(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138917
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】多気筒エンジンの吸気装置及び吸気装置の燃料デリバリパイプ
(51)【国際特許分類】
F02M 25/08 20060101AFI20220915BHJP
F02D 9/00 20060101ALN20220915BHJP
【FI】
F02M25/08 G
F02M25/08 S
F02M25/08 301C
F02M25/08 N
F02D9/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021039070
(22)【出願日】2021-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000177612
【氏名又は名称】株式会社ミクニ
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】菊 雄太
【テーマコード(参考)】
3G065
3G144
【Fターム(参考)】
3G065AA04
3G065GA01
3G065HA03
3G144AA02
3G144BA40
3G144DA02
3G144GA23
3G144GA25
(57)【要約】
【課題】部品点数の削減、及び組付作業性の向上を図ることが可能な蒸散ガス通路、或いは吸気圧集合通路を備えた多気筒エンジンの吸気装置及び燃料デリバリパイプを提供する。
【解決手段】エンジンの各気筒の筒内にそれぞれ連通する複数のボア2La,2Raを有し、前記各ボア2La,2Ra内に吸気量調整用のスロットル弁8が開閉可能に設けられたスロットルボディ2と、スロットルボディ2に設けられ、各ボア2La,2Raに燃料を噴射するインジェクタ3と、インジェクタ3に燃料を供給するためのデリバリパイプ4と、各ボア2La,2Ra内に接続し、各ボア2La,2Ra内を連通する吸気管連絡通路5とを備えた多気筒エンジンの吸気装置において、デリバリパイプ4に吸気管連絡通路5を一体に成形したことを特徴とする。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの各気筒の筒内にそれぞれ連通する複数のボアを有し、前記各ボア内に吸気量調整用のスロットル弁が開閉可能に設けられたスロットルボディと、前記スロットルボディに設けられ、前記各ボアに燃料を噴射するインジェクタと、前記インジェクタに燃料を供給するためのデリバリパイプと、前記各ボア内に接続し、各ボア内を連通する吸気管連絡通路と、
を備えた多気筒エンジンの吸気装置において、
前記デリバリパイプに前記吸気管連絡通路を一体に成形したことを特徴とする多気筒エンジンの吸気装置。
【請求項2】
前記デリバリパイプは、燃料タンク側に接続される燃料流入口と、前記スロットルボディの各インジェクタにそれぞれ接続される燃料流出口とが設けられ、前記燃料流入口から分岐して前記各燃料流出口まで延びる燃料通路が内部に形成され、
前記吸気管連絡通路は、前記燃料通路と共に各気筒の配列方向に平行して内部に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の多気筒エンジンの吸気装置。
【請求項3】
前記デリバリパイプは、前記吸気管連絡通路に接続するための集合接続口が設けられると共に、前記各ボア内に接続するためのデリバリパイプ側接続口が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の多気筒エンジンの吸気装置。
【請求項4】
前記スロットルボディは、前記デリバリパイプ側接続口と接続する各スロットルボディ側接続口を有し、前記スロットルボディ側接続口は、蒸散ガス処理装置のキャニスタに吸着された蒸散ガスを前記各ボア内に供給する蒸散ガス受入れ口であり、
前記デリバリパイプの集合接続口は、前記蒸散ガス処理装置のキャニスタが接続される蒸散ガス流入口であり、
前記デリバリパイプの吸気管連絡通路は、前記蒸散ガス流入口から流入した前記キャニスタからの蒸散ガスを分流させて前記各デリバリパイプ側接続口を経て前記スロットルボディの各蒸散ガス受入れ口に案内する蒸散ガス通路であることを特徴とする請求項3に記載の多気筒エンジンの吸気装置。
【請求項5】
前記スロットルボディは、前記デリバリパイプ側接続口と接続する各スロットルボディ側接続口を有し、前記スロットルボディ側接続口は、前記各ボア内に発生した吸気圧を取り出す吸気圧取出し口であり、
前記デリバリパイプの集合接続口は、前記吸気圧を検出する圧力センサが接続されるセンサ接続口であり、
前記デリバリパイプの吸気管連絡通路は、前記スロットルボディの各ボアに発生して前記吸気圧取出し口から前記デリバリパイプ側接続口に案内された吸気圧を合流させて前記集合接続口へと導く吸気圧集合通路であることを特徴とする請求項4に記載の多気筒エンジンの吸気装置。
【請求項6】
前記燃料通路及び前記吸気管連絡通路は、前記デリバリパイプの一端面からそれぞれ一側方に向けて開口し、
前記燃料流入口及び前記集合接続口は、前記デリバリパイプに対して別部品として製作されて、それぞれ他側方から前記燃料通路及び前記吸気管連絡通路の開口箇所に接続されていることを特徴とする請求項5項に記載の多気筒エンジンの吸気装置。
【請求項7】
前記デリバリパイプは、第1デリバリパイプと第2デリバリパイプとに分割され、
前記第1デリバリパイプと前記第2デリバリパイプとは、互いの前記燃料通路及び互いの前記吸気管連絡通路をそれぞれ相対向して開口させ、
前記燃料流入口及び前記集合接続口は、前記第1デリバリパイプ及び前記第2デリバリパイプに対して別部品として製作されて、それぞれ前記第1デリバリパイプと前記第2デリバリパイプとの間に挟み込まれて、両側方から前記燃料通路及び前記吸気管連絡通路の開口箇所に接続されていることを特徴とする請求項5に記載の多気筒エンジンの吸気装置。
【請求項8】
前記燃料流入口及び前記集合接続口は、互いに別部品として製作されて、前記燃料タンク側または前記キャニスタと前記圧力センサとの何れかの側と接続される接続部を有し、
前記接続部は、前記燃料流入口及び前記集合接続口の両側に形成された筒状部の軸線を中心として角度変更可能とされている
ことを特徴とする請求項6に記載の多気筒エンジンの吸気装置。
【請求項9】
前記燃料流入口及び前記集合接続口は、互いに一体部品として製作されている
ことを特徴とする請求項6または7項に記載の多気筒エンジンの吸気装置。
【請求項10】
前記デリバリパイプの各デリバリパイプ側接続口は、それぞれ別部品として製作された接続パイプを介して前記スロットルボディの各スロットル側接続口に接続されていることを特徴とする請求項3に記載の多気筒エンジンの吸気装置。
