(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138852
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】固体撮像素子および電子機器
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20220915BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20220915BHJP
H04N 9/07 20060101ALI20220915BHJP
H04N 5/369 20110101ALI20220915BHJP
【FI】
G02B5/20 101
H01L27/146 D
H04N9/07 D
H04N5/369
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021038963
(22)【出願日】2021-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121131
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082131
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 義雄
(74)【代理人】
【識別番号】100168686
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 勇介
(72)【発明者】
【氏名】秋山 久志
【テーマコード(参考)】
2H148
4M118
5C024
5C065
【Fターム(参考)】
2H148AA07
2H148AA24
2H148AA29
2H148BA02
2H148BD04
2H148BD10
2H148BE12
2H148BG11
2H148BH02
2H148BH06
2H148CA12
4M118AA02
4M118AA05
4M118AB01
4M118CA04
4M118FA06
4M118GA02
4M118GB03
4M118GB07
4M118GC08
4M118GC11
4M118GC20
4M118GD03
4M118GD04
4M118HA02
5C024CX01
5C024CY48
5C024EX23
5C024EX43
5C024EX52
5C065AA03
5C065BB09
5C065CC01
5C065EE05
5C065EE06
5C065EE11
5C065EE16
(57)【要約】
【課題】より良好な画質の画像を撮像する。
【解決手段】固体撮像素子は、画素ごとに光電変換素子が設けられた半導体基板と、半導体基板の受光面側に積層されたフィルタ層と、赤色の波長域の光を受光する複数の赤色画素のうち、少なくとも一部の赤色画素のフィルタ層内に配置され、所定の周期的なパターンを有するプラズモン共鳴体により構成されたプラズモンフィルタとを備える。そして、プラズモンフィルタは、赤色画素の配置位置に応じてパターンの周期が補正されている。本技術は、例えば、撮像素子パッケージに適用できる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素ごとに光電変換素子が設けられた半導体基板と、
前記半導体基板の受光面側に積層されたフィルタ層と、
赤色の波長域の光を受光する複数の赤色画素のうち、少なくとも一部の前記赤色画素の前記フィルタ層内に配置され、所定の周期的なパターンを有するプラズモン共鳴体により構成されたプラズモンフィルタと
を備える固体撮像素子。
【請求項2】
前記プラズモンフィルタは、前記赤色画素の配置位置に応じて前記パターンの周期が補正されている
請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項3】
前記プラズモンフィルタは、
前記固体撮像素子の中央部分に配置されている前記赤色画素では、赤色の波長域の光を励起する基準周期の前記パターンで構成され、
前記固体撮像素子の周囲部分に配置されている前記赤色画素では、その赤色画素に対して光が斜入射する角度に応じて前記基準周期よりも広く補正された補正周期の前記パターンで構成される
請求項2に記載の固体撮像素子。
【請求項4】
前記プラズモンフィルタは、複数のホールが前記パターンで金属薄膜に設けられたホールアレイ構造である
請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項5】
