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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138951
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】マスク用粘着シート及びマスク
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20220915BHJP
   A62B 18/08 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
A41D13/11 J
A62B18/08 D
A41D13/11 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021039128
(22)【出願日】2021-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 裕也
(72)【発明者】
【氏名】岩田 晋輔
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA07
2E185BA08
(57)【要約】
【課題】マスクから剥がれにくく、かつ顔面から剥がれにくいマスク用粘着シート及びマスクとなる。
【解決手段】課題は、紐なしのマスク本体100を顔面に保持するマスク用粘着シート60であって、顔面側面とマスク本体側面からなる基材シート30と、当該基材シート30の顔面側面に設けられた顔面側粘着層20と、当該顔面側粘着層20の顔面側に剥離可能に貼り合された顔面側剥離紙10と、当該基材シート30のマスク本体側面に設けられたマスク側粘着層40と、当該マスク側粘着層40のマスク本体側に剥離可能に貼り合されたマスク側剥離紙50とを有し、前記マスク側粘着層40は、引張強さが2.0~30.0N/10mm、かつ厚みが15~30μmとなるものであり、前記基材シートの厚みが10~50μmである、ことを特徴とするマスク用粘着シート及びマスクによって解決される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紐なしのマスク本体を顔面に保持するマスク用粘着シートであって、
顔面側面とマスク本体側面からなる基材シートと、当該基材シートの顔面側面に設けられた顔面側粘着層と、当該顔面側粘着層の顔面側に剥離可能に貼り合された顔面側剥離紙と、当該基材シートのマスク本体側に設けられたマスク側粘着層と、当該マスク側粘着層のマスク本体側面に剥離可能に貼り合されたマスク側剥離紙とを有し、
前記マスク側粘着層は、引張強さが2.0~30.0N/10mm、かつ厚みが15~30μmとなるものであり、
前記基材シートの厚みが10~50μm以下である、
ことを特徴とするマスク用粘着シート。
【請求項2】
前記マスク用粘着シート全体の厚みが150~270μmである、
請求項1に記載のマスク用粘着シート。
【請求項3】
前記基材シートが、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリエステル、未延伸ポリプロピレン、延伸ポリプロピレンから選択される1種又は2種以上の組み合わせからなる、
請求項1又は2に記載のマスク用粘着シート。
【請求項4】
前記基材シートが1層からなる、
請求項1~3のいずれか1項に記載のマスク用粘着シート。
【請求項5】
前記マスク側粘着層は、アクリル系樹脂を有する粘着剤とイソシアネート基を有する硬化剤との生成物を含有してなり、当該粘着剤と当該硬化剤との混合比が100:0.1~100:10となるものである、
請求項1~4のいずれか1項に記載のマスク用粘着シート。
【請求項6】
前記顔面側粘着層はアクリル系粘着剤を主成分とし、タッキファイヤーを含まないものであり、
前記マスク側粘着層はアクリル系粘着剤を主成分とし、タッキファイヤーを1~30質量%含むものである、
請求項1~5のいずれか1項に記載のマスク用粘着シート。
【請求項7】
マスク本体を有し、
請求項1~6のいずれか1項に記載のマスク用粘着シートが、前記マスク本体における長手方向の両端部で、かつ短手方向の両端部に、それぞれ貼り付けられたマスク。
【請求項8】
前記マスク本体の面積に占める、前記マスク用粘着シートの面積の百分率が2~5%である、
請求項7に記載のマスク。
【請求項9】
マスク本体を有し、
請求項1~6のいずれか1項に記載のマスク用粘着シートが、前記マスク本体における長手方向の両端部で、かつ短手方向の一端部から他端部まで延在して貼り付けられたマスク。
【請求項10】
前記マスク本体の面積に占める、前記マスク用粘着シートの面積の百分率が5~9%である、
請求項9に記載のマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスク用粘着シート及びマスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、新型コロナウイルスが世界的にまん延したことに伴い、飛沫の拡散による感染を予防する観点等の理由からサージカルマスクに代表されるマスクの需要が増加している。市販される多くのマスクは、耳に掛ける紐が備わり、装着者がマスク本体部を口や鼻にあてがい、当該耳掛け紐を耳に掛けて装着するタイプのものである。このマスクは、装着を続けると耳が痛くなったり、マスク本体部が口や鼻からずれたり、眼鏡を装着する人であれば、耳掛け紐が眼鏡の先セル(モダン)に絡まったりして、不便な点を有する。また、美容業界では、マスクの耳掛け紐があることで装着したままでは、施術が出来きない問題も有する。これらの不便や問題を解消したマスクとして、耳掛け紐がないマスクがこれまでに開発されており、次に示す特許文献に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3125307号公報
