(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138697
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】報告システム及び報告方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20220915BHJP
【FI】
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021038721
(22)【出願日】2021-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 雅伸
(72)【発明者】
【氏名】野竹 宏彰
(72)【発明者】
【氏名】山形 裕之
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC12
(57)【要約】
【課題】管理層の担当者と現場層の担当者との間の指示及び報告などのやり取りを効率的に行えるとともに、事後に防災活動での反省点や改善点の検討や、災害予測を行う際の情報の収集を効率的に行えるようにする。
【解決手段】行動提案部123は、災害を予測した結果に対応する防災行動を行わせるための指示情報を生成する。報告処理部125は、行動提案部123によって生成された指示情報に対する作業項目への回答の入力が可能な回答入力欄が含まれる報告フォームを生成する。タイムライン記憶部114は、回答入力欄に報告内容が入力された報告情報に基づく情報を時系列に応じて行動履歴として記憶する。報告フォームを用いて防災担当者間の指示情報及び報告情報の送受を行うようにする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
災害を予測した結果に対応する防災行動を行わせるための指示情報を生成する行動提案部と、
前記行動提案部によって生成された指示情報に対する作業項目への回答の入力が可能な回答入力欄が含まれる報告フォームを生成する報告処理部と、
前記回答入力欄に報告内容が入力された報告情報に基づく情報を時系列に応じて行動履歴として記憶するタイムライン記憶部とを有し、
前記報告フォームを用いて防災担当者間の指示情報及び報告情報の送受を行うようにした報告システム。
【請求項2】
前記報告フォームは、当該作業項目に応じた行動を行ったか否かを入力可能な入力欄を含む
請求項1に記載の報告システム。
【請求項3】
前記タイムライン記憶部は、前記報告情報を受信したタイミング、又は前記報告情報に含まれた防災行動が行われた時刻を示すデータに基づいて、前記作業項目に対する行動が行われた時刻を特定し、特定された時刻に基づく時系列に応じて行動履歴として記憶する
請求項1又は請求項2に記載の報告システム。
【請求項4】
災害を予測した結果に対応する防災行動を行わせるための指示情報を生成する工程と、
行動提案部によって生成された指示情報に対する作業項目への回答の入力が可能な回答入力欄が含まれる報告フォームを生成する工程と、
前記回答入力欄に報告内容が入力された報告情報に基づく情報を時系列に応じて行動履歴として記憶する工程とを有し、
前記報告フォームを用いて防災担当者間の指示情報及び報告情報の送受を行うようにした報告方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、報告システム及び報告方法に関する。
【背景技術】
【0002】
市町村などの自治体や民間企業などにおける風水害対策では、一般に、統括・指示などを行う管理層と、実際に風水害対策を担当する現場層で構成される組織体(以下、風水害対策組織とする)が常時若しくは臨時に編成される。
【0003】
図7は、従来の風水害対策組織の説明図である。
図7に示すように、風水害対策組織では、管理層501及び現場層502は、気象情報をはじめとする災害に関係する情報を収集し、得られた情報を分析し、資源の配分や取るべき行動に関する意思決定を行う。そして、管理層501から現場層502への指示と、現場層502から管理層501への報告という双方向の情報のやり取りに基づき、実際の防災活動が実施される。また、組織の防災計画の改善を目的として、一連の防災行動記録を報告書などにまとめ、事後に反省点や改善点を検討していく作業が行われる。
【0004】
管理層501と現場層502との間の指示及び報告などの情報のやり取りには、防災無線による教宣や、掲示物及び電光掲示板やサイネージ、ウェブ上での告知など一方向の情報伝達手段の他、トランシーバーや電話による音声通話、電子メールやSNS(Social Networking Service)などでの文字情報のやり取り、テレビ会議システムやウェアラブルカメラシステムなど音声と映像によるやり取り、又は訪問などによる直接対面でのやり取りなど、多くの手段が用いられている。
【0005】
