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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139008
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】遮音部材
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/00 20060101AFI20220915BHJP
   B60J 10/50 20160101ALI20220915BHJP
   B60J 10/75 20160101ALI20220915BHJP
【FI】
B60J5/00 501Z
B60J10/50
B60J10/75
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021039206
(22)【出願日】2021-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】596002767
【氏名又は名称】トヨタ自動車九州株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】598059675
【氏名又は名称】株式会社ヴイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】姫木 携造
(72)【発明者】
【氏名】新田 聖和
(72)【発明者】
【氏名】坪井 康祐
【テーマコード(参考)】
3D201
【Fターム(参考)】
3D201AA06
3D201CA20
3D201DA51
3D201DA71
(57)【要約】
【課題】組付工数を削減することができることは勿論、高いロバスト性とシール性を実現して遮音性を向上することができる遮音部材を提供する。
【解決手段】インナウェザーストリップの端部に嵌め込まれる嵌合部と、インナウェザーストリップとドアインナパネルとの隙間を塞ぐシール部と、ドアインナパネルの車両室内側の外側壁面に当接する垂直状のインナパネル当接プレートと、ドアインナパネルのドア内部側の内側壁面に当接して弾性的に変形する平面状の挟持プレートと、を有し、インナパネル当接プレートと挟持プレートとは、ドアインナパネルの外側壁面と内側壁面とにそれぞれ当接してドアインナパネルに各プレート間で挟持してなる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアインナパネルの上部に配設されたインナウェザーストリップのドア前方側の端部又はドア後方側の端部の少なくとも一方に嵌め込まれる嵌合部と、
前記インナウェザーストリップと前記ドアインナパネルとの隙間を塞ぐシール部と、
前記ドアインナパネルの車両室内側の外側壁面に当接する垂直状のインナパネル当接プレートと、
前記ドアインナパネルのドア内部側の内側壁面に当接して弾性的に変形する平面状の挟持プレートと、を有し、
前記インナパネル当接プレートと前記挟持プレートとは、前記ドアインナパネルの伸延方向に沿って隣接してなり、前記インナウェザーストリップの端部に位置する前記ドアインナパネルの前記外側壁面と前記内側壁面とにそれぞれ当接して前記ドアインナパネルに各プレート間で挟持固定するように構成したことを特徴とする遮音部材。
【請求項2】
前記インナパネル当接プレートと前記挟持プレートとは、対向する側縁において上下側で互い違いに対向方向へ伸延するオーバーラップ部をそれぞれ形成したことを特徴とする請求項1に記載の遮音部材。
【請求項3】
前記インナパネル当接プレートと前記挟持プレートとはそれぞれ前記シール部の車両室内側の壁面から延出した突片部であり、
前記挟持プレートは前記シール部の壁面と共に断面視V字状溝を形成すると共に、前記インナパネル当接プレートは少なくとも一部を前記挟持プレートよりも上方に位置して形成していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の遮音部材。
【請求項4】
前記ドアインナパネルの端部は、ドアの前後方向に沿って略直線状に伸延する直線部と、前記直線部よりも端部側で前記直線部から前記車両室内側へ屈曲して傾斜する傾斜部と、を有し、
前記インナパネル当接プレートは、前記ドアインナパネルの前記直線部と前記傾斜部とを上方から覆うと共にそれぞれの外側壁面に面当接し、
前記挟持プレートは、前記インナパネル当接プレートよりも端部側の前記ドアインナパネルの前記傾斜部の内側壁面に面当接することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の遮音部材。
【請求項5】
前記ドアインナパネルの端部は、前記インナパネル当接プレートと前記挟持プレートとにより挟持される部分から分岐した延伸部を有し、
前記シール部の底部に前記延伸部の上端部を挿嵌するための挿嵌部を形成したことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の遮音部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両のドアに設けられる遮音部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両ドアは、ドアアウタパネルとドアインナパネルとからなるドアパネルと、ドアインナパネル及びドアアウタパネルのそれぞれの上端部に沿って配設したインナウェザーストリップとアウタウェザーストリップと、を有している。
【0003】
このような車両ドアは、その構造上、ドアの端末部、すなわち、インナウェザーストリップの端部とドアインナパネルとの間で隙間部分を形成する。この隙間部分は、車両内外を連通する空気の流通路となり、走行時の空気流通に伴って発生するロードノイズや風切り音など、車内で不快となるリーク音の発生原因となる。
【0004】
