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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138910
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】炭化炉及びガス化システム
(51)【国際特許分類】
   C10B 53/00 20060101AFI20220915BHJP
   B09B 3/40 20220101ALI20220915BHJP
【FI】
C10B53/00 A ZAB
B09B3/00 302F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021039061
(22)【出願日】2021-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】517374753
【氏名又は名称】エネサイクル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】519306381
【氏名又は名称】岡本 高彰
(71)【出願人】
【識別番号】508139952
【氏名又は名称】高橋 君典
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(72)【発明者】
【氏名】高橋 君典
(72)【発明者】
【氏名】岡本 高彰
【テーマコード(参考)】
4D004
4H012
【Fターム(参考)】
4D004AA02
4D004AA12
4D004AA31
4D004AB01
4D004CA04
4D004CA26
4D004CA42
4D004CB50
4D004CC01
4D004DA06
4D004DA10
4H012HA02
(57)【要約】
【課題】炭化の過程で生じる熱分解ガスを効率的に燃焼させることができる炭化炉を提供する。さらに、炭化炉で製造された炭化物を利用した、ガス化システムを提供する。
【解決手段】鉛直方向に延在し内部空間を有する円筒状の本体部と、内部空間の下方に設けられた加熱部と、本体部の内壁に設けられたバッフルと、を備え、加熱部は、上端が閉じた円筒状の部材であり、本体部と同軸に配置され、バッフルは、加熱部の頂点と同じ高さ又は頂点より高い位置に設けられ、バッフルの内壁側の端から本体部の中心側の端までの距離は、本体部の内半径よりも短く、バッフルの中心側の端は平面視で加熱部と接している、又は重なっている炭化炉。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に延在し内部空間を有する円筒状の本体部と、
前記内部空間の下方に設けられた加熱部と、
前記本体部の内壁に設けられたバッフルと、を備え、
前記加熱部は、上端が閉じた円筒状の部材であり、前記本体部と同軸に配置され、
前記バッフルは、前記加熱部の頂点と同じ高さ又は前記頂点より高い位置に設けられ、前記バッフルの内壁側の端から前記本体部の中心側の端までの距離は、前記本体部の内半径よりも短く、前記バッフルの前記中心側の端は平面視で前記加熱部と接している、又は重なっている炭化炉。
【請求項2】
前記本体部の内半径と前記加熱部の外半径の差が300mm以下である、請求項1に記載の炭化炉。
【請求項3】
前記バッフルは、前記内壁に設置する高さを変更可能である、請求項1又は2に記載の炭化炉。
【請求項4】
前記バッフルが、前記内壁の全周に亘って設けられている、請求項1から3のいずれか一項に記載の炭化炉。
【請求項5】
前記バッフルが、平面視で円環状である、請求項4に記載の炭化炉。
【請求項6】
前記本体部は、側壁に原料を投入する投入口を有し、
前記投入口は、前記バッフルよりも上方に設けられ、
前記バッフルは、前記内壁の全周の一部に切り欠き部分を有し、
前記内壁の周方向において、前記切り欠き部分の位置と前記投入口の位置とが重なっている、請求項1から3のいずれか一項に記載の炭化炉。
【請求項7】
着火部を備え、
前記着火部は、前記加熱部の頂点よりも高い位置に設けられる、請求項1から6のいずれか一項に記載の炭化炉。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の前記炭化炉と、
前記炭化炉において製造された炭化物と過熱蒸気とから水性ガス及び活性炭を得る改質炉と、を備えるガス化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化炉及びガス化システム関する。