また、従来、気象災害に対する防災行動や避難行動を行う判断は、多くの場合、気象警報などの気象情報や、地方自治体から発表される災害情報などを参考に人手で行われている。また、近年、降雨量情報などの気象情報に基づいて、水防活動などの防災行動を支援する支援装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に示されているように、防災行動を支援し、人手で行う作業を軽減するような支援装置が幾つか提案されている。しかしながら、これらの支援装置は、管理層から現場層への指示及び現場層から管理層への報告は、何れも、人手によって行う必要がある。また、発災時という状況下では報告するべき一連の内容を漏れなく文章としてまとめることは、担当者にとって負担になると考えられる。また、報告内容の情報の漏洩の他、情報伝達の遅延などのリスクも想定される。さらに、組織で事後に反省点や改善点を検討していく際にも、人手による作業では、記録の漏れが生じる或いは行動記録のトレースや収集が煩雑になるといった問題も考えられる。
【0008】
上述の課題を鑑み、本発明は、管理層の担当者と現場層の担当者との間の指示及び報告などのやり取りを効率的に行えるとともに、事後に防災活動での反省点や改善点の検討や、災害予測を行う際の情報の収集を効率的に行える報告システム及び報告方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る報告システムは、災害を予測した結果に対応する防災行動を行わせるための指示情報を生成する行動提案部と、前記行動提案部によって生成された指示情報に対する作業項目への回答の入力が可能な回答入力欄が含まれる報告フォームを生成する報告処理部と、前記回答入力欄に報告内容が入力された報告情報に基づく情報を時系列に応じて行動履歴として記憶するタイムライン記憶部とを有し、前記報告フォームを用いて防災担当者間の指示情報及び報告情報の送受を行うようにする。
【0010】
本発明の一態様に係る報告システムは、災害を予測した結果に対応する防災行動を行わせるための指示情報を生成する工程と、行動提案部によって生成された指示情報に対する作業項目への回答の入力が可能な回答入力欄が含まれる報告フォームを生成する工程と、前記回答入力欄に報告内容が入力された報告情報に基づく情報を時系列に応じて行動履歴として記憶する工程とを有し、前記報告フォームを用いて防災担当者間の指示情報及び報告情報の送受を行うようにする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、災害への組織対応における指示・報告にかかわる担当者の負担を軽減するとともに、伝えるべき情報を漏れなく正確に伝えられ、また、情報伝送の遅滞が解消できる。また、本発明によれば、一連の災害対応を保存することで、事後に防災活動での反省点や改善点の検討や、防災計画の改善を支援することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る報告システムの一例を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る報告システムにおける行動記憶部のデータ例を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る報告システムにおける指示情報記憶部のデータ例を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る報告システムにおけるタイムライン記憶部のデータ例を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る報告システムにおける報告フォームの入力インターフェイスの一例を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る報告システムにおける防災支援装置での処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る報告システム100の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、本発明の実施形態に係る報告システム100は、防災支援装置1と、公共サーバ2と、観測装置3と、監視カメラ4と、情報収集サーバ5と、出力装置6とを備えている。防災支援装置1と、公共サーバ2と、観測装置3と、監視カメラ4と、情報収集サーバ5と、出力装置6とは、ネットワークNW1を介して接続可能とされている。
【0014】
公共サーバ2は、例えば、気象庁や地方自治体、公共交通機関などのサーバ装置であり、公共サーバ2からは、例えば、警報又は注意報を含む気象情報、ハザードマップ情報、災害の被害情報、交通機関の運行状況、道路の通行規制情報などを取得可能である。
【0015】
