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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138775
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】防音ユニット
(51)【国際特許分類】
   E01F 8/00 20060101AFI20220915BHJP
   E01D 19/00 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
E01F8/00
E01D19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021038853
(22)【出願日】2021-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000002462
【氏名又は名称】積水樹脂株式会社
(72)【発明者】
【氏名】萩原 徹
(72)【発明者】
【氏名】矢野 良
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 亮太郎
【テーマコード(参考)】
2D001
2D059
【Fターム(参考)】
2D001AA05
2D001BA03
2D001BB01
2D001CA01
2D001CB01
2D001CC01
2D001DA09
2D059AA05
2D059BB37
2D059GG25
(57)【要約】      (修正有)
【課題】開口部を有する高架構造物において騒音を効果的に低減する防音ユニットを提供する。
【解決手段】高架構造物を上下方向に貫通する開口部の下方に設置する防音ユニット1であって、筒中部分が前記開口部へ連通し下方へ突出する筒状の筒壁部2と、この筒壁部2の下端に配置する防音部材3を備え、前記防音部材3に、下方へ至るほど前記開口部の内側へ向かう傾斜板状の遮音板部4を備えさせると共に、この遮音板部4の先端を前記筒壁部2の下端より下方に配置させ、前記遮音板部4に対して前記開口部の逆側の位置に吸音材51、52を配置する。先端をより低い位置に配置させた遮音板部4に対して前記開口部の逆側の位置に吸音材51、52を配置させるので、遮音板部4の先端の位置で回折した騒音が減衰されて、前記筒壁部2を通過する騒音が遠方へ届きにくくなされる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高架構造物を上下方向に貫通する開口部の下方に設置される防音ユニットであって、
筒中部分が前記開口部へ連通し下方へ突出する筒状の筒壁部と、該筒壁部の下端に配置される防音部材を備え、
前記防音部材は、下方へ至るほど前記開口部の内側へ向かう傾斜板状の遮音板部を備えると共に、該遮音板部の先端が前記筒壁部の下端より下方に配置されており、
前記遮音板部に対して前記開口部の逆側の位置に吸音材が配置されていることを特徴とする防音ユニット。
【請求項2】
前記防音部材が吸音材を備え、該吸音材が前記遮音板部の真上に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の防音ユニット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除雪などの目的で開口部が設けられた高架構造物からの騒音を低減させる防音ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路や鉄道などからの騒音を低減させる防音壁などの防音ユニットは、従来より利用されており、種々の発明が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、橋梁の床開口部から下空間に放射する騒音を低減する橋梁の騒音低減装置であって、前記床開口部から前記下空間に向かって前記騒音が通過する所定長さの騒音通過部を備え、 前記騒音通過部は、この騒音通過部の内部が複数の通路に区分されており、前記床開口部から前記下空間に向かってこの複数の通路を前記騒音が通過すること、を特徴とする橋梁の騒音低減装置の構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-012306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示される騒音低減装置は、所定長さに設けた騒音通過部の内部を複数の通路に区分することで、橋梁の床開口部を通過する前記騒音を通路内で多重反射させて低減するように設けているが、本発明はこれと異なる構成によって、開口部を有する高架構造物において騒音を効果的に低減する防音ユニットを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は以下のような構成としている。