【背景技術】
【0002】
近年、家庭や産業分野から排出される有機物、及びバイオマス等を処理して、炭として再利用する方法が検討されている。以下の説明では、「家庭や産業分野から排出される有機物」を「有機廃棄物」と称することがある。例えば特許文献1には、有機廃棄物を炭化させる炭化炉が開示されている。特許文献1に記載の炭化炉は、雰囲気温度を低下させず、効率よく炭化を行うことができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-270050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
炭化炉では、バイオマス及び有機廃棄物等の有機物を、無酸素又は低酸素雰囲気で加熱分解することにより、炭化物と、有機物が分解した熱分解ガスと、が生じる。炭化炉では、生じた熱分解ガスを燃焼させて、燃焼熱を有効に利用することで、炭化に要するエネルギーを低減することができる。しかしながら、熱分解ガスの燃焼が不十分であると黒煙が発生してしまうという問題が生じる。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、炭化の過程で生じる熱分解ガスを効率的に燃焼させることができる炭化炉を提供することを目的とする。さらに、炭化炉で製造された炭化物を利用した、ガス化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様は、以下の態様を包含する。
【0007】
[1]鉛直方向に延在し内部空間を有する円筒状の本体部と、前記内部空間の下方に設けられた加熱部と、前記本体部の内壁に設けられたバッフルと、を備え、前記加熱部は、上端が閉じた円筒状の部材であり、前記本体部と同軸に配置され、前記バッフルは、前記加熱部の頂点と同じ高さ又は前記頂点より高い位置に設けられ、前記バッフルの内壁側の端から前記本体部の中心側の端までの距離は、前記本体部の内半径よりも短く、前記バッフルの前記中心側の端は平面視で前記加熱部と接している、又は重なっている炭化炉。
【0008】
[2]前記本体部の内半径と前記加熱部の外半径の差が300mm以下である、[1]に記載の炭化炉。
【0009】
[3]前記バッフルは、前記内壁に設置する高さを変更可能である、[1]又は[2]に記載の炭化炉。
【0010】
[4]前記バッフルが、前記内壁の全周に亘って設けられている、[1]から[3]のいずれか一項に記載の炭化炉。
【0011】
[5]前記バッフルが、平面視で円環状である、[4]に記載の炭化炉。
【0012】
[6]前記本体部は、側壁に原料を投入する投入口を有し、前記投入口は、前記バッフルよりも上方に設けられ、前記バッフルは、前記内壁の全周の一部に切り欠き部分を有し、前記内壁の周方向において、前記切り欠き部分の位置と前記投入口の位置とが重なっている、[1]から[3]のいずれか一項に記載の炭化炉。
【0013】
[7]着火部を備え、前記着火部は、前記加熱部の頂点よりも高い位置に設けられる、[1]から[6]のいずれか一項に記載の炭化炉。
【0014】
[8][1]から[7]のいずれか一項に記載の前記炭化炉と、前記炭化炉において製造された炭化物と過熱蒸気とから水性ガス及び活性炭を得る改質炉と、を備えるガス化システム。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、炭化の過程で生じる熱分解ガスの燃焼を促進させることができる炭化炉を提供することができる。さらに、炭化炉で製造された炭化物を利用した、ガス化システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、炭化炉1を示す断面図である。
図2図2は、バッフル30を示す平面図である。
図3図3は、炭化炉1における熱分解ガスの流れを示す模式図である。
図4図4は、バッフルを示す平面図である。
図5図5は、バッフルを示す断面図である。
図6図6は、ガス化システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図1から6を参照しながら、各実施形態に係る炭化炉について説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜異ならせてある。
【0018】
以下の説明においては、xyz直交座標系を設定し、このxyz直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。ここでは、水平面内の所定方向をx軸方向、水平面内においてx軸方向と直交する方向をy軸方向、x軸方向及びy軸方向のそれぞれと直交する方向(すなわち鉛直方向)をz軸方向とする。
