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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138720
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】衛生マスクおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20220915BHJP
【FI】
A41D13/11 B
A41D13/11 D
A41D13/11 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021038768
(22)【出願日】2021-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】500488915
【氏名又は名称】ホクユーメディックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182084
【弁理士】
【氏名又は名称】中道 佳博
(72)【発明者】
【氏名】北尾 哲勇
(57)【要約】
【課題】 日常生活において安全かつ経済的に装着と取り外しとを繰り返すことのできる、衛生マスクおよびその製造方法を提供すること。
【解決手段】 本発明の衛生マスクは、左端部に第1の耳掛けヒモを有する左側マスク部材と、右端部に第2の耳掛けヒモを有する右側マスク部材とを備え、左側マスク部材と右側マスク部材とが境界部分を介して一体化されており、左側マスク部材および右側マスク部材にはともに幅方向に沿って山折りプリーツ部および谷折りプリーツ部が交互に配置されている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛生マスクであって、
左端部に第1の耳掛けヒモを有する左側マスク部材と、右端部に第2の耳掛けヒモを有する右側マスク部材とを備え、
該左側マスク部材と該右側マスク部材とが境界部分を介して一体化されており
該左側マスク部材および該右側マスク部材にはともに、幅方向に沿って少なくとも1つの山折りプリーツ部および少なくとも1つの谷折りプリーツ部が交互に配置されている、衛生マスク。
【請求項2】
前記境界部分を介して前記左側マスク部材の前記谷折りプリーツ部と前記右側マスク部材の前記山折りプリーツ部とが接続されている、請求項1に記載の衛生マスク。
【請求項3】
前記境界部分を介して前記左側マスク部材の前記山折りプリーツ部と前記右側マスク部材の前記谷折りプリーツ部とが接続されている、請求項2に記載の衛生マスク。
【請求項4】
前記境界部分を介して前記左側マスク部材の前記谷折りプリーツ部と前記右側マスク部材の前記谷折りプリーツ部とが接続されている、請求項1に記載の衛生マスク。
【請求項5】
前記境界部分を介して前記左側マスク部材の前記山折りプリーツ部と前記右側マスク部材の前記山折りプリーツ部とが接続されている、請求項4に記載の衛生マスク。
【請求項6】
前記境界部分にウエルドラインが形成されている、請求項1から5のいずれかに記載の衛生マスク。
【請求項7】
前記第1の耳掛けヒモと前記第2の耳掛けヒモとの間に着脱可能な首掛けヒモが設けられている、請求項1から6のいずれかに記載の衛生マスク。
【請求項8】
衛生マスクの製造方法であって、
左側布帛部材に、幅方向に沿って少なくとも1つの山折りプリーツ部と少なくとも1つの谷折りプリーツ部とが交互に配置された左側マスク部材を得る工程、
右側布帛部材に、幅方向に沿って少なくとも1つの山折りプリーツ部と少なくとも1つの谷折りプリーツ部とが交互に配置された右側マスク部材を得る工程、
該左側マスク部材の接合用端部と該右側マスク部材の接合用端部とを接合する工程、
を包含する、方法。
【請求項9】
前記左側マスク部材の接合用端部と前記右側マスク部材の接合用端部との接合が溶着により行われる、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は衛生マスクおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行に伴って、感染症予防および/または感染拡大の防止の観点から、医療従事者に加えて一般市民にも衛生用マスク(以下、衛生マスクという)の装着が提唱されている。
