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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138977
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】塩化ビニル系樹脂組成物及び継手
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/06 20060101AFI20220915BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20220915BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
C08L27/06
C08L33/04
C08K3/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021039169
(22)【出願日】2021-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八谷 涼太郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 裕信
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB023
4J002BB113
4J002BD041
4J002BD051
4J002BD061
4J002BD071
4J002BD081
4J002BD091
4J002BD101
4J002BD131
4J002BG032
4J002DE236
4J002EH048
4J002EH058
4J002EZ047
4J002EZ067
4J002FD016
4J002FD037
4J002FD173
4J002FD178
4J002GL00
(57)【要約】
【課題】成形時の流動性を高めることができ、かつ、得られる成形体の外観を良好にすることができる塩化ビニル系樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明に係る塩化ビニル系樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂と、重量平均分子量が10万以上50万以下であるアクリル系樹脂と炭酸カルシウムとを含み、前記塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、前記アクリル系樹脂の含有量が0.5重量部以上6重量部以下であり、かつ、前記炭酸カルシウムの含有量が0.5重量部以上15重量部以下であり、塩化ビニル系樹脂組成物が、前記炭酸カルシウムの二次粒子を含み、前記炭酸カルシウムの二次粒子の平均粒子径が0.1μm以上15μm以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル系樹脂と、重量平均分子量が10万以上50万以下であるアクリル系樹脂と、炭酸カルシウムとを含み、
前記塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、前記アクリル系樹脂の含有量が0.5重量部以上6重量部以下であり、かつ、前記炭酸カルシウムの含有量が0.5重量部以上15重量部以下であり、
塩化ビニル系樹脂組成物が、前記炭酸カルシウムの二次粒子を含み、
前記炭酸カルシウムの二次粒子の平均粒子径が0.1μm以上15μm以下である、塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項2】
ポリエチレン系滑剤を含まないか、又は、前記塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、ポリエチレン系滑剤を2重量部以下の含有量で含む、請求項1に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項3】
ポリエチレン系滑剤を含み、
前記ポリエチレン系滑剤の酸価が10以上30以下である、請求項1又は2に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項4】
射出成形用塩化ビニル系樹脂組成物である、請求項1~3のいずれか1項に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の塩化ビニル系樹脂組成物を成形することにより得られる、継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化ビニル系樹脂を含む塩化ビニル系樹脂組成物及び上記塩化ビニル系樹脂組成物を用いた継手に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル系樹脂は、機械的強度、耐候性、耐熱性及び耐薬品性に優れている。このため、上記塩化ビニル系樹脂は、継手、パイプ、板及び容器等の各種の成形体に加工されており、多くの分野で使用されている。
【0003】
塩化ビニル系樹脂組成物及び塩化ビニル系樹脂成形体の製造時に、成形性を高めるために、安定剤及び滑剤等の添加物が用いられることがある。しかしながら、安定剤及び滑剤は比較的高価であり、製造コストが増大するという課題がある。そこで、塩化ビニル系樹脂組成物及び塩化ビニル系樹脂成形体の製造コストを低減するために、安価な炭酸カルシウムが充填材として用いられることがある。
【0004】
以下の特許文献1には、塩化ビニル系樹脂と、立方形炭酸カルシウムとを含有する塩化ビニル系樹脂組成物が開示されている。上記塩化ビニル系樹脂組成物は、可塑剤を含むことが好ましい。
【0005】
以下の特許文献2には、平均重合度500~1500のポリ塩化ビニル系樹脂100質量部と、炭酸カルシウム10質量部~40質量部とを含む硬質ポリ塩化ビニル系成形品が開示されている。上記炭酸カルシウムについては、平均一次粒子径が0.01μm~0.3μmであり、粒子数の変動係数が15%以下である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-167486号公報