【0019】
<炭化炉>
図1は、実施形態の一例である炭化炉の断面図である。図1に示す通り、炭化炉1は、主として本体部10と、本体部10の下方に設けられた加熱部20と、上記本体部10の内壁に設けられたバッフル30と、を含む。本明細書において「炭化炉」は、バイオマス及び有機廃棄物等を処理するための炭化炉である。
【0020】
本明細書において、「バイオマス」とは、生物由来の資源であって、化石資源を除くものを指す。バイオマスは、例えば、間伐材、剪定枝、製材のくず、竹、及び稲わら等を含む。
【0021】
また、「有機廃棄物」とは、有機物の廃棄物を指す。有機廃棄物は、例えば、食品廃棄物、建設廃材、シュレッダーダスト、畜産廃棄物、汚泥、及び家庭から排出される一般廃棄物が含まれる。
【0022】
以下の説明では、バイオマスや有機廃棄物のことを「原料」と称する。炭化炉では、原料として、バイオマスが処理されることが好ましい。
【0023】
原料は、炭化炉1に投入される前にあらかじめ乾燥され、含水率が適正に調整されていることが好ましい。炭化効率や炭化物収率を高くすることができるからである。炭化炉1に投入される原料の含水率は、10質量%以上20質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、15質量%以上20質量%以下である。
【0024】
炭化炉1は、投入した原料を熱処理し、炭化物(炭)を製造する。原料から炭化物を生じる過程において、炭化炉1では、原料の「分解燃焼」と、分解燃焼で生じる固形分の「炭化」と、分解燃焼で生じる熱分解ガスの「燃焼」とが起きる。
【0025】
本明細書において、「分解燃焼」とは、原料が、炭化物を含む固形分と、熱分解ガスと、に分解される反応をいう。
【0026】
本明細書において「炭化物を含む固形分」とは、原料から炭化物を生じる反応の中間体を指す。炭化物を含む固形分には、反応目的物である炭化物の他、原料から一部の分解反応が進行しているが炭化物にはなっていない中間生成物を含む。以下、「炭化物を含む固形分」を、単に「固形分」と略称することがある。
【0027】
本明細書において、「炭化」とは、燃焼分解で生じた固形分の熱分解をさらに進め、固形分における炭化物の含有率を高める反応をいう。
【0028】
本明細書において、「熱分解ガス」とは、原料が熱分解して生じる混合ガスをいう。熱分解ガスは、例えば、一酸化炭素、水素、炭化水素、硫黄酸化物、窒素酸化物等を含む混合ガスである。熱分解ガスは、燃焼可能である。炭化炉1では、「分解燃焼」で生じた熱分解ガスを「燃焼」させて消費する。燃焼で処理された熱分解ガスは、「排ガス」になる。
【0029】
原料と熱分解ガスとは、本発明による「可燃物」に該当する。
【0030】
以下、炭化炉1の各構成について、順に説明する。
【0031】
(1)本体部
本体部10の形状は、内部空間10aを有する円筒状であり、鉛直方向(z軸方向)に延在する。例えば、本体部10は、高さによって平面視で異なる半径の円であってもよい。又は、本体部10は、側壁の内面又は外面に凹凸を有していてもよい。
【0032】
本体部10の大きさは、想定される炭化炉1の稼働状況に応じて、処理する原料の予測量、又は製造する炭化物の予測量により設定するとよい。例えば、本体部10の外径は2600mmであり、内径は2000mmである。例えば、本体部10の高さは5000mmである。
【0033】
本体部10は、投入口11、取出口12、着火部13、空気供給口10b、空気供給口10c、及び排気口14を有する。
【0034】
(投入口11)
投入口11は、原料を炭化炉1内に投入するための構成である。投入口11は、本体部10の側壁に設けられる。投入口11には、原料を内部空間10aに投入する手段(不図示)が接続している。
【0035】
原料を投入する手段は限定されず、例えば、スクリューフィーダー又はテーブルフィーダー等を挙げることができる。原料は、投入口11を介して本体部10の内部空間10aに投入される。原料は、投入口11から連続的に投入されてもよく、断続的に投入されてもよい。また、原料の投入量は、適宜調整可能である。
【0036】
投入口11付近の温度は、800℃以上とすることが熱分解ガスを完全燃焼させるためにも好ましい。温度の上限は、炭化炉に損傷を与えない限り限定はされないが、投入口11付近の温度は、一般に1200℃以下であり、より好ましくは、1150℃以下である。
【0037】
(取出口12)
