であり、電子装置を固定対象物に取り付けた状態を示す底面図である。
【
図3】実施形態に係る電子装置及び固定対象物の分解斜視図である。
【
図6】実施形態に係るケースを
図4のVI-VI線に沿った断面で示す断面図である。
【
図7】実施形態に係るケースを
図4のVII-VII線に沿った断面で示す断面図である。
【
図8】
図7に示す断面に基づいて実施形態に係る第二押え部が弾性変形する様子を説明する図である。
【
図9】
図5のIX-IX線に沿った断面で実施形態に係る第一押え部が弾性変形する様子を説明する図である。
【
図10】
図6に示す断面に基づいて実施形態に係る第三押え部が弾性変形する様子を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について
図1~
図10を参照して説明する。本実施形態では、説明の便宜上、各図中に適宜示す上下、左右及び前後の矢印で示す方向を、それぞれ電力制御装置の上下方向、左右方向、及び前後方向と定義して説明する。また、各図中においては、図面を見易くするため、一部の符号を省略している場合がある。
【0010】
本実施形態に係る電子装置1は、車両に搭載されたモータやサスペンションダンパ等の電気機器を制御するための電子制御装置である。
図1~
図3に示すように、電子装置1は、電子部品21を実装した基板2と、基板2を内部に収容するケース3と、ケース3に固定されるカバー4とを備える。
【0011】
基板2は、前後方向及び左右方向に所定の幅を有し、上下方向に所定の厚みを有する矩形板状のプリント配線基板である。基板2の上面である実装面2Aには、電子部品21及びコネクタ22が実装されている。電子部品21は、車両に搭載された電源(例えば、バッテリ)から供給される電力によって駆動されて、車両に搭載される電気機器の制御を実行する部品である。
図3では、1つの電子部品21のみが実装面2Aに実装された状態を示しているが、実際には種々の電子部品が実装面2Aに実装されている。また、基板2の下面にも種々の電子部品が実装されている。
【0012】
コネクタ22は、実装面2Aに沿った方向にコネクタ22の接続部を向けて実装面2Aに実装されている。コネクタ22は、前方に開口した箱状のハウジング221と、ハウジング221に固定された図示しない複数の接続端子とを有している。ハウジング221から後方に突出した複数の接続端子の端部側が基板2を上下に貫通した貫通孔(不図示)に挿入されて半田付けされることにより、コネクタ22は実装面2Aに実装される。コネクタ22(ハウジング221)の前方に開口した接続開口部22A(接続部)には、車両に搭載された電源及び電気機器と繋がるハーネス(ケーブル)側のコネクタが挿入されて接続される。基板2の実装面2Aには、電子部品21及びコネクタ22等を電気的に接続する配線パターンが形成されている。
【0013】
ケース3は、後壁部3A、上壁部3B、下壁部3C、左壁部3D及び右壁部3Eからなる樹脂製の矩形箱状部材である。ケース3は、前方に開口したケース側開口部31を有している。ケース3は、ケース側開口部31から挿入された基板2をケース3の内部に収容可能になっている。基板2は、後端部側からケース側開口部31を通ってケース3の内部に挿入され、ケース3の下壁部3Cと略平行な姿勢で収容される。
【0014】
ケース3の上壁部3Bには、前後方向の中間部に段差部32が設けられている。ケース3の内部の収容空間は、当該段差部32によって後方の収容空間よりも前方の収容空間のほうが大きく設定されている。ケース3の前方の収容空間には、基板2を収容した際にコネクタ22が収容される。
【0015】
ケース3の下壁部3Cには、ケース3をブラケット6に取り付けるための取付け部5が設けられている。この取付け部5は、下壁部3Cの左右方向の中央且つ前方側の位置で下壁部3Cと一体に設けられている。ブラケット6の固定部62は、先端側から取付け部5の後端に設けられた挿入口51A(
図2及び
図5参照)を通って挿入され、取付け部5に係合する。上記取付け部5の構成は、後述する。
【0016】
図3及び