【0003】
衛生マスクは、一時期の急激な需要の高まりから我が国市場において不足していたが、業界内外の幅広い分野に亘る企業の参画を経て、徐々に生産規模が拡大され、安定供給が期待できる時期に達している。こうした衛生マスクには、医療従事者の使用を想定して開発された医療用のもの(例えばN95マスクやサージカルマスク)、種々の不織布を用いた使い捨てのもの、洗濯による繰り返し使用を可能にしたもの、特殊素材を用いた接触冷感性のもの、保湿成分などの有効成分を配合したもの、ホビーを兼ねた手芸用キットなど多岐に亘る製品が開発されている。
【0004】
その一方で、衛生マスクの装着が広く浸透するにつれ、従来では想定していなかったような日常生活での問題点が生じるようになった。例えば、多人数が集まる会食の場でも互いの感染防止の観点から衛生マスクの装着が所望されるが、飲食する際には当該マスクを取り外し、会話を行う際は再び装着しなければならないという点である。使用中の衛生マスクの外側表面には各種ウイルスや細菌、他の汚染物が付着している可能性が考えられる。これに対し、取り外しの際にこの外側表面を触ったり、または外側表面が人の口鼻に直接接する内側表面に接触すると、再度これを装着した人はこれらウイルス等の感染リスクを高めることになる。
【0005】
あるいは、一旦取り外した後は再び装着せず、新たな衛生マスクに置き換えることも考えられる。しかし、こうした運用は、多数の衛生マスクを持参できることが前提であり、上記会食のような会話と飲食とを短い時間間隔で繰り返すような状況において現実的な解決策とは言えない。
【0006】
このため、日常生活において衛生マスクの取り外しを安全かつ経済的に行うことができる技術開発が所望されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題の解決を課題とするものであり、その目的とするところは、日常生活において安全かつ経済的に装着と取り外しとを繰り返すことのできる、衛生マスクおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、衛生マスクであって、
左端部に第1の耳掛けヒモを有する左側マスク部材と、右端部に第2の耳掛けヒモを有する右側マスク部材とを備え、
該左側マスク部材と該右側マスク部材とが境界部分を介して一体化されており、
該左側マスク部材および該右側マスク部材にはともに、幅方向に沿って少なくとも1つの山折りプリーツ部および少なくとも1つの谷折りプリーツ部が交互に配置されている、衛生マスクである。
【0009】
1つの実施形態では、上記境界部分を介して上記左側マスク部材の上記谷折りプリーツ部と上記右側マスク部材の上記山折りプリーツ部とが接続されている。
【0010】
さらなる実施形態では、上記境界部分を介して上記左側マスク部材の上記山折りプリーツ部と上記右側マスク部材の上記谷折りプリーツ部とが接続されている。
【0011】
1つの実施形態では、上記境界部分を介して上記左側マスク部材の上記谷折りプリーツ部と上記右側マスク部材の上記谷折りプリーツ部とが接続されている。
【0012】
さらなる実施形態では、上記境界部分を介して上記左側マスク部材の上記山折りプリーツ部と上記右側マスク部材の上記山折りプリーツ部とが接続されている。
【0013】
1つの実施形態では、上記境界部分にウエルドラインが形成されている。
【0014】
1つの実施形態では、上記第1の耳掛けヒモと上記第2の耳掛けヒモとの間に着脱可能な首掛けヒモが設けられている。
【0015】
本発明はまた、衛生マスクの製造方法であって、
左側布帛部材に、幅方向に沿って少なくとも1つの山折りプリーツ部と少なくとも1つの谷折りプリーツ部とが交互に配置された左側マスク部材を得る工程、
右側布帛部材に、幅方向に沿って少なくとも1つの山折りプリーツ部と少なくとも1つの谷折りプリーツ部とが交互に配置された右側マスク部材を得る工程、
該左側マスク部材の接合用端部と該右側マスク部材の接合用端部とを接合する工程、
を包含する、方法である。
【0016】