取出口12は、炭化炉1で製造された炭化物を回収するための構成である。取出口12は、本体部10の底部に設けられる。
【0038】
(着火部13)
着火部13は、加熱部20を加熱し、さらに内部空間10aを温めるための着火装置である。原料の投入前に、加熱部20及び内部空間10aを加熱しておくことで、原料の炭化を効率よく行うことができる。内部空間10aは、原料の投入前に、少なくとも200℃まで温められることが好ましい。
【0039】
着火部13は、加熱部20の上方を加熱することができればよいが、特に頂点20aを含むその近傍を加熱することができる位置に設けられることが好ましい。着火部13は、加熱部の頂点20aよりも高い位置に設けられることが好ましい。加えて、着火部13は、投入口11より下方に設けられることが好ましい。着火部13は、一箇所だけではなく、複数箇所に設けられてもよい。
【0040】
また、着火部13は、投入された原料を分解燃焼させるため、原料に着火する装置でもある。
【0041】
(空気供給口10b)
空気供給口10bは、炭化炉1の外部から内部空間10aに空気を供給するために本体部10の側壁に設けられた構成である。空気供給口10bは、本体部10の投入口11よりも下方であって、加熱部20よりも上方に設けられる。空気供給口10bは、本体部10の側壁に全周に亘って離散的に設けられることが好ましい。空気供給口10bには、空気の供給量を調節しながら、内部空間10aに空気を送り込むための装置が、炭化炉1の外側に設けられる。装置は、例えばファン101bを含む。
【0042】
空気供給口10bから供給される空気は、空気供給口10bの近傍の内部空間10aにおいて、原料の分解燃焼を促進する。内部空間10aにおいて、原料の分解燃焼が促進される空間を分解燃焼ゾーン10dと呼ぶ。分解燃焼ゾーン10dでは、分解燃焼で生じた熱分解ガスの燃焼(熱分解ガスの一次燃焼)も生じる。
【0043】
分解燃焼ゾーン10dで生じる固形分は、炭化炉1における処理が進行するに従って、内部空間10aを降下する。
【0044】
一方、分解燃焼ゾーン10dで生じる熱分解ガスのうち、分解燃焼ゾーン10dで燃焼されなかった残部は、内部空間10aを上昇する。
【0045】
(空気供給口10c)
空気供給口10cは、炭化炉1の外部から内部空間10aに空気を供給するために、本体部10の側壁に設けられた構成である。空気供給口10cは、本体部10の投入口11よりも上方に設けられる。空気供給口10cは、本体部10の側壁に全周に亘って離散的に設けられることが好ましい。空気供給口10cには、空気の供給量を調節しながら、内部空間10aに空気を送り込むための装置が、炭化炉1の外側に設けられる。装置は、例えばファン101cを含む。
【0046】
空気供給口10cから供給される空気は、分解燃焼ゾーン10dから上昇する熱分解ガスの「燃焼」を促進する。本明細書において、投入口11よりも上方の内部空間10aにおける熱分解ガスの燃焼を、分解燃焼ゾーン10dでの熱分解ガスの燃焼(一次燃焼)に対して「二次燃焼」と呼ぶことがある。また、内部空間10aの上部の空間であって、熱分解ガスが二次燃焼する空間を二次燃焼ゾーン10eと呼ぶ。
【0047】
二次燃焼ゾーン10e付近の温度は、800℃以上とすることが熱分解ガスの燃焼のためにも好ましい。二次燃焼ゾーン10e付近の温度は、内部空間10aの上部にいく程、熱分解ガスの燃焼熱により、高くなる。温度の上限は、炭化炉に損傷を与えない限り限定はされないが、二次燃焼ゾーン10e付近の温度は、一般に1200℃以下であり、より好ましくは、1150℃以下である。また、二次燃焼ゾーン10eでの熱分解ガスの滞留時間を2秒以上とすると、ダイオキシンの発生を低減できるため好ましい。
【0048】
(排気口14)
排気口14は、熱分解ガスが燃焼されて生じる排ガスを炭化炉1から排出するための構成である。排気口14は、本体部10の上部に設けられる。排気口14は、空気供給口10cよりも上方に設けられる。
【0049】
(空気供給口10f)
本体部10は、空気供給口10fを有してもよい。空気供給口10fは、炭化炉1の外部から内部空間10aに空気を供給するために、本体部10の側壁に設けられた構成である。空気供給口10fは、空気供給口10bよりも下方であって、加熱部20が設けられている高さに設けられる。空気供給口10fは、本体部10の側壁に全周に亘って離散的に設けられることが好ましい。空気供給口10fには、空気の供給量を調節しながら、内部空間10aに空気を送り込むための装置が、炭化炉1の外側に設けられる。装置は、例えばファン101fを含む。
【0050】