【請求項11】
燃料タンク側に接続される燃料流入口と、前記スロットルボディの各インジェクタにそれぞれ接続される燃料流出口とが設けられ、前記燃料流入口から分岐して前記各燃料流出口まで延びる燃料通路が内部に形成された燃料デリバリパイプであって、
各ボアへ蒸散ガスを供給する吸気管連絡通路と、前記吸気管連絡通路に蒸散ガスを導入するための集合接続口と、前記蒸散ガスを前記各ボア内に供給するためのデリバリパイプ側接続口とを有し、
前記燃料通路と前記吸気管連絡通路は共に各気筒の配列方向に平行に延び、一体的に成形されていることを特徴とする燃料デリバリパイプ。
【請求項12】
燃料タンク側に接続される燃料流入口と、前記スロットルボディの各インジェクタにそれぞれ接続される燃料流出口とが設けられ、前記燃料流入口から分岐して前記各燃料流出口まで延びる燃料通路が内部に形成された燃料デリバリパイプであって、
各ボアの吸気圧を導入するための吸気管連絡通路と、前記吸気管連絡通路の圧力を測定するための圧力センサを接続するための集合接続口と、前記各ボア内に接続するためのデリバリパイプ側接続口とを有し、
前記燃料通路と前記吸気管連絡通路は共に各気筒の配列方向に平行に延び、一体的に成形されていることを特徴とする燃料デリバリパイプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多気筒エンジンの吸気装置及び燃料デリバリパイプに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のエンジンの吸気装置は、エンジンの筒内と連通するボア内に吸気量調整用のスロットル弁が開閉可能に設けられたスロットルボディ、ボア内に燃料を噴射するインジェクタ、燃料タンクからの燃料をインジェクタに供給する燃料通路、及び蒸散ガス処理装置のキャニスタに吸着された蒸散ガスをボア内に供給する蒸散ガス通路等から構成されている。複数の気筒を有する多気筒エンジンの場合には、気筒数に対応する数のボア及びインジェクタがスロットルボディに設けられており、燃料タンクからの燃料については、内部で分岐した燃料通路が形成されたデリバリパイプにより分流させて各インジェクタに供給している。また、キャニスタからの蒸散ガスについては、例えば特許文献1に記載の吸気装置のように、複数のゴムホースを組み合わせて蒸散ガス通路を分岐した形状に構成し、その内部を流通する過程で蒸散ガスを分流させて各ボア内に供給している。
【0003】
特許文献1に記載の蒸散ガス通路をさらに詳述すると、蒸散ガス通路は複数の3WAYニップル、ゴムホース及び抜止め用のクリップからなる。例えば4気筒エンジンの場合には、キャニスタからのゴムホースに3WAYニップルを接続して2方向に分岐させ、各分岐端にゴムホースを介して3WAYニップルを接続してそれぞれ2方向に分岐させ、これらの計4つの分岐端にそれぞれゴムホースの一端を接続している。これにより蒸散ガス通路が形成され、計4本のゴムホースの他端がスロットルボディの各ボアに設けた蒸散ガス受入れ口に接続され、各ゴムホースと3WAYニップルや蒸散ガス受入れ口との接続箇所にクリップが装着される。
【0004】
従って、エンジンの運転中には、キャニスタからの蒸散ガスが上流側の3WAYニップルで2方向に分流された後、下流側の各3WAYニップルでそれぞれ2方向に分流されて各蒸散ガス受入れ口を経て各ボア内に供給され、エンジンの筒内で混合気と共に燃焼・処理される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の吸気装置の蒸散ガス通路は、部品点数が多く蒸散ガス通路の配索が複雑で組付に手間がかかる為、組付費および部品費が多くなり、製造コストが高くなる。。
【0007】
例えば、上記した4気筒エンジンの蒸散ガス通路を構築するには、3個の3WAYニップル、6本のゴムホース、12個のクリップからなる多数の部品を用意する必要がある。しかも、ゴムホースについては長さや形状が異なる複数種類を使用するため、それらのゴムホースの在庫管理が煩雑なものになる。また、燃料を含む蒸散ガスはゴムホースの組織を浸透する性質があるため、外部への漏れ防止のために、例えば蒸散ガスを遮断するフッ素樹脂層を内面に形成した高価なゴムホースを使用する必要がある。以上の要因は、全て製造コストの高騰につながる。
【0008】
また、多数の部品からなる蒸散ガス通路をスロットルボディに組み付ける作業は煩雑であり、特に扱い難いクリップのゴムホース上への装着作業は、作業者の手作業により固定されるため、クリップの装着箇所が多いほど、作業者はかなりの負担を強いられている。また、エンジン制御の情報の1つとして吸気管圧力を利用する場合には、蒸散ガス通路と同様のゴムホースによる分岐形状をなす吸気圧集合通路をスロットルボディに装着して、この吸気圧集合通路により各ボアに発生した吸気圧を合流させて圧力センサに導く必要があり、この吸気圧集合通路の形成にも同様に、作業が煩雑とならざるを得ない。
【0009】
以上のように、吸気圧集合通路や蒸散ガス通路をゴムホースを使って組み付けることは、煩雑な作業を伴うことから、作業者の負担が大きく、組付性が悪化する不都合が生じることもあり、組付作業性について改良の余地があった。
【0010】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、部品点数の削減、及び組付作業性の向上を図ることが可能な蒸散ガス通路、或いは吸気圧集合通路を備えた多気筒エンジンの吸気装置及び燃料デリバリパイプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、本発明の多気筒エンジンの吸気装置は、エンジンの各気筒の筒内にそれぞれ連通する複数のボアを有し、各ボア内に吸気量調整用のスロットル弁が開閉可能に設けられたスロットルボディと、スロットルボディに設けられ、各ボアに燃料を噴射するインジェクタと、インジェクタに燃料を供給するためのデリバリパイプと、各ボア内に接続し、各ボア内を連通する吸気管連絡通路と、を備えた多気筒エンジンの吸気装置において、デリバリパイプに吸気管連絡通路を一体に成形したことを特徴とする(請求項1)。
その他の態様として、デリバリパイプが、燃料タンク側に接続される燃料流入口と、スロットルボディの各インジェクタにそれぞれ接続される燃料流出口とが設けられ、燃料流入口から分岐して各燃料流出口まで延びる燃料通路が内部に形成され、吸気管連絡通路が、燃料通路と共に各気筒の配列方向に平行して内部に形成されていてもよい(請求項2)。
その他の態様として、デリバリパイプが、吸気管連絡通路に接続するための集合接続口が設けられると共に、各ボア内に接続するためのデリバリパイプ側接続口が設けられていてもよい(請求項3)。