このようなリーク音の発生を防止するべく、例えば、ドアインナパネルの上部に配設したインナウェザーストリップのドア前後側の端部の少なくとも一方へ嵌め込まれる嵌合部と、インナウェザーストリップとドアインナパネルとの間の隙間部分を塞ぐシール部と、で構成した遮音部材が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-104952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の遮音部材では、ロバスト性が低く、車両ドア部材の微妙なバラつきや走行時の振動などにより、シールされた部分に不用意な隙間開口部としてのリーク部を形成してしまい、シール性を不十分にしてリーク音を発生させてしまう虞があった。
【0007】
一般的に、インナウェザーストリップやドアインナパネルといった各種車両ドア部材の寸法やこれらの組付け方の微妙な差異は、製造される車両ドアごとの隙間部分の開口縁部の微妙な形状差となって顕出する。
【0008】
すなわち、従来の遮音部材によれば、シール部で隙間部分の開口縁部を覆うだけの構成としているために、車両ドア部材にバラつきがある場合には隙間部分の開口縁部を必要十分にシーリングすることができず、リーク部を不用意に形成してしまう可能性がある。
【0009】
このため、実際の車両の製造現場では、個々の車両ドアの製造ごとに、隙間部分に遮音部材を装着した後、シールリングされた箇所にリーク部が形成されていないかを判別し、リーク部がある場合には別途シール部材を当てて閉塞するなどの補強作業を要しており、結果、組付工数を軽減できない虞があった。
【0010】
さらに、車両が製造された後は、車両の走行時の振動や経年劣化により、遮音部材が隙間部分から位置ずれを起こしたり変形したりするなどして、シール部とドアインナパネルの上端部との間にリーク部を形成してしまう虞があった。
【0011】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであって、組付工数を削減することができることは勿論、高いロバスト性とシール性を実現して遮音性を向上することができる遮音部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記従来の課題を解決するために、本発明では、(1)ドアインナパネルの上部に配設されたインナウェザーストリップのドア前方側の端部又はドア後方側の端部の少なくとも一方に嵌め込まれる嵌合部と、前記インナウェザーストリップと前記ドアインナパネルとの隙間を塞ぐシール部と、前記ドアインナパネルの車両室内側の外側壁面に当接する垂直状のインナパネル当接プレートと、前記ドアインナパネルのドア内部側の内側壁面に当接して弾性的に変形する平面状の挟持プレートと、を有し、前記インナパネル当接プレートと前記挟持プレートとは、前記ドアインナパネルの伸延方向に沿って隣接してなり、前記インナウェザーストリップの端部に位置する前記ドアインナパネルの前記外側壁面と前記内側壁面とにそれぞれ当接して前記ドアインナパネルに各プレート間で挟持固定するように構成したことを特徴とする遮音部材を提供する。
【0013】
また、本発明に係る遮音部材は、以下(2)~(4)の点に特徴を有する。
(2)前記インナパネル当接プレートと前記挟持プレートとは、対向する側縁において上下側で互い違いに対向方向へ伸延するオーバーラップ部をそれぞれ形成したこと。
(3)前記インナパネル当接プレートと前記挟持プレートとはそれぞれ前記シール部の車両室内側の壁面から延出した突片部であり、前記挟持プレートは前記シール部の壁面と共に断面視V字状溝を形成すると共に、前記インナパネル当接プレートは少なくとも一部を前記挟持プレートよりも上方に位置して形成していること。
(4)前記ドアインナパネルの端部は、ドアの前後方向に沿って略直線状に伸延する直線部と、前記直線部よりも端部側で前記直線部から前記車両室内側へ屈曲して傾斜する傾斜部と、を有し、前記インナパネル当接プレートは、前記ドアインナパネルの前記直線部と前記傾斜部とを上方から覆うと共にそれぞれの外側壁面に面当接し、前記挟持プレートは、前記インナパネル当接プレートよりも端部側の前記ドアインナパネルの前記傾斜部の内側壁面に面当接すること。
(5)前記ドアインナパネルの端部は、前記インナパネル当接プレートと前記挟持プレートとにより挟持される部分から分岐した延伸部を有し、前記シール部の底部に前記延伸部の上端部を挿嵌するための挿嵌部を形成したこと。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、ドアインナパネルの上部に配設されたインナウェザーストリップのドア前方側の端部又はドア後方側の端部の少なくとも一方に嵌め込まれる嵌合部と、前記インナウェザーストリップと前記ドアインナパネルとの隙間を塞ぐシール部と、前記ドアインナパネルの車両室内側の外側壁面に当接する垂直状のインナパネル当接プレートと、前記ドアインナパネルのドア内部側の内側壁面に当接して弾性的に変形する平面状の挟持プレートと、を有して構成したため、組付工数を削減することができることは勿論、インナウェザーストリップ端部とドアインナパネルとの間の隙間部分を確実に塞ぐことができ、高いロバスト性とシール性を実現して遮音性を向上することができる効果がある。
【0015】
すなわち、本発明に係る遮音部材は、インナウェザーストリップの端部に嵌合部を介して取り付けられ、シール部により隙間部分を閉塞してリーク音を遮音する。
【0016】
特に本発明では、前記インナパネル当接プレートと前記挟持プレートとは、前記ドアインナパネルの伸延方向に沿って隣接してなり、前記インナウェザーストリップの端部に位置する前記ドアインナパネルの前記外側壁面と前記内側壁面とにそれぞれ当接して前記ドアインナパネルに各プレート間で挟持固定するように構成しているため、隙間部分に配置したシール部が車両ドア部材の微妙なバラつきや走行時の振動により位置ズレすることを防止でき、遮音部材をドアインナパネルとインナウェザーストリップの隙間部分に安定した状態で装着することができる。
