(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138881
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】色域判定システム、色域判定方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 1/60 20060101AFI20220915BHJP
G01J 3/46 20060101ALI20220915BHJP
H04N 1/52 20060101ALI20220915BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20220915BHJP
H04N 1/405 20060101ALI20220915BHJP
H04N 1/407 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
H04N1/60 020
G01J3/46 Z
H04N1/60 160
H04N1/52
G06T1/00 510
H04N1/405 512
H04N1/407 780
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021038999
(22)【出願日】2021-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】田中 貴也
(72)【発明者】
【氏名】千葉 崇人
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 紘一
(72)【発明者】
【氏名】三好 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】稲村 崇
【テーマコード(参考)】
2G020
5B057
5C077
5C079
【Fターム(参考)】
2G020DA02
2G020DA03
2G020DA04
2G020DA05
2G020DA34
2G020DA43
5B057AA11
5B057CA01
5B057CA07
5B057CA12
5B057CB01
5B057CB07
5B057CB12
5B057CE16
5B057CE18
5B057CH07
5B057DA15
5B057DA16
5B057DB06
5B057DC25
5C077LL11
5C077MP08
5C077NN04
5C077PP33
5C077PP36
5C077PQ23
5C077TT08
5C079HA19
5C079HB03
5C079HB08
5C079LB01
5C079LB06
5C079LC12
5C079MA04
5C079MA10
5C079MA17
5C079NA25
5C079NA29
5C079PA07
(57)【要約】
【課題】印刷物の色調確認の依頼者と確認者との間で色調の認識に齟齬が生じる可能性を低減することが可能な色域判定システム、色域判定方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】印刷物の印刷に用いるインキのベタ色の測色値を取得する測色値取得部と、測色値取得部によって取得された測色値と、測色値の変動に関する変動情報とに基づき、変動によってベタ色の測色値が取り得る測色値からなる集合である変動測色値集合を算出する変動測色値算出部と、変動測色値算出部によって算出された変動測色値集合と、印刷物に関する出力を行う出力装置のカラープロファイルとに基づき、変動測色値集合に含まれる各測色値が出力装置の色域に含まれているか否かを判定する色域判定部と、色域判定部による判定の結果に基づき、測色値と色域の関係を示す色域判定情報を生成する色域判定情報生成部と、を備える、色域判定システム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷物の印刷に用いるインキのベタ色の測色値を取得する測色値取得部と、
前記測色値取得部によって取得された前記測色値と、前記測色値の変動に関する変動情報とに基づき、前記変動によって前記ベタ色の前記測色値が取り得る測色値からなる集合である変動測色値集合を算出する変動測色値算出部と、
前記変動測色値算出部によって算出された前記変動測色値集合と、前記印刷物に関する出力を行う出力装置のカラープロファイルとに基づき、前記変動測色値集合に含まれる各測色値が前記出力装置の色域に含まれているか否かを判定する色域判定部と、
前記色域判定部による判定の結果に基づき、前記測色値と前記色域の関係を示す色域判定情報を生成する色域判定情報生成部と、
を備える、色域判定システム。
【請求項2】
前記変動測色値算出部は、
前記変動情報と前記測色値取得部によって取得された前記測色値とに基づき、前記ベタ色の色が調整されることで変動した前記測色値からなる集合である色調整測色値集合を算出する色調整測色値算出部と、
前記変動情報と前記色調整測色値算出部によって算出された前記色調整測色値集合とに基づき、前記インキの濃度が調整されることで変動した前記測色値からなる集合である濃度調整測色値集合を算出する濃度調整測色値算出部と、
を備え、
前記変動測色値集合は、前記濃度調整測色値集合である、
請求項1に記載の色域判定システム。
【請求項3】
前記変動情報は、前記色の調整範囲を示す色範囲情報を含み、
前記色調整測色値算出部は、前記測色値と前記色範囲情報とに基づき、前記色範囲情報が示す前記色の調整範囲内の値で色が調整された後の前記ベタ色の前記測色値を算出する、
請求項2に記載の色域判定システム。
【請求項4】
前記変動情報は、前記濃度の調整範囲を示す濃度範囲情報と、前記測色値と前記インキの配合比率との対応関係を示す近似色情報と、前記インキと吸収・散乱係数との対応関係を示す吸収・散乱係数情報とを含み、
前記濃度調整測色値算出部は、前記色調整測色値集合と前記濃度範囲情報と前記近似色情報と前記吸収・散乱係数情報とに基づき、前記色調整測色値集合に含まれる各測色値に対応するインキの吸収・散乱係数を算出し、前記インキを前記濃度の調整範囲に含まれる複数の濃度で印刷した際の各濃度に対する印刷色の測色値からなる集合である濃度調整測色値集合を算出する、
請求項2又は請求項3に記載の色域判定システム。
【請求項5】
前記色域判定情報生成部は、前記変動測色値集合に含まれる各測色値が前記色域に含まれているか否か、あるいは含まれている度合を示す情報を前記色域判定情報として生成する、
請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の色域判定システム。
【請求項6】
前記色域判定情報生成部は、前記出力装置が前記濃度調整測色値集合に含まれる各測色値と対応する色を出力可能であるか否かを示す出力可否情報を前記色域判定情報として生成する、
請求項5に記載の色域判定システム。
【請求項7】
前記色域判定情報生成部は、前記濃度調整測色値集合に含まれる各測色値に対応する色と、前記出力装置が出力可能な色との色差を示す色差情報を前記色域判定情報として生成する、
請求項5又は請求項6に記載の色域判定システム。
【請求項8】
前記変動測色値算出部は、
印刷の指令網点面積率の組み合わせを示す網点掛け合わせ情報を複数含む網点掛け合わせ集合を生成する網点掛け合わせ生成部と、
前記変動情報と、前記網点掛け合わせ生成部によって生成された前記網点掛け合わせ集合とに基づき、前記網点掛け合わせ集合が示す各掛け合わせの前記印刷物における印刷色の測色値の予測値からなる集合である印刷色集合を生成する印刷色予測部と、
をさらに備え、
前記変動測色値集合は、前記印刷色集合である、
請求項2から請求項7のいずれか1項に記載の色域判定システム。
【請求項9】
前記印刷色予測部は、前記測色値のそれぞれに対応する前記濃度調整測色値集合から、それぞれ1つの濃度調整測色値を取り出す全ての組み合わせに関して、網点掛け合わせ生成部によって生成された網点掛け合わせ集合に含まれる全ての掛け合わせに対する印刷色の測色値を予測する、
請求項8に記載の色域判定システム。
【請求項10】
前記変動情報は、前記測色値と前記インキの配合比率との対応関係を示す近似色情報と、前記インキと吸収・散乱係数との対応関係を示す吸収・散乱係数情報と、前記インキと階調特性との対応関係を示す階調特性情報とを含み、
前記印刷色予測部は、前記近似色情報と前記吸収・散乱係数情報と前記階調特性情報とに基づき、前記網点掛け合わせ集合が示す全ての掛け合わせに対して、前記印刷色の前記測色値を予測する、
請求項8又は請求項9に記載の色域判定システム。
【請求項11】
前記色域判定情報生成部は、前記網点掛け合わせ集合に含まれる全ての掛け合わせについて、前記印刷色予測部によって生成された前記印刷色集合に含まれる各予測値が前記出力装置の色域に含まれているか否か、あるいは含まれている度合を示す情報を前記色域判定情報として生成する、
請求項8から請求項10のいずれか1項に記載の色域判定システム。
【請求項12】
前記色域判定情報生成部は、前記網点掛け合わせ集合が示す全ての掛け合わせを示す画像に対して、前記出力装置が前記画像の掛け合わせに対して予測される印刷色を出力可能であるか否かを示す情報を付与した画像を前記色域判定情報として生成する、
請求項11に記載の色域判定システム。
【請求項13】
前記印刷物の製版画像を取得する製版画像取得部と、
前記変動情報と、前記製版画像取得部によって取得された前記製版画像とに基づき、前記製版画像が印刷された印刷物の各画素における印刷色の測色値の予測値からなる集合である印刷色集合を生成する印刷色予測部と、