【特許文献2】特開2019-038996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1,2では、塩化ビニル系樹脂組成物に炭酸カルシウムを添加することにより、製造コストをある程度低減することができる。
【0008】
しかしながら、炭酸カルシウムと塩化ビニル系樹脂との相溶性が悪いため、塩化ビニル系樹脂との混合により粉砕された炭酸カルシウム粒子が、塩化ビニル系樹脂組成物中に均一に分散しにくく、組成物中で又は成形時に凝集して二次粒子となるという課題がある。塩化ビニル系樹脂成形体中に炭酸カルシウムの二次粒子があると、成形体の表面にむらが生じたり、光沢がなくなったりする等、外観が悪化することがある。また、この課題は、混錬能力が押出成形よりも低い射出成形において、より顕著である。
【0009】
さらに、特許文献1に記載の塩化ビニル系樹脂組成物では、可塑剤により、塩化ビニル系樹脂の耐熱性及び耐衝撃性が低下するという課題がある。また、炭酸カルシウムにより、塩化ビニル系樹脂組成物の成形時の流動性が低下し、金型内に該樹脂組成物を十分に充填することができないことがある。
【0010】
また、特許文献2で用いられている炭酸カルシウムでは、一次粒子径が小さすぎるため、炭酸カルシウムがより一層凝集しやすく、炭酸カルシウムの二次粒子がより一層形成されやすい。結果として、得られる塩化ビニル系樹脂成形体の外観がさらに悪化するという課題がある。
【0011】
本発明の目的は、成形時の流動性を高めることができ、かつ、得られる成形体の外観を良好にすることができる塩化ビニル系樹脂組成物を提供することである。また、本発明の目的は、上記塩化ビニル系樹脂組成物を用いた継手を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の広い局面によれば、塩化ビニル系樹脂と、重量平均分子量が10万以上50万以下であるアクリル系樹脂と、炭酸カルシウムとを含み、前記塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、前記アクリル系樹脂の含有量が0.5重量部以上6重量部以下であり、かつ、前記炭酸カルシウムの含有量が0.5重量部以上15重量部以下であり、塩化ビニル系樹脂組成物が、前記炭酸カルシウムの二次粒子を含み、前記炭酸カルシウムの二次粒子の平均粒子径が0.1μm以上15μm以下である、塩化ビニル系樹脂組成物が提供される。
【0013】
本発明に係る塩化ビニル系樹脂組成物のある特定の局面では、前記塩化ビニル系樹脂組成物が、ポリエチレン系滑剤を含まないか、又は、前記塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、ポリエチレン系滑剤を2重量部以下の含有量で含む。
【0014】
本発明に係る塩化ビニル系樹脂組成物のある特定の局面では、前記塩化ビニル系樹脂組成物が、ポリエチレン系滑剤を含み、前記ポリエチレン系滑剤の酸価が10以上30以下である。
【0015】
本発明に係る塩化ビニル系樹脂組成物のある特定の局面では、前記塩化ビニル系樹脂組成物は、射出成形用塩化ビニル系樹脂組成物である。
【0016】
本発明の広い局面によれば、上述した塩化ビニル系樹脂組成物を成形することにより得られる、継手が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る塩化ビニル系樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂と、重量平均分子量が10万以上50万以下であるアクリル系樹脂と、炭酸カルシウムとを含む。本発明に係る塩化ビニル系樹脂組成物では、上記塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、上記アクリル系樹脂の含有量が0.5重量部以上6重量部以下であり、かつ、上記炭酸カルシウムの含有量が0.5重量部以上15重量部以下である。本発明に係る塩化ビニル系樹脂組成物は、上記炭酸カルシウムの二次粒子を含み、上記炭酸カルシウムの二次粒子の平均粒子径が0.1μm以上15μm以下である。本発明に係る塩化ビニル系樹脂組成物では、上記の構成が備えられているので、成形時の流動性を高めることができ、かつ、得られる成形体の外観を良好にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
(塩化ビニル系樹脂組成物)
本発明に係る塩化ビニル系樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂と、重量平均分子量が10万以上50万以下であるアクリル系樹脂と、炭酸カルシウムとを含む。上記塩化ビニル系樹脂組成物では、上記塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、上記アクリル系樹脂の含有量が0.5重量部以上6重量部以下であり、かつ、上記炭酸カルシウムの含有量が0.5重量部以上15重量部以下である。本発明に係る塩化ビニル系樹脂組成物は、上記炭酸カルシウムの二次粒子を含み、上記炭酸カルシウムの二次粒子の平均粒子径が0.1μm以上15μm以下である。
【0020】
本発明に係る塩化ビニル系樹脂組成物では、上記の構成が備えられているので、成形時の流動性を高めることができる。結果として、成形時に金型内に塩化ビニル系樹脂組成物を十分に充填することができる。さらに、得られる成形体の外観を良好にすることができる。また、本発明に係る塩化ビニル系樹脂組成物では、炭酸カルシウムが特定の含有量で含まれているので、製造コストを低減することができる。
【0021】
上記塩化ビニル系樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂成形体を得るために好適に用いられる。上記塩化ビニル系樹脂組成物は、射出型塩化ビニル系樹脂成形体を得るために好適に用いられる。上記塩化ビニル系樹脂組成物は、射出成形されることが好ましい。上記塩化ビニル系樹脂組成物は、射出成形用塩化ビニル系樹脂組成物であることが好ましい。
【0022】
本明細書中において、上記塩化ビニル系樹脂組成物の材料における凝集していない1個の炭酸カルシウムを、炭酸カルシウムの一次粒子とする。上記炭酸カルシウムの一次粒子が破砕された破砕物を、炭酸カルシウムの破砕粒子とする。上記炭酸カルシウムの一次粒子又は破砕粒子が2個以上凝集した凝集物を、炭酸カルシウムの二次粒子とする。