図4に示すように、ケース3の左壁部3D及び右壁部3Eには、後述するカバー4を取り付けるためのケース側ロック部33が設けられている。ケース側ロック部33は、爪状に形成された係合凸部331と、係合凸部331の周囲に設けられた案内壁部332とを備え、左壁部3D及び右壁部3Eの前端部にそれぞれ設けられている。係合凸部331には、後述するカバー4の係合凹部422が係合する。案内壁部332は、係合凸部331の両側に配置され、前後方向(基板2の挿入方向)に沿って平行に延びる一対の案内部332Aを有している(
図4参照)。カバー4は、一対の案内部332Aの間にカバー4の係合凹部422を挿入し、ケース3に固定される。
【0017】
カバー4は、前後方向に所定の厚みを有し、左右方向に延びる平板状部材である。カバー4は、ケース3のケース側開口部31を塞ぐことが可能な大きさを有しており、ケース側開口部31を塞ぐようにケース3に固定される。カバー4の左右方向の中央には、カバー側開口部41が形成されている。カバー側開口部41は、カバー4を前後方向に貫通し、上方に開口した溝部である。カバー4をケース3に取り付けた状態では、カバー側開口部41からコネクタ22の接続開口部22Aが露出するようになっている。
【0018】
カバー4の左右両側にはそれぞれ、カバー側ロック部42が設けられている。カバー側ロック部42は、カバー4の左右方向の端部からケース3側(後方側)に延びる腕部421と、腕部421に形成された係合凹部422とを有している。係合凹部422は一例として、腕部421左右方向に貫通した貫通穴である。
【0019】
上記構成のカバー4は、左右一対のカバー側ロック部42の間にケース3を挿入し、カバー4側の係合凹部422をケース3側の係合凸部331に係合させることでケース3に取り付けられる。具体的に、一対のカバー側ロック部42の間にケース3の前端部分を挿入すると、ケース3の左壁部3D及び右壁部3Eに沿って一対の腕部421が摺動する。この際、一対の腕部421は、ケース側ロック部33の一対の案内部332Aの間に挿入され、係合凸部331に案内される。一対の腕部421は、互いに離れる方向に弾性変形しながら係合凸部331の爪を乗り越える位置まで摺動すると、係合凹部422内に係合凸部331が挿入される。係合凹部422に係合凸部331が係合することにより、カバー4がケース3に固定される。
【0020】
上述のとおり、ケース3は取付け部5を介してブラケット6に固定される。ブラケット6は一例として、板金で形成されており、ボルト7を用いて車両の骨格部材等に固定される。
図3に示すように、ブラケット6は、上下方向に所定の厚みを有する平板状の本体部61と、本体部61から延在する固定部62を備えている。本体部61は、左右方向に長い平板状に形成されており、ケース3が固定された状態では、ケース3の下壁部3Cと対向して配置される。
【0021】
固定部62は、本体部61の前端部において左右方向中央の位置から前方側に延在している。固定部62は、上下方向に所定の厚みを有し、平面視で矩形状を成す平板状に形成されている。固定部62は、先端部(前端部)から取付け部5の挿入口51Aを通ってケース3の下壁部3Cに設けられた取付け部5の内側に挿入される(
図4及び
図5参照)。
【0022】
図5に示すように、固定部62は、本体部61との境界である基端部において、前方側から後方側に向かうにつれて左右方向の寸法が広がったテーパ部621を有している。テーパ部621において、左右方向の両側面は、固定部側傾斜面621Aとされている。固定部側傾斜面621Aは、固定部62を取付け部5に挿入した状態で、後述する第二押え部53の先端側と当接する(
図8(B)参照)。固定部62の先端側には、凹部63が形成されている。凹部63は一例として、固定部62を板厚方向(上下方向)に貫通した貫通穴であり、平面視で矩形状に形成されている。具体的に、凹部63は、固定部62の挿抜方向(前後方向)に沿って延びる一対の縦縁部631Aと、一対の縦縁部631Aの前端及び後端同士をそれぞれ繋ぐ前縁部631B及び後縁部631Cからなる周縁部631を有している。凹部63は、固定部62を取付け部5に挿入した状態において、取付け部5の後述する第一押え部55の凸部551が、凹部63の前縁部631Bに係合する構成となっている。
