(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139033
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】雨量監視システムおよび雨量監視プログラム
(51)【国際特許分類】
G01W 1/10 20060101AFI20220915BHJP
G08B 31/00 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
G01W1/10 P
G01W1/10 T
G08B31/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021039238
(22)【出願日】2021-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】池田 陵志
(72)【発明者】
【氏名】森本 耕二
【テーマコード(参考)】
5C087
【Fターム(参考)】
5C087AA02
5C087AA03
5C087DD02
5C087DD22
5C087EE08
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF04
5C087GG08
5C087GG09
5C087GG14
5C087GG66
5C087GG70
5C087GG83
(57)【要約】
【課題】24時間累積雨量が点検実施基準を超えるか否かを容易かつ適正に監視可能にする。
【解決手段】 各発電所の所在地を含む発電所情報を記憶する発電所情報データベース31と、広域の雨雲レーダー情報と発電所情報とに基づいて、降雨がある発電所を降雨発電所として抽出する発電所抽出タスク41と、複数の観測所の雨量データのなかから降雨発電所の周辺の観測所の雨量データを取得して、24時間当たりの雨量である24時間累積雨量を算出する豪雨監視タスク42と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各発電所の所在地を含む発電所情報を記憶する発電所情報記憶手段と、
広域の雨雲レーダー情報と前記発電所情報とに基づいて、降雨がある発電所を降雨発電所として抽出する発電所抽出手段と、
複数の観測所の雨量データのなかから前記降雨発電所の周辺の観測所の雨量データを取得して、24時間当たりの雨量である24時間累積雨量を算出する豪雨監視手段と、
を備えることを特徴とする雨量監視システム。
【請求項2】
前記豪雨判定手段は、前記24時間累積雨量が所定の累積雨量を超えている場合に、所定の連絡先に通知する、
ことを特徴とする請求項1に記載の雨量監視システム。
【請求項3】
前記豪雨判定手段は、前記24時間累積雨量が所定の累積雨量を超えていない場合に、今後前記所定の累積雨量を超えるか否かを推定し、前記所定の累積雨量を超えると推定する場合には、あと何時間で超えるかを推定する、
ことを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の雨量監視システム。
【請求項4】
前記発電所抽出手段は、前記雨雲レーダー情報が入力されると前記降雨発電所が出力されるように、過去の実績データに基づいて機械学習された雨雲レーダー解析用学習モデルを用いる、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の雨量監視システム。
【請求項5】
前記豪雨判定手段は、前記雨量データが入力されると今後前記所定の累積雨量を超えるか否か、あと何時間で超えるかの推定結果が出力されるように、過去の実績データに基づいて機械学習された豪雨推定用学習モデルを用いる、
ことを特徴とする請求項3に記載の雨量監視システム。
【請求項6】
コンピュータを、
各発電所の所在地を含む発電所情報を記憶する発電所情報記憶手段と、
広域の雨雲レーダー情報と前記発電所情報とに基づいて、降雨がある発電所を降雨発電所として抽出する発電所抽出手段と、
複数の観測所の雨量データのなかから前記降雨発電所の周辺の観測所の雨量データを取得して、24時間当たりの雨量である24時間累積雨量を算出する豪雨監視手段、
として機能させることを特徴とする雨量監視プログラム。
【請求項7】
前記豪雨判定手段は、前記24時間累積雨量が所定の累積雨量を超えていない場合に、今後前記所定の累積雨量を超えるか否かを推定し、前記所定の累積雨量を超えると推定する場合には、あと何時間で超えるかを推定する、