をさらに備え、
前記変動測色値集合は、前記印刷色集合である、
請求項2から請求項12のいずれか1項に記載の色域判定システム。
【請求項14】
前記変動情報は、前記測色値と前記インキの配合比率との対応関係を示す近似色情報と、前記インキと吸収・散乱係数との対応関係を示す吸収・散乱係数情報と、前記インキと階調特性との対応関係を示す階調特性情報とを含み、
前記印刷色予測部は、前記近似色情報と前記吸収・散乱係数情報と前記階調特性情報とに基づき、前記製版画像が印刷された印刷物の各画素に対して、前記印刷色の前記測色値を予測する、
請求項13に記載の色域判定システム。
【請求項15】
前記色域判定情報生成部は、前記製版画像の少なくとも一部の画素について、前記印刷色予測部によって生成された前記印刷色集合に含まれる各予測値が前記出力装置の色域に含まれているか否か、あるいは含まれている度合を示す画像を前記色域判定情報として生成する、
請求項13又は請求項14に記載の色域判定システム。
【請求項16】
前記色域判定情報生成部は、前記製版画像の各画素の内、前記予測値が前記出力装置の色域に含まれていない画素に対して、マスク画像を重畳した画像を前記色域判定情報として生成する、
請求項15に記載の色域判定システム。
【請求項17】
測色値取得部が、印刷物の印刷に用いるインキのベタ色の測色値を取得する過程と、
変動測色値算出部が、前記測色値取得部によって取得された前記測色値と、前記測色値の変動に関する変動情報とに基づき、前記変動によって前記ベタ色の前記測色値が取り得る測色値からなる集合である変動測色値集合を算出する過程と、
色域判定部が、前記変動測色値算出部によって算出された前記変動測色値集合と、前記印刷物に関する出力を行う出力装置のカラープロファイルとに基づき、前記変動測色値集合に含まれる各測色値が前記出力装置の色域に含まれているか否かを判定する過程と、
色域判定情報生成部が、前記色域判定部による判定の結果に基づき、前記測色値と前記色域の関係を示す色域判定情報を生成する過程と、
を含む、色域判定方法。
【請求項18】
コンピュータを、
印刷物の印刷に用いるインキのベタ色の測色値を取得する測色値取得手段と、
前記測色値取得手段によって取得された前記測色値と、前記測色値の変動に関する変動情報とに基づき、前記変動によって前記ベタ色の前記測色値が取り得る測色値からなる集合である変動測色値集合を算出する変動測色値算出手段と、
前記変動測色値算出手段によって算出された前記変動測色値集合と、前記印刷物に関する出力を行う出力装置のカラープロファイルとに基づき、前記変動測色値集合に含まれる各測色値が前記出力装置の色域に含まれているか否かを判定する色域判定手段と、
前記色域判定手段による判定の結果に基づき、前記測色値と前記色域の関係を示す色域判定情報を生成する色域判定情報生成手段と、
として機能させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色域判定システム、色域判定方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷物の色調を遠隔地で確認するための技術が各種提案されている。例えば、印刷物を撮像し、印刷物の画像を遠隔地の表示装置に表示することで、遠隔地にて印刷物の色調を確認可能な技術が提案されている。
【0003】
下記特許文献1には、印刷工場にて印刷物と印刷物の見本をそれぞれ撮影し、得られた各画像を印刷工場にある装置から遠隔地にある装置へ送信する技術が開示されている。遠隔地にある装置には、印刷工場にある装置から受信した印刷物の画像と見本の画像が表示される。これにより、遠隔地にいる立会人(確認者)は、遠隔地にある装置に表示された印刷物の画像と見本の画像を確認することで、印刷現場に赴かなくても印刷物の色調を確認して調整指示を出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、印刷物で表現可能な色の範囲(色域)と表示装置で表現可能な色の範囲(色域)が異なる場合がある。例えば、印刷物で表現されている色の中に、表示装置で表現可能な色の範囲外の色があったとする。この場合、特許文献1の技術のように、印刷物の画像を表示装置に表示させると、表示装置で表現可能な色の範囲外にある印刷物の色が正確に表現されず、実際の印刷物で表現されている色と表示装置が表現している印刷物の画像の色とが異なってしまう。これにより、色調の確認の依頼者と確認者との間で、印刷物の色の認識に齟齬が生じ、後段の作業に影響を及ぼし得る。
【0006】
上述の課題を鑑み、本発明の目的は、印刷物の色調確認の依頼者と確認者との間で色調の認識に齟齬が生じる可能性を低減することが可能な色域判定システム、色域判定方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、本発明の一態様に係る色域判定システムは、印刷物の印刷に用いるインキのベタ色の測色値を取得する測色値取得部と、前記測色値取得部によって取得された前記測色値と、前記測色値の変動に関する変動情報とに基づき、前記変動によって前記ベタ色の前記測色値が取り得る測色値からなる集合である変動測色値集合を算出する変動測色値算出部と、前記変動測色値算出部によって算出された前記変動測色値集合と、前記印刷物に関する出力を行う出力装置のカラープロファイルとに基づき、前記変動測色値集合に含まれる各測色値が前記出力装置の色域に含まれているか否かを判定する色域判定部と、前記色域判定部による判定の結果に基づき、前記測色値と前記色域の関係を示す色域判定情報を生成する色域判定情報生成部と、備える。
【0008】
本発明の一態様に係る色域判定方法は、測色値取得部が、印刷物の印刷に用いるインキのベタ色の測色値を取得する過程と、変動測色値算出部が、前記測色値取得部によって取得された前記測色値と、前記測色値の変動に関する変動情報とに基づき、前記変動によって前記ベタ色の前記測色値が取り得る測色値からなる集合である変動測色値集合を算出する過程と、色域判定部が、前記変動測色値算出部によって算出された前記変動測色値集合と、前記印刷物に関する出力を行う出力装置のカラープロファイルとに基づき、前記変動測色値集合に含まれる各測色値が前記出力装置の色域に含まれているか否かを判定する過程と、色域判定情報生成部が、前記色域判定部による判定の結果に基づき、前記測色値と前記色域の関係を示す色域判定情報を生成する過程と、を含む。
【0009】
本発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータを、印刷物の印刷に用いるインキのベタ色の測色値を取得する測色値取得手段と、前記測色値取得手段によって取得された前記測色値と、前記測色値の変動に関する変動情報とに基づき、前記変動によって前記ベタ色の前記測色値が取り得る測色値からなる集合である変動測色値集合を算出する変動測色値算出手段と、前記変動測色値算出手段によって算出された前記変動測色値集合と、前記印刷物に関する出力を行う出力装置のカラープロファイルとに基づき、前記変動測色値集合に含まれる各測色値が前記出力装置の色域に含まれているか否かを判定する色域判定手段と、前記色域判定手段による判定の結果に基づき、前記測色値と前記色域の関係を示す色域判定情報を生成する色域判定情報生成手段と、として機能させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、印刷物の色調確認の依頼者と確認者との間で色調の認識に齟齬が生じる可能性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態に係る色域判定システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】第1の実施形態に係る色調整測色値の算出の一例を示す図である。
【
図3】第1の実施形態に係る濃度調整測色値の算出の一例を示す図である。
【
図4】第1の実施形態に係る色域判定情報の一例を示す図である。
【
図5】第1の実施形態に係る色域判定情報の一例を示す図である。
【
図6】第1の実施形態に係る色域判定システムにおける処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図7】第2の実施形態に係る色域判定システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図8】第2の実施形態に係る網点掛け合わせと印刷色の一例を示す図である。
【
図9】第2の実施形態に係る色域判定情報の一例を示す図である。
【
図10】第2の実施形態に係る色域判定情報の一例を示す図である。
【
図11】第2の実施形態に係る色域判定システムにおける処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図12】第3の実施形態に係る色域判定システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図13】第3の実施形態に係る製版画像と測色値画像の一例を示す図である。
【
図14】第3の実施形態に係る色域判定情報の一例を示す図である。
【
図15】第3の実施形態に係る色域判定情報の一例を示す図である。
【
図16】第3の実施形態に係る色域判定システムにおける処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
【0013】
<<1.第1の実施形態>>
まず、
図1から
図6を参照して、本発明の第1の実施形態について説明する。