前記赤色画素では、前記プラズモンフィルタと、赤色の色素を含有するカラーフィルタとの2層構造のフィルタが前記フィルタ層内に配置される
請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項6】
前記プラズモンフィルタは、前記カラーフィルタより光入射側に配置される
請求項5に記載の固体撮像素子。
【請求項7】
前記フィルタ層に積層されたオンチップレンズと前記固体撮像素子のセンサ面を封止するシールガラスの表面に積層された赤外線カットフィルタとの間が、屈折率が1以上の材質により充填される
請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項8】
前記固体撮像素子のセンサ面を封止するシールガラスと前記シールガラスの表面に積層された赤外線カットフィルタとの境界面に、凹部および凸部が繰り返して配置されている凹凸面が設けられる
請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項9】
前記凹凸面の厚み方向の段差は、赤色の波長の1/4に形成される
請求項8に記載の固体撮像素子。
【請求項10】
画素ごとに光電変換素子が設けられた半導体基板と、
前記半導体基板の受光面側に積層されたフィルタ層と、
赤色の波長域の光を受光する複数の赤色画素のうち、少なくとも一部の前記赤色画素の前記フィルタ層内に配置され、所定のパターンを有するプラズモン共鳴体により構成されたプラズモンフィルタと
を有する固体撮像素子を備える電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固体撮像素子および電子機器に関し、特に、より良好な画質の画像を撮像することができるようにした固体撮像素子および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽のような高輝度な被写体を固体撮像素子で撮像するとき、その高輝度な被写体の周りに赤色の玉状の模様が写り込んでしまう現象(以下、赤玉ゴースト現象と称する)が発生する。このような赤玉ゴースト現象は、固体撮像素子のオンチップレンズや半導体基板などで反射した光が赤外線カットフィルタで再反射することが要因で発生する。
【0003】
そこで、特許文献1には、反射を低減させるための回折格子を設けることによってゴーストなどの発生を抑制する固体撮像装置が開示されている。また、特許文献2および3には、プラズモン共鳴を利用したフィルタを備えた撮像素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-38164号公報
【特許文献2】特開2018-98341号公報
【特許文献3】特開2019-159080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されているように反射を低減させるだけでは赤玉ゴースト現象の発生を抑制することしかできず、赤玉ゴースト現象の発生を確実に排除することはできなかった。そこで、赤玉ゴースト現象の発生を確実に排除した良好な画質の画像を撮像可能とすることが求められている。
【0006】
本開示は、このような状況に鑑みてなされたものであり、より良好な画質の画像を撮像することができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面の固体撮像素子は、画素ごとに光電変換素子が設けられた半導体基板と、前記半導体基板の受光面側に積層されたフィルタ層と、赤色の波長域の光を受光する複数の赤色画素のうち、少なくとも一部の前記赤色画素の前記フィルタ層内に配置され、所定の周期的なパターンを有するプラズモン共鳴体により構成されたプラズモンフィルタとを備える。
【0008】
本開示の一側面の電子機器は、画素ごとに光電変換素子が設けられた半導体基板と、前記半導体基板の受光面側に積層されたフィルタ層と、赤色の波長域の光を受光する複数の赤色画素のうち、少なくとも一部の前記赤色画素の前記フィルタ層内に配置され、所定のパターンを有するプラズモン共鳴体により構成されたプラズモンフィルタとを有する固体撮像素子を備える。
【0009】
本開示の一側面においては、画素ごとに光電変換素子が半導体基板に設けられ、半導体基板の受光面側にフィルタ層が積層され、赤色の波長域の光を受光する複数の赤色画素のうち、少なくとも一部の赤色画素のフィルタ層内に配置されるプラズモンフィルタは、所定のパターンを有するプラズモン共鳴体により構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本技術を適用した撮像素子パッケージの第1の実施の形態の構成例を示す図である。