ことを特徴とする請求項6に記載の雨量監視プログラム。
【請求項8】
前記発電所抽出手段は、前記雨雲レーダー情報が入力されると前記降雨発電所が出力されるように、過去の実績データに基づいて機械学習された雨雲レーダー解析用学習モデルを用いる、
ことを特徴とする請求項6または7のいずれか1項に記載の雨量監視プログラム。
【請求項9】
前記豪雨判定手段は、前記雨量データが入力されると今後前記所定の累積雨量を超えるか否か、あと何時間で超えるかの推定結果が出力されるように、過去の実績データに基づいて機械学習された豪雨推定用学習モデルを用いる、
ことを特徴とする請求項7に記載の雨量監視プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電所周辺における雨量を監視する雨量監視システムおよび雨量監視プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所においては、各電力会社などで規定された土木建築関係設備維持要領に基づいて、所定の豪雨があった際には、その後火力発電所の土木設備に異常がないか否かを巡視点検している。ここで、所定の豪雨とは、ある時刻から遡った24時間(1日)当たりの雨量(24時間累積雨量)が所定の累積雨量(点検実施基準)を超える場合であり、次のようにして、所定の豪雨の発生を監視していた。すなわち、例えば、国土交通省防災情報提供センターのWebサイト(ホームページ)に提供されている各地点・各観測所の雨量データから、各発電所周辺の1時間ごとの雨量データを取得して、所定の豪雨が発生していないかを監視する。
【0003】
この際、土木技術者が各発電所に常駐していないケースが多く、電力会社の本社などに勤務している場合には、インターネット上で管轄地方(例えば、中国地方)の雨雲状況などを監視して、雨が降っていると考えられる発電所周辺の雨量データを国土交通省防災情報提供センターのWebサイトから取得する。そして、取得した1時間ごとの雨量データに基づいて24時間累積雨量を算出し、点検実施基準を超えているか否かを把握、確認していた。
【0004】
一方、時々刻々と変化する任意点の降雨量を高精度に推定することができる、という降雨量推定システムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。このシステムは、気象レーダーによるエコー強度情報と各雨量計による雨量情報に基づいて、定点におけるエコー強度と降雨量との関係を学習し、学習結果に従って任意点のエコー強度から同任意点の降雨量を推測する、などというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のように、インターネット上で管轄地方の雨雲状況などを監視し、雨が降っていると考えられる発電所周辺の雨量データをWebサイトから取得して、24時間累積雨量を算出するという作業は、多大な労力と時間を要していた。しかも、人が行うため、雨雲状況の監視などに精度、判断のバラツキがあり得、適正に監視できないおそれがあった。さらに、近年ゲリラ豪雨が多発しており、短時間で24時間累積雨量が点検実施基準を超える事態が今後多発すると考えられ、容易かつ適正に雨量を監視できるようにすることが望まれていた。
【0007】
一方、特許文献1に記載の降雨量推定システムは、任意点の降雨量を推定することは可能ではあるが、発電所周辺における24時間累積雨量が点検実施基準を超えるか否かを監視することはできない。
【0008】
そこで本発明は、24時間累積雨量が点検実施基準を超えるか否かを容易かつ適正に監視可能な雨量監視システムおよび雨量監視プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、各発電所の所在地を含む発電所情報を記憶する発電所情報記憶手段と、広域の雨雲レーダー情報と前記発電所情報とに基づいて、降雨がある発電所を降雨発電所として抽出する発電所抽出手段と、複数の観測所の雨量データのなかから前記降雨発電所の周辺の観測所の雨量データを取得して、24時間当たりの雨量である24時間累積雨量を算出する豪雨監視手段と、を備えることを特徴とする雨量監視システムである。