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特開2022-138801試料厚み方向のせん断弾性率の測定方法
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  • 特開-試料厚み方向のせん断弾性率の測定方法 図1
  • 特開-試料厚み方向のせん断弾性率の測定方法 図2
  • 特開-試料厚み方向のせん断弾性率の測定方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138801
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】試料厚み方向のせん断弾性率の測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/24 20060101AFI20220915BHJP
【FI】
G01N3/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021038890
(22)【出願日】2021-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000151243
【氏名又は名称】株式会社東レリサーチセンター
(74)【代理人】
【識別番号】100186484
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 満
(72)【発明者】
【氏名】的場 伸啓
【テーマコード(参考)】
2G061
【Fターム(参考)】
2G061AA11
2G061AB04
2G061BA04
2G061CA01
2G061CA10
2G061CA15
2G061CB07
2G061EB07
2G061EC02
(57)【要約】
【課題】デジタル画像相関法を用いて試料厚み方向のせん断弾性率を求める。
【解決手段】打ち抜きせん断試験におけるせん断応力に対応するせん断ひずみをデジタル画像相関法により解析する手順を含む、試料厚み方向のせん断弾性率の測定方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
打ち抜きせん断試験におけるせん断応力に対応するせん断ひずみをデジタル画像相関法により解析する手順を含む、試料厚み方向のせん断弾性率の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料厚み方向のせん断弾性率の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
曲げ弾性率に関する測定方法としては特許文献1があり、繊維強化プラスチックに対して、面内方向のせん断弾性率の測定方法としてはJIS K7019-1999に記載されている±45°法がある。±45°法は、繊維方向に対して±45°方向に短冊試験片を作製し、短冊試験片中央部の長手方向、および短手方向にひずみゲージを貼り付けて引張試験を実施することで、面内方向のせん断弾性率を求めることができる。また、試料厚み方向のせん断試験には、JIS K7214-1985に記載されている打ち抜きせん断試験方法がある。この試験は、平板形状の試料を固定し、ダイ内径(φ25.40mm)に対してわずかなクリアランスを持ったポンチ(φ25.37mm)で負荷することにより固定具と圧子の境目に発生するずれ(せん断変形)の最大荷重を求め、その値をせん断面積で除することによりせん断強度を求める方法である。
【0003】
しかしながら、JIS K7214-1985に記載されている打ち抜きせん断試験方法では、打ち抜き中のせん断変位を計測することは可能であるが、せん断弾性率を求めることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-36600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
JIS K7214-1985に記載されている打ち抜きせん断試験方法では、せん断弾性率を求めることができない。本発明は、試料厚み方向のせん断弾性率を測定することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成からなる。つまり、打ち抜きせん断試験におけるせん断応力に対応するせん断ひずみをデジタル画像相関法により解析する手順を含む、試料厚み方向のせん断弾性率の測定方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の測定方法を用いることで、試料厚み方向のせん断弾性率を求めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】打ち抜きせん断試験方法の概略図の一例である。
図2】ガラス繊維強化プラスチックに対して、図1の測定方法を実施した結果である。
