(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138906
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】ポンプ装置
(51)【国際特許分類】
F04B 43/12 20060101AFI20220915BHJP
【FI】
F04B43/12 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021039052
(22)【出願日】2021-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】日本電産コパル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 史善
【テーマコード(参考)】
3H077
【Fターム(参考)】
3H077AA08
3H077CC02
3H077CC10
3H077DD08
3H077EE15
3H077FF31
(57)【要約】
【課題】応答性の良い小型のポンプ装置を提供する。
【解決手段】ポンプ装置1は、流れ方向Fに沿って延びるベース部材40と、柔軟性を有する膜部材50と、膜部材50に対してベース部材40とは反対側に位置する固定フレーム31Aと、流れ方向Fに沿って配置される複数の膜制御部60とを備える。膜部材50は、流れ方向Fに沿ってベース部材40との間に流路15を形成する。複数の膜制御部60のそれぞれは、加熱によって収縮する形状記憶合金から形成される線状部材70と、固定フレーム31Aと膜部材50との間に配置されるバネ部材80とを含む。線状部材70は、固定フレーム31Aと膜部材50とを連結する。バネ部材80は、線状部材70の収縮によって変形した膜部材50の部分をベース部材40に向けて付勢するように構成される。ポンプ装置1は、流れ方向Fに沿って複数の膜制御部60の線状部材70に順番に電流を供給するように構成された電流制御部100をさらに備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流れ方向に沿って延びるベース部材と、
柔軟性を有する膜部材であって、前記流れ方向に沿って前記ベース部材との間に流路を形成する膜部材と、
前記膜部材に対して前記ベース部材とは反対側に位置する固定フレームと、
前記流れ方向に沿って配置される複数の膜制御部であって、
加熱によって収縮する形状記憶合金から形成される線状部材であって、前記固定フレームと前記膜部材とを連結する線状部材と、
前記固定フレームと前記膜部材との間に配置され、前記線状部材の収縮によって変形した前記膜部材の部分を前記ベース部材に向けて付勢するように構成されるバネ部材と
をそれぞれ含む複数の膜制御部と、
前記流れ方向に沿って前記複数の膜制御部の前記線状部材に順番に電流を供給するように構成された電流制御部と
を備えた、ポンプ装置。
【請求項2】
前記複数の膜制御部のそれぞれは、前記膜部材よりも硬い材料から形成される硬質部材であって、前記膜部材に固定され、前記線状部材及び前記バネ部材が接続される硬質部材をさらに含む、請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項3】
前記複数の膜制御部のそれぞれの前記バネ部材及び前記硬質部材は導電性を有し、
前記電流制御部は、前記複数の膜制御部のそれぞれの前記バネ部材及び前記硬質部材を介して前記線状部材に前記電流を供給するように構成される、
請求項2に記載のポンプ装置。
【請求項4】
前記複数の膜制御部のそれぞれの前記バネ部材は導電性を有し、
前記電流制御部は、前記複数の膜制御部のそれぞれの前記バネ部材を介して前記線状部材に前記電流を供給するように構成される、
請求項1又は2に記載のポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ装置に係り、特に形状記憶合金を用いた小型のポンプ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から様々な種類のポンプが開発されているが、近年では、ポンプを小型化するために、簡素な構造でエネルギーを生じさせることが可能な形状記憶合金を利用することも行われている(例えば、特許文献1参照)。このような形状記憶合金を用いたポンプにおいては応答性を改善することが課題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、応答性の良い小型のポンプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、応答性の良い小型のポンプ装置が提供される。