空気供給口10fから供給される空気は、分解燃焼ゾーン10dから降下する固形分の炭化を促進する。内部空間10aの空気供給口10fの近傍の空間であって、固形分がさらに炭化される空間を炭化部10gと呼ぶ。
【0051】
本体部10の側壁において、空気供給口10fよりも下方には空気供給口を設けない。
【0052】
内部空間10aの各部位における反応は、空気供給口10b、10c、10fを介して炭化炉1内に供給される空気の量により調整できる。これにより、内部空間10aの各部位において生じる反応熱を制御し、内部空間10aの温度を調整することができる。
【0053】
本体部10を構成する材料は、炭化炉の材料として通常用いられる材料を採用できる。材料の例には、ステンレスが含まれる。
【0054】
(2)加熱部
上述の通り、加熱部20は、着火部13によって加熱される。加熱部20は、分解燃焼や燃焼で生じる熱によっても加熱される。加熱部20は、熱を蓄熱し、輻射及び伝熱によって固形分を加熱する。加熱部20は、固形分の炭化を促進し、炭化物にする。加熱部20は、着火部13から得られる熱、並びに分解燃焼や燃焼で生じる熱とは別に、熱源を有していてもよい。
【0055】
加熱部20は、本体部10の内部空間10aの下方に設けられる。加熱部20の頂点20aは、投入口11より下方に位置する。
【0056】
加熱部20の形状は、上端が閉じた円筒状である。図1に示すように、加熱部20の上部の形状は、円錐状であることが好ましい。加熱部20は、表面に凹凸を有していてもよい。加熱部20は、本体部10と同軸に設けられる。
【0057】
加熱部20は、炭化炉1に空気を供給する空気供給口20bを備えても良い。空気供給口20bは、加熱部20の上部に設けられ、加熱部20の下部には設けられない。空気供給口20bは、空気供給口10fと同じ範囲の高さに設けられることが好ましい。これにより、加熱部20と本体部10との間の空間が、空気の供給が多い空間(炭化部10g)と、空気の供給が少ない空間(不燃部10h)と、に分けられる。
【0058】
空気供給口20bから炭化部10gに供給される空気は、加熱部20の軸21の内部に設けられた空間を通して炭化炉1の外から送り込まれる。
【0059】
炭化部10gにおいて、固形分はさらに炭化される。最終的に、固形分は、炭化物と、熱分解ガスと、に分解される。炭化部10gにおける炭化とは、空気を供給しつつ高温を維持して炭化を進行させることを意味する。この炭化は「精錬」や「あやし」とも呼ばれる。生じた熱分解ガスは、内部空間10aを上昇する。
【0060】
炭化部10gで精錬された炭化物は、炭化部10gの下方の不燃部10hに移動する。不燃部10hに到達した炭化物は、空気の供給が少ない不燃部10hにおいて消火される。
【0061】
加熱部20は、中心軸を軸として回転可能であってもよい。回転することで炭化部10gに均一に空気を供給することができ、炭化の効率、及び炭化物の純度を向上させることができる。加熱部20を回転させる手段は限定されないが、軸21と加熱部20とを連結し、軸21を公知の駆動手段で回転させてもよい。回転速度は、原料の種類、組成、大きさ又は形状等に応じて適宜調節してよい。
【0062】
加熱部20は、底部にテーブル22を備えていてもよい。テーブル22は、円錐台形であることが好ましい。テーブル22は、昇降可能であり、本体部10との間隔を適宜調節することができてもよい。昇降することで、テーブル22と本体部10との間で炭化物を粉砕することができ、炭化物の大きさを適宜調節することができる。テーブル22は、回転可能であってもよい。テーブル22は、加熱部20とは独立して回転可能であってもよい。テーブル22の昇降及び回転の手段は、公知の手段が用いられてもよい。
【0063】
加熱部20は、本体部10の底部より取り外し可能であってもよい。炭化炉1の内部には、主として溶解したシリカが冷却されてなるクリンカーが存在することがある。クリンカーは、炭化炉1の性能を損なう恐れがあるため、定期的に除去される必要がある。加熱部20が取り外し可能であると、クリンカーの除去作業が容易である。加熱部20を本体部10の底部より取り外すための手段は、公知の手段が用いられてもよい。
【0064】
加熱部20の大きさは、本体部10の大きさに応じて設定される。本体部10の内半径と加熱部20の外半径の差(本体部10の内壁と加熱部20の外壁との間に形成される空間の幅w)は300mm以下であり、好ましくは、200mm以下である。幅wの下限は、特に限定はされないが、50mm以上が好ましい。より好ましくは、100mm以上である。
【0065】