【0017】
すなわち、隙間部分に嵌合部を介して遮音部材を装着した場合には、ドアインナパネルのドア内部側に配置された挟持プレートが、ドアインナパネルの内側壁面に当接して弾性的に変形し、その外側面を内側壁面に圧着作用させた状態となる。
【0018】
換言すれば、弾性変形した挟持プレートは、ドアインナパネルの内側壁面から遮音部材を全体的にドア内部側へ移動させる弾性的な離反力を常時生起することとなる。
【0019】
このような挟持プレートによる離反力が伝達されてドア内部側へ引き寄せられるインナパネル当接プレートは、ドアインナパネルの車両室内側に配置されているために、内側面部を対向するドアインナパネルの外側壁面に圧着作用させた状態となる。
【0020】
このように、遮音部材は、挟持プレートとインナパネル当接プレートのそれぞれの側面部を内外側からドアインナパネルの内外側壁面部に密着作用させて両プレートの間でドアインナパネルを挟持することにより、隙間部分の開口縁部をなすドアインナパネル上端部へのラッピング機能を堅実に果たしつつ、隙間部分を閉塞すると共にドアインナパネルに強固に装着される。
【0021】
すなわち、本発明によれば、各プレートが隙間部分の開口縁部に沿って変形圧着するために開口縁部の形状差を許容して車両ドア部材の微妙なバラつきにも適応し、ドアインナパネルの上端部とシール部とのシーリング部分においてリーク部を不用意に形成することがない。
【0022】
従って、組付工数を削減して車両ドアの高いロバスト性を実現することができ、隙間部分の開口縁部の全域を確実にシーリングして遮音性を向上することができる効果がある。
【0023】
また、請求項2に係る発明によれば、前記インナパネル当接プレートと前記挟持プレートとは、対向する側縁において上下側で互い違いに対向方向へ伸延するオーバーラップ部をそれぞれ形成したため、互いのオーバーラップ部をドアインナパネルの上下方向且つ内外側で互い違いに重ねることにより挟持プレートとインナパネル当接プレートとの間の隣接境界部分におけるシール性を向上させることができ、遮音性をより向上することができる効果がある。
【0024】
また、請求項3に係る発明によれば、前記インナパネル当接プレートと前記挟持プレートとはそれぞれ前記シール部の車両室内側の壁面から延出した突片部であり、前記挟持プレートは前記シール部の壁面と共に断面視V字状溝を形成すると共に、前記インナパネル当接プレートは少なくとも一部を前記挟持プレートよりも上方に位置して形成しているため、挟持プレートを板バネのように折り曲げ弾性変形させてより強い弾性応力を生起させることができると共に、各プレートのドアインナパネルの内外側壁面への当接面積を可及的拡大させることができ、各プレートのドアインナパネルへの密着性を高めることができる効果がある。
【0025】
また、請求項4に係る発明によれば、前記ドアインナパネルの端部は、ドアの前後方向に沿って略直線状に伸延する直線部と、前記直線部よりも端部側で前記直線部から前記車両室内側へ屈曲して傾斜する傾斜部と、を有し、前記インナパネル当接プレートは、前記ドアインナパネルの前記直線部と前記傾斜部とを上方から覆うと共にそれぞれの外側壁面に面当接し、前記挟持プレートは、前記インナパネル当接プレートよりも端部側の前記ドアインナパネルの前記傾斜部の内側壁面に面当接することとしたため、ドアインナパネルの折り曲げ形状を利用した遮音部材の前後方向へのズレを規制することができ、遮音部材の隙間部分への固定を堅実なものにすることができる。
【0026】
すなわち、挟持プレートにより生起した傾斜部の内側壁面から直交方向へ離反する弾性応力をインナパネル当接プレートに伝達し、同インナパネル当接プレートをドアインナパネルの直線部と傾斜部によりなす屈曲部分に圧着作用させることができ、ドアインナパネル端部における前後側を各プレートにより内外側から互い違いに挟持係合することができる。
【0027】
また、請求項5に係る発明によれば、前記ドアインナパネルの端部は、前記インナパネル当接プレートと前記挟持プレートとにより挟持される部分から分岐した延伸部を有し、前記シール部の底部に前記延伸部の上端部を挿嵌するための挿嵌部を形成したため、遮音部材をドアインナパネルの延伸部に嵌め込み固定して隙間部分を塞ぐ遮音部材の固定状態をより堅実にして遮音性を安定化することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】車両ドアの基本的構造を示す車両内側から見た側面図及びドア後端の部分拡大斜視図である。
図2】本実施形態に係る遮音部材をインナウェザーストリップとドアインナパネルとの隙間部分に装着した状態を示すドア前方側から見た上方斜視図である。
図3】本実施形態に係る遮音部材をインナウェザーストリップとドアインナパネルとの隙間部分に装着した状態を示すA-A断面図である。
図4】本実施形態に係る遮音部材の構成を示すドア前方側から見た上方斜視図である。
図5】本実施形態に係る遮音部材の構成を示す平面図及び車内室側から見た側面図である。
図6】本実施形態に係る遮音部材の構成を示すドア後方側から見た下方斜視図である。
図7】本実施形態に係る遮音部材の構成を示す底面図である。
図8】本実施形態に係るインナパネル当接プレートと挟持プレートの隙間部分における装着形態を示す模式的平面図及び模式的側面図である。
図9】本実施形態に係るインナパネル当接プレートと挟持プレートの隙間部分における装着前後の形態変化を示す模式的縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の要旨は、ドアインナパネルの上部に配設されたインナウェザーストリップのドア前方側の端部又はドア後方側の端部の少なくとも一方に嵌め込まれる嵌合部と、前記インナウェザーストリップと前記ドアインナパネルとの隙間を塞ぐシール部と、前記ドアインナパネルの車両室内側の外側壁面に当接する垂直状のインナパネル当接プレートと、前記ドアインナパネルのドア内部側の内側壁面に当接して弾性的に変形する平面状の挟持プレートと、を有し、前記インナパネル当接プレートと前記挟持プレートとは、前記ドアインナパネルの伸延方向に沿って隣接してなり、前記インナウェザーストリップの端部に位置する前記ドアインナパネルの前記外側壁面と前記内側壁面とにそれぞれ当接して前記ドアインナパネルに各プレート間で挟持固定するように構成したことを特徴とする遮音部材を提供することにある。