【0023】
図3に示すように、ブラケット6は、一対の脚部64を更に有している。一対の脚部64は、本体部61の右前端部と左後端部に一体に設けられている。即ち、本体部61には、対角線上に一対の脚部64が設けられている。一対の脚部64はそれぞれ、本体部61の周縁部から斜め下方側に延在する立設部641と、立設部641の下端から水平に延びる接合部642を有している。接合部642は、板厚方向に貫通する図示しない接合穴を有しており、当該接合穴にボルト7が挿通されて車両側の構造物に接合される。これにより、ケース3は、ブラケット6を介して車両側の構造物と離間した状態で固定される。
【0024】
以下、取付け部5の構成について詳細に説明する。
図4~
図7に示すように、取付け部5は、ケース3の下壁部3Cに一体に設けられており、一対の縦壁部5Aと、横壁部5Bと、を備えている。取付け部5は、一対の縦壁部5Aと横壁部5Bによって下壁部3Cとの間にスロット状の溝穴51を形成している。この溝穴51の後端側の開口部が挿入口51Aとされ、挿入口51Aからブラケット6の固定部62が挿入される(
図5参照)。
【0025】
図4に示すように、一対の縦壁部5Aはそれぞれ、下壁部3Cの下面から下方側に延びる基部52と、基部52の下端から後方側に長尺に延びる第二押え部53とを有している。即ち、第二押え部53は、基部52によって片持ち支持されている。
図7に示すように、第二押え部53は、挿入されたブラケット6の固定部62の左右方向の側面と対向する側面挟持部531と、固定部62の表面(下面)と対向する表面覆い部532と、によって上下方向の縦断面がL字状を成している。
【0026】
一対の第二押え部53において、一対の側面挟持部531は、左右方向に所定の厚みを有し、上下方向を高さ方向とする板状部材である。一対の側面挟持部531は、互いに対向する面の先端側に押え部側傾斜面531Aが形成されており、平面視で先端側(後端側)が先細りしている。この押え部側傾斜面531Aは、挿入されたブラケット6の固定部62の対向する側面に当接する。押え部側傾斜面531Aの傾斜方向の長さは、上述した固定部62のテーパ部621に形成された固定部側傾斜面621Aの傾斜方向の長さに比べ、短く設定されている。また、一対の側面挟持部531の左右方向の間隔は、固定部62のテーパ部621における前端部の幅寸法と同一か、若干大きく設定されており、且つテーパ部621の後端部の幅寸法よりも小さく設定されている。
【0027】
図8(A)及び
図8(B)に示すように、ブラケット6の固定部62が取付け部5に挿入されると、側面挟持部531の押え部側傾斜面531Aは、テーパ部621の固定部側傾斜面621Aに当接する。固定部62を更に奥まで挿入すると、押え部側傾斜面531Aが固定部側傾斜面621Aに沿って摺動することにより、一対の第二押え部53が互いに離れる方向に弾性変形する。この状態では、押え部側傾斜面531Aを介して第二押え部53の弾性復元力F1が固定部側傾斜面621Aに作用する。固定部62は、第二押え部53の弾性復元力F1のうち左右方向の内側に作用する荷重成分F1Aにより、左右方向の両側面が挟持される。また、固定部62は、第二押え部53の弾性復元力F1のうち後方向に作用する荷重成分F1Bにより、後方側に押圧される。
【0028】
図5に示すように、表面覆い部532は、上下方向に所定の厚みを有し、側面挟持部531の下端から溝穴51の内側に向かって所定の幅を有する板状部材である。表面覆い部532は、ブラケット6の固定部62が取付け部5に挿入された状態では、固定部62の表面(下面)を覆うように配置される。また、表面覆い部532の先端側では、先端(後端)に向かうにつれて板厚が小さく設定され、挿入口51Aの近傍がスロープ状に形成されている。これにより、固定部62の挿入をスムーズに行うことができる。
【0029】
図6及び
