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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138967
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】回路遮断器
(51)【国際特許分類】
   H01H 9/32 20060101AFI20220915BHJP
   H01H 73/18 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
H01H9/32
H01H73/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021039151
(22)【出願日】2021-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田畑 裕
(72)【発明者】
【氏名】長嶺 一輝
【テーマコード(参考)】
5G030
【Fターム(参考)】
5G030DC04
5G030DE00
(57)【要約】
【課題】一層確実にアークを消弧させることのできる回路遮断器を提供する。
【解決手段】回路遮断器10は、開極動作時に、可動子20に連動し、先端部が互いに接近する一対の棒状部材34と、一対の棒状部材34に設けられた一対の樹脂板36と棒状部材34の上端同士を連結し、開極動作時に可動子20の第1押圧部20aによって押圧される板ばね42と、板ばね42を上向かって凸の第1弾性変形状態および下に向かって凸の第2弾性変形状態のいずれかに保持する軸40とを有する。開極動作時に、一対の樹脂板36は固定接点14と可動接点18との間に移動し対向縁同士36aが当接する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定接点を備えた固定子と、
前記固定子に対して開閉動作を行い前記固定接点に対して可動接点を接離させる可動子と、
前記可動子が前記可動接点を前記固定接点から離間させる開極動作時に、先端部が前記固定接点及び可動接点からなる接点部側に移動する連動部材と、
前記連動部材に設けられた樹脂板と、
を有し、
前記開極動作時に、前記樹脂板が前記固定接点と前記可動接点との間に移動することを特徴とする回路遮断器。
【請求項2】
前記連動部材は、先端部が互いに近接する一対の連動部材からなり、前記樹脂板は、一対の前記連動部材に設けられた一対の樹脂板からなることを特徴とする請求項1に記載の回路遮断器。
【請求項3】
一対の前記連動部材は棒状部材であって、
一対の前記棒状部材の一部同士を連結し、前記開極動作時に前記可動子の第1押圧部によって押圧される板ばねと、
前記板ばねを前記固定接点の側に向かって凸の第1弾性変形状態およびその反対側に向かって凸の第2弾性変形状態のいずれかに保持する保持部と、
を有し、
前記開極動作時に、前記可動子の前記第1押圧部が前記板ばねを押圧して前記第1弾性変形状態から前記第2弾性変形状態に反転させることにより、一対の前記棒状部材が傾動して一対の前記樹脂板が前記固定接点と前記可動接点との間に移動することを特徴とする請求項2に記載の回路遮断器。
【請求項4】
前記樹脂板および前記連動部材の少なくとも一方に固定された一対の摺動板を有し、
一対の前記摺動板は、対向する一対の摺動傾斜縁を有し、前記可動接点が前記固定接点から離間している開極時に前記可動接点の側に向かって広がる形状で、前記可動子が前記可動接点を前記固定接点に接触させる閉極動作時に前記可動子の第2押圧部が入り込む可動子進入溝を形成し、
前記閉極動作時に、前記可動子の前記第2押圧部が前記可動子進入溝に入り込み、前記第2押圧部の両側部が一対の前記摺動傾斜縁に対して接触して摺動し、一対の前記摺動板を押し広げることにより前記棒状部材が傾動して前記板ばねを前記第2弾性変形状態から前記第1弾性変形状態に反転させることを特徴とする請求項3に記載の回路遮断器。
【請求項5】
前記保持部は、前記板ばねと前記棒状部材との接続部に設けられた一対の軸であり、前記棒状部材は前記軸を中心として傾動することを特徴とする請求項3または4に記載の回路遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回路遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
回路遮断器は過負荷や短絡などによって異常な大電流が流れたときに電路を開極する。開極は固定接点に対して可動接点を離間させることによって行われるが、大電流遮断の開極時には固定接点と可動接点との間に発生するアークを速やかに消弧させることが必要とされている。アークは回路遮断器の熱的および電磁的な負担となるためである。
