(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139029
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 41/275 20180101AFI20220915BHJP
F21S 41/143 20180101ALI20220915BHJP
F21S 41/255 20180101ALI20220915BHJP
F21V 5/08 20060101ALI20220915BHJP
F21V 5/04 20060101ALI20220915BHJP
F21W 102/155 20180101ALN20220915BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20220915BHJP
【FI】
F21S41/275
F21S41/143
F21S41/255
F21V5/08
F21V5/04 650
F21V5/04 250
F21W102:155
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021039234
(22)【出願日】2021-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099999
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 隆
(72)【発明者】
【氏名】コリチバ ニキタ
(57)【要約】
【課題】発光素子からの光をレンズを介して灯具前方へ向けて照射することにより、カットオフラインを有する配光パターンを形成するように構成された車両用灯具において、カットオフラインの形成自由度を高めるようにする。
【解決手段】第1および第2灯具ユニット20、40の発光素子22、42からの光をレンズ30、50を介して灯具前方へ向けて照射することにより、Z型カットオフラインを有するロービーム用配光パターンを形成する構成とする。その上で、各レンズ30、50の前面30a、50aに形成された複数のレンズ素子の一部を、自由曲面からなる表面形状を有する特定レンズ素子30sA3、50sB3として構成する。そして、特定レンズ素子30sA3、50sB3からの出射光によって、上記Z型カットオフラインの傾斜部を形成する構成とする。これにより上記Z型カットオフラインの形成自由度を高める。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子とレンズとを備え、上記発光素子からの光を上記レンズを介して灯具前方へ向けて照射することにより、カットオフラインを有する配光パターンを形成するように構成された車両用灯具において、
上記発光素子は、発光面を灯具前方へ向けた状態で配置されており、
上記レンズの後面に、上記発光素子からの出射光を入射させた後に灯具前方へ向けて全反射させる全反射制御部が形成されており、
上記レンズの前面に、上記全反射制御部から到達した光を出射制御する複数のレンズ素子が形成されており、
上記複数のレンズ素子の少なくとも一部は、自由曲面からなる表面形状を有する特定レンズ素子として構成されており、
上記レンズは、上記特定レンズ素子からの出射光によって上記カットオフラインの一部を形成するように構成されている、ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
上記配光パターンとして、左右段違いで水平方向に延びる下段カットオフラインと上段カットオフラインとが傾斜部を介して繋がれたZ型カットオフラインを有するロービーム用配光パターンを形成するように構成されており、
上記レンズは、上記特定レンズ素子からの出射光によって上記傾斜部を形成するように構成されている、ことを特徴とする請求項1記載の車両用灯具。
【請求項3】
上記レンズは、上記特定レンズ素子からの出射光によって上記傾斜部と共に上記上段カットオフラインの一部を形成するように構成されている、ことを特徴とする請求項2記載の車両用灯具。
【請求項4】
上記発光素子は、上記発光面の下端縁が上記レンズの中心に位置するように配置されており、
上記特定レンズ素子は、上記レンズの下部領域において下方へ向けて扇状に拡がる縦長の外形形状を有している、ことを特徴とする請求項2または3記載の車両用灯具。
【請求項5】
上記レンズは、上記複数のレンズ素子のうち上記レンズの外周縁領域に位置するレンズ素子からの出射光によって、上記上段カットオフラインおよび/または上記下段カットオフラインを形成するように構成されている、ことを特徴とする請求項2~4いずれか記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、発光素子からの光をレンズを介して灯具前方へ向けて照射するように構成された車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両用灯具の構成として、発光素子からの光をレンズを介して灯具前方へ向けて照射するように構成されたものが知られている。
【0003】
「特許文献1」には、このような車両用灯具として、発光面が灯具前方を向いた発光素子からの出射光を、レンズの後面に形成された全反射制御部から入射させた後に灯具前方へ向けて全反射させ、この全反射光をレンズの前面に形成された複数のレンズ素子において出射制御することにより、カットオフラインを有する配光パターンを形成するように構成されたものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記「特許文献1」に記載された車両用灯具においては、レンズの前面に形成された複数のレンズ素子がシリンドリカルレンズ状に形成されているので、カットオフラインを直線状に形成することは可能であるがそれ以外の形状で形成することは容易でない。