【0030】
また、前記インナパネル当接プレートと前記挟持プレートとは、対向する側縁において上下側で互い違いに対向方向へ伸延するオーバーラップ部をそれぞれ形成したことに特徴を有する。
【0031】
また、前記インナパネル当接プレートと前記挟持プレートとはそれぞれ前記シール部の車両室内側の壁面から延出した突片部であり、前記挟持プレートは前記シール部の壁面と共に断面視V字状溝を形成すると共に、前記インナパネル当接プレートは少なくとも一部を前記挟持プレートよりも上方に位置して形成していることに特徴を有する。
【0032】
また、前記ドアインナパネルの端部は、ドアの前後方向に沿って略直線状に伸延する直線部と、前記直線部よりも端部側で前記直線部から前記車両室内側へ屈曲して傾斜する傾斜部と、を有し、前記インナパネル当接プレートは、前記ドアインナパネルの前記直線部と前記傾斜部とを上方から覆うと共にそれぞれの外側壁面に面当接し、前記挟持プレートは、前記インナパネル当接プレートよりも端部側の前記ドアインナパネルの前記傾斜部の内側壁面に面当接することに特徴を有する。
【0033】
また、前記ドアインナパネルの端部は、前記インナパネル当接プレートと前記挟持プレートとにより挟持される部分から分岐した延伸部を有し、前記シール部の底部に前記延伸部の上端部を挿嵌するための挿嵌部を形成したことに特徴を有する。
【0034】
以下、本発明の実施形態について、なお、以下において、[1.車両ドアの基本的構造]、[2.遮音部材]の順に説明する。また、以下の説明において、方向視を特に定めない限り、上下側はドア上下方向における上下側、前後側はドア長手方向におけるドア中心側を前側、ドア端部側を後側、内外側はドア厚さ方向におけるドア内部側を内側、ドア内部側以外の車両室内側及び車両外側を外側とする。
【0035】
[1.車両ドアの基本的構造]
以下、本実施形態に係る遮音部材を備える車両ドアの基本的構造について説明する。図1(a)及び図1(b)はそれぞれ車両ドアの構造を示す車両内側から見た側面図及びドア後端の部分拡大斜視図、図2は遮音部材をインナウェザーストリップとドアインナパネルとの隙間部分に装着した状態を示すドア前方側から見た上方斜視図、図3は遮音部材をインナウェザーストリップとドアインナパネルとの隙間部分に装着した状態を示すA-A断面図である。
【0036】
車両ドアDは、図1(a)に示すように、基本的構造として、車両ドアDの下半部に相当するドアパネルD1と、ドアパネルD1の上端縁に沿って配設され、車両ドアDの上半部に相当するウェザーストリップD2と、を有している。
【0037】
ドアパネルD1は、内部中空状であって、車両の内側に配置されるドアインナパネルD10と、ドアインナパネルD10に対向して車両の外側に配置されるアウタパネルと、により構成している。
【0038】
ドアインナパネルD10及びアウタパネルとの上端部には、それぞれ長手方向に沿うように細長状のインナウェザーストリップD20及びアウタウェザーストリップが配設されている。
【0039】
また、車両ドアDの前後側端部には、図1(b)に示すように、インナウェザーストリップD20の端部とドアインナパネルD10との間で車両ドアDの内部空間に連通する隙間部分Sが形成される。
【0040】
このような車両ドアDの基本的構造は、例えば、車両の前方側に配設されるフロントサイドドアや後方側に配設されるリアサイドドア、窓枠として機能するドアフレームを排したシャッシュレスドアなどの各種車両ドアに共通する。
【0041】
すなわち、本発明に係る遮音部材A1は、車両ドアDの種類に左右されず、車両ドアDの基本的構造として、図1(a)及び図2に示すように、インナウェザーストリップD20とドアインナパネルD10との間で必然的に形成される隙間部分Sに閉塞対応して遮音性を向上させるべく構成している。
【0042】
インナウェザーストリップD20は、車両のベルトラインに沿うようにドアインナパネルD10の上端部に設けている。
【0043】
具体的には、インナウェザーストリップD20は、外周方向に所定間隔を隔てて外方突出すると共に長手方向に沿って伸延形成した複数の突条部D21と、ドアインナパネルD10の上端部に嵌め込み対応する下部の嵌着凹部と、を備え、複数の突条部D21の間に、側面視で長手方向に沿って伸延すると共に端面視で凹状の凹溝部D22を形成している。
【0044】
ドアインナパネルD10の端部は、平面視で折り曲げ傾斜しており、図3に示すように、車両ドアの前後方向に沿って略直線状に伸延する直線部D11と、直線部D11よりも端部側で直線部D11から車両室内側へ屈曲して傾斜する傾斜部D12と、を有している。
【0045】
さらに、ドアインナパネルD10の端部は、図1(b)及び図3に示すように、後述する遮音部材A1のインナパネル当接プレート30と挟持プレート40とにより挟持される部分から分岐した延伸部D13を有している。
【0046】
すなわち、ドアインナパネルD10の端部は、平面視で二又状に分岐しており、図1(b)及び図3に示すように、ドアインナパネルD10の中央部から連続する直線部D11と、直線部D11から車両室内側へ屈曲傾斜する車両ドアD外側の傾斜部D12と、直線部D11に連なって端部側へむけて略直線状に伸延する車両ドアD内部側の延伸部D13と、を有して構成している。
【0047】
かかるドアインナパネルD10に対して、本実施形態にかかるインナウェザーストリップD20は、ドアインナパネルD10を境に、車内室側でドアインナパネルD10の直線部D11の近傍位置に配置される外側端部D23と、外側端部D23よりも車両ドアDの最端部側へ突出伸延し、車両ドア内部側で直線部D11と延伸部D13の近傍位置に配置される内側端部D24と、を有している。