このポンプ装置は、流れ方向に沿って延びるベース部材と、柔軟性を有する膜部材と、上記膜部材に対して上記ベース部材とは反対側に位置する固定フレームと、上記流れ方向に沿って配置される複数の膜制御部とを備える。上記膜部材は、上記流れ方向に沿って上記ベース部材との間に流路を形成する。上記複数の膜制御部のそれぞれは、加熱によって収縮する形状記憶合金から形成される線状部材と、上記固定フレームと上記膜部材との間に配置されるバネ部材とを含む。上記線状部材は、上記固定フレームと上記膜部材とを連結する。上記バネ部材は、上記線状部材の収縮によって変形した上記膜部材の部分を上記ベース部材に向けて付勢するように構成される。上記ポンプ装置は、上記流れ方向に沿って上記複数の膜制御部の上記線状部材に順番に電流を供給するように構成された電流制御部をさらに備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態におけるポンプ装置の構成を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、
図1のポンプ装置における膜制御部の構成の一例を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明に係るポンプ装置の実施形態について
図1から
図3を参照して詳細に説明する。
図1から
図3において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、
図1から
図3においては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や一部の構成要素が省略されている場合がある。以下の説明では、特に言及がない場合には、「第1」や「第2」などの用語は、構成要素を互いに区別するために使用されているだけであり、特定の順位や順番を表すものではない。
【0008】
図1は、本発明の一実施形態におけるポンプ装置1の構成を模式的に示す断面図である。このようなポンプ装置1としては、例えば薬の投与のために用いられるような携帯用の小型のポンプ装置が考えられるが、これに限られるものではない。
図1に示すように、ポンプ装置1は、移送する流体(例えば薬剤)を貯留する貯留部10と、貯留部10からの流体が移送される出力部20と、貯留部10内の流体を流れ方向Fに沿って出力部20に移送するポンプ本体30とを含んでいる。
【0009】
ポンプ本体30は、筐体31と、筐体31の内部に収容されたベース部材40と、筐体31の内部にベース部材40から離間して配置される膜部材50と、膜部材50の変形を制御する複数の膜制御部60(60A~60C)とを含んでいる。膜部材50は例えばゴムなどの柔軟性を有する材料から形成される。ベース部材40及び膜部材50はいずれも流れ方向Fに沿って延びており、これによりベース部材40と膜部材50との間に流れ方向Fに沿った流路15が形成されている。
【0010】
複数の膜制御部60は、流れ方向Fに沿って互いに離間して配置されている。本実施形態においては3つの膜制御部60が流れ方向Fに沿って互いに離間して配置されているが、膜制御部60の数はこれに限られるものではない。それぞれの膜制御部60は、加熱によって収縮する形状記憶合金から形成される線状部材70(70A~70C)と、線状部材70と対になって配置されるバネ部材80(80A~80C)と、膜部材50よりも硬い材料から形成され、膜部材50上に固定される硬質部材90(90A~90C)とを含んでいる。
【0011】
線状部材70としては、例えばニッケルとチタンの合金からなる形状記憶合金を直径0.05mm~0.5mm程度の細線状にしたものを用いることができる。線状部材70の一端は、筐体31を構成する部分のうち膜部材50に対してベース部材40とは反対側に位置する部分31A(以下、固定フレームという)に連結され、他端は硬質部材90に連結されている。この線状部材70に通電すると、線状部材70が加熱され、この加熱に伴って収縮する。例えば、線状部材70の加熱によって線状部材70の長さが5%程度収縮する。これにより、線状部材70が連結されている膜部材50の部分が持ち上げられるようになっている。
【0012】
また、バネ部材80の一端は筐体31の固定フレーム31Aに連結され、他端は硬質部材90に連結されている。
