(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138747
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】乾燥路面用車載式塩分濃度の測定装置及び測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/17 20060101AFI20220915BHJP
G01N 21/552 20140101ALI20220915BHJP
B60P 3/00 20060101ALN20220915BHJP
【FI】
G01N21/17 B
G01N21/552
B60P3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021038808
(22)【出願日】2021-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】592070579
【氏名又は名称】山田技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087169
【弁理士】
【氏名又は名称】平崎 彦治
(72)【発明者】
【氏名】三上 尚人
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 英雄
(72)【発明者】
【氏名】中野 幸広
(72)【発明者】
【氏名】酢谷 浩
(72)【発明者】
【氏名】山田 健雄
(72)【発明者】
【氏名】中山 隆之
(72)【発明者】
【氏名】徳永 透
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB05
2G059BB08
2G059CC02
2G059DD04
2G059DD12
2G059EE02
2G059FF20
(57)【要約】
【課題】 車両走行中に路面上の水分に含まれる塩分濃度を計測する装置の提供。
【解決手段】 計測装置は塩分濃度センサ2、車両の前方部と後方部に設けた散水ノズル4,5、貯水タンクをつなげた散水ユニット3、散水の制御と計測データの演算を行うエレクトリック・コントロール・ユニット(以下、ECU1という)を組み合わせ、上記塩分濃度センサ2は車輪後方の位置に取付けている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両走行中に路面上の水分に含まれる塩分濃度を計測する装置において、該計測装置は塩分濃度センサ、車両の前方部と後方部に設けた散水ノズル、貯水タンクをつなげた散水ユニット、散水の制御と計測データの演算を行うエレクトリック・コントロール・ユニット(以下、ECUという)を組み合わせ、上記塩分濃度センサは車輪後方の位置に取付けたことを特徴とする乾燥路面用車載式塩分濃度の測定装置。
【請求項2】
上記車両前方部の散水ノズルは路面に向いて散水する方向に配置され、後方部の散水ノズルはタイヤに向けて散水する方向に配置した請求項1記載の乾燥路面用車載式塩分濃度の測定装置。
【請求項3】
車両走行中に路面上の水分に含まれる塩分濃度を計測する計測方法において、上記車両には、塩分濃度センサ、該車両の前方部と後方部には散水ノズル、貯水タンクをつなげた散水ユニット、散水の制御と計測データの演算を行うエレクトリック・コントロール・ユニット(以下、ECUという)を搭載し、そして塩分濃度センサは車輪後方の位置に取付け、上記散水ノズルから水を散水して路面を濡らし、走行車両の車輪の回転にて跳ね上げられる水を塩分濃度センサに当てて含まれている塩分の濃度を計測することを特徴とする乾燥路面の塩分濃度を計測する計測方法。
【請求項4】
計測した路面の塩分濃度量が道路の安全に必要な量であるか否かの判定をし、GPS座標に基づいて路面の安全性を色分けし、凍結防止剤の散布量の基準とする請求項3記載の乾燥路面の塩分濃度を計測する計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乾燥した路面上に残留する塩分濃度を測定する装置であって、車両に搭載した装置によって走行しながら測定することが出来る装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冬期において、道路管理者は車両走行の安全を確保するために、路面凍結防止のために固形の塩または塩水を凍結防止剤として路面に散布している。しかし、塩は道路構造物の劣化促進や道路周辺の農作物および植生への影響があるため、車両走行の安全確保に必要最低限を散布することが望ましい。その散布量を管理するシステムとして、路面上の塩水の濃度を連続して計測できる車載式塩分濃度計測システム(以下、濃度センサ)が道路管理者に広く使用されている。
