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特開2022-138774内燃機関のバルブタイミング制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138774
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】内燃機関のバルブタイミング制御装置
(51)【国際特許分類】
   F01L 1/356 20060101AFI20220915BHJP
   F01L 1/34 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
F01L1/356 E
F01L1/34 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021038852
(22)【出願日】2021-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100205682
【弁理士】
【氏名又は名称】高嶋 一彰
(72)【発明者】
【氏名】塩脇 大介
【テーマコード(参考)】
3G018
【Fターム(参考)】
3G018BA33
3G018CA19
3G018DA25
3G018DA73
3G018DA81
3G018FA01
3G018FA07
3G018GA14
3G018GA17
3G018GA27
(57)【要約】
【課題】捩りコイルばねによるベーンロータの摩耗の発生を抑制できる内燃機関のバルブタイミング制御装置を提供する。
【解決手段】外周に回転力が伝達される複数の歯部13bを一体に有し、かつ軸方向の一端からカムシャフト2方向に延びた支持部18を一体に有する端壁部13をするハウジング5と、ハウジングの内部に相対回転可能に配置され、ロータ部21の軸方向の一端部がハウジングからカムシャフト方向に突出した円筒部21bを有するベーンロータ7と、支持部の内面と円筒部の外面との間に配置されてハウジングに対してベーンロータを進角方向へ付勢する捩りコイルばね51と、を備え、コイル状部位51cの外周縁の一部が当接支持される支持部の内面18aの硬度を、突出部の外面19aの硬度よりも高くした。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のハウジング本体と、前記ハウジング本体の回転軸の軸方向の一端に設けられて、外周にクランクシャフトからの回転力が伝達される動力伝達部を一体に有し、かつ軸方向の一端からカムシャフト方向に延びた支持部を一体に有する端壁部と、を備えたハウジングと、
前記ハウジングの内部に相対回転可能に配置され、軸方向の一端部が前記ハウジングから前記カムシャフト方向に突出して前記カムシャフトに固定される突出部を有し、前記突出部の外面の硬度が前記支持部の内面の硬度よりも低いベーンロータと、
前記支持部の内面と前記突出部の外面との間に配置され、一端が前記端壁部に係り止めされる一方、他端が前記ベーンロータに係り止めされ、前記一端と他端の間に有するコイル状部位の外周の一部が前記支持部の内面に当接支持され、前記ハウジングに対して前記ベーンロータを一方の回転方向へ付勢する捩りコイルばねと、
を有することを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置であって、
前記端壁部と前記動力伝達部及び前記支持部は、金属粉を圧縮して焼結した焼結金属によって一体に形成されている一方、前記ベーンロータも金属粉を圧縮して焼結した焼結金属によって形成されて、
前記支持部を含む前記端壁部の焼結密度が、前記突出部を含む前記ベーンロータの焼結密度より高いことを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置であって、
前記捩りコイルばねの硬度は、前記支持部よりも高いことを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置であって、
前記支持部は、前記端壁部の軸方向一端から前記カムシャフト方向へ突出し、内面で前記コイル状部位の外周縁を摺動可能に当接支持することを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置であって、
前記支持部は、内面が円環状の前記端壁部の周方向に沿った円弧状に形成されていることを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。
【請求項6】
請求項4に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置であって、
前記端壁部は、前記支持部と回転軸線を挟んで径方向の反対側の位置に、軸方向の一端から前記カムシャフト方向に延びて前記支持部と平行なバランス調整部を有することを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。
