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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138636
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】杭基礎構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/12 20060101AFI20220915BHJP
   E02D 27/34 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
E02D27/12 Z
E02D27/34 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021038623
(22)【出願日】2021-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安達 夏紀
(72)【発明者】
【氏名】本多 剛
(72)【発明者】
【氏名】濱田 純次
(72)【発明者】
【氏名】田屋 裕司
(72)【発明者】
【氏名】谷川 友浩
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 一斗
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046DA11
2D046DA17
(57)【要約】
【課題】地震時に、構造体に作用する水平力を地盤改良体に伝達することを目的とする。
【解決手段】杭基礎構造は、構造体50の下の原地盤10に設けられる杭42と、杭42の杭頭部42Hに設けられ、当該杭頭部42Hと構造体50とを接続するパイルキャップ44と、杭42の周囲に設けられる格子状地盤改良体20と、パイルキャップ44と格子状地盤改良体20とを接続する地中壁状体60と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造体の下の地盤に設けられる杭と、
前記杭の杭頭部に設けられ、該杭頭部と前記構造体とを接続するパイルキャップと、
前記杭の周囲に設けられる地盤改良体と、
前記パイルキャップと前記地盤改良体とを接続する水平力伝達部と、
を備える杭基礎構造。
【請求項2】
前記水平力伝達部は、前記杭から離れた位置に配置される、
請求項1に記載の杭基礎構造。
【請求項3】
前記水平力伝達部は、前記パイルキャップと前記地盤改良体とに渡る地中壁状体を含む、
請求項1又は請求項2に記載の杭基礎構造。
【請求項4】
前記地盤改良体は、平面視にて、前記杭を囲む格子状に形成され、
前記地中壁状体は、前記パイルキャップと前記地盤改良体の隅部とに渡る、
請求項3に記載の杭基礎構造。
【請求項5】
前記地盤改良体は、平面視にて、前記杭を囲む格子状に形成され、
前記水平力伝達部は、前記パイルキャップの周囲に設けられ、該パイルキャップと前記地盤改良体とに渡る地中床状体を含む、
請求項1又は請求項2に記載の杭基礎構造。
【請求項6】
前記パイルキャップの下端は、前記地盤改良体の天端と同じ高さ、又は該天端よりも上側に配置される、
請求項5に記載の杭基礎構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭基礎構造に関する。
【背景技術】
【0002】
杭と地盤改良体とを併用する基礎構造において、構造体の基礎と地盤改良体の上端部とを接続し、地震時に、構造体に作用する水平力を地盤改良体に伝達することで、構造体から杭頭部に作用する水平力を低減する基礎構造が知られている(例えば、特許文献1~4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-307594号公報
【特許文献2】特開2010-222854号公報
【特許文献3】特開2017-179740号公報
【特許文献4】特開2011-163081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1~4に開示された技術では、地震時に、構造体に作用する水平力を地盤改良体に伝達することができるものの、構造体から地盤改良体に水平力を伝達する伝達構造については、さらなる改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の事実を考慮し、地震時に、構造体に作用する水平力を地盤改良体に伝達することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の杭基礎構造は、構造体の下の地盤に設けられる杭と、前記杭の杭頭部に設けられ、該杭頭部と前記構造体とを接続するパイルキャップと、前記杭の周囲に設けられる地盤改良体と、前記パイルキャップと前記地盤改良体とを接続する水平力伝達部と、を備える。
