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特開2022-13878容器詰めミルクコーヒー飲料、容器詰めミルクコーヒー飲料の製造方法及び容器詰めミルクコーヒー飲料における凝集物の抑制方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022013878
(43)【公開日】2022-01-18
(54)【発明の名称】容器詰めミルクコーヒー飲料、容器詰めミルクコーヒー飲料の製造方法及び容器詰めミルクコーヒー飲料における凝集物の抑制方法
(51)【国際特許分類】
   A23F 5/24 20060101AFI20220111BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
A23F5/24
A23L2/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021108419
(22)【出願日】2021-06-30
(31)【優先権主張番号】P 2020114771
(32)【優先日】2020-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591014972
【氏名又は名称】株式会社 伊藤園
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100201606
【弁理士】
【氏名又は名称】田岡 洋
(72)【発明者】
【氏名】荒井 秀和
【テーマコード(参考)】
4B027
4B117
【Fターム(参考)】
4B027FB24
4B027FC05
4B027FC10
4B027FE06
4B027FE08
4B027FK01
4B027FK04
4B027FK05
4B027FK06
4B027FK10
4B027FK18
4B027FQ04
4B027FQ06
4B027FQ16
4B027FQ19
4B027FQ20
4B027FR05
4B117LC03
4B117LE10
4B117LG17
4B117LK01
4B117LK11
4B117LK12
4B117LK15
4B117LK18
4B117LL06
4B117LP14
4B117LT05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】コーヒー濃度及び乳成分濃度が高いが、加熱殺菌を施しても凝集物の発生が抑制された容器詰めミルクコーヒー飲料及びその製造方法、並びに容器詰めミルクコーヒー飲料における凝集物の抑制方法を提供する。
【解決手段】乳糖を0.30g/100g以上含有し、コーヒー抽出物の固形分(Brix値)から得られる無次元数X(X≧1.1)と、重曹配合量(質量%)から得られる無次元数Y(Y>0.04)とが、下記式1又は式2を満たし、F値60以上で殺菌された容器詰めミルクコーヒー飲料及び当該容器詰めミルクコーヒー飲料の製造方法、並びに容器詰めミルクコーヒー飲料における凝集物の抑制方法を提供する。
(式1)Y≧0.1224X-0.0097
(式2)Y≦-0.1349X+0.2725
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳糖を0.30g/100g以上含有し、
コーヒー抽出物の固形分(Brix値)から得られる無次元数X(X≧1.1)と、重曹配合量(質量%)から得られる無次元数Y(Y>0.04)とが、下記式1又は式2を満たし、
値60以上で殺菌された容器詰めミルクコーヒー飲料。
(式1)Y≧0.1224X-0.0097
(式2)Y≦-0.1349X+0.2725
【請求項2】
カフェインを40mg/100g以上含有する、請求項1に記載の容器詰めミルクコーヒー飲料。
【請求項3】
前記殺菌がUHT殺菌である、請求項1又は2に記載の容器詰めミルクコーヒー飲料。
【請求項4】
前記F値の殺菌温度が121~142℃である、請求項1~3のいずれか1項に記載の容器詰めミルクコーヒー飲料。
【請求項5】
前記容器が、キャップ付き容器である、請求項1~4のいずれか1項に記載の容器詰めミルクコーヒー飲料。
【請求項6】
容器詰めミルクコーヒー飲料の製造方法であって、
乳糖を0.30g/100g以上含有し、