【0014】
<1-1.色域判定システムの構成>
図1を参照して、第1の実施形態に係る色域判定システムの構成の一例について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る色域判定システム10の構成の一例を示すブロック図である。
【0015】
色域判定システム10は、印刷される印刷物にて表現される色がモニタやプリンタ等の出力装置が表現可能な色の範囲を示す色域に含まれる色であるか否かを判定するシステムである。即ち、色域判定システム10は、印刷物にて表現される色を出力装置にて齟齬なく表現可能であるか否かを判定する。
【0016】
図1に示すように、色域判定システム10は、入力部101、測色値取得部111、変動測色値算出部121、色域判定部131、色域判定情報生成部141、出力部151、色・濃度範囲データベース161、近似色データベース162、吸収・散乱係数データベース163、及び出力装置色特性データベース164を備える。
【0017】
(1)入力部101
入力部101は、各種の入力を受け付ける機能を有する。ユーザ(例えば色調確認の依頼者)は、入力部101を介して、印刷物の印刷に用いるインキの色を指定する指定情報を入力する。入力部101は、ユーザによって入力される指定情報の入力を受け付ける。
一例として、ユーザは、入力部101に対して指定情報を入力することでベタ色を指定する。指定情報は、例えば、ベタ色を示す情報である。具体的に、ユーザは、入力部101に対して、カラーチップが示す色の識別番号(色番号)を指定情報として入力する。
なお、ユーザは、ベタ色の指定に入力部101を用いなくてもよい。ユーザによるベタ色の指定には、入力部101に指定情報を入力する行為だけでなく、ベタ色を選択する行為も含まれる。例えば、対象のベタ色を示すカラーチップの選択、対象のベタ色が表現されている印刷物の選択、対象のベタ色のインキの選択等である。
【0018】
また、ユーザは、入力部101に対して、ベタ色の測色値を指定情報として入力してもよい。例えば、ユーザは、指定したいベタ色の測色値を測色器で測定し、測定した測色値を入力部101に入力する。また、ユーザは、指定し得るベタ色の測色値をあらかじめ測定し、測定した測色値を入力部101に入力してデータベース(不図示)に記憶させておいてもよい。なお、色域判定システム10が測色器と通信可能な構成である場合、色域判定システム10は、測色器との通信によって測色値を取得してもよい。この場合、ユーザは、入力部101に対して測色値を入力しなくてもよい。
以下、本実施形態における測色値は、例えば、CIE L*a*b*色空間であり、色彩値はL*、a*、及びb*によって示される。
【0019】
(2)測色値取得部111
測色値取得部111は、測色値を取得する機能を有する。例えば、測色値取得部111は、印刷物の印刷に用いるインキのベタ色の測色値を取得する。具体的に、測色値取得部111は、ユーザによって指定されたベタ色の測色値を取得する。
入力部101に対してベタ色を指定する指定情報が入力された場合、測色値取得部111は、入力された指定情報が示すベタ色の測色値を取得する。例えば、各ベタ色の測色値が記憶されたデータベースが用意されている場合、測色値取得部111は、当該データベースから指定されたベタ色と対応する測色値を取得する。また、ユーザが指定したベタ色の測色値を測色器で測定した場合、入力部101又は測色器から測色値を取得してもよい。
【0020】
(3)変動測色値算出部121
変動測色値算出部121は、変動する測色値を算出する機能を有する。例えば、変動測色値算出部121は、測色値取得部111によって取得された測色値と、測色値の変動に関する変動情報とに基づき、当該変動によってベタ色の測色値が取り得る測色値からなる集合である変動測色値集合を算出する。
図1に示すように、変動測色値算出部121は、当該機能を実現するために色調整測色値算出部122及び濃度調整測色値算出部123を備える。
【0021】
(3-1)色調整測色値算出部122
色調整測色値算出部122は、ベタ色の色が調整されることによって変動する測色値を算出する機能を有する。例えば、色調整測色値算出部122は、変動情報と測色値取得部111によって取得された測色値とに基づき、色の調整後の測色値を算出する。調整後の色の測色値が複数算出される場合、色調整測色値算出部122は、色の調整後の複数の測色値からなる集合である色調整測色値集合を算出する。
【0022】
色調整測色値算出部122が測色値の算出に用いる変動情報は、例えば、色範囲情報である。色範囲情報は、色の調整範囲を示す情報である。色範囲情報は、色・濃度範囲データベース161に記憶されている。例えば、色範囲情報は、測色値の領域(L*、a*、b*の各値の範囲が決められた領域)における、測色値の調整可能な範囲を示す。一例として、L*の調整可能な範囲は-3~+3、a*の調整可能な範囲は-5~+5、b*の調整可能な範囲は-5~+5のように示される。
【0023】
色調整測色値算出部122は、測色値と色範囲情報とに基づき、色範囲情報が示す色の調整範囲内の値で色が調整された後のベタ色の測色値を算出する。上述の一例のように、L*、a*、b*の各値の調整方向や調整量が複数設定されている場合、色調整測色値算出部122は、測色値取得部111によって取得された測色値を、色範囲情報が示すL*、a*、b*の各値の全ての組み合わせで調整することで、調整後の全ての組み合わせの測色値を算出する。これにより、調整後の測色値が複数算出されるため、色調整測色値算出部122は、算出した全ての測色値が含まれる集合である色調整測色値集合を算出することができる。
【0024】
ここで、
図2を参照して、色調整測色値の算出の一例について説明する。
図2は、第1の実施形態に係る色調整測色値の算出の一例を示す図である。
図2では、ユーザが対象のベタ色を示すカラーチップを選択する例について説明する。
【0025】
まず、ユーザが、色番号0011のカラーチップ20A(以下、「チップ0011」とも称される)と色番号0034のカラーチップ20B(以下、「チップ0034」とも称される)を選択し、これらのカラーチップが示す色をベタ色として指定したとする。
ユーザは、チップ0011とチップ0034の測色値を測定する。測定の結果、チップ0011の測色値Lab1とチップ0034の測色値Lab2が得られたとする。測色値取得部111は、当該測色値Lab1と測色値Lab2を取得する。
色調整測色値算出部122は、測色値取得部111が取得した測色値と色・濃度範囲データベース161に記憶されている色の調整範囲に基づき、色調整測色値を算出する。L*、a*、b*の調整範囲は、
図2に示すようにそれぞれ-3~+3、-5~+5、-5~+5であるとする。色調整測色値算出部122は、これらL*、a*、b*の各値が調整範囲の中で取り得る値の全ての組み合わせを用いて、測色値取得部111が取得した測色値の調整を行う。そして、色調整測色値算出部122は、調整後の測色値を色調整測色値として算出する。
以下、チップ0011の色調整測色値は、色調整測色値Lab1_1、色調整測色値Lab1_2で示される。また、チップ0034の色調整測色値は、色調整測色値Lab2_1、色調整測色値Lab2_2で示される。なお、色調整測色値算出部122によって算出される色調整測色値の数はかかる例に限定されず、L*、a*、b*の各値が調整範囲の中で取り得る値の全ての組み合わせの数だけ算出され得る。
【0026】
(3-2)濃度調整測色値算出部123
濃度調整測色値算出部123は、ベタ色の濃度が調整されることによって変動する測色値を算出する機能を有する。例えば、濃度調整測色値算出部123は、変動情報と色調整測色値算出部122によって算出された色調整測色値集合とに基づき、濃度の調整後の測色値を算出する。濃度の調整後の測色値が複数算出される場合、濃度調整測色値算出部123は、濃度の調整後の複数の測色値からなる集合である濃度調整測色値集合を算出する。なお、本実施形態では、濃度調整測色値算出部123によって算出される濃度調整測色値集合が、変動測色値集合である。
【0027】
濃度調整測色値算出部123が測色値の算出に用いる変動情報は、例えば、濃度範囲情報と、近似色情報と、吸収・散乱係数情報である。濃度範囲情報は、濃度の調整範囲を示す情報である。濃度範囲情報は、色・濃度範囲データベース161に記憶されている。近似色情報は、測色値とインキの配合比率との対応関係を示す情報である。近似色情報は、近似色データベース162に記憶されている。吸収・散乱係数情報は、インキと吸収・散乱係数との対応関係を示す情報である。吸収・散乱係数情報は、吸収・散乱係数データベース163に記憶されている。
【0028】
濃度調整測色値算出部123は、色調整測色値集合と濃度範囲情報と近似色情報と吸収・散乱係数情報とに基づき、調整後の濃度で印刷した際の印刷色の測色値を算出する。
まず、濃度調整測色値算出部123は、色調整測色値集合に含まれる各測色値に対応するインキの配合比率を求め、特色の吸収・散乱係数を算出する。当該配合比率は、近似色データベース162に記憶されている近似色情報から求められる。また、特色の吸収・散乱係数は、吸収・散乱係数データベース163に記憶されている原色インキの吸収・散乱係数に基づき算出可能である。次いで、濃度調整測色値算出部123は、算出した特色の吸収・散乱係数を用いてクベルカムンクの式の膜厚を変化させることで特色の分光反射率を算出する。そして、濃度調整測色値算出部123は、算出した分光反射率に基づき、濃度調整後の測色値を算出する。
