(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138654
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】マスターバッチ及びポリエステル樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 67/00 20060101AFI20220915BHJP
C08K 5/103 20060101ALI20220915BHJP
B65D 1/00 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
C08L67/00
C08K5/103
B65D1/00 110
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021038664
(22)【出願日】2021-03-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151644
【弁理士】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】清水 和真
【テーマコード(参考)】
3E033
4J002
【Fターム(参考)】
3E033AA10
3E033BA17
3E033BA18
3E033CA11
3E033CA16
3E033CA18
3E033CA20
3E033FA01
3E033FA04
3E033GA01
3E033GA02
3E033GA03
4J002CF051
4J002CF061
4J002EH046
4J002EH057
4J002FD026
4J002FD027
4J002GG01
(57)【要約】
【課題】成形時の発煙を抑制しつつ、滑り性及び透明性優れるポリエステル樹脂成形品を製造する原料として好適である改質剤、ポリエステル樹脂成形品、及び、ポリエステル容器の製造方法の提供。
【解決手段】本発明の改質剤は、(A)3~6価の多価アルコールと、アルキル基の炭素原子数が12~22の脂肪酸との完全エステル化物、及び、(B)3~6価の多価アルコールと、アルキル基の炭素原子数が12~22の脂肪酸との部分エステル化物であって、ヒドロキシ基を有する部分エステル化物を含有し、成分(A)及び成分(B)の含有割合は、これらの合計を100質量%とした場合に、それぞれ、45~85質量%及び15~55質量%である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂成形品の製造に用いられる改質剤であって、
(A)3~6価の多価アルコールと、アルキル基の炭素原子数が12~22の脂肪酸との完全エステル化物、及び、
(B)3~6価の多価アルコールと、アルキル基の炭素原子数が12~22の脂肪酸との部分エステル化物であって、ヒドロキシ基を有する部分エステル化物
を含有し、
前記成分(A)及び前記成分(B)の含有割合は、これらの合計を100質量%とした場合に、それぞれ、45~85質量%及び15~55質量%であることを特徴とする改質剤。
【請求項2】
前記成分(A)及び前記成分(B)の形成に用いる前記多価アルコールが、いずれも、ペンタエリスリトール又はグリセリンを含む請求項1に記載の改質剤。
【請求項3】
前記成分(A)及び前記成分(B)の形成に用いる前記多価アルコールが、いずれも、ペンタエリスリトールである請求項1又は2に記載の改質剤。
【請求項4】
前記成分(A)及び前記成分(B)の形成に用いる前記脂肪酸が、いずれも、アルキル基の炭素原子数が16~18の飽和脂肪酸を含む請求項1から3のいずれか一項に記載の改質剤。
【請求項5】
ポリエステル樹脂成形品の製造に用いられるマスターバッチであって、
ポリエステル樹脂と、請求項1から4のいずれか一項に記載の改質剤とを含有することを特徴とするマスターバッチ。
【請求項6】
前記改質剤に由来する成分(A)及び成分(B)の合計量の割合が、前記ポリエステル樹脂の含有量を100質量部とした場合に5~30質量部である請求項5に記載のマスターバッチ。
【請求項7】
ポリエステル樹脂と、請求項1から4のいずれか一項に記載の改質剤とを含有することを特徴とするポリエステル樹脂成形品。
【請求項8】
前記改質剤に由来する成分(A)及び成分(B)の合計量の割合が、前記ポリエステル樹脂の含有量を100質量部とした場合に0.004~0.600質量部である請求項7に記載のポリエステル樹脂成形品。
【請求項9】
前記ポリエステル樹脂成形品がシート又は容器である請求項7又は8に記載のポリエステル樹脂成形品。
【請求項10】
請求項9に記載のポリエステル樹脂シートを、真空成形、圧空成形、打ち抜き加工又は組み立て加工に供することを特徴とする、ポリエステル容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性に優れ、優れた滑り性を有するポリエステル樹脂成形品の製造原料として好適な改質剤及びそれを含むマスターバッチ、並びに、ポリエステル樹脂成形品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエステル樹脂は、水分やガスの遮断性に良好であり、耐薬品性に優れていること、更には、無毒性、軽量である等の諸物性を具備している。そこで、熱可塑性ポリエステル樹脂を含むシートやフィルムを二次加工することで、食料品、清涼飲料水、医薬品、化粧品等、広範囲の分野における容器の製造に利用されている。また、透明性が優れることから、内部充填物の視認が容易な無着色透明容器の製造原料としても、広く利用されている。
ポリエステル樹脂として、ポリエチレンテレフタレート(PET)が、日常生活の中で不可欠な材料となっている。また、ポリエチレンテレフタレートを超える透明性、強度等が必要な場合は、共重合ポリエステルであるグリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)が用いられることもある。
【0003】
ポリエステル樹脂を含む成形品として、例えば、フィルム又はシート、容器(トレイを含む)等が積み重ねられると、ポリエステル樹脂本来の粘着性により、これらの成形品同士がブロッキングを起こしてしまい、使用のために1つずつ取り出すことが困難な場合がある。そこで、成形品が重なり合う場合の滑り性を改善する方法が検討されてきた。
【0004】
特許文献1には、ポリエステル系重合体に二次粒子の平均粒径が1~20μmである粒子(シリカ、タルク等)10~5000ppmと、3個以上の水酸基を有するポリオールと炭素原子数が12個以上の脂肪族モノカルボン酸とのエステル生成物を0.01~5重量%配合したポリエステルシートが開示されている。
特許文献2には、スキン層に二次粒子の平均粒径が10μm以下である不活性粒子(架橋粒子、シリカ等)0~10000ppm及び3個以上の水酸基を有する多価アルコールと炭素原子数が12個以上の脂肪族モノカルボン酸とのエステル生成物を0.01~5重量%配合したポリエステルシートを熱成形して得られた実質上非晶性の熱成形ポリエステル容器が開示されている。
また、特許文献3には、ポリエステル樹脂100質量部に、アンチブロッキング剤(シリカ等の無機粒子)、及び、構成する高級アルコールの炭素原子数が16~22であり、脂肪酸の炭素原子数が16~22であって、且つその総炭素原子数が33~40である高級アルコール脂肪酸エステルを、それぞれ0.1~0.5質量部含有することを特徴とするポリエステル樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7-224176号公報
【特許文献2】特開平8-156210号公報
【特許文献3】特開2014-65849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の技術は、いずれも、多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化物及び不活性粒子を含む改質剤をポリエチレンテレフタレート等と併用するものであり、優れた透明性、滑り性を有するフィルム、シート又は成形品が得られる一方で、成形時に発煙し、その発煙物質による製造装置汚染により、フィルム、シート、成形品に汚れが付着してしまい、製造装置の定期的なメンテナンスが必要となる問題があった。これにより、十分な生産性が得られなかった。