【
図3】プラズモンフィルタの励起波長について説明する図である。
【
図4】プラズモン瞳補正について説明する図である。
【
図5】プラズモン瞳補正について説明する図である。
【
図7】本技術を適用した撮像素子パッケージの第2の実施の形態の構成例を示す図である。
【
図8】回折角とプラズモンフィルタの効果との関係について説明する図である。
【
図9】本技術を適用した撮像素子パッケージの第3の実施の形態の構成例を示す図である。
【
図10】撮像装置の構成例を示すブロック図である。
【
図11】イメージセンサを使用する使用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本技術を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
<撮像素子パッケージの第1の構成例>
図1は、本技術を適用した固体撮像素子を備える撮像素子パッケージの第1の実施の形態の構成例を示す図である。
【0013】
図1に示すように、撮像素子パッケージ11は、固体撮像素子12、保持部材13、シールガラス14、赤外線カットフィルタ15、および撮像レンズ16を備えて構成される。
【0014】
固体撮像素子12は、それぞれ赤色、緑色、および青色の光を受光する複数の画素21(後述する
図2参照)がセンサ面に配列されて構成され、それらの画素21が受光した光の光量に応じて画像が撮像される。
【0015】
保持部材13は、シールガラス14の周囲を保持し、固体撮像素子12に対してシールガラス14を固定するための部材である。
【0016】
シールガラス14は、固体撮像素子12のセンサ面を封止する。
【0017】
赤外線カットフィルタ15は、シールガラス14の表面に対して積層されており、赤外線の波長域の光が透過することを防止する。
【0018】
撮像レンズ16は、図示しない被写体からの光を集光し、固体撮像素子12のセンサ面に対して結像させる。
【0019】
このように撮像素子パッケージ11は構成されており、赤外線カットフィルタ15によって赤外線がカットされた光が固体撮像素子12に入射され、画像を撮像することができる。
【0020】
図2は、固体撮像素子12の断面的な構成例を示す図である。
【0021】
図2には、固体撮像素子12のセンサ面に配置される複数の画素21のうちの、赤色の光を受光する画素21R、緑色の光を受光する画素21G、および、青色の光を受光する画素21Bの断面構成が示されている。図示するように、固体撮像素子12は、配線層31、半導体基板32、平坦化膜33、フィルタ層34、およびオンチップレンズ35が積層されて構成されている。
【0022】
配線層31には、画素21を駆動するための信号を供給する配線や、画素21から画素信号を読み出すための配線などが設けられる。
【0023】
半導体基板32には、画素21ごとに光電変換部41が設けられる。半導体基板32に入射した光が光電変換部41において光電変換されることにより発生した電荷に応じた画素信号が半導体基板32から読み出される。図示するように、画素21Rには光電変換部41Rが設けられ、画素21Gには光電変換部41Gが設けられ、画素21Bには光電変換部41Bが設けられている。
【0024】
平坦化膜33は、半導体基板32の表面を平坦化するために成膜される絶縁膜である。例えば、半導体基板32の表面には画素21どうしの間を遮光する遮光膜が設けられており、平坦化膜33を成膜することによって平坦化される。
【0025】
フィルタ層34は、半導体基板32の受光面側に平坦化膜33を介して積層され、それぞれの画素21が受光する色の光を透過するカラーフィルタ42が配置されて構成される。例えば、画素21Gには、緑色の色素を含有するカラーフィルタ42Gが配置され、画素21Bには、青色の色素を含有するカラーフィルタ42Bが配置されている。そして、固体撮像素子12では、画素21Rに対しては、赤色の色素を含有するカラーフィルタ42Rと、プラズモン共鳴によって励起された波長の光のみを透過するプラズモンフィルタ43とが積層された2層構造のフィルタが、フィルタ層34内に配置されている。
【0026】
オンチップレンズ35には、画素21ごとに光を集光するマイクロレンズが配置されている。
【0027】