幅wを小さくすることで、加熱部20から炭化物への熱の伝わり方のムラが抑えられ、均質な炭化物を得ることができる。幅wを小さくしたことによる炭化物の収量の低下は、加熱部20の高さを高くすることで、補うことができる。
【0066】
また、加熱部20を構成する材料は、加熱部の材料として通常用いられる材料を採用できる。材料の例には、ステンレスが含まれる。
【0067】
(3)バッフル
図2は、バッフル30を示す平面図であり、図1の線分II-IIにおける矢視断面図である。
【0068】
バッフル30は、分解燃焼ゾーン10dや炭化部10gから上昇する熱分解ガスの流れを制御する機能を有する。
【0069】
図2に示すように、バッフル30は、本体部10の内壁に沿って全周に亘って設けられた円環状の部材であり、本体部10の中心側の端30aに沿って開口している。炭化炉1においては、バッフル30の本体部10の中心側の端30aは、平面視で加熱部20と接している(図2(a))。又は端30aは、平面視で加熱部20と重なっている(図2(b))。
【0070】
(バッフル30の位置)
バッフル30は、設置する高さが固定されていてもよく、設置する高さを変更可能であってもよい。バッフル30は、炭化炉1に投入する原料の種類、組成、大きさ又は形状等に応じて、設置する高さを変更することが好ましい。
【0071】
バッフル30は、加熱部の頂点20aと同じ高さ又は頂点20aより高い位置に設けられる。バッフル30は、本体部10の上面の内壁と加熱部20の頂点20aとの中間面よりも下方に設置することが好ましい。炭化炉1の大きさによるが、例えば、バッフル30の下面の最低部が、加熱部20の頂点20aから上方に0mm以上400mm以下の範囲に位置する。バッフル30と、投入口11との上下の位置関係は限定されない。
【0072】
図1に示すように、バッフル30は、上面30m及び下面30nともにxy平面と平行である。
【0073】
バッフル30は、炭化炉1に結合していてもよい。バッフル30は、炭化炉1から取り外し可能であってもよい。
【0074】
バッフル30は、本体部10の内壁に間隔を置いて複数層設けられていてもよい。バッフル30は、本体部10の内壁に一層設けられることが好ましい。
【0075】
(バッフル30の形状)
バッフル30の、平面視での、本体部10の内壁側の端から本体部10の中心側の端30aまでの距離は、本体部10の内半径よりも短い。
【0076】
上述したように、炭化炉で生じた熱分解ガスは、炭化炉内で燃焼されて排ガスとなり、炭化炉1の外に排出される。熱分解ガスの燃焼は、燃焼時間が十分確保できない場合や、燃焼時の酸素が不足する場合に不完全となりやすい。熱分解ガスが不完全燃焼すると、炭化炉1の外に排出される排ガスに黒煙が混ざる不具合が生じる。
【0077】
炭化炉においては、製造する炭化物の量を増やし、生産性を高めることが求められる。一方、熱分解ガスの生成量は、製造する炭化物の量の増加に伴って増加するため、相対的に燃焼時間が十分確保されにくく酸素量が不足し、上述した不完全燃焼を生じやすくなる。
【0078】
発明者らは、上記課題に対し鋭意検討した結果、バッフル30を設けることにより熱分解ガスの流れを制御し、熱分解ガスの燃焼を促進することが可能であることを見出し、本発明を完成させた。なお、発明者らは、バッフル30の機能について、以下図3を用いて説明するようなメカニズムを推定しているが、本発明は以下の推定メカニズムには限定されない。
【0079】
図3は、炭化炉における熱分解ガスの流れを示す断面図である。図3(a)は、バッフルを有さない従来の炭化炉1Xにおける熱分解ガスの流れを示し、図3(b)は本実施形態の炭化炉1における熱分解ガスの流れを示す。図3においては熱分解ガスの流れを矢印で示す。
【0080】
上述したように、分解燃焼ゾーン10d及び炭化部10gで生じる熱分解ガスGは、内部空間10aを上昇しながら燃焼される。ここで図3(a)に示す炭化炉1Xにおいては、熱分解ガスGは上昇を遮られることが無い。そのため、熱分解ガスGの生成量が増えると燃焼時間が十分確保されにくく、熱分解ガスGの燃焼が不完全となるおそれがある。
【0081】
対して、図3(b)に示す炭化炉1においては、バッフル30が熱分解ガスGの流れを一部遮る。そのため、炭化炉1においては、熱分解ガスGは、一時的にバッフル30の下部で滞留してから、バッフル30の開口部に集約される。また、熱分解ガスは、バッフル30の下部で複雑な気流が生じ、空気とよく攪拌される。
【0082】