濃度範囲情報によって濃度の調整方向や調整量が複数設定されている場合、濃度調整測色値算出部123は、特色が取り得る各濃度に調整後の全ての測色値を算出する。これにより、調整後の測色値が複数算出されるため、濃度調整測色値算出部123は、算出した全ての測色値が含まれる集合である濃度調整測色値集合を算出することができる。
【0029】
濃度調整測色値算出部123がインキの配合比率を求める処理、特色の吸収・散乱係数を算出する処理、特色の分光反射率を算出する処理、及び特色の分光反射率から測色値を算出する処理は、具体的には特許第6623679号公報の段落0043から段落0060に記載されている処理である。
【0030】
ここで、
図3を参照して、濃度調整測色値の算出の一例について説明する。
図3は、第1の実施形態に係る濃度調整測色値の算出の一例を示す図である。
図3では、
図2に示した例にて色調整測色値算出部122によって算出された色調整測色値に基づき、濃度調整測色値算出部123が濃度調整測色値を算出する例について説明する。なお、
図3に示す例では、色調整測色値算出部122によって算出される色調整測色値の内の一部を説明対象とする。例えば、
図3では、濃度調整測色値算出部123は、色調整測色値算出部122によって算出されたチップ0011の色調整測色値Lab1_1と色調整測色値Lab1_2、チップ0034の色調整測色値Lab2_1と色調整測色値Lab2_2の濃度調整測色値を算出するものとする。
【0031】
濃度調整測色値算出部123は、
図3に示す4つの色調整測色値について、色・濃度範囲データベース161の濃度範囲情報が示す、各色調整測色値が取り得る各濃度に調整後の全ての濃度調整測色値を算出する。具体的に、濃度調整測色値算出部123は、近似色データベース162の近似色情報から各色調整測色値に対応するインキの配合比率を求め、吸収・散乱係数データベース163の原色インキの吸収・散乱係数に基づき特色の吸収・散乱係数を算出する。次いで、濃度調整測色値算出部123は、算出した特色の吸収・散乱係数を用いてクベルカムンクの式の膜厚を変化させ、濃度調整後の分光反射率を算出する。算出した分光反射率に基づき濃度調整後の測色値を算出する。
以下、チップ0011の濃度調整測色値は、濃度調整測色値Lab1_1+、濃度調整測色値Lab1_1、濃度調整測色値Lab1_1-、濃度調整測色値Lab1_2+で示される。また、チップ0034の濃度調整測色値は、濃度調整測色値Lab2_1+、濃度調整測色値Lab2_1、濃度調整測色値Lab2_1-、濃度調整測色値Lab2_2+で示される。濃度調整測色値の名称に付与されている「+」は、濃度が濃くなるように調整されたこと(濃度+)を示す。濃度調整測色値の名称に付与されている「-」は、濃度が薄くなるように調整されたこと(濃度-)を示す。濃度調整測色値の名称に「+」も「-」も付与されていない濃度調整測色値は、標準の濃度であること(標準濃度)を示す。なお、濃度調整測色値算出部123によって算出される濃度調整測色値の数はかかる例に限定されず、各色調整測色値が濃度の調整範囲の中で取り得る濃度の数だけ算出され得る。
【0032】
(4)色域判定部131
色域判定部131は、色の調整及び濃度の調整によって変動した測色値が、印刷物に関する出力を行う出力装置にて再現可能であるか否かを判定する機能を有する。例えば、色域判定部131は、変動測色値算出部121によって算出された変動測色値集合に含まれる各測色値が、出力装置の色域に含まれているか否かを判定する機能を有する。
【0033】
具体的に、色域判定部131は、変動測色値算出部121によって算出された変動測色値集合と、出力装置のカラープロファイルとに基づき、変動測色値集合に含まれる各測色値が出力装置の色域に含まれているか否かを判定する。カラープロファイルは、出力装置の色特性を示す情報である。カラープロファイルは、出力装置色特性データベース164に記憶されている。当該カラープロファイルには、色域情報テーブルが含まれる。色域情報テーブルは、所定の間隔に分割された測色値に対して、その測色値が出力装置の色域に含まれるか否かを記述したテーブルである。色域判定部131は、当該色域情報テーブルを参照し、変動測色値集合に含まれる各測色値が、出力装置の色域に含まれているか否かを判定する。
【0034】
また、色域判定部131は、上述したカラープロファイルを用いて、判定対象の測色値を出力装置に出力するためのデバイス値(例えばRGB値)を算出し、当該デバイス値を再度カラープロファイルで測色値に変換した際の変換前後の色差(ラウンドトリップによる色差)を求め、当該色差があらかじめ定められた所定の閾値を超えた場合、色域外と判定してもよい。
【0035】
(5)色域判定情報生成部141
色域判定情報生成部141は、色域判定情報を生成する機能を有する。色域判定情報は、測色値と出力装置の色域の関係を示す情報である。例えば、色域判定情報生成部141は、色域判定部131による判定の結果に基づき、色域判定情報を生成する。具体的に、色域判定情報生成部141は、変動測色値集合に含まれる各測色値が色域に含まれているか否か、あるいは含まれている度合を示す情報を色域判定情報として生成する。
【0036】
変動測色値集合に含まれる各測色値が色域に含まれているか否かを示す情報は、例えば、出力可否情報である。出力可否情報は、出力装置が変動測色値集合に含まれる各測色値と対応する色を出力可能であるか否かを示す情報である。色域判定部131によって変動測色値集合に含まれる各測色値が出力装置の色域に含まれているか否かが判定された場合、色域判定情報生成部141は、出力可否情報を色域判定情報として生成する。
【0037】
変動測色値集合に含まれる各測色値が色域に含まれている度合を示す情報は、例えば、色差情報である。色差情報は、変動測色値集合に含まれる各測色値に対応する色と、出力装置が出力可能な色との色差を示す情報である。色域判定部131によってカラープロファイルに基づく測色値の変換前後の色差が算出された場合、色域判定情報生成部141は、色差情報を色域判定情報として生成する。
【0038】
ここで、
図4及び
図5を参照して、色域判定情報の一例について説明する。
図4及び
図5は、第1の実施形態に係る色域判定情報の一例を示す図である。
図4は出力可否情報を示し、
図5は色差情報を示している。なお、
図4及び
図5には、
図3にて算出された濃度調整測色値に基づく判定結果が示されている。
【0039】
図4に示すように、チップ0011の出力可否情報として、濃度調整測色値Lab1_1及び濃度調整測色値Lab1_1-には「〇」、濃度調整測色値Lab1_1+及び濃度調整測色値Lab1_2+には「×」が示されている。また、チップ0034の出力可否情報として、濃度調整測色値Lab2_1+、濃度調整測色値Lab2_1、及び濃度調整測色値Lab2_1-には「〇」、濃度調整測色値Lab2_2+には「×」が示されている。
図4に示す「〇」は、濃度調整測色値が出力装置の色域内であり、当該濃度調整測色値と対応する色を出力装置が出力(再現)できることを示している。一方、
図4に示す「×」は、濃度調整測色値が出力装置の色域外であり、当該濃度調整測色値と対応する色を出力装置が出力(再現)できないことを示している。
【0040】
図5に示すように、チップ0011の色差情報として、濃度調整測色値Lab1_1+の色差には「3.4」、濃度調整測色値Lab1_1の色差には「0.0」、濃度調整測色値Lab1_1-の色差には「0.0」、濃度調整測色値Lab1_2+の色差には「1.2」が示されている。また、チップ0034の色差情報として、濃度調整測色値Lab2_1+の色差には「0.0」、濃度調整測色値Lab2_1の色差には「0.0」、濃度調整測色値Lab2_1-の色差には「0.0」、濃度調整測色値Lab2_2+の色差には「4.8」が示されている。
図5に示す色差が「0.0」である場合、カラープロファイルに基づく測色値の変換前後で色差がないことを示している。一方、
図5に示す色差が「0.0」以外である場合、カラープロファイルに基づく測色値の変換前後で色差があることを示している。
【0041】
(6)出力部151
出力部151は、各種の情報を出力する機能を有する。例えば、出力部151は、色域判定情報生成部141によって生成された色域判定情報を出力する。出力部151の機能は、例えば、モニタやプリンタ等の出力装置によって実現される。出力装置がモニタである場合、出力部151は、色域判定情報を当該モニタに表示させる。出力装置がプリンタである場合、出力部151は、色域判定情報を当該プリンタに印刷させてもよい。
【0042】
(7)色・濃度範囲データベース161
色・濃度範囲データベース161は、色範囲情報及び濃度範囲情報を記憶する機能を有する。なお、本実施形態にて用いられる色範囲情報及び濃度範囲情報は、色・濃度範囲データベースにあらかじめ記憶された情報であってもよいし、仕様書等によって指定される情報であってもよい。色範囲情報及び濃度範囲情報が仕様書等によって指定される場合、例えばユーザによって入力部101に入力される。この場合、色調整測色値算出部122及び濃度調整測色値算出部123は、入力部101に入力された色範囲情報及び濃度範囲情報をそれぞれ取得し、各種の算出処理に用いる。
【0043】
(8)近似色データベース162
近似色データベース162は、近似色情報を記憶する機能を有する。近似色データベース162には、配合された原色インキの組み合わせが異なる複数種類の特色インキ(参照特色インキ)について、この特色インキの測色値と、原色の配合比があらかじめ書き込まれて記憶されている。
【0044】
(9)吸収・散乱係数データベース163