【0023】
以下、上記塩化ビニル系樹脂組成物に含まれる各成分等について説明する。
【0024】
なお、本明細書中において、「(メタ)アクリル」は「アクリル」と「メタクリル」との一方又は双方を意味し、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」と「メタクリレート」との一方又は双方を意味する。
【0025】
<塩化ビニル系樹脂>
上記塩化ビニル系樹脂は、塩素原子を有する。上記塩化ビニル系樹脂は、塩素化塩化ビニル系樹脂であってもよく、塩素化されていない塩化ビニル系樹脂であってもよく、塩素化塩化ビニル系樹脂と塩素化されていない塩化ビニル系樹脂との混合物であってもよい。耐熱変形性を良好にする観点からは、上記塩化ビニル系樹脂は、塩素化塩化ビニル系樹脂であることが好ましい。上記塩素化塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニル系樹脂が塩素化された樹脂である。上記塩化ビニル系樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0026】
上記塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニルモノマーの単独重合体、塩化ビニルモノマーと塩化ビニルモノマーと共重合可能なビニルモノマーとの共重合体等が挙げられる。
【0027】
上記塩化ビニルモノマーと共重合可能なビニルモノマーとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、及びビニルエーテル等のビニルエステル;アクリロニトリル等のシアノ基含有化合物;塩化ビニリデン、及びフッ化ビニル等のハロゲン化合物;エチレン、及びプロピレン等のオレフィン;イタコン酸、マレイン酸、及びフマル酸等のカルボキシル基含有化合物;無水マレイン酸等の非芳香族カルボン酸無水物;(メタ)アクリル酸メチル、及び(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸エステル;並びにマレイミド等のイミド化合物等が挙げられる。上記ビニルモノマーは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0028】
上記塩化ビニルモノマーの重合方法、又は上記塩化ビニルモノマーと上記塩化ビニルモノマーと共重合可能なビニルモノマーとの重合方法は特に限定されない。上記重合方法としては、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法、塊状重合法、及び沈殿重合法等が挙げられる。塩化ビニル系樹脂を効率的に得る観点からは、上記重合方法は、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法又は沈殿重合法であることが好ましい。
【0029】
上記塩素化塩化ビニル系樹脂は、上記塩化ビニルモノマー、又は上記塩化ビニルモノマーと上記ビニルモノマーとを重合させて塩化ビニル系樹脂を得た後、該塩化ビニル系樹脂を塩素化することにより得られることが好ましい。
【0030】
上記塩化ビニル系樹脂の塩素化の方法は特に限定されない。上記塩化ビニル系樹脂の塩素化の方法としては、塩化ビニル系樹脂を水性溶媒中に入れて懸濁液を得た後、塩素を添加して該塩化ビニル系樹脂と塩素とを反応させる方法等が挙げられる。この塩素化反応は、加熱条件下又は光照射条件下により進行する。
【0031】
得られる塩素化塩化ビニル系樹脂の熱安定性を高める観点からは、上記塩素化反応は加熱条件下で行われることが好ましい。
【0032】
塩素化反応の効率を高める観点からは、上記加熱時の温度は、好ましくは65℃以上であり、好ましくは130℃以下である。
【0033】
上記塩化ビニル系樹脂の重合度は、好ましくは500以上、より好ましくは600以上であり、好ましくは2000以下、より好ましくは1100以下、さらに好ましくは1000以下である。上記重合度が上記下限以上であると、成形体の耐衝撃性及び耐久性を高めることができる。上記重合度が上記上限以下であると、上記塩化ビニル系樹脂及び上記塩化ビニル系樹脂組成物の溶融粘度を低くすることができるので、成形時の流動性を高めることができる。
【0034】
上記塩化ビニル系樹脂組成物100重量%中、上記塩化ビニル系樹脂の含有量は、好ましくは85重量%以上、より好ましくは87重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上であり、好ましくは95重量%以下、より好ましくは92重量%以下、さらに好ましくは91重量%以下である。上記塩化ビニル系樹脂の含有量が上記下限以上であると、得られる成形体の接着強度及び耐衝撃性を高めることができる。上記塩化ビニル系樹脂の含有量が上記上限以下であると、成形時に高温にする必要がなくなり、成形性を良好にすることができる。
【0035】
上記塩化ビニル系樹脂組成物に含まれる塩化ビニル系樹脂は粒子であることが好ましい。粒子である塩化ビニル系樹脂の粒子径は、好ましくは0.1μm以上であり、好ましくは500μm以下である。上記粒子径が上記下限以上であると、取扱い性を高めることができる。上記粒子径が上記上限以下であると、成形性を良好にすることができる。
【0036】
上記塩化ビニル系樹脂の粒子径は、平均粒子径であることが好ましく、体積平均粒子径であることが好ましい。上記塩化ビニル系樹脂の体積平均粒子径は、体積基準で測定される平均径であり、50%となるメディアン径(D50)の値である。上記体積平均粒子径は、レーザー回折・散乱法等により測定可能である。
【0037】
<アクリル系樹脂>
上記塩化ビニル系樹脂組成物は、重量平均分子量が10万以上50万以下であるアクリル系樹脂を含む。上記塩化ビニル系樹脂組成物では、上記の構成が備えられているので、上記炭酸カルシウムを上記塩化ビニル系樹脂組成物中に均一に分散させ、溶融粘度を低くすることができる。結果として、成形時の流動性を高め、かつ、得られる成形体の外観を良好にすることができる。
【0038】
本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記アクリル系樹脂の重量平均分子量は、好ましくは15万以上、より好ましくは20万以上であり、好ましくは45万以下、より好ましくは40万以下である。
