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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139038
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】支持具
(51)【国際特許分類】
   F16L 3/24 20060101AFI20220915BHJP
   F16B 21/02 20060101ALI20220915BHJP
   F16B 1/00 20060101ALI20220915BHJP
   H02G 3/30 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
F16L3/24 C
F16B21/02 A
F16B1/00 A
H02G3/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021039244
(22)【出願日】2021-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】390009999
【氏名又は名称】日動電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】志野 英基
【テーマコード(参考)】
3H023
3J037
5G363
【Fターム(参考)】
3H023AA04
3H023AB04
3H023AC04
3H023AE02
3J037AA01
3J037CA06
5G363AA12
5G363BA01
5G363DA13
(57)【要約】
【課題】支持基材が係合凹部の内底部側を支点として折れ曲がることを抑制する。
【解決手段】支持基材4に、吊りボルト1が係入自在な係合凹部3と、係合凹部3内に係入した吊りボルト1の離脱移動を阻止するロック部5が備えられている支持具であって、支持基材4における係合凹部3の配設箇所に対応する部位を補強する補強部7が備えられている。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基材に、吊りボルトが係入自在な係合凹部と、前記係合凹部内に係入した前記吊りボルトの離脱移動を阻止するロック部が備えられている支持具であって、
前記支持基材における前記係合凹部の配設箇所に対応する部位を補強する補強部が備えられている支持具。
【請求項2】
前記補強部は、前記支持基材における前記係合凹部の配設箇所に対応する部位の断面形状を異ならせることで補強している請求項1記載の支持具。
【請求項3】
前記ロック部をロック状態とロック解除状態とに操作する操作部が備えられ、前記補強部は、前記支持基材における前記操作部の配設箇所に備えられている請求項1又は2記載の支持具。
【請求項4】
前記ロック部と前記操作部とが一体に備えられ、前記補強部は、前記係合凹部の内底部側に位置する前記支持基材の前記操作部の配設箇所に、その配設箇所に連続する前記支持基材の外面よりも前記係合凹部の内底部側に窪む窪み部を備え、前記操作部は、前記窪み部に当接させた状態で取付けられ、前記係合凹部の内底部の位置は、前記窪み部の窪み深さに対応して前記係合凹部の開口端側に偏位させてある請求項3記載の支持具。
【請求項5】
前記操作部は、回動操作により前記ロック部をロック状態とロック解除状態とに切り替え自在であり、前記窪み部の内周面は、前記操作部の窪み配置部位の外面回動軌跡に近接する輪郭形状に形成されている請求項4記載の支持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井躯体等に垂設されている吊りボルトにケーブルや配管等の被吊下げ物を取付ける場合に用いられる支持具で、詳しくは、支持基材に、吊りボルトが係入自在な係合凹部と、前記係合凹部内に係入した前記吊りボルトの離脱移動を阻止するロック部が備えられている支持具に関する。
【背景技術】
【0002】
上述の支持具として、本出願人は特許文献1の図11、12に示す支持具を先に開発して出願した。この支持具の支持基材は、吊りボルト側に向って開口する状態で略コの字状に折り曲げ形成された板金製で、吊りボルトと前後方向で対面する鉛直姿勢の側面板と、これの上下両側辺に連続する水平姿勢の上面板及び下面板とを備える。支持基材の上面板の上面は、被吊下げ物を横架する載置面に構成されている。支持基材の上面板及び下面板の長手方向中央位置には、吊りボルトの存在側である前方側に向って開口する係合凹部が切り欠き形成されている。
【0003】