吸収・散乱係数データベース163は、吸収・散乱係数情報を記憶する機能を有する。吸収・散乱係数データベース163には、原色インキ毎に、インキの吸収係数K(λ)、散乱係数S(λ)が外部コンピュータなどによりあらかじめ書き込まれて記憶されている。
【0045】
(10)出力装置色特性データベース164
出力装置色特性データベース164は、カラープロファイルを記憶する機能を有する。出力装置色特性データベース164には、印刷物の色調の確認者が印刷物の色調の確認に用いる出力装置のカラープロファイルがあらかじめ記憶されている。
【0046】
<1-2.処理の流れ>
以上、第1の実施形態に係る色域判定システム10の構成の一例について説明した。続いて、
図6を参照して、第1の実施形態に係る色域判定システム10における処理の流れの一例について説明する。
図6は、第1の実施形態に係る色域判定システム10における処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0047】
図6に示すように、まず、ユーザは、印刷物の印刷に用いるインキのベタ色を指定する(ステップS101)。ユーザは、ベタ色の指定方法に応じて、当該ベタ色の測色値を測色器で測定したり、測色値を入力部101に入力したりする。
【0048】
次いで、測色値取得部111は、ユーザによって指定されたベタ色の測色値を取得する(ステップS102)。測色値取得部111は、ユーザによるベタ色の指定方法に応じて、測色器から測色値を取得したり、入力部101から測色値を取得したり、データベースから測色値を取得したりする。
【0049】
次いで、変動測色値算出部121は、変動測色値集合を算出する。
まず、色調整測色値算出部122は、測色値取得部111によって取得された測色値と、変動情報である色範囲情報とに基づき、色調整測色値を算出する(ステップS103)。複数の色調整測色値が算出される場合、色調整測色値算出部122は、色調整測色値集合を算出する。
濃度調整測色値算出部123は、色調整測色値算出部122によって算出された色調整測色値(色調整測色値集合)、変動情報である濃度範囲情報、近似色情報、及び吸収・拡散係数情報に基づき、濃度調整測色値を算出する(ステップS104)。複数の濃度調整測色値が算出される場合、濃度調整測色値算出部123は、濃度調整測色値集合を算出する。
【0050】
次いで、色域判定部131は、濃度調整測色値算出部123によって算出された濃度調整測色値(濃度調整測色値集合)と、出力装置のカラープロファイルとに基づき、濃度調整測色値(濃度調整測色値集合)が示す各測色値が出力装置の色域に含まれているか否かを判定する(ステップS105)。
【0051】
次いで、色域判定情報生成部141は、色域判定部131による判定の結果に基づき、色域判定情報を生成する(ステップS106)。
次いで、出力部151は、色域判定情報生成部141によって生成された色域判定情報を表示する(ステップS107)。
【0052】
以上説明したように、第1の実施形態に係る色域判定システム10は、測色値取得部111、変動測色値算出部121、色域判定部131、及び色域判定情報生成部141を備える。
測色値取得部111は、印刷物の印刷に用いるインキのベタ色の測色値を取得する。
変動測色値算出部121は、測色値取得部111によって取得された測色値と、測色値の変動に関する変動情報とに基づき、変動によってベタ色の測色値が取り得る測色値からなる集合である変動測色値集合を算出する。
色域判定部131は、変動測色値算出部121によって算出された変動測色値集合と、印刷物に関する出力を行う出力装置のカラープロファイルとに基づき、変動測色値集合に含まれる各測色値が出力装置の色域に含まれているか否かを判定する。
色域判定情報生成部141は、色域判定部131による判定の結果に基づき、測色値と色域の関係を示す色域判定情報を生成する。
【0053】
かかる構成により、印刷物の色調確認の依頼者(ユーザ)は、色域判定システム10が生成する色域判定情報を確認することで、色調の確認対象となる印刷物の印刷に用いるインキによって表現され得る各色が確認者側の出力装置で再現できるか否かを確認することができる。これにより、依頼者は、判定結果に基づき、確認者と色調の認識に齟齬が生じないように対応することができる。例えば、依頼者は、確認者側の出力装置で再現できないと判定された色を用いずに印刷物を印刷したり、確認者側の出力装置の色域に含まれるように色や濃度を調整したり、確認者側での出力方式を変更(例えばモニタによる出力からプリンタによる出力へ変更)したりすることができる。また、この判定結果をもとに、遠隔地での色確認自体を行わず、従来の色見本(校正刷り)を用いた色校正を行うようにしてもよい。
【0054】
よって、第1の実施形態に係る色域判定システム10は、印刷物の色調確認の依頼者と確認者との間で色調の認識に齟齬が生じる可能性を低減することを可能とする。
【0055】
<<2.第2の実施形態>>
以上、本発明の第1の実施形態について説明した。続いて、
図7から
図11を参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。
上述した第1の実施形態では、濃度調整測色値算出部123が算出した濃度調整測色値集合に含まれる各測色値が出力装置の色域に含まれるか否かを判定する例について説明した。第2の実施形態では、濃度調整測色値集合に含まれる測色値が示す各色を掛け合わせてできる色に関して、当該色が実際に印刷物に再現された際の印刷色の測色値が出力装置の色域に含まれるか否かを判定する例について説明する。
なお、第1の実施形態と重複する説明は省略する。
【0056】
<2-1.色域判定システムの構成>
図7を参照して、第2の実施形態に係る色域判定システムの構成の一例について説明する。
図7は、第2の実施形態に係る色域判定システム10Aの構成の一例を示すブロック図である。
【0057】
図7に示すように、色域判定システム10Aは、入力部101、測色値取得部111、変動測色値算出部121、色域判定部131、色域判定情報生成部141、出力部151、色・濃度範囲データベース161、近似色データベース162、吸収・散乱係数データベース163、出力装置色特性データベース164、及び階調特性テーブルデータベース165を備える。
【0058】
(1)入力部101
第2の実施形態に係る入力部101の機能は、
図1を参照して説明した第1の実施形態に係る入力部101の機能と同様であるため、その説明を省略する。
【0059】
(2)測色値取得部111
第2の実施形態に係る測色値取得部111の機能は、
図1を参照して説明した第1の実施形態に係る測色値取得部111の機能と同様であるため、その説明を省略する。
【0060】
(3)変動測色値算出部121
第2の実施形態に係る変動測色値算出部121は、第1の実施形態に係る変動測色値算出部121と同様に、変動する測色値を算出する機能を有する。さらに、第2の実施形態に係る変動測色値算出部121は、算出した変動測色値集合に基づき、任意の網点掛け合わせを生成する機能と、当該網点掛け合わせの示す各色が実際に印刷物に再現された際の印刷色の測色値を予測する機能を有する。
図7に示すように、変動測色値算出部121は、当該機能を実現するために色調整測色値算出部122、濃度調整測色値算出部123、網点掛け合わせ生成部124、及び印刷色予測部125を備える。
【0061】
(3-1)色調整測色値算出部122
第2の実施形態に係る色調整測色値算出部122の機能は、
図1を参照して説明した第1の実施形態に係る色調整測色値算出部122の機能と同様であるため、その説明を省略する。
【0062】
(3-2)濃度調整測色値算出部123
第2の実施形態に係る濃度調整測色値算出部123の機能は、
図1を参照して説明した第1の実施形態に係る濃度調整測色値算出部123の機能と同様であるため、その説明を省略する。
【0063】
(3-3)網点掛け合わせ生成部124
網点掛け合わせ生成部124は、網点掛け合わせを生成する機能を有する。網点掛け合わせは、印刷の指令網点面積率の組み合わせを示す情報である。例えば、網点掛け合わせ生成部124は、印刷に使用する各版の10%刻みの全組み合わせを、網点掛け合わせとして生成する。網点掛け合わせは、上述のように網点掛け合わせ生成部124によって算出されてもよいし、あらかじめ決められた網点掛け合わせのデータであってもよい。網点掛け合わせがあらかじめ決められたデータである場合、網点掛け合わせ生成部124は、例えば、当該データをデータベースから読み込んで取得するようにしたり、ユーザが入力部101を介して与えるデータを取得するようにしてもよい。網点掛け合わせが複数生成される場合、網点掛け合わせ生成部124は、複数の網点掛け合わせからなる集合である網点掛け合わせ集合を生成する。
【0064】
なお、網点掛け合わせ生成部124は、印刷に使用するすべての版(インキ色)の一定間隔の設定値の組み合わせ(例えば、CMYK+特色2色の20%刻みの全組み合わせ等)によって、網点掛け合わせを生成してもよい。また、網点掛け合わせ生成部124は、特色の掛け合わせと、特色とプロセスの掛け合わせによって網点掛け合わせを生成してもよい。また、網点掛け合わせ生成部124は、あらかじめ色数ごとにデータベースに記憶された網点掛け合わせを使用してもよい。
【0065】
(3-4)印刷色予測部125