【0048】
また、ドアインナパネルD10の最前後側の両端部には、図1(a)に示すように、枠状のドアフレームD30が、その基端部をドアパネルD1内部に取り付られて立設している。ドアフレームD30基端部の近傍の車両ドア内側には、隙間部分Sが形成されている。
【0049】
換言すれば、本実施形態の隙間部分Sは、ドアインナパネルD10の上端部D10cと、インナウェザーストリップD20の端部D23,D24と、ドアフレームD30の基端部D31と、により開口縁部S1(図1(b)中、破線で示す。)をなし、ドアインナパネルD10の前後側端部の2箇所に形成される。
【0050】
すなわち、本実施形態に係る遮音部材A1、A2は、図1(a)に示すように、車両ドアDとしてのフロントサイドドアにおいて、インナウェザーストリップD20のドア前方側の端部及びドア後方側の端部に取り付けられると共に2つの隙間部分Sにそれぞれ2個設けている。なお、遮音部材A1、A2は、インナウェザーストリップD20のドア前方側の端部及びドア後方側の端部のいずれか一方に取り付けられている構成であってもよい。
【0051】
[2.遮音部材]
以下、ドアインナパネルD10とインナウェザーストリップD20のドア後方側の端部の隙間部分Sに装着する遮音部材A1を一例に説明する。図4は遮音部材の構成を示すドア前方側から見た上方斜視図、図5(a)及び図5(b)は遮音部材の構成を示す平面図及び車内室側から見た側面図、図6は遮音部材の構成を示すドア後方側から見た下方斜視図、図7は遮音部材の構成を示す底面図、図8(a)及び図8(b)はインナパネル当接プレートと挟持プレートの隙間部分における装着形態を示す模式的平面図及び模式的側面図、図9(a)及び図9(b)はインナパネル当接プレートと挟持プレートの隙間部分における装着前後の形態変化を示す模式的縦断面図である。
【0052】
本遮音部材A1は、樹脂製であって、図4に示すように、全体として略方形ブロック状に形成しており、ドアインナパネルD10の上部に配設されたインナウェザーストリップD20のドア後方側の端部に嵌め込まれる嵌合部10と、インナウェザーストリップD20とドアインナパネルD10との隙間を塞ぐシール部20と、ドアインナパネルD10の車両室内側の外側壁面D10aに当接する垂直状のインナパネル当接プレート30と、ドアインナパネルD10のドア内部側の内側壁面D10bに当接して弾性的に変形する平面状の挟持プレート40と、を有して構成している。
【0053】
すなわち、遮音部材A1は、図4図6に示すように、シール部20と、シール部20を中心とした外周側に、嵌合部10、インナパネル当接プレート30、及び挟持プレート40といったシーリング機能部位をそれぞれ一体的に形成している。
【0054】
具体的には、遮音部材A1は、その大部分を隙間部分Sを閉塞してシーリング機能の中核を果たすシール部20とし、シール部20の車両室内側に位置する一側壁20cにインナパネル当接プレート30と挟持プレート40をそれぞれ前後方向に並べて形成し、シール部20のドア内部側に位置する前側壁20bと一側壁20cとに嵌合部10を形成している。
【0055】
このような遮音部材A1の素材は、耐久性、耐候性に優れ、保形性を備えつつ弾性変形可能なものであれば特に限定されることはなく、例えば、オレフィン系エラストマー(TPO)又はエチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)等の合成樹脂を採用することができる。
【0056】
シール部20は、図4及び図5(a)に示すように、遮音部材A1の大部分をなす内部中空の有天角筒状のブロック体であり、隙間部分Sを完全に覆うキャップ状パーツに形成している。すなわち、シール部20は、隙間部分Sの開口縁部の平面視形状よりやや大きくした略相似形の平面視形状に形成している。
【0057】
本実施形態に係るシール部20は、図4に示すように前方から後方へかけて漸次拡幅する略有天四角筒状であって、図5(a)に示すように、前側(車両ドアDの伸延方向におけるドア中央側)に配置される平面視長方形状の前半部21と、後側に(車両ドアDの伸延方向におけるドア外端側)に配置される平面視台形状の後半部22と、で構成している。
【0058】
具体的には、シール部20は、図4図6に示すように、平面視で略三角形状の上側壁と上側壁20aと、同上側壁20aの外端縁部でそれぞれ垂下してシール部20の外周側壁をなす、インナウェザーストリップD20の端部D23に対向して配置される前側壁20bと、車両室内側に配置される一側壁20cと、ドア内部側に配置される他側壁20dと、により下方且つ後方開放のキャップ状に構成している。
【0059】
一側壁20cは、図5(a)に示すように、平面視において、前半部21で前後方向へ略直線状に伸延する一側直線壁部21cと、後半部22で一側直線壁部21cから車両室内側へ傾斜突出する一側傾斜壁部22cと、で構成している。
【0060】
また、他側壁20dは、平面視において、前半部21から後半部22の中途部まで前後方向へ略直線状に伸延する他側直線壁部21dと、後半部22の後端で他側直線壁部21dからドア内部側へ傾斜突出する他側傾斜壁部22dと、で構成している。
【0061】
シール部20は、図6及び図7に示すように、内側に内筒体24を備え、同内筒体24と外周側壁とにより内外略二重筒構造としている。内筒体24は、略三角筒状であって、各筒壁をシール部20の各外周側壁に略面平行に配置して、シール部20内部の上側壁20a(天面)の略中央部からシール部20の後半部22の外形に沿うように鉛直方向へ垂下している。
【0062】
かかる内筒体24は、図7に示すように、シール部20の一側壁20cにおける一側傾斜壁部22cと、同一側傾斜壁部22cの内側面部に両端で連結するL字状の筒壁部25と、により筒状をなしている。つまり、内筒体24の他側壁は、シール部20の一側傾斜壁部22cを構成している。
【0063】
また、シール部20の底部には、図7に示すように、ドアインナパネルD10の延伸部D13の上端部に挿嵌対応する挿嵌部60を形成している。