その他の態様として、スロットルボディが、デリバリパイプ側接続口と接続する各スロットルボディ側接続口を有し、スロットルボディ側接続口は、蒸散ガス処理装置のキャニスタに吸着された蒸散ガスを各ボア内に供給する蒸散ガス受入れ口であり、デリバリパイプの集合接続口が、蒸散ガス処理装置のキャニスタが接続される蒸散ガス流入口であり、デリバリパイプの吸気管連絡通路が、蒸散ガス流入口から流入したキャニスタからの蒸散ガスを分流させて各デリバリパイプ側接続口を経てスロットルボディの各蒸散ガス受入れ口に案内する蒸散ガス通路であってもよい(請求項4)。
その他の態様として、スロットルボディが、デリバリパイプ側接続口と接続する各スロットルボディ側接続口を有し、スロットルボディ側接続口は、各ボア内に発生した吸気圧を取り出す吸気圧取出し口であり、デリバリパイプの集合接続口が、吸気圧を検出する圧力センサが接続されるセンサ接続口であり、デリバリパイプの吸気管連絡通路が、スロットルボディの各ボアに発生して吸気圧取出し口からデリバリパイプ側接続口に案内された吸気圧を合流させて集合接続口へと導く吸気圧集合通路であってもよい(請求項5)。
その他の態様として、燃料通路及び吸気管連絡通路が、デリバリパイプの一端面からそれぞれ一側方に向けて開口し、燃料流入口及び集合接続口が、デリバリパイプに対して別部品として製作されて、それぞれ他側方から燃料通路及び吸気管連絡通路の開口箇所に接続されていてもよい(請求項6)。
その他の態様として、デリバリパイプが、第1デリバリパイプと第2デリバリパイプとに分割され、第1デリバリパイプと第2デリバリパイプとが、互いの燃料通路及び互いの吸気管連絡通路をそれぞれ相対向して開口させ、燃料流入口及び集合接続口が、第1デリバリパイプ及び第2デリバリパイプに対して別部品として製作されて、それぞれ第1デリバリパイプと第2デリバリパイプとの間に挟み込まれて、両側方から燃料通路及び吸気管連絡通路の開口箇所に接続されていてもよい(請求項7)。
その他の態様として、燃料流入口及び集合接続口が、互いに別部品として製作されて、燃料タンク側またはキャニスタと圧力センサとの何れかの側と接続される接続部を有し、接続部が、燃料流入口及び集合接続口の両側に形成された筒状部の軸線を中心として角度変更可能とされていてもよい(請求項8)。
その他の態様として、燃料流入口及び集合接続口が、互いに一体部品として製作されていてもよい(請求項9)。
その他の態様として、デリバリパイプの各デリバリパイプ側接続口が、それぞれ別部品として製作された接続パイプを介してスロットルボディの各スロットル側接続口に接続されていてもよい(請求項10)。
また、本発明の燃料デリバリパイプは、燃料タンク側に接続される燃料流入口と、スロットルボディの各インジェクタにそれぞれ接続される燃料流出口とが設けられ、燃料流入口から分岐して各燃料流出口まで延びる燃料通路が内部に形成された燃料デリバリパイプであって、各ボアへ蒸散ガスを供給する吸気管連絡通路と、吸気管連絡通路に蒸散ガスを導入するための集合接続口と、蒸散ガスを各ボア内に供給するためのデリバリパイプ側接続口とを有し、燃料通路と吸気管連絡通路は共に各気筒の配列方向に平行に延び、一体的に成形されていることを特徴とする(請求項11)。
また、本発明の燃料デリバリパイプは、燃料タンク側に接続される燃料流入口と、スロットルボディの各インジェクタにそれぞれ接続される燃料流出口とが設けられ、燃料流入口から分岐して各燃料流出口まで延びる燃料通路が内部に形成された燃料デリバリパイプであって、各ボアの吸気圧を導入するための吸気管連絡通路と、吸気管連絡通路の圧力を測定するための圧力センサを接続するための集合接続口と、各ボア内に接続するためのデリバリパイプ側接続口とを有し、燃料通路と吸気管連絡通路は共に各気筒の配列方向に平行に延び、一体的に成形されていることを特徴とする(請求項12)。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、製造コストを低減し且つ良好な組付作業性を実現できる多気筒エンジンの吸気装置及びエンジンの吸気装置に用いる燃料デリバリパイプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態の多気筒エンジンの吸気装置を示す斜視図である。
【
図2】多気筒エンジンの吸気装置を下方から見た底面図である。
【
図3】多気筒エンジンの吸気装置を後方から見た後面図である。
【
図4】多気筒エンジンの吸気装置を右方から見た側面図である。
【
図5】スロットルボディに対するインジェクタ及びデリバリパイプの装着状態を示す
図2のV-V線断面図である。
【
図6】スロットルボディに対する接続パイプ及びデリバリパイプの装着状態を示す
図2のVI-VI線断面図である。
【
図7】スロットルボディに形成された蒸散ガス中継通路を示す
図6のVII-VII線断面図である。
【
図8】デリバリパイプの燃料通路と各インジェクタとの連通状態を示す
図5のVIII-VIII線断面図である。
【
図9】デリバリパイプの蒸散ガス通路と各接続パイプとの連通状態を示す
図6のIX-IX線断面図である。
【
図10】スロットルボディから接続パイプ及びデリバリパイプを取り外した状態を示す分解図である。
【
図11】燃料流入口及び蒸散ガス流入口から第1デリバリパイプと第2デリバリパイプとを取り外した状態を示す分解図である。
【
図12】スロットルボディから接続パイプ及びデリバリパイプを取り外した状態を示す
図6に対応する分解図である。
【
図13】燃料流入口及び蒸散ガス流入口を一体部品とした別例を示す
図11に対応する分解図である。
【
図14】デリバリパイプに対して接続パイプを一体部品とした別例を示す
図12に対応する分解図である。
【
図15】スロットルボディに対して接続パイプを一体部品とした別例を示す
図12に対応する分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を自動二輪車に搭載される直列4気筒エンジンの吸気装置に具体化した実施形態を説明する。
図示しない自動二輪車の車体には走行用動力源としてエンジンが搭載され、エンジンの上側に吸気装置1を構成するダウンドラフト型のスロットルボディ2が取り付けられている。以下の説明では、自動二輪車に搭乗した運転者を基準として、前後、左右及び上下方向を規定する。従って、例えば
図1ではスロットルボディ2の下側にエンジンが位置し、上側に吸気を濾過するためのエアクリーナが位置していることになる。
【0015】