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載の雨量監視システムにおいて、前記豪雨判定手段は、前記24時間累積雨量が所定の累積雨量を超えている場合に、所定の連絡先に通知する、ことを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の雨量監視システムにおいて、前記豪雨判定手段は、前記24時間累積雨量が所定の累積雨量を超えていない場合に、今後前記所定の累積雨量を超えるか否かを推定し、前記所定の累積雨量を超えると推定する場合には、あと何時間で超えるかを推定する、ことを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1から3に記載の雨量監視システムにおいて、前記発電所抽出手段は、前記雨雲レーダー情報が入力されると前記降雨発電所が出力されるように、過去の実績データに基づいて機械学習された雨雲レーダー解析用学習モデルを用いる、ことを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明は、請求項3に記載の雨量監視システムにおいて、前記豪雨判定手段は、前記雨量データが入力されると今後前記所定の累積雨量を超えるか否か、あと何時間で超えるかの推定結果が出力されるように、過去の実績データに基づいて機械学習された豪雨推定用学習モデルを用いる、ことを特徴とする。
【0014】
請求項6の発明は、コンピュータを、各発電所の所在地を含む発電所情報を記憶する発電所情報記憶手段と、広域の雨雲レーダー情報と前記発電所情報とに基づいて、降雨がある発電所を降雨発電所として抽出する発電所抽出手段と、複数の観測所の雨量データのなかから前記降雨発電所の周辺の観測所の雨量データを取得して、24時間当たりの雨量である24時間累積雨量を算出する豪雨監視手段、として機能させることを特徴とする雨量監視プログラムである。
【0015】
請求項7の発明は、請求項6に記載の雨量監視プログラムにおいて、前記豪雨判定手段は、前記24時間累積雨量が所定の累積雨量を超えていない場合に、今後前記所定の累積雨量を超えるか否かを推定し、前記所定の累積雨量を超えると推定する場合には、あと何時間で超えるかを推定する、ことを特徴とする。
【0016】
請求項8の発明は、請求項6または7に記載の雨量監視プログラムにおいて、前記発電所抽出手段は、前記雨雲レーダー情報が入力されると前記降雨発電所が出力されるように、過去の実績データに基づいて機械学習された雨雲レーダー解析用学習モデルを用いる、ことを特徴とする。
【0017】
請求項9の発明は、請求項7に記載の雨量監視プログラムにおいて、前記豪雨判定手段は、前記雨量データが入力されると今後前記所定の累積雨量を超えるか否か、あと何時間で超えるかの推定結果が出力されるように、過去の実績データに基づいて機械学習された豪雨推定用学習モデルを用いる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1および請求項6に記載の発明によれば、広域の雨雲レーダー情報から降雨発電所が抽出され、複数の観測所の雨量データから降雨発電所の周辺の雨量データが取得されて、24時間累積雨量が算出される。このように、自動的に降雨発電所の周辺の雨量データが取得されて24時間累積雨量が算出されるため、各発電所において24時間累積雨量が点検実施基準を超えるか否かを容易かつ適正に監視することが可能となる。この結果、ゲリラ豪雨が多発して、短時間で24時間累積雨量が点検実施基準を超える事態が多発したとしても、容易かつ適正に事態を把握して適正かつ迅速に対処することが可能となる。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、24時間累積雨量が所定の累積雨量(例えば、点検実施基準)を超えていると、その旨が所定の連絡先に通知されるため、通知を受けた連絡先において適正かつ迅速に対処することが可能となる。
【0020】
請求項3および請求項7に記載の発明によれば、24時間累積雨量が所定の累積雨量を超えていない場合には、今後所定の累積雨量を超えるか否かが推定されるため、将来の事態に適正かつ迅速に対処することが可能となる。しかも、所定の累積雨量を超えると推定される場合には、さらに、あと何時間で超えるかが推定されるため、推定時間に応じたより適正かつ迅速な対処を行うことが可能となる。
【0021】
請求項4および請求項8に記載の発明によれば、機械学習された雨雲レーダー解析用学習モデルを用いて雨雲レーダー情報から降雨発電所が抽出されるため、精度高く適正に降雨発電所を抽出することが可能となる。この結果、各発電所において24時間累積雨量が点検実施基準を超えるか否かを漏れなく適正に(誤認なく)監視することが可能となる。