観測装置3は、報告システム100を設置した企業、地方自治体、組織、団体などが設置した各種観測情報を観測する装置であり、例えば、風速計、雨量計、河川や下水道などの水位を計測する水位計などである。
【0016】
監視カメラ4は、報告システム100を設置した企業、地方自治体、組織、団体などが設置した、各種場所の状況、高波、水位などの状態を監視する。
【0017】
出力装置6は、例えば、PC(Personal Computer)、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末などの端末装置であり、防災に従事する管理層及び現場層の双方の担当者が保有している。本実施形態では、出力装置6は、防災支援装置1から送信されたメッセージとともに、指示情報に対する作業項目への回答の入力が可能な回答入力欄が含まれる報告フォームを表示する。担当者は、指示情報に基づいて作業を行い、作業を終了すると、報告フォームの回答入力欄に入力することで作業の報告を行う。
【0018】
なお、
図1において、公共サーバ2、観測装置3、監視カメラ4、情報収集サーバ5、及び出力装置6は、説明の都合上、それぞれ1台を記載しているが、複数台であってもよい。
【0019】
情報収集サーバ5は、公共サーバ2、観測装置3及び監視カメラ4から定期的に各種情報を取得して、各種情報をデータベースとして記憶する。情報収集サーバ5は、取得した情報をそのまま記憶してもよいし、必要な情報を整理、選択、一部の抽出などの加工を行って記憶するようにしてもよい。情報収集サーバ5が収集する各種情報には、時々刻々と変化する情報が含まれる。
【0020】
情報収集サーバ5は、気象災害情報記憶部51と、周辺状況記憶部52と、観測情報記憶部53と、避難場所情報記憶部54と、交通状況記憶部55と、建物設備情報記憶部56と、組織情報記憶部57とを備えている。
【0021】
気象災害情報記憶部51は、公共サーバ2からネットワークNW1を介して取得した、例えば、警報又は注意報を含む気象情報、災害情報、などを時刻情報と対応付けて記憶する。気象情報及び災害情報には、例えば、台風の進路予測情報、暴風域に入る確率、気象衛星画像、土砂災害警戒判定メッシュ情報、高解像度降水ナウキャストといった危険度のリアルタイムメッシュ情報、及び、高潮、洪水、暴風、大雨、大雪、暴風雪、雷、竜巻などの各種警報又は注意報、降雨量や風速値の予測値などの情報が含まれる。
【0022】
周辺状況記憶部52は、公共サーバ2からネットワークNW1を介して取得した、例えば、河川氾濫、土砂崩れ、洪水などの周辺における災害に関連する関連情報を、時刻情報と対応付けて記憶する。
【0023】
観測情報記憶部53は、観測装置3及び監視カメラ4からネットワークNW1を介して取得した観測情報及び監視情報(監視画像、など)を時刻情報と対応付けて記憶する。観測情報には、例えば、雨量計で計測した雨量、降雨強度、河川の水位、下水道水位などが含まれる。
【0024】
避難場所情報記憶部54は、公共サーバ2などからネットワークNW1を介して取得した、例えば、ハザードマップや避難場所開設情報から抽出した避難場所に関連した情報を記憶する。避難場所情報記憶部54は、例えば、避難場所の位置情報(例えば、緯度・経度情報や住所)、避難場所名称(例えば、○○小学校など)、対象災害などを対応付けて記憶する。
【0025】
交通状況記憶部55は、公共サーバ2などからネットワークNW1を介して取得した、例えば、各種交通機関の運行状況、道路の通行規制及び混雑・渋滞状況などを時刻情報と対応付けて記憶する。
【0026】
建物設備情報記憶部56は、報告システム100を利用する企業や地方自治体などの各種組織の建設物や防災に利用可能な設備などの情報を記憶する。
【0027】
組織情報記憶部57は、報告システム100を利用する企業や地方自治体などの各種組織に関する情報を記憶する。組織情報記憶部57は、管理層或いは現場層となる組織の名称、人数、配置場所、などを記憶する。
【0028】
防災支援装置1は、情報収集サーバ5が収集した時々刻々と変化する各種情報(例えば、気象情報や災害に関連する関連情報)を取得して、当該情報を複数組み合わせることで防災行動を提案する。防災支援装置1は、記憶部11と、制御部12とを備えている。
【0029】
記憶部11は、防災支援装置1の処理に利用する各種情報を記憶する。記憶部11は、予測情報記憶部111と、行動記憶部112と、指示情報記憶部113と、タイムライン記憶部114を備えている。
【0030】
予測情報記憶部111は、後述する制御部12の予測処理部122が推定した予測情報を記憶する。また、予測情報記憶部111は、予測情報を生成するための情報(例えば、機械学習のモデル情報、学習結果など)を記憶するようにしてもよい。
【0031】
行動記憶部112は、後述する制御部12の行動提案部123が提案する防災行動を決定するための適用条件と、防災行動とを対応付けて記憶する。