図1~4に示すように吸気装置1は、エンジンへの装着状態において各気筒の筒内と連通するボア2La,2Raが形成され、各ボア2La,2Ra内に吸気量調整用のスロットル弁8が開閉可能に設けられたスロットルボディ2、各ボア2La,2Ra内に燃料を噴射するインジェクタ3、燃料タンクからの燃料を各気筒に分岐してインジェクタ3にそれぞれ供給するデリバリパイプ4、及び図示しない蒸散ガス処理装置のキャニスタに吸着された蒸散ガスを各ボア2La,2Ra内に分岐・案内する蒸散ガス通路5等から構成されている。
【0016】
まず、スロットルボディ2の構成を説明すると、スロットルボディ2は、左側スロットルボディ2Lと右側スロットルボディ2Rとをボルト6により結合してなる。右側スロットルボディ2Rには、エンジンの#1気筒及び#2気筒と対応する左右一対のボア2Raが上下方向に貫通形成され、左側スロットルボディ2Lには、エンジンの#3気筒及び#4気筒と対応する左右一対のボア2Laが上下方向に貫通形成されている。各ボア2La,2Raの下端はエンジンに接続されて対応する気筒の筒内と連通し、上端はエアクリーナの内部と連通している。以下の説明では、ボア2La,2Ra等の各部材を、#1~#4の符号に基づき何れの気筒に対応するものであるかを示す場合がある。
【0017】
左側及び右側スロットルボディ2L,2Rには、各ボア2La,2Raを左右方向に貫通する1本のスロットル軸7が配設され、図示しない軸受けにより回動可能に軸支されている。各ボア2La,2Ra内においてスロットル軸7にはそれぞれ円板状のスロットル弁8がビス9により固定され、スロットル軸7の回動に伴って各スロットル弁8が開閉される。左側及び右側スロットルボディ2L,2Rの間にはギヤケース10が設けられ、ギヤケース10の一側は前方に膨出して左側面にモータ11が固定され、右側面にはコネクタ12が設けられている。
【0018】
図示はしないがモータ11の出力軸とスロットル軸7とはギヤケース10内に収容されたギヤ列を介して連結され、モータ11の駆動力が出力軸からギヤ列を経て減速されながらスロットル軸7に伝達される。このスロットル軸7の回動に伴ってスロットル弁8が開閉され、各ボア2La,2Ra内を流通する吸気量が調整される。このときのスロットル開度は、右側スロットルボディ2Rの右端に固定されたスロットルセンサ13により検出される。
【0019】
自動二輪車の車体への搭載状態では、ギヤケース10のコネクタ12及びスロットルセンサ13のコネクタ13aに対し、車体側の図示しない制御装置からのハーネスが接続される。ハーネス及びコネクタ13aを介して、スロットルセンサ13により検出されたスロットル開度情報が制御装置に出力されると共に、ハーネス及びコネクタ12を介して、制御装置からモータ11に電力が供給されて上記のような吸気量の調整が行われる。なお、このようなモータ駆動のスロットル弁8に代えて、運転者のスロットル操作をワイヤを介してスロットル弁8に伝達する従来からの機械式の構成としてもよい。
【0020】
一方、
図2,3,5,7に示すようにインジェクタ3は、スロットルボディ2の各ボア2La,2Raに対応してそれぞれ配設されている。詳しくはスロットルボディ2の各ボア2La,2Raの後側位置には、下斜め前方に延びる保持孔14がそれぞれ貫設され、各保持孔14内にインジェクタ3が挿入・固定されている。各インジェクタ3の先端は、スロットル弁8よりも吸気流れ方向の下流側でボア2La,2Ra内に突出し、詳細は後述するが、各インジェクタ3の基端に接続された共通のデリバリパイプ4から加圧燃料が供給されている。
【0021】
各インジェクタ3の一側に設けられたコネクタ3aは、図示はしないがハーネスを介して車体側の制御装置に接続され、制御装置からの駆動信号に応じて各インジェクタ3が開閉駆動される。これにより各ボア2La,2Ra内を流通する吸気中にインジェクタ3から燃料が噴射され、混合気としてエンジンの各筒の筒内に供給されて燃焼により機関トルクを発生させる。
【0022】
図5,8,11に示すようにデリバリパイプ4は、本発明の第1デリバリパイプに相当する左側デリバリパイプ4L、及び本発明の第2デリバリパイプに相当する右側デリバリパイプ4Rと、両デリバリパイプ4L,4Rの間に挟み込まれる燃料流入口15とからなる。左側デリバリパイプ4Lと右側デリバリパイプ4Rとは左右対称の形状であるため、代表として右側デリバリパイプ4Rについて述べる。
【0023】
右側デリバリパイプ4Rは、右側スロットルボディ2Rの上方位置で左右方向に延びる棒状をなし、その内部には長手方向に沿って右側燃料通路16が形成されている。右側燃料通路16の左端には断面円形状の上流挿入孔17が連通して形成され、右側デリバリパイプ4Rの左端面から左側方に開口している。右側燃料通路16は、左右方向における#1気筒及び#2気筒のインジェクタ3に相当する位置でそれぞれ直角に分岐し、各分岐箇所には断面円形状の下流挿入孔18がそれぞれ連通して形成されて、右側デリバリパイプ4Rの外側面からそれぞれ対応するインジェクタ3に向けて開口している。本実施形態では、これら計4箇所の下流挿入孔18が本発明の燃料流出口に相当する。
【0024】
そして以上の右側デリバリパイプ4Rに対して、左側デリバリパイプ4Lは左右対称の形状をなして#3気筒及び#4気筒のインジェクタ3と対応し、その右端面から右側方に開口する上流挿入孔17は、右側デリバリパイプ4R側の上流挿入孔17と相対向している。
【0025】
一方、燃料流入口15は、基幹部15a、基幹部15aから後方に指向するニップル部15b、及び基幹部15aから左方及び右方に指向する左右一対の筒状部15cからなる。ニップル部15bと各筒状部15cとは内部通路15dを介して連通し、各筒状部15cにはOリング19が嵌装されている。なお、本実施形態の左側及び右側デリバリパイプ4L,4Rと燃料流入口15とは、それぞれ合成樹脂材料を射出成型して一体形成されているが、その製法はこれに限るものではなく種々に変更可能である。
【0026】
そして
図10,11に示すように、燃料流入口15を左右から挟み込むように左側及び右側デリバリパイプ4L,4Rが配設され、燃料流入口15の各筒状部15cはデリバリパイプ4の各上流挿入孔17に挿入されてOリング19により液密保持されている。このようにして構成されたデリバリパイプ4の内部には、燃料流入口15のニップル部15bから左右の筒状部15cへと2方向に分岐し、さらに各上流挿入孔17と連通する左右の燃料通路16から各下流挿入孔18へとそれぞれ2方向に分岐する形状をなす燃料通路20が形成されている。
【0027】
また、
図5,8に示すように各インジェクタ3の基端にはそれぞれOリング21が嵌装され、左側及び右側デリバリパイプ4L,4Rの各下流挿入孔18に液密保持された状態で挿入されている。