【特許文献2】特許第5143970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この特許文献1は、「鼻・口を覆うマスク面布(1)の左右両側面内側に両面接着テープ(2)を設けたことを特徴とした耳かけ紐なしのマスク」に係る考案を開示している。このマスクによれば、「耳かけ紐が無いため長い期間使用していても耳の裏が爛れてカユミや痛みを生じることなく、皮膚の弱い人でも安心して使用ができる。又顔面との接着具合が悪くなれば簡単に両面接着テープ(2)を交換して貼り替えれば再三使用できるため経済的で、耳かけ紐が邪魔にならず携帯にも便利であるという幾多の使用上の効果を奏する。」としている。
【0005】
しかしながら、両面接着テープについて、粘着力がどの程度あるのかについては言及されていない。例えば、両面接着テープの粘着力が弱すぎると、両面接着テープがマスク本体や顔面から剥がれてしまい、一方で粘着力が強すぎると、顔面を傷つけてしまう懸念がある。
【0006】
また特許文献2は、「被着者側の面に複数回の接着がシリコンゲル系の粘着剤を備えた第一保持部及び第二保持部が形成されたマスク」に係る発明を開示している。このマスクによれば、「保持部にシリコンゲル系の粘着剤を用いることで、複数回の取り外しにも耐えうる効果を奏する」としている。
【0007】
しかしながら、シリコンゲル系の粘着剤は、取り外しが前提とされる部材へ種々利用されているが、その粘着力については繰り返し使用による劣化が著しい。また、シリコンゲル系粘着剤を接合するマスク保持部との密着性についても、複数回取り外されるうちに自然に剥がれてしまう等の懸念がある。
【0008】
そこで、本発明が解決する課題は、マスクから剥がれにくく、かつ顔面から剥がれにくいマスク用粘着シート及びマスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意研究を重ね、マスク用粘着シートについての物性を種々に調節して前記課題を解決するに至った。その結果、完成させた発明の態様が次に示すものである。
【0010】
[第1の態様]
紐なしのマスク本体を顔面に保持するマスク用粘着シートであって、
顔面側面とマスク本体側面からなる基材シートと、当該基材シートの顔面側面に設けられた顔面側粘着層と、当該顔面側粘着層の顔面側に剥離可能に貼り合された顔面側剥離紙と、当該基材シートのマスク本体側面に設けられたマスク側粘着層と、当該マスク側粘着層のマスク本体側に剥離可能に貼り合されたマスク側剥離紙とを有し、
前記マスク側粘着層は、引張強さが2.0~30.0N/10mm、かつ厚みが15~30μmとなるものであり、
前記基材シートの厚みが10~50μmである、
ことを特徴とするマスク用粘着シート。
【0011】
本態様のマスク用粘着シートは、例えば次のように使用することができる。マスク側剥離紙を剥離してマスク側粘着層を露出させ、当該マスク側粘着層をマスク本体に貼り付ける。次いで、顔面側剥離紙を剥離して顔面側粘着層を露出させ、当該顔面側粘着層を顔面に貼り付ける。そうすることで、マスク本体が顔面に保持された状態になる。
【0012】
本態様では、マスク側粘着層の引張強さが2.0~30N/10mm、かつ厚みが15~30μmとなっているので、マスク用粘着シートをマスク本体に貼り付けた後は、マスク用粘着シートがマスク本体から剥がれにくいものとなっている。仮に、マスク本体に貼り付けたマスク用粘着シートを剥がそうとすると、マスク側粘着層にマスク本体の部材の一部が付着して、粘着力が弱まってしまうので、このようなマスク用粘着シートは貼り替えには向かない。
【0013】
引張強さと厚みについて、マスク側粘着層の引張強さを2.0~30N/10mmとし、厚みを前記範囲外とした場合は、マスク本体に貼り付けたマスク用粘着シートがマスク本体から剥がれたり、装着者がマスクのマスク用粘着シート部位を硬く感じて不快感を抱いたりする場合があることを、発明者等は知見している。
【0014】
また、前記基材シートの厚みが50μm以下であると、基材シートの素材の硬さが軽減され、顔面の動きに沿って基材シートが柔軟に変形するので、マスク用粘着シートが顔面から剥がれにくい。また、装着者はマスクを装着してもごわつきを感じ難い。
【0015】
[第2の態様]
前記マスク用粘着シート全体の厚みが150~270μmである、
第1の態様のマスク用粘着シート。
【0016】
前記態様であれば、マスク用粘着シートを摘まみ易く、またマスク用粘着シートを摘まみつつ、剥離紙を容易に剥離することができ、取り扱いが容易である。また、前記厚みの範囲であることで、製造工程にシワ入り等が少なく外観不良やそれによる接着不良も低減できる。
【0017】
[第3の態様]
前記基材シートが、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリエステル、未延伸ポリプロピレン、延伸ポリプロピレンから選択される1種又は2種以上の組み合わせからなる、
第1の態様又は第2の態様のマスク用粘着シート。
【0018】
前記態様であれば、柔軟性を有する基材シートとなるので、顔面の動きに沿って基材シートが柔軟に変形して、マスク用粘着シートが顔面からより剥がれにくいものとなる。
【0019】
[第4の態様]
前記基材シートが1層からなる、
第1の態様~第3の態様のいずれかの態様のマスク用粘着シート。
【0020】
基材シートを複数層にすると、相対的に硬くなり、顔面の動きに沿って基材シートが変形し難くなる。基材シートが1層であれば、相対的に柔軟なものとなるので、変形が容易となる。基材シートの変形が容易なので、顔面の動きに沿った変形が行われ、マスクに貼り付けたマスク用粘着シートがマスク本体や顔面から剥がれにくいとの効果が奏される。
【0021】
[第5の態様]
前記マスク側粘着層は、アクリル系樹脂を有する粘着剤とイソシアネート基を有する硬化剤との生成物を含有してなり、当該粘着剤と当該硬化剤との混合比が100:0.1~100:10となるものである、
第1の態様~第4の態様のいずれかの態様のマスク用粘着シート。
【0022】
