(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138812
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】車両の運転者状態判定装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/16 20060101AFI20220915BHJP
A61B 5/18 20060101ALI20220915BHJP
A61B 3/11 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
A61B5/16 130
A61B5/18
A61B3/11
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021038909
(22)【出願日】2021-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【弁理士】
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】山中 暁
【テーマコード(参考)】
4C038
4C316
【Fターム(参考)】
4C038PP05
4C038PQ03
4C038PS07
4C038VA15
4C038VB04
4C038VC05
4C316AA28
4C316AB16
4C316FA20
4C316FC28
4C316FZ01
4C316FZ03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】運転者の状態を正確に判定するとともに、コスト高になることを抑制することが可能な車両の運転者状態判定装置を提供する。
【解決手段】車両の運転者状態判定装置は、車両の運転者を撮像する撮像部と、撮像部の撮像により取得された画像から運転者の瞳孔径に係る情報を検出する瞳孔径検出部、及び運転者の目の瞼位置に係る情報を検出する開眼状態検出部と、瞳孔径検出部により検出された瞳孔径に係る情報、及び開眼状態検出部により検出された瞼位置に係る情報に基づいて、運転者の状態を判定する状態判定処理を行う運転者状態判定部とを備える。運転者状態判定部は、瞳孔径の変化及び瞼が閉じられることによる瞼位置の変化が同期したことを条件として、同期時に検出された瞳孔径に係る情報及び瞼位置に係る情報を、状態判定処理の対象から除外する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転者を撮像する撮像部と、
前記撮像部の撮像により取得された画像から前記運転者の瞳孔径に係る情報を検出する瞳孔径検出部、及び、前記運転者の目の瞼位置に係る情報を検出する開眼状態検出部と、
前記瞳孔径検出部により検出された前記瞳孔径に係る情報、及び、前記開眼状態検出部により検出された前記瞼位置に係る情報に基づいて、前記運転者の状態を判定する状態判定処理を行う運転者状態判定部とを備え、
前記運転者状態判定部は、前記瞳孔径の変化、及び瞼が閉じられることによる前記瞼位置の変化が同期したことを条件として、同期時に検出された前記瞳孔径に係る情報及び前記瞼位置に係る情報を、前記状態判定処理の対象から除外すること、を特徴とする車両の運転者状態判定装置。
【請求項2】
前記開眼状態検出部は、前記瞼位置に基づいて瞼の閉じ率を導出可能であり、
前記運転者状態判定部は、前記閉じ率、及び前記閉じ率が所定値以上で継続する継続時間に基づいて、瞼が閉じられることにより前記瞼位置の変化が生じたものとすること、を特徴とする請求項1に記載の車両の運転者状態判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転者状態判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の運転者状態判定装置が提案されている(例えば、特許文献1~5参照)。
【0003】
上記特許文献1には、ユーザから取得される瞳孔径等の生体情報に基づいて、ユーザの状態を推定する情報処理装置が開示されている。上記特許文献1には、ユーザの瞳孔径を測定するための周囲の入射光の光量又は注視点等の測定条件に基づいて、基準となる瞳孔径(基準瞳孔径)のキャリブレーションを行い、測定条件に対して適切な基準瞳孔径を設定することによりユーザの状態を推定すること、が記載されている。また、上記特許文献1には、測定された瞳孔径が基準瞳孔径より大きい場合にユーザが興奮状態にあり、測定された瞳孔径が基準瞳孔径より小さい場合にはユーザが疲労(眠い)状態にあると推定され得ること、が記載されている。