【0007】
請求項1に係る杭基礎構造によれば、構造体の下の地盤には、杭が設けられる。この杭の杭頭部には、当該杭頭部と構造体とを接続するパイルキャップが設けられる。また、杭の周囲には、地盤改良体が設けられる。
【0008】
ここで、パイルキャップと地盤改良体とは、水平力伝達部によって接続される。これにより、地震時に、構造体に作用する水平力が、パイルキャップから水平力伝達部を介して地盤改良体に伝達される。したがって、地震時に、パイルキャップから杭頭部に作用する水平力が低減される。
【0009】
また、本発明では、構造体と地盤改良体とを直接的に接続するのではなく、水平力伝達部によってパイルキャップと地盤改良体とを接続する。そのため、例えば、高潮や津波、洪水対策として、地盤改良体の天端よりも高い位置に、構造体の底版の下端を設定することができる。
【0010】
請求項2に記載の杭基礎構造は、請求項1に記載の杭基礎構造において、前記水平力伝達部は、前記杭から離れた位置に配置される。
【0011】
請求項2に係る杭基礎構造によれば、水平力伝達部は、杭から離れた位置に配置される。これにより、本発明では、水平力伝達部が杭と接する場合と比較して、地震時に、杭頭部に作用する水平力が低減される。
【0012】
請求項3に記載の杭基礎構造は、請求項1又は請求項2に記載の杭基礎構造において、前記水平力伝達部は、前記パイルキャップと前記地盤改良体とに渡る地中壁状体を含む。
【0013】
請求項3に係る杭基礎構造によれば、水平力伝達部は、パイルキャップと地盤改良体とに渡る地中壁状体を含む。これにより、地震時に、構造体に作用する水平力が、パイルキャップから地中壁状体を介して地盤改良体に伝達される。したがって、地震時に、パイルキャップから杭頭部に作用する水平力が低減される。
【0014】
また、地中壁状体によって、パイルキャップと地盤改良体とを接続することにより、簡単な構成で、地震時に、パイルキャップから杭頭部に作用する水平力を低減することができる。
【0015】
請求項4に記載の杭基礎構造は、請求項3に記載の杭基礎構造において、前記地盤改良体は、平面視にて、前記杭を囲む格子状に形成され、前記地中壁状体は、前記パイルキャップと前記地盤改良体の隅部とに渡る。
【0016】
請求項4に係る杭基礎構造によれば、地盤改良体は、平面視にて、杭を囲む格子状に形成される。そして、地中壁状体は、パイルキャップと地盤改良体の隅部とに渡る。
【0017】
ここで、地盤改良体の隅部は、地盤改良体の他の部位と比較して、剛性が高い。したがって、地震時に、構造体に作用する水平力を、パイルキャップから地中壁状体を介して地盤改良体の隅部に伝達することにより、パイルキャップから杭頭部に作用する水平力がさらに低減される。また、地盤改良体の破損等も抑制される。
【0018】
請求項5に記載の杭基礎構造は、請求項1又は請求項2に記載の杭基礎構造において、前記地盤改良体は、平面視にて、前記杭を囲む格子状に形成され、前記水平力伝達部は、前記パイルキャップの周囲に設けられ、該パイルキャップと前記地盤改良体とに渡る地中床状体を含む。
【0019】
請求項5に係る杭基礎構造によれば、地盤改良体は、平面視にて、杭を囲む格子状に形成される。また、水平力伝達部は、パイルキャップの周囲に設けられ、当該パイルキャップと地盤改良体とに渡る地中床状体を含む。これにより、地震時に、構造体に作用する水平力が、パイルキャップから地中床状体を介して地盤改良体に伝達される。したがって、地震時に、パイルキャップから杭頭部に作用する水平力が低減される。
【0020】
また、地中壁状体によって、パイルキャップと地盤改良体とを接続することにより、簡単な構成で、地震時に、パイルキャップから杭頭部に作用する水平力を低減することができる。
【0021】
請求項6に記載の杭基礎構造は、請求項5に記載の杭基礎構造において、前記パイルキャップの下端は、前記地盤改良体の天端と同じ高さ、又は該天端よりも上側に配置される。
【0022】
請求項6に係る杭基礎構造によれば、パイルキャップの下端は、地盤改良体の天端と同じ高さ、又は当該天端よりも上側に配置される。これにより、パイルキャップを施工する際に、地盤の掘削量が低減される。したがって、パイルキャップの施工性が向上する。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明によれば、地震時に、構造体に作用する水平力を地盤改良体に伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第一実施形態に係る杭基礎構造が適用された地盤及び構造物を示す立断面図である。