【0064】
挿嵌部60は、図3図4、及び図7に示すように、前側壁20bの幅方向所定位置で同前側壁20bを下端から上端にかけて縦方向に切欠した下方開放の切欠部61と、シール部20の一側壁20cと、一側壁20cと一定間隔を隔てて対向する内筒体24の筒壁部25と、により底面視略直線状の縦スリット部分として形成している。
【0065】
また、挿嵌部60は、ドアインナパネルD10の延伸部D13に厚み方向の両側から圧接し、同延伸部D13を間で挟持する2つの押圧リブ62、63を有する。
【0066】
具体的には、挿嵌部60は、図7に示すように、延伸部D13の基端部に対向する他側壁20dの内側面から外方突出して延伸部D13の基端部を外側から押圧する縦線状の外側押圧リブ62と、延伸部D13の中途部に対向する内筒体24の筒壁部25の外側面から外方突出して延伸部D13の中途部を内側から押圧する縦線状の内側押圧リブ63と、を備えて構成している。
【0067】
これにより、ドアインナパネルD10の延伸部D13を挿嵌部60に挿入した状態を強固なものとし、遮音部材A1の左右側の動きを規制することができる。
【0068】
また、シール部20の所定位置には、図4及び図5(a)に示すように、有底筒状の減衰部50を複数形成している。減衰部50は、シール部20の前半部21の上側壁20aを方形状に下方へ凹ませると共に長手方向(前後方向)に隣接して複数(本実施形態では3個)形成している。一つの減衰部50は、底壁51と互いに対向する側壁52とにより囲まれた上方開口の略四角筒状としている。
【0069】
これにより、ドアインナパネルD10とインナウェザーストリップD20との隙間部分Sに侵入したノイズを減衰して消音することができる。また、複数の減衰部50を備えることにより遮音部材A1が肉抜きされて全体重量を軽量化でき、材料コストを可及的に低減化することができる。
【0070】
特に、本実施形態の減衰部50は、シール部20の前半部21で長手方向に沿って隣接して複数形成しているため、同減衰部50位置を境に上下側で隙間部分Sの三角頂部に集中する流通空気を確実に遮断すると共に同流通空気による振動を減衰することができる。従って、遮音部材A1の隙間部分Sでの装着状態を可及的安定化させることができる。
【0071】
嵌合部10は、インナウェザーストリップの端部の形状に合わせて凹凸状に形成され、インナウェザーストリップD20の端部の凹溝部D22や嵌着凹部に対し、図4図5(a)及び図6に示すように、端面側から挿嵌対応する嵌合突起11と、外周側から挿嵌対応する嵌合フランジ12と、で構成している。
【0072】
嵌合突起11は、図4図6に示すように、シール部20の前側壁20bから前方突出して形成した前側突起11aと、シール部20の他側壁20d後端側の一側傾斜壁部22cから前方突出して形成した後側突起11bと、より構成している。
【0073】
換言すれば、シール部20の前側壁20bと一側傾斜壁部22cとは、遮音部材Aが嵌合部10を介してインナウェザーストリップD20の端部D23,D24に嵌合した状態で、インナウェザーストリップD20の端部D23,D24の各端面が当接する当接規定面部として機能する。
【0074】
嵌合突起11は、図4図6に示すように、シール部20の前側壁20bから前方突出して形成した前側突起11aと、シール部20の後端部をドア内部側へ延設した他側直線壁部21dの壁面から前方突出して形成した後側突起11bと、より構成している。
【0075】
これら前側突起11aと後側突起11bとは、それぞれインナウェザーストリップD20端部の凹溝部D22や嵌着凹部に対し、インナウェザーストリップD20の端面側(溝の深さ方向に直交するインナウェザーストリップD20の伸延方向側)から挿嵌可能としている。
【0076】
嵌合フランジ12は、図4図5(a)及び図6に示すように、細長帯板であって、シール部20のドア内部側の一側壁20cの上下中途部からドア内部側へ突出すると共にシール部20の前後方向に伸延して形成しており、インナウェザーストリップD20の端部の凹溝部D22に対し、インナウェザーストリップD20の外周側(溝深さ方向側)から挿嵌可能としている。
【0077】
また、嵌合部10は、図4図5(a)及び図6に示すように、インナウェザーストリップD20を長手方向に沿って上下側から覆う上下側被覆部13、14を有して構成しており、インナウェザーストリップD20に嵌合した遮音部材A1の上下移動を規制力を補強している。
【0078】
上側被覆部13は、平面視略L字帯板状であって、前側突起11a、後側突起11b、嵌合フランジ12よりも上方位置で、シール部20の一側壁20c及び前側壁20bの各上縁部に連なるように外方突出して形成している。これにより、インナウェザーストリップD20の端部や車内室側の突条部の上面を上方から被覆すると共に面当接する。
【0079】
下側被覆部14は、平面視方形帯板状であって、前側突起11a、後側突起11b、嵌合フランジ12よりも下方位置で、シール部20の一側壁20cの下縁部から外方突出して形成している。これにより、インナウェザーストリップD20の端部の底面を下方から被覆すると共に面当接する。
【0080】
すなわち、嵌合部10は、インナウェザーストリップD20の外周側においては、上側被覆部13と嵌合フランジ12との間に形成した隙間にインナウェザーストリップD20の突条部を挿嵌配置すると共に、嵌合フランジ12をインナウェザーストリップD20の凹溝部D22に挿嵌配置し、インナウェザーストリップD20の端部側においては、嵌合突起11を対向する凹溝部D22に挿入配置し、さらに上下側から上下側被覆部13、14で被覆するように構成している。
【0081】
また、シール部20のドア後方側の後端縁部には、図4図6に示すように、シールリップ70が延設されている。具体的には、シールリップ70は、シール部20の上側壁20aと一側壁20cとの後端縁部に沿って形成した所定の幅員を有するフランジ状の帯状体であって、同後端縁部から後方側且つ外側へ拡開伸延して形成している。