本発明の課題は、成形時の発煙を抑制しつつ、滑り性及び透明性に優れるポリエステル樹脂成形品を製造する原料として好適な改質剤及びそれを含むマスターバッチを提供することである。また、本発明の他の課題は、フィルム、シート等の成形品を製造する際において、改質剤の熱分解やそれに伴う成形装置からの発煙が抑制されて、生産性が改良されたポリエステル樹脂成形品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決するべく、鋭意研究した結果、ポリエステル樹脂と併用する改質剤として、3~6価の多価アルコールと、アルキル基の炭素原子数が12~22の脂肪酸との完全エステル化物、及び、3~6価の多価アルコールと、アルキル基の炭素原子数が12~22の脂肪酸との部分エステル化物であって、ヒドロキシ基を有する部分エステル化物を、特定の割合で含有する改質剤が好適であることを見い出した。
本発明は、以下に示される。
【0008】
本発明の改質剤は、(A)3~6価の多価アルコールと、アルキル基の炭素原子数が12~22の脂肪酸との完全エステル化物(以下、「成分(A)」ともいう)、及び、(B)3~6価の多価アルコールと、アルキル基の炭素原子数が12~22の脂肪酸との部分エステル化物であって、ヒドロキシ基を有する部分エステル化物(以下、「成分(B)」ともいう)を含有し、成分(A)及び成分(B)の含有割合が、これらの合計を100質量%とした場合に、それぞれ、45~85質量%及び15~55質量%であることを特徴とする。
【0009】
本発明のマスターバッチは、ポリエステル樹脂と、上記本発明の改質剤とを含有することを特徴とする。
【0010】
本発明のポリエステル樹脂成形品は、ポリエステル樹脂と、上記本発明の改質剤とを含有することを特徴とする。このポリエステル樹脂成形品は、好ましくはシート又は容器である。
【0011】
本発明のポリエステル容器の製造方法は、ポリエステル樹脂シートを、真空成形、圧空成形、打ち抜き加工又は組み立て加工に供することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の改質剤をポリエステル樹脂と併用することにより、透明性に優れ、優れた滑り性を有するポリエステル樹脂成形品を効率よく製造することができる。また、成形品を製造する際に、改質剤由来の発煙が抑制されて、生産性が改良される。
本発明のマスターバッチによれば、透明性に優れ、優れた滑り性を有するポリエステル樹脂成形品を効率よく製造することができる。また、成形品を製造する際に、改質剤由来の発煙が抑制されて、生産性が改良される。
本発明のポリエステル樹脂成形品は、フィルム、シート、蓋、容器、内部に物品を収容する袋状物等とすることができ、いずれも、滑り性が改善され、表面の粘着性が低減されているために、各成形品が重なり合っている場合に、ブロッキングを起こすことなく、1個ずつ又は1枚ずつ容易に取り出すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の改質剤は、3~6価の多価アルコールと、アルキル基の炭素原子数が12~22の脂肪酸との完全エステル化物である成分(A)、及び、3~6価の多価アルコールと、アルキル基の炭素原子数が12~22の脂肪酸との部分エステル化物であって、ヒドロキシ基を有する部分エステル化物である成分(B)を、特定の割合で含有する混合物である。
【0014】
上記成分(A)及び(B)の形成に用いられる多価アルコールは、互いに、同一の又は異なる、3~6個のヒドロキシ基を有する化合物である。
【0015】
上記多価アルコールとしては、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ジトリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ヘキサントリオール、ソルビトール、エリトリトール、マンニトール、ガラクチトール、イディトール、タリトール、アリトール等が挙げられる。これらのうち、グリセリン及びペンタエリスリトールが好ましく、ペンタエリスリトールが特に好ましい。
【0016】
上記成分(A)及び(B)の形成に用いられる脂肪酸は、互いに、同一の又は異なる、アルキル基の炭素原子数が12~22である、カルボキシ基を有する化合物である。
【0017】
上記脂肪酸としては、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、9-ヘキサデセン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、cis-9-オクタデセン酸、11-オクタデセン酸、エイコサン酸、ドコサン酸等が挙げられる。これらのうち、アルキル基の炭素原子数が16~18の飽和脂肪酸である、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸及びオクタデカン酸が80%以上含まれていることが好ましい。
【0018】
上記成分(A)は、上記の多価アルコールと脂肪酸との完全エステル化物であり、本発明の改質剤に含まれる成分(A)は、1種のみであっても、2種以上であってもよい。
また、上記成分(B)は、ヒドロキシ基を含む部分エステル化物である。尚、上記成分(B)に含まれるヒドロキシ基の数は、特に限定されず、通常、多価アルコールにおけるヒドロキシ基の数をnとした場合に、(n-1)個以下であり、好ましくは3個以下である。本発明の改質剤に含まれる成分(B)は、1種のみであっても、2種以上であってもよい。
【0019】
本発明の改質剤において、上記成分(A)及び(B)の含有割合は、ポリエステル樹脂と併用して、透明性に優れ、優れた滑り性を有するポリエステル樹脂成形品が効率よく製造されることから、これらの合計を100質量%とした場合に、それぞれ、45~85質量%及び15~55質量%であり、好ましくは、60~80質量%及び20~40質量%である。
【0020】
本発明の改質剤は、樹脂成形品の透明性が得られる限りにおいて、必要に応じて、他の成分を含有することができ、例えば、無機充填剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候剤、熱安定剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、結晶核剤等が挙げられる。尚、他の成分が、本発明の改質剤に含まれない場合、樹脂成形品を製造する際に用いる成形材料(樹脂組成物)に、他の成分を、別途、配合することができる。
【0021】
上記無機充填剤の構成材料は、特に限定されないが、シリカ、珪藻土、酸化チタン、アルミナ、ジルコニア、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、酸化鉄、フェライト、ゼオライト、パイロフィライト、タルク、スメクタイト、バーミキュライト、ウォラストナイト、マイカ、クレー、硫酸バリウム等が挙げられる。これらのうち、シリカ、ゼオライト及びタルクが好ましい。尚、上記無機充填剤は、これらの材料からなる粒子部の表面の少なくとも一部に、パラフィン、脂肪酸、多価アルコール、シランカップリング剤、シリコーンオイル、クエン酸等による修飾部が形成されたものであってもよい。本発明の改質剤に含まれる無機充填剤は、1種のみであっても、2種以上であってもよい。
【0022】
本発明の改質剤が無機充填剤を含有する場合、その含有割合は、優れた滑り性を有するポリエステル樹脂成形品が更に効率よく製造されることから、上記成分(A)及び(B)の合計を100質量部とした場合に、好ましくは40~200質量部である。
【0023】
本発明の改質剤は、成分(A)と、成分(B)と、必要に応じて併用される他の成分とを、従来、公知の混合装置を用いて混合することにより、製造することができる。例えば、無機充填剤を併用して改質剤を製造する場合、無機充填剤原料の形状及び大きさは、特に限定されない。レーザー回折・散乱法により二次粒子を測定した場合、平均粒子径D50は、好ましくは2~10μmである。
【0024】
本発明の改質剤は、特定の成分(A)及び(B)を含有するため、透明であり、滑り性が改善され、表面の粘着性が低減したポリエステル樹脂成形品の製造原料として好適であるばかりでなく、樹脂成形品を製造する際に、改質剤由来の発煙が抑制されて、生産性を改良することができる。
【0025】
本発明のマスターバッチは、上記本発明の改質剤と、ポリエステル樹脂と、必要に応じて配合された他の成分とを含有する組成物からなるポリエステル樹脂成形品の製造原料である。本発明のマスターバッチに含まれるポリエステル樹脂は、1種のみであっても、2種以上であってもよい。
【0026】
