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特開2022-138846トンネルの製造方法および充填構造物
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  • 特開-トンネルの製造方法および充填構造物 図1
  • 特開-トンネルの製造方法および充填構造物 図2
  • 特開-トンネルの製造方法および充填構造物 図3
  • 特開-トンネルの製造方法および充填構造物 図4
  • 特開-トンネルの製造方法および充填構造物 図5
  • 特開-トンネルの製造方法および充填構造物 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138846
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】トンネルの製造方法および充填構造物
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/00 20060101AFI20220915BHJP
【FI】
E21D11/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021038954
(22)【出願日】2021-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】508321823
【氏名又は名称】株式会社イノアック住環境
(74)【代理人】
【識別番号】110002424
【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 大輔
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155JA01
2D155KB12
2D155LA14
2D155LA16
(57)【要約】
【課題】開口を通じた充填材の流出を防止するトンネルの製造方法および充填構造物を提供する。
【解決手段】トンネルの製造方法が開示される。トンネルの製造方法は、トンネル内壁に形成された開口であって前記トンネル内壁と地盤との間に位置する空洞につながる前記開口を、板材で覆う手順を含む。トンネルの製造方法は、さらに、前記トンネル内壁または前記板材に設けた貫通孔を介して、前記空洞に充填材を充填する手順を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル内壁に形成された開口であって前記トンネル内壁と地盤との間に位置する空洞につながる前記開口を、板材で覆う手順と、
前記トンネル内壁または前記板材に設けた貫通孔を介して、前記空洞に充填材を充填する手順と、を含む、
トンネルの製造方法。
【請求項2】
前記板材は、前記開口の前記空洞側の開口面積よりも大きい面積を有し、前記空洞内に配置することを含む、
請求項1に記載のトンネルの製造方法。
【請求項3】
前記板材は、外周面を有し、
前記開口は、内周面を有し、
前記開口を板材で覆う手順は、前記板材の前記外周面が前記開口の前記内周面に面するように、前記板材を前記開口内に配置することを含む、
請求項1に記載のトンネルの製造方法。
【請求項4】
前記板材は弾性を有し、
前記充填材に押圧されて変形する、
請求項1から3のいずれか1項に記載のトンネルの製造方法。
【請求項5】
前記充填材は、樹脂材料を含み、
前記板材は、樹脂材料を含む、
請求項1から4のいずれか1項に記載のトンネルの製造方法。
【請求項6】
トンネル内壁と地盤の間に位置する空洞に充填された充填構造物であって、
前記トンネル内壁に形成された開口であって、前記空洞につながる前記開口を覆う板材と、
前記空洞内に形成され、前記板材に接触する充填層と、
を備える充填構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、トンネルの製造方法および充填構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル覆工は、近年主流の吹付コンクリートによる支保構造と、それ以前に採用されていた矢板工法によるトンネル構造がある。矢板工法は、鋼アーチ支保工や矢板が支障となって、トンネル内壁(例えば、覆工コンクリート)とその背面の地盤(例えば、地山)との間に空洞を残すことがある。
【0003】
トンネル内壁は、地盤から圧力を受ける主働領域と、主働領域から内部応力を受けて地盤に向けて変形しようとする受動領域を含む。受動領域は、受動領域の背面に位置する地盤から反力を受けることにより受動領域の変位を抑えている。しかし、空洞が受動領域の背面に存在すると、受動領域が地盤から反力を受けることができず、トンネル内壁の構造的な耐荷力不足を招く。