【0082】
シールリップ70は、弾性変形可能に形成されており、図2に示すように、隙間部分Sの開口縁部S1をなすドアフレームD30の基端部に弾性的に圧接されて隙間部分Sをシール可能としている。
【0083】
また、シールリップ70の下方位置には、図6に示すように、ドアインナパネルD10の最端部側へ伸延し、ドアフレームD30の基端面部に当接する複数の当接リブ71が形成されている。当接リブ71は、それぞれ内筒体24の後側の筒壁部25から後方側へ伸延して形成している。
【0084】
インナパネル当接プレート30と挟持プレート40とは、図2図4図6に示すように、ドアインナパネルD10の伸延方向に沿って隣接して形成しており、インナウェザーストリップD20の端部に位置するドアインナパネルD10の内側壁面と外側壁面とにそれぞれ当接してドアインナパネルD10に各プレート間で挟持固定するように構成している。
【0085】
すなわち、本発明に特筆すべき点として、遮音部材A1、A2は、インナパネル当接プレート30と挟持プレート40とを隣接して形成しているため、図2に示すように、ドアインナパネルD10の長手方向(前後方向)且つ厚さ方向に互い違いにそれぞれのプレートを配置し、弾性変形させた挟持プレート40により各プレート間に配置したドアインナパネルD10を両面側から挟み込み、隙間部分Sの開口縁部S1(上端部D10c)に内外側から密着させることができる。
【0086】
これらインナパネル当接プレート30と挟持プレート40とは、それぞれシール部20の車両室内側の一側壁20cの壁面から延出した弾性変形可能な突片部として形成している。
【0087】
インナパネル当接プレート30は、図3図7及び図9(b)に示すように、ドアインナパネルD10の直線部D11と傾斜部D12の屈曲部分を上方から覆う部分であって、ドアインナパネルD10の外側壁面D10aに当接するように構成している。
【0088】
具体的には、インナパネル当接プレート30は、シール部20の前方側且つ車両室内側の角部内側にドアインナパネルD10を配置可能とし、図3図7及び図9(b)に示すように、シール部20の前方一側角部の下半部に相当するインナパネルカバー部23と、インナパネルカバー部23の外周縁部の全域に亘って形成されるパネル当接リップ31と、で構成している。
【0089】
インナパネルカバー部23は、図3及び図4に示すように、横断面視略L字状であって、前側壁20bの所定位置に切り欠き形成した切欠部61と、シール部20の一側直線壁部21cと一側傾斜壁部22cとの境目部分で、一側直線壁部21cの側縁を下端から中途部まで縦方向に切り欠き形成した切欠部64とにより、ドアインナパネルD10を略前後方向側で挿通可能とすると共に内部に配置可能に形成している。
【0090】
また、パネル当接リップ31は、図4及び図5(b)に示すように、弾性変形可能な横断面視略L字状且つ扁平状の帯板体のであって、インナパネルカバー部23の外周端縁に沿って伸延して外方突出すると共に下方拡開状に垂下して形成している。
【0091】
かかる構成のインナパネル当接プレート30は、内側にドアインナパネルD10を配置して後述する挟持プレート40からの弾性力を伝達された場合に、図3及び図9(b)に示すように、パネル当接リップ31やインナパネルカバー部23の両側縁部(横断面視略L字状のL字両端部に相当する部分)をドアインナパネルD10の外側壁面D10aに当接する。
【0092】
挟持プレート40は、図2図3及び図7に示すように、インナパネル当接プレート30により覆われる端部よりもさらに端部側のドアインナパネルD10の傾斜部D12の内側壁面D10bに面当接するように構成している。
【0093】
具体的には、挟持プレート40は、弾性変形可能な扁平状の帯板体であって、図4図5(b)に示すように、シール部20の後半部22の一側傾斜壁部22cで、シール部20の車両室内側の一側壁20cで外方突出すると共に先端を上方傾斜方向に向けたパネル圧接リップ41として形成している。
【0094】
また、挟持プレート40は、図4図5(b)、図9(a)及び図9(b)に示すように、インナパネル当接プレート30よりも一部を挟持プレート40よりも下方に位置づけ、シール部20の壁面(一側壁20cの壁面)と共に断面視V字状溝を形成している。
【0095】
換言すれば、挟持プレート40は、図2及び図9(b)に示すように、外側面41aを介してドア内部側(シール部20側)へ向かう外力が負荷された場合に、先端部を上方へ向けるように基端部を折り曲げて弾性変形する折畳形態となると共に同折畳形態で外力に対向反発するシール部20の外方側へ向かう弾性力を常時生起する板バネ部としてシール部20に形成されている。
【0096】
また、挟持プレート40は、図5(b)、図8(b)~図9(b)に示すように、パネル圧接リップ41の基端部を少なくとも一側直線壁部21cにおけるインナパネルカバー部23の上端部(一側直線壁部21cの上下方向の中途部)位置よりも下方位置にある一側傾斜壁部22cの下部に取り付けている。
【0097】
これにより、ドアインナパネルD10のドア内部側に配置された挟持プレート40が、ドアインナパネルD10の内側壁面D10bにドア内側から当接して弾性的に変形し、その外側面41aを内側壁面D10bに圧着作用させた状態となる。
【0098】
すなわち、図9(b)に示すように弾性変形してドア内部側で折畳形態となった挟持プレート40は、側面視で挟持プレート40のパネル圧接リップ41の先端部が上方且つインナパネル当接プレート30の基端部と略同じ高さに位置し、ドアインナパネルD10の内側壁面D10bから遮音部材A1を全体的にドア内部側へ移動させる弾性的な離反力を常時生起する。
【0099】
このような挟持プレート40による弾性力に伴い、インナパネル当接プレート30はドア内部側へ引き寄せられることとなる。
【0100】
かかるインナパネル当接プレート30は、図9(a)及び図9(b)に示すように、ドアインナパネルD10の車両室内側、すなわち外側壁面D10a側に配置されているために、その内側面を対向するドアインナパネルD10の外側壁面D10aに圧着作用させる。