【請求項7】
請求項4に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置であって、
前記端壁部は、円環状の内周面から径方向内側に突出し、前記捩りコイルばねの一端が係り止めされることにより前記捩りコイルばねにねじり方向の付勢力を付与する係り止め部を有することを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置であって、
前記ハウジング本体は、内部に作動室を有すると共に、軸方向の一端が開口形成され、
前記端壁部は、前記ハウジング本体の一端開口を塞ぐと共に、外周部に前記ハウジング本体と軸方向から締結するボルトの雄ねじ部が螺着する雌ねじ孔を有し、
前記捩りコイルばねの一端は、前記係り止め部に係り止めされた状態で前記雌ねじ孔の近傍に配置されていることを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のバルブタイミング制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のベーンタイプのバルブタイミング制御装置としては、以下の特許文献1に記載されたものがある。
【0003】
このバルブタイミング制御装置は、機関の排気弁側に適用されたもので、クランクシャフトからタイミングチェーンを介して回転力が伝達されるタイミングスプロケットと、該タイミングスプロケットのハウジング内に相対回転可能に設けられて、カムシャフトの軸方向の一端部に固定されたベーンロータと、を備えている。
【0004】
ベーンロータは、ロータの軸方向一端部にカムシャフト方向に延びた円筒部を有し、この円筒部に形成されたボルト挿入孔に挿入されたカムボルトを介してカムシャフトに締結固定されている。
【0005】
捩りコイルばねは、前記円筒部の外周面に巻き付くように配置されて、一端がリアプレートに、他端がベーンロータにそれぞれ係り止めされて、前記タイミングスプロケットに対するベーンロータ(カムシャフト)の相対回転位相を進角側に付勢するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-2155号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前記ベーンロータは、一般に金属粉を圧縮して焼結する焼結金属(焼結合金)で一体に成形されている。
【0008】
前記特許文献1に記載のバルブタイミング制御装置にあっては、捩りコイルばねがベーンロータの円筒部の外周に巻き付いた状態で配置されて、両端部間のコイル状部位の内周縁の一部が円筒部の外周面に当接支持された状態になっている。したがって、ベーンロータの相対回転に伴って、捩りコイルばねが拡径、縮径変形するとコイル状部位の内周縁の一部が円筒部の外周面に当接摺動を繰り返し行われる。
これによって、円筒部の外周面が摩耗するおそれがある。
【0009】
本発明は、前記従来のバルブタイミング制御装置の技術的課題に鑑みて案出されたもので、捩りコイルばねによるベーンロータの摩耗の発生を抑制できるバルブタイミング制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、とりわけ、端壁部に設けられた支持部の内面とベーンロータの突出部の外面との間に配置され、一端が前記端壁部に係り止めされる一方、他端が前記ベーンロータに係り止めされ、前記一端と他端の間に有するコイル状部位の外周の一部が前記支持部の内面に当接支持され、前記ハウジングに対して前記ベーンロータを一方の回転方向へ付勢する捩りコイルばねと、を備え、
前記支持部の内面の硬度が、前記突出部の外面の硬度よりも高いことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、捩りコイルばねによるベーンロータの摩耗の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態におけるバルブタイミング制御装置を一部断面して示す全体概略図である。
図2】本実施形態に供されるおけるバルブタイミング制御装置の最進角側への作動状態を示す図1のA-A線断面図である。
図3】本実施形態におけるバルブタイミング制御装置の最遅角側への作動状態を示す図1のA-A線断面図である。
図4】本実施形態のバルブタイミング制御装置の主たる構成部材を示す正面図である。
図5図4のB-B線断面図である。
図6図4のC-C線断面図である。
図7】本実施形態のバルブタイミング制御装置の主たる構成部材をカムシャフト側と反対方向から視た斜視図である。
図8】本実施形態のバルブタイミング制御装置の主たる構成部材をカムシャフト側からみた斜視図である。