すなわち本発明に係る防音ユニットは高架構造物を上下方向に貫通する開口部の下方に設置される防音ユニットであって、
筒中部分が前記開口部へ連通し下方へ突出する筒状の筒壁部と、該筒壁部の下端に配置される防音部材を備え、
前記防音部材は、下方へ至るほど前記開口部の内側へ向かう傾斜板状の遮音板部を備えると共に、該遮音板部の先端が前記筒壁部の下端より下方に配置されており、
前記遮音板部に対して前記開口部の逆側の位置に吸音材が配置されていることを特徴とするものである。
【0007】
本発明に係る防音ユニットによれば、高架構造物の開口部に筒中部分が連通し下方へ突出する筒壁部を備えるので、高架構造物上で生じ開口部を通過する騒音が、更に筒壁部の筒中部分を通過して外側へ至るので、前記騒音の出口がより下方に配置され、騒音の広がりが抑制されて遠方へ届きにくくなされる。
また、前記筒壁部の下端に配置させた防音部材に、下方へ至るほど前記開口部の内側へ向かう傾斜板状の遮音板部を備えさせると共に、この遮音板部の下端を前記筒壁部の下端より下方に配置させるので、前記遮音板部の先端をより低い位置に配置させることができる。
また、前記遮音板部に対して前記開口部の逆側の位置に吸音材を配置させるので、遮音板部の先端の位置で回折した騒音が前記吸音材に至り減衰されて、前記筒壁部を通過する騒音が外側側方へ進みにくくなされ、騒音が遠方へ届きにくくなされる。
【0008】
また、前記防音部材に備えさせた吸音材を前記遮音板部の真上に配置すれば、遮音板部の先端に至る前に騒音を前記吸音材で減衰できるので、騒音が遠方へより届きにくくなされるので、好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の防音ユニットによれば、橋梁の開口部を通過する騒音を減衰させて、遠方へ届きにくくできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の防音ユニットの実施の一形態を示す図である。
図2図1の防音ユニット部分を拡大して示す断面図である。
図3図2の防音部材を示す、(イ)は正面図であり、(ロ)は底面図である。
図4図3のA-A断面図である。
図5図4の防音部材を筒壁部へ取り付けた状態を示す図である。
図6】本発明の防音部材の実施の他の一形態を示す(イ)は平面図であり、(ロ)は正面図であり、(ハ)は底面図である。
図7図6のA-A断面図である。
図8図7の防音部材を筒壁部へ取り付けた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明の実施の形態を図面に基づき具体的に説明する。
図1は本発明の防音ユニット1の実施の一形態を示す図であり、図2図1の防音ユニット1部分を拡大して示す断面図である。
図1、2は、高架構造物8に防音ユニット1を設置させた状況を示している。また、図2においては、防音ユニット1の内部の構造の図示を省略して、図面を簡略化している
【0012】
高架構造物8は、支脚81の上部に配置する車両走行部82の上を車両が走行する高架橋であり、車両走行部82の両側の端部には騒音を低減するための防音壁84がそれぞれ設けられている。車両走行部82の両側の端部には、上下方向に貫通する矩形穴状の開口部83が形成されている。各開口部83は、車両走行部82の上に積もった雪を下方へ排出する目的で設けられており、車両走行部82の車両の進行方向である長手方向に沿って間隔をあけて複数形成されている。
【0013】
防音ユニット1は、車両走行部82から下方へ突出するように設置している。
防音ユニット1は、中空部分が上下方向に開口する矩形筒状の筒壁部2を有しており、この筒壁部2の上部を車両走行部82へ接続させて設置させている。具体的には、前記筒壁部2は、その上端の一部を前記開口部83の内側へ挿入させるようにして設置させている。
前記筒壁部2は、遮音部材と吸音部材とを組み合わせて形成した防音パネルで形成しており、この防音パネルを複数並設させて筒状体を構成している。筒壁部2は、その筒中部分を通過する騒音を吸音部材で低減するとともに、その壁部分を通過する騒音を遮音部材で遮るように設けている。
【0014】
前記防音ユニット1は、筒壁部2の下部に防音部材3を備えている。図1、2に示す防音部材3は筒壁部2と別体に形成した矩形箱状のパネル体であり、複数の防音部材3を並設させて環状に配置し、筒壁部2の下端の全周に亘って取り付けている。