1つの実施形態では、上記左側マスク部材の接合用端部と上記右側マスク部材の接合用端部との接合は溶着により行われる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、汚染面と清浄面とが互いに接触することなく、簡便に折り畳むことができる。さらに、完全に折り畳んだ後は、コンパクトなサイズとなり携帯性にも優れている。本発明の衛生マスクは、感染症予防のためマスクのほかファッションマスクとしても有用である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の衛生マスクの一例を説明するための図であって、当該マスクの正面図である。
図2図1に示す本発明の衛生マスクのA-A断面図であって、(a)は当該衛生マスクを構成する右側マスク部材が幅方向に広げられた状態を示す断面図であり、(b)は、当該衛生マスクを構成する右側マスク部材が幅方向に押し縮められた状態を示す断面図である。
図3図1に示す本発明の衛生マスクを折り畳む手順の一例について説明するための模式図である。
図4図1に示す本発明の衛生マスクの製造手順の一例について説明するための模式図である。
図5】本発明の衛生マスクの他の例を説明するための図であって、当該マスクの正面図である。
図6図5に示す本発明の衛生マスクを折り畳む手順の一例について説明するための模式図である。
図7図5に示す本発明の衛生マスクの製造手順の一例について説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について詳述する。
【0020】
図1は、本発明の衛生マスクの一例を説明するための図である。
【0021】
本発明の衛生マスク100は、左側マスク部材102と右側マスク部材104とを備える。
【0022】
左側マスク部材102は左端部106に第1の耳掛けヒモ108を有し、右側マスク部材104は右端部110に第2の耳掛けヒモ112を有する。第1の耳掛けヒモ108および第2の耳掛けヒモ112いずれも、ナイロン、ポリエステル、ポリウレタン、ゴムなどの伸縮性に富む材料で構成されている。
【0023】
第1の耳掛けヒモ108は、一端114が左側マスク部材102の左端部106の上方部分に溶着、接着などの当業者に公知の手段を用いて接続されており、他端118が左側マスク部材102の左端部106の下方部分に溶着、接着などの当業者に公知の手段を用いて接続されている。第2の耳掛けヒモ112は、一端122が右側マスク部材104の右端部110の上方部分に溶着、接着などの当業者に公知の手段を用いて接続されており、他端126が右側マスク部材104の右端部110の下方部分に溶着、接着などの当業者に公知の手段を用いて接続されている。
【0024】
図1では、左側マスク部材102と第1の耳掛けヒモ108とはそれぞれが独立した別部材として記載され、かつ右側マスク部材104と第2の耳掛けヒモ112とはそれぞれが独立した別部材として記載されているが、本発明はこのような構成のみに限定されない。例えば、左側マスク部材102および第1の耳掛けヒモ108、ならびに右側マスク部材104および第2の耳掛けヒモ112は、それぞれが1枚の(単層または複数層で構成される)不織布を打ち抜き裁断することにより一体的に構成されるものであってもよい。
【0025】
本発明の衛生マスク100では、左側マスク部材102と右側マスク部材104とが境界部分130を介して一体化されている。具体的には、境界部分130は、左側マスク部材102の接合用端部132と右側マスク部材104の接合用端部134とを互いに接合することにより構成されている。さらに、接合用端部132と接合用端部134との接合が後述の溶着により行われる場合、境界部分130には、左側マスク部材102および右側マスク部材104の各々の幅方向に沿ってウエルドラインが形成されている。
【0026】
さらに本発明の衛生マスク100において、左側マスク部材102には、幅方向沿って少なくとも1つの山折りプリーツ部142と少なくとも1つの谷折りプリーツ部144とが交互に配置されている。一方、右側マスク部材104には、幅方向に沿って少なくとも1つの山折りプリーツ部146と少なくとも1つの谷折りプリーツ部148とが交互に配置されている。なお、図1では見易さのため、山折りプリーツ部142,148を実線で表し、そして谷折りプリーツ部144,148を破線で表している。
【0027】