図2】地中壁状体を示す図1の拡大立断面図である。
図3図2の3-3線断面図である。
図4】第一実施形態に係る杭基礎構造の変形例を示す図3に対応する断面図である。
図5】第二実施形態に係る杭基礎構造が適用された地盤及び構造物を示す図2に対応する拡大立断面図である。
図6図5の6-6線断面図である。
図7】第三実施形態に係る杭基礎構造が適用された地盤及び構造物を示す図2に対応する拡大立断面図である。
図8図7の8-8線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第一実施形態)
先ず、第一実施形態に係る杭基礎構造について説明する。
【0026】
(杭基礎構造)
図1には、本実施形態に係る杭基礎構造が適用された地盤G及び構造物30が示されている。この杭基礎構造は、複数の杭42と、複数のパイルキャップ44と、格子状地盤改良体20と、複数の地中壁状体60とを備えている。
【0027】
(地盤)
地盤Gは、一例として、原地盤10と、原地盤10上に設けられた盛土12とを備えている。原地盤10は、地表から順に、液状化層10A、非液状化層10B、及び支持層10Cを有している。なお、盛土12は、後述する格子状地盤改良体20を液状化層10Aに形成した後に、液状化層10A上に設けられている。
【0028】
液状化層10Aは、例えば、砂質土等で構成され、地震時に、液状化の可能性が高い地層とされる。非液状化層10Bは、例えば、粘性土等で構成され、地震時に、液状化の可能性が低い地層とされる。支持層10Cは、構造物30を支持可能な剛性及び強度を有している。なお、原地盤10の構成は、上記したものに限らない。
【0029】
(格子状地盤改良体)
液状化層10Aには、地震時における液状化層10Aの液状化を抑制する格子状地盤改良体20が形成されている。格子状地盤改良体20は、液状化層10Aから非液状化層10Bに渡って形成されており、その下端が非液状化層10Bに達している。なお、格子状地盤改良体20は、地盤改良体の一例である。
【0030】
格子状地盤改良体20は、ソイルセメントによって形成されている。より具体的には、図3に示されるように、格子状地盤改良体20は、ソイルセメント柱列工法によって、平面視にて格子状に形成されている。この格子状地盤改良体20は、液状化層を囲む複数の格子枠部22を有している。
【0031】
なお、ソイルセメントとは、現地の土にセメントと水を混ぜたものである。また、格子状地盤改良体20の施工方法は、ソイルセメント柱列工法に限らず、適宜変更可能である。
【0032】
格子枠部22は、平面視にて矩形状に形成されている。また、格子枠部22は、4枚の壁部24を有している。この格子枠部22内に後述する杭42が設けられており、格子枠部22によって杭42の杭頭部42Hが囲まれている。
【0033】
(構造物)
図1に示されるように、構造物30は、杭基礎40と、杭基礎40上に設けられる構造体50とを備えている。
【0034】
(杭基礎)
杭基礎40は、複数の杭42と、各杭42の杭頭部42Hに設けられるパイルキャップ44とを有している。杭42は、コンクリート又は鋼管等で形成された既製杭とされる。また、杭42は、その下端部が支持層10Cに達する支持杭とされる。
【0035】
なお、杭42は、既製杭に限らず、場所打ち杭であっても良い。また、杭42は、支持杭に限らず、摩擦杭であっても良い。
【0036】
図2に示されるように、杭42の杭頭部42Hは、格子状地盤改良体20の天端20Uよりも上方へ突出している。この杭頭部42Hには、構造体50(図1参照)の鉛直荷重Nを杭42に伝達するパイルキャップ44が設けられている。
【0037】
パイルキャップ44は、鉄筋コンクリート造とされている。また、パイルキャップ44は、直方体状に形成されている。このパイルキャップ44の下端部は、杭42の杭頭部42Hの周囲の原地盤10(液状化層10A)を掘り下げた掘削部に設けられている。そのため、パイルキャップ44の下端44Lは、格子状地盤改良体20の天端20Uよりも下側に位置している。
【0038】
また、パイルキャップ44の上部は、格子状地盤改良体20の天端20Uよりも上方へ突出している。そのため、パイルキャップ44の天端44Uは、格子状地盤改良体20の天端20Uよりも上側に位置している。
【0039】