【0003】
可動子は、大電流による開極時に所定のストッパ壁などに衝突するが、衝突後に跳ね返るバウンス動作が生じ、可動子が再び固定子へ接近して遮断性能が悪化するという問題がある。これに対して、特許文献1に記載の遮断器では、可動子を摺動面に摺動させて速度を低下させてバウンシングを防止している。しかしこのような構成では、電極開閉距離が筐体の容量と比例し高遮断容量に伴い装置が大型化する。また、可動子の速度を低下させるためにはブレーキのように摺動摩擦を生じさせるため摩耗が生じ得る。
【0004】
一方、アークを消弧させるために特許文献2に記載の回路遮断器では、本体内の消弧室に所定の樹脂材が配置されおり、該樹脂材がアークによって蒸発することにより高分子ガスがアークへ混入し、それらの乖離エネルギーによってアークのエネルギーを散逸させ、遮断筒内空間を冷却させてアークを消弧させやすくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-9161号公報
【特許文献2】特開2012-216494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の回路遮断器では構造上の理由から、蒸発させる樹脂材はアークからはある程度離間させざるを得ず間接的な加熱となり、蒸発した高分子ガスをアークの中心部にまで混入させることは難しいため、一層確実なアーク消弧手段の開発が望まれている。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、一層確実にアークを消弧させることのできる回路遮断器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる回路遮断器は、固定接点を備えた固定子と、前記固定子に対して開閉動作を行い前記固定接点に対して可動接点を接離させる可動子と、前記可動子が前記可動接点を前記固定接点から離間させる開極動作時に、先端部が前記固定接点及び可動接点からなる接点部側に移動する連動部材と、前記連動部材に設けられた樹脂板と、を有し、前記開極動作時に、前記樹脂板が前記固定接点と前記可動接点との間に移動することを特徴とする。これにより、アークを一層確実に消弧させることができる。
【0009】
連動部材は、先端部が互いに近接する一対の連動部材からなり、前記樹脂板は、一対の前記連動部材に設けられた一対の樹脂板から構成してもよい。
【0010】
一対の前記連動部材は棒状部材であって、一対の前記棒状部材の一部同士を連結し、前記開極動作時に前記可動子の第1押圧部によって押圧される板ばねと、前記板ばねを前記固定接点の側に向かって凸の第1弾性変形状態およびその反対側に向かって凸の第2弾性変形状態のいずれかに保持する保持部と、を有し、前記開極動作時に、前記可動子の前記第1押圧部が前記板ばねを押圧して前記第1弾性変形状態から前記第2弾性変形状態に反転させることにより、一対の前記棒状部材が傾動して一対の前記樹脂板が前記固定接点と前記可動接点との間を仕切ってもよい。このような板ばねによれば、開極動作時に可動子は板ばねによってエネルギーが吸収されて速度が低下し、衝突により第2弾性変形状態の板ばねから跳ね返るバウンシング動作がほとんど生じない。
【0011】
前記樹脂板および前記連動部材の少なくとも一方に固定された一対の摺動板を有し、一対の前記摺動板は、対向する一対の摺動傾斜縁を有し、前記可動接点が前記固定接点から離間している開極時に前記可動接点の側に向かって広がる形状で、前記可動子が前記可動接点を前記固定接点に接触させる閉極動作時に前記可動子の第2押圧部が入り込む可動子進入溝を形成し、前記閉極動作時に、前記可動子の前記第2押圧部が前記可動子進入溝に入り込み、前記第2押圧部の両側部が一対の前記摺動傾斜縁に対して接触して摺動し、一対の前記摺動板を押し広げることにより前記棒状部材が傾動して前記板ばねを前記第2弾性変形状態から前記第1弾性変形状態に反転させてもよい。このような摺動板を設けることにより、閉極動作時に板ばねを第1弾性変形状態に戻すことができる。
【0012】
前記保持部は、前記板ばねと前記棒状部材との接続部に設けられた一対の軸であり、前記棒状部材は前記軸を中心として傾動する構成でもよい。このような軸は、板ばねを第1弾性変形状態または第2弾性変形状態に保持するとともに連結部材をスムーズに回転させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかる回路遮断器では、開極動作時に一対の樹脂板が接近し、固定接点と可動接点との間に移動することから、アークを遮り該アークによって直接的に加熱される。これにより多量の高分子ガスが効率的に発生し、しかもアークの中心部に混入されることからアークを一層確実に消弧させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の実施形態である回路遮断器の模式断面図である。