プラズモンフィルタ43は、金属膜51に対して複数のホール52が形成されることで所定の周期的なパターンを有するプラズモン共鳴体により構成され、カラーフィルタ42Rより光入射側(固体撮像素子12に対して光が入射してくる側)に配置される。例えば、アルミニウムなどの金属材料からなる金属膜51に対して、二酸化ケイ素などの誘電体が埋め込まれた複数の直径Dのホール52が、ハニカム状の正三角形の一辺の長さをアレイ周期Pとしたパターンで形成されることでプラズモンフィルタ43を構成することができる。プラズモンフィルタ43は、ホール52のアレイ周期Pに応じたプラズモン共鳴によって励起された波長の光のみを透過させる。
【0028】
なお、本実施の形態では、金属膜51を貫通するようにホール52が形成されたパターンのプラズモン共鳴体(ホールアレイ構造)について説明するが、貫通しない深さの凹部が金属膜に形成されたパターンや複数の金属のドットが誘電体層に配置されたパターンなど、同様の効果を得られるプラズモン共鳴体をプラズモンフィルタ43に適用することができる。
【0029】
図3を参照して、プラズモンフィルタ43の励起波長について説明する。
【0030】
図3のAは、アルミニウムの金属膜51に形成されるホール52に二酸化ケイ素が埋め込まれた構成において、ホール52のアレイ周期Pとプラズモンフィルタ43の励起波長との関係を示す図である。横軸は、ホール52のアレイ周期Pを示しており、縦軸は、理論式から求められる表面プラズモンの異常透過の励起波長を示している。
【0031】
図示するように、ホール52のアレイ周期Pに従って、プラズモンフィルタ43の励起波長が求められる。
【0032】
図3のBは、プラズモンフィルタ43に対して光が垂直入射した場合における表面プラズモンが有する波数k
SP@垂直入射および回折格子周期の波数k
DG@垂直入射の関係について示す図である。
図3のCは、プラズモンフィルタ43に対して光が斜入射した場合における表面プラズモンが有する波数k
SP@斜入射および回折格子周期の波数k
DG@斜入射の関係について示す図である。
【0033】
図示するように、プラズモンフィルタ43に対して光が斜入射するとき、光が垂直入射するときと比べて波数シフトが大きくなるため、プラズモンフィルタ43を透過する励起波長が短波長シフトすることになる。例えば、固体撮像素子12の中央部分では光が垂直入射するのに対し、固体撮像素子12の周囲部分では光が斜入射することになる。
【0034】
このため、固体撮像素子12の中央部分と周囲部分とで、同一の波長域の励起させるためには、画素21Rの配置位置に応じてプラズモンフィルタ43に設けられるホール52のアレイ周期Pを補正する必要がある。例えば、固体撮像素子12の中央部分に配置されている画素21Rにおけるアレイ周期Pを基準周期(赤色の光を励起させるホール52のアレイ周期)としたとき、固体撮像素子12の周囲部分に配置されている画素21Rにおけるアレイ周期Pを基準周期よりも広い補正周期となるように補正する必要がある。
【0035】
ここで、本実施の形態では、固体撮像素子12の中央部分から周囲部分に向かうに従って、ホール52のアレイ周期Pを広くするように画素21Rのプラズモンフィルタ43の構成を補正することを、プラズモン瞳補正と称する。
【0036】
一般的に、イメージセンサにおける瞳補正技術とは、イメージセンサの上層における構造(例えば、画素間遮光層、インナーレンズ層、カラーフィルタ層、オンチップレンズ層)を、画角端に向かうのに従って内側に徐々にずらしていく技術である。このような瞳補正技術を適用することで、イメージセンサに対して斜入射する光に対する感度の向上を図ることができ、イメージセンサの画角全体として斜入射特性(感度均一性)を良好にすることができる。
【0037】
そして、瞳補正技術と同様に、表面プラズモンの場合は、金属膜51に形成されるホール52のアレイ周期Pに従った単一波長の共振によって異常透過現象が誘起されることより、斜入射による感度低下の影響は限りなく小さいものの、画角端に向かうに従って光が斜入射する角度が拡大することで共振波長の短波長化が生じることになる。例えば、アレイ周期Pが350nmであるプラズモンフィルタ43は、中央画角へ0度で入射している波長550nmの光と共振する一方で、大判のイメージセンサの画角端における入射角度である13度程度になると、波長450nmの光と共振してしまうことになる。
【0038】
従って、本技術を適用した固体撮像素子12において、大判のイメージセンサの画角端におけるホール52のアレイ周期Pを420nm程度に拡幅させることによって、画角端のプラズモンフィルタ43でも波長550nmの光と共振させることができる。即ち、固体撮像素子12は、プラズモン瞳補正を行うことによって、斜入射特性(画角端の感度を向上)の改善を図ることができる。
【0039】