パイルキャップ44の下部には、杭42の杭頭部42Hが埋設されている。また、パイルキャップ44の上部には、構造体50の柱52の柱脚部が埋設されている。このパイルキャップ44を介して、杭42の杭頭部42Hと柱52の柱脚部が接続されている。これにより、構造体50の鉛直荷重Nが柱52からパイルキャップ44を介して杭42に伝達される。
【0040】
なお、パイルキャップ44には、柱52の柱脚部に接合された基礎梁54の端部が埋設されている。
【0041】
(構造体)
図1に示されるように、構造体(上部構造体)50は、例えば、複数階からなる建物とされている。この構造体50は、柱52と、柱52に接合される基礎梁54と、基礎梁54上に設けられる底版56とを有している。
【0042】
構造体50は、高潮や津波、洪水対策として、格子状地盤改良体20の天端20U上に設けられた盛土12上に設けられている。そのため、本実施形態では、構造体50の基礎梁54及び底版56の下端54L,56Lと格子状地盤改良体20の天端20Uとの間に、盛土12が介在している。なお、本実施形態の底版56は、構造体50の一階の床(スラブ)を構成している。
【0043】
(地中壁状体)
図3に示されるように、杭42及びパイルキャップ44は、平面視にて、格子状地盤改良体20の格子枠部22の中央部に配置されている。パイルキャップ44は、4つの地中壁状体60を介して格子状地盤改良体20の上部と接続されている。なお、地中壁状体60は、水平力伝達部の一例である。
【0044】
図2に示されるように、地中壁状体60は、格子枠部22の内側の原地盤10(液状化層10A)に形成され、地震時に、構造体50(図1参照)に作用する水平力Pを、格子状地盤改良体20に伝達する。この地中壁状体60は、ソイルセメントによって形成されている。より具体的には、地中壁状体60は、ソイルセメント柱列工法によって壁状に形成されている。
【0045】
地中壁状体60は、液状化層10Aの上部に形成されている。この地中壁状体60の天端60Uは、格子状地盤改良体20の天端20Uと略同じ高さで、かつ、パイルキャップ44の下端44Lよりも上側に位置している。
【0046】
一方、地中壁状体60の下端60Lは、格子状地盤改良体20の下端よりも上側で、かつ、パイルキャップ44の下端44Lよりも下側に位置している。また、地中壁状体60は、杭42から離れた位置に配置されており、地中壁状体60と杭42との間にはパイルキャップ44が介在している。
【0047】
図3に示されるように、地中壁状体60は、平面視にて、パイルキャップ44と格子枠部22の各隅部22Cとに渡っている。換言すると、地中壁状体60は、平面視にて、パイルキャップ44と格子枠部22の壁部24の交差部とに渡っている。これにより、地震時に、構造体50(図1参照)に作用した水平力Pが、パイルキャップ44から地中壁状体60を介して格子枠部22の隅部22Cに伝達される。
【0048】
なお、地中壁状体60の端部は、パイルキャップ44に埋設されている。また、地中壁状体60の上には、盛土12が設けられている。
【0049】
(杭基礎構造の施工方法)
次に、杭基礎構造の施工方法の一例について説明する。
【0050】
先ず、盛土12を盛る前の地盤Gの液状化層10Aに、格子状地盤改良体20を施工する。次に、格子状地盤改良体20の格子枠部22の内側に、4つの地中壁状体60を施工する。この際、各地中壁状体60の一端部を、格子枠部22の隅部22Cに接続する。
【0051】
次に、格子枠部22の中央部に、杭42を施工する。この際、杭42の杭頭部42Hは、格子状地盤改良体20の天端20Uよりも上方へ突出させておく。
【0052】
次に、杭42の杭頭部42Hの周囲の原地盤10を掘り下げる。次に、杭42の杭頭部42H上に柱52を建て方するとともに、柱52の柱脚部に基礎梁54を接合する。この状態で、杭42の杭頭部42H及び柱52の柱脚部の周囲に、パイルキャップ44を施工する。この際、パイルキャップ44に地中壁状体60の端部を埋設する。これにより、柱52の柱脚部が、パイルキャップ44を介して杭42の杭頭部42Hと接続されるとともに、パイルキャップ44を介して地中壁状体60と接続される。
【0053】
なお、杭基礎構造の施工方法は、上記したものに限らず、例えば、各工程を適宜入れ替えても良いし、並行に行っても良い。
【0054】
(作用)
次に、第一実施形態の作用について説明する。
【0055】
図1に示されるように、本実施形態によれば、地盤Gの液状化層10Aには、格子状地盤改良体20が形成されている。この格子状地盤改良体20によって、地震時に、液状化層10Aの変位が拘束される。したがって、地震時における液状化層10Aの液状化が抑制される。
【0056】
また、構造体50は、格子状地盤改良体20の天端20U上に設けられた盛土12上に建てられている。これにより、構造体50に対する高潮や津波、洪水の被害が低減される。