上記ポリエステル樹脂は、熱可塑性樹脂であり、芳香族ポリエステル樹脂及び脂肪族ポリエステル樹脂のいずれでもよく、両者の組み合わせでもよい。また、これらのポリエステル樹脂は、ホモポリエステル及びコポリエステルのいずれでもよい。
【0027】
上記ポリエステル樹脂は、通常、ジカルボン酸成分と、ジヒドロキシ成分との重縮合、ジカルボン酸成分と、ジヒドロキシ成分と、オキシカルボン酸成分との重縮合、ラクトン成分の開環重合等により得られた樹脂である。
【0028】
上記ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸(2,6-ナフタレンジカルボン酸等)、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルメタンジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸等の炭素原子数8~16程度の芳香族ジカルボン酸又はその誘導体等、シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ハイミック酸等の炭素原子数8~12程度の脂環式ジカルボン酸又はその誘導体等、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、ダイマー酸等の炭素原子数2~40程度の脂肪族ジカルボン酸又はその誘導体等が挙げられる。
【0029】
また、上記ジヒドロキシ成分としては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール等の直鎖状又は分岐鎖状の炭素原子数2~12程度のアルキレンジオール等の脂肪族アルキレンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA等の脂環族ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ジヒドロキシフェニル、ナフタレンジオール、ジヒドロキシジフェニルエーテル、ビスフェノールA、ビスフェノールAに対してエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドが付加した付加体(ジエトキシ化ビスフェノールA等)等の芳香族ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ジテトラメチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のポリオキシアルキレングリコール等が挙げられる。
【0030】
上記オキシカルボン酸成分としては、乳酸、グリコール酸、2-ヒドロキシ-n-酪酸、3-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ吉草酸、2-ヒドロキシカプロン酸、2-ヒドロキシイソカプロン酸、6-ヒドロキシカプロン酸、2-ヒドロキシ-3,3-ジメチル酪酸、2-ヒドロキシ-3-メチル酪酸、オキシ安息香酸、オキシナフトエ酸、ジフェニレンオキシカルボン酸等のオキシカルボン酸及びその誘導体等が挙げられる。
【0031】
上記ラクトン成分としては、ε-プロピオラクトン、δ-ブチロラクトン、β-ブチロラクトン、γ-ブチロラクトン、ピバロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン等が挙げられる。
【0032】
上記ポリエステル樹脂が芳香族ホモポリエステルの場合、好ましくは、ジカルボン酸成分と、ジヒドロキシ成分との重縮合物である。
ジカルボン酸成分は、好ましくは、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等であり、ジヒドロキシ成分は、好ましくは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、シクロヘキサンジメタノール等である。代表的なホモポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサン-1,4-ジメチルテレフタレート、ポリネオペンチルテレフタレート等のポリアルキレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリヘキサメチレンナフタレート等のポリアルキレンナフタレート等である。これらのうち、PETが特に好ましい。
【0033】
また、上記ポリエステル樹脂が芳香族コポリエステルの場合、好ましくは、ジカルボン酸成分と、ジヒドロキシ成分と、オキシカルボン酸成分との重縮合物である。
ジカルボン酸成分は、好ましくは、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等から選ばれた1種又は2種以上であり、ジヒドロキシ成分は、好ましくは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の1種又は2種以上であり、オキシカルボン酸は、例えば、p-オキシ安息香酸等である。代表的なコポリエステル樹脂は、テレフタル酸と、エチレングリコールと、4-シクロヘキサンジメタノールとからなる縮合物(「PETG樹脂」といわれることがある)、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート樹脂等である。
【0034】
上記ポリエステル樹脂が脂肪族ポリエステル樹脂である場合、環状ラクトンの開環重合反応、脂肪族ヒドロキシカルボン酸(オキシカルボン酸)の重縮合反応、脂肪族二塩基酸(コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、α、ω-ドデカンジカルボン酸、ドデセニルコハク酸、オクタデセニルジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等)及び/又はそのエステル形成性化合物(コハク酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、アゼライン酸ジメチル、セバシン酸ジメチル等の、分子中にエステル結合形成性の官能基を2個以上有する脂肪族化合物)と、脂肪族ジオール(エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等)との重縮合反応等により得られた樹脂であることが好ましい。
【0035】
環状ラクトンの開環重合反応により得られた脂肪族ポリエステル樹脂としては、ポリ(ε-プロピオラクトン)樹脂、ポリ(δ-ブチロラクトン)樹脂、ポリ(β-ブチロラクトン)樹脂、ポリ(γ-ブチロラクトン)樹脂、ポリ(ピバロラクトン)樹脂、ポリ(δ-バレロラクトン)樹脂、ポリ(ε-カプロラクトン)樹脂等が挙げられる。
【0036】
脂肪族ヒドロキシカルボン酸(オキシカルボン酸)の重縮合反応により得られた脂肪族ポリエステル樹脂としては、ポリ乳酸樹脂、ポリグリコール酸樹脂、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)樹脂、ポリ(4-ヒドロキシ酪酸)樹脂、ポリ(4-ヒドロキシ吉草酸)樹脂等が挙げられる。
【0037】
上記ポリエステル樹脂は、芳香族ポリエステル樹脂を含むことが好ましい。
【0038】
本発明のマスターバッチは、上記のように、ポリエステル樹脂と、上記本発明の改質剤に由来する少なくとも成分(A)及び(B)とを含有する組成物からなる。成分(A)及び(B)の含有量の合計量の割合は、透明であり、滑り性が改善され、表面の粘着性が低減したポリエステル樹脂成形品が効率よく製造されることから、上記ポリエステル樹脂100質量部とした場合に5~30質量部であることが好ましい。
【0039】
本発明のマスターバッチは、上記のように、樹脂成形品の透明性が得られる限りにおいて、必要に応じて、他の成分を含有することができ、例えば、無機充填剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候剤、熱安定剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、結晶核剤等を含有することができる。上記無機充填剤は、上記本発明の改質剤が含有させることができるとした成分と同一でも異なってもよい。
【0040】
本発明のマスターバッチが無機充填剤を含有する場合、この無機充填剤は、どの原料に由来するものであってもよい。即ち、無機充填剤を含有するマスターバッチは、ポリエステル樹脂と、成分(A)、(B)及び無機充填剤を含有する改質剤とから得られたものであってよいし、ポリエステル樹脂と、成分(A)及び(B)を含有し無機充填剤を含まない改質剤と、無機充填剤とから得られたものであってもよい。