コーヒー抽出物の固形分(Brix値)から得られる無次元数X(X≧1.1)と、重曹配合量(質量%)から得られる無次元数Y(Y>0.04)とが、下記式1又は式2を満たすようにミルクコーヒーを配合する配合工程と、
前記ミルクコーヒーをF値60以上で殺菌する殺菌工程と、を含む容器詰めミルクコーヒー飲料の製造方法。
(式1)Y≧0.1224X-0.0097
(式2)Y≦-0.1349X+0.2725
【請求項7】
前記配合工程において、カフェインを40mg/100g以上含有するように配合する、請求項6に記載の容器詰めミルクコーヒー飲料の製造方法。
【請求項8】
容器詰めミルクコーヒー飲料の凝集物の抑制方法であって、
乳糖を0.30g/100g以上含有し、
コーヒー抽出物の固形分(Brix値)から得られる無次元数X(X≧1.1)と、重曹配合量(質量%)から得られる無次元数Y(Y>0.04)とが、下記式1又は式2を満たすようにミルクコーヒーを配合する配合工程と、
前記ミルクコーヒーをF値60以上で殺菌する殺菌工程と、を含む容器詰めミルクコーヒー飲料の凝集物の抑制方法。
(式1)Y≧0.1224X-0.0097
(式2)Y≦-0.1349X+0.2725
【請求項9】
前記配合工程において、カフェインを40mg/100g以上含有するように配合する、請求項8に記載の容器詰めミルクコーヒー飲料の凝集物の抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器詰めミルクコーヒー飲料、容器詰めミルクコーヒー飲料の製造方法及び容器詰めミルクコーヒー飲料における凝集物の抑制方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、飲料に関する嗜好の多様化により、種々の容器詰飲料が多数上市されており、その中でも、ミルクコーヒー飲料は国内で消費される主要な飲料となっている。そして、ミルクコーヒー飲料においても、コーヒー濃度が高いもの、低いもの、乳成分の濃度が高いもの、低いものなど様々な種類が存在し、販売されている。
【0003】
上記のようなミルクコーヒー飲料を容器詰飲料にする場合、その製造工程において加熱殺菌を行う必要があるが、コーヒー濃度が高いミルクコーヒー飲料を加熱殺菌して保存すると、液体中に凝集物が発生する場合があることが知られている。凝集物が発生すると、外観上はもちろん、飲用時には異物と感じる場合もあり、問題となっていた。
【0004】
このような問題に対し、例えば特許文献1では、コーヒー濃度が比較的高いミルクコーヒーを加熱殺菌する場合に、特定量のカゼインナトリウムを配合することにより、容器詰めミルクコーヒーにおいて凝集物の発生・沈殿を抑制する技術が公開されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-194680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、コーヒー濃度が高いだけでなく、乳成分濃度も高い容器詰めミルクコーヒーは、加熱殺菌を施した場合に、特に凝集物が発生しやすいという問題があった。
【0007】
本発明は、このような背景の下にてなされたものであり、コーヒー及び乳成分の双方の濃度が高いにもかかわらず、加熱殺菌を施しても凝集物が発生しにくい容器詰めミルクコーヒー及びその製造方法を提供することを目的とする。併せて、容器詰めミルクコーヒー飲料における凝集物の抑制方法も提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明は、具体的には以下のとおりである。
〔1〕 乳糖を0.30g/100g以上含有し、
コーヒー抽出物の固形分(Brix値)から得られる無次元数X(X≧1.1)と、重曹配合量(質量%)から得られる無次元数Y(Y>0.04)とが、下記式1又は式2を満たし、
値60以上で殺菌された容器詰めミルクコーヒー飲料。
(式1)Y≧0.1224X-0.0097
(式2)Y≦-0.1349X+0.2725
〔2〕 カフェインを40mg/100g以上含有する、〔1〕に記載の容器詰めミルクコーヒー飲料。
〔3〕 前記殺菌がUHT殺菌である、〔1〕又は〔2〕に記載の容器詰めミルクコーヒー飲料。
〔4〕 前記F値の殺菌温度が121~142℃である、〔1〕~〔3〕に記載の容器詰めミルクコーヒー飲料。