具体的には、APSサイズ(23.4mm×16.7mm)やフルサイズ(24mm×36mm)のいわゆる大判センサに分類されるイメージセンサへのレンズからの画角端への入射角度は、約13度程度になる。例えば、波長750nmの光が角度0度(入射面に対して垂直方向)で入射されるとして、この光に共振するアレイ周期Pが460nmであるとする。このアレイ周期Pは角度13度の画角端では670nmに相当するので、画角端におけるアレイ周期Pを670nmと補正することによって斜入射特性を良好にすることができる。
【0040】
つまり、
図4のAには、固体撮像素子12の中央部分に配置されるホール52のアレイ周期Pが460nm(基準周期)のプラズモンフィルタ43が示されており、プラズモンフィルタ43は、赤色の波長のみを励起して透過することができる。そして、
図4のBには、固体撮像素子12の周囲部分に配置されるホール52のアレイ周期Pが670nm(補正周期)のプラズモンフィルタ43が示されており、例えば、画角の水平端における入射角13度に対応してプラズモン瞳補正が施されていることより、赤色の波長のみを励起して透過することができる。従って、固体撮像素子12は中央部分および周囲部分どちらにおいても感度を維持することができる。
【0041】
ところで、固体撮像素子12に入射された750nmの波長はオンチップレンズ上で跳ね返り、その波長の光は、ブラッグの回折式より約17度で赤外線カットフィルタ15に再度入射することになる。この際、赤外線カットフィルタ15の角度応答特性から、本来なら赤外線カットフィルタ15上層に向かって透過する赤領域の波長が、カット領域の短波長シフトにより再反射され、固体撮像素子12に再入射されることになる。通常のカラーフィルタなら赤領域であることより、赤色の光を透過させてしまうことによって赤玉ゴースト現象が発生することになる。これに対して、プラズモンフィルタ43は、13度の斜入射光としか共振しないことより、17度で入射された光はカットすることができる。
【0042】
例えば、
図5のAに示すように、固体撮像素子12の中央部分においてホール52のアレイ周期Pが460nmのプラズモンフィルタ43では、入射角が17度の赤色の光が透過することはない。また、
図5のBに示すように、固体撮像素子12の周囲部分においてホール52のアレイ周期Pが670nmのプラズモンフィルタ43では、入射角が17度の赤色の光を減光することができる。
【0043】
従って、固体撮像素子12では、プラズモンフィルタ43を透過することが可能な光のみを画素21Rが受光することができるので、赤玉ゴースト現象およびフレア現象の発生を確実に排除することができる。
【0044】
図6を参照して、固体撮像素子12における効果のイメージについて説明する。
【0045】
図6のAは、固体撮像素子12に入射する入射光に対する感度特性を、画素21R、画素21G、および画素21Bごとに表した図である。例えば、画素21Rにプラズモンフィルタ43が配置されずにカラーフィルタ42Rのみが配置された従来の固体撮像素子では、赤外線カットフィルタ15で再反射した光についても、同様の感度特性となる。
【0046】
図6のBは、赤外線カットフィルタ15で再反射した光に対する感度特性を、画素21R、画素21G、および画素21Bごとに表した図である。図示するように、固体撮像素子12は、画素21Rにプラズモンフィルタ43が配置された構成とすることによって、再反射した光に対する画素21Rの感度を大幅に低下させることができる。つまり、固体撮像素子12では、赤外線カットフィルタ15で再反射した光がプラズモンフィルタ43によってカットされていることが示されている。
【0047】
このように、固体撮像素子12は、画素21Rにプラズモンフィルタ43を設けることによって、赤玉ゴースト現象の発生を確実に排除し、より良好な画質の画像を撮像することができる。
【0048】
なお、固体撮像素子12は、センサ面に配置される全ての画素21Rに対してプラズモンフィルタ43を設ける構成とする他、少なくとも一部の画素21Rに対してプラズモンフィルタ43を設ける構成としてもよい。また、固体撮像素子12は、カラーフィルタ42Rおよびプラズモンフィルタ43の2層構造とする構成に限定されることなく、例えば、画素21Rのフィルタ層34にプラズモンフィルタ43のみが設けられた構成としても、赤玉ゴースト現象の発生を確実に排除することができる。
【0049】
<撮像素子パッケージの第2の構成例>
図7は、本技術を適用した固体撮像素子を備える撮像素子パッケージの第2の実施の形態の構成例を示す図である。
【0050】
図7に示す撮像素子パッケージ11Aは、