【0004】
上記特許文献2には、夜間等での運転において、運転者の視界を適切に確保する車両用視界支援装置が開示されている。上記特許文献2には、車両の運転者の顔部が撮像装置により撮像され、撮像された画像から運転者の瞳孔径が取得され、運転者の瞳孔径に基づいて瞳孔径とヘッドライトの照明範囲との関係が規定された照明範囲マップを参照して、ヘッドライトの照明範囲が決定されること、が記載されている。
【0005】
上記特許文献3には、車両に設けられた照明部(例えば、ウィンカーインジケーターランプの点滅)を利用して、ドライバの瞳孔径の変化に基づきドライバの状態を判定するドライバ状態判定装置が開示されている。上記特許文献3には、車両に設けられた照明部からの光による瞳孔径の変化量が所定値未満である場合には、ドライバが緊張状態にあると判定されるとともに、車両に設けられた照明部からの光による瞳孔径の変化量が所定値以上である場合には、ドライバが安静状態にあると判定されること、が記載されている。
【0006】
上記特許文献4には、ユーザのストレス度合いを判定するために、ユーザの瞳孔径及び瞼の開閉間隔の検出結果を利用する情報処理装置が開示されている。上記特許文献4には、ユーザの眼の撮像映像に対して画像認識が行われることにより、ユーザの瞳孔径や瞼の開閉間隔等の眼球運動が検出され、検出結果に基づいてユーザのストレス兆候の有無が判定されること、が記載されている。
【0007】
上記特許文献5には、ドライバが危険感を認識している状態であるか否かを判定するドライバ状態判定装置が開示されている。上記特許文献5には、ドライバの心拍数が継続して上昇しているか否か、及びドライバの瞬目間隔が必要以上に長いか否かが検出され、これらの検出結果に基づいてドライバが危険感を認識している状態であるか否かが判定されること、が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2018/100875号
【特許文献2】特開2009-113622号公報
【特許文献3】特開2016-139258号公報
【特許文献4】特開2019-40495号公報
【特許文献5】特開2015-32005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1~5には、運転者等における瞳孔径の変化等の生体情報に基づいて、運転支援を行う技術が開示されている。ところで、夕日による日差し及び対向車のヘッドライト光源等の一方向からの入射性が高い光によって、車外の明暗と車内の明暗とが同等でない場合がある。例えば、所定の位置に配置されたヘッドライトを制御するための車外照度センサからの情報だけでは、運転者が実際に感じる明るさを検知できない場合がある。
【0010】
上記のように、運転者の瞳孔径の変化により運転者自身の認知機能の低下を取得しようとする場合には、車外の明暗での瞳孔径キャリブレーションを行うことが困難である。このため、外乱の光による瞳孔径の変化と、運転者の認知機能の低下による瞳孔径の変化とを区別できずに誤判定する懸念があり、運転者の状態について正確な判定ができないという不具合がある。
【0011】
一方、車室内において運転者の近傍に複数の照度センサを設けることにより、車室内の照度状態を正確に取得することも考えられるが、コスト高となるという問題点がある。
【0012】
本発明は、上記問題点を解消すべくなされたものであって、運転者の状態を正確に判定するとともに、コスト高になることを抑制することが可能な車両の運転者状態判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は、次のように構成されている。
【0014】
(1)本発明による車両の運転者状態判定装置は、車両の運転者を撮像する撮像部と、前記撮像部の撮像により取得された画像から前記運転者の瞳孔径に係る情報を検出する瞳孔径検出部、及び、前記運転者の目の瞼位置に係る情報を検出する開眼状態検出部と、前記瞳孔径検出部により検出された前記瞳孔径に係る情報、及び、前記開眼状態検出部により検出された前記瞼位置に係る情報に基づいて、前記運転者の状態を判定する状態判定処理を行う運転者状態判定部とを備え、前記運転者状態判定部は、前記瞳孔径の変化、及び瞼が閉じられることによる前記瞼位置の変化が同期したことを条件として、同期時に検出された前記瞳孔径に係る情報及び前記瞼位置に係る情報を、前記状態判定処理の対象から除外すること、を特徴とする。