粘着層の引張強さは、貼り付け対象となる被着体の素材により変化する。具体的には粘着層が同じであっても、被着体の素材、例えば、ガラス、樹脂、パルプ等によって引張強さが変わる。そのため、被着体の素材に応じて、粘着層の組成物の混合比を適宜調節して、引張強さが適切な範囲となるようにするとよい。粘着剤と硬化剤の混合比が前記に示す範囲であれば、マスク側粘着層におけるマスクに対する引張強さが適切な範囲になり、マスク用粘着シートがマスクに貼り付き、剥がれにくいものとなる。また、当該混合比で調整された粘着層であれば、マスクを使用する際に、粘着層自体が破断することがない。
【0023】
[第6の態様]
前記顔面側粘着層はアクリル系粘着剤を主成分とし、タッキファイヤーを含まないものであり、前記マスク側粘着層はアクリル系粘着剤を主成分とし、タッキファイヤーを1~30質量%含むものである、
第1の態様~第5態様のいずれかの態様のマスク用粘着シート。
【0024】
顔面側粘着層にアクリル系粘着剤を用い、タッキファイヤーを含有しないことで、所望の貼り付け性が得られ、粘着層が肌に残るのを防止できる。またマスク側粘着層にアクリル系粘着剤を用い、タッキファイヤーが前記範囲で含有しているので、マスクへの所望の貼り付け性を得ることができる。
【0025】
[第7の態様]
マスク本体を有し、
第1の態様~第6の態様のいずれかの態様のマスク用粘着シートが、前記マスク本体における長手方向の両端部で、かつ短手方向の両端部に、少なくとも貼り付けられたマスク。
【0026】
マスク本体における長手方向の両端部で、かつ短手方向の両端部にマスク用粘着シートが貼り付けられているので、装着時に顔面を様々に動かしても、マスクの一部が大きくめくれ難いものとなっている。
【0027】
[第8の態様]
前記マスク本体の面積に占める、前記マスク用粘着シートの面積の百分率が2~5%である、第7の態様のマスク。
【0028】
当該百分率の範囲であれば、通常のマスクの使用において、マスク本体に貼り付いたマスク用粘着シートが、マスク本体から剥がれ難いものとなる。
【0029】
[第9の態様]
マスク本体を有し、
第1の態様~第6の態様のいずれかの態様のマスク用粘着シートが、前記マスク本体における長手方向の両端部で、かつ短手方向の一端部から他端部まで延在して貼り付けられたマスク。
【0030】
前記態様であれば、装着時に顔面を様々に動かしても、マスクの一部がめくれ難いものとなっているとともに、マスク用粘着シートが短手方向の一端部から他端部まで延在しているので、マスク用粘着シートがマスク本体に貼り付き、剥がれ難いとの効果が奏される。
【0031】
[第10の態様]
前記マスク本体の面積に占める、前記マスク用粘着シートの面積の百分率が5~9%である第9の態様のマスク。
【0032】
当該百分率の範囲であれば、通常のマスクの使用において、マスク本体に貼り付いたマスク用粘着シートが、マスク本体から剥がれ難いものとなる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によると、マスクから剥がれにくく、かつ顔面から剥がれにくいマスク用粘着シートとなる。また、副次的な効果として、顔面から剥がれにくいマスクとなる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】マスク用粘着シートが貼り付けられたマスクを表す図である。
図2】マスク用粘着シートが貼り付けられたマスクの顔面側の面を表す図である。
図3】マスク用粘着シートの断面図である。
図4】マスク用粘着シートが貼り付けられたマスクの顔面側の面を表す図である。
図5】マスク本体を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
次に、発明を実施するための形態を説明する。なお、本実施の形態は、本発明の一例である。本発明の範囲は、本実施の形態の範囲に限定されない。
【0036】
本発明に係る実施形態は、顔面側面とマスク本体側面からなる基材シート30と、当該基材シート30の顔面側面に設けられた顔面側粘着層20と、当該顔面側粘着層20の顔面側に剥離可能に貼り合された顔面側剥離紙10と、当該基材シート30のマスク本体側面に設けられたマスク側粘着層40と、当該マスク側粘着層40のマスク本体側に剥離可能に貼り合されたマスク側剥離紙50とを有する、紐なしのマスク本体100を顔面に保持するための、マスク用粘着シート60であり、また、マスク本体100を有し、前記マスク用粘着シート60が前記マスク本体100に貼り付けられたマスクである。以下、特に限定する記載がなければ、マスクとは、マスク本体100にマスク用粘着シート60が貼り付けられた状態のものをいう。
【0037】
本実施形態に係るマスクは、マスク用粘着シート60がマスク本体100に貼り付けられてマスクとされ、当該マスクを顔面に貼り付けて(装着して)用いるものである。当該マスクを装着することにより、装着者の顔面のうち口部、鼻部及び/又は顎部がマスクにより覆われる。顔面側面とは、顔面に装着された状態のマスクのうちの基材シート30における、顔面と対向する面をいう。マスク本体側面とは、顔面に装着された状態のマスクのうちの基材シート30における、マスク本体100と対向する面をいう。以下、マスク側をM、顔面側をSと記載する場合がある。以下、マスク用粘着シート60を構成する部材を説明する。
【0038】
(基材シート)
基材シート30は、マスク用粘着シート60の基材として用いられるものである。基材シート30は、柔軟性を備えたものを用いるとよい。硬過ぎると、マスク用粘着シート60が貼着されたマスクが顔面の曲面に沿って変形し難く、剥がれ易くなる。基材シート30としては、例えばポリエチレン樹脂やポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、不織布を用いることができ、特に低密度ポリエチレンであれば、柔軟性に富むので好適である。
【0039】
基材シート30は、厚みが、10~50μm、好ましくは15~25μmであるとよい。当該厚みが10μm未満だと、マスクを顔面に装着しても、容易に剥がれてしまい、50μm超だと、マスク用粘着シート60が相対的に硬くなり顔面の曲面に沿った変形がし難くなるのでマスクが顔面から剥がれるおそれがあり、また、マスクを装着した装着者がごわつきを感じ易くなる。また、前記厚みであることで、粘着剤を塗工する時に発生するシワ入りや糊漏れを低減できる。