これにより、熱分解ガスは、燃焼時に酸素不足となることなく好適に燃焼される。また、熱分解ガスは、開口部に集約されるため、燃焼が促進される。そのため、炭化炉1では、バッフル30の下部での燃焼(すなわち、分解燃焼ゾーン10dでの燃焼)と、二次燃焼ゾーン10eでの燃焼とによって熱分解ガスの燃焼が促進され、黒煙の発生が抑制される。
【0083】
(変形例)
なお、バッフルの形状は、上述した形状には限らない。図4及び図5は、バッフルの変形例を示す平面図及び断面図である。図4は、バッフルの平面視形状を示す。
【0084】
図4(a)に示すバッフル31は、本体部10の中心側の端31aに沿って開口し、本体部10の内壁の全周のうち一部を欠いて設けられている。例えば、バッフル31が投入口11よりも下部に設けられる場合、平面視で、バッフル31の切り欠き部分(開口部31b)と、投入口11とが、周方向において重なる配置とすると、バッフル31の上面への原料の堆積を抑制できるという効果が得られる。切り欠き部分とは、バッフルが本体部10の内壁の全周に設けられた場合と比較して、バッフルが欠損している部分(すなわち、開口部)をいう。
【0085】
上記効果は、図4(b)に示すバッフル32でも得られる。バッフル32は、本体部10の中心側の端32aに沿って開口し、本体部10の内壁の全周に設けられているが、バッフル32の一部が本体部10の内壁側に凹み、開口部32bを形成している。このようなバッフル32においても、平面視でバッフル32の開口部32bと、投入口11とが、周方向において重なる配置とすることで、バッフル32の上面への原料の堆積を抑制できる。
【0086】
上記効果は、図4(c)に示すバッフル33でも得られる。バッフル33は、本体部10の中心側の端33aに沿って開口し、本体部10の内壁の全周に設けられているが、バッフル33の一部が本体部10の内壁から離間し、開口部33bを形成している。すなわち、バッフル33においては、端33aに囲まれる開口部と開口部33bが実質的に接続しておらず、バッフル33で隔てられている。このようなバッフル33においても、平面視でバッフル33の開口部33bと、投入口11とが、周方向において重なる配置とすることで、バッフル33の上面への原料の堆積を抑制できる。
【0087】
バッフルは、複数の部材から構成されていてもよい。図4(d)に示す、バッフル34は、複数のバッフル片341、342、343、344、345、346が本体部10の内壁の周方向に沿って、隙間なく連結されて形成される。バッフル34は、本体部10の中心側の端34aに沿って開口している。
【0088】
また、図4(e)に示すバッフル35は、複数のバッフル片351、352、353、354、355、356が本体部10の内壁の周方向に沿って、隣り合うバッフル片同士が離間して形成される。バッフル35は、本体部10の中心側の端35aに沿って開口している。
【0089】
バッフル34、35のような構成の場合、炭化炉1の使用中にバッフルの一部が破損したとしても、破損個所を含むバッフル片を交換することで補修できるため、維持管理が容易である。
【0090】
また、上述したバッフル30、31、32、33、34、35の開口部の形状が平面視円形であることとしたが、これに限らない。開口部の形状は、例えば多角形状であってもよい。
【0091】
図5はバッフルの断面視形状を示す。図5(a)に示すバッフル37は、本体部10の中心側の端37aが上方に持ち上がり、バッフルの上面37m及び下面37nのいずれもが、xy平面に対して交差している。
【0092】
図5(b)に示すバッフル38は、上面38mがxy平面と平行であり、下面38nがxy平面に対して交差している。本体部10の中心側の端38aに囲まれる開口部は、上面38mと平行である。
【0093】
図5(c)に示すバッフル39は、上面39mがxy平面と平行であり、下面39nが下方に凸となる湾曲面である。本体部10の中心側の端39aに囲まれる開口部は、上面39mと平行である。
【0094】
図5(a)~(c)のように、バッフルの下面がxy平面に対して交差する、又は下面が下方に凸となる湾曲面であることで、熱分解ガスはバッフルの下面(すなわち、分解燃焼ゾーン10d)に滞留し続けることなく、内部空間10aを上昇するという効果が得られる。
【0095】
バッフル30を構成する材料は、公知の材料であればよい。材料は、不定形耐火物であることが好ましい。材料は、耐火コンクリートであることがさらに好ましい。耐火コンクリートは、型枠に流し込まれて成形されることが好ましい。
【0096】
<ガス化システム>