図2は、本発明の実施形態に係る報告システム100における行動記憶部112のデータの一例である。
図2に示すように、行動記憶部112は、「災害の種類」と、「適用条件」と、「防災行動」とを対応付けて記憶する。「災害の種類」は、支援を行う対象の災害を示し、「適用条件」は、防災行動を適用(決定)する適用条件を示している。また、「防災行動」は、防災行動の内容を示している。 例えば、
図2に示す例では、「災害の種類」が“台風”であり、「適用条件」が“3日後に台風の暴風警戒域内に入ると予測”であり、この場合の「防災行動」が“浸水対策、暴風対策”であることを示している。
【0032】
指示情報記憶部113は、防災行動に対応した指示情報や、当該指示情報に基づいて外部に出力するメッセージ情報などを記憶する。
図3は、本発明の実施形態に係る報告システムにおける指示情報記憶部113のデータの一例である。
図3に示すように、行動記憶部112は、「災害の種類」と、「防災行動」と、「指示情報」とを対応付けて記憶する。「災害の種類」は、支援を行う対象の災害を示し、「防災行動」は、防災行動を適用(決定)する適用条件を示している。「指示情報」は、指示情報のメッセージを示している。例えば、
図3に示す例では、「災害の種類」が“内水氾濫”であり、「防災行動」が“避難行動”である場合、「指示情報」が“危険個所への立ち入り禁止処置、水防要員の避難”であることを示している。
【0033】
タイムライン記憶部114は、「防災支援装置」の全処理の行動履歴(いつ、どんな外部情報のもとで、誰が、何を行ったか、その結果被害の程度はどうであったか、復旧に要した費用と期間、など)を蓄積して記憶する。
図4は、本発明の実施形態に係る報告システム100におけるタイムライン記憶部114のデータの一例である。タイムライン記憶部114は、「日付」と、「フェーズ」と、「時刻」と、「気象情報」と、「防災活動の記録」および「被害程度」とを対応付けて記憶する。「日付」及び「時刻」は、例えば、報告情報を受信したタイミング又は報告情報に含まれた防災行動が行われた時刻を示すデータに基づいて特定する。「フェーズ」には、警戒、準備、実施、避難など、災害に対する局面が記憶される。「気象情報」は、公共サーバ2、観測装置3、及び監視カメラ4から取得された情報に基づいて、そのときの気象情報を記憶する。「防災活動の記録」は、報告情報に基づいて生成された行動履歴であり、例えば、報告情報を受信したタイミング又は報告情報に含まれた防災行動が行われた時刻を示すデータに基づいて特定された時刻に基づく時系列で記憶する。「被害程度」についても同様に報告情報に基づいて生成される情報である。後に説明するように、報告情報は、出力装置6に表示される報告フォームへの回答に基づいて生成される。
【0034】
制御部12は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などを含むプロセッサであり、防災支援装置1を統括的に制御する。制御部12は、情報取得部121と、予測処理部122と、行動提案部123と、出力処理部124と、報告処理部125を備えている。
【0035】
情報取得部121は、風速、雨量、下水道などの水位などの計測情報を、観測装置3から又は情報収集サーバ5から取得する。また、情報取得部121は、支援の対象場所に対応する気象情報、及び対象場所の周辺における対象災害に関連する関連情報を情報収集サーバ5から取得する。また、情報取得部121は、例えば、災害支援の対象となる場所の位置情報などを、出力装置6などから取得する。
【0036】
なお、関連情報には、例えば、各種観測情報や周辺被害情報、避難場所情報、交通状況情報、対象施設に関する情報、国や自治体からの発信情報などが含まれる。ここで、対象施設に関する情報には、例えば、施設の立地や建物規模などの情報、施設の設備(電源や空調、給排水、ガスなど)の運転状況を示す情報、災害時に優先的に防護する個所(脆弱な個所や、重要個所、危険個所など)、施設への入退館情報や、人員の在席情報、などが含まれる。
【0037】
また、国や自治体からの発信情報には、例えば、避難準備や避難勧告などの通知、防波堤や水門などの防護インフラの稼働状況、などが含まれる。 また、交通状況情報は、道路の通行状況又は交通機関の運行状況などを示す情報である。なお、交通機関の運行状況には、鉄道やバスの他に、船舶や航空機の運航情報も含まれる。
【0038】
予測処理部122は、情報取得部121が取得した気象情報及び関連情報に基づいて、対象災害の被害に関連して予測される災害予測情報を推定する。予測処理部122は、例えば、対象災害が“台風”である場合には、台風の通過予測経路情報や、各種警報・注意報の情報などに基づいて、台風支援の対象場所の周辺を通過するまでの時間(日にち)などを災害予測情報として推定する。予測処理部122は、推定した災害予測情報を予測情報記憶部111に記憶させる。
【0039】