図3】ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂に対して、図1の測定方法を実施した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
デジタル画像相関法(以下、DICと記すことがある。)は、計測対象物表面の変形前後におけるデジタル画像を取得し、得られたデジタル画像の輝度分布から測定物表面の変位量、変位方向を同時に求め、画像解析により測定物表面のひずみ分布解析を行う手法である。測定対象物表面には一般にスペックルパターンと呼ばれる模様を施し、変形前の画像上における任意の点を中心とする微小画像領域(サブセット)内での輝度分布を求める。変形後の画像から変形前のサブセットの分布と最も良い相関を得るサブセットを探索し、その中心点を着目していた点の変形後の位置とすることで変位を得ることができる。
【0010】
DICにより、打ち抜きせん断試験において打ち抜く前後のみならず、せん断応力が変化していく経過の任意の時点でのせん断ひずみも解析することができる。
【0011】
そして、打ち抜きせん断試験における経過のせん断応力に対応するせん断ひずみを複数点プロットしてせん断応力-せん断ひずみ線図を作画し、その初期直線の勾配からせん断弾性率を求めることができる。
【0012】
打ち抜きせん断試験に用いる試料のサイズは、特に限定されないが、厚みは1mm以上100mm以下、長さは10mm以上300mm以下、幅は5mm以上100mm以下が好ましく例示される。試料の材質は高分子材料、金属材料、複合材料など、特に限定されないが厚み方向のせん断弾性率がおよそ1GPa以上300GPa以下であれば測定可能である。打ち抜きせん断試験時の測定雰囲気は、特に限定されないが、室温大気中が例示され、せん断試験速度は、0.1mm/min~10mm/min程度である。
【実施例0013】
以下、本発明を実施例により説明する。
【0014】
打ち抜きせん断試験に用いた試験機は、インストロン社製 小型万能材料試験機 Model5565であり、デジタル画像相関法システムは、Gom社製 デジタル画像相関法システムARAMISである。測定雰囲気は室温大気中、試験速度=1.0mm/minで実施した。
【0015】
ガラス繊維強化プラスチック(厚み=8mm)に対して、図1記載のように直径=6mmの半円形状の孔を作製した後、ボルト、座金を用いてナットにて固定し、JIS K7214-1985に概ね準じて試験を実施した。
【0016】
図1中3のせん断部について、デジタル画像を取得し、所定のせん断応力がかかった時点に対応する画像から、デジタル画像相関法によるひずみ分布解析を行い、変形前の画像上における任意の点を中心とする微小画像領域(サブセット)内での輝度分布を求めた。変形後の画像から変形前のサブセットの分布と最も良い相関を得るサブセットを探索し、その中心点を着目していた点の変形後の位置とすることで変位、すなわちせん断ひずみを得た。
【0017】
図2に打ち抜きせん断試験、およびデジタル画像相関法で得られたせん断応力-せん断ひずみ線図を示す。また、デジタル画像相関法で得られたせん断ひずみ分布解析結果も示す。なお、試験は試験途中で試験機を停止させている。せん断応力-せん断ひずみ線図の初期直線4の勾配からせん断弾性率が求まり、結果、せん断弾性率=2.1GPaであった。
【0018】
図3は、PBT樹脂に対して打ち抜きせん断試験を実施して得られたせん断応力-せん断ひずみ線図、およびデジタル画像相関法で解析して得られたせん断ひずみ分布解析結果を示している。PBT樹脂の厚みは5.3mmであり、直径10mmの半円形状の孔を作製した後、直径10mmのステンレス棒を差し込み測定を実施した。なお、PBT樹脂とステンレス棒が接触している部位には市販の瞬間接着剤を用いて接着を行っている。せん断応力-せん断ひずみ線図の初期直線5の勾配からせん断弾性率を求めると、せん断弾性率=0.75GPaであった。また、せん断応力-せん断ひずみ線図において、最大せん断応力を示している箇所が降伏せん断応力であり、その後、せん断応力、せん断ひずみは徐々に低下し、最終的には、ステンレス棒がPBT樹脂より抜ける挙動を確認した。
【符号の説明】
【0019】
P 荷重
1 断面図
2 正面図
3 せん断部
4 せん断応力-せん断ひずみ線図の初期直線
5 せん断応力-せん断ひずみ線図の初期直線
a せん断応力=約6MPaの点とその点におけるDIC法で解析して得られた画像
b せん断応力=約10MPaの点とその点におけるDIC法で解析して得られた画像
c せん断応力=約13MPaの点とその点におけるDIC法で解析して得られた画像
d 荷重=約500Nの点とせん断応力=約6MPaの点、およびその点におけるDIC法で解析して得られた画像
e 荷重=約475Nの点とせん断応力=約5.7MPaの点、およびその点におけるDIC法で解析して得られた画像
f 荷重=約85Nの点とせん断応力=約1MPaの点、およびその点におけるDIC法で解析して得られた画像
図1
図2
図3