図3図2の防音部材3を示す、(イ)は正面図であり、(ロ)は底面図であり、図4図3のA-A断面図である。
防音部材3は、それぞれ矩形に設けた前面板30a、後面板30b、上面板30c、下面板30dと、2つの側面板30eを備える箱状体であり、前面板30aと下面板30dの略全面に亘って円形の貫通孔31を形成している。前記後面板30b、上面板30c、各側面板30eは、遮音板として機能する。
図3においては、前記貫通孔31を一部のみ図示して図面を簡略化している。また、図3、4に示す防音部材4は、前記各側面板30eの間における縦断面を左右方向の略全長に亘り、図4に示す断面図と略同じ形状に形成している。
【0015】
防音部材3の内側には、それぞれ矩形に設けた縦板部41と、横板部42と、傾斜板部43を備える遮音板部4を収納して取り付けている。
縦板部41は前記前面板30aに対して間隔をあけて平行に配置しており、その下端を前記下面板30dの上方に間隔をあけて位置させ、その上端を前記上面板30cに接続している。
横板部42は前記下面板30dに対して間隔をあけて平行に配置しており、その前端を前記縦板部41の下端に接続し、その後端を前記後面板30bに接続している。
傾斜板部43は、下方に至るほど前方へ向かう傾斜状に配置しており、その上端を前記縦板部41と横板部42の接続部分へ接続し、その下端を前記前面板30aと下面板30dとの接続部分へ接続している。
【0016】
防音部材3の内側には、それぞれ矩形板状に形成した吸音材51、52を内装させている。
吸音材51は、前記傾斜板部43、下面板30d、後面板30b、横板部42に囲われる中空部分に収納させており、前記傾斜板部43の真後ろに配置される。
吸音材52は、前記傾斜板部43、前面板30a、上面板30c、縦板部41に囲われる中空部分に収納させており、前記傾斜板部43の真上に配置される。
前記吸音材51は、前記下面板30dに設けた貫通孔31を通じて防音部材3の内側に入り込む騒音を減衰させ、前記吸音材52は、前記前面板30aに設けた貫通孔31を通じて防音部材3の内側に入り込む騒音を減衰させる。
【0017】
図5図4の防音部材3を筒壁部2へ取り付けた状態を示す図である。図5に示す筒壁部2は図1、2に示す前記防音ユニット1の筒壁部2と同一であり、図5に示す防音部材3は図1、2に示す前記防音部材3と同一である。
防音部材3は、その上面板30cを筒壁部2の下面へ当接させて取り付けている。また、図5においては、図中右側が筒壁部2の筒中部分であり、図5の筒壁部2の右側上方に開口部83が位置している。即ち、防音部材3は前記前面板30aを開口部83側へ向けて配置している。
前記防音部材3は、高架構造物8の前記開口部83を通過し、更に筒壁部2の筒中部分を通過する騒音のうち、前面板30aの貫通孔31を通じて内側に入り込む騒音を前記吸音材52で減衰するように設けている。
【0018】
また、前記防音部材3は、筒壁部2の筒中部分を通過した騒音が下方を通過するときに、前面板30aと下面板30dの接続部分である前記傾斜板部43の下端の位置で騒音が回折し、下面板30dの貫通孔31を通過して内側に入り込み前記吸音材51で減衰するように設けている。吸音材51を傾斜板部43に対して前記開口部83の逆側の位置に配置することで、傾斜板部43の下端で回折した騒音を効果的に減衰できる。
【0019】
図1、2に示す防音ユニット1は、車両走行部82の下面から下方へ筒壁部2と防音部材3とを突出させるので、前記開口部83を通過する騒音の出口が開口部83よりも下方に位置する防音部材3の下端に移動する。このように、騒音の出口がより低い位置となされることで、騒音が地面へ至りやすくなされて横方向への広がりが抑制され、遠方へ届きにくくなる。
【0020】
また、図1、2に示す防音ユニット1は、筒壁部2の下端に配置させた各防音部材3において、それぞれの傾斜板部43の先端で騒音が回折し吸音材51で減衰するので、防音部材3の下側を通過する騒音の横方向外側への広がりが効果的に抑制され、遠方へ届きにくくなる。
このように、防音ユニット1の防音部材3は、傾斜板部43の下端で騒音を回折させて減衰させることで、騒音の横方向への広がりを抑制するので、傾斜板部43の下端をより低い位置に配置させることが好ましい。即ち、前記傾斜板部43は、筒壁部2の下方に位置させることが好ましく、図5に示すように、筒壁部2の下方に配置させた防音部材3の下端に位置させることがより好ましい。
【0021】
図6は本発明の防音部材3の実施の他の一形態を示す(イ)は平面図であり、(ロ)は正面図であり、(ハ)は底面図であり、図7図6のA-A断面図である。
図6、7に示す防音部材3は、側面視の形状を略L字型に設けた中空部分を有する箱状のブロック体である。