【0006】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、発光素子からの光をレンズを介して灯具前方へ向けて照射することにより、カットオフラインを有する配光パターンを形成するように構成された車両用灯具において、カットオフラインの形成自由度を高めることができる車両用灯具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明は、複数のレンズ素子の構成に工夫を施すことにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0008】
すなわち、本願発明に係る車両用灯具は、
発光素子とレンズとを備え、上記発光素子からの光を上記レンズを介して灯具前方へ向けて照射することにより、カットオフラインを有する配光パターンを形成するように構成された車両用灯具において、
上記発光素子は、発光面を灯具前方へ向けた状態で配置されており、
上記レンズの後面に、上記発光素子からの出射光を入射させた後に灯具前方へ向けて全反射させる全反射制御部が形成されており、
上記レンズの前面に、上記全反射制御部から到達した光を出射制御する複数のレンズ素子が形成されており、
上記複数のレンズ素子の少なくとも一部は、自由曲面からなる表面形状を有する特定レンズ素子として構成されており、
上記レンズは、上記特定レンズ素子からの出射光によって上記カットオフラインの一部を形成するように構成されている、ことを特徴とするものである。
【0009】
上記「発光素子」は、発光面を灯具前方へ向けた状態で配置されていれば、必ずしも灯具正面方向へ向けた状態で配置されていなくてもよい。
【0010】
上記「全反射制御部」は、発光素子からの出射光を入射させた後に灯具前方へ向けて全反射させるように構成されていれば、その具体的な構成は特に限定されるものではない。
【0011】
上記「特定レンズ素子」は、自由曲面からなる表面形状を有していれば、その具体的な表面形状は特に限定されるものではなく、また、その具体的な配置や外形形状についても特に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0012】
本願発明に係る車両用灯具は、発光面が灯具前方を向いた発光素子からの出射光を、レンズの後面に形成された全反射制御部から入射させた後に灯具前方へ向けて全反射させ、この全反射光をレンズの前面に形成された複数のレンズ素子において出射制御することにより、カットオフラインを有する配光パターンを形成するように構成されているが、複数のレンズ素子の少なくとも一部は自由曲面からなる表面形状を有する特定レンズ素子として構成されており、上記特定レンズ素子からの出射光によってカットオフラインの一部を形成するように構成されているので、カットオフラインの形成自由度を高めることができる。
【0013】
このように本願発明によれば、発光素子からの光をレンズを介して灯具前方へ向けて照射することにより、カットオフラインを有する配光パターンを形成するように構成された車両用灯具において、カットオフラインの形成自由度を高めることができる。
【0014】
また、本願発明の構成を採用することにより、上記配光パターンとして、左右段違いで水平方向に延びる下段カットオフラインと上段カットオフラインとが傾斜部を介して繋がれたZ型カットオフラインを有するロービーム用配光パターンを形成するようにした場合において、特定レンズ素子からの出射光によってZ型カットオフラインの傾斜部を形成することも容易に可能となる。
【0015】
その際、上記レンズの構成として、特定レンズ素子からの出射光によってZ型カットオフラインの傾斜部と共に上段カットオフラインの一部を形成するように構成されたものとすれば、傾斜部と上段カットオフラインとが滑らかに繋がったZ型カットオフラインを形成することができる。
【0016】
さらに、発光素子として、その発光面の下端縁がレンズの中心に位置するように配置された構成とした上で、特定レンズ素子として、レンズの下部領域において下方へ向けて扇状に拡がる縦長の外形形状を有する構成とすれば、特定レンズ素子からの出射光によって形成される配光パターンを、Z型カットオフラインの傾斜部(および上段カットオフラインの一部)の形成に適した形状で鮮明に形成することができる。
【0017】
上記構成において、さらに、上記レンズとして、複数のレンズ素子のうちレンズの外周縁領域に位置するレンズ素子からの出射光によって、Z型カットオフラインの上段カットオフラインおよび/または下段カットオフラインを形成するように構成されたものとすれば、次のような作用効果を得ることができる。
【0018】
すなわち、上記レンズにおいては、その後面の外周縁領域から入射した光が、その前面の外周縁領域から出射することとなるが、発光素子はその発光面が灯具前方を向いているので、レンズの後面からの発光面の見込み角はその外周縁領域において小さいものとなる。このため、レンズの前面の外周縁領域に位置するレンズ素子からの出射光によって形成される配光パターンは小さくて明るいものとなる。したがって、この配光パターンによって上段カットオフラインおよび/または下段カットオフラインを形成するようにすれば、これらをより鮮明に形成することができる。
【0019】
その際、レンズの外周縁領域に位置するレンズ素子は、特定レンズ素子(すなわち自由曲面からなる表面形状を有するレンズ素子)として構成されていてもよいし構成されていなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本願発明の一実施形態に係る車両用灯具を示す正面図