なお、予測処理部122は、現在の情報に限らず、過去に観測された複数の情報の変化と対象災害の被害状況との関係に基づいて、複数の情報から災害予測情報を推定するようにしてもよい。例えば、予測処理部122は、過去に観測された複数の情報の変化と対象災害の被害状況とで各種機械学習を行い、当該機械学習の結果に基づいて、災害予測情報を推定するようにしてもよい。 ここで、機械学習には、例えば、重回帰分析や、カルマンフィルター、ニューラルネットワーク(ディープラーニング)、ランダムフォレスト、サポートベクターマシンなどが含まれる。
【0040】
行動提案部123は、予測処理部122が推定した予測情報に基づいて、対象災害に対する防災行動を提案する。行動提案部123は、
図2に示したように、行動記憶部112が記憶する「災害の種類」及び「適用条件」対応する「防災行動」を取得して決定する。
【0041】
なお、防災行動には、避難行動も含まれ、行動提案部123は、防災行動が避難行動である場合に、情報取得部121が情報収集サーバ5から取得した避難場所情報に基づいて避難先を提案する。また、行動提案部123は、避難先を提案する際に、交通状況情報に基づいて、避難場所や避難経路を決定してもよい。
【0042】
出力処理部124は、行動提案部123が提案した防災行動に対応した指示情報を出力装置6から出力させる。出力処理部124は、
図3に示したように、例えば、指示情報記憶部113から防災行動に対応する指示情報を取得し、当該指示情報を示すメッセージを出力装置6に送信して、出力装置6に表示させる。また、出力処理部124は、防災行動が避難行動である場合に、指示情報として、交通状況情報に基づく避難指示を出力装置6から出力させるようにしてもよい。
【0043】
報告処理部125は、現場層及び管理層それぞれの担当者が情報を入力するインターフェイスとして、指示情報に対する作業項目への回答の入力が可能な回答入力欄が含まれる報告フォームを生成する。この報告フォームへの回答に基づいて報告情報が生成される。このときの入力インターフェイスについて
図5を参照して説明する。
【0044】
図5は、本発明の実施形態に係る報告システム100における報告フォームの入力インターフェイスの一例である。この例は、メッセージをSNS(Social Networking Service)で生成したものである。
図5に示すように、メッセージ画面200には、災害情報とともに、リンク201が含まれている。メッセージ画面200内のリンク201を辿ると、報告フォーム210が表示される。この報告フォーム210には、例えば行動提案部123で抽出された指示情報に対する作業項目がチェックボックス211、211、…による入力欄で表示される。
【0045】
なお、作業地点が複数ある場合には、地図画面220により作業地点を選択できる。担当者は、対策が完了した場合にはこのチェックボックス211、211、…をオンにする。また、報告フォーム210には、写真などのアップロードや、テキストでの文章入力、音声入力などを備えていてもよい。また、作業終了を入力したとき、作業が残っていると、アラート画面230が表示される。作業が全て終了すると、終了画面240が表示される。
【0046】
報告処理部125は、例えば、管理層の担当者は現場層の担当者に
図5に示すような報告フォーム210を送信する。現場層の担当者は、出力装置6によりこの報告フォームを受信する。現場層の担当者は、報告フォーム210を確認し、作業の進捗状況に従って、チェックボックス211をオンする。チェックボックス211の入力情報は、報告情報として現場層の担当者の出力装置6から管理層の担当者の出力装置6に送られるとともに、この報告情報の報告内容に基づいて、タイムライン記憶部114に時系列で行動履歴が記憶されていく。
【0047】
次に、本発明の実施形態に係る報告システム100での処理について説明する。
図6は、本発明の実施形態に係る報告システム100における防災支援装置1での処理を示すフローチャートである。ここでは、一例として、豪雨時における防災活動として建物の入り口への止水板の設置を例として説明する。
【0048】
(ステップS101)情報取得部121は、観測装置3を構成する雨量計により降雨強度の観測値を取得する。
【0049】
(ステップS102)予測処理部122は、降雨強度の入力情報から、雨が止んでいるか否かを判定する。予測処理部122は、雨が止んでいなければ(ステップS101:No)、処理をステップS103に進め、雨が止んだと判定されると(ステップS102:Yes)、処理をステップS110に進める。
【0050】
(ステップS103)情報取得部121は、観測装置3を構成する水位計により下水道水位の入力情報を取得する。
【0051】
(ステップS104)予測処理部122は、降雨強度や下水道水位の計測値とともに、気象情報や関連情報に基づいて、数値解析やAI(Artificial Intelligence)解析により、内水氾濫の予測値を推定して、処理をステップS105に進める。