【0039】
上記アクリル系樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)又はサイズ排除クロマトグラフィーにより測定することができる。
【0040】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定では、標準試料換算での重量平均分子量を測定する。上記標準試料としては、例えば、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、及びポリエチレングリコール等が挙げられる。例えば、ポリスチレン換算での重量平均分子量を測定するために、分子量既知のポリスチレン標準試料のGPC測定を行う。
【0041】
上記標準試料としてポリスチレン標準試料を用いる場合に、上記ポリスチレン標準試料(昭和電工社製「Shodex Standard SM-105」)として、以下の重量平均分子量の9試料を用いる。各試料の標準サンプルNo.(重量平均分子量):S-1.3(1270)、S-3.2(3180)、S-6.9(6,940)、S-22(21,800)、S-53(52,500)、S-333(333,000)、S-609(609,000)、S-1345(1,350,000)、S-2704(2,700,000)。
【0042】
それぞれの標準試料ピークのピークトップが示す溶出時間に対して分子量をプロットし、得られる近似直線を検量線として使用する。上記アクリル系樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、0.2重量%の溶液を調製し、溶出液としてテトラヒドロフラン(THF)を用いて該溶液をGPC装置により分析し、重量平均分子量を測定してもよい。上記アクリル系樹脂がアミド基を有する場合には、テトラヒドロフラン(THF)の代わりに、ジメチルホルムアミド又はN-メチルピロリドンに溶解させ、0.2重量%の溶液を調製してもよい。この場合に、溶出液として、臭化リチウム含有ジメチルホルムアミド又は臭化リチウム含有N-メチルピロリドンを用いてもよい。GPC装置としては、Waters社製「RI:2414(オートサンプラーアライアンス:e2695、ガードカラム:KF-G、カラム:Shodex KF806Lの2本直列)」等が挙げられる。
【0043】
上記アクリル系樹脂としては、アクリル系モノマーの単独重合体、アクリル系モノマーとアクリル系モノマーと共重合可能なモノマーとの共重合体等が挙げられる。上記アクリル系樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0044】
上記アクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、及び(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、及びn-オクチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0045】
上記アクリル系モノマーと共重合可能なモノマーとしては、ビニルモノマー、ジエン系モノマー、スチレン系モノマー、及び不飽和ジカルボン酸ジエステル等が挙げられる。なお、本明細書において、塩化ビニルモノマーとアクリル系モノマーとの共重合体は、塩化ビニル系樹脂に該当し、上記アクリル系樹脂には該当しないものとする。
【0046】
上記塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、上記アクリル系樹脂の含有量は、0.5重量部以上6重量部以下である。本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、上記アクリル系樹脂の含有量は、好ましくは0.7重量部以上、より好ましくは1重量部以上であり、好ましくは5重量部以下、より好ましくは3重量部以下である。
【0047】
本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記塩化ビニル系樹脂組成物100重量%中、上記アクリル系樹脂の含有量は、好ましくは0.6重量%以上、より好ましくは0.9重量%以上であり、好ましくは4重量%以下、より好ましくは3重量%以下である。
【0048】
<炭酸カルシウム>
上記塩化ビニル系樹脂組成物では、上記炭酸カルシウムは、充填材として作用する。上記塩化ビニル系樹脂組成物は、上記炭酸カルシウムの二次粒子を含む。
【0049】
上記塩化ビニル系樹脂組成物の材料においては、上記炭酸カルシウムは、一次粒子として存在することが好ましい。上記炭酸カルシウムの一次粒子は、塩化ビニル系樹脂組成物の作製時に、塩化ビニル系樹脂等との混合により2個以上の粒子に粉砕され、粉砕粒子となることがある。上記炭酸カルシウムの粉砕粒子は、上記炭酸カルシウムの一次粒子が粉砕されて形成される。上記炭酸カルシウムの一次粒子及び粉砕粒子は、上記塩化ビニル系樹脂組成物中で及び成形時に凝集し、二次粒子となることがある。上記炭酸カルシウムの二次粒子は、2個以上の上記炭酸カルシウムの一次粒子又は粉砕粒子により形成される。上記炭酸カルシウムの二次粒子は、上記炭酸カルシウムの一次粒子のみにより形成されてもよく、上記炭酸カルシウムの粉砕粒子のみにより形成されてもよく、上記炭酸カルシウムの一次粒子と粉砕粒子との組み合わせにより形成されてもよい。
【0050】
上記塩化ビニル系樹脂組成物は、上記炭酸カルシウムの一次粒子を含んでいてもよく、上記炭酸カルシウムの粉砕粒子を含んでいてもよく、上記炭酸カルシウムの一次粒子及び粉砕粒子を含んでいてもよい。上記塩化ビニル系樹脂組成物は、上記炭酸カルシウムの粉砕粒子を含むことが好ましい。上記塩化ビニル系樹脂組成物中の上記炭酸カルシウムは、上記炭酸カルシウムの粉砕粒子であることが好ましい。上記塩化ビニル系樹脂組成物中で、上記炭酸カルシウムは、粉砕粒子として存在することが好ましい。なお、上記炭酸カルシウムは、上記塩化ビニル系樹脂組成物中で凝集していないことが好ましい。
【0051】
本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記炭酸カルシウムの一次粒子の粒子径(一次粒子径)は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは0.8μm以上、さらに好ましくは1.5μm以上であり、好ましくは20μm以下、より好ましくは18μm以下であり、さらに好ましくは15μm以下である。