【0015】
上記構成によれば、運転者における瞳孔径の変化と瞼位置の変化とが反射レベル(反射的なまばたき等)で同期した場合に、運転者の目に差し込んだ光等による影響(外乱要因)と判定することができる。これにより、瞳孔径の変化及び瞼位置の変化が同期した場合には、瞳孔径の変化を運転者の疲労や認知機能の低下等によるものとしないことができる。その結果、運転者の状態を正確に判定することができる。さらに、車室内の照度状態を正確に取得するための装置等を別途設置することが不要になるため、コスト高になることを抑制することができる。
【0016】
(2)本発明による車両の運転者状態判定装置において、好ましくは、前記開眼状態検出部は、前記瞼位置に基づいて瞼の閉じ率を導出可能であり、前記運転者状態判定部は、前記閉じ率、及び前記閉じ率が所定値以上で継続する継続時間に基づいて、瞼が閉じられることにより前記瞼位置の変化が生じたものとするとよい。このように構成すれば、瞼の閉じ率及び継続時間に基づくことにより、運転者の瞼位置の変化が正常な変化であるのか又は異常な変化であるのかを正確に判定することができる。
【0017】
(3)この場合において、好ましくは、前記運転者状態判定部は、前記瞳孔径の変化前後における縮小率が第一閾値以上であるとともに、前記瞼位置の開閉前後における縮小率が第二閾値以上で前記継続時間において継続する場合において、前記瞳孔径の変化及び前記瞼位置の変化が同期したことを条件として、同期時に検出された前記瞳孔径に係る情報及び前記瞼位置に係る情報を、前記状態判定処理の対象から除外するとよい。このように構成すれば、上記の縮小率及び継続時間等において瞳孔径の変化及び瞼位置の変化が同期する場合に、運転者の瞳孔径の変化及び瞼位置の変化が光刺激等の外乱による影響(外乱要因)であると判定される。このため、上記のような瞳孔径の変化及び瞼位置の変化があった場合に、即座に運転者の状態が異常であると誤判定されることを抑制することができる。
【0018】
(4)本発明による車両の運転者状態判定装置において、好ましくは、前記車両の外部の照度を検知する車外照度センサをさらに備え、前記運転者状態判定部は、前記車外の照度が所定の照度値以上であることを前記車外照度センサにより検知されたことを条件として、前記瞳孔径に係る情報及び前記瞼位置に係る情報を、前記状態判定処理の対象から除外するとよい。このように構成すれば、車外の照度が所定の照度値以上である場合には、照度の急高度化であるため、運転者の瞳孔径及び瞼位置が反射的に変化した状態であると判定することができる。その結果、照度の急高度化における運転者の瞳孔径の変化及び瞼位置の変化について、異常状態であると誤判定されることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る態様によれば、運転者の状態を正確に判定するとともに、コスト高になることを抑制することが可能な車両の運転者状態判定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施形態に係る車両の運転者状態判定装置の全体構成を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態による瞳孔間距離(瞳孔径の変化)に基づいて認知機能の低下について説明をするためのグラフである。
【
図3】本実施形態に係る車両の運転者状態判定装置における状態判定処理を示すフローチャートである。
【
図4】本実施形態に係る車両の運転者状態判定装置における状態判定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態に係る車両の運転者状態判定装置を説明する。これらの図は模式図であって、必ずしも大きさを正確な比率で記したものではない。また、図中、同様の構成部品は、同様の符号を付して示す。
【0022】
(全体構成)
図1を参照して、本実施形態に係る車両の運転者状態判定装置100の全体構成について説明する。車両の運転者状態判定装置100は、例えば、ハイブリッド自動車、電気自動車、及び自動運転車等の車両全般に適用(搭載)されるものである。