図1に示すように、左側マスク部材102と右側マスク部材104とは、幅方向の上方から下方にかけて山折りプリーツ部142,146と谷折りプリーツ部144,148との配置順序が異なっており、両者は境界部分130に対して左右非対称である。
【0028】
ここで、本発明の衛生マスク100を構成する右側マスク部材104に着目すると、例えば図2の(b)に示すように、右側マスク部材104の外側面には、1つの山折りプリーツ部146とそれに隣接する山折りプリーツ部146との間に、斜め下方を向く第1の外側ジャバラ面152aと、谷折りプリーツ部148と、斜め上方を向く第2の外側ジャバラ面152bとがこの順に配置されている。一方、右側マスク部材104の内側面には、谷折りプリーツ部148に対応して内側山折りプリーツ部146’が形成されており、山折りプリーツ部146に対応して内側谷折りプリーツ部148’が形成されている。そして、1つの内側山折りプリーツ部146’とそれに隣接する内側山折りプリーツ部146’との間には、斜め下方を向く第1の内側ジャバラ面152’aと、内側谷折りプリーツ部148’と、斜め上方を向く第2の内側ジャバラ面152’bとがこの順に配置されている。
【0029】
図2の(a)において、右側マスク部材104の外側面(すなわち、山折りプリーツ部146、第1の外側ジャバラ面152a、谷折りプリーツ部148および第2の外側ジャバラ面152bが設けられている面)は外気に接する面であり、衛生マスクの着用によって各種ウイルスや細菌、汚染物が接触、吸着または捕捉される面である。これに対し、右側マスク部材104の内側面(すなわち、内側山折りプリーツ部146’、第1の内側ジャバラ面152’a、内側谷折りプリーツ部148’、第2の内側ジャバラ面152’bが設けられている面)は装着者の顔面の一部(例えば、口、鼻、皮膚)に接する面である。ここで、右側マスク部材104(または本発明の衛生マスク100)を図2の(a)の2つの矢印で示上下の方向に押圧すると、当該右側マスク部材104(または本発明の衛生マスク100)は図2の(b)に示すように幅方向に押し縮められ、全体の嵩を減らすことができる。そして、右側マスク部材104をさらに押し縮めると、上記第1の外側ジャバラ面152aと第2の外側ジャバラ面152bとが互いに接し、かつ第1の内側ジャバラ面152’aと第2の内側ジャバラ面152’bとが互いに接して、当該右側マスク部材104(または本発明の衛生マスク100)を完全に折り畳むことができる。これにより、ウイルス等の汚染のおそれがある右側マスク部材104の外側面は、装着者と接するための清潔さが求められる右側マスク部材104の内側面と接触するリスクから解放される。
【0030】
図2の(a)および(b)では、図1の衛生マスク100を構成する右側マスク部材104について説明したが、左側マスク部材102もまた上記と同様に、ウイルス等の汚染のおそれがある左側マスク部材102の外側面は、装着者と接するための清潔さが求められる左側マスク部材102の内側面と接触するリスクから解放される。
【0031】
さらに図2の(a)および(b)では、右側マスク部材104が単層の部材で構成されている場合について説明したが、本発明の衛生マスク100を構成する左側マスク部材102および右側マスク部材104はともに2つ以上の層でなる積層部材で構成されていてもよい。左側マスク部材102および右側マスク部材104がともに2つ以上の層でなる積層部材で構成されている場合、外側の層には、例えば、各種ウイルスや細菌、汚染物を吸着、吸収または捕捉可能な所定の材料が使用され、内側の層には例えば、装着者の皮膚に対して刺激が少ない、または保湿成分等を含む所定の材料が使用されていてもよい。
【0032】
再び図1を参照すると、本発明の衛生マスク100では、左側マスク部材102の谷折りプリーツ部144と右側マスク部材104の山折りプリーツ部146とが境界部分130を介して接続されていることが好ましい。さらに、左側マスク部材102の山折りプリーツ部142と右側マスク部材104の谷折りプリーツ部148とが境界部分130を介して接続されていることが好ましい。左側マスク部材102および右側マスク部材104の山折りプリーツ部142,146および谷折りプリーツ部144,148が境界部分130を介してこのような組み合わせで配置かつ接続されていることにより、後述するように衛生マスク100の内側面と、当該マスク100の外側面とは接することなく、コンパクトに折り畳むことが可能となる。