【0052】
上記炭酸カルシウムの粉砕粒子の粒子径(粉砕粒子径)は、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上、さらに好ましくは0.2μm以上、特に好ましくは0.5μm以上であり、好ましくは5.0μm以下、より好ましくは3.0μm以下、さらに好ましくは2.0μm以下、特に好ましくは1.0μm以下である。上記炭酸カルシウムの粉砕粒子の粒子径が上記下限以上であると、上記炭酸カルシウムの粉砕粒子の比表面積を小さくすることができるので、上記炭酸カルシウムの粉砕粒子の凝集を抑制することができ、上記炭酸カルシウムの二次粒子の粒子径を小さくすることができる。結果として、得られる成形体の耐衝撃性を高めることができる。上記炭酸カルシウムの粉砕粒子の粒子径が上記上限以下であると、上記炭酸カルシウムの二次粒子の粒子径を小さくすることができる。結果として、得られる成形体の耐衝撃性を高めることができる。
【0053】
上記塩化ビニル系樹脂組成物中の上記炭酸カルシウムの二次粒子の粒子径(二次粒子径)は、0.1μm以上15μm以下である。本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記塩化ビニル系樹脂組成物中の上記炭酸カルシウムの二次粒子の粒子径(二次粒子径)は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1.5μm以上であり、好ましくは14μm以下、より好ましくは10μm以下である。
【0054】
上記炭酸カルシウムの一次粒子径、粉砕粒子径及び二次粒子径は、平均粒子径であることが好ましく、数平均粒子径であることが好ましい。上記炭酸カルシウムの粒子径は、例えば、任意の炭酸カルシウム50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、各炭酸カルシウムの粒子径の平均値を算出することや、粒度分布測定装置を用いて求められる。電子顕微鏡又は光学顕微鏡での観察では、1個当たりの炭酸カルシウムの粒子径は、円相当径での粒子径として求められる。電子顕微鏡又は光学顕微鏡での観察において、任意の50個の炭酸カルシウムの円相当径での平均粒子径は、球相当径での平均粒子径とほぼ等しくなる。粒度分布測定装置では、1個当たりの炭酸カルシウムの粒子径は、球相当径での粒子径として求められる。上記炭酸カルシウムの平均粒子径は、粒度分布測定装置を用いて算出することが好ましい。
【0055】
上記炭酸カルシウムの一次粒子、粉砕粒子及び二次粒子は、球状であってもよく、球状以外の形状であってもよく、四角柱状、円柱状及び扁平状等の形状であってもよい。成形時の流動性をより一層高める観点からは、上記炭酸カルシウムの一次粒子、粉砕粒子及び二次粒子の形状は、球状であることが好ましい。上記炭酸カルシウムの一次粒子、粉砕粒子及び二次粒子のアスペクト比は、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1.2以下である。
【0056】
上記塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、上記炭酸カルシウムの含有量は、0.5重量部以上15重量部以下である。本発明では、上記の構成が備えられているので、成形時の流動性を高めることができ、かつ、得られる成形体の外観を良好にすることができる。また、上記塩化ビニル系樹脂組成物の製造コストを低減することができる。製造コストをより一層低減し、かつ、本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、上記炭酸カルシウムの含有量は、好ましくは0.8重量部以上、より好ましくは1重量部以上であり、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下である。
【0057】
製造コストをより一層低減し、かつ、本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記塩化ビニル系樹脂組成物100重量%中、上記炭酸カルシウムの含有量は、好ましくは0.7重量%以上、より好ましくは0.9重量%以上であり、好ましくは9重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。
【0058】
<他の成分>
上記塩化ビニル系樹脂組成物には、必要に応じて、各種の添加剤を用いてもよい。上記添加剤としては、安定剤、熱安定化助剤、滑剤、衝撃改質剤、耐熱向上剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、光安定剤、顔料、難燃剤及び可塑剤等が挙げられる。上記添加剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0059】
上記塩化ビニル系樹脂組成物は、安定剤を含むことが好ましい。上記安定剤としては、有機錫系安定剤、鉛系安定剤、カルシウム-亜鉛系安定剤、及びバリウム-亜鉛系安定剤等が挙げられる。上記安定剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0060】
上記安定剤は、熱安定剤であることが好ましい。
【0061】
塩化ビニル系樹脂の分解を抑制し、また、塩化ビニル系樹脂の分解時に発生する塩酸を捕捉する観点からは、上記塩化ビニル系樹脂組成物は、有機錫系安定剤を含むことが好ましく、有機錫系熱安定剤を含むことがより好ましい。また、有機錫系安定剤の使用により、得られる成形体の外観がより一層良好になる。
【0062】
上記有機錫系安定剤としては、錫メルカプト系安定剤、錫マレート系安定剤、錫カルボキシレート系安定剤等が挙げられる。上記錫メルカプト系安定剤としては、モノアルキル錫メルカプト、ジアルキル錫メルカプト、モノアルキル錫メルカプトポリマー、ジアルキル錫メルカプトポリマー、モノアルキル錫メルカプトサルファイド、ジアルキル錫メルカプトサルファイド等が挙げられる。上記錫マレート系安定剤としては、モノアルキル錫マレート、ジアルキル錫マレート、モノアルキル錫マレートポリマー、ジアルキル錫マレートポリマー等が挙げられる。上記錫カルボキシレート系安定剤としては、モノアルキル錫カルボキシレート、ジアルキル錫カルボキシレート等が挙げられる。上記有機錫系安定剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0063】