【0057】
ここで、地震時に、構造体50から杭42の杭頭部42Hに伝達される水平力Pが大きくなると、杭頭部42Hが破損等する可能性がある。この対策として、例えば、特許文献1のように、構造体50の底版56と格子状地盤改良体20とを接続し、地震時に、構造体50に作用する水平力Pを格子状地盤改良体20に伝達することが考えられる。
【0058】
しかしながら、本実施形態では、格子状地盤改良体20の天端20U上に盛土12が設けられており、構造体50の底版56と格子状地盤改良体20の天端20Uとの間に盛土12が介在している。そのため、構造体50の底版56と格子状地盤改良体20とを接続することが難しい。
【0059】
そこで、本実施形態では、図3に示されるように、杭42の杭頭部42Hに設けられたパイルキャップ44と格子状地盤改良体20が、地中壁状体60を介して接続されている。これにより、地震時に、構造体50に作用する水平力Pが、パイルキャップ44から地中壁状体60を介して格子状地盤改良体20に伝達される。この結果、地震時に、パイルキャップ44から杭頭部42Hに作用する水平力Pが低減される。したがって、地震時における杭頭部42Hの破損等が抑制される。
【0060】
このように本実施形態では、構造体50に対する高潮や津波、洪水の被害を低減しつつ、地震時における杭頭部42Hの破損を抑制することができる。
【0061】
また、図2に示されるように、地中壁状体60は、杭42から離れた位置に配置されており、地中壁状体60と杭42との間にはパイルキャップ44が介在している。これにより、本実施形態では、地中壁状体60が杭42と接する場合と比較して、地震時に、杭頭部42Hに作用する水平力Pが低減される。
【0062】
さらに、地中壁状体60は、パイルキャップ44と格子状地盤改良体20の格子枠部22の隅部22Cとに渡っている。ここで、格子枠部22の隅部22Cは、格子枠部22の他の壁部24と比較して剛性が高い。したがって、地震時に、構造体50に作用する水平力Pを、パイルキャップ44から地中壁状体60を介して格子枠部22の隅部22Cに伝達することにより、パイルキャップ44から杭頭部42Hに作用する水平力Pがさらに低減される。また、地中壁状体60の破損等も抑制される。
【0063】
また、地中壁状体60は、格子枠部22の内側を地盤改良することにより形成される。この地中壁状体60によって、パイルキャップ44と格子枠部22とを接続することにより、簡単な構成で、地震時に、パイルキャップ44から杭頭部42Hに作用する水平力Pを低減することができる。
【0064】
(第一実施形態の変形例)
図4に示される変形例のように、地中壁状体60は、平面視にて、パイルキャップ44と、格子枠部22の壁部24の中央部とに渡って形成しても良い。つまり、地中壁状体60は、パイルキャップ44と、当該パイルキャップ44から最も近い壁部24の部位とに渡って形成しても良い。
【0065】
また、地中壁状体60は、ソイルセメントに限らず、コンクリートや流動化処理土によって形成しても良い。地中壁状体60は、格子状地盤改良体20の施工時に出る排泥によって形成することも可能である。なお、地中壁状体60をコンクリートで形成する場合、地中壁状体60及びパイルキャップ44を一体に施工することができる。
【0066】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態について説明する。なお、第二実施形態において、第一実施形態と同じ構成の部材等には、同符号を付して説明を適宜省略する。
【0067】
図5に示されるように、第二実施形態に係る杭基礎構造では、パイルキャップ44の下端44Lが、格子状地盤改良体20の天端20Uと同じ高さに位置している。そして、パイルキャップ44と格子状地盤改良体20とが地中床状体70を介して接続されている。
【0068】
(地中床状体)
地中床状体70は、格子状地盤改良体20の格子枠部22の内側において、パイルキャップ44の周囲の原地盤10を掘り下げた掘削部にコンクリートを打設することにより床状に形成されている。また、地中床状体70は、杭42から離れた位置に配置されており、地中床状体70と杭42との間にはパイルキャップ44が介在している。なお、地中床状体70は、水平力伝達部の一例である。
【0069】
地中床状体70の下端70Lは、パイルキャップ44の下端44L及び格子状地盤改良体20の天端20Uよりも下側に位置している。一方、地中床状体70の天端70Uは、パイルキャップ44の下端44L及び格子状地盤改良体20の天端20Uよりも上側で、かつ、パイルキャップ44の天端44Uよりも下側に位置している。つまり、地中床状体70の上部には、パイルキャップ44の下部が埋設されている。