【0022】
請求項5および請求項9に記載の発明によれば、機械学習された豪雨推定用学習モデルを用いて今後24時間累積雨量が所定の累積雨量を超えるか否か、あと何時間で超えるかが推定されるため、精度高く適正に推定することが可能となる。この結果、各発電所において24時間累積雨量が点検実施基準を超えるか否かをより適正に監視することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】この発明の実施の形態に係る雨量監視システムを示す概略構成ブロック図である。
【
図2】
図1の雨量監視システムの発電所情報データベースのデータ構成図である。
【
図3】
図2の発電所情報データベースの情報に基づいて各発電所の所在地を地図上に示した図である。
【
図4】この発明の実施の形態に係る雨雲レーダー画像例を示す図である。
【
図5】
図3の地図と
図4の雨雲レーダー画像とを重ね合わせた図である。
【
図6】
図1の雨量監視システムの雨雲レーダー解析用学習モデルの概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図7】この発明の実施の形態における複数の観測所の雨量データを示す図である。
【
図8】この発明の実施の形態における降雨発電所の気象データを示す図である。
【
図9】
図1の雨量監視システムの豪雨監視タスクで算出した24時間累積雨量の第1の例を示す図である。
【
図10】
図1の雨量監視システムの豪雨監視タスクで算出した24時間累積雨量の第2の例を示す図である。
【
図11】
図1の雨量監視システムの豪雨推定用学習モデルの概略構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0025】
図1は、この発明の実施の形態に係る雨量監視システム1を示す概略構成ブロック図である。この雨量監視システム1は、発電所周辺における雨量を監視するシステムであり、この実施の形態では、1体のコンピュータ・サーバで雨量監視システム1が構成されている場合について説明するが、複数のコンピュータや記憶装置などで構成してもよい。また、この実施の形態では、監視対象の発電所を火力発電所とし、火力発電所で豪雨があった場合には、その後火力発電所の土木設備に異常がないか否かを巡視点検する必要があるため、主として豪雨発生の有無を監視する。
【0026】
ここで、豪雨とは、ある時刻から遡った24時間(1日)当たりの雨量(24時間累積雨量)が所定の累積雨量(点検実施基準、この実施の形態では150mm)を超える降雨、あるいは、1時間当たりの雨量が所定の時間雨量(この実施の形態では40mm)を超える降雨とする。また、この実施の形態では、主として日本の特定の区画地方(中国地方や関東地方、四国地方など)に電力を供給する電力事業者が、自己の管轄地方等に設置されている火力発電所を監視するものとし、中国地方を例にして以下に説明する。
【0027】
雨量監視システム1は、主として、入力部21と、表示部22と、通信部23と、カメラ24と、記憶部3と、メインタスク4と、これらを制御などする中央処理部5とを備える。
【0028】
入力部21は、各種情報や指令などを入力するためのインターフェイスであり、表示部22は、各種データや情報などを表示するディスプレイである。通信部23は、インターネット網や電話通信網などを介して外部と通信するためのインターフェイスであり、カメラ24は、画像(静止画、動画)を撮影するための撮影装置である。
【0029】
記憶部3は、主として、発電所情報データベース(発電所情報記憶手段)31と、雨雲レーダー解析用学習モデル32と、雨雲レーダー解析用実績データベース33と、豪雨推定用学習モデル34と、豪雨推定用実績データベース35と、を備える。ここでは、発電所情報データベース31について説明し、学習モデル32、34と実績データベース33、35については後述する。
【0030】
発電所情報データベース31は、各火力発電所の所在地を含む発電所情報を記憶するデータベースであり、
図2に示すように、火力発電所の識別情報である発電所名311ごとに、位置312、雨量計313、震度計314、風速計315、その他316が記憶されている。位置312には、火力発電所の所在地の緯度、経度が記憶され、さらに、