図1に示すように、車両の運転者状態判定装置100は、撮像部10と、センサ部20と、制御部30と、報知部40とを備えている。
【0023】
(撮像部)
撮像部10は、主に、ドライバモニタリングカメラ10aにより構成されている。ドライバモニタリングカメラ10aは、いわゆるドライブレコーダ等のカメラユニットにより構成されている。ドライバモニタリングカメラ10aは、例えば、車室内におけるフロントガラスやルームミラー等に取り付けられている。
【0024】
ドライバモニタリングカメラ10aは、車両を運転する運転者の顔(特に、目周辺)を撮像する。ドライバモニタリングカメラ10aは、撮像された運転者の顔の画像情報(データ)を後述する制御部30の計算システム31に送信する。また、ドライバモニタリングカメラ10aは、赤外線ライトを備えていてもよい。これにより、夜間走行中等の暗い車内において、運転者の顔を鮮明に撮像することが可能である。
【0025】
(センサ部)
センサ部20は、主に、車外照度センサ20aにより構成されている。車外照度センサ20aは、車両の外周部に設けられているとともに、車両の外部(車外)の照度を検知する。車外照度センサ20aは、検知された車両の外部の照度情報(データ)を、後述する制御部30の計算システム31に送信する。
【0026】
(制御部)
制御部30は、車両全体を制御する制御装置等である。制御部30は、計算システム31と、車両制御システム32とを備えている。
【0027】
計算システム31は、センサ部20の車外照度センサ20aにより検知された照度情報、及び、撮像部10のドライバモニタリングカメラ10aにより撮像された運転者の顔の画像情報に基づいて、運転者の瞳孔径に係る情報及び瞼位置に係る情報を検出する。さらに、計算システム31は、上記の情報に基づいて、運転者の正常状態及び異常状態を判定し、判定結果を車両制御システム32に送信する。
【0028】
計算システム31は、瞳孔径検出部31aと、開眼状態検出部31bと、運転者状態判定部31cとを備えている。
【0029】
瞳孔径検出部31aは、撮像部10のドライバモニタリングカメラ10aの撮像により取得された画像情報から、運転者の瞳孔径に係る情報(例えば、瞳孔径の大きさ、及び瞳孔径の拡大及び縮小による変化率等)を検出する。
【0030】
開眼状態検出部31bは、撮像部10のドライバモニタリングカメラ10aの撮像により取得された画像情報から、運転者の目の瞼位置に係る情報(例えば、上瞼と下瞼との間の距離等)を検出する。また、開眼状態検出部31bは、瞼位置に基づいて瞼の閉じ率を導出可能である。瞼の閉じ率とは、瞼におけるまばたき方向(縦方向)の距離の変化率をいう。また、運転者状態判定部31cは、瞼の閉じ率、及び、瞼の閉じ率が所定値以上で継続する継続時間に基づいて、瞼が閉じられることにより瞼位置の変化(瞼位置の閉じ)が生じたものと判定する。
【0031】
ここで、本実施形態では、運転者状態判定部31cは、瞳孔径検出部31aにより検出された瞳孔径に係る情報、及び、開眼状態検出部31bにより検出された瞼位置に係る情報に基づいて、運転者の正常状態及び異常状態を判定する状態判定処理を行う。また、本実施形態では、運転者状態判定部31cは、瞳孔径の変化、及び、瞼が閉じられることによる瞼位置の変化が同期したことを条件として、同期時に検出された瞳孔径に係る情報及び瞼位置に係る情報を、状態判定処理の対象から除外する処理を行う。
【0032】
具体的には、運転者状態判定部31cは、瞳孔径の変化前後における縮小率が第一閾値以上(例えば、15%以上)であるとともに、瞼位置の開閉前後における縮小率(瞼の閉じ率)が第二閾値以上(例えば、10%以上)で所定の継続時間において継続する場合において、瞳孔径の変化及び瞼位置の変化が同期したか否かを判定する。運転者状態判定部31cは、上記の瞳孔径の変化及び瞼位置の変化が同期したと判定することを条件として、同期時に検出された瞳孔径に係る情報及び瞼位置に係る情報を、状態判定処理の対象から除外する。上記の場合、運転者の瞳孔径の変化及び瞼位置の変化は車外における日差しや対向車のヘッドライト光源等による外乱要因であり、運転者における認知機能(認知度)の低下によるものではないと判定されるためである。
【0033】
ここで、
図2を参照して、運転者における認知機能の低下に関する判定について説明する。
図2では、経過時間に対する運転者の瞳孔間距離の変化(瞳孔径の変化)を示しており、横軸に時間[min]を示し、縦軸に瞳孔間距離[mm]を示している。