【0101】
このように、遮音部材A1のインナパネル当接プレート30と挟持プレート40とは、図2及び図9(b)に示すように、ドアインナパネルD10を間に介在させた状態で、それぞれドアインナパネルD10の上端部D10cの外側壁面D10aと内側壁面D10bとに密着作用させ、両プレートの間にドアインナパネルを挟持し、隙間部分Sの開口縁部S1をなすドアインナパネルD10の上端部D10cのラッピング機能を堅実に果たす。
【0102】
また、インナパネル当接プレート30と挟持プレート40とは、図8(a)及び図8(b)に示すように、対向する側縁において上下側で互い違いに対向方向へ伸延するオーバーラップ部32、42をそれぞれ形成している。
【0103】
具体的には、インナパネル当接プレート30のオーバーラップ部32は、パネル当接リップ31の一部であって、基端部近傍の側縁を後側へ伸延して形成している。
【0104】
また、挟持プレート40のオーバーラップ部42は、先端部の側縁を前側へ伸延して形成している。挟持プレート40のオーバーラップ部42は、パネル圧接リップ41を基端部から先端部へかけて漸次幅広にすることによりオーバーラップ部42を形成している。
【0105】
また、挟持プレート40の側縁に対向するインナパネル当接プレート30の基端部には、隙間部分Sに遮音部材Aして挟持プレート40がドア内側で折曲形態となった際に同挟持プレート40のオーバーラップ部42が嵌り込むためのラップ挿嵌部33を形成している。ラップ挿嵌部33は、インナパネルカバー部23の基部の突出上面の一部を、前方へ線状に切り欠くことにより形成している。
【0106】
これにより、両プレート30、40間にドアインナパネルD10を配置して挟持プレート40を折畳形態とした場合には、図8(b)に示すように、側面視でインナパネル当接プレート30の基端部と略同じ高さに位置した挟持プレート40のパネル圧接リップ41先端部のオーバーラップ部42がインナパネル当接プレート30のオーバーラップ部32の内側に位置する。
【0107】
このような状態で、各オーバーラップ部32、42は、ドアインナパネルD10の外側壁面D10aと内側壁面D10bに面当接しつつ側面視で互い交差して重なり合い、隙間部分Sのラッピング機能を果たす。さらに、図8(a)に示すように、ラップ挿嵌部33にオーバーラップ部42が嵌り込むことにより、挟持プレート40の折畳形態が安定化すると共にオーバーラップ状態を堅実化することができる。
【0108】
以上、説明してきたように、本発明によれば、インナウェザーストリップの端部に嵌合部を介して遮音部材を取り付け、同遮音部材のシール部により隙間部分を閉塞してロードノイズや風切り音などのリーク音を遮音することができる効果がある。
【0109】
特に、インナパネル当接プレートと挟持プレートとにより、隙間部分に配置したシール部が車両ドア部材の微妙なバラつきや走行時の振動により位置ズレすることを防止でき、遮音部材をドアインナパネルとインナウェザーストリップの隙間部分に安定した状態で装着することができる効果がある。
【0110】
また、インナパネル当接プレート30と挟持プレート40とは、対向する側縁において上下側で互い違いに対向方向へ伸延するオーバーラップ部32、42をそれぞれ形成したため、互いのオーバーラップ部32、42をドアインナパネルの上下方向且つ内外側で互い違いに重ねることにより挟持プレート40とインナパネル当接プレート30との間の隣接境界部分におけるシール性を向上させることができ、遮音性をより向上することができる効果がある。
【0111】
また、インナパネル当接プレート30と挟持プレート40とはそれぞれシール部20の車両室内側の壁面から延出した突片部であり、挟持プレート40はシール部20の壁面と共に断面視V字状溝を形成すると共に、インナパネル当接プレート30は少なくとも一部を挟持プレート40よりも上方に位置して形成しているため、挟持プレート40を板バネのように折り曲げ弾性変形させてより強い弾性応力を生起させることができると共に、各プレート30、40のドアインナパネルD10の内外側壁面D10a、D10bへの当接面積を可及的拡大させることができ、各プレート30、40のドアインナパネルD10への密着性を高めることができる効果がある。
【0112】
また、インナパネル当接プレート30は、ドアインナパネルD10の直線部D11と傾斜部D12とを上方から覆うと共にそれぞれの外側壁面D10aに面当接し、挟持プレート40は、インナパネル当接プレート30よりも端部側のドアインナパネルD10の傾斜部D12の内側壁面D10bに面当接することとしたため、ドアインナパネルD10の折り曲げ形状を利用した遮音部材A1の前後方向へのズレを規制することができ、遮音部材A1の隙間部分Sへの固定を堅実なものにすることができる効果がある。
【0113】
また、シール部20の底部にドアインナパネルD10の延伸部D13の上端部を挿嵌するための挿嵌部60を形成したため、遮音部材A1をドアインナパネルD10の延伸部D13に嵌め込み固定して隙間部分Sを塞ぐ遮音部材A1の固定状態をより堅実にして遮音性を安定化することができる効果がある。
【0114】
すなわち、本発明によれば、組付工数を削減することができることは勿論、高いロバスト性とシール性を実現して遮音性を向上することができる遮音部材を提供することができる効果がある。
【0115】
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはなく、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0116】
D 車両ドア
D10 ドアインナパネル
D20 インナウェザーストリップ
D30 ドアフレーム
A1 遮音部材
10 嵌合部
20 シール部
30 インナパネル当接プレート
40 挟持プレート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9