図9】本実施形態のバルブタイミング制御装置の主たる構成部材をカムシャフト側から視た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る内燃機関のバルブタイミング制御装置の実施形態を図面に基づいて詳述する。本実施形態では、バルブタイミング制御装置(VTC)を排気弁側の動弁装置に適用したものを示している。 なお、本発明を吸気弁側の動弁装置に適用することも可能である。
【0014】
図1は本発明の一実施形態におけるバルブタイミング制御装置を一部断面して示す全体概略図、図2は本実施形態に供されるおけるバルブタイミング制御装置の最進角側への作動状態を示す図1のA-A線断面図、図3は本実施形態におけるバルブタイミング制御装置の最遅角側への作動状態を示す図1のA-A線断面図、図4は本実施形態のバルブタイミング制御装置の主たる構成部材を示す正面図、図5図4のB-B線断面図、図6図4のC-C線断面図である。
【0015】
排気VTCは、図1図3に示すように、図外のクランクシャフトによりタイミングチェーンを介して回転力が伝達される駆動回転体であるタイミングスプロケット1(以下、スプロケット1という。)と、該スプロケット1に対して相対回転可能に設けられた排気カムシャフト2と、スプロケット1と排気カムシャフト2との間に配置されて、該両者1,2の相対回転位相を変換する位相変換機構3と、該位相変換機構3を作動させる油圧回路4とを備えている。
【0016】
スプロケット1は、位相変換機構3の一部を構成する後述のハウジング5などの複数の部材によって構成されている。
【0017】
排気カムシャフト2は、図外のシリンダヘッドにカム軸受を介して回転自在に支持されている。排気カムシャフト2は、外周面の所定位置に例えば直動型のバルブリフターを介して排気弁を開作動させる複数の駆動カムが一体に設けられている。また、排気カムシャフト2は、一端部2a側に肉厚な円環状のフランジ部2bが一体に設けられている。排気カムシャフト2の一端部2aの内部軸方向には、後述するベーンロータ7を一端部2aの先端部に軸方向から固定するカムボルト6が螺着する雌ねじ孔2cが形成されている。
【0018】
位相変換機構3は、図1図3に示すように、排気カムシャフト2の一端部2aに配置されたハウジング5と、排気カムシャフト2の一端部2aにカムボルト6によって軸方向から固定されて、ハウジング5内に相対回転自在に収容されたベーンロータ7と、ハウジング5の内周面に内方に向かって突出形成された4つのシュー8と、該各シュー8とベーンロータ7の後述する複数(本実施形態では4つ)のベーン22~25とによって隔成されたそれぞれ4つの遅角油室9及び進角油室10とを備えている。
【0019】
ハウジング5は、円筒状のハウジング本体11と、該ハウジング本体11の前端の開口を塞ぐフロントプレート12と、後端の開口を塞ぐリア側の端壁部13と、を備えている。ハウジング本体11とフロントプレート12及び端壁部13は、複数(本実施形態では4本)のボルト14によって軸方向から共締めにより一体的に結合されている。
【0020】
ハウジング本体11は、図1図3に示すように、各シュー8を除く一般部がほぼ薄肉に形成されて、内部に形成された作動室が各遅角油室9と各進角油室10とに隔成されている。各シュー8は、円周方向のほぼ等間隔位置に形成されて、それぞれが側面視ほぼ台形状に形成されている。各シュー8は、それぞれの先端部に軸方向に沿って形成されたシール溝内にほぼコ字形状のシール部材16が嵌着されている。また、各シュー8の付け根部側の内部軸方向には、図4に示すように、各ボルト14の軸部14aが挿通する4つのボルト挿通孔17が貫通形成されている。
【0021】
さらに、1つのシュー8の円周方向の一側面には、図2に示すように、第1突起面8aが一体に形成されている。この第1突起面8aは、一つの第1ベーン22の進角側への回転方向の対向側面22aが適宜当接してベーンロータ7の最大図中時計方向(進角方向)の回転位置を規制する。また、一つのシュー8は、第1突起面8aと周方向で反対側の位置に、径方向に沿った位置決め溝8cが形成されている。この位置決め溝8cは、一端部が端壁部13に予め固定された位置決め用ピン26の他端部が嵌着固定されて、ハウジング本体11と端壁部13が周方向に位置決めされている。一つのシュー8と周方向で反対側に位置に有する他のシュー8の一側面には、図3に示すように、第2突起面8bが形成されている。この第2突起面8bは、第1ベーン22の遅角側への回転方向の対向側面22aが適宜当接してベーンロータ7の最大反時計方向(遅角方向)の回転位置を規制する。
【0022】
フロントプレート12は、金属板材をプレス成形によって比較的薄肉な円板状に成形され、図1及び図4に示すように、中央に後述するロータ部21の突起状の突起部21aが挿入する大径孔12aが穿設されている。また、フロントプレート12は、外周側の円周方向のほぼ等間隔位置に各ボルト14が挿通する複数(本実施形態では4つ)のボルト挿通孔12bが貫通形成されている。
【0023】