【
図3】(a)は上記車両用灯具の第1灯具ユニットを示す正面図、(b)は上記車両用灯具の第2灯具ユニットを示す正面図
【
図4】(a)は
図3のIVa-IVa線断面図、(b)は
図3のIVb-IVb線断面図
【
図5】(a)は上記第1灯具ユニットのレンズを
図4のVa矢視方向から見て示す斜視図、(b)は上記第2灯具ユニットのレンズを
図4のVb矢視方向から見て示す斜視図
【
図6】(a)は上記第1灯具ユニットのレンズを
図4のVIa矢視方向から見て示す斜視図、(b)は上記第2灯具ユニットのレンズを
図4のVIb矢視方向から見て示す斜視図
【
図7】上記車両用灯具からの照射光によって形成されるロービーム用配光パターンを透視的に示す図
【
図8】上記ロービーム用配光パターンの要部の形成過程を説明するための図
【
図9】上記実施形態の第1変形例を示す、
図5と同様の図
【
図10】上記第1変形例の作用を示す、
図7と同様の図
【
図11】上記実施形態の第2変形例を示す、
図5と同様の図
【
図12】上記第2変形例の作用を示す、
図7と同様の図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0022】
図1は、本実施形態に係る車両用灯具10を示す正面図である。また、
図2は、
図1のII-II線断面図である。
【0023】
これらの図において、Xで示す方向が「車両前方」かつ「灯具前方」であり、Yで示す方向が「灯具前方」と直交する「左方向」(灯具正面視では「右方向」)であり、Zで示す方向が「上方向」である。
【0024】
図1、2に示すように、本実施形態に係る車両用灯具10は、車両前端部に配置されるヘッドランプであって、ランプボディ12とその前端開口部に取り付けられた素通し状の透光カバー14とで形成される灯室内に、第1および第2灯具ユニット20、40が車幅方向に並んだ状態で組み込まれた構成となっている。
【0025】
第1灯具ユニット20は、発光素子22とその灯具前方側に配置されたレンズ30とを備えており、発光素子22からの光をレンズ30を介して灯具前方へ向けて照射するように構成されている。
【0026】
第2灯具ユニット40は、発光素子42とその灯具前方側に配置されたレンズ50とを備えており、発光素子42からの光をレンズ50を介して灯具前方へ向けて照射するように構成されている。
【0027】
第1および第2灯具ユニット20、40の発光素子22、42は、共通の基板24を介してランプボディ12に支持されており、また、そのレンズ30、50は、図示しない取付構造を介してランプボディ12に支持されている。
【0028】
車両用灯具10は、第1および第2灯具ユニット20、40からの照射光によってロービーム用配光パターン(これについては後述する)を形成するようになっている。
【0029】
次に、第1および第2灯具ユニット20、40の各々の具体的な構成について説明する。
【0030】
まず、第1灯具ユニット20の構成について説明する。
【0031】
図3(a)は、第1灯具ユニット20を示す正面図であり、
図4(a)は、
図3のIVa-IVa線断面図である。また、
図5(a)は、第1灯具ユニット20のレンズ30を
図4のVa矢視方向から見て示す斜視図であり、
図6(a)は、レンズ30を
図4のVIa矢視方向から見て示す斜視図である。
【0032】
これらの図に示すように、第1灯具ユニット20のレンズ30は、灯具前後方向に延びる光軸Axを有しており、灯具正面視において光軸Axを中心とする円形の外形形状を有している。レンズ30の外形寸法は50mm以下(例えば35mm程度)の値に設定されている。
【0033】
発光素子22は、白色発光ダイオードであって、その発光面22aを灯具前方(具体的には灯具正面方向)へ向けた状態で配置されている。発光素子22の発光面22aは、矩形状(具体的には1×1mm程度の正方形)の外形形状を有している。そして、発光素子22は、その発光面22aの下端縁における左右方向の中心位置をレンズ30の光軸Ax上に位置させた状態で配置されている。
【0034】
レンズ30の後面30bは、光軸Ax近傍に位置する中心領域が屈折制御部30bAとして構成されており、その周辺領域が全反射制御部30bBとして構成されている。屈折制御部30bAと全反射制御部30bBとの境界位置は、光軸Axを中心とする半径4~6mm(例えば半径5mm程度)の円によって規定されている。
【0035】
屈折制御部30bAは、発光素子22からの出射光を光軸Ax寄りの方向へ屈折させる態様でレンズ30に入射させるように構成されている。具体的には、屈折制御部30bAは、複数のレンズ素子30bAsが光軸Axを中心として同心円状に配置されたフレネルレンズで構成されている。そして、各レンズ素子30bAsにおいて、発光素子22からの出射光を灯具正面方向へ向かう平行光としてレンズ30の前面30aに導くようになっている。
【0036】
一方、全反射制御部30bBは、発光素子22からの出射光を光軸Axから離れる方向へ屈折させた後、灯具前方へ向けて全反射させるように構成されている。具体的には、全反射制御部30bBは、複数の全反射プリズム素子30bBsが光軸Axを中心として同心円状に配置されたフレネルレンズ型全反射プリズムで構成されている。そして、各全反射プリズム素子30bBsにおいて、発光素子22からの出射光を灯具正面方向へ向かう平行光としてレンズ30の前面30aに導くようになっている。
【0037】
屈折制御部30bAを構成する複数のレンズ素子30bAsは、光軸Axと直交する鉛直面に沿って配置されている。
【0038】