図2に示した固体撮像素子12と同様に、半導体基板32の受光面側にフィルタ層34およびオンチップレンズ35が積層されて構成されている。そして、撮像素子パッケージ11Aは、オンチップレンズ35とシールガラス14との間に、屈折率が1以上の材質からなる充填材質61が充填される点で、
図2の固体撮像素子12と異なる構成となっている。また、シールガラス14も屈折率は1以上である。
【0051】
即ち、撮像素子パッケージ11Aは、オンチップレンズ35と赤外線カットフィルタ15との間が、屈折率が1以上の材質によって埋められた構成となっている。このように構成される撮像素子パッケージ11Aは、回折角度をより小さくすることで、太陽などのような高輝度な被写体が写される領域に赤玉を集約させることができる結果、赤玉ゴースト現象の発生が目立ってしまうことを回避することができる。即ち、撮像素子パッケージ11Aは、高輝度な被写体と赤玉との見分けがつかないようにすることを目的としている。
【0052】
例えば、充填材質61として、屈折率が約1.5である二酸化ケイ素(SiO2)を用いて、オンチップレンズ35とシールガラス14との間が埋められるように積層することができる。その他、例えば、屈折率が1である空気などの気体をオンチップレンズ35とシールガラス14との間に充填してもよい。
【0053】
具体的には、撮像素子パッケージ11AがAPSサイズ(1.8型=対角長27mm)である場合、撮像状況によって異なるものの、対角長の1/15程度の範囲に大光量が照射されることになるケースが多いと考えられる。このようなケースでは、高輝度な被写体を中心とした直径2.7mm(即ち、半径1.35mm)の範囲内に2次回折光までを内包させることによって、赤玉ゴースト現象の発生を識別することが困難になると考えられる。
【0054】
例えば、回折角が10度であって、オンチップレンズ35とシールガラス14との間の間隔が2mmである場合、2次回折光は中心から1.4mmの点となり、直径は2.8mmを超えることになる。このとき、オンチップレンズ35とシールガラス14との間を屈折率が1以上の材質で充填した撮像素子パッケージ11Aでは、2次回折光は中心から0.9mmの点となり、直径は1.8mmを超えることになり、対角長の1/15程度の範囲(長さにして、直径2.7mm)に、赤玉が出現する領域を集約することができる。その結果、撮像素子パッケージ11Aは、高輝度な被写体と赤玉との見分けがつかないようにするという目的を達成することができる。
【0055】
ここで、
図8を参照して、撮像素子パッケージ11の画角端CRA(Chief Ray Angle:光線入射角)と、プラズモンフィルタ43によって赤外線カットフィルタ15で再反射した光(赤玉)をカットして、赤玉ゴースト現象の発生を確実に排除することができる効果との関係について説明する。撮像素子パッケージ11がモバイル系である場合、画角端CRAは30度となり、撮像素子パッケージ11が大判系である場合、画角端CRAは13度となる。
【0056】
回折次数mにおける回折角θmは、画素21のサイズd(=オンチップレンズ35の周期)、対象波長λ、および屈折率nを用いて、次の式(1)に示す数式で表される。
【0057】
【0058】
図8には、画素21のサイズdを1.2μm、2.4μm、3.6μmおよび、4.8μmとし、対象波長λを650μmおよび700μmとしたときに、この式(1)に従って求められる1次回折角θ
1および2次回折角θ
2が示されている。
【0059】
例えば、画素21のサイズdが1.2μmであって対象波長λが650μmである場合、1次回折角θ1は32.8度と求められ、モバイル系の画角端CRA以上であることより、モバイル系の撮像素子パッケージ11におけるプラズモンフィルタ43によって赤玉ゴースト現象をカットすることができる。もちろん、この場合、1次回折角θ1は大判系の画角端CRA以上であり、大判系の撮像素子パッケージ11におけるプラズモンフィルタ43によって赤玉ゴースト現象をカットすることができる。
【0060】
例えば、画素21のサイズdが2.4μmであって対象波長λが650μmである場合、1次回折角θ1は15.7度と求められ、2次回折角θ2は32.8度と求められる。従って、モバイル系の撮像素子パッケージ11におけるプラズモンフィルタ43では、1次回折光による赤玉ゴースト現象をカットすることができる。また、大判系の撮像素子パッケージ11におけるプラズモンフィルタ43では、1次回折光および2次回折光による赤玉ゴースト現象をカットすることができる。
【0061】
