(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138832
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】電子装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20220915BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
H01L23/36 D
H05K7/20 A
H05K7/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021038936
(22)【出願日】2021-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100095795
【弁理士】
【氏名又は名称】田下 明人
(74)【代理人】
【識別番号】100143454
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 克彦
(72)【発明者】
【氏名】柴田 直哉
(72)【発明者】
【氏名】遠山 卓男
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AA11
5E322EA10
5E322FA04
5F136BC00
5F136BC07
5F136DA33
5F136EA03
(57)【要約】
【課題】回路基板に応力を作用させることなくその回路基板に関する放熱性を高め得る構成を提供する。
【解決手段】各LED23を含めた各種の電子部品が一側面21に実装される回路基板20には、他側面22に放熱シート60が貼り付けられる。ハウジング30は、対向面31aにて、台座32を利用して締結された回路基板20における他側面22に貼り付けられた放熱シート60に対して所定の隙間Gを介して対向し、対向面31aと放熱シート60との間に、液状放熱材70が介在する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱素子を含めた各種の電子部品が一方の面に実装される回路基板と、
前記回路基板を前記一方の面と異なる他方の面から支持するための締結用の台座が形成されるハウジングと、
を備える電子装置であって、
前記回路基板には、前記他方の面に放熱シートが貼り付けられ、
前記ハウジングは、対向面にて、前記台座を利用して締結された前記回路基板における前記他方の面に貼り付けられた前記放熱シートに対して所定の隙間を介して対向し、
前記対向面と前記放熱シートとの間に、液状放熱材が介在することを特徴とする電子装置。
【請求項2】
前記液状放熱材は、前記対向面と前記放熱シートとの間であって前記発熱素子の直下となる位置に介在することを請求項1に記載の特徴とする電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱素子を実装した回路基板を備える電子装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、LEDなどの発熱素子を実装した回路基板を備える電子装置では、発熱素子にて発生した熱を、その回路基板が支持されるハウジング等を介して放熱される。この放熱性を高めるため、回路基板とハウジング等との間に熱伝導性の高い放熱シートを介在させる構造を採用することができる。このように放熱シートを利用した放熱構造として、例えば、下記特許文献1に開示される電子機器が知られている。この電子機器にて採用される放熱シートは、アルミナ、酸化シリコン、酸化チタン、カーボンなどの熱伝導性が良好で放熱性に優れた材料からなる無機フィラーを、シリコーンまたはアクリルからなる高分子ゲルシートに含有させるようにして生成される。このように生成された放熱シートを採用することで、放熱部材表面に存在する凹凸への追従性が向上し、放熱に有効な接触面積が増大するため、良好な放熱性を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、回路基板が締結されるハウジングに放熱シートを接触させて放熱する放熱構造では、安定した放熱性を確保するため、放熱シートと回路基板との接触及び放熱シートとハウジングとの接触に関してそれぞれ隙間無く接触させる必要がある。このため、締結時に放熱シートが回路基板及びハウジングによって押しつぶされるように、回路基板とハウジングとの隙間が調整される。
【0005】
しかしながら、上述のように締結時に放熱シートを押しつぶす構成では、その放熱シートからの反力によって回路基板に応力が作用することになる。このため、回路基板に実装される電子部品の端子部分等に上記応力が作用してしまい、接続不良等の原因となる可能性がある。また、接続不良を防ぐ方法として金属端子を備える電子部品(例えば、金属端子付コンデンサなど)を回路基板に実装することや硬度が低い放熱シートを使用し反力を小さくすることで上記応力に起因する接続不良等を抑制できたとしても、各電子部品の単価が高くなってしまったり、放熱シートの貼付け性が悪化したことで生産性が低下してしまうために、電子装置の製造コストが増大してしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、回路基板に応力を作用させることなくその回路基板に関する放熱性を高め得る構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1の発明は、