一方、全反射制御部30bBを構成する複数の全反射プリズム素子30bBsは、光軸Axを中心とする略半ドーナッツ状の凹曲面に沿って配置されている。すなわち、全反射制御部30bBの内周縁に位置する全反射プリズム素子30bBsは、灯具前後方向に関して屈折制御部30bAと略同じ位置に形成されているが、その外周側に位置する全反射プリズム素子30bBsは、屈折制御部30bAよりも灯具前方側に位置するようにして形成されており、全反射制御部30bBの外周縁に位置する全反射プリズム素子30bBsは、屈折制御部30bAよりも灯具後方側に位置するようにして形成されている。
【0039】
その際、発光素子22の発光面22aから全反射制御部30bBの外周縁に位置する全反射プリズム素子30bBsまでの灯具前後方向の距離は、発光素子22の発光面22aから屈折制御部30bAまでの灯具前後方向の距離に対して半分以下の値に設定されている。具体的には、前者は4~6mm程度の値に設定されており、後者は1~2mm程度の値に設定されている。そしてこれにより、レンズ30は発光素子22からの出射光の略全量をその後面30bから入射させ得る構成となっている。
【0040】
レンズ30の前面30aは、光軸Axと直交する鉛直面に沿って延びる平面上に複数のレンズ素子(これについては後述する)が形成された構成となっている。
【0041】
レンズ30の前面30aは、3つの出射領域30aA1、30aA2、30aA3に区分けされている。
【0042】
出射領域30aA2は、前面30aの下半部においてその外周縁に沿って帯状に延びる半円弧状の領域であり、出射領域30aA3は、前面30aの下部領域において下方へ向けて扇状に拡がる縦長の外形形状を有する領域であり、出射領域30aA1は、それ以外の領域である。
【0043】
出射領域30aA1は、横長(例えば2×4mm程度)の縦横格子状に区分けされており、その各々に凸曲面状のレンズ素子30sA1が割り付けられた構成となっている。各レンズ素子30sA1は、レンズ30の後面30bから平行光として到達した発光素子22からの光を、下方向に偏向させた上で左右方向に大きく拡散させる態様で、灯具前方へ向けて出射させるように構成されている。
【0044】
出射領域30aA2は、縦縞状(例えば横幅2mm程度)に区分けされており、その各々に凸曲面状のレンズ素子30sA2が割り付けられた構成となっている。各レンズ素子30sA2は、レンズ30の後面30bから平行光として到達した発光素子22からの光を、やや下方向に偏向させた上で右方向に大きく拡散させる態様で、灯具前方へ向けて出射させるように構成されている。
【0045】
出射領域30aA3は、その左側縁(灯具正面視では右側縁)が光軸Axから真下の方向に延びる直線で構成されており、その右側縁が、光軸Axから真下の方向に対して右側に傾斜した方向(具体的には真下の方向から右側に15°程度傾斜した方向)に延びる直線で構成されている。そして、出射領域30aA3の上端縁は、光軸Axを中心とする円弧で構成されている。この円弧の半径は、レンズ30の後面30bにおいて屈折制御部30bAと全反射制御部30bBとの境界を規定している円の半径と略同じ値に設定されている。また、出射領域30aA3の下端縁は、前面30aの外周縁で構成されている。
【0046】
出射領域30aA3は、単一の特定レンズ素子30sA3で構成されている。この特定レンズ素子30sA3は、凸曲面状の自由曲面からなる表面形状を有するレンズ素子として構成されている。具体的には、特定レンズ素子30sA3の表面は、その右半部30sA3Aから左半部30sA3Bにかけて凸曲面の曲率が徐々に変化する自由曲面で構成されている。そしてこれにより、特定レンズ素子30sA3においては、レンズ30の後面30bから平行光として到達した発光素子22からの光を、やや上方向に偏向させた上で右半部30sA3Aから左半部30sA3Bにかけて出射方向を徐々に変化させる態様で、灯具前方へ向けて出射させるように構成されている。
【0047】
なお、出射領域30aA2は、出射領域30aA3の下端部が前面30aの外周縁まで延びていることにより、左右2つの領域に分断されている。
【0048】
次に、第2灯具ユニット40の構成について説明する。
【0049】
図3(b)は、第2灯具ユニット40を示す正面図であり、
図4(b)は、
図3のIVb-IVb線断面図である。また、
図5(b)は、第2灯具ユニット40のレンズ50を
図4のVb矢視方向から見て示す斜視図であり、
図6(b)は、レンズ50を
図4のVIb矢視方向から見て示す斜視図である。
【0050】
これらの図に示すように、第2灯具ユニット40においても、その発光素子42の構成および配置は第1灯具ユニット20の発光素子22と同様であり、また、レンズ50の基本的な構成および配置は第1灯具ユニット20のレンズ30と同様であるが、その前面50aの構成がレンズ30の場合と一部異なっている。
【0051】
すなわち、レンズ50の後面50bは、光軸Ax近傍に位置する中心領域が屈折制御部50bAとして構成されており、その周辺領域が全反射制御部50bBとして構成されている。屈折制御部50bAは複数のレンズ素子50bAsで構成されており、全反射制御部50bBは複数の全反射プリズム素子50bBsで構成されており、その機能はレンズ30の場合と同様である。
【0052】
一方、レンズ50の前面50aは、4つの出射領域50aB1、50aB2、50aB3、50aB4に区分けされている。
【0053】
出射領域50aB1は、レンズ30の出射領域30aA1の上半部と同一の外形形状を有しており、出射領域50aB2は、レンズ30の出射領域30aA2と同一の外形形状を有しており、出射領域50aB3は、レンズ30の出射領域30aA3と同一の外形形状を有しており、出射領域50aB4は、レンズ30の出射領域30aA1の下半部と同一の外形形状を有している。