【0034】
図2において、瞳孔間距離は、時間の経過に伴って微小振動を繰り返すように変化している。また、時間における約5[min]を境界として、5[min]以下の範囲(単調縮瞳)と、5[min]以上の範囲(低周波ゆらぎ)とにおいて、瞳孔間距離の振れ幅が異なっている。すなわち、瞳孔間距離の振れ幅は、5[min]以下の範囲よりも5[min]以上の範囲の方が大きくなっている。なお、「単調縮瞳」は眠気が起こる前の状態(通常状態)を示し、「低周波ゆらぎ」は眠気が起こる前兆又は眠気の高い状態(眠気状態高)を示している。
【0035】
運転者の認知機能が低下した状態と眠気の高い状態とが略同等の状態(認知機能の低下≒眠気状態高)である場合には、認知機能が低下すると瞳孔径の単調縮瞳や低周波ゆらぎが発生する。本実施形態では、上記のように、時間に対する瞳孔径に係る情報(瞳孔径の変化)を検出することにより、瞳孔径の変化から運転者の認知機能の低下を判定することが可能である。
【0036】
図1に示すように、運転者状態判定部31cは、車外照度センサ20aにより、車外の照度が所定の照度値以上であることが検知されたことを条件として、瞳孔径に係る情報及び瞼位置に係る情報を状態判定処理の対象から除外する。上記の場合、運転者の瞳孔径の変化及び瞼位置の変化は、車外における日差しや対向車のヘッドライト光源等による外乱要因であると判定されるためである。
【0037】
車両制御システム32は、計算システム31の運転者状態判定部31cにより判定された判定結果に基づいて、車両を制御する制御装置である。例えば、運転者状態判定部31cにより運転者が正常状態であると判定されたことを条件として、車両制御システム32は、車両の走行を継続させる処理を行う。一方、運転者状態判定部31cにより運転者が異常状態であると判定されたことを条件として、車両制御システム32は、車両を停止させる処理及び/又は報知部40に対してアラートを出力させる処理を行う。
【0038】
(報知部)
報知部40は、主に、スピーカ及びインストルメントパネル等により構成されている。報知部40は、運転者が異常状態である(正常状態ではない)場合に、ブザー、音声、光、及び文字等により聴覚的及び視覚的にドライバに報知(警報)する。
【0039】
(状態判定処理)
図1、
図3、及び
図4を参照して、本実施形態に係る車両の運転者状態判定装置における状態判定処理について説明する。
【0040】
図3に示すように、ステップS10において、車両制御システム32により車両の走行状態が制御される。その後、ステップS11に進む。
【0041】
ステップS11において、車外照度センサ20aにより車両の外部の照度が計測(検知)され、車両の外部の照度情報(データ)が計算システム31に送信される。その後、ステップS12進む。
【0042】
ステップS12において、ドライバモニタリングカメラ10aにより運転者の顔部が撮像され、撮像された画像から運転者の瞳孔径に係る情報及び瞼位置に係る情報が検出される。このとき、ステップS11において検知された車両の外部の照度情報(データ)に基づいて、瞳孔径に係る情報についてキャリブレーションが行われる。例えば、夕日等により、ある瞳孔径が所定時間継続した場合は、その瞳孔径を基準径としてキャリブレーションが行われ、瞳孔径の変化による運転者の状態が判定される。
【0043】
瞳孔径に係る情報は、瞳孔径検出部31aにより、ドライバモニタリングカメラ10aによって撮像された画像から検出される。瞼位置に係る情報は、開眼状態検出部31bにより、ドライバモニタリングカメラ10aによって撮像された画像から検出される。なお、上記ステップS11及びS12における処理は、略同時に行われる。その後、ステップS13に進む。
【0044】
ステップS13において、運転者状態判定部31cにより瞳孔径の変化前後における縮小率が第一閾値以上(例えば、15%以上)であるか否かが判定される。ステップS13において、運転者状態判定部31cにより瞳孔径の変化前後における縮小率が15%以上ではない(15%未満)(No)と判定されたことを条件として、ステップS10に戻る。
【0045】
一方、ステップS13において、運転者状態判定部31cにより瞳孔径の変化前後における縮小率が15%以上である(Yes)と判定されたことを条件として、ステップS14に進む。
【0046】