【0033】
左側マスク部材102および右側マスク部材104はいずれも柔軟性があり、各種ウイルスや細菌、汚染物を吸着、吸収または捕捉可能な材料で構成されていることが好ましい。このような材料としては、熱可塑性樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン)、植物系繊維またはセルロース系繊維(例えば、綿、リネン、ラミー、ケナフ、カポック、レーヨン、キュプラ、テンセル、リヨセルなど)、および動物系繊維(例えば、絹、ウール、カシミア、アルパカ、アンゴラなど)、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。あるいは、左側マスク部材102および右側マスク部材104は、これらの材料の繊維と他の繊維との混紡品から構成されていても。混紡品の具体的な例としては、ポリウレタン繊維とポリエステル繊維との組み合わせ、ポリウレタン繊維と上記植物系繊維またはセルロース系繊維との組み合わせ、ポリウレタン繊維と上記動物系繊維との組み合わせ、ポリエステル繊維と上記植物系繊維またはセルロース系繊維との組み合わせ、ポリエステル繊維と上記動物系繊維との組み合わせが挙げられる。
【0034】
左側マスク部材102および右側マスク部材104は、これらの材料を用いた不織布、織布またはニットのいずれの形態を有するものであってもよい。
【0035】
さらに、本発明の衛生マスク100においては、第1の耳掛けヒモ108と第2の耳掛けヒモ112との間に着脱可能な首掛けヒモ150が設けられていてもよい。図1に示す実施形態では、首掛けヒモ150は、その両端に、折り返しにより面的な着脱を可能とする面ファスナーを取り付けた接続端152,154を備える。接続端152,154の面ファスナー設置面に、第1の耳掛けヒモ108と第2の耳掛けヒモ112を配置してそれぞれ挟み、これらについて面ファスナーを折り返して固定することにより、衛生マスク100を装着者の首の周りに首掛けヒモ150を掛けた状態で装着することができる。これにより、会食中に食事をする場合は、装着者の耳から第1の耳掛けヒモ108および第2の耳掛けヒモ112を外したとしても、衛生マスク100は装着者の首にぶら下がった状態にすることができ、会話をする場合は、改めて第1の耳掛けヒモ108および第2の耳掛けヒモ112を装着者の耳に引っ掛けることにより簡便にマスクの装着を行うことができる。
【0036】
首掛けヒモ150を構成する材料は、特に限定されないが、ナイロン、ポリエステル、ポリウレタン、ゴムなどが挙げられる。上記では接続端152,154に面ファスナーを配置する場合について説明したが、面ファスナーに代えて、例えばスナップボタンのような当該分野において公知の固定具が用いられてもよい。
【0037】
図3は、図1に示す本発明の衛生マスク100を折り畳む手順の一例について説明するための模式図である。なお、図3では、理解を容易にするために、衛生マスク100を構成する第1の耳掛けヒモ、第2の耳掛けヒモ、および首掛けヒモを省略し、左側マスク部材102および右側マスク部材104に設けられた山折りプリーツ部142,146および谷折りプリーツ部144,148の数を減らして記載されていることに留意されたい。
【0038】
図3の(a)では、まず境界部分130を中心にして、右側マスク部材104の右端部110が、左側マスク部材102の左端部106と重なり、左側マスク部材102および右側マスク部材104の内側面同士が接するように(すなわち、左側マスク部材102および右側マスク部材104の外側面が外側に現れるように)折り返される。次いで、折り返された左側マスク部材102および右側マスク部材104をそれぞれの山折りプリーツ部および谷折りプリーツ部の各折り目に沿って幅方向に押し縮めるようにして折り畳まれる(図3の(b))。
【0039】
このようにして本発明の衛生マスク100をコンパクトに折り畳むことができる(図3の(c))。折り畳まれた衛生マスク100は、装着者の顔に触れる内側面は、折り畳みの際に各種ウイルスや細菌、汚染物と接触または吸着等するおそれのある外側面と接するリスクから解放される。
【0040】