印刷色予測部125は、網点掛け合わせの示す各掛け合わせが実際に印刷物に再現された際の印刷色の測色値を予測する機能を有する。印刷色予測部125が予測した測色値は、以下、「予測値」とも称される。例えば、印刷色予測部125は、変動情報と、網点掛け合わせ生成部124によって生成された網点掛け合わせ集合とに基づき、網点掛け合わせ集合が示す各掛け合わせに対応する予測値を算出する。予測値が複数算出される場合、印刷色予測部125は、算出した複数の予測値からなる集合である印刷色集合を生成する。なお、本実施形態では、印刷色予測部125によって生成される印刷色集合が、変動測色値集合である。
【0066】
印刷色予測部125が予測値の算出に用いる情報は、例えば、階調特性情報である。階調特性情報は、設定値(指令網点面積率)と階調特性との対応関係を示す情報である。階調特性情報は、階調特性テーブルデータベース165に記憶されている。
【0067】
印刷色予測部125は、階調特性情報に基づき、網点掛け合わせ生成部124によって生成された網点掛け合わせ集合が示す全ての掛け合わせに対して、印刷色の測色値を予測(予測値を算出)する。
具体的に、印刷色予測部125は、印刷に使用する各版の濃度調整測色値集合から、それぞれ1つを取り出す全ての組み合わせに関して、網点掛け合わせ生成部124によって生成された網点掛け合わせ集合に含まれる全ての掛け合わせに対して、印刷色の測色値を予測する。
【0068】
印刷色予測部125が印刷色の測色値を予測する処理は、具体的には特許第6623679号公報の段落0061から段落0094に記載されている処理である。
【0069】
ここで、
図8を参照して、網点掛け合わせと印刷色の一例について説明する。
図8は、第2の実施形態に係る網点掛け合わせと印刷色の一例を示す図である。
【0070】
図8に示す網点掛け合わせ30は、2つの版による印刷の掛け合わせで、それぞれ20%刻みの全組み合わせとしたときの、掛け合わせと印刷色の例である。例として、2つの版に対応するインキのベタ色を、
図3に示した濃度調整測色値の内、チップ0011の濃度調整測色値Lab1_1+と、チップ0034の濃度調整測色値Lab2_2+とした場合、網点掛け合わせ30が示す掛け合わせの内、例えばセル31Aの掛け合わせに対応する色は、100%の濃度調整測色値Lab1_1+と0%の濃度調整測色値Lab2_2+とを掛け合わせた色、即ち濃度調整測色値Lab1_1+の色そのものである。また、例えばセル31Bの色は、0%の濃度調整測色値Lab1_1+と100%の濃度調整測色値Lab2_2+とを掛け合わせた色、即ち濃度調整測色値Lab2_2+の色そのものである。また、例えばセル31Cの色は、濃度調整測色値Lab1_1+と濃度調整測色値Lab2_2+をそれぞれベタの測色値とした際の、前者の網点面積率60%、後者の網点面積率40%で印刷した時の色である。印刷色予測部125は、
図8に示す網点掛け合わせ30の各セル(掛け合わせ)の色が印刷された際の印刷色の測色値を予測する。
【0071】
(4)色域判定部131
第2の実施形態に係る色域判定部131の機能は、
図1を参照して説明した第1の実施形態に係る色域判定部131の機能と同様であるため、重複する説明は省略する。
第2の実施形態に係る色域判定部131は、印刷色予測部125によって予測された予測値が、印刷物に関する出力を行う出力装置にて再現可能であるか否かを判定する。なお、色域判定部131は、印刷色予測部125によって生成された印刷色集合に含まれる全ての予測値に対して判定を行う。
【0072】
(5)色域判定情報生成部141
第2の実施形態に係る色域判定情報生成部141の機能は、
図1を参照して説明した第1の実施形態に係る色域判定情報生成部141の機能と同様であるため、重複する説明は省略する。
第2の実施形態に係る色域判定情報生成部141は、印刷色予測部125によって生成された印刷色集合に含まれる各予測値が出力装置の色域に含まれているか否か、あるいは含まれている度合を示す情報を色域判定情報として生成する。
【0073】
印刷色集合に含まれる各予測値が出力装置の色域に含まれているか否かを示す情報は、例えば、出力可否画像である。出力可否画像は、網点掛け合わせ集合が示す全ての掛け合わせを示す画像に対して、出力装置が画像の掛け合わせに対して予測される印刷色を出力可能であるか否かを示す情報を付与した画像である。色域判定部131によって印刷色集合に含まれる各予測値が出力装置の色域に包含されているか否かが判定された場合、色域判定情報生成部141は、出力可否画像を色域判定情報として生成する。一例として、色域判定情報生成部141は、網点掛け合わせ集合に含まれる各網点掛け合わせが示す各セルに対して、出力可能であるか否かを示す情報を付与する。
【0074】
印刷色集合に含まれる各予測値が出力装置の色域に含まれている度合を示す情報は、例えば、統計情報である。統計情報は、網点掛け合わせ集合が示す全ての色を対象に、これらの色を出力装置が出力可能であるか否かを示す情報を統計的に示す情報である。色域判定部131によって印刷色集合に含まれる各予測値が出力装置の色域に包含されているか否かが判定された場合、色域判定情報生成部141は、統計情報を色域判定情報として生成する。一例として、色域判定情報生成部141は、各網点掛け合わせに対して予測される印刷色の内、出力装置の色域に含まれる色の割合を示す情報を統計情報として生成する。
【0075】
ここで、
図9及び
図10を参照して、色域判定情報の一例について説明する。
図9及び
図10は、第2の実施形態に係る色域判定情報の一例を示す図である。
図9は出力可否画像を示し、
図10は統計情報を示している。
【0076】
図9に示す出力可否画像40は、
図3に示した濃度調整測色値の内、チップ0011の濃度調整測色値Lab1_1+と、チップ0034の濃度調整測色値Lab2_2+をベタ色とした場合の、掛け合わせに対する出力可否を示している。出力可否画像40では、出力できない色を示すセルに対して、オブジェクトが重畳表示されており、出力できる色を示すセルには当該オブジェクトが重畳表示されていない。例えば、セル41Aにはオブジェクト42Aが重畳表示され、セル41Bにはオブジェクト42Bが重畳表示されている。即ち、セル41Aとセル41Bの色は出力装置で出力することができない。一方、セル41Cには、オブジェクトが重畳表示されていない。即ち、セル41Cの色は出力装置で出力することができる。
なお、色域判定情報生成部141は、オブジェクト42の色を変化させた出力可否画像40を生成することで、出力可否画像40にて各予測値が出力装置の色域に含まれていない度合を示してもよい。例えば、色域判定情報生成部141は、
図9に示すオブジェクト42Aとオブジェクト42Bのように、予測値と色域との差分の大きさに応じてオブジェクトの色を変化させてよい。これにより、ユーザは、各予測値が出力装置の色域に含まれていない度合を視認によって容易に認識することができる。
なお、各セルに重畳させるオブジェクトの形状や色は、かかる例に限定されない。
【0077】
図10に示す統計情報50は、全体の統計量(全掛け合わせ数、表示可能掛け合わせ数)とともに、個別の統計量の例として、
図3に示した濃度調整測色値の内、チップ0011の濃度調整測色値Lab1_1+とチップ0034の濃度調整測色値Lab2_2-との組み合わせ、チップ0011の濃度調整測色値Lab1_1-とチップ0034の濃度調整測色値Lab2_2+との組み合わせに対する、統計情報を示している。例えば、チップ0011の濃度調整測色値Lab1_1+とチップ0034の濃度調整測色値Lab2_2-との組み合わせについては、印刷色集合のうち、出力装置の色域に含まれる色の割合が90%であることが示されている。また、チップ0011の濃度調整測色値Lab1_1-とチップ0034の濃度調整測色値Lab2_2+との組み合わせについては、印刷色集合のうち、出力装置の色域に含まれる色の割合が85%であることが示されている。また、全掛け合わせ数(
図3に示した濃度調整測色値のすべての組み合わせの数と網点掛け合わせ生成部124が生成した掛け合わせの数の乗算)がnnn個であり、その中で出力装置が出力可能な掛け合わせ数がmmm個であり、その割合が80%であることも示されている。
【0078】
(6)出力部151
第2の実施形態に係る出力部151の機能は、
図1を参照して説明した第1の実施形態に係る出力部151の機能と同様であるため、その説明を省略する。
【0079】
(7)色・濃度範囲データベース161
第2の実施形態に係る色・濃度範囲データベース161の機能は、
図1を参照して説明した第1の実施形態に係る色・濃度範囲データベース161の機能と同様であるため、その説明を省略する。
【0080】
(8)近似色データベース162
第2の実施形態に係る近似色データベース162の機能は、
図1を参照して説明した第1の実施形態に係る近似色データベース162の機能と同様であるため、その説明を省略する。
【0081】
(9)吸収・散乱係数データベース163
第2の実施形態に係る吸収・散乱係数データベース163の機能は、
図1を参照して説明した第1の実施形態に係る吸収・散乱係数データベース163の機能と同様であるため、その説明を省略する。
【0082】
(10)出力装置色特性データベース164
第2の実施形態に係る出力装置色特性データベース164の機能は、
図1を参照して説明した第1の実施形態に係る出力装置色特性データベース164の機能と同様であるため、その説明を省略する。
【0083】
(11)階調特性テーブルデータベース165
階調特性テーブルデータベース165には、原色インキの階調特性(指令網点面積率に応じた濃度階調領域の出現率)を表すパラメータがあらかじめ計算されて記憶されている。当該パラメータは、具体的には特許第6623679号公報の段落0061から段落0094に記載されている処理によって算出可能である。