前記防音部材は、前面板30aと、その上端から後方へ延設する第一上面板30caと、その後端から下方へ延設する第一後面板30baと、その下端から後方へ延設する第二上面板30cbと、その後端から下方へ延設する第二後面板30bbと、その下端から前方へ延設して前記前面板30aの下端に接続する下面板30dとを備えている。これらの板状部材で形成する筒状体の左右の開口を塞ぐように、L字形状の側面板30eを取り付けて、箱状の防音部材3を形成している。
【0022】
前記前面板30aと下面板30dには、その略全面に亘って円形の貫通孔31を形成している。
図6においては、前記貫通孔31を一部のみ図示して図面を簡略化している。また、図6、7に示す防音部材4は、前記各側面板30eの間における縦断面を左右方向の略全長に亘り、図7に示す断面図と略同じ形状に形成している。
また、前記第一後面板30ba、第二後面板30bb、第一上面板30ca、第二上面板30cb、各側面板30eは、遮音板として機能する。
【0023】
防音部材3の内側には、傾斜板状の遮音板部4を収納して取り付けている。
遮音板部4は、下方に至るほど前方へ向かう傾斜状に配置しており、その上端を前記第一後面板30baと第二上面板30cbの接続部分へ接続し、その下端を前記前面板30aと下面板30dとの接続部分へ接続している。
【0024】
防音部材3の内側には、それぞれ矩形板状に形成した吸音材51、52を内装させている。
吸音材51は、前記遮音板部4、下面板30d、第二後面板30bb、第二上面板30cbに囲われる中空部分に収納させており、前記遮音板部4の真後ろに配置される。
吸音材52は、前記遮音板部4、前面板30a、第一上面板30ca、第一後面板30baに囲われる中空部分に収納させており、前記遮音板部4の真上に配置される。
図3、4に示す前記防音部材3と同様に、図6、7に示す防音部材3の前記吸音材51は、前記下面板30dに設けた貫通孔31を通じて防音部材3の内側に入り込む騒音を減衰させ、前記吸音材52は、前記前面板30aに設けた貫通孔31を通じて防音部材3の内側に入り込む騒音を減衰させる。
【0025】
図8図7の防音部材3を筒壁部2へ取り付けた状態を示す図である。
図8に示す筒壁部2は図1、2に示す前記防音ユニット1の筒壁部2と同様の方法で高架構造物8へ設置されている。換言すると、図8に示す防音ユニット1は、防音部材3の構成のみが、図1、2に示す防音ユニットと異なっている。図8に示す防音部材3は、複数個を並設させて、筒壁部2の下端の全周に亘って取り付けている。
【0026】
防音部材3は、その第二上面板30cbを筒壁部2の下面へ当接させると共に、第一後面板30baを筒壁部2の内側の側面へ当接させて取り付けている。即ち、防音部材3は前記前面板30aを開口部83側へ向けて配置している。
前記防音部材3は、図5に示す前記防音部材3と同様に、高架構造物8の前記開口部83を通過し、更に筒壁部2の筒中部分を通過する騒音のうち、前面板30aの貫通孔31を通じて内側に入り込む騒音を前記吸音材52で減衰するように設けている。
また、前記防音部材3は、図5に示す前記防音部材3と同様に、筒壁部2の筒中部分を通過する騒音が下方を通過するときに、前記遮音板部4の下端の位置で騒音を回折させて、前記吸音材51で減衰するように設けている。
【0027】
尚、本発明に係る防音ユニット1は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、図5図8に示す前記各防音ユニット1は筒壁部2を防音パネルで形成しているが、これに限るものではない。金属や、合成樹脂や、モルタルや、コンクリートなど、遮音性を有する各種の材料を選択又は組み合わせて筒壁部2を形成してもよい。
【0028】
また、前記各防音ユニット1は、筒壁部2の下端の全周に亘って防音部材3を取り付けているが、これに限るものではなく、筒壁部2の下端の一部に防音部材3が取り付けられていなくてもよい。ただし、開口部83を通過する騒音が遠方へ届くことを抑制するために、矩形筒状の筒壁部2において、車両走行部82における車両の進行方向に沿って配置される壁部分の下端には防音部材3が取り付けられていることが好ましく、図5や8に示す前記防音ユニット1のように、筒壁部2の下端の全周に防音部材3を取り付けることがより好ましい。
【符号の説明】
【0029】
1 防音ユニット
2 筒壁部
3 防音部材
31 貫通孔
4 遮音板部
41 縦板部
42 横板部
43 傾斜板部
51 吸音材
52 吸音材
8 高架構造物
81 支脚
82 車両走行部
83 開口部
84 防音壁


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8