【0040】
基材シート30は、1層からなるものであってもよいし、複数層(例えば、2層~5層)からなるものであってもよい。基材シート30が複数層で形成されていると、シート方向に外力が加わったときに基材シートがズレてしまう場合やマスク用粘着シート全体としての厚みが大となってしまう場合等があるので、1層からなるものとするのが好ましい。
【0041】
(顔面側粘着層)
顔面側粘着層20は、顔面側面とマスク本体側面を有する基材シート30の顔面側面に設けられる、粘着性を有する層である。顔面側粘着層20は、当該顔面側面の全体又は一部を覆うものとすることができるが、当該顔面側面の全体を覆うものとすると、マスクが顔面から容易に剥がれにくくなるので好ましい。顔面側粘着層20は、基材シート側(すなわち、マスク本体側)の面と顔面側剥離紙側(すなわち、顔面側)の面を有する。顔面側粘着層20は、当該基材シート側の面が基材シート30に粘着されている。
【0042】
顔面側粘着層20は、粘着剤からなるものとすることができ、粘着剤としては、例えば、アクリル系樹脂を有する粘着剤を挙げることができる。好ましいアクリル系粘着剤としては、アクリル酸エステルと他の単量体とを共重合させたアクリル酸エステル共重合体を例示できる。アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸エチル、アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル等のアクリル酸アルキルエステル共重合体((メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体を含む)、アクリル酸ヒドロキシルエチル、アクリル酸プロピレングリコール、アクリルアミド、アクリル酸グリシジル等を挙げることができる。これらの粘着剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
特に顔面側粘着層20は、アクリル系粘着剤を主成分とすると適度な粘着力が備わり、好ましい。アクリル系粘着剤は、顔面側粘着層中に例えば、85~95質量%含まれるものとすることができ、好ましくは91~94質量%含まれるとよい。ここで、前記顔面側粘着層におけるアクリル系粘着剤の含有率は、アクリル系粘着剤と硬化剤を含む粘着塗液の絶乾重量を基に比率を計算したものである。
【0044】
顔面側粘着層20には、タッキファイヤー(粘着付与剤)を含めないものとするとよい。タッキファイヤーが含まれていると、マスクを顔面から取り外したときに粘着剤が肌に残る可能性があり、好ましくない。
【0045】
顔面側粘着層20には、硬化剤、成膜助剤、充てん剤、粘性調整剤、防腐剤、消泡剤、ぬれ性改善剤、各種溶剤を含むことができる。
【0046】
また、顔面側粘着層20は、前述のアクリル系粘着剤にさらに酢酸ビニルが混合された酢酸ビニル・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体を粘着剤として用いてもよい。このほか、粘着剤には、トルエンや酢酸エチルを含めることができる。市販品の粘着剤であれば、例えば日本カーバイド工業株式会社製の「ニッセツ PE-300」を好適に用いることができる。
【0047】
顔面側粘着層20は、アクリル系樹脂を有する粘着剤とイソシアネート基を有する硬化剤との生成物を含有してなるものとすることができる。イソシアネート基を有する硬化剤としては、ポリウレタンジイソシアネート、ヘキサンメチレンジイソシアネート、イソシアヌレート変性のイソホロンジイソシアネート等を例示できる。これらの硬化剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。アクリル系樹脂を有する粘着剤とイソシアネート基を有する硬化剤は、酢酸エチル溶液下で相溶性を有するので、好ましい。硬化剤としては、例えば日本カーバイド工業株式会社製の「ニッセツ CK-101」を好適に用いることができる。
【0048】
アクリル系樹脂を有する粘着剤とイソシアネート基を有する硬化剤との混合比が100:0.1~100:10となるものである。より好ましくは、100:1~100:4である。
【0049】
顔面側粘着層20の厚みは10~100μm、好ましくは15~80μm、より好ましくは20~60μmとすることができる。顔面側粘着層20の厚みが10μm未満だと、貼り付きが弱く、マスクを顔面に貼り付けても顔面の動きによっては、剥がれ落ちることがある。また、当該厚みが100μmを超えるとマスクにおけるマスク用粘着シート60を貼り付けた箇所の伸びが鈍化してしまい、顔面がごわつくように感じられ好ましくない。
【0050】
マスク用粘着シート60における顔面側粘着層20の引張強さは、例えば、1.0~40.0N/10mmとすることができる。好ましくは、15.0~35.0N/10mm、より好ましくは、27.0~33.0N/10mmであるとよい。
【0051】
顔面側粘着層20の引張強さは、JIS Z 0237:2009に準拠して測定したものである。具体的には、顔面側剥離紙10及びマスク側剥離紙50を剥がした状態のマスク用粘着シートであって、幅25mm、長さ150mmに裁断したものを作成した。重さ2kgの圧着ロールを用いて1往復させてベークライト面に、前記マスク用粘着シートのマスク側粘着層を貼付し、20分後に、オートグラフ(島津製作所製)を用いて剥離角度180度、剥離速度0.3m/minでベークライトから当該マスク用粘着シートを引き剥がすことで得られた測定値を引張強さとした。
【0052】
前記の形態からなる顔面側粘着層20を備えるマスク用粘着シート60を貼り付けたマスクは、装着者の顔面の形状や呼吸の頻度等にもよるが、通常の使用で、20~30回程度、顔面への貼り付け及び顔面からの引き剥がしを繰り返して行うことができる。
【0053】
(マスク側粘着層)