図7に示すように、取付け部5の横壁部5Bは、上記構成の一対の縦壁部5Aの下端同士を繋いでおり、挿入されたブラケット6の固定部62の表面(下面)を覆うように配置される。横壁部5Bは、平面視で逆台形状に形成されたベース部54と、ベース部54に一体に設けられた第一押え部55及び一対の第三押え部56を有している。ベース部54は、上下方向に所定の厚みを有しており、一対の第二押え部53の表面覆い部532における前端部同士を連結している。ベース部54の前端部には、ベース部54を上下方向に貫通し、前方側に開口した細長い四つのスリットが形成されている。これにより、横壁部5Bには、ベース部54を支点として、上下方向(板厚方向)に弾性変形可能な三つの弾性片(55,56,56)が形成されている。この三つの弾性片のうち、中央の弾性片が第一押え部55であり、第一押え部55の左右両側に配置された弾性片が一対の第三押え部56である。
【0030】
第一押え部55は、上下方向に所定の厚みを有し、前後方向に延びる長尺な板状部材である。第一押え部55は、先端側において、溝穴51の内側に向かって突出した爪状の凸部551と、凸部551の前方側に配置された係合解除部552を有している。
【0031】
図9(A)に示すように、凸部551は、左右方向の側面視で略台形状に形成されており、ブラケット6の固定部62の挿抜方向の手前側(後方側)に向かうにつれて下方に傾斜した傾斜面551Aを有している。固定部62を取付け部5に挿入すると、固定部62の先端部が凸部551の傾斜面551Aに乗り上げるように摺動し、第一押え部55が板厚方向の下方側に弾性変形される(
図9(B)参照)。固定部62を更に奥まで挿入すると、第一押え部55の凸部551が固定部62の凹部63内に挿入され、凹部63の前縁部631Bに係合する(
図9(C)参照)。これにより、固定部62に対して取付け部5から引き抜く方向の外力が入力されても、凸部551と凹部63が係合し、固定部62が取付け部5から脱落しない構成となっている。更に、上述したとおり固定部62は、一対の第二押え部53の弾性復元力F1により後方側に押圧されるため、凹部63に挿入された凸部551が固定部62の前縁部631Bに押し当てられる(
図8(B)参照)。従って、固定部62が挿抜方向に揺動しない構成となっている。
【0032】
本実施形態では、凸部551の先端部において、上下方向の高さ寸法が、ブラケット6の固定部62の板厚よりも小さく設定されている。そうすると、凸部551が凹部63に挿入された後も、第一押え部55は、板厚方向の下方側へ、若干弾性変形されているため、凸部551の前方側に配置された係合解除部552が固定部62の先端部に当接し、当該先端部に上方向の荷重F2を作用させる。換言すると、第一押え部55は、固定部62の先端部を上方向に押圧しながら支持している。
【0033】
図7及び
図9に示すように、係合解除部552は第一押え部55の先端部を構成している。この係合解除部552には、前方側及び上方側に開口した矩形状の溝部552Aが形成されている。従って、ドライバ等の工具の先端を取付け部5の前方側から溝部552A内へ挿し込むことができる。溝部552Aに工具の先端が挿し込まれた状態では、工具に僅かな力を加えるだけで第一押え部55を板厚方向下方側に弾性変形させることができるため、凸部551と固定部62の凹部63の係合を容易に解除することができる。
【0034】
更に、係合解除部552は、上述した矩形状の溝部552Aを形成し、側壁部分の板厚を薄くすることで、固定部62の係合を作業者に伝える為のクリック感を良好にすることができる。即ち、本実施形態では、挿入された固定部62の先端部が、第一押え部55の弾性復元力に抗いながら凸部551を乗り越えて、取付け部5に係合する構成となっている。固定部62の先端部が凸部551を乗り越えると、弾性復元力で上方向に付勢された凸部551が固定部62の凹部63に挿入される。この際、凸部551の前方に配置された係合解除部552が固定部62の先端部に打ち付けられるため、作業者は、係合解除部552の発するクリック音Sで固定部62の係合を確認することができる(