図7は本実施形態のバルブタイミング制御装置の主たる構成部材をカムシャフト側と反対方向から視た斜視図、図8は本実施形態のバルブタイミング制御装置の主たる構成部材をカムシャフト側からみた斜視図、図9は本実施形態のバルブタイミング制御装置の主たる構成部材をカムシャフト側から視た斜視図である。
【0024】
端壁部13は、図1図4図9に示すように、金属粉を圧縮して焼結した焼結金属により一体に形成されて、フロントプレート12よりも肉厚な円板状に形成されている。端壁部13の焼結密度は、同じく焼結金属で成形されたベーンロータ7の焼結密度よりも高く設定されている。つまり、この端壁部13は、後述する複数の歯部13bの強度を確保するために焼結密度を高くする必要があるからベーンロータ7よりも高くなっている。
【0025】
端壁部13は、中央にベーンロータ7が回転自在に挿入支持される大径孔13aが形成されている。また端壁部13は、外周面の排気カムシャフト2側には動力伝達部である複数の歯部13bが一体に設けられている。この各歯部13bは、タイミングチェーンが巻回されて、クランクシャフトから回転力がハウジング5に伝達するようになっている。各歯部13bの径方向内側の外周側には、図4及び図5に示すように、各ボルト14の軸部14a先端部の雄ねじ部14bが螺着する4つの雌ねじ孔13cが円周方向のほぼ等間隔位置に貫通形成されている。
【0026】
この端壁部13の排気カムシャフト2側の後端面には、円環状溝13dが設けられている。また、端壁部13の軸方向の一端である円環状溝13dの孔縁には、排気カムシャフト2方向に延びた支持部18が一体に設けられている。
【0027】
この支持部18は、図1図4図6図8及び図9に示すように、所定の肉厚で排気カムシャフト2と平行に突出していると共に、円環状溝13dの内周面に沿った円弧状に形成されている。したがって、支持部18の内面18aも円弧面状に形成されている。この支持部18は、円弧角度範囲が端壁部13の円周方向の約30°の角度範囲になっており、内面18aに後述する捩りコイルばね51のコイル状部位51cの外周縁の一部が当接支持されている。これによって、捩りコイルばね51の姿勢を安定に保持している。
【0028】
円環状溝13dの孔縁には、支持部18と円周方向の180°の位置にバランス調整部19が一体に設けられている。このバランス調整部19は、支持部18と同じ円弧状に形成されて円弧角度範囲が約30°に形成され、かつ突出量や肉厚も同じに設定されている。したがって、このバランス調整部19は、支持部18と質量がほぼ同一になっている。バランス調整部19は、支持部18を設けたことによる端壁部13全体の重量バランスを調整する機能を有している。このバランス調整部19は、円弧状の内面19aには捩りコイルばね51のコイル状部位51cの外周縁が当接せずに所定隙間をもって非接触状態になっている。
【0029】
また、図6及び図7に示すように、円環状溝13dの内周面であって、支持部18とバランス調整部19との間には、第1係り止め部20が一体に設けられている。この第1係り止め部20は、ほぼ台形平板状に形成されて端壁部13の回転軸心方向へ突出しており、捩りコイルばね51の一端を周方向から係り止めするようになっている。また、第1係り止め部20は、図4に示すように、前記一つの雌ねじ孔13cの近傍に設けられている。
【0030】
端壁部13は、図1に示すように、外周部の内側面の所定位置に後述するロック機構の円環状のロック穴構成部31が圧入固定される固定用穴が形成されている。
【0031】
ベーンロータ7は、金属粉を圧縮して焼結された焼結金属によって一体に形成され、この焼結密度が端壁部13よりも小さくなっている。ベーンロータ7は、図1図4に示すように、内部中央に後述する通路構成部38の先端部38aが挿入される比較的大径な挿入穴7aが回転軸方向に沿って形成されている。ベーンロータ7は、径方向中央に有し、カムシャフト一端部2aに軸方向から固定されるロータ部21と、該ロータ部21の外周面の円周方向のほぼ等間隔位置に径方向へ放射状に突設された複数(本実施形態では4枚)のベーン22~25と、から構成されている。
【0032】
ロータ部21は、排気カムシャフト2と反対側の前端部には前方に延びた小径円筒状の突起部21aがフロントプレート12の大径孔12aに径方向の所定隙間をもって嵌挿されている。一方、ロータ部21の軸方向後端側には、突出部である円筒部21bが一体に設けられている。この円筒部21bは、内部軸方向に挿入穴7aと連続するボルト挿入孔21cが貫通形成されている。このボルト挿入孔21cには、挿入穴7aから内部に挿入されたカムボルト6の軸部6bが挿入される。また、円筒部21bは、先端面の中央にカムシャフト一端部2aの先端部が嵌合する嵌合穴21dが設けられている。
【0033】
なお、カムボルト6は、挿入穴7aの底面に着座する頭部6aと、該頭部6aに一体に設けられ、前記ボルト挿入孔21cに挿入する軸部6bと、該軸部6bの先端部外周に形成されて排気カムシャフト2の雌ねじ孔2cに螺着する雄ねじ部6cと、を有している。