本発明のマスターバッチが無機充填剤を含有する場合、その含有割合は、上記ポリエステル樹脂100質量部とした場合に、好ましくは5~35質量部である。
【0041】
本発明のマスターバッチは、例えば、円柱状、角柱状、球状、楕円球状等を有するものとすることができる。
【0042】
本発明のマスターバッチは、上記本発明の改質剤と、ポリエステル樹脂とを含有する混合物を加熱して溶融混練物とした後、これを、従来、公知の押出法に供することにより製造することができる。具体的な製造方法は、以下に示される。
(1)上記本発明の改質剤と、ポリエステル樹脂とを、タンブラーブレンダー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の混合機に投入して混合した後、単軸押出機、多軸押出機等の押出機により溶融混練しつつ造粒してマスターバッチを得る方法
(2)ポリエステル樹脂を単軸押出機や多軸押出機等の押出機により溶融状態としたところへ、上記本発明の改質剤、添加剤等をサイドフィード又は液状注入により混合し、溶融混練しつつ造粒してマスターバッチを得る方法
【0043】
本発明のマスターバッチを、そのまま、あるいは、他の成分(マスターバッチ等であってもよい)と組み合わせた組成物を、従来、公知の成形方法に供することにより、ポリエステル樹脂成形品を製造することができる。従って、本発明のマスターバッチは、透明性に優れ、滑り性が改善され、表面の粘着性が低減した樹脂成形品の製造原料として好適であり、このような樹脂成形品の製造原料は、他の成分として、ポリエステル樹脂を含むことが特に好ましい。
【0044】
本発明のポリエステル樹脂成形品は、上記本発明の改質剤と、ポリエステル樹脂とを含有する組成物からなる物品である。即ち、本発明のポリエステル樹脂成形品は、ポリエステル樹脂と、上記成分(A)及び(B)とを少なくとも含み、透明性を有し、滑り性が改善され、表面の粘着性が低減した樹脂成形品である。本発明の成形品に含まれるポリエステル樹脂は、1種のみであっても、2種以上であってもよい。
【0045】
上記ポリエステル樹脂は、上記本発明のマスターバッチに含まれることができるとした樹脂をそのまま適用することができる。
【0046】
本発明のポリエステル樹脂成形品は、上記のように、ポリエステル樹脂と、上記本発明の改質剤に由来する成分(A)及び(B)とを含有する組成物からなる。成分(A)及び(B)の含有量の合計量の割合は、ポリエステル樹脂成形品が透明であり、滑り性が改善され、表面の粘着性が低減されるためには、上記ポリエステル樹脂100質量部とした場合に0.004~0.600質量部であることが好ましい。
【0047】
本発明のポリエステル樹脂成形品が無機充填剤を含有する場合、その含有割合は、上記ポリエステル樹脂100質量部とした場合に、好ましくは0.008~0.350質量部である。
【0048】
本発明のポリエステル樹脂成形品の形状は、特に限定されず、定形物及び不定形物のいずれでもよい。好ましくは、フィルム、シート、蓋、容器、内部に物品を収容する袋状物等であり、特に好ましくは、シート及び容器である。シート及び容器の場合、厚さは、特に限定されないが、好ましくは100~800μm、より好ましくは200~500μmである。また、本発明のポリエステル樹脂成形品がシートの場合、単層型及び複層型のいずれでもよく、後者の場合、本発明のポリエステル樹脂成形品であるフィルムが少なくとも1面側に配された積層シートであってもよい。
【0049】
本発明のポリエステル樹脂成形品は、透明であり、例えば、フィルムを、JIS K 7136に準ずる方法のHAZE測定に供した場合、HAZEは、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下である。従って、成形品を通して反対側の物品の視認性に優れる。
【0050】
また、本発明のポリエステル樹脂成形品の1つであるフィルムを、JIS K 7125に準ずる方法の静摩擦係数測定に供した場合、静摩擦係数は、好ましくは0.60以下、より好ましくは0.40以下である。本発明のポリエステル樹脂成形品は、上記の性質を有することから、表面の粘着性が低減しており、各成形品が重なり合っている場合に、ブロッキングを起こすことなく、1個ずつ又は1枚ずつ容易に取り出すことができる。
【0051】
本発明のポリエステル樹脂成形品は、ポリエステル樹脂と、上記本発明の改質剤に由来する成分(A)及び(B)とを含有する成形材料、好ましくは、ポリエステル樹脂と、上記本発明のマスターバッチとを含有する成形材料を、射出成形、カレンダー成形、Tダイ成形、インフレーション成形、ブロー成形、シート押出成形、異形押出成形、中空成形、圧縮成形、真空成形、圧空成形、発泡成形、射出圧縮成形、ガスアシスト成形、ウォーターアシスト成形等の、従来、公知の成形手段に供することにより、製造することができる。
【0052】
本発明のポリエステル樹脂成形品がフィルム又はシートである場合には、上記のように、カレンダー成形、Tダイ成形、インフレーション成形、ブロー成形等により製造することができ、必要に応じて、延伸加工を行うことができる。本発明のポリエステル樹脂成形品が容器である場合には、その形状によっては、得られたシートを、真空成形、圧空成形、打ち抜き加工、組み立て加工等の2次加工に供することにより、これを製造することができる。
【0053】
本発明のポリエステル樹脂成形品は、単一組成の成形品であってよいし、異なる組成の複合化成形品であってもよい。後者の場合、例えば、表面の少なくとも一部が、ポリエステル樹脂と、上記本発明の改質剤に由来する成分(A)及び(B)とを含有するものとすることができる。具体例として、層構造を有する積層シートであって、1面側及び他面側のスキン層がいずれも、ポリエステル樹脂と、上記本発明の改質剤に由来する成分(A)及び(B)とを、上記の樹脂構成で含有し、コア層が他の樹脂組成である3層型積層シートとすることができる。ポリエステル樹脂と、上記本発明の改質剤に由来する成分(A)及び(B)とを含有するスキン層においては、粘着性が低減された表面となる。尚、1面側のスキン層、及び、他面側のスキン層は、樹脂組成及び厚さにおいて、互いに、同一であってよいし、異なってもよい。1面側のスキン層、コア層、及び、他面側のスキン層の厚さは、それぞれ、好ましくは15~100μm、20~450μm、及び、15~100μmである。このような態様の積層シートにおいて、HAZEが、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下であると、シートを通して反対側の物品の視認性に優れる。複合化成形品が他の形状を有する場合も同じである。
【0054】
上記3層型積層シートは、共押出法、ラミネート法等により製造することができる。このうち、共押出法の場合、1面側のスキン層、及び、他面側のスキン層を形成する、ポリエステル樹脂と、上記本発明の改質剤に由来する成分(A)及び(B)とを含有する成形材料(熱可塑性樹脂組成物)と、コア層を形成することとなる成形材料(熱可塑性樹脂組成物)とを、インフレーション成形又はTダイ成形に供する方法を用いることができ、必要に応じて、延伸させることもできる。また、ラミネート法としては、ドライラミネート法、サンドラミネート法、押出ラミネート法等が挙げられる。これらのラミネート法により製造する場合には、1面側のスキン層、及び、他面側のスキン層を形成するための、ポリエステル樹脂と、上記本発明の改質剤に由来する成分(A)及び(B)とを含有するポリエステル樹脂フィルムと、コア層を形成するための樹脂フィルムとの間に、接着剤を介在させた状態でラミネートすることができる。
積層構造を有する容器を製造する場合、3層型積層シートを、真空成形、圧空成形、打ち抜き加工、組み立て加工等の2次加工に供する方法を適用することができる。
【実施例0055】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態を更に具体的に説明する。但し、本発明は、これらの実施例に何ら制約されるものではない。ここで、部及び%は、特記しない限り、質量基準である。
【0056】
1.試験区分1(改質剤の原料)
表1及び表2に、改質剤の製造に用いた完全エステル化物及び部分エステル化物を示す。これらの化合物は、以下の原料を用いてエステル化反応させることにより得た。
【0057】
(1)多価アルコール
e-1:ペンタエリスリトール
e-2:グリセリン
e-3:ソルビタン
e-4:ジペンタエリスリトール
e-5:プロピレングリコール
(2)脂肪酸
f-1:パルミチン酸/マルガリン酸/ステアリン酸(45/1/54)の混合物