図9(C)参照)。ここで、係合解除部552の側壁部分の板厚を薄くすると、第一押え部55の先端部をブロック状にして固定部に打ち付ける場合と比較して、打ち付ける部分の面積を小さくすることでクリック音Sを発生し易くしている。これにより、係合時のクリック音Sを作業者が聞き取りやすくなり、クリック感を良好にすることができる。
【0035】
図7に示すように、取付け部5は、第一押え部55の左右両側に配置された一対の第三押え部56を有している。一対の第三押え部56はそれぞれ、上下方向に所定の厚みを有し、ベース部54の前端部から前方側に延びる長尺な板状部材である。一対の第三押え部56は、左右方向の幅寸法が第一押え部55に比べて小さく設定されている。従って、一対の第三押え部56に左右方向から所定の外力を加えると、互いに近づく方向又は離れる方向に弾性変形可能に構成されている。第三押え部56は、先端側において、溝穴51の内側に向かって突出したブロック状の弾性凸部561を有している。弾性凸部561は、ブラケット6の固定部62が取付け部5に挿入されると、固定部62の凹部63の縦縁部631Aに当接する。この弾性凸部561の上面には、左右方向の内側から外側に向かうにつれて下方側に傾斜した案内傾斜面561Aが形成されており、案内傾斜面561Aが固定部62の凹部63の内側面と対向して配置されている(
図10参照)。
【0036】
図10(A)に示すように、ブラケット6の固定部62が取付け部5に挿入されると、弾性凸部561が固定部62の先端部に押し下げられて板厚方向下方側に弾性変形する。その後、固定部62を更に奥まで挿入し、弾性凸部561が固定部62の凹部63の縦縁部631Aと当接すると、弾性凸部561が凹部63の縦縁部631Aに沿って摺動する。この際、案内傾斜面561Aに案内されて弾性凸部561の少なくとも一部が凹部63の内側に挿入されるため、一対の第三押え部56の先端側が凹部63の内側面に当接して互いに近づく方向に弾性変形する(
図10(B)参照)。この状態では、弾性凸部561の案内傾斜面561Aを介して、第三押え部56の弾性復元力が凹部63の内側面に作用する。固定部62は、第三押え部56の弾性復元力のうち、上方向に作用する荷重成分F4Aにより、上方側に押圧される。固定部62は、第三押え部56の弾性復元力のうち、左右方向の外側に作用する荷重成分F4Bにより、左右方向両外側に押圧される。換言すると、一対の第三押え部56は、凹部63の内側面を上方向及び左右両方向に押圧しながら固定部62を支持している。
【0037】
図5及び
図6に示すように、取付け部5は、下壁部3Cから下方側に突出した一対のケース側スロープ部57を更に有する。一対のケース側スロープ部57は、ブラケット6の固定部62の挿抜方向(前後方向)に沿って長尺に延在しており、固定部62の表面(上面)と対向する面が、後方から前方に向かうにつれて下方側に傾斜したスロープ状になっている。従って、固定部62の挿入をスムーズに行うことができる。
【0038】
図4及び
図5に示すように、取付け部5は、一対の第二押え部53の左右両側に配置された一対の規制部58を更に有する。一対の規制部58は、左右方向の側面視で一対の第二押え部53の先端側と重なる位置に配置される。一対の規制部58はそれぞれ、スロープ部581、支持部582及び連結部583を備えるブロック体であり、ケース3の下壁部3Cに一体に設けられている。規制部58は、左右方向の側面から見ると、スロープ部581、支持部582及び連結部583によって後方側に開口したU字状を成している。
【0039】
スロープ部581は、ケース3の下壁部3Cから下方側に突出しており、左右方向に所定の板厚を有する。スロープ部581は、ブラケット6の固定部62の挿抜方向(前後方向)に沿って長尺に延在しており、固定部62の表面(上面)と対向する対向面581Aが後方から前方に向かうにつれて下方側に傾斜したスロープ状に形成されている。一方、支持部582は、スロープ部581と上下方向に対向して配置され、固定部62の挿抜方向に沿って長尺に延在している。また、連結部583は、スロープ部581の前端部と支持部582の前端部とを上下に連結している。上記構成の規制部58では、スロープ部581と支持部582との間に後方側に開口したスリット状の挿入部59が形成される。