ところで、画素21のサイズdが3.6μmおよび4.8μmの場合における1次回折角θ1は、大判系の画角端CRA未満になると求められる。このように、回折角度が小さくて、プラズモンフィルタ43では1次回折光による赤玉ゴースト現象をカットすることができない場合、撮像素子パッケージ11Aのように、オンチップレンズ35と赤外線カットフィルタ15との間を屈折率が1以上の材質によって充填することによって、回折角度をより小さく(例えば、5度以内に)することが好ましい。これにより、太陽などのような高輝度な被写体が写される領域に赤玉を集約させることができる結果、赤玉ゴースト現象の発生が目立ってしまうことを回避することができる。
【0062】
<撮像素子パッケージの第3の構成例>
図9は、本技術を適用した固体撮像素子を備える撮像素子パッケージの第3の実施の形態の構成例を示す図である。
【0063】
図9に示す撮像素子パッケージ11Bは、シールガラス14Bおよび赤外線カットフィルタ15Bの境界面に、凹部および凸部が繰り返して配置されている凹凸面が設けられる点で、
図1の撮像素子パッケージ11と異なる構成となっている。
【0064】
例えば、シールガラス14Bおよび赤外線カットフィルタ15Bの境界面における凹凸面の面方向のピッチは、セルピッチとなる画素21のサイズdの1~2倍程度とすることが好ましい。
【0065】
また、シールガラス14Bおよび赤外線カットフィルタ15Bの境界面における凹凸面の厚み方向の段差Zは、赤色の波長の1/4となるように形成される。従って、凹凸面の厚み方向の段差Zを光が往復することとより、凹部と凸部との光路差は段差Zの2倍となって、凸部で反射する光(
図9の実線の矢印)と、凹部で反射する光(
図9の破線の矢印)とで位相が反転することになる。これにより、反射光が固体撮像素子12に入射する際の振幅強度を相殺する効果を得ることができ、反射光の光電変換を抑制することができる。その結果、反射光が起因となる赤玉ゴースト現象の発生を防止することができる。
【0066】
ここで、凹凸面の厚み方向の段差Zを規定する赤色の波長とは、赤外線カットフィルタ15Bでカットされる波長領域の中で波長シフトが起こる丁度中間あたりが最も相殺効果が高いと考慮されることより、650~700nm程度が最適となる。また、凹凸面の面方向のピッチは、あまり広いと相殺効果が薄まると考慮されることより、セルピッチの2倍程度が最適となる。
【0067】
具体的には、画素21のサイズdが2.4μmである場合、凹凸面の面方向のピッチが4.8μm(=2×2.4μm)となり、凹凸面の厚み方向の段差Zは175nm(=700nm×1/4)となるように、シールガラス14Bおよび赤外線カットフィルタ15Bの境界面における凹凸面を形成することが好適である。このような加工を行う加工技術としては十分に実現可能な範囲である。
【0068】
このように構成される撮像素子パッケージ11Bは、シールガラス14Bおよび赤外線カットフィルタ15Bの境界面に凹凸面を設けることによって、赤玉ゴースト現象の発生を抑制する効果を向上させることができる。
【0069】
<電子機器の構成例>
上述したような固体撮像素子12は、例えば、デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラなどの撮像システム、撮像機能を備えた携帯電話機、または、撮像機能を備えた他の機器といった各種の電子機器に適用することができる。
【0070】
図10は、電子機器に搭載される撮像装置の構成例を示すブロック図である。
【0071】
図10に示すように、撮像装置101は、光学系102、撮像素子103、信号処理回路104、モニタ105、およびメモリ106を備えて構成され、静止画像および動画像を撮像可能である。
【0072】
光学系102は、1枚または複数枚のレンズを有して構成され、被写体からの像光(入射光)を撮像素子103に導き、撮像素子103の受光面(センサ部)に結像させる。
【0073】
撮像素子103としては、上述した固体撮像素子12が適用される。撮像素子103には、光学系102を介して受光面に結像される像に応じて、一定期間、電子が蓄積される。そして、撮像素子103に蓄積された電子に応じた信号が信号処理回路104に供給される。
【0074】
信号処理回路104は、撮像素子103から出力された画素信号に対して各種の信号処理を施す。信号処理回路104が信号処理を施すことにより得られた画像(画像データ)は、モニタ105に供給されて表示されたり、メモリ106に供給されて記憶(記録)されたりする。
【0075】
このように構成されている撮像装置101では、上述した固体撮像素子12を適用することで、例えば、赤玉ゴースト現象の発生を確実に排除して、より良好な画質の画像を撮像することができる。
【0076】
<イメージセンサの使用例>