図3に示すように、各火力発電所G1~G8の位置が図示された地図が記憶されている。
【0031】
雨量計313には、この火力発電所の雨量をどこの計器で計測された雨量とするかが記憶されている。具体的にこの実施の形態では、国土交通省防災情報提供センターのWebサイト(ホームページ)に雨量データが開示、提供されている各観測所のうち、この火力発電所に近い観測所の識別情報(名称)が記憶されている。すなわち、火力発電所の雨量は、この火力発電所に近い観測所で計測された雨量となる。なお、該Webサイトには降り始めからの累積雨量が開示されるが、24時間累積雨量とは異なる。
【0032】
同様に、震度計314には、この火力発電所で発生した地震の震度をどこの計器で計測された震度とするかが記憶され、例えば、自発電所に設置されて震度計である旨や、地方気象台の識別情報(名称)が記憶されている。風速計315には、この火力発電所での風速、風向きをどこの計器で計測された値とするかが記憶され、例えば、自発電所に設置されて風速計である旨や、地方気象台の識別情報(名称)が記憶されている。
【0033】
また、各火力発電所G1~G8において気温・温度も計測され、この実施の形態では、気温データ、風向きを含む風速データは、逐次取得されて記憶部3に記憶、蓄積されるようになっている。また、後述するように、雨量データについては、豪雨監視タスク42において必要に応じて取得するようになっているが、各火力発電所G1~G8の雨量データを逐次取得して記憶部3に記憶、蓄積するようにしてもよい。
【0034】
メインタスク4は、現在または過去に降雨がある火力発電所の24時間累積雨量を算出などするタスクであり、発電所抽出タスク(発電所抽出手段)41と、豪雨監視タスク(豪雨監視手段)42と、第1の学習タスク43と、第2の学習タスク44と、を備える。
【0035】
発電所抽出タスク41は、広域の雨雲レーダー情報と発電所情報とに基づいて、降雨がある火力発電所を降雨発電所として抽出するタスク・プログラムである。すなわち、雨雲レーダー画像と各火力発電所G1~G8の所在地・位置とに基づいて、雨が降っている、あるいは降ったと推定される火力発電所G1~G8を降雨発電所として抽出する。具体的にこの実施の形態では、インターネット上に提供されている
図4に示すような中国地方の雨雲レーダー画像を取得し、雨雲C内に位置する火力発電所G1~G8を抽出する(割り出す)。例えば、
図5に示すように、各火力発電所G1~G8の位置が図示された地図に雨雲レーダー画像を重ね合わせて、雨雲C内に位置する第2の火力発電所G2と第3の火力発電所G3を降雨発電所として抽出する。
【0036】
ここで、雨雲レーダー画像をインターネット上に開示、提供するWebサイトに雨量監視システム1が直接アクセスして、雨雲レーダー画像を取得、監視してもよいし、別のコンピュータなどで該Webサイトから取得した雨雲レーダー画像を雨量監視システム1に取り込んだりしてもよい。あるいは、雨雲レーダー画像をカメラ24で撮影して雨量監視システム1に読み込んでもよく、どのような形態でもよい。また、後述する24時間累積雨量の算出、監視を適正に行えるように、このような降雨発電所の抽出つまり発電所抽出タスク41の起動を定期的に行うようになっている。
【0037】
このような発電所抽出タスク41は、降雨発電所の抽出において、雨雲レーダー情報(雨雲レーダー画像)が入力されると降雨発電所が出力されるように、過去の実績データに基づいて機械学習された雨雲レーダー解析用学習モデル32を用いる。この雨雲レーダー解析用学習モデル32は、第1の学習タスク43によって作成される。
【0038】
すなわち、第1の学習タスク43は、雨雲レーダー解析用実績データベース33に記録・蓄積されている過去の実績データを用いて、ニューラルネットワーク等の公知の機械学習アルゴリズムにより雨雲レーダー解析用学習モデル32を作成する。この雨雲レーダー解析用実績データベース33は、入力情報として、過去に取得された雨雲レーダー画像と、この雨雲レーダー画像の状態時に実際に降雨があった火力発電所を含む実績データが記録・蓄積されているデータベースである。なお、過去の実績データには、実際の雨雲レーダー画像と実際に降雨があった火力発電所に基づいて作成されたデータの他、事前訓練などで作成されたデータなどが含まれる。
【0039】
この第1の学習タスク43は、