【0070】
図6に示されるように、地中床状体70は、平面視にて、パイルキャップ44の外周面の全周と格子枠部22の内周面の全周とに渡っている。これにより、地震時に、構造体50に作用した水平力Pが、パイルキャップ44から地中床状体70を介して格子枠部22に伝達される。
【0071】
(杭基礎構造の施工方法)
次に、第二実施形態に係る杭基礎構造の施工方法の一例について説明する。
【0072】
先ず、盛土12を盛る前の地盤Gの液状化層10Aに、格子状地盤改良体20を施工する。次に、格子状地盤改良体20の格子枠部22の中央部に、杭42を施工する。この際、杭42の杭頭部42Hは、格子状地盤改良体20の天端20Uよりも上方へ突出させておく。
【0073】
次に、杭42の杭頭部42H上に柱52を建て方するとともに、柱52の柱脚部に基礎梁54を接合する。この状態で、杭42の杭頭部42H及び柱52の柱脚部の周囲に、パイルキャップ44を施工する。これにより、柱52の柱脚部が、パイルキャップ44を介して杭42の杭頭部42Hと接続される。
【0074】
次に、格子状地盤改良体20の格子枠部22の内側において、パイルキャップ44の周囲の原地盤10(液状化層10A)を掘り下げる。また、格子枠部22の上に、当該格子枠部22に沿った型枠を仮設し、型枠内にコンクリートを打設する。これにより、地中床状体70が形成されるとともに、パイルキャップ44と格子枠部22とが地中床状体70を介して接続される。
【0075】
なお、杭基礎構造の施工方法は、上記したものに限らず、例えば、各工程を適宜入れ替えても良いし、並行に行っても良い。
【0076】
(作用)
次に、第二実施形態の作用について説明する。
【0077】
図5に示されるように、本実施形態によれば、地中床状体70は、パイルキャップ44の周囲に設けられ、当該パイルキャップ44と格子枠部22の各壁部24とに渡っている。これにより、地震時に、構造体50(図1参照)に作用する水平力Pが、パイルキャップ44から地中床状体70を介して格子枠部22に伝達される。したがって、地震時に、パイルキャップ44から杭頭部42Hに作用する水平力Pが低減される。
【0078】
このように本実施形態では、上記第一実施形態と同様に、構造体50(図1参照)に対する高潮や津波、洪水の被害を低減しつつ、地震時における杭頭部42Hの破損を抑制することができる。
【0079】
また、地中床状体70は、杭42から離れた位置に配置されており、地中床状体70と杭42との間にはパイルキャップ44が介在している。これにより、本実施形態では、地中床状体70が杭42と接する場合と比較して、地震時に、杭頭部42Hに作用する水平力Pがさらに低減される。
【0080】
さらに、地中床状体70は、パイルキャップ44と格子状地盤改良体20の格子枠部22の各壁部24とに渡っている。これにより、構造体50の振動方向に関わらず、地震時に、構造体50(図1参照)に作用する水平力Pを、パイルキャップ44から地中床状体70を介して格子枠部22に効率的に伝達することができる。したがって、地震時に、パイルキャップ44から杭頭部42Hに作用する水平力Pがさらに低減される。
【0081】
また、地中床状体70は、パイルキャップ44の周囲にコンクリートを打設することにより形成される。この地中床状体70によって、パイルキャップ44と格子枠部22とを接続することにより、簡単な構成で、地震時に、パイルキャップ44から杭頭部42Hに作用する水平力Pを低減することができる。
【0082】
さらに、パイルキャップ44の下端44Lは、格子状地盤改良体20の天端20Uと同じ高さに位置している。つまり、本実施形態では、パイルキャップ44を施工する際に、杭頭部42Hの周囲の原地盤10を掘り下げない。したがって、パイルキャップ44の施工性が向上する。
【0083】
(第二実施形態の変形例)
本実施形態では、地中床状体70によって、パイルキャップ44と格子状地盤改良体20とが接続されている。しかし、例えば、地中床状体70に基礎梁54の少なくとも一部を埋設することにより、地中床状体70によって、パイルキャップ44及び基礎梁54と、格子状地盤改良体20とを接続することも可能である。
【0084】
また、本実施形態では、パイルキャップ44の下端44Lが、格子状地盤改良体20の天端20Uと同じ高さに配置されている。しかし、パイルキャップ44の下端44Lは、格子状地盤改良体20の天端20Uよりも上側に配置されても良いし、当該天端20Uよりも下側に配置されても良い。
【0085】