図1に示す本発明の衛生マスク100は例えば図4に示すようにして製造することができる。なお、図4は、本発明の衛生マスク100を製造するにあたり、左側マスク部材102および右側マスク部材104がそれぞれ熱可塑性樹脂の繊維で構成される不織布から構成される場合について説明する。
【0041】
まず、図4の(a)に示すように熱可塑性樹脂の繊維で構成される不織布から、左側布帛部材162および右側布帛部材164がそれぞれ裁断される。図4の(a)において、左側布帛部材162の接合用端部166および右側布帛部材164の接合用端部168は、後述の接合を行った際に、装着者の鼻および口を覆いかつ適度な立体的空間を形成できるようにそれぞれ円弧の形状を有していることが好ましい。左側布帛部材162および右側布帛部材164は、例えば製造する衛生マスク100の装着者を想定して任意の大きさ(例えば、子供用、大人用)を有していてもよい。左側布帛部材162および右側布帛部材164はまた、左右対称となるように設計されていることが好ましい。
【0042】
上記左側布帛部材162および右側布帛部材164を用いて、それぞれにプリーツ加工が施される(図4の(b))。具体的には、左側布帛部材162にプリーツ加工が施され、幅方向に沿って少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの山折りプリーツ部142と少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの谷折りプリーツ部144とが交互に配置された左側マスク部材102が作製される。一方、右側布帛部材164にプリーツ加工が施され、幅方向に沿って少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの山折りプリーツ部146と少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの谷折りプリーツ部148とが交互に配置された右側マスク部材104が作製される。左側布帛部材162および右側布帛部材164に施されるプリーツ加工は、例えば、左側布帛部材162の左端部106から接合用端部166にかけて、および右側布帛部材164の右端部110から接合用端部168にかけて、それぞれ徐々に放射状に広がるように山折りプリーツ部142,146および谷折りプリーツ部144,148が設けられることが好ましい。境界部分130に近づくほど、1つの山折りプリーツ部142,146とそれに隣接する谷折りプリーツ部144,148との間隔が広くなり、装着者が衛生マスク100を装着した際に当該装着者の鼻および口の周りにより広い立体的空間を形成することができるからである。
【0043】
次いで、左側マスク部材102の接合用端部166と右側マスク部材104の接合用端部168とが接合される(図4の(c))。接合用端部166と接合用端部168との接合は、当業者に周知の手段を用い、例えば接合用端部166と接合用端部168とを溶着することによって行われる。これにより、左側マスク部材102と右側マスク部材104との間に境界部分130にウエルドラインが形成される。
【0044】
その後、図4の(d)に示すように、左側マスク部材102および右側マスク部材104のそれぞれに第1の耳掛けヒモ108および第2の耳掛けヒモ112が当業者に周知の手段を用いて取り付けられる。さらに、必要に応じて、第1の耳掛けヒモ108および第2の耳掛けヒモ112には首掛けヒモ150が固定されてもよい。
【0045】
このようにして本発明の衛生マスク100を製造することができる。
【0046】
なお、上記では、左側マスク部材102の接合用端部166と右側マスク部材104の接合用端部168との接合が行われた後に、第1の耳掛けヒモ108および第2の耳掛けヒモ112の取り付けが行われたが、本発明はこれに限定されない。例えば、左側マスク部材102の接合用端部166と右側マスク部材104の接合用端部168との接合が行われる前に、第1の耳掛けヒモ108および第2の耳掛けヒモ112がそれぞれ左側マスク部材102および右側マスク部材104の所定の位置に取り付けられ、その後当該接合用端部166と接合用端部168との接合が行われてもよい。
【0047】
図5は、本発明の衛生マスクの他の例を説明するための図であって、当該マスクの正面図である。なお、図5において図1に示す構成と同一のものには、同一の符号が付されている。