【0034】
また、円筒部21bは、後端面が排気カムシャフト2のフランジ部2bの前端面に当接していると共に、嵌合穴21dの底面とカムシャフト一端部2aの対向先端面との間に円環状の隙間Sが形成されている。
【0035】
したがって、ベーンロータ7を、排気カムシャフト2の一端部2aにカムボルト6によって締結固定する際には、隙間Sの存在によって円筒部21bの後端面がフランジ部2bの前端面に圧接しつつカムボルト6の軸力が円筒部21bに作用することから、該ベーンロータ7を排気カムシャフト2に強固に固定することができる。
【0036】
また、ベーンロータ7は、円筒部21bの外周面に有する位置決め溝部21eに、フランジ部2bの前端に圧入固定された位置決めピン45が挿入されて排気カムシャフト2との周方向の位置決めがなされている。
【0037】
また、ベーンロータ7は、図2及び図3に示すように、ロータ部21の外周面が各シュー8の先端部上面に嵌着されたシール部材16に摺動しつつ正逆回転するようになっている。また、ロータ部21の突起部21a側には、各遅角油室9に連通する4つの遅角側油孔27と、各進角油室10に連通する4つの進角側油孔28が径方向へそれぞれ貫通形成されている。
【0038】
さらに、円筒部21bは、図1図3に示すように、後端面の円周方向の所定位置に溝状の第2係り止め部46が径方向に沿って設けられている。この第2係り止め部46は、円筒部21bの後端面から突起部21a側へ軸方向に沿った細長いスリット状に切欠形成されている。第2係り止め部46には、捩りコイルばね51の他端部51bが径方向外側から挿入されて係り止めされるようになっている。
【0039】
各ベーン22~25は、それぞれが各シュー8間に配置されていると共に、各先端面に軸方向に形成されたシール溝内にハウジング本体11の内周面11aに摺接するほぼコ字形状のシール部材29が嵌着されている。また、この各ベーン22~25は、図2及び図3に示すように、1つの第1ベーン22が最大巾に形成され、該第1ベーン22と対向する第2ベーン24の幅も比較的大きく形成され、他の2枚の第3、第4ベーン23、25の巾が第1、第2ベーン22、24よりも小さいほぼ同一の巾に設定されている。このように、各ベーン22~25の巾をそれぞれ変化させることによってベーンロータ7全体の回転バランスを均一化するようになっている。
【0040】
さらに、第1ベーン22と端壁部13との間には、ベーンロータ7の自由な回転を拘束するロック機構が設けられている。
【0041】
このロック機構は、図1図3に示すように、第1ベーン22の内部軸方向に貫通形成された摺動用孔22bと、該摺動用孔22b内に摺動自在に収容されて、端壁部13側に対して進退自在に設けられたロックピストン30と、円環状のロック穴構成部31の内側に形成されて、ロックピストン30の先端部が進出して挿入し、あるいは後退して挿入が解除されるロック穴31aと、機関の始動状態に応じてロックピストン30をロック穴31aに挿入、あるいは挿入を解除する挿脱機構と、から構成されている。
【0042】
ロックピストン30は、外形がほぼ均一のピン状に形成されていると共に、中実な先端部がロック穴31a内に軸方向から挿入するようになっている。
【0043】
ロック穴31aは、円周方向の進角油室10側に偏倚した位置に形成され、ロックピストン30が挿入した場合には、ハウジング5とベーンロータ7の相対回転位置が最大進角側の位置となるように設定されている。
【0044】
挿脱機構は、ロックピストン30の後端部とフロントプレート12の内端面との間に弾装されて、ロックピストン30を進出方向(挿入する方向)へ付勢するコイルスプリング32と、ロック穴31a内に油圧を供給してロックピストン30を後退させる図外の解除用油圧回路とから構成されている。この解除用油圧回路は、遅角油室9と進角油室10にそれぞれ選択的に供給された油圧が所定の油孔を介してロックピストン30に後退方向へ作用するようになっている。
【0045】
油圧回路4は、各遅角油室9と進角油室10に対して油圧を選択的に供給するか、あるいは各油室9,10内の油を排出するもので、図1に示すように、遅角側油孔27に連通する遅角側通路33と、各進角側油孔28に連通する進角側通路34と、該各通路33,34に電磁切換弁35を介して油圧を選択的に供給するオイルポンプ36と、各通路33,34に電磁切換弁35を介して選択的に連通するドレン通路37と、を備えている。
【0046】
両通路33、34は、先端部38aがベーンロータ7の突起部21a内に挿通された円柱状の通路構成部38の内部に形成されている。この通路構成部38は、シリンダヘッドに保持されて、先端部38aがベーンロータ7の挿入孔7a内にカムシャフト2と反対側から挿入されている。また、遅角側通路33は、先端部38aの内部に形成された径方向孔33aと、外周に形成されたグルーブ溝33bを介して各遅角側油孔27に連通されるようになっている。また、ベーンロータ7の内部には、先端部38aの先端面とカムボルト6の頭部6aとによって隔成された油室34aが形成され、該油室34aを介して進角側通路34と各進角側油孔28を連通するようになっている。