【0054】
出射領域50aB1は、レンズ30の出射領域30aA1と同様、横長の縦横格子状に区分けされており、その各々に凸曲面状のレンズ素子50sB1が割り付けられた構成となっている。各レンズ素子50sB1は、レンズ50の後面50bから平行光として到達した発光素子42からの光を、下方向に偏向させた上で左右方向に大きく拡散させる態様で、灯具前方へ向けて出射させるように構成されている。
【0055】
出射領域50aB2は、レンズ30の出射領域30aA2と同様、縦縞状に区分けされており、その各々に凸曲面状のレンズ素子50sB2が割り付けられた構成となっている。ただし、各レンズ素子50sB2は、レンズ50の後面50bから平行光として到達した発光素子42からの光を、やや上方向に偏向させた上で左方向に大きく拡散させる態様で、灯具前方へ向けて出射させるように構成されている。
【0056】
出射領域50aB3は、レンズ30の出射領域30aA3と同様、単一の特定レンズ素子50sB3で構成されている。この特定レンズ素子50sB3の表面形状は、レンズ30の特定レンズ素子30sA3の表面形状と同様であって、その右半部50sB3Aから左半部50sB3Bにかけて凸曲面の曲率が変化する自由曲面で構成されている。
【0057】
出射領域50aB4は、出射領域50aB1と同様、縦縞状に区分けされており、その各々に凸曲面状のレンズ素子50sB4が割り付けられた構成となっている。ただし、各レンズ素子50sB4は、レンズ50の後面50bから平行光として到達した発光素子42からの光を、やや下方向に偏向させた上で左方向に大きく拡散させる態様で、灯具前方へ向けて出射させるように構成されている。
【0058】
図7は、車両用灯具10からの照射光によって、灯具前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成されるロービーム用配光パターンPLを透視的に示す図である。
【0059】
このロービーム用配光パターンPLは、左配光のロービーム用配光パターンであって、その上端部にはZ型カットオフラインCLが形成されている。
【0060】
Z型カットオフラインCLは、左右段違いで水平方向に延びる下段カットオフラインCL1と上段カットオフラインCL2とが傾斜部CL3を介して繋がれた形状を有している。その際、Z型カットオフラインCLは、灯具正面方向の消点であるH-Vを通る鉛直線であるV-V線に対して、対向車線側に下段カットオフラインCL1が位置するとともに、自車線側に傾斜部CL3および上段カットオフラインCL2が位置するようにして形成されている。上段カットオフラインCL2は、H-Vを通る水平線であるH-H線のやや上方に位置している。
【0061】
ロービーム用配光パターンPLにおいて、下段カットオフラインCL1と傾斜部CL3との交点であるエルボ点EはH-Vの0.5~0.6°程度下方に位置しており、傾斜部CL3はエルボ点Eから水平方向に対して15°の傾斜角度で斜め左上方向に延びている。そして、このロービーム用配光パターンPLにおいては、エルボ点Eの左側近傍に高光度領域HZが形成されている。
【0062】
ロービーム用配光パターンPLは、第1灯具ユニット20からの照射光によって形成される3つの配光パターンPA1、PA2、PA3と、第2灯具ユニット40からの照射光によって形成される4つの配光パターンPB1、PB2、PB3、PB4とを重畳させた合成配光パターンとして形成されている。
【0063】
配光パターンPA1は、レンズ30の前面30aにおける出射領域30aA1からの出射光によって形成される配光パターンであって、H-H線の下方において比較的大きい上下幅で左右方向に大きく拡がる横長の配光パターンとして形成されている。この配光パターンPA1は、ロービーム用配光パターンPLの広拡散領域を形成するようになっている。
【0064】
配光パターンPA2は、レンズ30の前面30aにおける出射領域30aA2からの出射光によって形成される配光パターンであって、H-H線の下方近傍において狭い上下幅でV-V線近傍から右方向に拡がる横長の明るい配光パターンとして形成されている。この配光パターンPA2は、その上端縁によってロービーム用配光パターンPLの下段カットオフラインCL1を形成するようになっている。
【0065】
このような配光パターンPA2が形成されるのは、全反射制御部30bBの外周縁部からの発光素子22の発光面22aの見込み角は極めて小さいものとなるため、その灯具前方に位置する出射領域30aA2からの出射光によって形成される配光パターンは小さくて明るいものとなりやすいことによるものである。
【0066】
配光パターンPA3は、レンズ30の前面30aにおける出射領域30aA3からの出射光によって形成される配光パターンであって、H-Vの下方近傍において狭い上下幅で左斜め上方向に延びる小さくて明るい配光パターンとして形成されている。この配光パターンPA3は、その上端縁によってロービーム用配光パターンPLの傾斜部CL3および上段カットオフラインCL2の右端部を形成するようになっている。
【0067】
ロービーム用配光パターンPLの高光度領域HZは、主としてこの配光パターンPA3によって形成されるようになっている。
【0068】
配光パターンPB1は、レンズ50の前面50aにおける出射領域50aB1からの出射光によって形成される配光パターンであって、配光パターンPA1よりは明るさが劣るが、H-H線の下方において比較的大きい上下幅で左右方向に大きく拡がる横長の配光パターンとして形成されている。この配光パターンPB1が配光パターンPA1と重複した状態で形成されることにより、ロービーム用配光パターンPLの広拡散領域の明るさを確保するようになっている。
【0069】