図1に示す状態ではバネ部材80は圧縮されて力を蓄えている状態となっている。すなわち、膜部材50は、バネ部材80によってベース部材40に押し付けられている。線状部材70及びバネ部材80は、加熱により線状部材70が収縮する力がバネ部材80の弾性力よりも大きくなるように構成されている。本実施形態におけるバネ部材80は導電性を有する金属から形成されており、硬質部材90も同様に導電性を有する金属から形成されている。なお、他の実施形態では、
図1に示す状態のバネ部材80は自然長であってもよい。
【0013】
図1に示すように、ポンプ装置1は、それぞれの線状部材70A~70Cに供給する電源を制御する電流制御部100を有している。固定フレーム31Aに連結されている線状部材70は電線102を介して電流制御部100に接続されており、固定フレーム31Aに連結されているバネ部材80は電線104を介して電流制御部100に接続されている。本実施形態では硬質部材90及び線状部材70が導電性を有するため、電線102、線状部材70、硬質部材90、バネ部材80、及び電線104により電気回路が構成され、電流制御部100によってそれぞれの膜制御部60の線状部材70に電流を供給できるようになっている。このように、硬質部材90及びバネ部材80を電気回路の一部としても兼用することで、ポンプ装置1の部品点数を減らすことができる。
【0014】
次に、このような構成のポンプ装置1の動作について説明する。まず、
図2Aに示すように、電流制御部100によって膜制御部60Aの線状部材70Aに電流を流すと、線状部材70Aが加熱されて収縮する。この線状部材70Aの収縮に伴って、線状部材70Aが連結されている膜部材50の部分50Aが持ち上げられ、その部分の流路15Aが広がる。これによって、貯留部10内の流体の一部が流路15Aに流れ込む。
【0015】
次に、
図2Bに示すように、電流制御部100によって膜制御部60Bの線状部材70Bに電流を流すと同時に、膜制御部60Aの線状部材70Aに流していた電流を止めると、線状部材70Aが、その形状記憶作用に加えてバネ部材80Aの付勢力を受けて短時間で元の長さに戻り、流路15Aが元の大きさに戻る。また、線状部材70Bへの通電によって線状部材70Bが加熱されて収縮し、線状部材70Bが連結されている膜部材50の部分50Bが持ち上げられ、その部分の流路15Bが広がる。このように、広がっていた流路15Aが元に戻るとともにこの流路15Aに隣接する流路15Bが広がるため、流路15Aに存在していた流体が流路15Bに移動する。
【0016】
さらに、
図2Cに示すように、電流制御部100によって膜制御部60Cの線状部材70Cに電流を流すと同時に、膜制御部60Bの線状部材70Bに流していた電流を止めると、線状部材70Bが、その形状記憶作用に加えてバネ部材80Bの付勢力を受けて短時間で元の長さに戻り、流路15Bが元の大きさに戻る。また、線状部材70Cへの通電によって線状部材70Cが加熱されて収縮し、線状部材70Cが連結されている膜部材50の部分50Cが持ち上げられ、その部分の流路15Cが広がる。このように、広がっていた流路15Bが元に戻るとともにこの流路15Bに隣接する流路15Cが広がるため、流路15Bに存在していた流体が流路15Cに移動する。
【0017】
そして、膜制御部60Cの線状部材70Cに流していた電流を止めると、線状部材70Cが、その形状記憶作用に加えてバネ部材80Cの付勢力を受けて短時間で元の長さに戻り、流路15Cが元の大きさに戻る(
図1に示す状態)。これにより流路15C内の流体が出力部20に押し出され、流体が出力部20に移送される。
【0018】
このように、電流制御部100によって膜制御部60A,60B,60Cの線状部材70A,70B,70Cに順番に電流を供給することを繰り返すことにより、膜部材50を脈動させて貯留部10内の流体を出力部20に移送することができる。このとき、線状部材70A,70B,70Cに順番に供給する電流のサイクルの周波数を調整することで、貯留部10から出力部20に移送される流体の流量を調整することができる。
【0019】
また、電流制御部100により電流が供給されて収縮した線状部材70は、電流が供給されなくなると、その形状記憶作用に加えてバネ部材80の付勢力を受けるため、線状部材70が元の長さに戻る時間が早くなり、ポンプ装置1の応答性が向上する。
【0020】
本実施形態では、線状部材70及びバネ部材80が硬質部材90を介して膜部材50に連結されているが、硬質部材90を省略し、線状部材70及びバネ部材80が膜部材50に直接連結されていてもよい。ただし、硬質部材90を介して線状部材70及びバネ部材80を膜部材50に連結すれば、線状部材70及びバネ部材80から膜部材50に力が作用する領域を硬質部材90が固定された領域に広げることができ、膜部材50を変形させて流体を移送する空間を増やすことができる。