f-2:パルミチン酸/ステアリン酸(60/40)の混合物
f-3:ミリスチン酸/パルミチン酸/ステアリン酸(20/32/48)の混合物
f-4:パルミチン酸/ステアリン酸/アラキジン酸(48/32/20)の混合物
f-5:ラウリン酸/パルミチン酸/マルガリン酸/ステアリン酸/ベヘン酸(4/40/1/50/5)の混合物
f-6:アラキジン酸/ベヘン酸(60/40)の混合物
f-7:ラウリン酸/ミリスチン酸(40/60)の混合物
f-8:ミリスチン酸/パルミチン酸/ステアリン酸(20/40/40)の混合物
f-9:パルミチン酸/ステアリン酸/アラキジン酸(40/40/20)の混合物
f-10:カプリン酸
f-11:リグノセリン酸
【0058】
完全エステル化物A-1~A-10及びa-1~a-3を表1に示す。
【表1】
【0059】
部分エステル化物B-1~B-20及びb-1~b-5を表2に示す。
【表2】
【0060】
2.試験区分2(改質剤の製造)
表1及び表2の原料を用いて改質剤を製造した(表3参照)。
【0061】
実施例1-1~1-10
表1の完全エステル化物(A-1)~(A-10)と、表2の部分エステル化物(B-1)~(B-20)とを、表3に示す量でタンブラー混合して、改質剤(D-1)~(D-10)を得た(表3参照)。
【0062】
比較例1-1~1-5
表1の完全エステル化物(a-1)~(a-3)、(A-4)又は(A-5)と、表2の部分エステル化物(b-1)~(b-5)又は(B-6)、(B-7)及び(B-10)とを、表3に示す量でタンブラー混合して、改質剤(d-1)~(d-5)を得た(表3参照)。
【0063】
【0064】
3.試験区分3(熱可塑性ポリエステル樹脂マスターバッチの製造)
熱可塑性ポリエステル樹脂としてのPET又はPETGと、表3の改質剤と、その他の原料として下記の表4に示す無機充填剤とを用いてポリエステル樹脂マスターバッチを製造した(表5参照)。尚、表4に記載の平均粒子径は、レーザー回折・散乱法により測定した二次粒子の測定値である。
【0065】
【0066】
実施例2-1(ポリエステル樹脂マスターバッチM-1の製造)
中国石化儀征化繊社製PET樹脂「BG-80」(商品名)100部と、改質剤(D-1)16部と、無機充填剤(C-1)19部とを、アズワン社製「ポットミキサーPM-01」(商品名)に仕込み、10分間撹拌した後、同軸二軸混練押出機の原料ホッパーへ移した。その後、上記混合物を上記同軸二軸混練押出機へ供給し、250~270℃にて溶融混練し、ストランドダイより押出し、水で急冷しストランドを得た。このストランドをペレタイザーでカッティングして、PET樹脂に改質剤(D-1)及び無機充填剤(C-1)が分散されたポリエステル樹脂マスターバッチ(M-1)を製造した(表5参照)。
【0067】
実施例2-2~2-7及び2-9~2-17(ポリエステル樹脂マスターバッチM-2~M-7及びM-9~M-17の製造)
表5に記載の原料を用いて、実施例2-1と同様の方法にて、ポリエステル樹脂マスターバッチM-2~M-7及びM-9~M-17を得た(表5参照)。
【0068】
実施例2-8(共重合ポリエステル樹脂マスターバッチM-8の製造)
イーストマンケミカルジャパン社製PETG樹脂「EASTER GN001」(商品名)100部と、改質剤(D-1)10部と、無機充填剤(C-1)10部とを用いた以外は、実施例2-1と同様にして、PETG樹脂に改質剤(D-1)及び無機充填剤(C-1)が分散された共重合ポリエステルマスターバッチ(M-8)を製造した(表5参照)。
【0069】
比較例2-1~2-5(ポリエステル樹脂マスターバッチm-1~m-5の製造)
表5に記載の原料を用いて、実施例2-1と同様の方法にて、ポリエステル樹脂マスターバッチm-1~m-5を得た(表5参照)。
【0070】
【0071】
4.試験区分4(熱可塑性ポリエステル樹脂シート及び容器の製造)
上記PET樹脂「BG-80」又はPETG樹脂「EASTER GN001」と、表5のマスターバッチとを用いて、単層並びに3層型の積層樹脂シートを作製し、その後、これらの樹脂シートを真空成形に供することにより樹脂容器を製造した。
【0072】
実施例3-1
上記PET樹脂「BG-80」100部と、ポリエステルマスターバッチ(M-1)1.0部とを、上記「ポットミキサーPM-01」に仕込み10分間撹拌し、同軸二軸混練押出機に配設された原料ホッパーへ移した。その後、原料ホッパーに収容された樹脂原料を同軸二軸混練押出機へ供給し、260~280℃にて溶融混練し、次いで、マルチマニホールドTダイより、溶融樹脂の供給量及びスクリュー回転速度を調整しつつ、30℃に調温した冷却ロール上に巻き取り、厚さが200μmである、単層シート(S1)を得た(表6参照)。
【0073】
得られた単層シート(S1)について、下記の方法により、滑り性、透明性及び耐発煙性の評価を行い、その結果を表6に併記した。
【0074】
(1)滑り性
単層シート(S1)を、20℃及び65%R.H.で24時間調湿した後、同雰囲気にて、東洋精機社摩擦測定機「TR-2」(型式名)を用い、JIS K7125に準拠して静摩擦係数を測定した。測定は3枚の単層シートの任意の表面に対して行い、合計3点の平均値を採用して、以下の基準で滑り性を評価した。
◎:0.40以下
〇:0.40超~0.60以下
×:0.60超
【0075】
(2)透明性
単層シート(S1)のHAZEを、日本電色工業社製ヘーズメーター「NDH5000」(型式名)を用い、JIS K7136に準拠して測定した。測定は5枚の単層シートの任意の位置に対して行い、合計5点の平均値を採用して、以下の基準で透明性を評価した。
◎:5%以下
〇:5%超~10%以下
×:10%超
【0076】
(3)耐発煙性
上記原料ホッパーの樹脂原料の所定量を同軸二軸混練押出機へ供給し、290℃にて溶融混練している過程で発煙成分に由来する製造装置汚染が発生することなく連続運転できた時間を測定し、以下の基準にて耐発煙性を評価した。
◎:20時間超
〇:4時間超~20時間以下
×:4時間以下
【0077】
次に、この単層シート(S1)を、開口部110mm×110mm、底部95mm×95mm及び深さ20mmの金型を取付けた真空圧空成形機に投入し、ヒーター温度400℃及び金型温度55℃の条件下、予熱工程における単層体温度を110℃として真空成形を行い、容器形状の成形品を得た。得られた成形品を目視観察したところ、透明性は良好であり、破断、亀裂、気泡等の外観性の不具合も見られなかった。
【0078】
実施例3-2
上記「ポットミキサーPM-01」に仕込むポリエステルマスターバッチ(M-1)に代えて、ポリエステルマスターバッチ(M-2)を用いた以外は、実施例3-1と同様にして単層シート(S2)を製造し、各種評価を行った(表6参照)。その後、真空成形により容器を製造し、透明性及び外観性がいずれも良好であることを確認した。
【0079】
実施例3-3
上記「ポットミキサーPM-01」に仕込むポリエステルマスターバッチ(M-1)1部に代えて、ポリエステルマスターバッチ(M-3)0.9部を用いた以外は、実施例3-1と同様にして単層シート(S3)を製造し、各種評価を行った(表6参照)。その後、真空成形により容器を製造し、透明性及び外観性がいずれも良好であることを確認した。
【0080】
実施例3-4
上記「ポットミキサーPM-01」に仕込むポリエステルマスターバッチ(M-1)1部に代えて、ポリエステルマスターバッチ(M-4)3.2部を用いた以外は、実施例3-1と同様にして単層シート(S4)を製造し、各種評価を行った(表6参照)。その後、真空成形により容器を製造し、透明性及び外観性がいずれも良好であることを確認した。
【0081】
実施例3-5
上記「ポットミキサーPM-01」に仕込むポリエステルマスターバッチ(M-1)1部に代えて、ポリエステルマスターバッチ(M-5)1.2部を用いた以外は、実施例3-1と同様にして単層シート(S5)を製造し、各種評価を行った(表6参照)。その後、真空成形により容器を製造し、透明性及び外観性がいずれも良好であることを確認した。
【0082】
実施例3-6
上記「ポットミキサーPM-01」に仕込むポリエステルマスターバッチ(M-1)1部に代えて、ポリエステルマスターバッチ(M-6)0.7部を用いた以外は、実施例3-1と同様にして単層シート(S6)を製造し、各種評価を行った(表6参照)。その後、真空成形により容器を製造し、透明性及び外観性がいずれも良好であることを確認した。
【0083】
実施例3-7