得られる成形体の外観をより一層良好にする観点からは、上記有機錫系安定剤は、錫メルカプト系安定剤であることが好ましく、ジアルキル錫メルカプトであることが好ましく、ジオクチル錫メルカプト又はジメチル錫メルカプトであることがより好ましい。
【0064】
上記鉛系安定剤としては、三塩基性硫酸鉛、四塩基性硫酸鉛、塩基性亜硫酸鉛、二塩基性亜燐酸鉛、二塩基性フタル酸鉛、三塩基性マレイン酸鉛、二塩基性ステアリン酸鉛、及び塩基性亜硫酸亜燐酸等が挙げられる。
【0065】
上記塩化ビニル系樹脂組成物中の上記塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、上記有機錫系安定剤の含有量は、好ましくは0.2重量部以上、より好ましくは0.3重量部以上、さらに好ましくは0.4重量部以上であり、好ましくは3.0重量部以下、より好ましくは2.0重量部以下、さらに好ましくは1.5重量部以下である。上記有機錫系安定剤の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、熱安定性を高め、得られる成形体の耐熱性を高めることができる。
【0066】
上記熱安定化助剤としては特に限定されず、例えば、エポキシ化大豆油、リン酸エステル、ポリオール、ハイドロタルサイト、及びゼオライト等が挙げられる。上記熱安定化助剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0067】
上記塩化ビニル系樹脂組成物は、滑剤を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。上記塩化ビニル系樹脂組成物は、滑剤を含むことが好ましい。
【0068】
上記滑剤としては、内部滑剤、及び外部滑剤が挙げられる。上記内部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂の流動粘度を下げ、摩擦発熱を防止する目的で使用される。上記内部滑剤としては特に限定されず、ブチルステアレート、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、エポキシ大豆油、グリセリンモノステアレート、ステアリン酸、及びビスアミド等が挙げられる。上記外部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂と金属面との滑り効果を上げる目的で使用される。上記外部滑剤としては特に限定されず、ポリエチレン系滑剤、エステル系滑剤、パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、及びモンタン酸ワックス等が挙げられる。上記滑剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0069】
成形加工時の溶融樹脂と金属面との滑り性を良好にする観点からは、上記塩化ビニル系樹脂組成物は、ポリエチレン系滑剤を含むことが好ましく、ポリエチレン系滑剤とエステル系滑剤とを含むことがより好ましい。本発明では、塩化ビニル系樹脂と特定のアクリル系樹脂と特定の炭酸カルシウムとが特定の含有量で用いられていることによって外観を良好にすることができるので、上記塩化ビニル系樹脂組成物中のポリエチレン系滑剤の含有量は少なくてもよく、上記塩化ビニル系樹脂組成物は、ポリエチレン系滑剤を含まなくてもよい。
【0070】
上記ポリエチレン系滑剤の酸価は、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは15以上であり、好ましくは50以下、より好ましくは40以下、さらに好ましくは30以下である。上記ポリエチレン系滑剤の酸価が上記下限以上であると、上記炭酸カルシウムを上記塩化ビニル系樹脂組成物中に均一に分散させることができる。結果として、成形時の流動性を高め、かつ、得られる成形体の外観を良好にすることができる。上記ポリエチレン系滑剤の酸価が上記上限以下であると、成形時に塩化ビニル系樹脂組成物と金属面(金型)との滑りを良くすることができ、得られる成形体の外観をより一層良好にすることができる。
【0071】
上記塩化ビニル系樹脂組成物は、ポリエチレン系滑剤を含まないか、又は、上記塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、ポリエチレン系滑剤を10重量部以下の含有量で含むことが好ましい。上記塩化ビニル系樹脂組成物が上記ポリエチレン系滑剤を含む場合に、以下の含有量を満たすことが好ましい。上記塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、上記ポリエチレン系滑剤の含有量は、好ましくは0重量部を超え、より好ましくは0.1重量部以上、さらに好ましくは0.5重量部以上であり、好ましくは2.0重量部以下、より好ましくは1.5重量部以下、さらに好ましくは1.0重量部以下である。上記ポリエチレン系滑剤の含有量が上記下限及び上記上限を満たすと、上記炭酸カルシウムを上記塩化ビニル系樹脂組成物中に均一に分散させることができる。結果として、成形時の流動性を高め、かつ、得られる成形体の外観をより一層良好にすることができる。また、成形時に塩化ビニル系樹脂組成物と金属面(金型)との滑りを良くすることができ、得られる成形体の外観をより一層良好にすることができる。
【0072】