【0004】
特許文献1および2は、トンネル内壁(例えば、矢板または覆工コンクリート)に貫通孔を形成し、貫通孔を通じてトンネル背面の空洞内に充填材(例えば、発泡ウレタン)を充填する工法を開示している。特許文献3は、セメント系の充填材を開示している。特許文献4は、発泡ウレタンと軽量骨材を含む充填材を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-146522号公報
【特許文献2】特開2013-91981号公報
【特許文献3】特開2005-163526号公報
【特許文献4】特開2017-53207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
トンネル内壁を補強するために、トンネル背面の空洞が充填材で充填されることがある。このようなトンネル内壁は、比較的大きな開口を有することがある。この開口がトンネル背面の空洞につながっている場合、充填材は、開口を通じてトンネル背面の空洞からトンネルの内空に流出する可能性がある。
【0007】
本開示は、開口を通じた充填材の流出を防止するトンネルの製造方法および充填構造物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係るトンネルの製造方法は、トンネル内壁に形成された開口であってトンネル内壁と地盤との間に位置する空洞につながる開口を、板材で覆う手順を含む。この方法は、さらに、トンネル内壁または板材に設けた貫通孔を介して、空洞に充填材を充填する手順を含む。
【0009】
本開示の別の態様に係る充填構造物は、トンネル内壁と地盤の間に位置する空洞に充填された充填構造物である。充填構造物は、トンネル内壁に形成された開口であって、空洞につながる開口を覆う板材を備える。充填構造物は、さらに、空洞内に形成され、板材に接触する充填層を備える。
【発明の効果】
【0010】
上記トンネルの製造方法は、充填材の開口を通じた流出を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の一実施形態に係る充填構造物を示す断面図。
図2】本開示の一実施形態に係るトンネルの製造プロセスを示すフローチャート。
図3】本開示の一実施形態に係る製造中のトンネルを示す断面図。
図4】本開示の一実施形態に係る製造中のトンネルを示す断面図。
図5】本開示の一実施形態に係る製造中のトンネルを示す断面図。
図6】本開示の別の実施形態に係る製造中のトンネルを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示すように、充填構造物10は、トンネル内壁30と地盤42の間に位置する空洞43内に充填されている。トンネル内壁30は、例えば、コンクリート製である。トンネル内壁30は、トンネル内空41に面する内周面31と、地盤42に面する外周面32を有する。
【0013】
トンネル内壁30は、さらに、内周面31から外周面32まで延びる開口33を有する。開口33は、例えば、標識、照明、信号、換気装置のようなトンネル内設置物のトンネル内壁からの撤去により残存する開口である。あるいは、開口33は、例えば、トンネル内壁30からのコンクリート片の剥離により形成された開口である。開口33は、これに限られないが、例えば、600mm四方の正方形のサイズおよび形状を有する。
【0014】
トンネル内壁30は、さらに、内周面31から外周面32まで延びる貫通孔34を有する。貫通孔34は、トンネル内空41に設置された充填材送出ポンプから空洞43に充填材を注入するための孔である。貫通孔34は、これに限られないが、例えば、直径32mmの円形のサイズおよび形状を有する。貫通孔34のサイズは、開口33のサイズよりも小さくてもよい。
【0015】
充填構造物10は、開口33を覆う板材11を備える。板材11は、例えば、樹脂、木材、金属、セラミックス、炭素繊維、または、これらの複合材を含む。本実施形態では、板材11は、発泡ウレタン製である。板材11は、これに限られないが、例えば、30mmの厚みを有してもよい。板材11は、紫外線保護層を含んでもよい。紫外線保護層は、繊維またはエポキシ樹脂製であってもよい。
【0016】
充填構造物10は、さらに、空洞43内に形成され、板材11に接触する充填層12を備える。充填層12は、例えば、樹脂を含む。本実施形態では、充填層12は、発泡ウレタン製である。発泡ウレタンは、これに限られないが、発泡により30~50倍(好ましくは、36~44倍)の体積膨張をする発泡ウレタンであってもよい。発泡ウレタンは、これに限られないが、約65秒の硬化時間を有してもよい。
【0017】