図5,6に示すようにデリバリパイプ4の各下流挿入孔18の前側位置には、インジェクタ3の軸線Cijに沿ってビス孔22がそれぞれ貫設され、各ビス孔22に対応してスロットルボディ2には雌ネジ部23が形成されている。各雌ネジ部23にはビス孔22を介してビス24が螺合し、これによりスロットルボディ2にデリバリパイプ4が装着されている。
【0028】
自動二輪車の車体への搭載状態では、燃料流入口15のニップル部15bに図示しない燃料タンクからの燃料ホースが接続される。本実施形態では、ニップル部15bが本発明の接続部に相当する。筒状部15cの軸線を中心としてニップル部15bは自由に角度変更するため、燃料ホースを無理な屈曲なく配索可能となる。エンジンの運転中には、燃料タンク内に貯留された燃料が燃料ポンプにより加圧されて燃料ホースから燃料流入口15に流入し、さらにデリバリパイプ4内の燃料通路20で分流されて各気筒のインジェクタ3にそれぞれ供給される。これにより、上記したインジェクタ3による燃料噴射が行われる。
【0029】
一方、自動二輪車の車体には、燃料タンク内等で発生した蒸散ガスを処理する図示しない蒸散ガス処理装置が搭載されている。蒸散ガス処理装置のキャニスタに吸着された蒸散ガスをエンジンの各気筒の筒内で燃焼させるために、吸気装置1には、キャニスタからの蒸散ガスをスロットルボディ2の各ボア2La,2Raに分流・案内する蒸散ガス通路が備えられている。蒸散ガス通路として、特許文献1にはゴムホースを分岐形状に組み合わせた構成が記載されているが、これに代えて本実施形態ではデリバリパイプ4内に蒸散ガス通路5を形成しており、その詳細を以下に説明する。
【0030】
端的に表現すると、蒸散ガス通路5は、燃料通路20と同様にデリバリパイプ4内で通路を順次分岐させて形成したものである。キャニスタからの蒸散ガスを左側及び右側デリバリパイプ4L,4Rに形成した蒸散ガス通路26にそれぞれ流入させるために、デリバリパイプ4の構成部品として蒸散ガス流入口27が追加されている。本実施形態では、蒸散ガス通路5が本発明の吸気管連絡通路に相当し、蒸散ガス流入口27が発明の集合接続口に相当する。
【0031】
図6,7に示すようにスロットルボディ2には、デリバリパイプ4からの蒸散ガスを各ボア2La,2Raに案内するための蒸散ガス中継通路28が形成されている。スロットルボディ2の各インジェクタ3の左側位置または右側位置にはそれぞれ後方から垂直通路28aが穿設され、垂直通路28aの後端はプラグ28dにより閉塞されている。また、垂直通路28aの前端には絞り通路28bが前方へと連続し、絞り通路28bの前端はボア2La,2Ra内のスロットル弁8よりも吸気流れ方向の下流側の位置に開口している。スロットルボディ2には各々の垂直通路28aとそれぞれ連通する断面円形状の蒸散ガス受入れ口28cが形成され、各々の蒸散ガス受入れ口28cは上斜め後方、換言するとデリバリパイプ4側に向けてそれぞれ開口している。
【0032】
これらの垂直通路28a、絞り通路28b、蒸散ガス受入れ口28c及びプラグ28dにより、スロットルボディ2上に各気筒に対応して蒸散ガス中継通路28が形成されている。本実施形態では、これら計4箇所の蒸散ガス受入れ口28cが本発明のスロットルボディ側接続口に相当する。
【0033】
次いで、左側及び右側デリバリパイプ4L,4Rに形成された左右の蒸散ガス通路26について説明するが、左右の燃料通路16と同じく左右対称の形状であるため、代表として右側デリバリパイプ4Rについて述べる。
【0034】
図6,9,11に示すように、右側蒸散ガス通路26は、右側デリバリパイプ4Rの右側燃料通路16よりも下方位置に併設されている。詳しくは、右側蒸散ガス通路26は、右側燃料通路16の下方位置において右側デリバリパイプ4Rの長手方向に沿うように形成されている。右側蒸散ガス通路26の左端には断面円形状の上流挿入孔29が連通して形成され、右側デリバリパイプ4Rの左端面から左側方に開口している。右側蒸散ガス通路26は、左右方向における#1気筒及び#2気筒の蒸散ガス受入れ口28cに相当する位置でそれぞれ180°相対向する両側方に直角に分岐し、一側方の分岐箇所26aはそれぞれ閉塞されている。
【0035】
他側方の分岐箇所26bにはそれぞれ断面円形状の下流挿入孔30が連通して形成され、右側デリバリパイプ4Rの外側面からそれぞれ対応する蒸散ガス受入れ口28cに向けて開口している。本実施形態では、これら計4箇所の下流挿入孔30が本発明のデリバリパイプ側接続口に相当する。そして以上の右側デリバリパイプ4Rに対して、左側デリバリパイプ4Lは左右対称の形状をなして#3気筒及び#4気筒の蒸散ガス受入れ口28cと対応し、その右端面に開口する上流挿入孔29は、右側デリバリパイプ4R側の上流挿入孔29と相対向している。
【0036】
一方、蒸散ガス流入口27は、基幹部27a、基幹部27aから後方に指向するニップル部27b、及び基幹部27aから左方及び右方に指向する左右一対の筒状部27cからなる。ニップル部27bと各筒状部27cとは内部通路27dを介して連通し、各筒状部27cにはOリング31が嵌装されている。結果として蒸散ガス流入口27の左側及び右側の筒状部27cは、それぞれ燃料流入口15の左側及び右側の筒状部15cに対して平行をなしている。このため後述する組付作業に際して、左側及び右側デリバリパイプ4L,4Rにより燃料流入口15及び蒸散ガス流入口27を挟み込むと、各デリバリパイプ4L,4Rの上流挿入孔17,29にそれぞれ対応する筒状部15c,27cが同時に挿入されるようになっている。なお、蒸散ガス流入口27についても合成樹脂材料を射出成型して一体形成しているが、その製法はこれに限るものではなく種々に変更可能である。
【0037】
そして左側及び右側デリバリパイプ4L,4Rは、燃料流入口15と共に蒸散ガス流入口27を左右から挟み込むように配設され、蒸散ガス流入口27の各筒状部27cはデリバリパイプ4の各上流挿入孔29に挿入されてOリング31により気密保持されている。結果としてデリバリパイプ4の内部には、蒸散ガス流入口27のニップル部27bから左右の筒状部27cへと2方向に分岐し、さらに各上流挿入孔29と連通する左右の蒸散ガス通路26から各下流挿入孔30へとそれぞれ2方向に分岐する形状をなす蒸散ガス通路5が形成されている。
【0038】
図6,10,12に示すように、蒸散ガス通路5の各下流挿入孔30は、それぞれスロットルボディ2側の対応する蒸散ガス受入れ口28cと所定間隔をおいて相対向し、それらの間には、円筒状をなして両端にOリング32が嵌装された接続パイプ33がそれぞれ配設されている。各接続パイプ33の一端はデリバリパイプ4側の対応する下流挿入孔30に気密保持された状態で挿入され、各接続パイプ33の他端はスロットルボディ2側の対応する蒸散ガス受入れ口28cに気密保持された状態で挿入されている。
【0039】