配光パターンPB2は、レンズ50の前面50aにおける出射領域50aB2からの出射光によって形成される配光パターンであって、略H-H線に沿って狭い上下幅でV-V線の左側近傍から左方向に拡がる横長の明るい配光パターンとして形成されている。この配光パターンPB2は、その上端縁によってロービーム用配光パターンPLの上段カットオフラインCL2を形成するようになっている。その際、この配光パターンPB2は、その右端部が配光パターンPA3と重複した状態で滑らかに繋がるように形成されている。
【0070】
このような配光パターンPB2が形成されるのは、配光パターンPA2の場合と同様、全反射制御部50bBの外周縁部からの発光素子42の発光面42aの見込み角は極めて小さいものとなるため、その灯具前方に位置する出射領域50aB2からの出射光によって形成される配光パターンは小さくて明るいものとなりやすいことによるものである。
【0071】
配光パターンPB3は、レンズ50の前面50aにおける出射領域50aB3からの出射光によって形成される配光パターンであって、配光パターンPA3と同一形状を有する配光パターンとして形成されている。この配光パターンPB3が配光パターンPA3に対して重畳されることによって、その上端縁によって傾斜部CL3および上段カットオフラインCL2の右端部を一層明瞭に形成するとともに、高光度領域HZの明るさを十分に確保するようになっている。
【0072】
配光パターンPB4は、レンズ50の前面50aにおける出射領域50aB4からの出射光によって形成される配光パターンであって、配光パターンPB2と配光パターンPA1、PB1とに跨るようにして比較的狭い上下幅でV-V線の左側近傍から左方向に拡がる横長の比較的明るい配光パターンとして形成されている。この配光パターンPB2の形成により、高光度領域HZの明るさを増強するとともに自車線側の路肩部分の明るさを確保するようになっている。
【0073】
図8は、配光パターンPA3の形成過程を説明するための図であって、レンズ30の前面30aの要部およびロービーム用配光パターンPLの要部をそれぞれ斜視図で示している。
【0074】
図8に示すように、レンズ30の前面30aにおいて出射領域30aA3を構成している特定レンズ素子30sA3からの出射光によって形成される配光パターンPA3は、上述したとおり、その上端縁がロービーム用配光パターンPLの傾斜部CL3から上段カットオフラインCL2の右端部まで延びるように形成されている。
【0075】
一方、
図8において2点鎖線で示す配光パターンPA3оは、仮に出射領域30aA3に特定レンズ素子30sA3が形成されていないとした場合に形成される配光パターンであって、傾斜部CL3の下方近傍において斜め左上方向に延びるように形成されている。この配光パターンPA3оは、その上端縁が明瞭な明暗境界線として形成されたものとなる。これは発光素子22がその発光面22aの下端縁をレンズ30の光軸Ax上に位置させた状態で配置されていることによるものである。
【0076】
実際には、出射領域30aA3に特定レンズ素子30sA3が形成されているので、配光パターンPA3оは配光パターンPA3のように変化する。これは特定レンズ素子30sA3が、右半部30sA3Aから左半部30sA3Bにかけて凸曲面の曲率が徐々に変化する自由曲面で構成されていることにより、レンズ30の前面30aに到達した平行光をやや上方向に偏向させた上で右半部30sA3Aから左半部30sA3Bにかけて出射方向を徐々に変化させるようになっていることによるものである。
【0077】
また、出射領域30aA3は、単一の特定レンズ素子30sA3で構成されており、その表面には段差が存在していないので、配光パターンPA3として傾斜部CL3の上方空間にグレアの原因となる光溜りが不用意に形成されてしまうようなことはない。
【0078】
なお、第2灯具ユニット40からの照射光によって形成される配光パターンPB3も、レンズ50の出射領域50aB3を構成する特定レンズ素子50sB3によって、配光パターンPA3と同様にして形成されるようになっている。
【0079】
次に本実施形態の作用について説明する。
【0080】
本実施形態に係る車両用灯具10は、第1および第2灯具ユニット20、40の発光素子22、42からの光をレンズ30、50を介して灯具前方へ向けて照射することにより、Z型カットオフラインCLを有するロービーム用配光パターンPLを形成するように構成されているが、各レンズ30、50は、その前面30a、50aに形成された複数のレンズ素子の一部が自由曲面からなる表面形状を有する特定レンズ素子30sA3、50sB3として構成されており、特定レンズ素子30sA3、50sB3からの出射光によってZ型カットオフラインCLの一部を形成するように構成されているので、Z型カットオフラインCLの形成自由度を高めることができる。
【0081】
このように本実施形態によれば、発光素子22、42からの光をレンズ30、50を介して灯具前方へ向けて照射することにより、Z型カットオフラインCLを有するロービーム用配光パターンPLを形成するように構成された車両用灯具10において、そのZ型カットオフラインCLの形成自由度を高めることができる。
【0082】
その際、本実施形態においては、Z型カットオフラインCLにおいて下段カットオフラインCL1と上段カットオフライン2とを繋ぐ傾斜部CL3を、特定レンズ素子30sA3、50sB3からの出射光によって容易に形成することができる。
【0083】
特に本実施形態においては、特定レンズ素子30sA3、50sB3からの出射光によってZ型カットオフラインCLの傾斜部CL3と共に上段カットオフラインCL2の一部(すなわち右端部)を形成するように構成されているので、傾斜部CL3と上段カットオフラインCL2とが滑らかに繋がったZ型カットオフラインCLを形成することができる。