上述の通り、本実施形態では、板材11は、発泡ウレタン製である。発泡ウレタン製の板材11は、次のような点で優位性を有する。例えば、発泡ウレタンは、軽量なので、板材11がトンネル内壁30に与える影響を最小限にできる。発泡ウレタンは、カッターナイフのような簡易な切断器具により容易に加工可能であるため、板材11が現場で容易に整形され得る。発泡ウレタンは、充填層12(発泡ウレタン)と同系素材であるため、板材11が充填層12に良好に接着し、これにより、板材11の充填層12からの剥離および落下の可能性を最小限にできる。
【0018】
図2は、トンネルの製造プロセスの一例を示す。以下の各ステップでの作業者は、共通してもよく、異なっていてもよい。
【0019】
作業者は、空洞43につながる開口33を板材11で覆う(ステップS1)。例えば、図3に示すように、板材11は、空洞43内に位置し、トンネル内壁30の外周面32上に配置されてもよい。開口33は、空洞43側の開口面積35を有する。板材11は、開口面積35よりも大きな面積13を有する。例えば、開口33が正方形の場合、板材11は、開口33の辺より長く開口33の対角線よりも短い辺を有する正方形であってもよい。あるいは、板材11は、開口33を通過できる程度に弾性変形可能であってもよい。このような板材11は、開口33を通じてトンネル内空41から空洞43に搬入され得る。
【0020】
作業者は、次に、トンネル内壁30に貫通孔34を形成する(ステップS2)。ひとつの貫通孔34は、空洞43内の一定範囲(例えば、半径2m)への充填材の注入に供される。図3に示すように、貫通孔34は、間隔をあけて複数形成されてもよい。貫通孔34は、板材11に形成されてもよい。
【0021】
作業者は、次に、貫通孔34を介して、空洞43に充填材を充填する(ステップS3)。具体的には、作業者は、充填材送出ポンプにつながる注入ホース(またはパイプ)を貫通孔34に接続する。作業者は、充填材送出ポンプを駆動して、貫通孔34を介して空洞43に充填材を充填する。
【0022】
図5に示すように、板材11は、弾性を有し、空洞43内で膨張した充填材に押圧されて変形してもよい。具体的には、板材11は、トンネル内空41に向けて撓んでもよい。作業者は、板材11の変形を目視またはセンサにより検出して、空洞43内に適切に充填材が充填されたと判断することができる。作業者は、板材11の過剰に張り出した部分を、切断器具を利用して切除してもよい。
【0023】
作業者は、次に、貫通孔34に接続された注入ホースを撤去して、充填材の注入作業を完了する。例えば、注入ホースは抜くことも出来るが、注入ホースが樹脂製である場合は、容易に切断することができる。
【0024】
図2のプロセスでは、開口33が板材11で覆われた後に貫通孔34が形成される。これとは逆に、貫通孔34が形成された後に開口33が板材11で覆われてもよい。また、上述のように、板材11が貫通孔34を有することがある。板材11がトンネル内壁30上に配置されてから貫通孔34が板材11に形成されてもよい。これとは逆に、貫通孔34が板材11に形成されてから、その板材11がトンネル内壁30上に配置されてもよい。
【0025】
図5に示すように、板材11は、トンネル内壁30の外周面32上に配置されている。これに代えて、図6に示すように、板材11は、開口33内に配置されてもよい。例えば、板材11は、外周面14を有する。開口33は、内周面36を有する。板材11の外周面14が開口33の内周面36に面している。
【0026】
図6の例では、板材11は、隙間なく、あるいは、わずかな隙間をあけて、開口33内に配されている。充填材が空洞43内に充填される工程では、板材11は、トンネル内空41内に設置された構造物によりサポートされてもよい。構造物は、充填材の押圧による板材11の位置ずれを防止する。これに代えて、板材11は、開口33内に圧入されることにより、他の構造物無しに開口33内に固定されていてもよい。例えば、板材11は、弾性を有し、自然状態で開口33よりも大きく、圧縮状態で開口33内に配されてもよい。
【0027】
図6に示すように、板材11は、見た目(意匠性)の向上のため、トンネル内壁30の内周面31に沿うように配置されてもよい。
【0028】
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態および変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【符号の説明】
【0029】
10 充填構造物
11 板材
12 充填層
30 トンネル内壁
31 内周面
32 外周面
33 開口
34 貫通孔
41 トンネル内空
42 地盤
43 空洞
図1
図2
図3
図4
図5
図6