図6に示すように、ニューラルネットワークを利用した機械学習・深層学習を用い、雨雲レーダー解析用実績データベース33に記録されている実績データに基づいて、例えば、雨雲レーダー画像を入力層、降雨発電所を出力層、雨雲レーダー画像から降雨発電所への画像解析処理を中間層とするニューラルネットワークを作成する。そして、第1の学習タスク43は、雨雲レーダー解析用学習モデル32の実績データを学習データとして用いて、中間層における各種パラメータについて学習を行う。すなわち、第1の学習タスク43は、雨雲レーダー画像から漏れなくかつ精度よく降雨発電所が抽出されるように、中間層における各種パラメータの学習を行う。
【0040】
豪雨監視タスク42は、各地に設置された複数・多数の観測所の雨量データのなかから降雨発電所の周辺の観測所の雨量データを取得して、24時間累積雨量の算出などを行うタスク・プログラムである。ここで、この実施の形態では、複数の観測所の雨量データとは、全国の各観測所の雨量データを提供する国土交通省防災情報提供センターのWebサイトに記憶、提供されている雨量データとするが、どのようなリソースのデータであってもよい。そして、雨量監視システム1が直接該Webサイトにアクセスして所望の雨量データを検索、取得してもよいし、別のコンピュータなどで該Webサイトにアクセスして、必要な雨量データ(例えば、各火力発電所G1~G8に近い観測所の雨量データ)のみを記憶したデータ群から所望の雨量データを検索、取得してもよい。また、この実施の形態における雨量データは、
図7に示すように、1時間ごとの降雨量(時間雨量)であるが、後述する24時間累積雨量が算出できればどのようなデータであってもよい。
【0041】
このような複数の観測所の雨量データのなかから、発電所抽出タスク41で抽出された降雨発電所の周辺の観測所、つまり、雨量計313に記憶された観測所の雨量データを取得する。例えば、上記のように、第2の火力発電所G2と第3の火力発電所G3が降雨発電所として抽出され、第2の火力発電所G2に近い観測所が観測所Bで、第3の火力発電所G3に近い観測所が観測所Cとする。この場合、
図7に示す各地の観測所の雨量データのなかから、第2の火力発電所G2に対しては観測所Bの雨量データ、第3の火力発電所G3に対しては観測所Cの雨量データを取得する。また、この実施の形態では、
図8に示すように、取得した雨量データに対応させて(日時を合わせて)、気温、風向き、風速のデータも取得、記憶する。なお、
図8に示すような雨量、気温、風向き、風速を含む気象データを降雨発電所のみならず、すべての火力発電所G1~G8に対して予め記憶、蓄積するようにしてもよい。
【0042】
次に、取得した雨量データに基づいて24時間累積雨量を算出する。ここで、24時間累積雨量とは、24時間当たりの雨量であり、任意の時刻から24時間遡った24時間における累積雨量である。例えば、
図9に示すように、2月1日の23時から24時間遡った、2月1日の0時から23時までの各時間雨量を加算して24時間累積雨量を算出する。同様に、2月1日の2時から2月2日の1時までの各時間雨量を加算して24時間累積雨量を算出する。さらに、現在時刻から24時間遡った24時間累積雨量を算出する。このように、24時間累積雨量は、降雨期間における任意の時刻から24時間における累積雨量であり、日を跨いでもよい。
【0043】
ここで、どの時間間隔ごとにどの期間だけ24時間累積雨量を算出するかは、24時間累積雨量が所定の累積雨量を超えていないか否かを漏れなく適正に監視できるように設定されている。例えば、2時間間隔ごとに24時間累積雨量を算出し、降雨が始まってから(降水量がゼロを超えてから)降雨が終わるまで(降水量ゼロの状態が数時間継続するまで)の期間において24時間累積雨量を算出する。
【0044】
続いて、算出した24時間累積雨量が所定の累積雨量(150mm)を超えている場合には、その旨を所定の連絡先に通知する。すなわち、
図10に示すように、算出したいずれかの24時間累積雨量が点検実施基準を超えている場合には、その旨と24時間累積雨量の値を含む情報を、予め登録された担当者や担当部署の端末などに通知する。また、この実施の形態では、各時間雨量が所定の時間雨量(40mm)を超えているか否かも監視し、超える場合には、24時間累積雨量が点検実施基準を超えていなくても、その旨と時間雨量の値を含む情報を、予め登録された担当者や担当部署の端末などに通知する。
【0045】