また、地中床状体70には、パイルキャップ44が埋設されていれば良い。そのため、パイルキャップ44の下端44Lが、格子状地盤改良体20の天端20Uよりも下側に配置される場合、地中床状体70の天端70Uは、格子状地盤改良体20の天端20U以下に配置されても良いし、当該天端20Uよりも下側に配置されても良い。
【0086】
また、地中床状体70は、コンクリートに限らず、例えば、ソイルセメントや、流動化処理土によって形成しても良い。また、地中壁状体60は、格子状地盤改良体20の施工時に出る排泥によって形成することも可能である。
【0087】
(第三実施形態)
次に、第三実施形態について説明する。なお、第二実施形態において、第一実施形態と同じ構成の部材等には、同符号を付して説明を適宜省略する。
【0088】
図7に示されるように、第三実施形態に係る杭基礎構造では、上記第二実施形態と同様に、パイルキャップ44の下端44Lが、格子状地盤改良体20の天端20Uと同じ高さに位置している。そして、パイルキャップ44と格子状地盤改良体20とが、地中床状体80を介して接続されている。
【0089】
(地中床状体)
地中床状体80は、パイルキャップ44の周囲の原地盤10(液状化層10A)、及び格子状地盤改良体20の天端20U上にコンクリートを打設することにより床状に形成されている。なお、地中床状体80は、水平力伝達部の一例である。
【0090】
地中床状体80の下端80Lは、パイルキャップ44の下端44L及び格子状地盤改良体20の天端20Uと同じ高さに配置されている。一方、地中床状体80の天端80Uは、パイルキャップ44の下端44L及び格子状地盤改良体20の天端20Uよりも上側で、かつ、パイルキャップ44の天端44Uよりも下側に位置している。つまり、地中床状体80の上部には、パイルキャップ44の下部が埋設されている。
【0091】
また、地中床状体80は、杭42から離れた位置に配置されており、地中床状体80と杭42との間にはパイルキャップ44が介在している。
【0092】
図8に示されるように、地中床状体80は、平面視にて、パイルキャップ44の外周面の全周と格子枠部22の天端22Uの全面とに渡っている。これにより、地震時に、構造体50に作用した水平力Pが、パイルキャップ44から地中床状体80を介して格子枠部22に伝達される。
【0093】
なお、図8では、格子状地盤改良体20の1つの格子枠部22上に地中床状体80が設けられているが、地中床状体80は、複数の格子枠部22に渡って設けられても良いし、格子状地盤改良体20の天端20Uの全面に渡って設けられても良い。
【0094】
図7及び図8に示されるように、地中床状体80と格子状地盤改良体20とは、複数の鉄筋82を介して接続されている。複数の鉄筋82は、格子枠部22に周方向に間隔を空けて配置されている。
【0095】
各鉄筋82の下部は、格子枠部22の上部に埋設され、各鉄筋82の上部は、地中床状体80に埋設されている。これにより、地震時に構造体50に作用する水平力Pが、地中床状体80から複数の鉄筋82を介して格子枠部22に伝達される。
【0096】
なお、鉄筋82は、応力伝達部の一例である。また、応力伝達部は、鉄筋82に限らず、例えば、鋼矢板や形鋼等であっても良いし、格子枠部22の上端部に設けた凹凸部であっても良い。
【0097】
(杭基礎構造の施工方法)
次に、第三実施形態に係る杭基礎構造の施工方法の一例について説明する。
【0098】
先ず、盛土12を盛る前の地盤Gの液状化層10Aに、格子状地盤改良体20を施工する。次に、格子状地盤改良体20の格子枠部22の中央部に、杭42を施工する。この際、杭42の杭頭部42Hは、格子状地盤改良体20の天端20Uよりも上方へ突出させておく。
【0099】
次に、杭42の杭頭部42H上に柱52を建て方するとともに、柱52の柱脚部に基礎梁54を接合する。この状態で、杭42の杭頭部42H及び柱52の柱脚部の周囲に、パイルキャップ44を施工する。これにより、柱52の柱脚部が、パイルキャップ44を介して杭42の杭頭部42Hと接続される。
【0100】
次に、格子状地盤改良体20の格子枠部22の上端部に複数の鉄筋82を埋設する。次に、格子枠部22の外周面に沿って型枠を仮設し、パイルキャップ44の周囲の原地盤10、及び格子枠部22の天端22U上にコンクリートを打設する。これにより、地中床状体80が形成されるとともに、パイルキャップ44と格子枠部22とが地中床状体80を介して接続される。
【0101】
なお、杭基礎構造の施工方法は、上記したものに限らず、例えば、各工程を適宜入れ替えても良いし、並行に行っても良い。
【0102】
(作用)
次に、第三実施形態の作用について説明する。
【0103】