【0047】
また、先端部38aの外周には、外部とグルーブ溝33bとの間、並びに該グルーブ溝33bと油室34aとの間をそれぞれシールする3つのシール部材39がそれぞれ嵌着固定されている。
【0048】
オイルポンプ36は、吐出通路36aが濾過フィルター40を介して電磁切換弁35に接続された供給通路41と、機関の摺動部などに潤滑油を供給するメインオイルギャラリー42にそれぞれ連通している。また、オイルポンプ36には、過大な吐出圧を抑制するリリーフ弁43が設けられている。
【0049】
電磁切換弁35は、2方向弁であって、図外のコントロールユニット(ECU)からの出力信号によって各通路33,34とオイルポンプ36の吐出通路36a下流の供給通路41とドレン通路37とを選択的に切り換え制御するようになっている。
【0050】
コントロールユニットは、内部のコンピュータが図外のクランク角センサやエアーフローメータ、水温センサ、スロットルバルブ開度センサなどの各種センサ類からの情報信号を入力して現在の機関運転状態を検出する。また、コントロールユニットは、前記機関運転状態に応じて電磁切換弁35の電磁コイルに制御パルス電流を出力するようになっている。
【0051】
そして、各ベーンロータ7の円筒部21bの外周には、図1図3に示すように、捩りコイルばね51が配置されている。
【0052】
この捩りコイルばね51は、ばね鋼で一体に形成されて、第1、第2係り止め部20、46にそれぞれ係り止めされた一端部51a及び他端部51bと、両端部51a、51bとの間に有するコイル状部位51cと、を備えている。
【0053】
具体的に説明すると、捩りコイルばね51の一端部51aは、図4及び図8に示すように、径方向外側に向かって折り曲げられて、第1係り止め部20の一側面20aに円周方向から弾接して係り止めされている。一方、他端部51bは、径方向内側に向かって折り曲げられて、第2係り止め部46内に径方向外側から挿入して係り止めされている。これによって、捩りコイルばね51は、ベーンロータ7を端壁部13(ハウジング5)に対する進角方向へのばね力を付与するようになっている。
【0054】
コイル状部位51cは、図4に示すように、内周縁全体が円筒部21bの外周面との間に径方向へ所定の隙間S1をもって常時、非接触状態になっている。つまり、捩りコイルばね51は、拡径、縮径変形してもコイル状部位の51cの内周縁が円筒部21bの外周面に当接することがない。
【0055】
一方、コイル状部位51cの外周縁51dは、図4図8に示すように、その一部が支持部18の内面18aに当接支持されている。つまり、コイル状部位51cの外周縁51dの一部が、支持部18の内面18aに当接することによってコイル状部位51c全体の軸方向の倒れなどを抑制して安定した姿勢が保持されるようになっている。
【0056】
なお、捩りコイルばね51の一端部51aと他端部51bのそれぞれ係り止め位置は、第1係り止め部20の一側面20a の位置と第2係り止め部46の形成位置によって決定される。本実施形態では、一側面20aと第2係り止め部46の形成位置に基づいて、両端部51a、51bの軸線が円筒部21bの軸線を介して結ばれる線によって形成される周方向になす角度が、ベーンロータ7のいずれの相対回転角度位置でも180°を中心としてその前後となるように設定されている。
〔本実施形態の作用効果〕
以下、本実施形態の作用を説明すれば、まず、機関停止直前には、遅角油室9と進角油室10への油圧の供給が停止される。したがって、ベーンロータ7は、図2に示すように、各捩りコイルばね51の進角方向への付勢力によって最進角位置(初期位置)に相対回転する。このとき、ロックピストン30は、コイルスプリング32のばね力によって進出し、先端部がロック穴31a内に挿入する。これによって、ベーンロータ7の相対回転が規制される。
【0057】
次に、イグニッションスイッチをオンして機関を始動させクランキングが開始されると、オイルポンプ36の作動も開始される。この始動直後は、オイルポンプ36の吐出圧が十分に立ち上がらないことから、排気VTCへのオイル供給量が不足している。しかし、予めロックピストン30の先端部がロック穴31a内に挿入して、ベーンロータ7を始動に最適な進角側の回転位置に拘束している。このため、スムーズなクランキングによって良好な始動性が得られると共に、排気カムシャフト2に作用する交番トルクによる各ベーンロータ7のばたつきを抑制できる。
【0058】
機関始動後の所定の低回転低負荷域では、コントロールユニットが電磁切換弁35のコイルへの通電(パルス信号)を停止する。これによって、オイルポンプ36の吐出通路36a(供給通路41)と進角側通路34を連通させると同時に、遅角側通路33とドレン通路37とを連通させる。
【0059】