【0003】
しかし、濃度センサは水分がない路面では計測できないため(濃度は溶液のみ計測可能)、凍結防止剤散布後に路面が乾燥し、水分が蒸発して結晶として残った塩を計測することができない。したがって、道路管理者は乾燥した路面に塩が残っていることが目視で確認できても、安全面を考慮して凍結防止剤を追加で散布している。
【0004】
特許第4458248号(特開2005-345175号)に係る「塩分濃度の測定方法、塩分濃度測定装置およびその装置が搭載された車両」は、路面が乾燥している場合でも、塩分濃度の測定処理を実行できるようにしている。
すなわち、薬剤散布車の前輪の後方位置に、塩分濃度センサを検出面を前輪に対向させた状態で設置するとともに、前輪の前方に水撒き装置を設置する。塩分濃度センサは、内部光源からの光を検出面に導いて検出面と外界との境界で全反射させ、その全反射光を受光して前記検出面に付着した水分の塩分濃度を示す測定データを生成する。
制御装置は、水撒き装置を駆動して所定量の水分を放出させながら塩分濃度センサの測定データを取り込み、塩分濃度を測定する。さらに、制御装置は、塩分濃度の測定値に基づき、凍結防止剤の散布量を判別する。
【0005】
しかし、上記「塩分濃度の測定方法、塩分濃度測定装置」には次のような問題が残されている。
(1)過剰な散水により測定値が不正確になる。
供給する水分量を車両速度に合わせて調整する技術が使用されているため、高速走行時には過剰な散水が行われ、残留塩量が少ない路面では濃度センサが塩分濃度を検出できないほど薄まってしまう。
(2)低温路面での塩水を使用した計測は困難である。
路面温度が低い道路では塩水を撒いて計測しているが、散水する塩水の濃度が均一に作成できていないと、残留塩分濃度が正確に計測できない。
(3)微細な計測値が道路管理作業に適していない。
濃度センサで計測した塩分濃度と水分供給量をもとに算出した結果を、1平方メートル当たりの残留塩の量をグラム数で求めているが、この値は数メートル単位で変化するため、凍結防止剤散布量を調整することは困難である。
【特許文献1】特許第4458248号(特開2005-345175号)に係る「塩分濃度の測定方法、塩分濃度測定装置およびその装置が搭載された車両」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、従来の「塩分濃度の測定方法、塩分濃度測定装置」には上記のような問題がある。
本発明が解決しようとする課題はこの問題点であり、乾燥した路面において、必要最低限の水分で濃度計測が可能となり、正確に残留塩量を計測することが出来る塩分濃度の測定装置及び測定方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、乾燥した路面に水分を供給することで、残留している塩分濃度を計測し、塩の量を算出することが出来るように構成している。したがって、道路管理者に凍結防止剤散布実施の判断をするために必要なデータを提示する。そして、一連の装置は車両に搭載されていることで、走行しながら塩分濃度の測定を行うことが出来るように構成している。そこで、車両には次のような装置を装着している。
【0008】
[濃度センサ]
濃度センサは、少なくとも1つのタイヤの後部の車体底部に設置する。濃度センサは、湿潤状態の路面を車両が走行した時に車輪で跳ね上げられた道路表面の水分を受けて、その水分の塩分濃度を計測するものである。塩分濃度は毎秒計測され、計測値はECUに送られる。
【0009】
[ECU]
ECUは、車両の内部に設置され、散水を制御し、濃度センサ計測結果を取得し、GPS座標取得を行うことが出来る。そして、散水量と計測した濃度から残留塩量を算出し、路面の安全を確保できる塩分量があるか否かの判定を行い、電子データを記録することができる。また、記録した電子データを伝送装置を介して、外部に送信することもできる。
【0010】
[散水ユニット]
散水ユニットは、貯水タンクと散水ノズルおよび散水スイッチを一組として構成した装置である。上記貯水タンクは車内荷室に設置し、散水ノズルは濃度センサを後方に取り付けたタイヤの前方の車底部に設置する。散水ノズルは前方ノズルと後方ノズルの二組あり、前方ノズルは残留塩を溶解するためにタイヤから前方に離れた位置に設置し、ノズルは路面に垂直に向けている。