〔5〕 前記容器が、キャップ付き容器である、〔1〕~〔4〕に記載の容器詰めミルクコーヒー飲料。
〔6〕容器詰めミルクコーヒー飲料の製造方法であって、
乳糖を0.30g/100g以上含有し、
コーヒー抽出物の固形分(Brix値)から得られる無次元数X(X≧1.1)と、重曹配合量(質量%)から得られる無次元数Y(Y>0.04)とが、下記式1又は式2を満たすようにミルクコーヒーを配合する配合工程と、
前記ミルクコーヒーをF値60以上で殺菌する殺菌工程と、を含む容器詰めミルクコーヒー飲料の製造方法。
(式1)Y≧0.1224X-0.0097
(式2)Y≦-0.1349X+0.2725
〔7〕 前記配合工程において、カフェインを40mg/100g以上含有するように配合する、〔6〕に記載の容器詰めミルクコーヒー飲料の製造方法。
〔8〕容器詰めミルクコーヒー飲料の凝集物の抑制方法であって、
乳糖を0.30g/100g以上含有し、
コーヒー抽出物の固形分(Brix値)から得られる無次元数X(X≧1.1)と、重曹配合量(質量%)から得られる無次元数Y(Y>0.04)とが、下記式1又は式2を満たすようにミルクコーヒーを配合する配合工程と、
前記ミルクコーヒーをF値60以上で殺菌する殺菌工程と、を含む容器詰めミルクコーヒー飲料の凝集物の抑制方法。
(式1)Y≧0.1224X-0.0097
(式2)Y≦-0.1349X+0.2725
〔9〕 前記配合工程において、カフェインを40mg/100g以上含有するように配合する、〔8〕に記載の容器詰めミルクコーヒー飲料の凝集物の抑制方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、コーヒー濃度及び乳成分濃度が高いが、加熱殺菌を施しても凝集物の発生が抑制された容器詰めミルクコーヒー飲料となる。また、本発明の製造方法によれば、コーヒー濃度及び乳成分濃度が高いが、加熱殺菌を施しても凝集物の発生が抑制された容器詰めミルクコーヒー飲料を製造することができる。また、本発明に係る凝集物の抑制方法によれば、コーヒー濃度及び乳成分濃度の高いミルクコーヒー飲料を加熱殺菌しても凝集物の発生を効果的に抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔容器詰めミルクコーヒー飲料〕
本発明の一実施形態に係る容器詰めミルクコーヒー飲料は、下記に示すように、所定の濃度の乳糖及び所定の濃度の重曹を含み、コーヒー抽出物の固形分(Brix値)が所定の値であり、F値60以上で殺菌されたものである。
このようにして得られた容器詰めミルクコーヒー飲料は凝集物の発生が抑制される。この効果を、以下「凝集抑制効果」という場合がある。
【0011】
ここで本明細書において、容器詰めミルクコーヒー飲料とは、ミルクコーヒー飲料が容器に充填された製品のことを言う。本実施形態に係る容器詰めミルクコーヒー飲料は、好ましくは非アルコール性飲料であり、更に好ましくは非炭酸飲料である。
【0012】
1.ミルクコーヒー飲料
本実施形態に係るミルクコーヒー飲料は、乳糖、重曹を所定の濃度で含む。乳糖は乳成分に由来するものであり、乳成分濃度を表す指標となる。
【0013】
(コーヒー抽出物)
本実施形態に係る容器詰めミルクコーヒー飲料に使用するコーヒー抽出物は、常法によって得ることができる。通常、原料となるコーヒー豆を所定時間焙煎した後に粉砕し、これを熱湯により抽出する抽出工程を経て得られる。このコーヒー抽出物は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合せて使用することもできる。
【0014】
原料となるコーヒー豆の産地としては、ブラジル、コロンビア、タンザニア、エチオピア等が挙げられるが、特に限定されない。また、コーヒー豆の品種としては、アラビカ種、ロブスタ種等が挙げられる。コーヒー豆は、1種類で用いても、2種以上をブレンドして用いてもよい。コーヒー豆の焙煎は常法によって行うことができ、各成分の調整に必要な抽出物を得るために焙煎度(L値)についても適宜調整することができる。
【0015】
上記抽出工程においては、任意の公知方法を選択することができるが、紙製若しくは布製のフィルターによるろ過抽出を用いる方法が好ましい。また、コーヒー抽出物は、上記の抽出工程に加えて濃縮や希釈等の工程を経て得ることも可能であり、更に、上記抽出工程に加え、濾過工程や遠心分離工程などの清澄化工程、殺菌工程等を経て得ることもできる。