【0084】
しかも、第1および第2灯具ユニット20、40の発光素子22、42は、その発光面22a、42aの下端縁がレンズ30、50の中心(すなわち光軸Ax上)に位置するように配置されており、かつ、特定レンズ素子30sA3、50sB3は、レンズ30、50の下部領域において下方へ向けて扇状に拡がる縦長の外形形状を有しているので、特定レンズ素子30sA3、50sB3からの出射光によって形成される配光パターンPA3、PB3を、Z型カットオフラインCLの傾斜部CL3および上段カットオフラインCL2の一部の形成に適した形状で鮮明に形成することができる。
【0085】
その際、特定レンズ素子30sA3、50sB3の表面には段差が存在していないので、配光パターンPA3、PB3として傾斜部CL3の上方空間にグレアの原因となる光溜りが不用意に形成されてしまわないようにすることができる。
【0086】
さらに本実施形態においては、第1灯具ユニット20のレンズ30における前面30aの外周縁領域に位置するレンズ素子30s2からの出射光によってZ型カットオフラインCLの下段カットオフラインCL1を形成するとともに、第2灯具ユニット40のレンズ50における前面50aの外周縁領域に位置するレンズ素子50s2からの出射光によってZ型カットオフラインCLの上段カットオフラインCL2を形成するように構成されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0087】
すなわち、第1および第2灯具ユニット20、40のレンズ30、50においては、その後面30b、50bの外周縁領域から入射した光が、その前面30a、50aの外周縁領域から出射することとなるが、発光素子22、42はその発光面22a、42aが灯具前方を向いているので、レンズ30、50の後面30b、50bからの発光面22a、42aの見込み角はその外周縁領域において小さいものとなる。このため、レンズ30、50の前面30a、50aの外周縁領域に位置するレンズ素子30s2、50s2からの出射光によって形成される配光パターンPA1、PB1は小さくて明るいものとなる。したがって、配光パターンPA2によって下段カットオフラインCL1を形成するとともに配光パターンPB2によって上段カットオフラインCL2を形成することにより、これらをより鮮明に形成することができる。
【0088】
上記実施形態においては、発光素子12の発光面12Aが、1×1mm程度の外形形状を有しているものとして説明したが、これ以外の形状の発光面を有するものを用いることも可能である。
【0089】
上記実施形態においては、第1灯具ユニット20からの照射光によって形成される配光パターンPA3と第2灯具ユニット40からの照射光によって形成される配光パターンPB3とが同一形状で形成されるものとして説明したが、特定レンズ素子30sA3、50sB3の表面を構成する自由曲面の形状を両者間で異なったものとすることにより、配光パターンPA3、PB3が互いに異なる形状で形成されるようにすることも可能である。
【0090】
上記実施形態においては、各レンズ30、50の前面30a、50aに形成された複数のレンズ素子30s2、50s2が、比較的単純な凸曲面で構成されているものとして説明したが、これらを自由曲面からなる表面形状を有する特定レンズ素子として構成することも可能である。このような構成を採用することにより、下段カットオフラインCL1および上段カットオフラインCL2の鮮明度をさらに高めることが可能となる。
【0091】
上記実施形態においては、車両用灯具10からの照射光によってZ型カットオフラインCLを有する左配光のロービーム用配光パターンPLを形成するものとして説明したが、カットオフラインを有する配光パターンであれば、これ以外の配光パターンを形成する構成とすることも可能である。
【0092】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0093】
まず、上記実施形態の第1変形例について説明する。
【0094】
図9は、本変形例に係る第1および第2灯具ユニットのレンズ130、150を示す、
図5と同様の図である。
【0095】
図9に示すように、本変形例のレンズ130、150も、その基本的な構成は上記実施形態の場合と同様であるが、その前面130a、150aの構成が上記実施形態の場合と一部異なっている。
【0096】
すなわち、本変形例のレンズ130、150は、その前面130a、150aに新たな出射領域130aA5、150aB5が設けられた構成となっている。
【0097】
出射領域130aA5、150aB5は、前面130a、150aの上部領域において上方へ向けて扇状に拡がる縦長の外形形状を有する領域であって、光軸Axに関して出射領域30aA3、50aB3と対向する位置関係で形成されている。
【0098】
出射領域130aA5、150aB5は、凸曲面状の自由曲面からなる表面形状を有する単一の特定レンズ素子130sA5、150sB5で構成されており、レンズ130、150の後面30b、50bから平行光として到達した発光素子22、42(図示せず)からの光を、やや下方向に偏向させた上で各部位によって互いに異なる方向へ向けて出射させるように構成されている。
【0099】
図10は、本変形例に係る車両用灯具からの照射光によって上記仮想鉛直スクリーン上に形成されるロービーム用配光パターンPL-1を透視的に示す図である。
【0100】
このロービーム用配光パターンPL-1の基本的な形状は上記実施形態のロービーム用配光パターンPLと同様であるが、エルボ点Eの左側近傍に新たな配光パターンPA5、PB5が形成されている点で、上記実施形態のロービーム用配光パターンPLと異なっている。