後方ノズルはタイヤが跳ね上げる水の量を増やすためにタイヤ近くの前方に設置し、ノズルの角度をタイヤの進行方向外周面に水が当たるように路面に対して斜めに向けられる。助手席にはECUに接続された散水スイッチがあり、散水スイッチを押すと、ECUから散水ユニットに散水指示が出され、貯水タンクの水が二組の散水ノズルに送られる。 前方ノズルはタイヤ前方の路面に向けて、後方ノズルはタイヤに向けて同時に所定量の水を必要とする時間散水する。散水される水量は濃度計測に必要最低限の量であり、路面温度が低い場所でも車両走行の安全に影響が出ないため、道路上の残留塩量計測場所に制限はない。
【発明の効果】
【0011】
この発明により、乾燥路面でも走行しながら濃度センサで塩分濃度の計測が可能となり、以下の効果がある。
(1)タイヤ前方の路面と後方タイヤの進行方向外周面の両方に同時に散水することで、必要最低限の水量で濃度計測が可能となり、正確に残留塩量を計測できる。
本発明では、前方ノズルと後方ノズルの両ノズルを使用して水を散水することで、前方ノズルで路面を湿潤状態にすることが出来、後方ノズルの散水と合わせて効率よく塩分濃度を計測出来、正しい残留塩量を知ることが出来る。
(2)計測した濃度から算出する残留塩量を、安全性が確保できる塩分量の閾値で区別して提示し、さらにGPS座標により位置を明確にできるため、道路管理者は凍結防止剤散布を必要とする路面に適切に行いやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】乾燥路面の塩分濃度の測定装置を搭載した車両の具体例。
【
図2】塩分濃度の測定システムを表すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は本発明に係る実施例であり、走行する車両に搭載した場合を示している。同図の1はECU(エレクトリック・コントロール・ユニット)、2は塩分濃度センサ、3は散水ユニット、4は後方ノズル、5は前方ノズル、6は散水スイッチをそれぞれ表している。
本発明に係る「乾燥路面用車載式塩分濃度の測定システム及び測定方法」は、車両に組み込まれて構成され、所定の道路を走行しながら塩分濃度を測定することが出来る。
【0014】
上記車両の前方側には前方ノズル5が取付けられ、後方側には後方ノズル4が取付けられ、これら両ノズル5,4から水を散水することが出来る。散水する水は該車両に設けている散水ユニットを構成している散水タンクから供給され、散水した水によって路面が濡れ、路面に残留している塩は溶解して塩水が路面に作られる。
そして、該塩水を塩分濃度センサによって計測して含まれている塩分濃度を知ることが出来る。
【0015】
ところで、車両を走行しながら塩分濃度を計測することになるが、主な工程は次のように行われる。
車両には運転手及び作業者の2名が乗車して計測を行う。
(1)車両走行中に路面の残留塩を計測する地点を通過する場合、同乗作業者が散水スイッチ6を押し、ECU1に散水指令を出す。
(2)ECU1は散水ユニット3に所定量の水を一定時間散水する指令を出す。
(3)散水ユニット3は車両に搭載され、前方ノズル5と後方ノズル4に貯水タンクから水を送り、各ノズル5,4から散水させる。
(4)前方ノズル5からの散水により路面の残留塩は溶解し、塩水が路面上に作られる。
(5)前方ノズル5から散水される水にて路面に作られた塩水、および後方ノズル4からタイヤ進行方向外周面に撒かれた水はタイヤに巻き込んで後方に跳ね上げられる。この時、後方ノズル4からの散水が加わって、後方に跳ね上げる塩水の量が増加される。
(6)後方タイヤによって跳ね上げられた塩水はタイヤ後方に設置された塩分濃度センサ2に付着する。
(7)塩分濃度センサ2は付着した水の塩分濃度を計測し、ECU1にその値を送信する。
(8)ECU1では両ノズル5,4から散水した水量と計測した塩分濃度から路面の残留塩をg/m
2で算出し、あらかじめ定められた「路面の安全が確保できる塩分量(g/m
2)の閾値」と比較し、残留塩が多いか少ないかの判定を行う。
(9)ECU1は判定結果にGPS座標位置をつけて、その電子データを記録する。すなわち、各路面の残留塩がデータにて記録される。
(10)さらにECU1は電子データを無線伝送装置を使用してサーバーに送信する。
(11)サーバーは受信した電子データをもとに、塩分量が多いか少ないかを色分けし、GPS座標を使用して地図上に残留塩計測を行った場所に表示することもできる。
すなわち、車両が走行して計測することで、地図上に塩分量を色分けして表示することが可能であり、道路管理者は凍結防止剤を散布する道路が一目で分かる。また、色分けした道路地図に基づいて凍結防止剤を自動散布することが出来る。
図2は本発明の本発明に係る「乾燥路面用車載式塩分濃度の測定方法」を表すフローチャートである。
【符号の説明】
【0016】
1 ECU
2 塩分濃度センサ
3 散水ユニット
4 後方ノズル
5 前方ノズル
6 散水スイッチ