一方、いずれの24時間累積雨量も点検実施基準を超えていない場合には、今後24時間累積雨量が点検実施基準を超えるか否かを推定し、24時間累積雨量を超えると推定する場合には、あと何時間で超えるかを推定する。すなわち、現時刻までは点検実施基準を超える24時間累積雨量はないが、今後降雨が継続して点検実施基準を超えることがあるか、いつ点検実施基準を超えるかを、現時刻までの雨量データつまり雨の降り具合や過去のデータなどに基づいて推定する。そして、今後24時間累積雨量が点検実施基準を超えると推定される場合には、あと何時間で超えるかを含む情報を、予め登録された担当者や担当部署の端末などに通知する。
【0046】
この推定に際して、雨量データが入力されると今後所定の累積雨量を超えるか否か、あと何時間で超えるかの推定結果が出力されるように、過去の実績データに基づいて機械学習された豪雨推定用学習モデル34を用いる。さらに、この実施の形態では、雨量データのみならず、気温、風向き、風速を含む気象データに基づいて推定する。この豪雨推定用学習モデル34は、第2の学習タスク44によって作成される。
【0047】
すなわち、第2の学習タスク44は、豪雨推定用実績データベース35に記録・蓄積されている過去の実績データを用いて、ニューラルネットワーク等の公知の機械学習アルゴリズムにより豪雨推定用学習モデル34を作成する。この豪雨推定用実績データベース35は、入力情報として、過去に取得された気象データと、この気象データに対応する各24時間累積雨量の履歴・変動傾向(点検実施基準を超える場合と超えない場合を含む)と、を含む実績データが記録・蓄積されているデータベースである。なお、過去の実績データには、実際の気象データと実際の24時間累積雨量の履歴に基づいて作成されたデータの他、事前訓練などで作成されたデータなどが含まれる。
【0048】
この第2の学習タスク44は、
図11に示すように、ニューラルネットワークを利用した機械学習・深層学習を用い、豪雨推定用実績データベース35に記録されている実績データに基づいて、例えば、気象データを入力層、今後点検実施基準をあと何時間で超えるか、あるいは超えないかの推定結果を出力層、気象データから推定結果への解析処理を中間層とするニューラルネットワークを作成する。そして、第2の学習タスク44は、豪雨推定用学習モデル34の実績データを学習データとして用いて、中間層における各種パラメータについて学習を行う。すなわち、第2の学習タスク44は、気象データに基づいて精度よく推定結果が得られるように、中間層における各種パラメータの学習を行う。
【0049】
次に、このような構成の雨量監視システム1の動作について説明する。
【0050】
まず、定期的に発電所抽出タスク41が起動され、取得・入力された雨雲レーダー画像に基づいて降雨がある火力発電所G1~G8が降雨発電所として抽出される。次に、豪雨監視タスク42が起動され、降雨発電所の周辺の観測所の雨量データが取得されて、24時間累積雨量が算出される。その結果、24時間累積雨量が点検実施基準を超えている場合、あるいは、時間雨量が所定の時間雨量を超えている場合には、その旨などが予め登録された担当者や担当部署の端末などに通知される。ここで、雨の降り具合や発電所抽出タスク41の起動タイミングなどによって、雨が降り終わった後に24時間累積雨量が点検実施基準を超えたことが確認・監視されたり、雨が降っている途中に確認されたりする場合がある。
【0051】
一方、24時間累積雨量が点検実施基準を超えていない場合には、今後24時間累積雨量が点検実施基準を超えるか否か、あと何時間で超えるかが推定される。その結果、今後24時間累積雨量が点検実施基準を超えると推定される場合には、あと何時間で超えるかを含む情報が、予め登録された担当者や担当部署の端末などに通知される。続いて、再び発電所抽出タスク41が起動され、同様の処理が繰り返されるものである。ここで、24時間累積雨量が点検実施基準を超えていることが再び確認されても、再度担当者などに通知しない。一方、あと何時間で超えるかが再度推定され、その値(何時間か)が前回と異なる場合には、その推定結果を担当者などに通知し、前回と同じ場合には担当者などに通知しないようになっている。
【0052】
以上のように、この雨量監視システム1によれば、広域の雨雲レーダー情報・画像から降雨発電所が抽出され、複数の観測所の雨量データから降雨発電所の周辺の雨量データが取得されて、24時間累積雨量が算出される。このように、自動的に降雨発電所の周辺の雨量データが取得されて24時間累積雨量が算出されるため、各火力発電所G1~G8において24時間累積雨量が点検実施基準を超えるか否かを容易かつ適正に監視することが可能となる。この結果、ゲリラ豪雨が多発して、短時間で24時間累積雨量が点検実施基準を超える事態が多発したとしても、容易かつ適正に事態を把握して適正かつ迅速に対処することが可能となる。