上記「ポットミキサーPM-01」に仕込むポリエステルマスターバッチ(M-1)1部に代えて、ポリエステルマスターバッチ(M-7)1.0部を用いた以外は、実施例3-1と同様にして単層シート(S7)を製造し、各種評価を行った(表6参照)。その後、真空成形により容器を製造し、透明性及び外観性がいずれも良好であることを確認した。
【0084】
実施例3-8
上記PETG樹脂「EASTER GN001」100部と、共重合ポリエステルマスターバッチ(M-8)1.3部とを、上記「ポットミキサーPM-01」に仕込み10分間撹拌し、同軸二軸混練押出機に配設された原料ホッパーへ移した。その後、原料ホッパーに収容された樹脂原料を同軸二軸混練押出機に配設された原料ホッパーへ移した。その後、原料ホッパーに収容された樹脂原料を同軸二軸混練押出機へ供給し、240~260℃にて溶融混練し、次いで、マルチマニホールドTダイより、溶融樹脂の供給量及びスクリュー回転速度を調整しつつ、30℃に調温した冷却ロール上に巻き取り、厚さが200μmである単層シート(S8)を得た。そして、この単層シート(S8)について、各種評価を行った(表6参照)。
次に、この単層シート(S8)を、開口部110mm×110mm、底部95mm×95mm及び深さ20mmの金型を取付けた真空圧空成形機に投入し、ヒーター温度400℃及び金型温度50℃の条件下、予熱工程における単層体温度を100℃として真空成形を行い、容器形状の成形品を得た。得られた成形品において、透明性及び外観性がいずれも良好であることを確認した。
【0085】
実施例3-9
上記「ポットミキサーPM-01」に仕込むポリエステルマスターバッチ(M-1)1部に代えて、ポリエステルマスターバッチ(M-9)1.8部を用いた以外は、実施例3-1と同様にして単層シート(S9)を製造し、各種評価を行った(表6参照)。その後、真空成形により容器を製造し、透明性及び外観性がいずれも良好であることを確認した。
【0086】
実施例3-10
上記「ポットミキサーPM-01」に仕込むポリエステルマスターバッチ(M-1)1部に代えて、ポリエステルマスターバッチ(M-10)1.1部を用いた以外は、実施例3-1と同様にして単層シート(S10)を製造し、各種評価を行った(表6参照)。その後、真空成形により容器を製造し、透明性及び外観性がいずれも良好であることを確認した。
【0087】
実施例3-11
上記「ポットミキサーPM-01」に仕込むポリエステルマスターバッチ(M-1)1部に代えて、ポリエステルマスターバッチ(M-11)3.0部を用いた以外は、実施例3-1と同様にして単層シート(S11)を製造し、各種評価を行った(表6参照)。その後、真空成形により容器を製造し、透明性及び外観性がいずれも良好であることを確認した。
【0088】
実施例3-12
上記「ポットミキサーPM-01」に仕込むポリエステルマスターバッチ(M-1)1部に代えて、ポリエステルマスターバッチ(M-12)2.5部を用いた以外は、実施例3-1と同様にして単層シート(S12)を製造し、各種評価を行った(表6参照)。その後、真空成形により容器を製造し、透明性及び外観性がいずれも良好であることを確認した。
【0089】
実施例3-13
上記「ポットミキサーPM-01」に仕込むポリエステルマスターバッチ(M-1)1部に代えて、ポリエステルマスターバッチ(M-13)0.3部を用いた以外は、実施例3-1と同様にして単層シート(S13)を製造し、各種評価を行った(表6参照)。その後、真空成形により容器を製造し、透明性及び外観性がいずれも良好であることを確認した。
【0090】
実施例3-14
上記「ポットミキサーPM-01」に仕込むポリエステルマスターバッチ(M-1)1部に代えて、ポリエステルマスターバッチ(M-14)4.0部を用いた以外は、実施例3-1と同様にして単層シート(S14)を製造し、各種評価を行った(表6参照)。その後、真空成形により容器を製造し、透明性及び外観性がいずれも良好であることを確認した。
【0091】
実施例3-15
上記「ポットミキサーPM-01」に仕込むポリエステルマスターバッチ(M-1)1部に代えて、ポリエステルマスターバッチ(M-15)2.5部を用いた以外は、実施例3-1と同様にして単層シート(S15)を製造し、各種評価を行った(表6参照)。その後、真空成形により容器を製造し、透明性及び外観性がいずれも良好であることを確認した。
【0092】
実施例3-16
上記「ポットミキサーPM-01」に仕込むポリエステルマスターバッチ(M-1)1部に代えて、ポリエステルマスターバッチ(M-16)2.7部を用いた以外は、実施例3-1と同様にして単層シート(S16)を製造し、各種評価を行った(表6参照)。その後、真空成形により容器を製造し、透明性及び外観性がいずれも良好であることを確認した。
【0093】
実施例3-17
上記「ポットミキサーPM-01」に仕込むポリエステルマスターバッチ(M-1)1部に代えて、ポリエステルマスターバッチ(M-17)4.7部を用いた以外は、実施例3-1と同様にして単層シート(S17)を製造し、各種評価を行った(表6参照)。その後、真空成形により容器を製造し、透明性及び外観性がいずれも良好であることを確認した。
【0094】
比較例3-1
上記「ポットミキサーPM-01」に仕込むポリエステルマスターバッチ(M-1)1部に代えて、ポリエステルマスターバッチ(m-1)0.8部を用いた以外は、実施例3-1と同様にして単層シート(SS1)を製造し、各種評価を行った(表6参照)。その後、真空成形により容器を製造したところ、滑り性及び耐発煙性が不十分であった。
【0095】
比較例3-2
上記「ポットミキサーPM-01」に仕込むポリエステルマスターバッチ(M-1)1部に代えて、ポリエステルマスターバッチ(m-2)0.3部を用いた以外は、実施例3-1と同様にして単層シート(SS2)を製造し、各種評価を行った(表6参照)。その後、真空成形により容器を製造したところ、滑り性及び耐発煙性が不十分であった。
【0096】
比較例3-3
上記「ポットミキサーPM-01」に仕込むポリエステルマスターバッチ(M-1)1部に代えて、ポリエステルマスターバッチ(m-3)4.5部を用いた以外は、実施例3-1と同様にして単層シート(SS3)を製造し、各種評価を行った(表6参照)。その後、真空成形により容器を製造したところ、透明性が不十分であった。
【0097】
比較例3-4
上記「ポットミキサーPM-01」に仕込むポリエステルマスターバッチ(M-1)1部に代えて、ポリエステルマスターバッチ(m-4)4.5部を用いた以外は、実施例3-1と同様にして単層シート(SS4)を製造し、各種評価を行った(表6参照)。その後、真空成形により容器を製造したところ、耐発煙性が不十分であった。
【0098】
比較例3-5
上記「ポットミキサーPM-01」に仕込むポリエステルマスターバッチ(M-1)1部に代えて、ポリエステルマスターバッチ(m-5)4.5部を用いた以外は、実施例3-1と同様にして単層シート(SS5)を製造し、各種評価を行った(表6参照)。その後、真空成形により容器を製造したところ、透明性が不十分であった。
【0099】
【0100】
実施例4-1
上記PET樹脂「BG-80」100部と、ポリエステルマスターバッチ(M-1)1.0部とを、上記「ポットミキサーPM-01」に仕込み10分間撹拌し、同軸二軸混練押出機に配設された原料ホッパーNo.1へ移した。一方、上記PET樹脂「BG-80」のみを、他の同軸二軸混練押出機に配設された原料ホッパーNo.2へ移した。その後、原料ホッパーNo.1及びNo.2に収容された樹脂原料を各同軸二軸混練押出機へ供給し、いずれも260~280℃にて溶融混練し、次いで、マルチマニホールドTダイより、溶融樹脂の供給量及びスクリュー回転速度を調整しつつ、上記原料ホッパーNo.1の樹脂原料からなる層が両面側のスキン層となるよう共押出しして30℃に調温した冷却ロール上に巻き取り、スキン層、コア層及びスキン層の厚さが、それぞれ、30μm、240μm及び30μmである、2種3層型の積層シート(L1)を得た(表7参照)。
【0101】
得られた積層シート(L1)について、下記の方法により、滑り性、透明性及び耐発煙性の評価を行い、その結果を表7に併記した。
【0102】
(1)滑り性
積層シート(L1)を、20℃及び65%R.H.で24時間調湿した後、同雰囲気にて、東洋精機社摩擦測定機「TR-2」(型式名)を用い、JIS K7125に準拠して静摩擦係数を測定した。測定は3枚の積層シートの任意の表面に対して行い、合計3点の平均値を採用して、以下の基準で滑り性を評価した。
◎:0.40以下
〇:0.40超~0.60以下
×:0.60超
【0103】
(2)透明性