【0016】
本実施形態に係る容器詰めミルクコーヒー飲料は所定の含有量のカフェインを含むことができる。カフェインの含有量は、40mg/100g以上であることが好ましく、43mg/100g以上であることがより好ましく、50mg/100g以上であることが更に好ましく、55mg/100g以上であることが特に好ましい。カフェインの含有量が上記範囲にあることにより、コーヒー風味が十分に豊かなミルクコーヒー飲料となる。
また、本実施形態に係る容器詰めミルクコーヒー飲料におけるカフェインの含有量は、100mg/100g以下であることが好ましく、95mg/100g以下であることが更に好ましく、90mg/100g以下であることが特に好ましい。カフェインの含有量が上記範囲にあることにより、コーヒー風味が強すぎないバランスの良い味わいを持ったミルクコーヒー飲料となる。
カフェインはコーヒー抽出物(コーヒー抽出液)に由来し、コーヒー濃度を表す指標となるが、上述のようにコーヒー濃度が高い容器詰めミルクコーヒー飲料は凝集物が発生しやすいが、本実施形態に係る容器詰めミルクコーヒー飲料では、凝集物の発生が抑制される。
【0017】
なお、容器詰めミルクコーヒー飲料のカフェインの含有量は、豆種の選択、焙煎の調整、抽出時間の調整の他、公知の脱カフェイン方法を使用して調整することができる。また、カフェインの含有量は高速液体クロマトグラフィー(日本ウォーターズ社製、Alliance HPLC、カラム:Cadenza CD-C18、流速:0.8ml/min)によって測定することができる。
【0018】
(コーヒー抽出物の固形分(Brix値))
本実施形態に係る容器詰めミルクコーヒー飲料におけるコーヒー抽出物の固形分(Brix値)は、1.1以上であることが好ましく、1.2以上であることがより好ましく、1.3以上であることが更に好ましい。本実施形態に係る容器詰飲料は、Brix値が上記の範囲にあることにより、ミルクコーヒー飲料におけるコーヒーの風味が濃く、豊かな味わいとなる。
また、本実施形態に係る容器詰めミルクコーヒー飲料におけるコーヒー抽出物の固形分(Brix値)の上限は特に制限されないが、2.0以下であることが好ましく、1.9以下であることがより好ましく、1.8以下であることが更に好ましく、1.7以下であることが特に好ましい。本実施形態に係る容器詰飲料は、Brix値が上記の範囲にあることにより、コーヒーの風味が強すぎず、風味のバランスが良い容器詰めミルクコーヒー飲料を得ることができる。
また、このようにコーヒー抽出物の固形分(Brix値)が高い容器詰めミルクコーヒー飲料は凝集物が発生しやすいが、本実施形態に係る容器詰めミルクコーヒー飲料は、凝集物の発生が抑制される。
なお、Brix値は、20℃における糖用屈折計示度(°Brix)で表され、汎用の糖用屈折率計等で測定することができる。
【0019】
(乳成分)
本実施形態に係る容器詰めミルクコーヒー飲料は、乳成分を含有する。乳成分の種類としては、各種液状乳類(例えば牛乳、やぎ乳、加工乳、脱脂乳、乳飲料、濃縮乳、脱脂濃縮乳)や、粉乳類(例えば全粉乳、脱脂粉乳、調整粉乳)、練乳類(例えば無糖練乳、加糖練乳)、クリーム類、発酵乳(例えば全脂無糖ヨーグルトや脱脂加糖ヨーグルトやドリンクタイプ・ヨーグルト等のヨーグルト、乳酸菌飲料)、チーズ類(例えば各種ナチュラルチーズ、プロセスチーズ)、アイスクリーム類(例えばアイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、ソフトクリーム)、シャーベットやこれらを含む組成物などが挙げられる。これらの中でも、乳、全粉乳、脱脂粉乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、生クリーム、又は無糖練乳が好ましく、乳の中でも牛乳が特に好ましい。これらの乳成分は、一種を単独で使用してもよいし、複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
本実施形態に係る容器詰めミルクコーヒー飲料における乳糖含有量は、0.30g/100g以上であることが好ましく、0.48g/100g以上であることがより好ましく、0.72g/100g以上であることが更に好ましく、0.96g/100g以上であることが特に好ましい。乳糖含有量が上記範囲にあることにより、十分なミルクの味わいを持ったミルクコーヒー飲料となる。