マスク側粘着層40は、基材シート30のマスク本体側面に設けられる、粘着性を有する層である。マスク側粘着層40は、当該マスク本体側面の全体又は一部を覆うものとすることができるが、当該マスク本体側面の全体を覆うものとすると、マスク用粘着シート60がマスク本体100からから容易に剥がれにくくなるので好ましい。マスク側粘着層40は、基材シート側の面とマスク側剥離紙側の面を有する。マスク側粘着層40は、当該基材シート側の面が基材シート30に粘着されている。
【0054】
マスク側粘着層40は、粘着剤からなるものとすることができ、粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤を挙げることができる。好ましいアクリル系粘着剤としては、アクリル酸エステルと他の単量体とを共重合させたアクリル酸エステル共重合体を例示できる。アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸エチル、アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル等のアクリル酸アルキルエステル共重合体((メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体を含む)、アクリル酸ヒドロキシルエチル、アクリル酸プロピレングリコール、アクリルアミド、アクリル酸グリシジル等を挙げることができる。これらの粘着剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
特にマスク側粘着層40は、アクリル系粘着剤を主成分とすると適度な粘着力が備わり、好ましい。アクリル系粘着剤は、マスク側粘着層中に例えば、68~80質量%、より好ましくは72~78質量%含まれるものとすることができる。ここで、前記マスク側粘着層におけるアクリル系粘着の含有率は、アクリル系粘着剤と硬化剤を含む粘着剤塗液の絶乾重量を基に比率を計算したものである。
【0056】
また、マスク側粘着層40は、前述のアクリル系粘着剤にさらに酢酸ビニルが混合された酢酸ビニル・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体を粘着剤として用いてもよい。このほか、粘着剤には、トルエンや酢酸エチルを含めることができる。
【0057】
マスク側粘着層40は、タッキファイヤー(粘着付与剤)が含有されているとよい。前記タッキファイヤーの含有量は、アクリル系粘着剤100質量%中、好ましくは1~30質量%、より好ましくは20~28質量%である。前記タッキファイヤーが含まれていると、マスク側粘着層40の厚みを厚くすることなく、接着強度を容易に調整することができ好ましい。
【0058】
タッキファイヤーは、公知のものを適宜用いることができ、例えば、テルペン系タッキファイヤー( ヤスハラケミカル社製、商品名:YSレジンPX-1150)、ロジン系タッキファイヤー(荒川化学社製、商品名:スーパーエステルE-650)又はスチレン系タッキファイヤー( 三井石油化学社製、商品名:FTR6100)を挙げることができる。特にロジン、テルペン系タッキファイヤーは、アクリル系樹脂と混合されることで粘着層に適度な粘着性、凝集性を付与することができ好ましく、ロジン系とテルペン系のタッキファイヤーを含むことで、より粘着性、凝集性を付与することができる。
【0059】
マスク側粘着層40は、さらに硬化剤、成膜助剤、充てん剤、粘性調整剤、防腐剤、消泡剤、ぬれ性改善剤、各種溶剤が含まれていてもよい。
【0060】
マスク側粘着層40には芳香成分を含有させることができる。用いる芳香成分の例としては、カモミール、ラベンダー、ミント、ローズ、ミカン、レモンを挙げることができる。芳香成分が含有されたマスク用粘着シートをマスク本体100に貼って、マスクを装着することで、装着者は、種々の芳香成分が発する香りを楽しむことができる。
【0061】
マスク側粘着層40は、引張強さが2.0~30.0N/10mm、かつ厚みが15~30μm、好ましくは引張強さが2.0~10.0N/10mm、かつ厚みが18~28μm、、より好ましくは引張強さが2.0~8.0N/10mm、かつ厚みが20~25μm、とすることができる。マスク側粘着層40の引張強さと厚みが前記の範囲未満だと、貼り付きが弱く、マスクを顔面に貼り付けても顔面の動きによっては、剥がれ落ちることがある。また、マスク側粘着層40の引張強さと厚みが前記の範囲を超えるとマスクにおけるマスク用粘着シート60を貼り付けた箇所の伸びが鈍化してしまい、顔面がごわつくように感じられ好ましくない。また、前記上限を超える場合、基材シートから粘着層のはみ出しが生じる可能性がある。
【0062】
ここで、マスク側粘着層40の引張強さが2.0~30.0N/10mmであっても、厚みが15~30μmの範囲でない場合は、マスクを顔面から外す際に外すときに加えた力が基材シート30に伝わり、基材シート30が破損してしまったり、基材シート30の厚みによっては、マスク装着時に顔面がごわつくように感じられたりするおそれがある。
【0063】
マスク側粘着層40の引張強さは、JIS Z 0237:2009に準拠して測定したものである。具体的には、顔面側剥離紙10及びマスク側剥離紙50を剥がした状態のマスク用粘着シートであって、幅10mm、長さ150mmに裁断したものを作成した。次にガラス面に両面テープでマスク本体を顔面側が外向きになるように貼り付け、前記マスク本体の顔面側の面に、マスク用粘着シートのマスク側粘着層を重さ2kgの圧着ロールを用いて1往復させて貼付し、20分後に、オートグラフ(島津製作所製)を用いて剥離角度180度、剥離速度0.3m/minでマスク本体から当該マスク用粘着シートを引き剥がすことで得られた測定値を引張強さとした。
【0064】
また、マスク側粘着層40の厚みが15~30μmであっても、引張強さが2.0~30.0N/10mmの範囲でない場合は、マスク本体100に貼り付けたマスク用粘着シート60が容易に剥がれたり、マスク側剥離紙50を手で剥がして露出されたマスク側粘着層40が、貼り付ける対象(すなわちマスク本体)以外のもの、例えば、装着者の手に不用意に貼り付いてしまい、マスク本体100に貼り付けることが困難となるおそれがある。
【0065】