【0021】
図1に示す例では、理解を容易にするために、それぞれの膜制御部60が1つの線状部材70と1つのバネ部材80を有するものとして図示されているが、例えば、
図3の平面図に示すように、それぞれの膜制御部60が、矩形平板状の硬質部材90と、硬質部材90に固定された複数の線状部材70及び複数のバネ部材80とを含んでいてもよい。
図3に示す例では、それぞれの硬質部材90の中央部に3つの線状部材70が配置され、これらの線状部材70を挟むように2つのバネ部材80が配置されている。
【0022】
上述した実施形態では、バネ部材80及び硬質部材90を導電性材料から形成し、電線102、線状部材70、硬質部材90、バネ部材80、及び電線104により電気回路を形成しているが、バネ部材80及び硬質部材90は導電性材料から形成されていなくてもよい。例えば、バネ部材80のみを導電性材料から形成し、バネ部材80を線状部材70に電気的に接続することで、電線102、線状部材70、バネ部材80、及び電線104により電気回路を形成してもよい。バネ部材80及び硬質部材90のいずれも導電性材料から形成されていない場合には、線状部材70の硬質部材90側の端部に電線104が接続される。
【0023】
また、図示した例では、硬質部材90は、膜部材50上に配置されているが、硬質部材90を膜部材50中に埋め込んで固定してもよい。
【0024】
以上述べたように、本発明の一態様によれば、応答性の良い小型のポンプ装置が提供される。このポンプ装置は、流れ方向に沿って延びるベース部材と、柔軟性を有する膜部材と、上記膜部材に対して上記ベース部材とは反対側に位置する固定フレームと、上記流れ方向に沿って配置される複数の膜制御部とを備える。上記膜部材は、上記流れ方向に沿って上記ベース部材との間に流路を形成する。上記複数の膜制御部のそれぞれは、加熱によって収縮する形状記憶合金から形成される線状部材と、上記固定フレームと上記膜部材との間に配置されるバネ部材とを含む。上記線状部材は、上記固定フレームと上記膜部材とを連結する。上記バネ部材は、上記線状部材の収縮によって変形した上記膜部材の部分を上記ベース部材に向けて付勢するように構成される。上記ポンプ装置は、上記流れ方向に沿って上記複数の膜制御部の上記線状部材に順番に電流を供給するように構成された電流制御部をさらに備える。
【0025】
このような構成によれば、電流制御部により複数の膜制御部の線状部材に順番に電流を供給することにより、複数の膜制御部の線状部材を順番に加熱して収縮させることができる。これにより、線状部材が連結された膜部材の部分を順番に変形させて膜部材を脈動させることができるので、流路内の流体を流れ方向に沿って移送することができる。また、収縮した線状部材は、電流が供給されなくなると、その形状記憶作用に加えてバネ部材の付勢力を受けるため、線状部材が元の長さに戻る時間が早くなり、ポンプ装置の応答性が向上する。
【0026】
上記複数の膜制御部のそれぞれは、上記膜部材よりも硬い材料から形成される硬質部材をさらに含んでいてもよい。この硬質部材は、上記膜部材に固定され、上記線状部材及び上記バネ部材が接続される。このような硬質部材に線状部材とバネ部材を接続することにより、線状部材及びバネ部材から膜部材に力が作用する領域を硬質部材が固定された領域に広げることができ、膜部材を変形させて流体を移送する空間を増やすことができる。
【0027】
上記複数の膜制御部のそれぞれの上記バネ部材及び上記硬質部材は導電性を有していてもよい。この場合において、上記電流制御部は、上記複数の膜制御部のそれぞれの上記バネ部材及び上記硬質部材を介して上記線状部材に上記電流を供給するように構成されていてもよい。
【0028】
上記複数の膜制御部のそれぞれの上記バネ部材は導電性を有していてもよい。この場合において、上記電流制御部は、上記複数の膜制御部のそれぞれの上記バネ部材を介して上記線状部材に上記電流を供給するように構成されていてもよい。
【0029】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0030】
1 ポンプ装置
10 貯留部
15 流路
20 出力部
30 ポンプ本体
31 筐体
31A 固定フレーム
40 ベース部材
50 膜部材
60 膜制御部
70 線状部材
80 バネ部材
90 硬質部材
100 電流制御部
F 流れ方向