また、本実施形態に係る容器詰めミルクコーヒー飲料における乳糖含有量は、3.84g/100g以下であることが好ましく、3.36g/100g以下であることがより好ましく、2.88g/100g以下であることが更に好ましい。乳糖含有量が上記範囲にあることにより、ミルクの味が強すぎないバランスが取れたミルクコーヒー飲料となる。
また、上記のように乳糖を多く含有する容器詰めミルクコーヒー飲料は、乳成分に由来する凝集物が発生しやすいが、本実施形態に係る容器詰めミルクコーヒー飲料は、凝集物の発生が抑制される。
【0021】
なお、容器詰めミルクコーヒー飲料における乳糖の含有量は、使用する乳原料の種類や、それら2種以上の配合によって適宜調整することができる。また、容器詰めミルクコーヒー飲料における乳糖の含有量は、高速液体クロマトグラフィー(日本ウォーターズ社製、Alliance HPLC、移動相:75%アセトニトリル、カラム:Wakosil 5NH2 4.6mm×250mm、ガードカラム:Wakosil 5NH2 4.6mm×30mm、検出器RI)によって測定することができる。
【0022】
本実施形態に係る容器詰めミルクコーヒー飲料における乳固形分量は、0.73~9.44質量%であることが好ましく、1.18~8.26質量%であることがより好ましく、1.77~7.08質量%であることが更に好ましく、2.36~5.90質量%であることが特に好ましい。乳固形分量が上記範囲にあることにより、ミルクの風味、濃度感とコクのバランスがよいミルクコーヒー飲料となる。なお、容器詰めミルクコーヒー飲料における乳固形分の含有量は、使用する乳成分の種類や、それら2種以上の配合によって適宜調整することができる。
【0023】
(カフェインと乳糖の質量比)
本実施形態に係る容器詰めミルクコーヒー飲料において、コーヒー抽出物と、乳成分との配合比は、カフェインと乳糖との質量比で示すことができる。本実施形態に係る容器詰めミルクコーヒー飲料において、カフェインに対する乳糖の質量比(乳糖の質量/カフェインの質量)は、3.0~96.0であることが好ましく、4.8~84.0であることがより好ましく、7.2~72.0であることが更に好ましい。カフェインに対する乳糖の質量比が上記の範囲にあることにより、コーヒーとミルクの香味のバランスがより良いミルクコーヒー飲料となる。
【0024】
(重曹)
本実施形態に係る容器詰めミルクコーヒー飲料における重曹(炭酸水素ナトリウム)濃度(質量%)は、0.04~0.125質量%もしくは0.15質量%以上であることが好ましく、0.06~0.09質量%もしくは0.15質量%以上であることがより好ましく、0.06~0.09質量%もしくは0.16質量%以上であることが更に好ましく、0.16質量%以上であることが特に好ましい。重曹の含有量が上記範囲にあることにより、凝集物の発生を効率的に防ぐことができる。
また、本実施形態に係る容器詰めミルクコーヒー飲料における重曹配合量(質量%)の上限は、ミルクコーヒー飲料の香味への影響を避ける観点から0.4質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以下であることがより好ましく、0.25質量%以下であることが更に好ましい。
【0025】
本実施形態の一実施形態に係る容器詰めミルクコーヒーにおいて、重曹配合量(質量%)から得られる無次元数Y(Y>0.04)と、コーヒー抽出物の固形分(Brix値)から得られる無次元数X(X≧1.1)とは、下記式1又は式2を満たすことが好ましい。
(式1)Y≧0.1224X-0.0097
(式2)Y≦-0.1349X+0.2725
本実施形態が式1を満たすことで、乳カゼインたんぱくの電荷的安定性が保たれ、カゼインミセルの凝集が抑制されながらも、より高F値での殺菌に耐えられる。
本実施形態が式2を満たすことで、乳カゼインたんぱくの電荷的安定性が保たれ、カゼインミセルの凝集が抑制されながらも、重曹由来の塩味を抑えコーヒーの風味を多く残すことができる。
【0026】
ここで、本明細書において、無次元数とは、単位を持つ数値から単位を削除したものを意味し、例えば重曹配合量が10質量%である場合の無次元数Yは10となり、コーヒー抽出物の固形分(Brix値)が1.0°Brixである場合の無次元数Xは1.0となる。