各接続パイプ33の軸線Cpipは、各インジェクタ3の軸線Cijに対して平行に設定されている。このため後述する組付作業に際して、予め各下流挿入孔30に接続パイプ33の一端が挿入されたデリバリパイプ4をスロットルボディ2に装着すると、デリバリパイプ4の各下流挿入孔18にインジェクタ3の基端が挿入され、同時に各接続パイプ33の他端がスロットルボディ2側の各蒸散ガス受入れ口28cに挿入されるようになっている。
【0040】
デリバリパイプ4に対して各接続パイプ33を別部品としているのは、蒸散ガス受入れ口28cと下流挿入孔30との間の軸線ズレを吸収するためである。即ち、スロットルボディ2やデリバリパイプ4の製造誤差等に起因して、各蒸散ガス受入れ口28cの軸線と各下流挿入孔30の軸線との間にズレが生じることがあり、且つそれぞれのズレは必ずしも同一方向に発生するとは限らない。このような軸線ズレに応じて、Oリング32により気密を保ったまま各接続パイプ33が個別に僅かに傾いて軸線ズレを吸収するため、製造誤差等が発生した場合であっても所期の蒸散ガスの案内機能を達成することができる。
【0041】
自動二輪車の車体への搭載状態では、
図1に示すように、蒸散ガス流入口27のニップル部27bに、図示しない蒸散ガス処理装置のキャニスタからの蒸散ガスホース25が接続される。本実施形態では、ニップル部27bが本発明の接続部に相当する。筒状部27cの軸線を中心としてニップル部27bは自由に角度変更するため、蒸散ガスホース25を無理な屈曲なく配索可能となる。
【0042】
そして蒸散ガス処理装置のキャニスタは、蒸散ガスホース25、デリバリパイプ4の蒸散ガス通路5、各接続パイプ33、及びスロットルボディ2側の各蒸散ガス中継通路28からなる経路を介して各ボア2La,2Ra内と連通する。エンジンが運転されると、スロットルボディ2の各ボア2La,2Ra内に発生した負圧が上記とは逆の経路を辿ってキャニスタに作用し、吸着されている蒸散ガスが蒸散ガスホース25を経て蒸散ガス流入口27のニップル部27bに流入する。
【0043】
ニップル部27bに流入した蒸散ガスは内部通路27dを経て左右の筒状部27cへと分流され、それぞれデリバリパイプ4の左右の蒸散ガス通路26へと案内される。そして、右側の蒸散ガス通路26を右方へと流通する蒸散ガスは、#2気筒に相当する分岐箇所26bで一部が下流挿入孔30に案内され、残りの蒸散ガスはさらに蒸散ガス通路26を右方へと流通して#1気筒に相当する分岐箇所26bで下流挿入孔30に案内される。同様に、左側の蒸散ガス通路26を左方へと流通する蒸散ガスは、#3気筒に相当する分岐箇所26bで一部が下流挿入孔30に案内され、残りの蒸散ガスはさらに蒸散ガス通路26を左方へと流通して#4気筒に相当する分岐箇所26bで下流挿入孔30に案内される。
【0044】
これらの下流挿入孔30に案内された蒸散ガスは、各接続パイプ33内を経てスロットルボディ2側に案内され、各蒸散ガス中継通路28の蒸散ガス受入れ口28cへと流入する。そして、各蒸散ガス受入れ口28cから垂直通路28a及び絞り通路28bを経てそれぞれのボア2La,2Ra内に供給され、混合気と共にエンジンの筒内に導入されて燃焼・処理される。なお、このときの絞り通路28bは、各ボア2La,2Ra内への蒸散ガスの供給量を調整する機能を奏する。
【0045】
次いで、以上のように構成された本実施形態の4気筒エンジンの吸気装置1を、特に製造コスト及び組付作業性について特許文献1の吸気装置と比較する。
まず、製造コストについて述べると、特許文献1の吸気装置では蒸散ガス通路を構築するために、3個の3WAYニップル、6本のゴムホース、12個のクリップからなる多数の部品を必要とした。これに対して本実施形態の吸気装置1においては、デリバリパイプ4が既存の部品であることから、追加すべき構成部品は、Oリング31を含む蒸散ガス流入口27と、同じくOリング32を含む4本の接続パイプ33だけとなる。そして、デリバリパイプ4の内部には新たに蒸散ガス通路5、詳しくは蒸散ガス通路26及び各下流挿入孔30を形成する必要があるものの、射出成型時の金型形状の変更等により簡単に対処できる。結果として本実施形態の吸気装置1では、特許文献1のものに比較して構成部品の点数を大幅に削減できる。
【0046】
また特許文献1の吸気装置では、蒸散ガスの漏れ防止のために、内面にフッ素樹脂層を形成した高価なゴムホースを必要とした。このゴムホースの機能は、本実施形態ではデリバリパイプ4により果たされるが、内部に燃料であるガソリンを流通させるデリバリパイプ4は元々ガソリンへの耐性を有する合成樹脂材料で製作され、この材質は蒸散ガスを遮断する特性を併せ持つ。従って、材質変更することなくデリバリパイプ4を蒸散ガス通路5として機能させることができ、コストアップの要因にはならない。
【0047】
また特許文献1の吸気装置では、ゴムホースを分岐形状に組み合わせて蒸散ガス通路を構築しているため、長さや形状が異なる複数種類のゴムホースを在庫管理する必要が生じた。このような特許文献1の蒸散ガス通路が本実施形態では既存のデリバリパイプ4に代替されるため、在庫管理の対象となる部品点数が大幅に減少する。以上の要因が相俟って、特許文献1に比較して吸気装置1の製造コストを低減することができる。
【0048】
加えて、このような在庫管理に関する本実施形態の利点は、仕様が異なる多種類のスロットルボディ2を製作する場合に一層顕著に得られる。
即ち、この種のスロットルボディ2は、エンジン側からの要求、或いは車載状態での周囲の部材との位置関係等に基づき仕様が設定される。このため、例えばシリンダボアのピッチが異なるエンジンに対しては、それに対応してスロットルボディ2の各ボア2La,2Raのピッチが設定される。また、車載状態でのスロットルボディ2やデリバリパイプ4と周囲の部材との干渉防止を目的として、例えばスロットルボディ2とデリバリパイプ4との離間距離等を変更する場合もある。
【0049】
このような多種類の仕様のスロットルボディ2を製作する場合、仕様毎に蒸散ガス通路5の形状が異なるため、特許文献1の吸気装置では、それに応じた長さや形状を有する膨大な数のゴムホースを用意する必要が生じ、その在庫管理が非常に煩雑になってしまう。これに対して本実施形態では、スロットルボディ2の仕様に応じた蒸散ガス通路5を有するデリバリパイプ4を用意するだけで対応可能なため、在庫管理の対象となる部品点数を大幅に減少でき、結果として在庫管理の手間を格段に軽減することができる。
【0050】