したがって、オイルポンプ36から吐出された作動油は、進角側通路34及び各進角側油孔28を介して各進角油室10内に流入する。これにより、各進角油室10が高圧になる。一方、遅角油室9は、遅角油室9内の作動油が遅角側通路33を通ってドレン通路37からオイルパン44内に排出されて内部が低圧になる。
【0060】
このとき、各進角油室10内に流入した作動油は、ロック機構に供給されることから、ロックピストン30が後退動してロック穴31aから抜け出しロックが解除される。これにより、ベーンロータ7は、自由な回転が許容されて排気弁の開閉タイミングを任意に変更することができるが、この状態では、最進角側に保持される。
【0061】
一方、機関が例えば中回転域に移行した場合は、コントロールユニットから電磁切換弁35に所定のパルス制御信号が出力されて、吐出通路36aと遅角側通路33とを連通させると同時に、進角側通路34とドレン通路37とを連通させる。
【0062】
これにより、各進角油室10内の作動油が排出されて低圧になると共に、各遅角油室9内に作動油が供給されて内部が高圧になる。このとき、各遅角油室9からロック機構に油圧が供給されることから、ロックピストン30はロック穴31aから抜け出した状態が維持される。
【0063】
このため、ベーンロータ7は、図3に示すように、ハウジング5に対して反時計方向へ回転して、スプロケット1に対する排気カムシャフト2の相対回動位相が遅角側に変換される。
【0064】
この結果、排気弁の開閉タイミングが遅角側に制御されて、吸気弁と排気弁のバルブオーバーラップが大きくなり、かかる中回転域における機関燃焼効率を向上させることができる。
【0065】
また、ベーンロータ7は、捩りコイルばね51のばね力によって進角方向に付勢されていることから、例えば機関停止時において排気弁の開閉タイミングを最進角側へ強制的に制御することができるので、前述したように機関の始動性が良好になる。
【0066】
そして、本実施形態では、前述したように、捩りコイルばね51は、コイル状部位51cの内周縁がベーンロータ7の円筒部21bの外周面とは所定の隙間S1をもって配置され、常に非接触状態になっている。このため、硬度の低い円筒部21bは、拡径、縮径変形時における捩りコイルばね51との摺動が無くなることから、円筒部21bの外周面が摩耗することがない。
一方、焼結金属で成形された端壁部13は、各歯部13bがタイミングチェーンを介してクランクシャフトから回転力が伝達されるので、支持部18を含めた全体の焼結密度を高くして硬度を高くしてある。つまり、同じ焼結金属で成形される支持部18と円筒部21bは、焼結密度が支持部の方が高いので円筒部21bよりも硬度を高くできる。
したがって、捩りコイルばね51が、拡径、縮径変形した際に、コイル状部位51cの外周縁51dの一部が支持部18の内面18aに繰り返し当接しつつ摺動しても、硬度が高い支持部18の内面18aは長期にわたって摩耗の発生が抑制される。
この結果、円筒部21bはもちろんのこと、支持部18の耐久性が向上し、ひいては排気VTCの耐久性が向上する。
また、支持部18の内面18aは、円弧状に形成されて、比較的広い当接面積を有していることから、捩りコイルばね51の拡径、縮径変形に伴ってコイル状部位51cが軸方向や周方向に移動しても当接状態を十分に維持することができる。
さらに、本実施形態では、支持部18に径方向で反対側の位置にバランス調整部19を設けてある。このため、ベーンロータ7は、回転時における全体の重量バランスが取れるので安定した回転が得られる。
【0067】
さらに、捩りコイルばね51の一端部51aは、第1係り止め部20の一側面20aに係り止めされた状態で一つの雌ねじ孔17の近傍に配置されている。したがって、ボルト14の雄ねじ部14cと雌ねじ孔17との間を通流して端壁部13の内部に漏れ出た潤滑油が、捩りコイルばね51の一端部51aと第1係り止め部20との間に供給される。このため、捩りコイルばね51の一端部51aと第1係り止め部20との間が潤滑されることから、第1係り止め部20の一側面20の摩耗の発生を抑制できる。
【0068】
また、捩りコイルばね51の一部を端壁部13に形成された円環状溝13d内に収容配置したため、この分だけ捩りコイルばね51の外方への飛び出しを抑制できる。これによって、排気VTC全体の軸方向の長さを短くすることができる。
【0069】
端壁部13とベーンロータ7にそれぞれ第1係り止め部20や第2係り止め部46を形成することによって、捩りコイルばね51を係止するためのピンを圧入するなどの必要性がなくなるため、部品点数の削減や、組み立て作業が容易になる。
【0070】
本発明は、実施形態の構成に限定されるものではなく、例えば、端壁部13や円筒部21bの焼結密度を、任意に変更することが可能である。但し、端壁部13の焼結密度は、摩耗の発生を抑制するために、捩りコイルばね51の硬度と同じ程度かそれよりもわずかに小さくする程度がよい。
【0071】
また、駆動回転体としてタイミングスプロケット1の他に、タイミングベルトが巻回されるタイミングプーリに適用することも可能である。