支持基材の側面板の長手方向中央位置に形成した円形のロック取付け孔には、上下の係合凹部内に係入した吊りボルトの離脱移動を阻止するロック部が装着されている。このロック部は、前後方向に沿う水平の操作軸芯周りで回動自在に支承されている。ロック部の後端には、操作部が一体形成されている。操作部の回動操作により、ロック部は、係合凹部内に係入した吊りボルトの離脱移動を阻止するロック状態と、吊りボルトの係脱移動を許容するロック解除状態とに切り替えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-084269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の支持具では、ケーブル等の被吊下げ物を支持する支持具を吊りボルトに装着するとき、支持基材の係合凹部を吊りボルトに前後方向から係合し、操作部を回動操作してロック部をロック状態に切り替えるだけでよいので、吊りボルトに対する支持具の装着作業及び位置変更作業を能率良く容易に行うことができる。反面、支持基材の上面板及び下面板の長手方向中央位置には、側面板の近傍位置まで及ぶ係合凹部が切り欠き形成されているため、この係合凹部の切り欠き形成箇所の機械的強度が弱くなっていた。そのため、支持基材の上面板に載置されるケーブル等の被吊下げ物の横架作業時に、引張操作される被吊下げ物を介して支持基材に引張力(曲げモーメント)が作用すると、支持基材が係合凹部の内底部側を支点として折れ曲がる可能性がある。
特に、被吊下げ物の載置数を多くとるために、支持基材の全長を長くすると、被吊下げ物を介して支持基材により大きな引張力が作用する。そのため、支持基材の折損を招来する可能性が高くなる。
【0006】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、支持基材が係合凹部の内底部側を支点として折れ曲がることを抑制することのできる支持具を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1特徴構成は、支持基材に、吊りボルトが係入自在な係合凹部と、前記係合凹部内に係入した前記吊りボルトの離脱移動を阻止するロック部が備えられている支持具であって、
前記支持基材における前記係合凹部の配設箇所に対応する部位を補強する補強部が備えられている点にある。
【0008】
本構成によれば、支持基材における係合凹部の配設箇所に対応する部位を補強部で補強することにより、係合凹部の形成箇所の機械的強度を向上することができる。これにより、例えば、支持基材に横架されるケーブル等の被吊下げ物の横架作業時に、引張操作される被吊下げ物を介して支持基材に引張力(曲げモーメント)が作用しても、支持基材が係合凹部の内底部側を支点として折れ曲がることを抑制することができる。
【0009】
本発明の第2特徴構成は、前記補強部は、前記支持基材における前記係合凹部の配設箇所に対応する部位の断面形状を異ならせることで補強している点にある。
【0010】
本構成によれば、支持基材における係合凹部の配設箇所に対応する部位での断面形状を、他の部位の断面形状と異ならせることにより、支持基材の断面係数を高めて曲げモーメントに対する抵抗力を向上することができる。
したがって、支持基材における係合凹部の配設箇所に対応する部位の断面形状の改造で済むので、支持基材の補強をコスト面で有利に実施することができる。
【0011】
本発明の第3特徴構成は、前記ロック部をロック状態とロック解除状態とに操作する操作部が備えられ、前記補強部は、前記支持基材における前記操作部の配設箇所に備えられている点にある。
【0012】
本構成によれば、ロック部を操作する操作部が配設される部位は、支持基材における係合凹部の内底部側を支点として折れ曲がり易い部位にあるので、この操作部の配設箇所を補強部で補強することにより、支持基材が係合凹部の内底部側を支点として折れ曲がることをより効果的に抑制することができる。
【0013】
本発明の第4特徴構成は、前記ロック部と前記操作部とが一体に備えられ、前記補強部は、前記係合凹部の内底部側に位置する前記支持基材の前記操作部の配設箇所に、その配設箇所に連続する前記支持基材の外面よりも前記係合凹部の内底部側に窪む窪み部を備え、前記操作部は、前記窪み部に当接させた状態で取付けられ、前記係合凹部の内底部の位置は、前記窪み部の窪み深さに対応して前記係合凹部の開口端側に偏位させてある点にある。
【0014】
本構成によれば、操作部の配設箇所に係合凹部の内底部側に窪む窪み部を形成して、この窪み部の周壁(フランジ)によって操作部の配設箇所の断面係数を高める。これにより、曲げモーメントに対する抵抗力を向上することができる。しかも、支持基材の窪み部に操作部を配置した状態では、操作部と一体のロック部が、窪み部の窪み深さ分だけ係合凹部の開口端側に移動する。これに伴って、係合凹部の内底部の位置は、窪み部の窪み深さに対応して係合凹部の開口端側に偏位することになる。これにより、操作部の配設箇所に連続する支持基材の外面から係合凹部の内底部までの間隔が大きくなり、係合凹部の形成箇所の機械的強度を一層向上することができる。
【0015】
本発明の第5特徴構成は、前記操作部は、回動操作により前記ロック部をロック状態とロック解除状態とに切り替え自在であり、前記窪み部の内周面は、前記操作部の窪み配置部位の外面回動軌跡に近接する輪郭形状に形成されている点にある。
【0016】