なお、仕様が異なるスロットルボディ2の間で、可能な限りデリバリパイプ4を共用化することが望ましい。そこで、例えばスロットルボディ2とデリバリパイプ4との離間距離が異なる場合には、デリバリパイプ4については共用化し、スロットルボディ2上の蒸散ガス受入れ口28cの位置変更や形状変更、或いは接続パイプ33の長さ変更等により対処する。また、例えばスロットルの各ボア2La,2Raのピッチが異なる場合には、デリバリパイプ4の共用化が困難なため、それぞれのボアピッチに対応するデリバリパイプ4を個別に用意する。
【0051】
一方、組付作業性について述べると、例えば、本実施形態の吸気装置1は以下の手順に従って組付けられる。
まず、左側及び右側スロットルボディ2L,2Rを結合すると共に、その内部にスロットル弁8やスロットル軸7等を組み込み、外部にインジェクタ3やモータ11等を装着して、スロットルボディ2を組み付ける。
【0052】
これと並行してデリバリパイプ4を仮組する。詳しくは、予め燃料流入口15及び蒸散ガス流入口27の筒状部15c,27cと、各接続パイプ33の両端とに、それぞれOリング19,30,32を嵌装すると共に、スロットルボディ2側の各インジェクタ3の基端にもOリング21を嵌装しておく。燃料流入口15及び蒸散ガス流入口27に対し左側及び右側デリバリパイプ4L,4Rを左右から挟み込み、それぞれの筒状部15c,27cを上流挿入孔17,29に挿入する。また、左側及び右側デリバリパイプ4L,4Rの下流挿入孔30には接続パイプ33の一端をそれぞれ挿入する。この仮組状態では、上流挿入孔17,29からの筒状部15c,27cの離脱、及び下流挿入孔30からの接続パイプ33の離脱は防止されていない。
そして、デリバリパイプ4をスロットルボディ2上の正規位置に配設すると、デリバリパイプ4の各下流挿入孔18にそれぞれ対応するインジェクタ3の基端が挿入されると共に、各接続パイプ33の他端がスロットルボディ2側の対応する蒸散ガス受入れ口28cにそれぞれ挿入される。これと共にデリバリパイプ4側の各ビス孔22がスロットルボディ2側の各雌ネジ部23と一致し、ビス24によりスロットルボディ2にデリバリパイプ4を固定すると一連の組付作業が完了する。
【0053】
組付完了の状態では、スロットルボディ2に対するデリバリパイプ4の位置関係が定まると共に、左側デリバリパイプ4Lと右側デリバリパイプ4Rとの位置関係もスロットルボディ2を介して定まる。このため、左側デリバリパイプ4Lと右側デリバリパイプ4Rとの離間、ひいては各デリバリパイプ4の上流挿入孔17,29からの燃料流入口15及び蒸散ガス流入口27の筒状部15c,27cの離脱が防止される。また、スロットルボディ2に対するデリバリパイプ4の離間、ひいてはデリバリパイプ4の各下流挿入孔30からの接続パイプ33一端の離脱、及びスロットルボディ2の各蒸散ガス受入れ口28cからの接続パイプ33の他端の離脱が防止される。
【0054】
以上の組付作業の内容を、燃料分配機能のみを有する通常のデリバリパイプ、例えば特許文献1のデリバリパイプの組付作業と比較すると、接続パイプ33に関する若干の作業が追加されるだけである。詳しくは特許文献1のデリバリパイプにおいて、燃料流入口15の左右の筒状部15cを左側及び右側デリバリパイプ4L,4Rの上流挿入孔17にそれぞれ挿入する際に、本実施形態では、自ずと蒸散ガス流入口27の左右の筒状部27cも対応する上流挿入孔29に挿入される。そして、上記のように左右の上流挿入孔29に挟み込まれて蒸散ガス流入口27の筒状部27cの離脱が防止されることから、離脱防止のための特段の操作は必要なく、このときの組付作業に関して新たな手間は発生しない。
【0055】
また特許文献1のデリバリパイプにおいて、その各下流挿入孔18にインジェクタ3の基端を挿入する際に、本実施形態では、自ずと各接続パイプ33の他端がスロットルボディ2の蒸散ガス受入れ口28cにそれぞれ挿入される。そして、上記のように下流挿入孔30と蒸散ガス受入れ口28cとの間に挟み込まれて接続パイプ33の一端及び他端の離脱が防止されることから、離脱防止のための特段の操作は必要ない。事前の作業としては、各接続パイプ33の一端をデリバリパイプ4の下流挿入孔30に挿入しておくだけのため、実質的な手間はほとんど増加しないと見なせる。
【0056】
そして、このように特許文献1のデリバリパイプの組付作業と遜色のない簡単な作業内容により、スロットルボディ2上に燃料通路20と共に蒸散ガス通路5を構築できる。よって、ゴムホース上への多数のクリップの装着作業を要する特許文献1に比較すると、組付作業に要する手間が格段に簡単なものとなる。
【0057】
しかも特許文献1の吸気装置では、既にスロットルボディ上にデリバリパイプが装着されて作業スペースが狭められた環境で、蒸散ガス通路を装着する必要がある。これに対して実施形態では、周囲に十分な作業スペースが確保された環境でデリバリパイプの装着と同時に蒸散ガス通路5を構築できるため、組付作業が格段に実施し易くなり良好な組付作業性を実現することができる。
【0058】
また本実施形態では、スロットルボディ2上に各ボア2La,2Raと圧力センサとを連通させる吸気圧集合通路が設けられていないが、エンジン制御の情報の1つとして吸気負圧を利用する場合には、ゴムホースにより分岐形状の吸気圧集合通路を設けることになる。しかし、このような吸気圧集合通路をスロットルボディ2上に設けた場合、特許文献1の吸気装置では、蒸散ガス通路を組み付ける際にデリバリパイプに加えて吸気圧集合通路も避ける必要が生じるため、非常に実施し難い作業となる。これに対して本実施形態によれば、デリバリパイプ4を組み付ける際に吸気圧集合通路だけを避ければよいため、その組付作業が格段に実施し易いものとなる。結果として、このように吸気圧集合通路を追加して作業スペースが一層狭まった場合であっても、本実施形態によれば良好な組付作業性を実現することができる。
【0059】
なお、組付作業は以上の手順に限るものではなく種々に変更可能である。例えば、エンジンへの装着を完了した完了したスロットルボディ2にデリバリパイプ4を組み付けてもよいし、或いは、各接続パイプ33の一端を予めデリバリパイプ4の下流挿入孔30に挿入しておく代わりに、各接続パイプ33の他端を予めスロットルボディ2の蒸散ガス受入れ口28cに挿入しておいてもよい。そして、何れの手順を採った場合でも、上記した作用効果を達成できる。
【0060】
一方、デリバリパイプ4とは別個に蒸散ガス通路5を構築する必要がないことは、スロットルボディ2上にスペース的な余裕をもたらすことにつながる。例えば、スロットルボディ2上に蒸散ガス通路5及び吸気圧集合通路を共に設けた場合、それぞれの設置スペースの確保を要するばかりでなく、振動による互いの接触防止のためにプロテクタを装着する等の対策が必要になる。デリバリパイプ4に蒸散ガス通路5を形成すれば、スロットルボディ2上に吸気圧集合通路のスペースを容易に確保できると共に、プロテクタの装着も不要となる。逆に、デリバリパイプ4に吸気圧集合通路を形成した場合も、蒸散ガス通路の設置スペースやプロテクタ装着について同様の利点が得られる。