【0027】
本実施形態に係る容器詰めミルクコーヒーは、上述の式1又は式2を満たすか、上述の重曹配合量を満たすか、のいずれかであることが好ましい。特に好ましくは、式1又は式2と、上述の重曹配合量(質量%)と、の両方を満たすことが好ましい。
【0028】
(pH)
重曹(炭酸水素ナトリウム)によりpHを調整することができるが、本実施形態に係る容器詰めミルクコーヒー飲料は必要に応じて、重曹(炭酸水素ナトリウム)以外のpH調整剤を添加することによりpHの調整を行うことができる。重曹(炭酸水素ナトリウム)以外のpH調整剤としては、例えばクエン酸、リンゴ酸、酒石酸、酢酸、乳酸、フィチン酸及びグルコン酸等の有機酸又はそれらのアルカリ塩や、炭酸カリウム等のアルカリ金属塩等が用いられる。これらは1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合せて使用することもできる。
【0029】
(乳化剤)
本実施形態に係る容器詰めミルクコーヒー飲料は、乳化剤を含有してもよい。乳化剤としては、ショ糖脂肪酸エステル(シュガーエステル)、グリセリン脂肪酸エステル、レシチン類、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。
乳化剤の含有量は0.03~0.2質量%であることが好ましく、特に0.04~0.19質量%であることが好ましく、更には0.05~0.18質量%であることが好ましい。乳化剤の含有量が上記範囲にあることにより、凝集物の発生を効率的に防ぐことができる。なお、容器詰めミルクコーヒー飲料における乳化剤の含有量は、使用する乳化剤の種類や、それら2種以上の配合によって適宜調整することができる。
【0030】
(糖類)
本実施形態に係る容器詰めミルクコーヒー飲料は、乳糖以外の糖類を含有してもよい。乳糖以外の糖類には、グルコース、果糖、砂糖、麦芽糖、オリゴ糖などが含まれる。グルコースは、前述した飲料液配合用の乳原料が含有していたものであってもよいし、別途添加したものであってもよい。上記糖類の総含有量は、糖類が乳糖及び/又はグルコースの場合に好ましく、特に糖類が乳糖及びグルコースの場合に好ましい。なお、容器詰めミルクコーヒー飲料における糖類の総含有量は、使用する糖の種類や、それら2種以上の配合によって適宜調整することができる。
【0031】
(他の成分)
本実施形態に係る容器詰飲料は、本実施形態の効果を阻害しない限り、前述した成分以外の添加剤を含有してもよい。かかる添加剤としては、例えば、安定剤、抗酸化剤、香料、人工甘味料、有機酸類、有機酸塩類、無機酸類、無機酸塩類、無機塩類、色素類、保存料、調味料、酸味料、果汁エキス類、野菜エキス類、花蜜エキス類等が挙げられる。これらの添加剤は、単独で、又は併用して配合することができる。
【0032】
2.容器
本実施形態に係る容器詰めミルクコーヒー飲料で使用する容器としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、スチール缶やアルミニウム缶等の金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、透明、半透明又は不透明のビンなどが挙げられ、特に限定されない。なお、PETボトルや紙容器等を用いる場合、高速充填が可能な製造工程を採用しやすい一方、かかる製造工程において凝集物の発生が特に問題となりやすい傾向にあるが、本実施形態においては殺菌処理における凝集物の発生が抑制されるため、PETボトルや紙容器等も好適に採用可能である。また、殺菌処理としてUHT殺菌を用いる場合、殺菌後に容器へミルクコーヒー飲料を充填することから、本実施形態で使用する容器は、飲料の充填後に容器の密閉を実現できるキャップを備えた、キャップ付き容器であることが好ましい。
【0033】
3.製造方法
本実施形態に係る容器詰めミルクコーヒー飲料の製造方法では、まず、所望の原材料を配合する配合工程において、乳糖を0.30g/100g以上含有し、下記の条件1及び条件2のいずれか、又は両方を満たすミルクコーヒー飲料を得る。
(条件1)
コーヒー抽出物の固形分(Brix値)から得られる無次元数X(X≧1.1)と、重曹配合量(質量%)から得られる無次元数Y(Y>0.04)とが、下記式1又は式2を満たすこと。
(式1)Y≧0.1224X-0.0097