ステップS14において、運転者状態判定部31cにより、瞼位置の開閉前後における縮小率(瞼の閉じ率)が第二閾値以上(例えば、10%以上)で、かつ、瞼位置の変化が所定の継続時間において継続しているか否かが判定される。
【0047】
ステップS14において、運転者状態判定部31cにより、瞼位置の開閉前後における縮小率が10%以上ではない(10%未満)、又は、瞼位置の変化が所定の継続時間において継続していない(No)と判定されたことを条件として、ステップS10に戻る。
【0048】
一方、ステップS14において、運転者状態判定部31cにより、瞼位置の開閉前後における縮小率が10%以上で、かつ、瞼位置の変化(瞼位置の閉じ)が所定の継続時間において継続している(Yes)と判定されたことを条件として、ステップS15(
図4参照)に進む。
【0049】
なお、上記のステップS13及びS14は、処理の順番が入れ替わってもよいし、それぞれの処理が略同時に行われてもよい。また、上記のステップS13において瞳孔径の変化が第一閾値以上の縮小であると判定された後に、ステップS14を省略して、ステップS15に進んでもよい。
【0050】
ステップS15において、車外照度センサ20aにより車外の照度が検知され、検知された照度情報(データ)が制御部30の計算システム31に送信される。計算システム31の運転者状態判定部31cは、車外照度センサ20aにより検知された照度が所定の照度値以上(照度の急高度化)であるか否かを判定する。
【0051】
ステップS15において、運転者状態判定部31cにより、車外照度センサ20aによって検知された照度が所定の照度値以上である(Yes)と判定されたことを条件として、ステップS16に進む。
【0052】
ステップS16において、運転者の瞳孔径の変化及び瞼位置の変化が、日差しや対向車のヘッドライト等の外乱要因によるものであり、運転者の認知機能の低下ではないと判断されるため、運転者の瞳孔径に係る情報及び瞼位置に係る情報が状態判定処理の対象から除外(判定キャンセル)される。その後、ステップS10(
図3参照)に戻る。
【0053】
一方、ステップS15において、運転者状態判定部31cにより、車外照度センサ20aによって検知された照度が所定の照度値未満である(No)と判定されたことを条件として、ステップS17に進む。
【0054】
ここで、本実施形態では、ステップS17において、運転者状態判定部31cにより、運転者の瞳孔径の変化及び瞼位置の変化が同期したか否かが判定される。なお、ステップS17における「同期」は、例えば反射反応レベルの時間に設定すると良く、本実施形態では約0.1秒であるが、この時間は適宜設定可能である。また、ステップS17において、瞳孔径の変化及び瞼位置の変化が同期したこと(Yes)を条件として、ステップS16に進む。
【0055】
ステップS16において、運転者状態判定部31cにより、運転者の瞳孔径の変化及び瞼位置の変化が日差しや対向車のヘッドライト等の外乱要因によるものであり、運転者の認知機能の低下ではないと判定されるため、運転者の瞳孔径に係る情報及び瞼位置に係る情報が状態判定処理の対象から除外(判定キャンセル)される。その後、ステップS10(
図3参照)に戻る。
【0056】
一方、ステップS17において、運転者状態判定部31cにより、運転者の瞳孔径の変化及び瞼位置の変化が同期していない(No)ことを条件として、ステップS18に進む。すなわち、運転者の瞳孔径の変化と瞼位置の変化とが同時に起こっていない場合等である。
【0057】
ステップS18において、運転者状態判定部31cにより、運転者の瞳孔径が変化(縮小)したと判定される。その後、ステップS19に進む。
【0058】
ステップS19において、運転者状態判定部31cにより、運転者の瞳孔径の変化が異常な変化であるか否かが判定される。ステップS19において、運転者状態判定部31cにより、運転者の瞳孔径の変化が異常な変化である(Yes)と判定されたことを条件として、ステップS20に進む。この場合、瞳孔径の変化が運転者の疲労や認知機能の低下等によるものと判定される。
【0059】
ステップS20において、車両制御システム32により車両制御が行われる。具体的には、車両制御システム32は、車両を停止させる処理及び/又は報知部40に対してアラートを出力させる処理を行う。その後、ステップS10に戻る。
【0060】
一方、ステップS19において、運転者の瞳孔径の変化が異常な変化ではない(No)と判定されたことを条件として、ステップS21に進む。ステップS21において、車両制御システム32は、車両の走行を継続させる処理を行う。その後、ステップS10に戻る。