【0061】
また、特許文献1の吸気装置では、蒸散ガス通路のゴムホースをクリップで抜止めしているが、確実な対策とは言い難い。例えばクリップの装着位置が不適切な場合には隙間が生じ、稼働中に何らかの要因でゴムホースが引っ張られた場合にはホースが抜け落ち、何れの場合も蒸散ガスのリークに直結してしまう。これに対して本実施形態の吸気装置1では、上記のように左右の上流挿入孔29に挟み込まれて蒸散ガス流入口27の筒状部27cの離脱が防止され、下流挿入孔30と蒸散ガス受入れ口28cとの間に挟み込まれて接続パイプ33の一端及び他端の離脱が防止されている。従って、何れの箇所もOリング31,32による液密及び気密防止の作用が確実に奏されるため、蒸散ガスのリークを防止して吸気装置1の信頼性を向上できるという別の利点も得られる。
【0062】
本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、自動二輪車に搭載される直列4気筒エンジンの吸気装置1として具体化したが、用途やエンジン形式等については、これに限らず任意に変更可能である。例えば、4輪バギー等のATV(All Terrain Vehicle)に搭載されるエンジンの吸気装置に適用してもよいし、気筒数や気筒配列が異なるエンジンの吸気装置に適用してもよい。
【0063】
また上記実施形態では、デリバリパイプ4に既存の燃料通路20に加えて蒸散ガス通路5を形成したが、上記した吸気圧集合通路を形成することもできる。例えば、蒸散ガス通路5に代えて吸気圧集合通路を形成する場合には、
図1に示すように基本的に実施形態の構成のまま、蒸散ガス流入口27のニップル部27bに吸気圧を検出する圧力センサ41を接続するだけで対応できる。この構成により、スロットルボディ2の各ボア2La,2Ra内に発生した吸気圧は蒸散ガス中継通路28の蒸散ガス受入れ口28cに案内され、それぞれ接続パイプ33を経てデリバリパイプ4の下流挿入孔30に流入する。各下流挿入孔30からの吸気圧は蒸散ガス通路5を流通する過程で合流し、蒸散ガス流入口27を経て圧力センサ41に作用する。これにより、エンジン制御の情報の1つとして吸気圧を検出することができる。
【0064】
従って、この例では、スロットルボディ2の各蒸散ガス受入れ口28cが、ボア2La,2Ra内に発生した吸気圧を取り出す本発明の吸気圧取出し口、ひいては本発明のスロットルボディ側接続口に相当する。また、デリバリパイプ4の各下流挿入孔30が、吸気圧取出し口からの吸気圧が案内される本発明のデリバリパイプ側接続口に相当する。また、デリバリパイプ4の蒸散ガス通路5が、各吸気圧取出し口からデリバリパイプ側接続口に案内された吸気圧を合流させる本発明の吸気圧集合通路、ひいては本発明の吸気管連絡通路に相当する。また、蒸散ガス流入口27が、圧力センサ41が接続されて吸気圧集合通路で合流した吸気圧が案内される本発明のセンサ接続口、ひいては本発明の集合接続口に相当する。
【0065】
また、燃料通路20及び蒸散ガス通路5に加えて吸気圧集合通路をデリバリパイプ4に形成する場合には、実施形態の構成に対して上記のような吸気圧集合通路を新たに追加すればよい。重複する説明はしないが、この場合には、吸気圧集合通路を構成する部品点数が大幅に削減されるため、実施形態に比較してより一層の製造コストの低減及び組付作業性の向上を実現することができる。
【0066】
また上記実施形態では、デリバリパイプ4を左側及び右側デリバリパイプ4L,4Rに分割し、その間に設けた蒸散ガス流入口27から左右の蒸散ガス通路26に蒸散ガスを分流させたが、蒸散ガス通路5の構成はこれに限るものではない。例えば4気筒エンジンや2気筒エンジンを対象として単一のデリバリパイプ4を設け、その左端または右端に蒸散ガスホース25を接続して内部の蒸散ガス通路26に蒸散ガスを案内し、蒸散ガス通路26を蒸散ガスが流通する過程で各気筒に順次分流させてもよい。デリバリパイプ4の分割を廃止したことにより、一層簡単な構成で蒸散ガス通路5を構築できる。また、例えば燃料流入口15を左側及び右側デリバリパイプ4L,4Rの間に配設し、蒸散ガスホース25をデリバリパイプ4の左端または右端に接続してもよいし、その逆の接続状態としてもよい。
【0067】
また上記実施形態では、燃料流入口15と蒸散ガス流入口27とを別部品としたが、
図13に示すように一体部品としてもよい。この場合には、一体化された燃料側の筒状部15cと蒸散ガス側の筒状部27cとの軸間距離に対してデリバリパイプ4側の上流挿入孔17,29の軸間距離を一致させる必要が生じるため、より高い部品精度が要求される。しかしながら一体部品の場合には、左側及び右側デリバリパイプ4L,4Rで挟み込む際に、燃料流入口15と蒸散ガス流入口27とを所期の位置関係に保つ必要がなくなるため、組付作業をより容易に実施できるという別の利点が得られる。
【0068】
また上記実施形態では、左側及び右側デリバリパイプ4L,4Rに対して接続パイプ33を別部品としたが、
図14に示すように一体部品としてもよい。この場合には、各接続パイプ33の先端が、実質的な本発明のデリバリパイプ側接続口に相当する。上記した燃料流入口15と蒸散ガス流入口27とを一体化する場合と同じく、デリバリパイプ4を介して各接続パイプ33の軸間距離が固定されるため、スロットルボディ2側の各蒸散ガス受入れ口28cの軸間距離と一致させるために、より高い部品精度が要求される。
【0069】
しかしながら、左側及び右側デリバリパイプ4L,4Rの各下流挿入孔30に接続パイプ33の一端を挿入する作業が不要になるため、組付作業をより容易に実施できるという別の利点が得られる。加えて、各下流挿入孔30への接続パイプ33の挿入箇所でリークが発生しないため、その信頼性を一層向上することができる。なお
図15に示すように、上記とは逆にスロットルボディ2に各接続パイプ33を一体部品としてもよい。重複する説明はしないが、上記と同様の作用効果が得られる。
【符号の説明】
【0070】
1 吸気装置
2 スロットルボディ
2La,2Ra ボア
3 インジェクタ
4 デリバリパイプ
4L 左側デリバリパイプ(第1デリバリパイプ)
4R 右側デリバリパイプ(第2デリバリパイプ)
5 蒸散ガス通路、吸気圧集合通路(吸気管連絡通路)
8 スロットル弁
15 燃料流入口
15b,27b ニップル部(接続部)
15c,27c 筒状部
18 下流挿入孔(燃料流出口)
19,31,32 Oリング
20 燃料通路
25 蒸散ガスホース
27 蒸散ガス流入口、センサ接続口(集合接続口)
28c 蒸散ガス受入れ口、吸気圧取出し口(スロットルボディ側接続口)
30 下流挿入孔(デリバリパイプ側接続口)
41 圧力センサ