(式2)Y≦-0.1349X+0.2725
(条件2)
重曹配合量(質量%)が0.04~0.125質量%もしくは0.15質量%以上であること。
【0034】
また、当該ミルクコーヒー飲料は、カフェインを40mg/100g以上含有してもよく、さらに必要に応じて糖類やpH調整剤、その他の添加剤を混合してもよい。加えて、当該ミルクコーヒー飲料を、ホモゲナイザー等によって均質化処理しても良い。
【0035】
次いで得られたミルクコーヒー飲料を殺菌工程においてF値60以上で加熱殺菌し、容器へ充填することで、本実施形態に係る容器詰めミルクコーヒー飲料を得る。なお、加熱殺菌工程及び充填工程の順序は、容器の種類、加熱殺菌の方法などにより適宜設定される。
【0036】
加熱殺菌は、食品衛生法に定められた殺菌条件で行う。本実施形態に係る加熱殺菌処理はF値が60以上であることが好ましく、65以上であることがより好ましく、70以上であることが特に好ましい。F値が上記の範囲にあることにより、保存期間中の微生物の増殖を抑えることができ、長期の保存が可能となる。ここでF値とは飲料を加熱殺菌した場合の加熱殺菌効果を評価する値で、基準温度(121.1℃)に規格化した場合の加熱時間(分)に相当する。F値は、容器内温度に対する致死率(121.1℃で1)に対し、加熱時間(分)を乗じて算出することができる。致死率は致死率表(藤巻正生ら、「食品工業」、恒星社厚生閣、1985年、1049頁)から求められる。F値を算出するには、一般的に用いられる面積計算法、公式法等を採用することができる(例えば谷川ら《缶詰製造学》頁220、恒星社厚生閣 参照)。本発明において、F値を所定の値になるように設定するには、例えば、予め得た致死率曲線から、適当な加熱温度(殺菌温度)及び加熱時間を決めればよい。
【0037】
加熱殺菌の加熱温度(殺菌温度)は、F値を満たすように適宜選択できるが、例えば、121℃以上であることが好ましく、124℃以上であることがより好ましく、136℃以上であることが特に好ましい。上限は特に制限されないが、142℃以下であることが好ましい。殺菌温度が上記の範囲にあることにより、短時間で加熱殺菌を終えることができる。
【0038】
加熱殺菌の方法は、F値を満たすように適宜選択できるが、UHT殺菌、レトルト殺菌等が挙げられる。UHT殺菌の場合、例えば、136~142℃で30秒~300秒間行うことが好ましく、137~141℃で37秒~160秒間行うことがより好ましく、138~140℃で47秒~111秒間行うことが特に好ましい。レトルト殺菌の場合、例えば、121~142℃で47秒~150分間行うことが好ましい。充填速度(生産効率)の観点、そして風味劣化が少ないという観点から、UHT殺菌が好ましい。
【0039】
UHT殺菌の場合、レトルト殺菌と比較してより高温で殺菌処理するため、凝集がより発生し易くなる。しかしながら、本実施形態に係る容器詰めミルクコーヒー飲料では、いずれの殺菌方法で加熱殺菌したとしても、凝集の発生が抑制される。更に、UHT殺菌の場合、UHT殺菌は主に連続生産で採用されるため、製造工程中に凝集物が蓄積したときにその除去にあたり製造工程を停止する必要があり、凝集物の発生は生産効率に著しく影響するが、本実施形態においては凝集物の発生が抑制されるためUHT殺菌にも好適に適用できる。
【0040】
4.凝集物の抑制方法
本発明の一実施形態に係る容器詰めミルクコーヒー飲料における凝集物の抑制方法では、まず、所望の原材料を配合する配合工程において、乳糖を0.30g/100g以上含有し、下記の条件1及び条件2のいずれか、又は両方を満たすミルクコーヒー飲料を得る。
(条件1)
コーヒー抽出物の固形分(Brix値)から得られる無次元数X(X≧1.1)と、重曹配合量(質量%)から得られる無次元数Y(Y>0.04)とが、下記式1又は式2を満たすこと。
(式1)Y≧0.1224X-0.0097
(式2)Y≦-0.1349X+0.2725
(条件2)
重曹配合量(質量%)が0.04~0.125質量%もしくは0.15質量%以上であること。
【0041】
また、当該ミルクコーヒー飲料は、カフェインを40mg/100g以上含有してもよく、さらに必要に応じて糖類やpH調整剤、その他の添加剤を混合してもよい。加えて、当該ミルクコーヒー飲料を、ホモゲナイザー等によって均質化処理しても良い。
【0042】