【0040】
図9(B)に示すように、ブラケット6の固定部62を取付け部5に挿入すると、ブラケット6の本体部61において、固定部62の左右両側に位置する部分の上面がスロープ部581の対向面581Aに当接して案内される。この状態では、本体部61がスロープ部581に案内されることにより、ブラケット6全体が下方に押し下げられるため、固定部62が取付け部5に挿入された状態で第二押え部53の表面覆い部532に押し当てられる(矢印F3参照)。その後、固定部62が規定の位置まで挿入されると、一対の規制部58の挿入部59にブラケット6の本体部61が挟持されることにより、固定部62の挿入が規制される構成となっている。これにより、固定部62から第二押え部53に入力される荷重が過度に増大することを抑制し、第二押え部53が過負荷により破損することを防止している。
【0041】
(作用並びに効果)
以上説明したとおり、本実施形態の電子装置1では、固定対象であるブラケット6の平板状の固定部62が、ケース3に設けられた取付け部5に挿入されて係合する。取付け部5には、第一押え部55が設けられており、
図8及び
図9に示すように、固定部62が取付け部5に挿入されると、第一押え部55に設けられた凸部551が固定部62の凹部63に挿入されて係合する。これにより、ケース3をブラケット6に取り付けることができる。
【0042】
また、取付け部5には、一対の第二押え部53が設けられており、ブラケット6の固定部62が取付け部5に挿入されると、第二押え部53の先端側が固定部62の両側面に当接して互いに離れる方向に弾性変形される。従って、一対の第二押え部53によって、第一押え部55とは異なる位置で固定部62の両側面が挟持されるため、第一押え部55に設けられたクリアランスによるケースの揺動を抑制することができる。その結果、ブラケット6(ひいては車両)から伝わる振動でケース3が揺動することを抑制することができる。
【0043】
また、本実施形態では、ブラケット6の固定部62には、一対の第二押え部53の先端側と当接する面に固定部側傾斜面621Aが形成されている。
図8(A)及び
図8(B)に示すように、一対の第二押え部53の先端側が、取付け部5に挿入された固定部62の固定部側傾斜面621Aに沿って摺動すると、第二押え部53の先端側から固定部側傾斜面621Aに弾性復元力F1が作用する。即ち、固定部側傾斜面621Aに作用する弾性復元力F1のうち、左右方向の内側へ作用する荷重成分F1Aによって、一対の第二押え部53は固定部62の左右両側面を挟持する。これにより、固定部62の挿抜方向に対し直交する方向に沿ってケース3が揺動しないように規制することができる。一方、固定部側傾斜面621Aに作用する弾性復元力F1のうち、後方向へ作用する荷重成分F1Bによって、第一押え部55の凸部551を固定部62の凹部63の縁に押し当てることができる。これにより、固定部62の挿抜方向に沿ってケースが揺動しないように規制することができる。
【0044】
また、本実施形態では、一対の第二押え部53の先端側に押え部側傾斜面531Aを設け、固定部側傾斜面621Aに当接させている。これにより、第二押え部53と固定部62の当接面を安定させて第二押え部53の摺動を容易にすることができるため、組立時の作業効率を高めることができる。
【0045】
また、本実施形態では、一対の第二押え部53の両側に一対の規制部58を配置したため、一対の第二押え部53が互いに離れる方向に弾性変形する際の変位量を一対の規制部58で規制することができる。これにより、固定部62を挿入する際に、第二押え部53が過負荷により破損することを回避することができる。
【0046】
また、本実施形態では、一対の規制部58は、スロープ部581を有し、スロープ部581においてブラケット6の本体部61の表面(上面)と対向する対向面581Aが後方から前方に向かうにつれて下方側に傾斜している。これにより、規制部58に挿入された本体部61が対向面581Aに沿って傾斜するため、ブラケット6の全体を下方側に押し下げて固定部62の表面(下面)を第二押え部53に押し当てることができる(