積層シート(L1)のHAZEを、日本電色工業社製ヘーズメーター「NDH5000」(型式名)を用い、JIS K7136に準拠して測定した。測定は5枚の積層シートの任意の位置に対して行い、合計5点の平均値を採用して、以下の基準で透明性を評価した。
◎:5%以下
〇:5%超~10%以下
×:10%超
【0104】
(3)耐発煙性
上記原料ホッパーNo.1の樹脂原料の所定量を同軸二軸混練押出機へ供給し、290℃にて溶融混練している過程で発煙成分に由来する製造装置汚染が発生することなく連続運転できた時間を測定し、以下の基準にて耐発煙性を評価した。
◎:20時間超
〇:4時間超~20時間以下
×:4時間以下
【0105】
次に、この積層シート(L1)を、開口部110mm×110mm、底部95mm×95mm及び深さ20mmの金型を取付けた真空圧空成形機に投入し、ヒーター温度400℃及び金型温度55℃の条件下、予熱工程における積層体温度を110℃として真空成形を行い、容器形状の成形品を得た。得られた成形品を目視観察したところ、透明性は良好であり、破断、亀裂、気泡等の外観性の不具合も見られなかった。
【0106】
実施例4-2
上記「ポットミキサーPM-01」に仕込むポリエステルマスターバッチ(M-1)に代えて、ポリエステルマスターバッチ(M-2)を用いた以外は、実施例4-1と同様にして積層シート(L2)を製造し、各種評価を行った(表7参照)。その後、真空成形により容器を製造し、透明性及び外観性がいずれも良好であることを確認した。
【0107】
実施例4-3
上記「ポットミキサーPM-01」に仕込むポリエステルマスターバッチ(M-1)1部に代えて、ポリエステルマスターバッチ(M-3)0.9部を用いた以外は、実施例4-1と同様にして積層シート(L3)を製造し、各種評価を行った(表7参照)。その後、真空成形により容器を製造し、透明性及び外観性がいずれも良好であることを確認した。
【0108】
実施例4-4
上記「ポットミキサーPM-01」に仕込むポリエステルマスターバッチ(M-1)1部に代えて、ポリエステルマスターバッチ(M-4)1.2部を用いた以外は、実施例4-1と同様にして積層シート(L4)を製造し、各種評価を行った(表7参照)。その後、真空成形により容器を製造し、透明性及び外観性がいずれも良好であることを確認した。
【0109】
実施例4-5
上記「ポットミキサーPM-01」に仕込むポリエステルマスターバッチ(M-1)1部に代えて、ポリエステルマスターバッチ(M-5)1.2部を用いた以外は、実施例4-1と同様にして積層シート(L5)を製造し、各種評価を行った(表7参照)。その後、真空成形により容器を製造し、透明性及び外観性がいずれも良好であることを確認した。
【0110】
実施例4-6
上記「ポットミキサーPM-01」に仕込むポリエステルマスターバッチ(M-1)1部に代えて、ポリエステルマスターバッチ(M-6)0.5部を用いた以外は、実施例4-1と同様にして積層シート(L6)を製造し、各種評価を行った(表7参照)。その後、真空成形により容器を製造し、透明性及び外観性がいずれも良好であることを確認した。
【0111】
実施例4-7
上記「ポットミキサーPM-01」に仕込むポリエステルマスターバッチ(M-1)1部に代えて、ポリエステルマスターバッチ(M-7)1.0部を用いた以外は、実施例4-1と同様にして積層シート(L7)を製造し、各種評価を行った(表7参照)。その後、真空成形により容器を製造し、透明性及び外観性がいずれも良好であることを確認した。
【0112】
実施例4-8
上記PETG樹脂「EASTER GN001」100部と、共重合ポリエステルマスターバッチ(M-8)1.3部とを、上記「ポットミキサーPM-01」に仕込み10分間撹拌し、同軸二軸混練押出機に配設された原料ホッパーNo.1へ移した。一方、上記PETG樹脂「EASTER GN001」のみを、他の同軸二軸混練押出機に配設された原料ホッパーNo.2へ移した。その後、原料ホッパーNo.1及びNo.2に収容された樹脂原料を各同軸二軸混練押出機へ供給し、いずれも240~260℃にて溶融混練し、次いで、マルチマニホールドTダイより、溶融樹脂の供給量及びスクリュー回転速度を調整しつつ、上記原料ホッパーNo.1の樹脂原料からなる層が両面側のスキン層となるよう共押出しして30℃に調温した冷却ロール上に巻き取り、スキン層、コア層及びスキン層の厚さが、それぞれ、30μm、240μm及び30μmである、2種3層型の積層シート(L8)を得た。そして、この積層シート(L8)について、各種評価を行った(表7参照)。
次に、この積層シート(L8)を、開口部110mm×110mm、底部95mm×95mm及び深さ20mmの金型を取付けた真空圧空成形機に投入し、ヒーター温度400℃及び金型温度50℃の条件下、予熱工程における積層体温度を100℃として真空成形を行い、容器形状の成形品を得た。得られた成形品において、透明性及び外観性がいずれも良好であることを確認した。
【0113】
実施例4-9
上記「ポットミキサーPM-01」に仕込むポリエステルマスターバッチ(M-1)1部に代えて、ポリエステルマスターバッチ(M-9)2.5部を用いた以外は、実施例4-1と同様にして積層シート(L9)を製造し、各種評価を行った(表7参照)。その後、真空成形により容器を製造し、透明性及び外観性がいずれも良好であることを確認した。
【0114】
実施例4-10
上記「ポットミキサーPM-01」に仕込むポリエステルマスターバッチ(M-1)1部に代えて、ポリエステルマスターバッチ(M-10)1.1部を用いた以外は、実施例4-1と同様にして積層シート(L10)を製造し、各種評価を行った(表7参照)。その後、真空成形により容器を製造し、透明性及び外観性がいずれも良好であることを確認した。
【0115】
実施例4-11
上記「ポットミキサーPM-01」に仕込むポリエステルマスターバッチ(M-1)1部に代えて、ポリエステルマスターバッチ(M-11)3.5部を用いた以外は、実施例4-1と同様にして積層シート(L11)を製造し、各種評価を行った(表7参照)。その後、真空成形により容器を製造し、透明性及び外観性がいずれも良好であることを確認した。
【0116】
実施例4-12
上記「ポットミキサーPM-01」に仕込むポリエステルマスターバッチ(M-1)1部に代えて、ポリエステルマスターバッチ(M-12)5.0部を用いた以外は、実施例4-1と同様にして積層シート(L12)を製造し、各種評価を行った(表7参照)。その後、真空成形により容器を製造し、透明性及び外観性がいずれも良好であることを確認した。
【0117】
実施例4-13
上記「ポットミキサーPM-01」に仕込むポリエステルマスターバッチ(M-1)1部に代えて、ポリエステルマスターバッチ(M-13)0.3部を用いた以外は、実施例4-1と同様にして積層シート(L13)を製造し、各種評価を行った(表7参照)。その後、真空成形により容器を製造し、透明性及び外観性がいずれも良好であることを確認した。
【0118】
実施例4-14
上記「ポットミキサーPM-01」に仕込むポリエステルマスターバッチ(M-1)1部に代えて、ポリエステルマスターバッチ(M-14)5.0部を用いた以外は、実施例4-1と同様にして積層シート(L14)を製造し、各種評価を行った(表7参照)。その後、真空成形により容器を製造し、透明性及び外観性がいずれも良好であることを確認した。
【0119】
実施例4-15
上記「ポットミキサーPM-01」に仕込むポリエステルマスターバッチ(M-1)1部に代えて、ポリエステルマスターバッチ(M-15)2.5部を用いた以外は、実施例4-1と同様にして積層シート(L15)を製造し、各種評価を行った(表7参照)。その後、真空成形により容器を製造し、透明性及び外観性がいずれも良好であることを確認した。
【0120】
実施例4-16
上記「ポットミキサーPM-01」に仕込むポリエステルマスターバッチ(M-1)1部に代えて、ポリエステルマスターバッチ(M-16)2.7部を用いた以外は、実施例4-1と同様にして積層シート(L16)を製造し、各種評価を行った(表7参照)。その後、真空成形により容器を製造し、透明性及び外観性がいずれも良好であることを確認した。
【0121】
実施例4-17
上記「ポットミキサーPM-01」に仕込むポリエステルマスターバッチ(M-1)1部に代えて、ポリエステルマスターバッチ(M-17)4.7部を用いた以外は、実施例4-1と同様にして積層シート(L17)を製造し、各種評価を行った(表7参照)。その後、真空成形により容器を製造し、透明性及び外観性がいずれも良好であることを確認した。
【0122】
比較例4-1