発熱素子(23)を含めた各種の電子部品が一方の面(21)に実装される回路基板(20)と、
前記回路基板を前記一方の面と異なる他方の面(22)から支持するための締結用の台座(32)が形成されるハウジング(30)と、
を備える電子装置(10)であって、
前記回路基板には、前記他方の面に放熱シート(60)が貼り付けられ、
前記ハウジングは、対向面(31a)にて、前記台座を利用して締結された前記回路基板における前記他方の面に貼り付けられた前記放熱シートに対して所定の隙間(G)を介して対向し、
前記対向面と前記放熱シートとの間に、液状放熱材(70)が介在することを特徴とする。
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明では、発熱素子を含めた各種の電子部品が一方の面に実装される回路基板には、その一方の面と異なる他方の面に放熱シートが貼り付けられる。ハウジングは、対向面にて、台座を利用して締結された回路基板における他方の面に貼り付けられた放熱シートに対して所定の隙間を介して対向し、対向面と放熱シートとの間に、液状放熱材が介在する。
【0009】
これにより、発熱素子にて発生した熱は、回路基板の他方の面に貼り付けられる放熱シート及び液状放熱材を介してハウジングに伝わることで放熱される。特に、台座を利用して締結された回路基板に貼り付けられる放熱シートとハウジングの対向面との間には上記所定の隙間が介在し、この所定の隙間を埋めるように液状放熱材が広がることで、放熱シートを介して回路基板に作用する応力が生じることもない。したがって、回路基板に応力を作用させることなくその回路基板に関する放熱性を高めることができる。
【0010】
請求項2の発明では、液状放熱材は、対向面と放熱シートとの間であって発熱素子の直下となる位置に介在するため、発熱素子にて発生した熱を効率よく液状放熱材を介して放熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係る車両用灯具を示す平面図である。
【
図2】
図1に示すX1-X1線相当の切断面による断面図である。
【
図3】
図1に示すX2-X2線相当の切断面による断面図である。
【
図4】
図1からアウターカバーを取り外した状態を示す平面図である。
【
図5】回路基板と放熱シートとの位置関係を説明する説明図である。
【
図6】
図2のX3領域を拡大して示す断面図である。
【
図7】
図3のX4領域を拡大して示す断面図である。
【
図8】
図8(A)は、
図4のX5-X5線相当の切断面による断面図に関して、ハウジングの対向面に液状放熱材を塗布した締結前の状態を示す説明図であり、
図8(B)は、
図8(A)の状態から締結することで液状放熱材が広がった状態を説明する説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る電子装置が適用された車両用灯具の一実施形態について図を参照して説明する。
本実施形態に係る車両用灯具10は、例えば、フォークリフトの正面等に搭載されて作業範囲を照らす作業灯として機能するものである。この車両用灯具10は、
図1~
図3に示すように、主に、光源として機能する各種の電子部品が実装される回路基板20と、回路基板20が支持されるハウジング30と、アウターレンズ40と、枠体50とを備えている。
【0013】
図4等に示すように、回路基板20の一側面21には、作業灯(ワーキングランプ)として機能する複数のLED23と、車幅灯(ポジションランプ)として機能する複数のLED24と、方向指示器(フロントターンシグナルランプ)として機能する複数のLED25と、が実装されている。各LED23は、「発熱素子」の一例に相当し、その機能のため、各LED24及び各LED25に対して、光度を高くするために電流値が高くなることから、発熱温度が高くなる。また、回路基板20の一側面21には、コンデンサなどの他の電子部品が実装され、一側面21から他側面22にかけて、LED23の近傍等の所定の位置に冷却用のスルーホール26が形成される(
図7等参照)。なお、一側面21は、「一方の面」の一例に相当し、他側面22は、「一方の面」と異なる「他方の面」の一例に相当し得る。
【0014】
ハウジング30は、アルミダイキャスト製で、アウターレンズ40とともに回路基板20等を収容するように構成されている。このハウジング30の内面のうち回路基板20の他側面22に対向する底面31には、回路基板20を他側面22から支持するための締結用の台座32が形成されている(
図2参照)。そして、ハウジング30の外面には、底面31を介して伝わる熱を放熱する冷却フィン33が複数形成されている。
【0015】
アウターレンズ40は、透過性の高い樹脂、例えば、PMMA(ポリメチルメタクリレート)によって構成されて、回路基板20が支持されたハウジング30に対して、各LED23~25を覆うように組み付けられる。このため、各LED23~25は、アウターレンズ40を介して外部に光を照射することで、上述した各種の機能を発揮する。そして、各LED25とアウターレンズ40との間には、各LED25からの光を拡散させるリフレクタ41が配置されている。