次いで得られたミルクコーヒー飲料を殺菌工程においてF値60以上で加熱殺菌し、容器へ充填することで、本実施形態に係る容器詰めミルクコーヒー飲料を得る。なお、加熱殺菌工程及び充填工程の順序は、容器の種類、加熱殺菌の方法などにより適宜設定される。かかる方法によれば、加熱殺菌による凝集の発生が効果的に抑制される。
【0043】
以上で説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例0044】
以下に、本発明の実施の態様について、容器詰めミルクコーヒー飲料がレトルト殺菌により加熱殺菌される場合を例として実施例をあげて説明するが、本発明の構成要件を満たす限りにおいて、以下の態様例に限定されるものではない。
【0045】
〔試験区1~37〕
下記表1~3に示された処方に従って、試験区1~37を調整した。
1.コーヒー抽出物
コーヒー豆3.85%を粉砕し、88℃の温水にてドリップ抽出を行った。抽出液量は粉砕豆に対して、抽出効率26%となるように回収し、下記表1~3のコーヒー抽出物の固形分(Brix値)となるように必要量使用した。
【0046】
2.調合
上記で得られたコーヒー抽出物と、牛乳(明治社製)(乳固形分:11.8質量%,乳糖:4.8質量%)と、重曹(トクヤマ社製)とを、下記表1~3に示された処方に従って混合した。また、グリセリン脂肪酸エステルを0.01質量%、カゼインNaを0.1質量%、シュガーエステルを0.05質量%添加するとともに、ホモゲナイザーによって均質化処理した。このようにして、ミルクコーヒー飲料を得た。
【0047】
3.加熱殺菌処理
得られたミルクコーヒー飲料を缶に充填し、密封した後に、F値:146で加熱殺菌(140℃、113秒、レトルト殺菌)し、試験区1~37に係る容器詰め飲料を得た。
【0048】
上記の容器詰め飲料(試験区1~37)の成分の分析方法は以下のとおりである。また、各試験区において、式1の左辺(重曹配合量(質量%)から得られる無次元数Y)が右辺より大きい場合は○、右辺より小さい場合は×、とした。同様に、各試験区において、式2の左辺(重曹配合量(質量%)から得られる無次元数Y)が右辺より大きい場合は×、左辺より小さい場合は○、とした。
【0049】
<カフェイン量>
高速液体クロマトグラフィー(日本ウォーターズ社製、Alliance HPLC、カラム:Cadenza CD-C18、流速:0.8ml/min)によって測定した。
【0050】
<コーヒー抽出物の固形分(Brix値)>
光学屈折率計(アタゴ社製,「RX-5000α-Bev」)を使用して測定した。
【0051】
<乳糖量>
高速液体クロマトグラフィー(日本ウォーターズ社製、Alliance HPLC、移動相:75%アセトニトリル、カラム:Wakosil 5NH2 4.6mm×250mm、ガードカラム:Wakosil 5NH2 4.6mm×30mm、検出器RI)によって測定した。
【0052】
4.保管
上記で得た容器詰め飲料(試験区1~37)を、70℃の環境下で1週間を保管した。
【0053】
5.凝集の評価
上記のとおりに保管した容器詰め飲料(試験区1~37)を開缶し、液体を除き、缶底に沈殿した凝集物を観察することで評価した。評価の基準は以下の通りである。結果を表1~3に示す。
【0054】
<凝集の評価基準>
〇:缶底の半分以上が凝集物に覆われておらず、底の面が見える。
△:缶底の半分以上が凝集物に覆われているが、底の面が見える。
×:缶底のほぼすべてが凝集物に覆われ、底の面が全く見えない。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
表1~3に示す通り、試験区5~7、9、11、13、16、20、22、23、25、27、28、34~37の容器詰めミルクコーヒー飲料は、凝集物の発生が十分に抑制されており、良好な結果を得た。また試験区26、30の容器詰めミルクコーヒー飲料は、ある程度凝集物の発生が抑制されており許容範囲内であった。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、コーヒー濃度及び乳成分の濃度は高いが、加熱殺菌を施しても凝集物が発生しにくい容器詰めミルクコーヒー及びその製造方法を提供することができる。また、容器詰めミルクコーヒー飲料における凝集物の抑制方法も提供することができる。