【0052】
(ステップS105)予測処理部122は、予測の結果、内水氾濫が起きうると判定した場合には(ステップS105:Yes)、処理をステップS106に進め、内水氾濫が起きないと判定した場合には(ステップS105:No)、処理をステップS101に戻す。
【0053】
(ステップS106)予測処理部122は、止水板が設置されているか否かを判定する。予測処理部122は、止水板が設置されていない場合には(ステップS106:No)、処理をステップS107に進め、止水板が既に設置されている場合には(ステップS106:Yes)、処理を終了する。
【0054】
(ステップS107)行動提案部123は、行動記憶部112から、災害の種類、適用条件に応じた防災行動を検索して抽出する。ここでは、行動提案部123は、行動記憶部112から「止水板を設置する」という防災行動のメッセージを抽出する。
【0055】
(ステップS108)出力処理部124は、指示情報記憶部113から、災害の種類、防災行動に応じた指示情報を検索して抽出する。ここでは、出力処理部124は、指示情報記憶部113から、「止水板の設置」の指示情報を抽出し、「止水板の設置」のメッセージを生成し、現場層の担当者の出力装置6に送る。報告処理部125は、「止水板の設置」の指示に対応する入力欄を含む報告フォームを生成し、出力装置6(例えば現場層の出力装置)はこの報告フォームを表示する。
【0056】
(ステップS109)担当者(例えば現場層の担当者)は、出力装置6に表示される指示情報を参照して作業を行い、作業項目に対応する入力欄に報告を入力する。出力装置6(例えば現場層の出力装置)の報告フォームに入力された情報は、報告情報として、相手方の出力装置6(例えば管理層の出力装置)で閲覧することができる。また、報告処理部125は、「止水板の設置」の指示に対する報告情報を受け取ると、災害対応をタイムライン記憶部114に記憶する。
【0057】
上述の処理により、雨が降り(ステップS102:No)、氾濫が起こる可能性があるとき(ステップS105:Yes)、止水板が設置されていなければ(ステップS106:No)、ステップS101からステップS109の処理が続けられ、現場層の担当者への指示が送られる。現場層の担当者により止水板が設置されると、ステップS109で、現場担当者が入力欄に入力することで、管理層の担当者への報告が行われる。そして、タイムライン記憶部114は、「止水板の設置」の指示に対する「設置の作業完了」報告を受信すると、行動履歴を蓄積して記憶する。
【0058】
また、ステップS102で雨が止んだと判定されると(ステップS102:Yes)、処理はステップS110に移る。
【0059】
(ステップS110)出力処理部124は、指示情報記憶部113から、「雨が止んだ」に応じた指示情報を検索して抽出する。ここでは、出力処理部124は、指示情報記憶部113から、「防災体制解除」の指示情報を抽出し、「防災体制解除」のメッセージを生成し、出力装置6に送る。また、報告処理部125は、「防災体制解除」の指示に対応する入力欄を含む報告フォームを生成し、出力装置6は報告フォームを表示する。
【0060】
(ステップS109)現場層の担当者は、防災体制を解除して、入力欄に報告を入力する。報告処理部125は、「防災体制解除」の指示に対する報告を受け取ると、災害対応をタイムライン記憶部114に記憶する。
【0061】
以上説明したように、本実施形態では、担当者への指示が
図5に示したようなメッセージ画面で送られてくる。担当者は、報告フォーム210中の入力欄などを使って、指示に対する報告を入力できる。これにより、管理層の担当者と現場層の担当者との間の指示及び報告などの情報のやり取りを効率的に行えるとともに、
図4に示すように、災害対応をタイムライン記憶部114に保存しておくことができる。タイムラインの情報は、事後に防災活動での反省点や改善点の検討に利用できる。そして、タイムライン記憶部114に蓄積されたデータは長年の利用によってビッグデータとなり、例えばAI分析や機械学習によって、行動記憶部112や指示情報記憶部113内に蓄積されたデータの追加や修正などの最適化を行うことも可能となる。
【0062】
上述した実施形態における報告システム100の全部または一部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0063】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0064】
1…防災支援装置、2…公共サーバ、3…観測装置、4…監視カメラ、5…情報収集サーバ、6…出力装置、111…予測情報記憶部、112…行動記憶部、113…指示情報記憶部、114…タイムライン記憶部、121…情報取得部、122…予測処理部、123…行動提案部、124…出力処理部、125…報告処理部