【0016】
次に、本実施形態の特徴的構成である放熱構造について、図面を参照して説明する。
図5~
図7等に示すように、回路基板20には、他側面22のうち各LED23の直下を含める所定の範囲に、所定の厚さ(例えば、1mm)の放熱シート60が貼り付けられている。この放熱シート60は、回路基板20の各LED23にて生じた熱をハウジング30に伝えるためのシートである。また、放熱シート60によって、LED23近傍のスルーホール26は、他側面22側が閉塞される。また、放熱シート60の中央の開口を介して回路基板20の他側面22が台座32によって支持される。なお、本実施形態では、放熱シート60として、例えば、信越シリコーン社製TC-CAS-10などの熱伝導性の高いシートが採用されている。
【0017】
ハウジング30は、底面31の一部(以下、対向面31aともいう)にて、台座32を利用してスクリュ27によって締結された回路基板20の他側面22に貼り付けられた放熱シート60に対して所定の隙間Gを介して対向するように形成されている。このように所定の隙間Gが介在することで、回路基板20が台座32を利用して締結される場合でも放熱シート60が対向面31aによって押しつぶされることもない。
【0018】
そして、ハウジング30の対向面31aと放熱シート60との間には、液状放熱材70が配置されている。この液状放熱材70は、放熱シート60から伝わる熱をハウジング30に伝えるための液状の放熱剤である。本実施形態では、液状放熱材70として、例えば、スリーボンド社製1225C(シリコーンポリマーをベースに熱伝導性フィラーを配合した一液湿気硬化型の放熱剤)など、硬化前は液状のために密着性がよく、塗布後は空気中の湿気により硬化する放熱剤が採用されている。
【0019】
特に、
図5からわかるように、本実施形態では、対向面31aのうち各LED23の直下となる10か所に液状放熱材70が塗布され、放熱シート60を貼り付けた回路基板20が台座32を利用してスクリュ27によってハウジング30に締結されることで、各LED23の直下にて、放熱シート60と対向面31aとがそれぞれ液状放熱材70によって伝熱的に接続される。
【0020】
この締結時には、
図8(A)(B)に示すように、放熱シート60によって押しつぶされた液状放熱材70が周囲に広がるため、液状放熱材70を介して放熱シート60に応力が作用することもない。そして、LED23近傍のスルーホール26は、その他側面22側が放熱シート60によって閉塞されているため、押しつぶされた液状放熱材70がスルーホール26内に入り込むこともない。
【0021】
以上説明したように、本実施形態に係る車両用灯具10では、各LED23を含めた各種の電子部品が一側面21に実装される回路基板20には、他側面22に放熱シート60が貼り付けられる。ハウジング30は、対向面31aにて、台座32を利用して締結された回路基板20における他側面22に貼り付けられた放熱シート60に対して所定の隙間Gを介して対向し、対向面31aと放熱シート60との間に、液状放熱材70が介在する。
【0022】
これにより、各LED23にて発生した熱は、回路基板20の他側面22に貼り付けられる放熱シート60及び液状放熱材70を介してハウジング30に伝わることで放熱される。特に、台座32を利用して締結された回路基板20に貼り付けられる放熱シート60とハウジング30の対向面31aとの間には上記所定の隙間Gが介在し、この所定の隙間Gを埋めるように液状放熱材70が広がることで、放熱シート60を介して回路基板20に作用する応力が生じることもない。したがって、回路基板20に応力を作用させることなくその回路基板20に関する放熱性を高めることができる。このため、回路基板20に実装する電子部品として、高価な金属端子付コンデンサなどを採用する必要もなくすことができる。
【0023】
特に、液状放熱材70は、対向面31aと放熱シート60との間であって各LED23の直下となる位置に介在するため、各LED23にて発生した熱を効率よく液状放熱材70を介して放熱することができる。
【0024】
[他の実施形態]
なお、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、例えば、以下のように具体化してもよい。
(1)本発明は、作業灯として機能する各LED23を備える車両用灯具10に採用されることに限らず、他の機能を実現するために発熱素子が実装される回路基板を備える電子装置に採用されてもよい。
【0025】
(2)放熱シート60は、他側面22のうち各LED23の直下を含める所定の範囲に貼り付けられることに限らず、他の発熱素子の直下も含めるような範囲に貼り付けられてもよい。また、液状放熱材70は、所定の隙間Gを介して放熱シート60と対向する対向面31aのうち、各LED23の直下となる10か所に塗布されることに限らず、上述した他の発熱素子の少なくと一部にも塗布されてもよい。
【符号の説明】
【0026】
10…車両用灯具(電子装置)
20…回路基板
21…一側面(一方の面)
22…他側面(他方の面)
23…LED(発熱素子)
26…スルーホール
30…ハウジング
31…底面
31a…対向面
32…台座
60…放熱シート
70…液状放熱材
G…隙間