本発明では、塩化ビニル系樹脂と特定のアクリル系樹脂と特定の炭酸カルシウムとが特定の含有量で用いられていることによって外観を良好にすることができるので、上記塩化ビニル系樹脂組成物中のエステル系滑剤の含有量は少なくてもよく、上記塩化ビニル系樹脂組成物は、エステル系滑剤を含まなくてもよい。上記塩化ビニル系樹脂組成物は、ポリエチレン系滑剤及びエステル系滑剤の双方を含まないか、又は、上記塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、ポリエチレン系滑剤及びエステル系滑剤の内の少なくとも1種を合計で2重量部以下の含有量で含むことが好ましい。上記塩化ビニル系樹脂組成物が上記ポリエチレン系滑剤及び上記エステル系滑剤の内の少なくとも1種を含む場合に、以下の含有量を満たすことが好ましい。上記塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、上記ポリエチレン系滑剤及び上記エステル系滑剤の内の少なくとも1種の合計の含有量は、好ましくは0重量部を超え、より好ましくは0.2重量部以上、さらに好ましくは0.4重量部以上である。上記塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、上記ポリエチレン系滑剤及び上記エステル系滑剤の内の少なくとも1種の合計の含有量は、好ましくは1.5重量部以下、より好ましくは1.0重量部以下、さらに好ましくは0.6重量部以下である。上記ポリエチレン系滑剤及び上記エステル系滑剤の内の少なくとも1種の合計の含有量が上記下限及び上記上限を満たすと、上記炭酸カルシウムを上記塩化ビニル系樹脂組成物中に均一に分散させることができる。結果として、成形時の流動性を高め、かつ、得られる成形体の外観を良好にすることができる。また、成形時に塩化ビニル系樹脂組成物と金属面(金型)との滑りを良くすることができ、得られる成形体の外観を良好にすることができる。
【0073】
上記衝撃改質剤としては特に限定されず、メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン共重合体(MBS)、塩素化ポリエチレン、及びアクリルゴム等が挙げられる。上記衝撃改質剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0074】
上記耐熱向上剤としては特に限定されず、α-メチルスチレン系樹脂、及びN-フェニルマレイミド系樹脂等が挙げられる。上記耐熱向上剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0075】
上記酸化防止剤としては特に限定されず、フェノール系酸化防止剤等が挙げられる。上記酸化防止剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0076】
上記紫外線吸収剤としては特に限定されず、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、及びシアノアクリレート系紫外線吸収剤等が挙げられる。上記紫外線吸収剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0077】
上記光安定剤としては特に限定されず、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。上記光安定剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0078】
上記顔料としては特に限定されず、有機顔料及び無機顔料が挙げられる。上記有機顔料としては、アゾ系有機顔料、フタロシアニン系有機顔料、スレン系有機顔料、及び染料レーキ系有機顔料等が挙げられる。上記無機顔料としては、酸化物系無機顔料、クロム酸モリブデン系無機顔料、硫化物・セレン化物系無機顔料、及びフェロシアニン化物系無機顔料等が挙げられる。透明性をより一層高める観点からは、上記塩化ビニル系樹脂組成物は、上記顔料を含まないことが好ましい。
【0079】
上記可塑剤は、成形時の加工性を高める目的で添加されていてもよい。可塑剤の添加により成形品の耐熱性が低下することがあるため、可塑剤の添加量は少ない方が好ましい。上記可塑剤としては特に限定されず、ジブチルフタレート、ジ-2-エチルヘキシルフタレート、及びジ-2-エチルヘキシルアジペート等が挙げられる。上記可塑剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0080】
(塩化ビニル系樹脂成形体)
本発明に係る塩化ビニル系樹脂成形体は、塩化ビニル系樹脂と、重量平均分子量が10万以上50万以下であるアクリル系樹脂と、炭酸カルシウムとを含む塩化ビニル系樹脂組成物が成形された塩化ビニル系樹脂成形体である。本発明に係る塩化ビニル系樹脂成形体では、上記塩化ビニル系樹脂組成物において、上記塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、上記アクリル系樹脂の含有量が0.5重量部以上6重量部以下であり、かつ、上記炭酸カルシウムの含有量が0.5重量部以上15重量部以下である。上記塩化ビニル系樹脂成形体は、上記炭酸カルシウムの二次粒子を含む。上記塩化ビニル系樹脂成形体において、上記炭酸カルシウムの二次粒子の平均粒子径は0.1μm以上15μm以下である。
【0081】
上記塩化ビニル系樹脂成形体は、上記塩化ビニル系樹脂組成物を用いて形成される。上記塩化ビニル系樹脂組成物は、上記塩化ビニル系樹脂成形体を得るために用いることができる。上記塩化ビニル系樹脂成形体は、上記塩化ビニル系樹脂組成物を成形することにより得られる。上記塩化ビニル系樹脂成形体は、上記塩化ビニル系樹脂組成物の成形体である。
【0082】
上記塩化ビニル系樹脂成形体では、上記炭酸カルシウムの一次粒子及び粉砕粒子を均一に分散させることができる。結果として、上記塩化ビニル系樹脂成形体の外観を良好にすることができる。
【0083】
なお、上記塩化ビニル系樹脂組成物中の上記炭酸カルシウムの一次粒子及び粉砕粒子の一部は、組成物中で又は成形時に凝集することがある。上記塩化ビニル系樹脂成形体では、上記炭酸カルシウムの一次粒子及び粉砕粒子の一部が凝集している。上記塩化ビニル系樹脂成形体は、上記炭酸カルシウムの二次粒子を含む。上記塩化ビニル系樹脂成形体では、上記炭酸カルシウムの一次粒子、粉砕粒子及び二次粒子が存在していてもよい。上記塩化ビニル系樹脂成形体は、上記炭酸カルシウムの二次粒子のみを含んでいてもよく、一次粒子及び二次粒子を含んでいてもよく、粉砕粒子及び二次粒子を含んでいてもよく、一次粒子、粉砕粒子及び二次粒子を含んでいてもよい。
【0084】