【0084】
<2-2.処理の流れ>
以上、第2の実施形態に係る色域判定システム10Aの構成の一例について説明した。続いて、
図11を参照して、第2の実施形態に係る色域判定システム10Aにおける処理の流れの一例について説明する。
図11は、第2の実施形態に係る色域判定システム10Aにおける処理の流れの一例を示すフローチャートである。
なお、
図11に示すステップS201~ステップS204、ステップS208、及びステップS209は、第1の実施形態にて説明した
図6に示すステップS101~ステップS104、ステップS106、及びステップS107とそれぞれ同様であるため、その説明を省略する。
【0085】
網点掛け合わせ生成部124は、網点掛け合わせを生成する(ステップS205)。
【0086】
次いで、印刷色予測部125は、階調特性情報と、網点掛け合わせ生成部124によって生成された網点掛け合わせ集合とに基づき、網点掛け合わせ集合が示す各色の予測値を算出する(ステップS206)。
【0087】
次いで、色域判定部131は、印刷色予測部125によって予測された予測値と、出力装置のカラープロファイルとに基づき、当該予測値が出力装置の色域に含まれているか否かを判定する(ステップS207)。
【0088】
以上説明したように、第2の実施形態に係る色域判定システム10Aは、測色値取得部111、色調整測色値算出部122、濃度調整測色値算出部123、網点掛け合わせ生成部124、印刷色予測部125、色域判定部131、及び色域判定情報生成部141を備える。
測色値取得部111は、印刷物の印刷に用いるインキのベタ色の測色値を取得する。
色調整測色値算出部122は、変動情報と測色値取得部111によって取得された測色値とに基づき、ベタ色の色が調整されることで変動した測色値からなる集合である色調整測色値集合を算出する。
濃度調整測色値算出部123は、変動情報と色調整測色値算出部122によって算出された色調整測色値集合とに基づき、インキの濃度が調整されることで変動した測色値からなる集合である濃度調整測色値集合を算出する。
網点掛け合わせ生成部124は、印刷物の網点において少なくとも2種類の色の掛け合わせを示す網点掛け合わせ集合を生成する。
印刷色予測部125は、変動測色値集合と、網点掛け合わせ生成部124によって生成された網点掛け合わせ集合とに基づき、網点掛け合わせ集合が示す各掛け合わせの印刷物における印刷色の測色値の予測値からなる集合である印刷色集合を生成する。
色域判定部131は、印刷色予測部125によって生成された印刷色集合と、印刷物に関する出力を行う出力装置のカラープロファイルとに基づき、印刷色集合に含まれる各測色値が出力装置の色域に含まれているか否かを判定する。
色域判定情報生成部141は、色域判定部131による判定の結果に基づき、測色値と色域の関係を示す色域判定情報を生成する。
【0089】
かかる構成により、印刷物の色調確認の依頼者(ユーザ)は、色域判定システム10Aが生成する色域判定情報を確認することで、色調の確認対象となる印刷物の印刷に用いるインキによって表現され得る各色が確認者側の出力装置で再現できるか否かを確認することができる。これにより、依頼者は、判定結果に基づき、確認者と色調の認識に齟齬が生じないように対応することができる。例えば、依頼者は、確認者側の出力装置で再現できないと判定された色を用いずに印刷物を印刷したり、確認者側の出力装置の色域に含まれるように色や濃度を調整したり、確認者側での出力方式を変更(例えばモニタによる出力からプリンタによる出力へ変更)したりすることができる。
【0090】
よって、第2の実施形態に係る色域判定システム10Aは、印刷物の色調確認の依頼者と確認者との間で色調の認識に齟齬が生じる可能性を低減することを可能とする。
【0091】
<<3.第3の実施形態>>
以上、本発明の第2の実施形態について説明した。続いて、
図12から
図16を参照して、本発明の第3の実施形態について説明する。
上述した第1の実施形態では濃度調整測色値算出部123が算出した濃度調整測色値集合に含まれる各測色値が出力装置の色域に含まれるか否かを判定する例について説明し、第2の実施形態では濃度調整測色値集合に含まれる測色値が示す各色を掛け合わせてできる色に関して、当該色が実際に印刷物に再現された際の印刷色の測色値が出力装置の色域に含まれるか否かを判定する例について説明した。第3の実施形態では、印刷物の製版画像を濃度調整測色値集合に含まれる測色値を原色として印刷した際に、製版画像の各画素における印刷色の測色値が出力装置の色域に含まれるか否かを判定する例について説明する。
なお、第1の実施形態及び第2の実施形態と重複する説明は省略する。
【0092】
<3-1.色域判定システムの構成>
図12を参照して、第3の実施形態に係る色域判定システムの構成の一例について説明する。
図12は、第3の実施形態に係る色域判定システム10Bの構成の一例を示すブロック図である。
【0093】
図12に示すように、色域判定システム10Bは、入力部101、測色値取得部111、製版画像取得部112、変動測色値算出部121、色域判定部131、色域判定情報生成部141、出力部151、色・濃度範囲データベース161、近似色データベース162、吸収・散乱係数データベース163、出力装置色特性データベース164、及び階調特性テーブルデータベース165を備える。
【0094】
(1)入力部101
第3の実施形態に係る入力部101の機能は、
図1を参照して説明した第1の実施形態に係る入力部101の機能と同様であるため、その説明を省略する。
【0095】
(2)測色値取得部111
第3の実施形態に係る測色値取得部111の機能は、
図1を参照して説明した第1の実施形態に係る測色値取得部111の機能と同様であるため、その説明を省略する。
【0096】
(3)製版画像取得部112
製版画像取得部112は、印刷物の製版画像を取得する。当該製版画像は、例えば、一般的な画像フォーマット(例えばTIFF(Tagged Image File Format)で記述されたファイルである。製版画像取得部112は、例えば、ユーザの選択に基づき、製版画像を取得する。一例として、ユーザは、入力部101に対して、選択した製版画像の情報を入力する。製版画像取得部112は、入力部101に入力された製版画像の情報に対応する製版画像を読み込んで取得する。
【0097】
(4)変動測色値算出部121
第3の実施形態に係る変動測色値算出部121は、第1の実施形態に係る変動測色値算出部121と同様に、変動する測色値を算出する機能を有する。さらに、第3の実施形態に係る変動測色値算出部121は、算出した変動測色値集合に基づき、製版画像の各画素における印刷色の測色値を予測する機能を有する。
図12に示すように、変動測色値算出部121は、色調整測色値算出部122、濃度調整測色値算出部123、及び印刷色予測部125を備える。
【0098】
(4-1)色調整測色値算出部122
第3の実施形態に係る色調整測色値算出部122の機能は、
図1を参照して説明した第1の実施形態に係る色調整測色値算出部122の機能と同様であるため、その説明を省略する。
【0099】
(4-2)濃度調整測色値算出部123
第3の実施形態に係る濃度調整測色値算出部123の機能は、
図1を参照して説明した第1の実施形態に係る濃度調整測色値算出部123の機能と同様であるため、その説明を省略する。
【0100】
(4-3)印刷色予測部125
印刷色予測部125は、濃度調整測色値の示す各色を原色として製版画像が印刷された際の製版画像の各画素における印刷色の測色値を予測する機能を有する。印刷色予測部125が予測した測色値は、第2の実施形態と同様に「予測値」とも称される。例えば、印刷色予測部125は、製版画像取得部112によって取得された製版画像と、濃度調整測色値算出部123によって算出された濃度調整測色値集合と、階調特性情報とに基づき、製版画像が印刷された印刷物の各画素における予測値を算出する。予測値が複数算出される場合、印刷色予測部125は、算出した複数の予測値からなる集合である印刷色集合を生成する。なお、本実施形態では、印刷色予測部125によって生成される印刷色集合が、変動測色値集合である。
【0101】
印刷色予測部125は、階調特性情報に基づき、製版画像が印刷された印刷物の各画素に対して、印刷色の測色値を予測(予測値を算出)する。製版画像を構成する画像が複数ある場合、印刷色予測部125は、各画像との間で対応する画素同士の色を掛け合わせた色の印刷色の測色値を予測する。これにより、印刷色予測部125は、製版画像を指定のインキ色で印刷した際の測色値画像を得ることができる。
【0102】
印刷色予測部125が印刷色の測色値を予測する処理は、具体的には特許第6623679号公報の段落0061から段落0094に記載されている処理である。
【0103】
ここで、
図13を参照して、製版画像と測色値画像の一例について説明する。
図13は、第3の実施形態に係る製版画像と測色値画像の一例を示す図である。
図13に示す製版画像60は、6枚の画像で構成されている。6枚の画像は、例えば、それぞれC、M、Y、K、S1、S2のチャンネル(版)に対応する。印刷色予測部125は、これら6枚の画像からなる製版画像60において、各画像の対応する画素の掛け合わせの値から、印刷色の測色値を予測する。これにより、印刷色予測部125は、
図13に示す測色値画像70を得ることができる。
【0104】
(5)色域判定部131
第3の実施形態に係る色域判定部131の機能は、