【0061】
上記説明した実施形態によれば、以下の効果(1)~(4)を得ることができる。
【0062】
(1)上記実施形態による車両の運転者状態判定装置100では、運転者における瞳孔径の変化及び瞼位置の変化が同期したことを条件として、同期時に検出された瞳孔径に係る情報及び瞼位置に係る情報を、運転者状態判定部31cによる状態判定処理の対象から除外した。上記実施形態によれば、運転者における瞳孔径の変化と瞼位置の変化とが反射レベル(反射的なまばたき等)で同期した場合に、運転者の目に差し込んだ光等による影響(外乱要因)と判定することができる。これにより、瞳孔径の変化及び瞼位置の変化が同期した場合には、瞳孔径の変化を運転者の疲労や認知機能の低下等によるものとしないことができる。その結果、運転者の状態を正確に判定することができる。さらに、車室内の照度状態を正確に取得するための装置等を別途設置することが不要になるため、コスト高になることを抑制することができる。
【0063】
(2)上記実施形態による車両の運転者状態判定装置100では、瞼の閉じ率が10%以上でかつ所定の継続時間に基づいて、瞼が閉じられることにより瞼位置の変化が生じたものとした。これにより、瞼の閉じ率及び継続時間に基づくことにより、運転者の瞼位置の変化が正常な変化であるのか又は異常な変化であるのかを正確に判定することができる。
【0064】
(3)上記実施形態による車両の運転者状態判定装置100では、運転者の瞳孔径の変化前後における縮小率が第一閾値以上(15%以上)であるとともに、瞼位置の開閉前後における縮小率が第二閾値以上(10%以上)で所定の継続時間において継続する場合において、瞳孔径の変化及び瞼位置の変化が同期したことを条件として、同期時に検出された瞳孔径に係る情報及び瞼位置に係る情報を、運転者状態判定部31cによる状態判定処理の対象から除外した。これにより、上記の縮小率及び継続時間等において瞳孔径の変化及び瞼位置の変化が同期する場合に、運転者の瞳孔径の変化及び瞼位置の変化が光刺激等の外乱による影響(外乱要因)であると判定される。このため、上記の瞳孔径の変化及び瞼位置の変化があった場合に、即座に運転者の状態が異常であると誤判定されることを抑制することができる。
【0065】
(4)上記実施形態による車両の運転者状態判定装置100では、車外の照度が所定の照度値以上であることが車外照度センサ20aにより検知されたことを条件として、瞳孔径に係る情報及び瞼位置に係る情報を、運転者状態判定部31cによる状態判定処理の対象から除外した。これにより、車外の照度が所定の照度値以上である場合には、照度の急高度化であるため、運転者の瞳孔径及び瞼位置が反射的に変化した状態であると判定することができる。その結果、照度の急高度化における運転者の瞳孔径の変化及び瞼位置の変化について、異常状態であると誤判定されることを抑制することができる。
【0066】
(変形例)
上記実施形態は、以下のように変更した構成とすることもできる。
【0067】
上記実施形態では、車両の運転者を撮像する撮像部の一例として、ドライバモニタリングカメラを示したが、本発明はこれに限られない。例えば、車両の運転者を撮像することが可能であれば、ドライバモニタリングカメラ以外の撮像部を適用することも可能である。
【0068】
上記実施形態では、運転者の瞳孔径の変化前後における縮小率が第一閾値以上(例えば、15%以上)であるか否かを判定する例を示したが、本発明はこれに限られない。例えば、第一閾値を15%以外の値に設定することも可能である。
【0069】
上記実施形態では、運転者の瞼位置の変化前後における縮小率が第二閾値以上(例えば、10%以上)であるか否かを判定する例を示したが、本発明はこれに限られない。例えば、第二閾値を10%以外の値に設定することも可能である。
【0070】
上記実施形態は、いずれも本発明の適応の例示であり、特許請求の範囲に記載の範囲内におけるその他いかなる実施形態も、発明の技術的範囲に含まれることは当然のことである。
【符号の説明】
【0071】
10 :撮像部
10a :ドライバモニタリングカメラ
20 :センサ部
20a :車外照度センサ
30 :制御部
31 :計算システム
31a :瞳孔径検出部
31b :開眼状態検出部
31c :運転者状態判定部
32 :車両制御システム
40 :報知部
100 :車両の運転者状態判定装置