上記塩化ビニル系樹脂成形体中の上記炭酸カルシウムの二次粒子の粒子径(二次粒子径)は、0.1μm以上15μm以下である。上記塩化ビニル系樹脂成形体中の上記炭酸カルシウムの二次粒子の粒子径は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1.5μm以上であり、好ましくは14μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは8.0μm以下、特に好ましくは5.0μm以下である。上記炭酸カルシウムの二次粒子の粒子径が上記下限以上及び上記上限以下であると、成形体の外観をより一層良好にすることができ、かつ、耐衝撃性を高めることができる。
【0085】
上記塩化ビニル系樹脂成形体中の上記炭酸カルシウムの二次粒子の粒子径は、平均粒子径であることが好ましく、数平均粒子径であることが好ましい。上記炭酸カルシウムの二次粒子の粒子径は、例えば、以下の方法で測定することができる。上記塩化ビニル系樹脂成形体を、ダイヤモンドカッターを用いて切断し、切断面を研磨する。走査型電子顕微鏡で断面を観察し、画像解析ソフトを用いて、単位面積中に存在する炭酸カルシウムの二次粒子の粒子径の平均値を求める。上記ダイヤモンドカッターとしては、マキタ社製「マルノコ盤 モデル2711」等が挙げられる。
【0086】
なお、例えば、3つの炭酸カルシウムの一次粒子で1つの二次粒子が構成されている場合に、この二次粒子において、二次粒子となっている上記炭酸カルシウムの一次粒子の個数は3とカウントする。例えば、3つの炭酸カルシウムの粉砕粒子で1つの二次粒子が構成されている場合に、この二次粒子において、二次粒子となっている上記炭酸カルシウムの粉砕粒子の個数は3とカウントする。
【0087】
上記塩化ビニル系樹脂成形体としては特に限定されず、例えば、継手、パイプ、板及び容器等が挙げられる。
【0088】
製造コストを低減することができ、成形時の流動性をより一層高めることができ、外観をより一層良好にすることができ、かつ、耐久性を高めることができるので、上記塩化ビニル系樹脂成形体は、継手であることが好ましい。上記継手は、上記塩化ビニル系樹脂組成物を成形することにより得られる。本発明に係る継手は、製造コストを低減することができ、成形時の流動性をより一層高めることができ、外観をより一層良好にすることができ、かつ、耐久性を高めることができる。
【0089】
上記塩化ビニル系樹脂組成物の成形方法としては特に限定されず、例えば、押出成形法、射出成形法、カレンダー成形法及びプレス成形法等が挙げられる。成形時の流動性をより一層高める観点からは、上記塩化ビニル系樹脂組成物の成型方法は、射出成形法であることが好ましい。
【0090】
上記塩化ビニル系樹脂成形体は、射出成形体であることが好ましい。上記塩化ビニル系樹脂成形体は、上記塩化ビニル系樹脂組成物の射出成形体であることが好ましい。
【0091】
成形に用いる成形機としては特に限定されず、例えば、スクリュー式射出成形機、単軸押出機、二軸異方向パラレル押出機、二軸異方向コニカル押出機、及び二軸同方向押出機等が挙げられる。上記成形機を用いて成形するとき、賦形する金型、樹脂温度等は、特に限定されない。
【0092】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。本発明は以下の実施例のみに限定されない。
【0093】
以下の材料を用意した。
【0094】
(塩化ビニル系樹脂)
塩化ビニル系樹脂(徳山積水工業社製「TS-640M」、重合度:640)
【0095】
(アクリル系樹脂)
アクリル系樹脂1(三菱ケミカル社製「メタブレンP-570A」、重量平均分子量:25万)
アクリル系樹脂2(カネカ社製「PA-30」、重量平均分子量:300万)
【0096】
(炭酸カルシウム)
炭酸カルシウム1(丸尾カルシウム社製「ナノコートS-25」、一次粒子の平均粒子径:0.8μm)
炭酸カルシウム2(白石工業社製「ホワイトン 306」、一次粒子の平均粒子径12μm)
炭酸カルシウム3(白石工業社製「ST パウダーH50」、一次粒子の平均粒子径22μm)
【0097】
(滑剤)
ポリエチレン系滑剤1(三井化学社製「HW2203A」、酸価:30)
ポリエチレン系滑剤2(三井化学社製「HW220MP」、酸価:1)
エステル系滑剤(エメリーオレオ社製「G15」)
【0098】
(安定剤)
有機錫系安定剤(日東化成工業社製「TVS#1500」)
【0099】
(実施例1~12、及び比較例1~8)
配合成分の種類及び配合量を下記の表1~3に示すようにして、回転混合器(カワタ社製「20Lスーパーミキサー」)に添加し、スチームを入れて回転数1500rpmで回転混合させ、105℃まで昇温させた。次いで、スチームを止め、冷却水を流して回転混合させ、冷却し、塩化ビニル系樹脂組成物を得た。
【0100】
得られた塩化ビニル系樹脂組成物について、スクリュー式射出成形機(JSW社製「100t射出成形機」)及びバーフロー金型を用いて、厚さ1mm、幅10mmのらせん状の塩化ビニル系樹脂成形体を得た。
【0101】
(評価)
(1)炭酸カルシウムの二次粒子の平均粒子径
得られた塩化ビニル系樹脂成形体(継手)をダイヤモンドカッター(マキタ社製「マルノコ盤 モデル2711」)を用いて長さ3mmに切り出し、走査型電子顕微鏡(JEOL社製「JSM-6510A」)を用いて断面を観察した。画像解析ソフト(ImageJ)を用いて、任意の1cm中に存在する炭酸カルシウムの二次粒子の円相当径の平均値を求め、二次粒子の平均粒子径(二次粒子径)とした。
【0102】
(2)成形時の流動性
得られた塩化ビニル系樹脂成形体のらせん状の長さ(バーフロー長)を測定した。塩化ビニル系樹脂組成物の成形時の流動性を、以下の基準で判定した。
【0103】
[成形時の流動性の判定基準]
○○:バーフロー長が、85mm以上
○:バーフロー長が、75mm以上85mm未満
△:バーフロー長が、56mm以上75mm未満
×:バーフロー長が、56mm未満
【0104】
(3)成形体の外観
得られた塩化ビニル系樹脂成形体を目視で観察した。成形体の外観を、以下の基準で判定した。
【0105】
[成形体の外観の判定基準]
○○:全体的にかなり光沢があり、外観が良好である
○:全体的に光沢があり、外観がやや良好である
△:一部分に光沢があり、外観がやや劣る
×:光沢がなく、外観が悪い
【0106】
配合組成及び結果を下記の表1~3に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
【表2】
【0109】
【表3】