図9(C)の矢印F3参照)。この際、一対の規制部58によって本体部61が挟持され、固定部62の挿入を規制することにより、第二押え部53が過負荷により破損することを回避することができる。このように、固定部62の表面を第二押え部53に押し当てて支持することで上下方向のケース3の揺動を規制することができると共に、第二押え部53の負荷を適切に規制することができる。
【0047】
また、取付け部5に挿入された固定部62の先端部は、取付け部5の凸部551と係合すると、第一押え部55の先端部(係合解除部552)によって上方向に押圧される(
図9(C)の矢印F2参照)。これにより、固定部62の表面(下面)を第二押え部53に押し当て、固定部62の先端部を第一押え部55に押し当てて支持することができるので、上下方向のケース3の揺動を効果的に規制することができる。
【0048】
また、本実施形態では、第一押え部55の左右両側に一対の第三押え部56が配置されており、一対の第三押え部56の先端側(前端側)は、挿入された固定部62の凹部63の内側面に当接して互いに近づく方向に弾性変形される。具体的に、
図10(B)に示すように、第三押え部56の先端側には、取付け部5の溝穴51の内側に突出した弾性凸部561が設けられており、弾性凸部561の上面に形成された案内傾斜面561Aが凹部63の内側面に当接する。本実施形態では、挿入された固定部62によって弾性凸部561が押し下げられ、板厚方向に弾性変形する。その後、弾性凸部561が平面視で固定部62の凹部63の縁と重なる位置まで挿入されると、弾性凸部561の案内傾斜面561Aに案内されて弾性凸部561が凹部63の内側に挿入される。この状態では、凹部63の左右の内側面には、弾性凸部561から凹部63を押し広げる方向の荷重成分F4Bが作用するため、一対の第三押え部56によってケース3が左右方向へ揺動しないように規制することができる。また、凹部63の左右の内側面に作用する上方向の荷重成分F4Aにより、上記した第一押え部55と同様、固定部62の先端部を上方向に押圧してケース3が上下方向に揺動しないように規制することができる。
【0049】
[補足説明]
上記実施形態では、固定部62の基端部において左右方向の両側面に固定部側傾斜面621Aを設けることで一対の第二押え部53を互いに離れる方向に弾性変形させる構成としたが、本発明はこれに限らない。例えば、一対の第二押え部を、固定部の挿抜方向の後方側(手前)から前方側(先端側)に向かって互いに近づくように延在させて、固定部62が挿入されると先端側が互いに離れる方向に弾性変形する構成としてもよい。この場合は、一対の第二押え部53の後端部が基部52に連結されて、前端側(先端側)が基部52に片持ち支持される構成となる。
【0050】
上記実施形態では、左右の固定部側傾斜面621Aに沿って一対の第二押え部53の先端側を摺動させることにより一対の第二押え部53を弾性変形させる構成としたが、本発明はこれに限らない。例えば、固定部62の左右両側面に外側に突出した凸部を設け、一対の第二押え部53の先端側が固定部の凸部を乗り越えることで互いに離れる方向に弾性変形させる構成としてもよい。
【0051】
上記実施形態では、一対の第二押え部53の先端側において、互いに対向する面に押え部側傾斜面531Aを形成したが、本発明はこれに限らない。第二押え部の先端側の形状は、固定部の両側面を摺動可能であればよく、適宜形状を変更することができる。
【0052】
上記実施形態では、固定対象物をブラケット6で構成したが、本発明はこれに限らない。例えば、車両等の構造物に直接固定部を設けて電子装置のケースを取り付ける構成としてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 電子装置
2 基板
3 ケース
5 取付け部
6 ブラケット(固定対象物)
21 電子部品
55 第一押え部
53 第二押え部
56 第三押え部
58 規制部
62 固定部
63 凹部
531A 押え部側傾斜面
551 凸部
561 弾性凸部
561A 案内傾斜面
621A 固定部側傾斜面