【0053】
また、24時間累積雨量が点検実施基準を超えていると、その旨が所定の連絡先に通知されるため、通知を受けた連絡先において適正かつ迅速に対処することが可能となる。
【0054】
一方、24時間累積雨量が点検実施基準を超えていない場合には、今後点検実施基準を超えるか否かが推定されるため、将来の事態に適正かつ迅速に対処することが可能となる。しかも、点検実施基準を超えると推定される場合には、さらに、あと何時間で超えるかが推定されるため、推定時間に応じたより適正かつ迅速な対処を行うことが可能となる。
【0055】
また、機械学習された雨雲レーダー解析用学習モデル32を用いて雨雲レーダー情報・画像から降雨発電所が抽出されるため、精度高く適正に降雨発電所を抽出することが可能となる。この結果、各火力発電所G1~G8において24時間累積雨量が点検実施基準を超えるか否かを漏れなく適正に(誤認なく)監視することが可能となる。
【0056】
同様に、機械学習された豪雨推定用学習モデル34を用いて今後24時間累積雨量が点検実施基準を超えるか否か、あと何時間で超えるかが推定されるため、精度高く適正に推定することが可能となる。この結果、各火力発電所G1~G8において24時間累積雨量が点検実施基準を超えるか否かをより適正に監視することが可能となる。
【0057】
以上、この発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、複数の観測所の雨量データのリソースを国土交通省防災情報提供センターのWebサイトとしているが、他のWebサイトやデータベースなどをリソースとしてもよい。広域の雨雲レーダー情報・画像についても同様に、どのリソースからの情報・画像であってもよい。
【0058】
また、定期的に発電所抽出タスク41が起動され、続いて豪雨監視タスク42が起動されるようになっているが、その他のタイミングで発電所抽出タスク41と豪雨監視タスク42を連続的に、あるいは、単独的に起動させてもよい。例えば、発電所抽出タスク41を常時起動させて雨雲レーダー情報・画像を常時監視し、降雨発電所が抽出された場合に、この降雨発電所に対して定期的に豪雨監視タスク42を起動させて24時間累積雨量を監視する。続いて、発電所抽出タスク41によって別の降雨発電所が抽出された場合には、この降雨発電所に対しても定期的に豪雨監視タスク42を起動させる、というようにしてもよい。
【0059】
一方、次のような雨量監視プログラムを汎用のコンピュータにインストールすることで、上記のような雨量監視システム1を構成してもよい。すなわち、コンピュータを、各発電所の所在地を含む発電所情報を記憶する発電所情報記憶手段(発電所情報データベース31)と、広域の雨雲レーダー情報と発電所情報とに基づいて、降雨がある発電所を降雨発電所として抽出する発電所抽出手段(発電所抽出タスク41)と、複数の観測所の雨量データのなかから降雨発電所の周辺の観測所の雨量データを取得して、24時間当たりの雨量である24時間累積雨量を算出する豪雨監視手段(豪雨監視タスク42)、として機能させる雨量監視プログラムであり、豪雨判定手段は、24時間累積雨量が所定の累積雨量を超えていない場合に、今後所定の累積雨量を超えるか否かを推定し、所定の累積雨量を超えると推定する場合には、あと何時間で超えるかを推定し、発電所抽出手段は、雨雲レーダー情報が入力されると降雨発電所が出力されるように、過去の実績データに基づいて機械学習された雨雲レーダー解析用学習モデル32を用い、豪雨判定手段は、雨量データが入力されると今後所定の累積雨量を超えるか否か、あと何時間で超えるかの推定結果が出力されるように、過去の実績データに基づいて機械学習された豪雨推定用学習モデル34を用いる。
【符号の説明】
【0060】
1 雨量監視システム
3 記憶部
31 発電所情報データベース(発電所情報記憶手段)
32 雨雲レーダー解析用学習モデル
33 雨雲レーダー解析用実績データベース
34 豪雨推定用学習モデル
35 豪雨推定用実績データベース
4 メインタスク
41 発電所抽出タスク(発電所抽出手段)
42 豪雨監視タスク(豪雨監視手段)
43 第1の学習タスク
44 第2の学習タスク
G1~G8 火力発電所