図2図2は、アーク暴露機構の斜視図である。
図3図3は、閉極時における回路遮断器の一部断面斜視図である。
図4図4は、開極時における回路遮断器の一部断面斜視図である。
図5図5は、固定子、可動子およびアーク暴露機構の模式図であり、(a)は閉極時を示す図であり、(b)は開極動作の初期状態を示す図であり、(c)は開極動作の中期状態を示す図であり、(d)は開極動作の終期状態を示す図である。
図6図6は、固定子、可動子およびアーク暴露機構の模式図であり、(a)は開極時を示す図であり、(b)は閉極動作の初期状態を示す図であり、(c)は閉極動作の中期状態を示す図であり、(d)は閉極動作の終期状態を示す図である。
図7図7は、変形例にかかるアーク暴露機構の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明にかかる回路遮断器の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0016】
図1は、本発明の実施形態である回路遮断器10の模式断面図である。回路遮断器10は、配線用遮断器および漏電遮断器などであり、大電流が流れることを検知して自動的に遮断する。回路遮断器10は電源側端子と負荷側端子との間を接続および遮断する。
【0017】
回路遮断器10は本体12内に、固定接点14を備えた固定子16と、固定子16に対して相対的に動作を行い固定接点14に対して可動接点18を接離させる可動子20とを備えている。なお本願では、可動接点18が固定接点14から離間している静的な定常状態を「開極時」と呼び、可動接点18が固定接点14から離間する動的な移行状態を「開極動作時」と呼ぶ。同様に、可動接点18が固定接点14に接している静的な定常状態を「閉極時」と呼び、可動接点18が固定接点14に接触する動的な移行状態を「閉極動作時」と呼ぶ。
【0018】
可動子20は回動軸21を中心として回動する。可動子20が、倒れこんだときに固定接点14と可動接点18とが接触して閉極し、起き上がったときに固定接点14と可動接点18とが離間して開極する。
【0019】
可動子20が動作する消弧室22には複数のグリッド24が設けられている。固定接点14と可動接点18との間に発生したアークは磁束によって駆動されてグリッド24によって分断され消弧する。図1における符号26は操作ハンドルであり、符号28は開閉機構であり、符号30は引き外し装置である。回路遮断器10はグリッド24に加えて、アークを一層確実に消弧させるためのアーク暴露機構32を有している。
【0020】
図2は、アーク暴露機構32の斜視図である。図3は、開極時における回路遮断器10の一部断面斜視図である。図4は、閉極時における回路遮断器10の一部断面斜視図である。
【0021】
アーク暴露機構32は消弧室22に設けられ、一対の棒状部材(連動部材)34,34と、一対の樹脂板36,36と、一対の摺動板38,38と、一対の軸(保持部)40,40と、板ばね42とを有する。
【0022】
板ばね42は細長い形状であり、両端近傍には下向きに棒状部材34が取り付けられている。軸40は板ばね42と棒状部材34との接続部に設けられているが、設計条件により多少ずれた位置に設けてもよい。軸40は棒状部材34の延在方向に対して直交する向きになっている。板バネ42は、開極時に可動子20が衝突する位置に設けられている。一対の棒状部材34は、開極時に可動接点18の動作経路Cに略沿って下向きに延在し、閉極時には先端部が相互に離間するように下向きに開くように延在する。
【0023】
軸40は本体12に固定されているが、図3図4では図面の簡略化のため軸40を省略している。一対の軸40は平行であり、板ばね42が凸状に弾性変形する間隔に設定されている。軸40は板ばね42と棒状部材34との接続部を回転可能に軸支するとともに、動作経路Cに沿った方向(図3図4の上下方向)およびその直交方向(図3図4の左右方向)に移動しないように保持する。
【0024】
具体的には、一対の軸40は、板ばね42を固定接点14の側(図2の下向き)に向かって凸の第1弾性変形状態(図2において実線で示す状態)、およびその反対側(図2の上向き)に向かって凸の第2弾性変形状態(図2において仮想線で示す状態)のいずれかに保持する保持部となっている。板ばね42は、端部が軸40の軸支作用によって回動しやすくなっており、第1弾性変形状態と第2弾性変形状態とに反転しやすい。また、軸40では棒状部材34の端部と接続されており、該棒状部材34をスムーズに傾動させることができる。