上記「ポットミキサーPM-01」に仕込むポリエステルマスターバッチ(M-1)1部に代えて、ポリエステルマスターバッチ(m-1)0.8部を用いた以外は、実施例4-1と同様にして積層シート(LL1)を製造し、各種評価を行った(表7参照)。その後、真空成形により容器を製造したところ、滑り性及び耐発煙性が不十分であった。
【0123】
比較例4-2
上記「ポットミキサーPM-01」に仕込むポリエステルマスターバッチ(M-1)1部に代えて、ポリエステルマスターバッチ(m-2)0.3部を用いた以外は、実施例4-1と同様にして積層シート(LL2)を製造し、各種評価を行った(表7参照)。その後、真空成形により容器を製造したところ、滑り性及び耐発煙性が不十分であった。
【0124】
比較例4-3
上記「ポットミキサーPM-01」に仕込むポリエステルマスターバッチ(M-1)1部に代えて、ポリエステルマスターバッチ(m-3)4.5部を用いた以外は、実施例4-1と同様にして積層シート(LL3)を製造し、各種評価を行った(表7参照)。その後、真空成形により容器を製造したところ、透明性が不十分であった。
【0125】
比較例4-4
上記「ポットミキサーPM-01」に仕込むポリエステルマスターバッチ(M-1)1部に代えて、ポリエステルマスターバッチ(m-4)4.5部を用いた以外は、実施例4-1と同様にして積層シート(LL4)を製造し、各種評価を行った(表7参照)。その後、真空成形により容器を製造したところ、耐発煙性が不十分であった。
【0126】
比較例4-5
上記「ポットミキサーPM-01」に仕込むポリエステルマスターバッチ(M-1)1部に代えて、ポリエステルマスターバッチ(m-5)4.5部を用いた以外は、実施例4-1と同様にして積層シート(LL5)を製造し、各種評価を行った(表7参照)。その後、真空成形により容器を製造したところ、透明性が不十分であった。
【0127】
【0128】
表7の結果から明らかなように、実施例4-1~4-17によれば、樹脂成形体の高い透明性を維持したまま優れた滑り性を発揮し、かつシートやフィルム等の成形体製造の溶融加工時に樹脂改質剤由来の発煙が少なく製造不具合が起こりにくい熱可塑性ポリエステル樹脂改質剤、熱可塑性ポリエステル樹脂マスターバッチ、熱可塑性ポリエステル樹脂シート、熱可塑性ポリエステル樹脂成形体及びポリエステル樹脂容器の製造方法を提供できる。
本発明の改質剤及びマスターバッチは、透明性に優れ、その表面が滑らかなポリエステル樹脂成形品の製造原料として好適である。また、このマスターバッチを用いて成形品を製造する際に、含まれる改質剤由来の発煙物質による製造装置汚染が抑制されて、生産性が改良される。
本発明のポリエステル樹脂成形品は、フィルム、シート、蓋、容器、内部に物品を収容する袋状物等に好適である。この成形品は、その表面が滑らかであるために、各成形品が重なり合っている場合に、ブロッキングを起こすことなく、1個ずつ又は1枚ずつ容易に取り出すことができる。
上記の技術は、いずれも、多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化物及び不活性粒子を含む改質剤をポリエチレンテレフタレート等と併用するものであり、優れた透明性、滑り性を有するフィルム、シート又は成形品が得られる一方で、成形時に発煙し、その発煙物質による製造装置汚染により、フィルム、シート、成形品に汚れが付着してしまい、製造装置の定期的なメンテナンスが必要となる問題があった。これにより、十分な生産性が得られなかった。
本発明の課題は、成形時の発煙を抑制しつつ、滑り性及び透明性に優れるポリエステル樹脂成形品を製造する原料として好適な改質剤を含むマスターバッチを提供することである。また、本発明の他の課題は、フィルム、シート等の成形品を製造する際において、改質剤の熱分解やそれに伴う成形装置からの発煙が抑制されて、生産性が改良されたポリエステル樹脂成形品の製造方法を提供することである。
本発明のマスターバッチを、他の成分(マスターバッチ等であってもよい)と組み合わせた組成物を、従来、公知の成形方法に供することにより、ポリエステル樹脂成形品を製造することができる。従って、本発明のマスターバッチは、透明性に優れ、滑り性が改善され、表面の粘着性が低減した樹脂成形品の製造原料として好適であり、このような樹脂成形品の製造原料は、他の成分として、ポリエステル樹脂を含むことが特に好ましい。
本発明のポリエステル樹脂成形品は、上記改質剤と、ポリエステル樹脂とを含有する組成物からなる物品である。即ち、本発明のポリエステル樹脂成形品は、ポリエステル樹脂と、上記成分(A)及び(B)とを少なくとも含み、透明性を有し、滑り性が改善され、表面の粘着性が低減した樹脂成形品である。本発明の成形品に含まれるポリエステル樹脂は、1種のみであっても、2種以上であってもよい。
本発明のポリエステル樹脂成形品は、ポリエステル樹脂と、上記本発明のマスターバッチとを含有する成形材料を、射出成形、カレンダー成形、Tダイ成形、インフレーション成形、ブロー成形、シート押出成形、異形押出成形、中空成形、圧縮成形、真空成形、圧空成形、発泡成形、射出圧縮成形、ガスアシスト成形、ウォーターアシスト成形等の、従来、公知の成形手段に供することにより、製造することができる。
本発明のポリエステル樹脂成形品は、単一組成の成形品であってよいし、異なる組成の複合化成形品であってもよい。後者の場合、例えば、表面の少なくとも一部が、ポリエステル樹脂と、上記改質剤に由来する成分(A)及び(B)と、無機充填剤とを含有するものとすることができる。具体例として、層構造を有する積層シートであって、1面側及び他面側のスキン層がいずれも、ポリエステル樹脂と、上記改質剤に由来する成分(A)及び(B)と、無機充填剤とを、上記の樹脂構成で含有し、コア層が他の樹脂組成である3層型積層シートとすることができる。ポリエステル樹脂と、上記改質剤に由来する成分(A)及び(B)と、無機充填剤とを含有するスキン層においては、粘着性が低減された表面となる。尚、1面側のスキン層、及び、他面側のスキン層は、樹脂組成及び厚さにおいて、互いに、同一であってよいし、異なってもよい。1面側のスキン層、コア層、及び、他面側のスキン層の厚さは、それぞれ、好ましくは15~100μm、20~450μm、及び、15~100μmである。このような態様の積層シートにおいて、HAZEが、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下であると、シートを通して反対側の物品の視認性に優れる。複合化成形品が他の形状を有する場合も同じである。
上記3層型積層シートは、共押出法、ラミネート法等により製造することができる。このうち、共押出法の場合、1面側のスキン層、及び、他面側のスキン層を形成する、ポリエステル樹脂と、上記改質剤に由来する成分(A)及び(B)と、無機充填剤とを含有する成形材料(熱可塑性樹脂組成物)と、コア層を形成することとなる成形材料(熱可塑性樹脂組成物)とを、インフレーション成形又はTダイ成形に供する方法を用いることができ、必要に応じて、延伸させることもできる。また、ラミネート法としては、ドライラミネート法、サンドラミネート法、押出ラミネート法等が挙げられる。これらのラミネート法により製造する場合には、1面側のスキン層、及び、他面側のスキン層を形成するための、ポリエステル樹脂と、上記改質剤に由来する成分(A)及び(B)と、無機充填剤とを含有するポリエステル樹脂フィルムと、コア層を形成するための樹脂フィルムとの間に、接着剤を介在させた状態でラミネートすることができる。
積層構造を有する容器を製造する場合、3層型積層シートを、真空成形、圧空成形、打ち抜き加工、組み立て加工等の2次加工に供する方法を適用することができる。
本発明のマスターバッチは、透明性に優れ、その表面が滑らかなポリエステル樹脂成形品の製造原料として好適である。また、このマスターバッチを用いて成形品を製造する際に、含まれる改質剤由来の発煙物質による製造装置汚染が抑制されて、生産性が改良される。
本発明のポリエステル樹脂成形品は、フィルム、シート、蓋、容器、内部に物品を収容する袋状物等に好適である。この成形品は、その表面が滑らかであるために、各成形品が重なり合っている場合に、ブロッキングを起こすことなく、1個ずつ又は1枚ずつ容易に取り出すことができる。
前記成分(A)及び前記成分(B)の形成に用いる前記脂肪酸が、いずれも、アルキル基の炭素原子数が16~18の飽和脂肪酸を含む請求項1から3のいずれか一項に記載のマスターバッチ。
ポリエステル樹脂と、請求項1から4のいずれか一項に記載のマスターバッチとを含有する成形材料を、成形加工に供することを特徴とするポリエステル樹脂成形品の製造方法。