炭化炉1を用いて製造された炭化物、及び炭化炉1から排出される排ガスは、次いで改質炉に供給されてもよい。改質炉とは、高温高圧化で炭化物と過熱蒸気とを反応させて、水性ガス及び活性炭を得る構造物である。本発明の一つの態様として、炭化炉と改質炉と、を備えたガス化システムを提供する。
【0097】
図6は、ガス化システムの実施形態を示すブロック図である。図6に示す矢印は、各工程での物質の流れを表している。図6に示すように、本実施形態のガス化システム400は、乾燥機401と、炭化炉1と、改質炉402と、第一サイクロン403と、第二サイクロン404と、過熱器405と、第一熱交換器406と、第二熱交換器407と、第三熱交換器408と、バグフィルタ409と、ガスタンク410と、を備える。
【0098】
乾燥機401は、高温の空気A1を乾燥用熱源として、原料から水分を除去する。乾燥機401に投入する原料の含水量は、50質量%以下であることが好ましい。乾燥機401で乾燥後の原料の含水量は、10質量%以上20質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、15質量%以上20質量%以下である。
【0099】
炭化炉1は、乾燥された原料から炭化物と熱分解ガスとを生成する。燃焼して処理された熱分解ガスを排ガスE1と呼ぶ。
【0100】
改質炉402は、炭化炉1で製造した炭化物と、過熱蒸気V2とを反応させて水性ガスG1及び活性炭を生成する。また、改質炉402には、熱源として排ガスE1が導入される。改質炉402は、排ガスE1から温度が低下した排ガスE2を排出する。
【0101】
第一サイクロン403は、水性ガスG1に含まれる微粉炭や塵を除去し、水性ガスG2とする。第二サイクロン404は、改質炉402から排出された排ガスE2に含まれる不純物を除去し、排ガスE3とする。
【0102】
過熱器405は、水蒸気V1を、排ガスE3と熱交換させて加熱し、過熱蒸気V2を生成する。一方、排ガスE3は、水蒸気V1を加熱することにより熱交換されて、排ガスE4となる。
【0103】
第一熱交換器406は、水性ガスG2から水性ガスG3を生成する。第一熱交換器406は、水性ガスG2と水とが直接接することなく、水性ガスG2よりも温度の低い流体へ熱を移動させることにより水性ガスG2を冷却する、いわゆる乾式の熱交換器である。
【0104】
第二熱交換器407は、空気A0を、排ガスE4と熱交換させて加熱し、高温の空気A1を生成する。一方、排ガスE4は、空気A0を加熱することにより熱交換されて、排ガスE5となり、外部に排出される。
【0105】
第三熱交換器408は、水W1を、高温の空気A1の一部と熱交換させて加熱し、水蒸気V1を生成する。
【0106】
バグフィルタ409は、水性ガスG3に含まれる微細な活性炭を捕集し、水性ガスG4とする。
【0107】
ガスタンク410は、水性ガスG4を貯蔵する。
【0108】
本実施形態の炭化炉及びガス化システムは、熱分解ガスの燃焼に優れるため、炭化炉及びガス化システムとして有用である。
【0109】
以上のような構成の炭化炉1によれば、炭化の過程で生じる熱分解ガスの燃焼を促進させ、排出される排ガスに黒煙が混入する不具合を抑制できる。
【0110】
また、以上のような構成のガス化システム400によれば、本ガス化システムは、上記炭化炉1及び排ガスを有効利用したガス化システムとなる。
【0111】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計、仕様等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0112】
1:炭化炉、10:本体部、11:投入口、12:取出口、13:着火部、14:排気口、10a:内部空間、10b:空気供給口、101b:ファン、10c:空気供給口、101c:ファン、10d:分解燃焼ゾーン、10e:二次燃焼ゾーン、10f:空気供給口、101f:ファン、10g:炭化部、10h:不燃部、w:空間の幅、20:加熱部、21:軸、22:テーブル、20a:頂点、20b:空気供給口、30~39:バッフル、30a~39a:端、G:熱分解ガス、31b~33b:バッフルの開口部、30m、37m~39m:上面、30n、37n~39n:下面、400:ガス化システム、401:乾燥機、402:改質炉、403:第一サイクロン、404:第二サイクロン、405:過熱器、406:第一熱交換器、407:第二熱交換器、408:第三熱交換器、409:バグフィルタ、410:ガスタンク、E1~E5:排ガス、V1:水蒸気、V2:過熱蒸気、G1~G4:水性ガス、A0:空気、A1:高温の空気、W1:水
図1
図2
図3
図4
図5
図6