【0025】
図3に示すように、板ばね42は、限流遮断などの開極動作時に可動子20の第1押圧部20aによって押圧されることにより、第1弾性変形状態から第2弾性変形状態に反転する。一対の樹脂板36は矩形であって、それぞれ棒状部材34の下端部で内向きに対向するように設けられている。樹脂板36の成分は蒸発(熱分解などを含む)することによりアークを消弧する高分子ガスを生成する。樹脂板36は棒状部材34に対して直交する向きに固定されている。一対の棒状部材34は、上端が板ばね42の両端近傍に設けられていることから板ばね42の状態によって傾動する。
【0026】
板ばね42が上向きに凸の第2弾性変形状態では、一対の棒状部材34は略平行となって下端同士が接近する。これにより一対の樹脂板36は対向縁36a同士が隙間なく当接して固定接点14と可動接点18との間に移動する。このとき当接し合った一対の樹脂板36は、可動接点18の動作経路Cを中心とし、該動作経路Cに対して略直交する同一面を形成する。
【0027】
図4に示すように、板ばね42が下向きに凸の第1弾性変形状態では、一対の棒状部材34は、下向きに開いて下端同士が離間する向きとなる。このとき、一対の樹脂板36は、可動子20が配置可能または通過可能な程度に離間している。
【0028】
図2に戻り、摺動板38は棒状部材34の下端部と樹脂板36の上面とに亘って固定されている。一対の摺動板38は対向する一対の摺動傾斜縁38aを有している。摺動板38は直角部38bを有する台形であって、該直角部38bが棒状部材34と樹脂板36との直角接続部に沿って確実に固定されている。ただし強度条件などによっては、摺動板38は樹脂板36および棒状部材34いずれか一方に固定されていてもよい。一対の摺動板38は樹脂板36に直交する向きで、それぞれ棒状部材34の下端部で内向きに対向するように設けられている。
【0029】
一対の摺動傾斜縁38aは、閉極時(図3参照)に可動子20の第2押圧部20bが入り込むV字形状の可動子進入溝44を形成する。摺動傾斜縁38aは、過度な摺動摩擦を生じさせることがない適度に滑らかな面である。
【0030】
次に、このように構成される回路遮断器10の動作について説明する。図5は、固定子16、可動子20およびアーク暴露機構32の模式図であり、(a)は閉極時を示す図であり、(b)は開極動作の初期状態を示す図であり、(c)は開極動作の中期状態を示す図であり、(d)は開極動作の終期状態を示す図である。
【0031】
図5(a)に示すように、回路遮断器10の閉極時には可動子20が略横倒し姿勢となり固定接点14と可動接点18とが接触し導通状態となっている。このとき、アーク暴露機構32の板ばね42は下向きに凸の第1弾性変形状態となっており、一対の棒状部材34は下向きに開いて下端部同士が離間している。そして、棒状部材34の下端に設けられた樹脂板36同士は離間しており、この間に可動子20が位置している。
【0032】
この導通状態において、過負荷や短絡などによって異常な大電流が流れたときには、図5(b)の矢印で示すように電磁反発力により可動子20が上方へと変位し始めて可動接点18は固定接点14から離間する。そして可動接点18と固定接点14との間にはアークAが発生し始める。
【0033】
図5(c)に示すように、可動子20がさらに上昇すると可動接点18は固定接点14から離間してアークAが伸びる。この時点ではアークAは固定接点14の動作経路Cに沿って伸びている。また、可動子20が上昇すると、上昇側の縁である第1押圧部20aが板ばね42の下面に当接し、該板ばね42を強く押圧する。
【0034】
そうすると、板ばね42は、第1弾性変形状態から第2弾性変形状態(図5(c)の破線で示す状態)に反転する。そして、一対の棒状部材34は可動子20の上昇に合わせて板ばね42を介して連動して軸40を中心として傾動し、先端部が互いに接近し始める。棒状部材34の先端部同士が接近することにより、矢印で示すように一対の樹脂板36も互いに接近し始める。可動子20は相当に速く上昇するが、第1押圧部20aが板ばね42にと当接して第1弾性変形状態から第2弾性変形状態に反転させる際にエネルギーが適度に吸収される。
【0035】
図5(d)に示すように、可動子20が十分に上昇すると板ばね42が第2弾性変形状態となり、可動子20は停止する。このとき、可動子20は板ばね42によってエネルギーが吸収されていることから速度が低下しており、衝突により板ばね42から跳ね返るバウンシング動作がほとんど生じない。したがって、可動接点18が固定接点14へ再び接近する運動が生じなく、遮断性能の低下を防止することができる。また、電極開閉距離に関係なく可動子の速度を低下させるため、装置が大型化することない。さらに、板ばね42の弾性変形を用いて可動子20のエネルギーを吸収するため、ブレーキのように摺動摩擦による減速手段とは異なり摩耗が生じない。