【0048】
図5に示す衛生マスク200は、右側マスク部材204に配置された山折りプリーツ部246および谷折りプリーツ部248の配置順序が、図1に示す右側マスク部材104に記載のものと異なっている点を除き、その他は同一である。
【0049】
本発明の衛生マスク200では、左側マスク部材102と右側マスク部材204とが境界部分230を介して一体化されている。具体的には、境界部分230は、左側マスク部材102の接合用端部132と右側マスク部材204の接合用端部234とを互いに接合することにより構成されている。さらに、接合用端部132と接合用端部234との接合が後述の溶着により行われる場合、境界部分230には、左側マスク部材102および右側マスク部材204の各々の幅方向に沿ってウエルドラインが形成されている。
【0050】
図5に示すように、左側マスク部材102と右側マスク部材204とは、幅方向の上方から下方にかけて山折りプリーツ部142,246と谷折りプリーツ部144,248との配置順序が同一であり、両者は境界部分230に対して左右対称である。
【0051】
図5において、本発明の衛生マスク200では、左側マスク部材102の谷折りプリーツ部144と右側マスク部材204の谷折りプリーツ部248とが境界部分230を介して接続されていることが好ましい。さらに、左側マスク部材102の山折りプリーツ部142と右側マスク部材204の山折りプリーツ部246とが境界部分230を介して接続されていることが好ましい。左側マスク部材102および右側マスク部材204の山折りプリーツ部142,246および谷折りプリーツ部144,248が境界部分230を介してこのような組み合わせで配置かつ接続されていても、後述するように衛生マスク200の内側面と、当該マスク200の外側面とは接することなく、コンパクトに折り畳むことが可能となる。
【0052】
図5に示す右側マスク部材204もまた、上記図1に示す右側マスク部材104と同様の材料で構成されている。
【0053】
図6は、図5に示す本発明の衛生マスク200を折り畳む手順の一例について説明するための模式図である。なお、図6では、理解を容易にするために、衛生マスク200を構成する第1の耳掛けヒモ、第2の耳掛けヒモ、および首掛けヒモを省略し、左側マスク部材102および右側マスク部材204に設けられた山折りプリーツ部142,246および谷折りプリーツ部144,248の数を減らして記載されていることに留意されたい。
【0054】
図6の(a)では、まず左側マスク部材102および右側マスク部材204をそれぞれの山折りプリーツ部および谷折りプリーツ部の各折り目に沿って幅方向に押し縮めるようにして折り畳まれる。この状態で、左側マスク部材102および右側マスク部材204の各内側面は、外側面と接することなく折り畳まれる。次いで、図3の(b)に示すように、境界部分230を中心にして、右側マスク部材204の右端部210が、左側マスク部材102の左端部106と重なるように折り返される。
【0055】
このようにして本発明の衛生マスク200をコンパクトに折り畳むことができる(図6の(c))。折り畳まれた衛生マスク200は、装着者の顔に触れる内側面は、折り畳みの際に各種ウイルスや細菌、汚染物と接触または吸着等するおそれのある外側面と接するリスクから解放される。
【0056】
図5に示す本発明の衛生マスク100は例えば図7に示すようにして製造することができる。なお、図7は、本発明の衛生マスク200を製造するにあたり、左側マスク部材102および右側マスク部材204がそれぞれ熱可塑性樹脂の繊維で構成される不織布から構成される場合について説明する。
【0057】
図4は、本発明の衛生マスク100を製造するにあたり、左側マスク部材102および右側マスク部材104がそれぞれ熱可塑性樹脂の繊維で構成される不織布から構成される場合について説明するものである。
【0058】
まず、図7の(a)に示すように熱可塑性樹脂の繊維で構成される不織布から、左側布帛部材162および右側布帛部材264がそれぞれ裁断される。図7の(a)において、右側布帛部材264の接合用端部168もまた、左側布帛部材162の接合用端部166と接合した際に、装着者の鼻および口を覆いかつ適度な立体的空間を形成できるようにそれぞれ円弧の形状を有していることが好ましい。左側布帛部材162および右側布帛部材264はまた、左右対称となるように設計されていることが好ましい。