マスクを顔面から取り外す場合には、マスク用粘着シート60がマスク本体100に貼り付いたまま、マスクを顔面から取り外せると便利である。マスク用粘着シート60がマスク本体100から剥がれてしまうと、マスク側粘着層40の粘着力が弱まってしまうおそれがある。この観点より、マスク側粘着層40の引張強さは、顔面側粘着層20の引張強さよりも大きいことが望ましい。
【0066】
マスク用粘着シート60は、マスク本体100への貼り付け及び引き剥がしを繰り返して行うことは可能であるが、粘着力の低下の観点から、一度マスク本体100へ貼り付けた後は別のマスク本体100への再度の貼り付けを行わないほうが好ましい。
【0067】
マスク側粘着層40は、粘着剤を基材シート30又はマスク側剥離紙50に塗布して形成することができ、顔面側粘着層20は、粘着剤を基材シート30又は顔面側剥離紙10に塗布して形成することができる。塗布する手法としては、例えば、リバースロールコーティング、ダイコーティング、ナイフコーティング、ドクターブレードコーティング、各種バーコーティング、ディップコーティング、グラビアロールコーティング、カレンダーコーティング、スキーズコーティング、キスコーティング、ファンテンコーティング、スプレーコーティング、フローコーティング、はけ塗り法等により行うことができる。
【0068】
(顔面側剥離紙)
顔面側剥離紙10は、顔面側粘着層20、特に顔面側粘着層20を形成する面のうちの基材シート30に対向する面と反対側の面に剥離可能に貼り合されている。マスク用粘着シート60から顔面側剥離紙10を剥がすと、顔面側粘着層20が露出するものとなっている。
【0069】
顔面側剥離紙20としては、例えば、プラスチックフィルムや多層フィルムに対して剥離性を付与する表面処理(剥離剤のコーティング等)を施したもの、ポリラミシート、ポリエステル樹脂シート、又はシリコーン系、直鎖アルキル系、フッ素系、フルオロシリコーン系等の剥離剤処理が施されたポリエステル樹脂シート、片面ポリラミ上質剥離紙(SLPL)を例示できる。顔面側剥離紙20の厚みは、適宜選択できるが、20~150μm、好ましくは75~125μmであるとよい。当該厚みが20μm未満だと、マスク用粘着シート60から顔面側剥離紙10を剥がすときに顔面側剥離紙10が破け易くなる。当該厚みが150μm超だと、顔面側剥離紙10が相対的に硬くなり剥がしがたい。
【0070】
(マスク側剥離紙)
マスク側剥離紙50は、マスク側粘着層40、特にマスク側粘着層40を形成する面のうちの基材シート30に対向する面と反対側の面に剥離可能に貼り合されている。マスク用粘着シート60からマスク側剥離紙50を剥がすと、マスク側粘着層40が露出するものなっている。
【0071】
(マスク用粘着シート)
マスク用粘着シート60は、マスク本体100を顔面に、貼り付けて保持するものである。すなわち、当該マスク用粘着シート60の介在によってマスク本体100が顔面に貼り付き、保持される。
【0072】
マスク用粘着シート60は、マスク本体100の四隅に貼り付けてもよいし、マスク本体100における長手方向の両端部に貼り付けてもよい。マスク用粘着シート60をマスク本体100の四隅に貼り付ける場合は、マスク本体100が長手方向と短手方向を有するときは、マスク本体100における長手方向の両端部で、かつ短手方向の両端部に、少なくとも貼り付けることができる。なお、この貼り付け手法を「四隅貼り」ともいう。マスク用粘着シート60をマスク本体100における長手方向の両端部に貼り付ける場合は、マスク用粘着シート60それぞれを、合計2箇所に貼り付けるとよい。なお、この貼り付け手法を「2箇所貼り」ともいう。例えば、マスク用粘着シート60は、マスク本体100における長手方向の両端部で、かつ短手方向の一端部から他端部まで延在させて貼り付けることができる。
【0073】
マスク本体100における長手方向の両端部とは、例えば、マスク本体100を長手方向に8等分した場合の、1等分目の領域と8等分目の領域ということができ、また、図5に示すように、マスク本体100の長手方向の両端縁から長手方向中央に向かって2cm幅Wの領域(図5で斜線で示された部分S1)ということもできるが、これらの領域に限定されるものではない。マスク本体100における短手方向の両端部とは、マスク本体100を短手方向に4等分した場合の、1等分目の領域と4等分目の領域ということができ、また、図5に示すように、マスク本体100の短手方向の両端縁から短手方向中央に向かって2cm幅Wの領域(図5で斜線で示された部分S2)ということもできるが、これらの領域に限定されるものではない。マスク本体100における短手方向の一端部とは、例えば、マスク本体100を短手方向に4等分した場合の、1等分目の領域又は4等分目の領域のうちのいずれか一方であり、他端部とは他方ということができる。また、マスク本体100における短手方向の一端部とは、短手方向の両端部のうちのいずれか一方であり、他端部とは短手方向の両端部のうちの他方ということができるが、これらの領域に限定されものではない。
【0074】
マスク本体100における長手方向の両端部に貼り付ける場合における、マスク用粘着シート60の形状は、マスク本体100の四隅に貼るタイプのマスク用粘着シートと、マスク本体100の長手方向の両端部に、短手方向に延在させて貼るタイプのマスク用粘着シートで異なる。
【0075】
マスク本体100の四隅に貼るタイプのマスク用粘着シートであれば、幅7~15mm、好ましくは幅9~12mm、長さ10~40mm、好ましくは長さ20~30mmの四角形状、直径15~20mmの円形のほか、これらの形状の面積と同程度の面積を有する幾何学的形状、例えば、楕円形状や小判形状、菱形状を例示できる。この場合、マスク用粘着シートは、4枚用い、マスク本体100の四隅のうちの各箇所に、1枚ずつ貼り付けるとよい。
【0076】
マスク本体100の四隅に貼るタイプのマスク用粘着シートである場合、マスク本体100の面積に占めるマスク用粘着シート1枚あたりの面積の百分率が、2~5%、好ましくは3~4%であるとよい。当該百分率が2%未満だと、マスク用粘着シート4枚あたりの粘着力が相対的に弱いおそれがある。当該百分率が5%超だと、貼り付き面積が相対的に広く、マスクを装着したときにごわつきを強く感じるおそれがある。