図7に示されるように、本実施形態によれば、地中床状体80は、パイルキャップ44の周囲に設けられ、当該パイルキャップ44と格子枠部22の各壁部24とに渡っている。また、地中床状体80と格子枠部22とは、複数の鉄筋82を介して接続されている。
【0104】
これにより、地震時に、構造体50(図1参照)に作用する水平力Pが、パイルキャップ44から地中床状体80を介して格子枠部22に伝達される。したがって、地震時に、パイルキャップ44から杭頭部42Hに作用する水平力Pが低減される。
【0105】
このように本実施形態では、上記第一実施形態と同様に、構造体50に対する高潮や津波、洪水の被害を低減しつつ、地震時における杭頭部42Hの破損を抑制することができる。
【0106】
また、地中床状体80は、杭42から離れた位置に配置されている。これにより、本実施形態では、地中床状体80が杭42と接する場合と比較して、地震時に、杭頭部42Hに作用する水平力Pが低減される。
【0107】
さらに、地中床状体80は、パイルキャップ44と格子状地盤改良体20の格子枠部22の各壁部24と渡っている。これにより、構造体50の振動方向に関わらず、地震時に、構造体50に作用する水平力Pを、パイルキャップ44から地中床状体80を介して格子枠部22により効率的に伝達することができる。したがって、地震時に、パイルキャップ44から杭頭部42Hに作用する水平力Pがさらに低減される。
【0108】
また、地中床状体80は、パイルキャップ44の周囲の原地盤10、及び格子枠部22の天端22U上にコンクリートを打設することにより形成される。この地中床状体80によって、パイルキャップ44と格子枠部22とを接続することにより、簡単な構成で、地震時に、パイルキャップ44から杭頭部42Hに作用する水平力Pを低減することができる。
【0109】
また、本実施形態では、格子枠部22の内側の原地盤10(液状化層10A)を掘り下げない。したがって、地中床状体80の施工が向上する。さらに、パイルキャップ44の下端44Lは、格子状地盤改良体20の天端20Uと同じ高さに位置している。つまり、本実施形態では、パイルキャップ44を施工する際に、杭頭部42Hの周囲の原地盤10を掘り下げない。したがって、パイルキャップ44の施工性も向上する。
【0110】
(第二実施形態の変形例)
本実施形態では、地中床状体80によって、パイルキャップ44と格子状地盤改良体20とが接続されている。しかし、例えば、地中床状体80に基礎梁54の少なくとも一部を埋設することにより、地中床状体80によって、パイルキャップ44及び基礎梁54と、格子状地盤改良体20とを接続することも可能である。
【0111】
また、本実施形態では、パイルキャップ44の下端44Lが、格子状地盤改良体20の天端20Uと同じ高さに配置されている。しかし、パイルキャップ44の下端44Lは、格子状地盤改良体20の天端20Uよりも上側に配置されても良いし、当該天端20Uよりも下側に配置されても良い。
【0112】
また、地中床状体80は、コンクリートに限らず、例えば、ソイルセメントや、流動化処理土によって形成しても良い。また、地中壁状体60は、格子状地盤改良体20の施工時に出る排泥によって形成することも可能である。
【0113】
(変形例)
次に、上記第一実施形態~第三実施形態の変形例について説明する。なお、以下では、上記第一実施形態を例に各種の変形例について説明するが、これらの変形例は、上記第二実施形態及び第三実施形態にも適宜適用可能である。
【0114】
上記第一実施形態では、原地盤10に地盤改良体としての格子状地盤改良体20が形成されている。しかし、地盤改良体の形状は、平面視にして、格子状に限らず、例えば、矩形状や多角形状、壁状等であっても良い。
【0115】
また、上記第一実施形態において、例えば、地中壁状体60をコンクリートで形成する場合、パイルキャップ44は、鉄筋コンクリート造に限らず、例えば、鋼管内にコンクリートを充填した複合構造とされても良い。
【0116】
また、上記第一実施形態では、構造体50が盛土12上に建てられている。しかし、盛土12は適宜省略可能である。
【0117】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0118】
10 原地盤(地盤)
20 格子状地盤改良体(地盤改良体)
20U 天端
22C 隅部
42 杭
42H 杭頭部
44 パイルキャップ
44L 下端
50 構造体
60 地中壁状体(水平力伝達部)
70 地中床状体(水平力伝達部)
80 地中床状体(水平力伝達部)
G 地盤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8