【0101】
配光パターンPA5、PB5は、配光パターンPA3、PB3よりも明るさはやや劣るが配光パターンPA3、PB3よりもひと回り大きい配光パターンとして、配光パターンPA3、PB3の下端部と部分的に重複するようにして形成されている。
【0102】
本変形例においては、ロービーム用配光パターンPL-1に配光パターンPA5、PB5が追加形成されていることによって、その高光度領域HZが上記実施形態の場合よりも明るいものとなっている。
【0103】
ただし、新たに出射領域130aA5、150aB5が設けられたことによって出射領域30aA1、50aB1の面積はその分だけ小さくなっているので、広拡散領域を形成している配光パターンPA1、PB1は上記実施形態の場合よりも明るさが劣るものとなっている。
【0104】
なお、配光パターンPA5、PB5には、配光パターンPA3、PB3の場合のような明瞭な明暗境界線は形成されないので、高光度領域HZの部分に配光ムラが発生してしまうことはない。
【0105】
本変形例の構成を採用することにより、ロービーム用配光パターンPL-1を車両前方走行路の遠方視認性に優れたものとすることができる。
【0106】
なお、出射領域130aA5、150aB5は、自由曲面からなる表面形状を有する単一の特定レンズ素子130sA5、150sB5で構成されているので、その表面形状を適宜変更することにより高光度領域HZの大きさや形状の調整を容易に行うことが可能である。
【0107】
次に、上記実施形態の第2変形例について説明する。
【0108】
図11は、本変形例に係る灯具ユニットのレンズ250を示す、
図5と同様の図である。
【0109】
図11に示すように、本変形例のレンズ250の基本的な構成は、上記実施形態における第2灯具ユニット40のレンズ50と同様であるが、その前面250aの構成が上記実施形態の場合と一部異なっている。
【0110】
すなわち、本変形例のレンズ250は、5つの出射領域50aB1、50aB3、50aB4、250aB6、250aB7に区分けされている。
【0111】
出射領域50aB1、50aB3、50aB4の構成は、上記実施形態のレンズ50の場合と同様であり、出射領域250aB6の構成は、上記実施形態のレンズ30の出射領域30aA2の左半部と同様であり、出射領域250aB7の構成は、上記実施形態のレンズ50の出射領域50aB2の右半部と同様である。すなわち、出射領域250aB6には、出射領域30aA2のレンズ素子30sA2と同様のレンズ素子250sB6が割り付けられており、出射領域250aB7には、出射領域50aB2のレンズ素子50sB2と同様のレンズ素子250sB7が割り付けられている。
【0112】
図12は、本変形例に係る車両用灯具からの照射光によって上記仮想鉛直スクリーン上に形成されるロービーム用配光パターンPL-2を透視的に示す図である。
【0113】
このロービーム用配光パターンPL-2の基本的な形状は上記実施形態のロービーム用配光パターンPLと同様であるが、上記実施形態の配光パターンPA1、PB1の代わりに出射領域50aB1からの出射光による配光パターンPB1が形成されており、上記実施形態の配光パターンPA2の代わりに出射領域250aB6からの出射光による配光パターンPB6が形成されており、上記実施形態の配光パターンPB2の代わりに出射領域250aB7からの出射光による配光パターンPB7が形成されており、上記実施形態の配光パターンPA3、PB3の代わりに出射領域50aB3からの出射光による配光パターンPB3が形成されている。
【0114】
本変形例の構成を採用することにより、単一の灯具ユニットからの照射光によって上記実施形態のロービーム用配光パターンPLと略同様の光度分布を有するロービーム用配光パターンPL-2を形成することができる。
【0115】
ただし、ロービーム用配光パターンPL-2の明るさは上記実施形態のロービーム用配光パターンPLの明るさの半分程度になってしまうので、その光源として上記実施形態の発光素子42よりも明るい発光素子を用いることが望ましい。
【0116】
なお、上記実施形態およびその変形例において諸元として示した数値は一例にすぎず、これらを適宜異なる値に設定してもよいことはもちろんである。
【0117】
また本願発明は、上記実施形態およびその変形例に記載された構成に限定されるものではなく、これ以外の種々の変更を加えた構成が採用可能である。
【符号の説明】
【0118】
10 車両用灯具
12 ランプボディ
14 透光カバー
20 第1灯具ユニット
22、42 発光素子
22a、42a 発光面
24 基板
30、50、130、150、250 レンズ
30a、50a、130a、150a、250a 前面
30aA1、30aA2、30aA3、50aB1、50aB2、50aB3、50aB4、130aA5、150aB5、250aB6、250aB7 出射領域
30b、50b 後面
30bA、50bA 屈折制御部
30bAs、50bAs レンズ素子
30bB、50bB 全反射制御部
30bBs、50bBs 全反射プリズム素子
30sA1、30sA2、50sB1、50sB2、50aB4、250sB6、250sB7 レンズ素子
30sA3、50sB3、130sA5、150sB5 特定レンズ素子
30sA3A、50sB3A 右半部
30sA3B、50sB3B 左半部
40 第2灯具ユニット
Ax 光軸
CL Z型カットオフライン
CL1 下段カットオフライン
CL2 上段カットオフライン
CL3 傾斜部
E エルボ点
HZ 高光度領域
PA1、PA2、PA3、PA5、PB1、PB2、PB3、PB4、PB5、PB6、PB7 配光パターン
PL、PL-1、PL-2 ロービーム用配光パターン