【0077】
マスク本体100の長手方向の両端部に、短手方向に延在させて貼るタイプのマスク用粘着シートであれば、幅7~15mm、好ましくは幅9~12mm、長さ50~100mm、好ましくは幅70~80mmの四角形状を例示できる。この場合、マスク用粘着シートは、2枚用い、マスク本体100における長手方向の一端部と他端部それぞれに、1枚ずつ貼り付けるとよい。
【0078】
マスク本体100の長手方向の両端部に、短手方向に延在させて貼るタイプのマスク用粘着シートである場合、マスク本体100の面積に占めるマスク用粘着シート1枚あたりの面積の百分率が、5~9%、好ましくは6~8%であるとよい。当該百分率が5%未満だと、マスク用粘着シート2枚あたりの粘着力が相対的に弱いおそれがある。当該百分率が8%超だと、貼り付き面積が相対的に広く、マスクを装着したときにごわつきを強く感じるおそれがある。
【0079】
マスク用粘着シート全体の厚みは、150~270mm、好ましくは150~240mm、より好ましくは180~240mmであるとよい。当該厚みが150mm未満だと、粘着層が相対的に薄く、引張強度が弱くなるので、マスク用粘着シートがマスク本体100又は顔面から剥がれやすい。当該厚みが270mm超だと、保管や運搬する上で嵩張る。なお、マスク用粘着シート全体とは、顔面側剥離紙10及びマスク側剥離紙50を剥がす前のマスク用粘着シート60をいう。
【0080】
(マスク本体)
マスク本体100は、装着者の顔面のうち口部、鼻部及び/又は顎部を覆うものであり、形状については、これまでに市販されているマスクのマスク本体部分の形状であってよく、例えば、未使用時において、略長方形(角丸長方形を含む。)からなる形状を挙げることができる。この場合、マスク本体100の長手方向が装着者における右頬から左頬(又は左頬から右頬)の向きになるように、及び、マスク本体100の短手方向が装着者における鼻から顎(又は顎から鼻)の向きになるように、装着者はマスクを装着することになる。
【0081】
マスク本体100の大きさは、特に限定されず、小児用であっても、大人用であってもよい。
【0082】
マスク本体100は、図1に示すように折り畳み皺(プリーツともいう)110を設けたものとすることができる。折りたたみ皺110は、マスク本体100の生地を短手方向に折り畳んで形成することができ、例えば、特開2020-158920号公報に開示される図3の形態を例示できる。折り畳み皺110を設けることで、装着者は、顔面の形態に適宜沿わせてマスク本体100の折り畳み皺110を伸ばしつつ、口部、鼻部及び/又は顎部を覆うように装着することができる。
【0083】
未使用のマスクは、マスク本体の折り畳み皴110が折り畳まれた状態となっており、前記マスク本体100の面積とは、マスク本体の折り畳み皴110が折り畳まれた状態における面積をいうものとする。
【0084】
マスク本体100は、1層構造であっても、多層構造であってもよく、例えば、次に示す3層構造とすることができる。3層構造のマスク本体100は、中間層と、装着時において当該中間層の顔面側に配される顔面側層と、当該中間層の顔面側とは反対側に配される外側層を有するものである。中間層は、フィルター機能を備えた、ポリプロピレンメルトブロー不織布、レーヨンスパンボンド不織布等からなるものとすることができる。顔面側層及び外側層は、良好な肌触りをもたらす、ポリプロピレンスパンボンド不織布、ポリエチレンスパンボンド不織布、ナイロンスパンボンド不織布等からなるものとすることができる。
【0085】
マスク本体100における短手方向の鼻側端部中央に、鼻部補強部材(又はワイヤーともいう)120を鼻側端縁に沿って設けることができる。鼻部補強部材120は、可撓性材料とすることができ、マスクを装着した装着者が自身の鼻部の形状に合わせて鼻部補強部材120を変形させることで、マスクにおける鼻側端部と顔面とで形成される隙間を小さくすることができる。鼻部補強部材120は、可塑性を有する任意の材料を用いることができ、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタラート等を例示することができる。鼻部補強部材120は、例えば、マスク本体100における鼻部補強部材120が備わる部分を、熱や超音波等を用いて融着させて筒部状に形成し、形成された筒部内に収納されて、マスク本体100に備わるものとすることができる。
【0086】
(製造方法)
マスク用粘着シートは、一例として、製造の流れ方向に長い基材シートの片面づつ又は両面同時にマスク側粘着層と顔面側粘着層を公知の塗工機よって設け、各層を設けた後に、各層に剥離紙を積層して菅芯に巻き、マスク用粘着シートのロールとし、当該ロール状のマスク用粘着シートを最終的に所望のサイズに裁断して得る。
【実施例0087】
(評価試験1)
マスク用粘着シートを製造し、製造したマスク用粘着シートに形成されたシワの程度(シワ入り評価)、及びマスク用粘着シートをマスク本体に貼り付けて得たマスクの装着感を評価する評価試験1を行った。マスク用粘着シートは試験例1~10の10種類製造した。
【0088】
基材シートの材料として、低密度ポリエチレン(LLDPE)、延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)、不織布、無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)を用いた。なお、不織布については目付けを測定した。
【0089】
試験例1~10の顔面側粘着層の組成物は、アクリル系粘着剤(日本カーバイド工業株式会社製品「ニッセツ PE-300」、タッキファイヤー含有なし)、硬化剤(日本カーバイド工業株式会社製品「ニッセツ CK-101」)を混合して得たものであり、乾燥後、顔面側粘着層となるものである。また、試験例1~10のマスク側粘着層の組成物は、アクリル系粘着剤(サイデン化学株式会社製品「サイビノール AT-264NT」、ロジン系+テルペン系タッキファイヤー含有量26%)、硬化剤(サイデン化学株式会社製品「サイビノール 硬化剤AL」)を混合して得たものであり、乾燥後、マスク側粘着層となるものである。評価試験1の結果を表1に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