【0072】
以上説明した実施形態に基づく内燃機関のバルブタイミング制御装置としては、例えば、以下に述べる態様のものが考えられる。
すなわち、本発明における好ましい態様としては、筒状のハウジング本体と、前記ハウジング本体の回転軸の軸方向の一端に設けられて、外周にクランクシャフトからの回転力が伝達される動力伝達部を一体に有し、かつ軸方向の一端からカムシャフト方向に延びた支持部を一体に有する端壁部と、を備えたハウジングと、
前記ハウジングの内部に相対回転可能に配置され、軸方向の一端部が前記ハウジングから前記カムシャフト方向に突出して前記カムシャフトに固定される突出部を有し、前記突出部の外面の硬度が前記支持部の内面の硬度よりも低いベーンロータと、
前記支持部の内面と前記突出部の外面との間に配置され、一端が前記端壁部に係り止めされる一方、他端が前記ベーンロータに係り止めされ、前記一端と他端の間に有するコイル状部位の外周の一部が前記支持部の内面に当接支持され、前記ハウジングに対して前記ベーンロータを一方の回転方向へ付勢する捩りコイルばねと、
を有している。
【0073】
この発明の態様によれば、端壁部は、動力伝達部がクランクシャフトから回転力(回転方向の引っ張り力、圧縮力)を受けるので、支持部を含めた全体の剛性を確保するため、予め金属材の硬度を高くしてある。したがって、捩りコイルばねが、拡径、縮径変形した際に、コイル状部位の外周の一部が支持部の内面に繰り返し当接しつつ摺動しても、支持部内面の硬度が比較的高く設定されているので、この支持部の内面の短期間での摩耗の発生が抑制される。
さらに好ましくは、前記端壁部と前記動力伝達部及び前記支持部は、金属粉を圧縮して焼結した焼結金属によって一体に形成されている一方、前記ベーンロータも金属粉を圧縮して焼結した焼結金属によって形成されて、
前記支持部を含む前記端壁部の焼結密度が、前記突出部を含む前記ベーンロータの焼結密度より高くなっている。
この発明の態様によれば、同じ焼結金属で成形される支持部と突出部は、焼結密度が支持部の方が高いので突出部よりも硬度を高くできる。
さらに好ましくは、前記捩りコイルばねの硬度は、前記支持部よりも高くなっている。
【0074】
さらに好ましくは、前記支持部は、前記端壁部の軸方向一端から前記カムシャフト方向へ突出し、内面で前記コイル状部位の外周縁を摺動可能に当接支持するようになっている。
【0075】
さらに好ましくは、前記支持部は、内面が円環状の前記端壁部の周方向に沿った円弧状に形成されている。
この発明の態様によれば、支持部の内面が円弧状に形成されて、コイル状部位に対して比較的広い当接面積を有していることから、捩りコイルばねの拡径、縮径変形に伴ってコイル状部位が移動してもこの一部の当接摺動に十分に対応することができる。
さらに好ましくは、前記端壁部は、前記支持部と回転軸線を挟んで径方向の反対側の位置に、軸方向の一端から前記カムシャフト軸方向に延びて前記支持部と平行なバランス調整部を有している。
この発明の態様によれば、バランス調整部を設けたことによって、ベーンロータの回転時における全体の重量バランスが取れることから、安定した回転が得られる。
さらに好ましくは、前記端壁部は、円環状の内周面から径方向内側に突出し、前記捩りコイルばねの一端が係り止めされることにより前記捩りコイルばねにねじり方向の付勢力を付与する係り止め部を有している。
さらに好ましくは、前記ハウジング本体は、内部に作動室を有すると共に、軸方向の一端が開口形成され、
前記端壁部は、前記ハウジング本体の一端開口を塞ぐと共に、外周部に前記ハウジング本体と軸方向から締結するボルトの雄ねじ部が螺着する雌ねじ孔を有し、
前記捩りコイルばねの一端は、前記係り止め部に係り止めされた状態で前記雌ねじ孔の近傍に配置されている。
この発明の態様によれば、駆動中に装置の外周に飛散した潤滑油が、ボルトの雄ねじ部と雌ねじ孔との間を通流して端壁部の内部に漏れて、捩りコイルばねの一端と係り止め部との間に供給される。このため、捩りコイルばねの一端と係り止め部との間が潤滑されることから、係り止め部の摩耗の発生を抑制できる。
【符号の説明】
【0076】
1…タイミングスプロケット(駆動回転体)、2…カムシャフト、 3…位相変換機構、4…油圧回路、5…ハウジング、7…ベーンロータ、8…シュー、9…遅角油室、10…進角油室、11…ハウジング本体、12…フロントプレート、13…端壁部、13a…大径孔、13b…歯部(動力伝達部)、13c…雌ねじ孔、18…支持部、18a…内面、19…バランス調整部、19a…内面、20…第1係り止め部、20a…外側面、21…ロータ部、21b…円筒部(突出部)、21c…ボルト挿入孔、22~25…ベーン、46…第2係り止め部、51…捩りコイルばね、51a…一端部、51b…他端部、51c…コイル状部位、51d…外周縁。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9