図1を参照して説明した第1の実施形態に係る色域判定部131の機能と同様であるため、重複する説明は省略する。
第3の実施形態に係る色域判定部131は、印刷色予測部125によって予測された予測値が、印刷物に関する出力を行う出力装置にて再現可能であるか否かを判定する。なお、色域判定部131は、印刷色予測部125によって生成された印刷色集合に含まれる全ての予測値に対して判定を行う。
【0105】
(6)色域判定情報生成部141
第3の実施形態に係る色域判定情報生成部141の機能は、
図1を参照して説明した第1の実施形態に係る色域判定情報生成部141の機能と同様であるため、重複する説明は省略する。
第3の実施形態に係る色域判定情報生成部141は、製版画像の少なくとも一部の画素について、印刷色予測部125によって生成された印刷色集合に含まれる各予測値が出力装置の色域に含まれているか否か、あるいは含まれている度合を示す画像を色域判定情報として生成する。
【0106】
印刷色集合に含まれる各予測値が出力装置の色域に含まれているか否かを示す情報は、例えば、出力可否画像である。出力可否画像は、製版画像の各画素の内、予測値が出力装置の色域に含まれていない画素に対して、出力装置が当該画素の色を出力可能であるか否かを示す情報を付与した画像である。色域判定部131によって印刷色集合に含まれる各予測値が出力装置の色域に包含されているか否かが判定された場合、色域判定情報生成部141は、出力可否画像を色域判定情報として生成する。一例として、色域判定情報生成部141は、製版画像(測色値画像)の各画素の内、予測値が出力装置の色域に含まれていないと判定された画素に対して、マスク画像を重畳させる。
また、色域判定情報生成部141は、マスク画像の色を変化させた出力可否画像を生成することで、予測値が出力装置の色域に含まれていない度合を示す色域判定情報を生成してもよい。
【0107】
ここで、
図14及び
図15を参照して、色域判定情報の一例について説明する。
図14及び
図15は、第3の実施形態に係る色域判定情報の一例を示す図である。
図14は各予測値が出力装置の色域に含まれているか否かを示す出力可否画像を示し、
図15は各予測値が出力装置の色域に含まれていない度合を示す出力可否画像である。なお、
図14及び
図15に示す出力可否画像における製版画像(測色値画像)は、カラー画像であるとする。
【0108】
図14に示す出力可否画像80では、製版画像(測色値画像)の各画素の内、予測値が出力装置の色域に含まれていない画素に対して、マスク画像81が重畳されている。
図15に示す出力可否画像80では、製版画像(測色値画像)の各画素の内、予測値が出力装置の色域に含まれていない画素に対して、マスク画像91又はマスク画像92が重畳されている。
図15に示すマスク画像91とマスク画像92のように、予測値と色域との差分の大きさに応じてマスク画像の色を変化させてよい。これにより、ユーザは、各予測値が出力装置の色域に含まれていない度合を視認によって容易に認識することができる。
なお、
図14及び
図15では出力可否画像における製版画像がカラー画像である例について説明したが、かかる例に限定されない。マスク画像の色を容易に視認できるようにするため、製版画像(測色値画像)の色を、明暗のみのモノクロ画像として、そこにマスク画像を重畳するようにしてもよい。
【0109】
(7)出力部151
第3の実施形態に係る出力部151の機能は、
図1を参照して説明した第1の実施形態に係る出力部151の機能と同様であるため、その説明を省略する。
【0110】
(8)色・濃度範囲データベース161
第3の実施形態に係る色・濃度範囲データベース161の機能は、
図1を参照して説明した第1の実施形態に係る色・濃度範囲データベース161の機能と同様であるため、その説明を省略する。
【0111】
(9)近似色データベース162
第3の実施形態に係る近似色データベース162の機能は、
図1を参照して説明した第1の実施形態に係る近似色データベース162の機能と同様であるため、その説明を省略する。
【0112】
(10)吸収・散乱係数データベース163
第3の実施形態に係る吸収・散乱係数データベース163の機能は、
図1を参照して説明した第1の実施形態に係る吸収・散乱係数データベース163の機能と同様であるため、その説明を省略する。
【0113】
(11)出力装置色特性データベース164
第3の実施形態に係る出力装置色特性データベース164の機能は、
図1を参照して説明した第1の実施形態に係る出力装置色特性データベース164の機能と同様であるため、その説明を省略する。
【0114】
(12)階調特性テーブルデータベース165
第3の実施形態に係る階調特性テーブルデータベース165の機能は、
図7を参照して説明した第2の実施形態に係る階調特性テーブルデータベース165の機能と同様であるため、その説明を省略する。
【0115】
<3-2.処理の流れ>
以上、第3の実施形態に係る色域判定システム10Bの構成の一例について説明した。続いて、
図16を参照して、第3の実施形態に係る色域判定システム10Bにおける処理の流れの一例について説明する。
図16は、第3の実施形態に係る色域判定システム10Bにおける処理の流れの一例を示すフローチャートである。
なお、
図16に示すステップS301~ステップS304、ステップS308、及びステップS309は、第1の実施形態にて説明した
図6に示すステップS101~ステップS104、ステップS106、及びステップS107とそれぞれ同様であるため、その説明を省略する。
【0116】
製版画像取得部112は、製版画像を取得する(ステップS305)。
【0117】
印刷色予測部125は、階調特性情報と、製版画像取得部112によって取得された製版画像と、濃度調整測色値算出部123によって算出された濃度調整測色値集合に基づき、製版画像が印刷された印刷物の各画素における予測値を算出する(ステップS306)。
【0118】
次いで、色域判定部131は、印刷色予測部125によって予測された予測値と、出力装置のカラープロファイルとに基づき、当該予測値が出力装置の色域に含まれているか否かを判定する(ステップS307)。
【0119】
以上説明したように、第3の実施形態に係る色域判定システム10Bは、測色値取得部111、色調整測色値算出部122、濃度調整測色値算出部123、製版画像取得部112、印刷色予測部125、色域判定部131、及び色域判定情報生成部141を備える。
測色値取得部111は、印刷物の印刷に用いるインキのベタ色の測色値を取得する。
色調整測色値算出部122は、変動情報と測色値取得部111によって取得された測色値とに基づき、ベタ色の色が調整されることで変動した測色値からなる集合である色調整測色値集合を算出する。
濃度調整測色値算出部123は、変動情報と色調整測色値算出部122によって算出された色調整測色値集合とに基づき、インキの濃度が調整されることで変動した測色値からなる集合である濃度調整測色値集合を算出する。
製版画像取得部112は、印刷物の製版画像を取得する。
印刷色予測部125は、変動測色値集合と、製版画像取得部112によって取得された製版画像と、階調特性情報とに基づき、製版画像が印刷された印刷物の各画素における印刷色の測色値の予測値からなる集合である印刷色集合を生成する。
色域判定部131は、印刷色予測部125によって生成された印刷色集合と、印刷物に関する出力を行う出力装置のカラープロファイルとに基づき、印刷色集合に含まれる各測色値が出力装置の色域に含まれているか否かを判定する。
色域判定情報生成部141は、色域判定部131による判定の結果に基づき、測色値と色域の関係を示す色域判定情報を生成する。
【0120】
かかる構成により、印刷物の色調確認の依頼者(ユーザ)は、色域判定システム10Aが生成する色域判定情報を確認することで、色調の確認対象となる印刷物の印刷に用いるインキによって表現され得る各色が確認者側の出力装置で再現できるか否かを確認することができる。これにより、依頼者は、判定結果に基づき、確認者と色調の認識に齟齬が生じないように対応することができる。例えば、依頼者は、確認者側の出力装置で再現できないと判定された色を用いずに印刷物を印刷したり、確認者側の出力装置の色域に含まれるように色や濃度を調整したり、確認者側での出力方式を変更(例えばモニタによる出力からプリンタによる出力へ変更)したりすることができる。
【0121】
よって、第3の実施形態に係る色域判定システム10Bは、印刷物の色調確認の依頼者と確認者との間で色調の認識に齟齬が生じる可能性を低減することを可能とする。
【0122】
以上、本発明の実施形態について説明した。なお、上述した各実施形態における色域判定システム10、色域判定システム10A、及び色域判定システム10Bの各々が備える各部の機能の一部又は全部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0123】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【符号の説明】
【0124】
10 色域判定システム
101 入力部
111 測色値取得部
112 製版画像取得部
121 変動測色値算出部
122 色調整測色値算出部
123 濃度調整測色値算出部
124 網点掛け合わせ生成部
125 印刷色予測部
131 色域判定部
141 色域判定情報生成部
151 出力部
161 色・濃度範囲データベース
162 近似色データベース
163 吸収・散乱係数データベース
164 出力装置色特性データベース
165 階調特性テーブルデータベース