<シワ入り評価>
ロール状に巻き取られたマスク用粘着シートに発生したシワの程度を目視により確認し、評価した。評価基準は以下の通りである。
〇:シワが確認されなかった。
△:管芯に巻き取って、マスク用粘着シートロールにしたときにシート表面及び/又は内部に巻き取ったときに形成されたシワが確認されたが実用上問題ない程度のものである。
【0092】
試験例1,9~10は、シワが確認されなかったため、好適に使用できるものである。試験例2~8は、マスク用粘着シートの総厚が270μmを超えており、実用上問題ない程度のシワが確認された。
【0093】
<マスク装着感>
試験例1~10について、マスク側剥離紙を剥離してマスク本体に貼り付け、次いで顔面側剥離紙を剥離して顔面に貼り付けて、装着感を評価した。評価基準は以下の通りである。
◎:マスク用粘着シートが柔らかく感じ、快適である。
○:マスク用粘着シートが気にならず、使用上問題ない。
△:マスク用粘着シートにシワが入っていたため、シワ部分の肌触りが気になる。
×:マスク用粘着シートにシワが多く入っていたため、マスクが顔面に保持されず剥がれて評価できない。
【0094】
(評価試験2)
前記のアクリル系粘着剤と硬化剤、具体的には日本カーバイド工業株式会社製品「ニッセツ PE-300、タッキファイヤー含有なし」と日本カーバイド工業株式会社製品「ニッセツ CK-101」の組み合わせ、又はサイデン化学株式会社製品「サイビノール AT-264NT、ロジン系+テルペン系タッキファイヤー含有量26%」、硬化剤サイデン化学株式会社製品「サイビノール 硬化剤AL」の組み合わせを混合してマスク側粘着層用の粘着剤を得た。この粘着剤を基材シートに設けてマスク用粘着シートを得た。基材シートの素材は低密度ポリエチレン(LLDPE)とした。マスク用粘着シートは、アクリル系粘着剤の種類、硬化剤の種類及び部数、マスク側粘着層の厚みを変えて製造した。なお、硬化剤の配合部数は、アクリル系粘着剤100質量部に対する質量部である。得られたマスク用粘着シートを試験例11~15とした。
【0095】
試験例11~15のそれぞれを、マスク本体1(大王製紙株式会社製品)又はマスク本体2(株式会社ユニーク製品)に貼り付け、マスクとした。
【0096】
得られたマスクからマスク用粘着シート(試験例11~15)を引き剥がす際の、マスク側粘着層の引張強さの評価、粘着層の評価、マスク本体への貼り付け性の評価を行った。
【0097】
【表2】
【0098】
<引張強さの評価>
マスク側粘着層の引張強さは、JIS Z 0237:2009に準拠して測定したものである。
【0099】
<粘着層の評価>
粘着層の評価は、マスク用粘着シートをマスク本体に貼り付けて得られたマスクを顔面に装着して5時間継続して使用して行った。評価基準は次のとおりである。
AF:5時間継続して使用後、顔面から外したマスクについて、マスク用粘着シートを引き剥がしたときにマスク本体のみが損傷したことを表す。
MF:5時間継続して使用後、顔面から外したマスクについて、マスク用粘着シートを引き剥がしたときにマスク本体とマスク用粘着シートがともに損傷したことを表す。
IF:5時間経たずに、マスク本体がマスク用粘着シートから≡がれたことを表す。
【0100】
<マスク本体への貼り付け性の評価>
マスク本体への貼り付け性の評価は、マスク用粘着シートをマスク本体に貼り付けて得られたマスクを顔面に装着して5時間使用して行った。評価基準は次のとおりである。
○:5時間継続して使用してもマスク本体がマスク用粘着シートから剥がれなかった。
×:1時間経過する前にマスク本体がマスク用粘着シートから剥がれた。
【0101】
<評価試験3>
前記のアクリル系粘着剤と硬化剤、具体的には日本カーバイド工業株式会社製品「ニッセツ PE-300、タッキファイヤー含有なし」と日本カーバイド工業株式会社製品「ニッセツ CK-101」を混合して顔面側粘着層用の粘着剤を得た。この粘着剤を基材シートに設けてマスク用粘着シートとした。基材シートの素材は低密度ポリエチレン(LLDPE)とした。マスク用粘着シートは、硬化剤の部数、顔面側粘着層の厚みを変えて製造した。なお、硬化剤の配合部数は、アクリル系粘着剤100質量部に対する質量部である。得られたマスク用粘着シートを試験例16~19とした。
【0102】
マスク用粘着シート(試験例16~19)について、顔面側粘着層の引張強さの評価、顔面への貼り付きの評価、繰り返し貼り付けの評価を行った。結果を表3に示す。
【0103】
【表3】
【0104】
<引張強さの評価>
顔面側粘着層の引張強さは、JIS Z 0237:2009に準拠して測定したものである。
【0105】
<顔面への貼り付きの評価>
試験例16~19のそれぞれを、マスク本体1(大王製紙株式会社製品)に貼り付け、マスクとした。前記マスクを顔面に貼り付け、貼り付き具合の評価を行った。
○:1時間以上、マスクが顔面に貼り付いたまま保持された。
×:1時間経たずにマスクが顔面から剥がれた。
【0106】
<繰り返し貼り付けの評価>
試験例16~19のそれぞれを、マスク本体1(大王製紙株式会社製品)に貼り付け、マスクとした。前記マスクを顔面に貼り付けて1時間使用した後、剥がすという操作を行った。この操作を繰り返して貼り付けの評価を行った。
○:当該操作を10回繰り返しても、1時間以上顔面にマスクがずれることなく貼り付いた状態が保持された。
△:当該操作を10回繰り返して、マスクが当初の貼り付け位置からずれることが1度以上あった。
【0107】
試験例17~19について、当該操作を5~6回繰り返し行った段階で顔面に貼り付けたマスクが当初の貼り付け位置からずれるようになった。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、マスク用粘着シート及びマスクとして利用可能である。
図1
図2
図3
図4
図5