【0036】
また、図5(d)の状態では一対の棒状部材34が略平行となり、一対の樹脂板36は固定接点14と可動接点18との間に移動し、対向縁36a同士が隙間なく当接する。これにより、アークAを物理的に遮る消弧作用が得られる。
【0037】
さらに、アークAを仕切る一対の樹脂板36は、動作経路Cを中心とし、該動作経路Cに対して略直交していることから、アークAによって直接的に加熱されて樹脂板36が効率的に蒸発し多量の高分子ガスがアークAの中心部に混入しアーク電圧が上昇しやすくなる。したがって、高分子ガスが乖離することによりアークエネルギーが散逸し、空間の導電率が低下し、空間内の迅速な冷却が行われ、アークAを化学的作用によって一層確実に消弧することができる。このようにして、回路遮断器10ではアークAが消弧して図5(d)に示す開極状態となる。
【0038】
なお、一対の樹脂板36は対向縁36a同士が隙間なく当接して固定接点14と可動接点18との間を完全に仕切って遮蔽することにより良好な消弧性能が得られるが、設計条件によっては、一対の樹脂板36が固定接点14と可動接点18との間に移動してアークAよって直接的に暴露されれば仮に両者間に僅かに隙間があっても相応の消弧性能が得られる。
【0039】
図6は、固定子16、可動子20およびアーク暴露機構32の模式図であり、(a)は開極時を示す図であり、(b)は閉極動作の初期状態を示す図であり、(c)は閉極動作の中期状態を示す図であり、(d)は閉極動作の終期状態を示す図である。
【0040】
図6(a)に示すように、回路遮断器10の開極時には可動子20が跳ね上がった姿勢となり固定接点14と可動接点18とは離間し非導通状態となっている。このとき、アーク暴露機構32の板ばね42は上向きに凸の第2弾性変形状態となっており、一対の棒状部材34は平行であり樹脂板36同士が接触している。また、一対の摺動板38の各摺動傾斜縁38aは、V字形状の可動子進入溝44を形成している。可動子進入溝44は、可動子20に第1押圧部20aとは反対側、つまり下降側の縁である第2押圧部20bの下方に位置している。可動子進入溝44の上端は可動子20が進入可能な幅を有している。
【0041】
所定の投入動作が行われて閉極動作を開始すると、図6(b)の矢印で示すように可動子20は下降し始め摺動板38に接近する。そして、図6(c)に示すように、可動子20は可動子進入溝44に入り込み、第2押圧部20bの両側部が一対の摺動傾斜縁38aに対して接触して摺動し、矢印で示すように一対の摺動板38を押し広げる。これにより、図6(d)に示すように各棒状部材34が傾動して板ばね42を上に第2弾性変形状態から第1弾性変形状態へと反転させる。可動子20はさらに下降して可動接点18が固定接点14に接触し閉極状態(図5(a)参照)となる。
【0042】
上記のように、本実施の形態にかかる回路遮断器10では、開極動作時に一対の樹脂板36は固定接点14と可動接点18との間に移動して対向縁同士36aが当接することから、アークAを遮り、該アークAによって直接的に加熱される。これにより多量の高分子ガスが効率的に発生し、しかもアークAの中心部に混入されてアークAを一層確実に消弧させることができる。
【0043】
上記の例では、軸40によって板ばね42を第1弾性変形状態または第2弾性変形状態となるように保持しているが、このような保持手段は軸40に限られない。例えば、図7に示す変形例にかかるアーク暴露機構32Aのように、板ばね42の両端部を挟持片(保持部)46で挟持してもよい。板ばね42が挟持片46から抜けないようになっていれば、両者の間には多少の遊びがあってもよい。挟持片46は簡易構造であり、組み立てが容易である。
【0044】
上記の例の板ばね42は、可動子20のバウンシングを防止する作用と、可動子20の動作を棒状部材34に伝達させる連結部材の一部としての作用がある。このうち、設計条件によりバウンシング防止作用が特に必要でない場合には、板ばね42に代えて何らかの連結部材(例えばリンク機構など)を用いてもよい。
【0045】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0046】
10 回路遮断器
14 固定接点
16 固定子
18 可動接点
20 可動子
20a 第1押圧部
20b 第2押圧部
32,32A アーク暴露機構
34 棒状部材
36 樹脂板
36a 対向縁
38 摺動板
38a 摺動傾斜縁
40 軸(保持部)
42 板ばね
44 可動子進入溝
46 挟持片(保持部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7