【0059】
上記左側布帛部材162および右側布帛部材264を用いて、それぞれにプリーツ加工が施される(図7の(b))。具体的には、左側布帛部材162に図4の(b)と同様にしてプリーツ加工が施され、左側マスク部材102が作製される。一方、右側布帛部材264にもプリーツ加工が施され、幅方向に沿って少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの山折りプリーツ部246と少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの谷折りプリーツ部248とが交互に配置された右側マスク部材204が作製される。右側布帛部材264に施されるプリーツ加工もまた、右側布帛部材264の右端部210から接合用端部268にかけて、徐々に放射状に広がるように山折りプリーツ部246および谷折りプリーツ部248が設けられることが好ましい。境界部分230に近づくほど、1つの山折りプリーツ部246とそれに隣接する谷折りプリーツ部248との間隔が広くなり、装着者が衛生マスク200を装着した際に当該装着者の鼻および口の周りにより広い立体的空間を形成することができるからである。
【0060】
次いで、左側マスク部材102の接合用端部166と右側マスク部材204の接合用端部268とが接合される(図7の(c))。接合用端部166と接合用端部268との接合もまた、好ましくは溶着することによって行われる。これにより、左側マスク部材102と右側マスク部材204との間に境界部分230にウエルドラインが形成される。
【0061】
その後、図7の(d)に示すように、左側マスク部材102および右側マスク部材204のそれぞれに第1の耳掛けヒモ108および第2の耳掛けヒモ112が当業者に周知の手段を用いて取り付けられる。さらに、必要に応じて、第1の耳掛けヒモ108および第2の耳掛けヒモ112には首掛けヒモ150が固定されてもよい。
【0062】
このようにして本発明の衛生マスク200を製造することができる。
【0063】
なお、上記では、左側マスク部材102の接合用端部166と右側マスク部材204の接合用端部268との接合が行われた後に、第1の耳掛けヒモ108および第2の耳掛けヒモ112の取り付けが行われたが、本発明はこれに限定されない。例えば、左側マスク部材102の接合用端部166と右側マスク部材204の接合用端部268との接合が行われる前に、第1の耳掛けヒモ108および第2の耳掛けヒモ112がそれぞれ左側マスク部材102および右側マスク部材204の所定の位置に取り付けられ、その後当該接合用端部166と接合用端部268との接合が行われてもよい。
【0064】
本発明の衛生マスクは、簡便に折り畳むことができ、装着者の顔に触れる内側面は、折り畳みの際に各種ウイルスや細菌、汚染物と接触または吸着等するおそれのある外側面と接することがない。これにより、会食時のような食事と会話とを交互に行う際の衛生マスクの装着および取り外しの際に、衛生マスクの内側面と外側面とが安易に接触することがなく、装着者は安心して食事と会話を楽しむことができる。また、左側マスク部材および右側マスク部材のそれぞれに設けられた山折りプリーツ部および谷折りプリーツ部によって規則正しい折り畳みが可能となり、折り畳み後のサイズもコンパクトであり、持ち運びや廃棄の際にも有用である。
【符号の説明】
【0065】
100,200 衛生マスク
102 左側マスク部材
104,204 右側マスク部材
106 左端部
108 第1の耳掛けヒモ
110 右端部
112 第2の耳掛けヒモ
130,230 境界部分
132,134,166,168,234 接合用端部
142,146,246 山折りプリーツ部
144,148,248 谷折りプリーツ部
146’ 内側山折りプリーツ部
148’ 内側谷折りプリーツ部
150 首掛けヒモ
152,154 接続端
152a 第1の外側ジャバラ面
152b 第2の外側ジャバラ面
152’a 第1の内側ジャバラ面
152’b 第2の内側ジャバラ面
162 左側布帛部材
164,264 右側布帛部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7