図11は、上述のイメージセンサ(撮像素子)を使用する使用例を示す図である。
【0077】
上述したイメージセンサは、例えば、以下のように、可視光や、赤外光、紫外光、X線等の光をセンシングする様々なケースに使用することができる。
【0078】
・ディジタルカメラや、カメラ機能付きの携帯機器等の、鑑賞の用に供される画像を撮影する装置
・自動停止等の安全運転や、運転者の状態の認識等のために、自動車の前方や後方、周囲、車内等を撮影する車載用センサ、走行車両や道路を監視する監視カメラ、車両間等の測距を行う測距センサ等の、交通の用に供される装置
・ユーザのジェスチャを撮影して、そのジェスチャに従った機器操作を行うために、TVや、冷蔵庫、エアーコンディショナ等の家電に供される装置
・内視鏡や、赤外光の受光による血管撮影を行う装置等の、医療やヘルスケアの用に供される装置
・防犯用途の監視カメラや、人物認証用途のカメラ等の、セキュリティの用に供される装置
・肌を撮影する肌測定器や、頭皮を撮影するマイクロスコープ等の、美容の用に供される装置
・スポーツ用途等向けのアクションカメラやウェアラブルカメラ等の、スポーツの用に供される装置
・畑や作物の状態を監視するためのカメラ等の、農業の用に供される装置
【0079】
<構成の組み合わせ例>
なお、本技術は以下のような構成も取ることができる。
(1)
画素ごとに光電変換素子が設けられた半導体基板と、
前記半導体基板の受光面側に積層されたフィルタ層と、
赤色の波長域の光を受光する複数の赤色画素のうち、少なくとも一部の前記赤色画素の前記フィルタ層内に配置され、所定の周期的なパターンを有するプラズモン共鳴体により構成されたプラズモンフィルタと
を備える固体撮像素子。
(2)
前記プラズモンフィルタは、前記赤色画素の配置位置に応じて前記パターンの周期が補正されている
上記(1)に記載の固体撮像素子。
(3)
前記プラズモンフィルタは、
前記固体撮像素子の中央部分に配置されている前記赤色画素では、赤色の波長域の光を励起する基準周期の前記パターンで構成され、
前記固体撮像素子の周囲部分に配置されている前記赤色画素では、その赤色画素に対して光が斜入射する角度に応じて前記基準周期よりも広く補正された補正周期の前記パターンで構成される
上記(2)に記載の固体撮像素子。
(4)
前記プラズモンフィルタは、複数のホールが前記パターンで金属薄膜に設けられたホールアレイ構造である
上記(1)から(3)までのいずれかに記載の固体撮像素子。
(5)
前記赤色画素では、前記プラズモンフィルタと、赤色の色素を含有するカラーフィルタとの2層構造のフィルタが前記フィルタ層内に配置される
上記(1)から(4)までのいずれかに記載の固体撮像素子。
(6)
前記プラズモンフィルタは、前記カラーフィルタより光入射側に配置される
上記(5)に記載の固体撮像素子。
(7)
前記フィルタ層に積層されたオンチップレンズと前記固体撮像素子のセンサ面を封止するシールガラスの表面に積層された赤外線カットフィルタとの間が、屈折率が1以上の材質により充填される
上記(1)から(6)までのいずれかに記載の固体撮像素子。
(8)
前記固体撮像素子のセンサ面を封止するシールガラスと前記シールガラスの表面に積層された赤外線カットフィルタとの境界面に、凹部および凸部が繰り返して配置されている凹凸面が設けられる
上記(1)から(7)までのいずれかに記載の固体撮像素子。
(9)
前記凹凸面の厚み方向の段差は、赤色の波長の1/4に形成される
上記(8)に記載の固体撮像素子。
(10)
画素ごとに光電変換素子が設けられた半導体基板と、
前記半導体基板の受光面側に積層されたフィルタ層と、
赤色の波長域の光を受光する複数の赤色画素のうち、少なくとも一部の前記赤色画素の前記フィルタ層内に配置され、所定のパターンを有するプラズモン共鳴体により構成されたプラズモンフィルタと
を有する固体撮像素子を備える電子機器。
【0080】
なお、本実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。また、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、他の効果があってもよい。
【符号の説明】
【0081】
11 撮像素子パッケージ, 12 固体撮像素子, 13 保持部材, 14 シールガラス, 15 赤外線カットフィルタ, 16 撮像レンズ, 21 画素, 31 配線層, 32 半導体基板, 33 平坦化膜, 34 フィルタ層, 35 オンチップレンズ, 41 光電変換部, 42 カラーフィルタ, 43 プラズモンフィルタ, 51 金属膜, 52 ホール, 61 充填材質