本構成によれば、窪み部の内周面の輪郭形状を、操作部の回動操作に干渉しない範囲で操作部の窪み配置部位の外面回動軌跡に近接させるので、支持基材の小型化を図りながら窪み部の加工スペースを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】支持具の正面視での斜視図
図2】ロック部及び操作部を分離した支持具の背面視での斜視図
図3】ロック部及び操作部を分離した支持具の正面視での斜視図
図4】ロック解除状態にある支持具の背面図(a)、正面図(b)、側面図(c)
図5】ロック状態にある支持具の背面図(a)、正面図(b)
図6】支持基材の左右方向中央部の平面図
図7】ロック部及び操作部の側面図
図8】ロック部及び操作部の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1図4は、天井躯体等に垂設されている吊りボルト1にケーブルや配管等の長尺の被吊下げ物2を取付ける支持具Aを示す。この支持具Aには、吊りボルト1のネジ谷部に対して前後方向(ボルト径方向)から係入自在(係脱自在)な係合凹部3を備えた金属製の支持基材4と、支持基材4の係合凹部3内に係入した吊りボルト1の離脱移動を当接阻止する樹脂製のロック部5と、ロック部5をロック状態(図5参照)とロック解除状態(図4参照)とに切り替え操作する樹脂製の操作部6と、が備えられている。
【0019】
支持基材4は、図1図4に示すように、ステンレス鋼板、亜鉛メッキ鋼板等の板金を吊りボルト1の存在側である前方側に向って開口する状態で略コの字状に折り曲げ形成して製作されている。支持基材4は、正面視において左右方向に長い下窄まりの略截頭三角形の輪郭形状に形成された鉛直姿勢の側面板40と、側面板40の幅広な上側辺に連続して前方側に水平姿勢で折り曲げ形成される細幅の上面板41と、側面板40の幅狭な下側辺に連続して前方側に水平姿勢で折り曲げ形成され、且つ、上面板41と同一幅に構成された下面板42と、を備える。
【0020】
上面板41の上面は、図1に示すように、前後方向(幅方向)に沿う横架姿勢で複数本の長尺の被吊下げ物2を並列配置可能な載置面41aに構成されている。上面板41の左右方向(長手方向)の両側端部の各々を上方に直角に折り曲げ形成して、上面板41の載置面41aに載置された被吊下げ物2の脱落を当接阻止する落下防止部41Aが構成されている。
また、図1図3に示すように、左右一対の落下防止部41Aを含む上面板41の前端側(幅方向の先端側)の側辺には、下方及び左右方向の外方に向かって直角に折り曲げられる第1補強板43が一体形成されている。この第1補強板43は、載置面41aの左右方向両端部から少し中央位置側に離れた中間領域において形成される幅広の中央側補強板部43Aと、中央側補強板部43Aの各端部から落下防止部41Aの先端までの範囲において形成され、且つ、中央側補強板部43Aよりも幅狭な端部側補強板部43Bとを備える。
上面板41の載置面41aには、左右方向に所定間隔をおいて前後方向に沿う長円形状の複数の貫通孔44が形成されている。
【0021】
図1図4に示すように、下面板42の前端側(幅方向先端側)の側辺には、上方に向かって直角に折り曲げられる第2補強板45が一体形成されている。上面板41の後端側(幅方向の基端側)の側辺で、且つ、側面板40の左右方向両端部に連続する領域には、第1補強板43の両端部側補強板部43Bに対応する状態で同一形状の端部側補強板46が一体形成されている。上面板41の前端側の両端部側補強板部43Bと上面板41の後端側の端部側補強板46とを同一形状に構成することにより、落下防止部41Aの折り曲げ加工時の支持構造の簡素化、容易化を図ることができる。
側面板40の左右方向の中央位置で、且つ、上下方向の中央位置には、後述のロック部5のロック部材50を前後方向の水平な操作軸芯X周りで回動自在に取付けるためのロック取付け孔47が貫通形成されている。
【0022】
図1図3に示すように、上面板41及び第1補強板43の左右方向中央位置と、下面板42及び第2補強板45の左右方向中央位置には、吊りボルト1が係脱自在な幅で前方側に開口する係合凹部3が切欠き形成されている。係合凹部3の内底部3aは、吊りボルト1の谷径に略相当する半径の半円弧面に形成されている。係合凹部3における内底部3a以外の通路幅は、吊りボルト1の山径よりも若干大きめの幅に構成されている。
【0023】
ロック部5は、図1図3に示すように、支持基材4の側面板40のロック取付け孔47に操作軸芯X周りで回動自在に貫通支持される円柱状の樹脂製のロック部材50から構成されている。ロック部材50の後端部の周方向一箇所又は複数個所(当該実施形態では二箇所)には、図7図8に示すように、支持基材4の側面板40のロック取付け孔47に対してロック部材50を後方側から挿入したとき、側面板40の内面におけるロック取付け孔47の開口周縁に係合して、ロック部材50の後方側への抜け出し移動を阻止する係止爪51が一体形成されている。
係止爪51は、ロック部材50の後端部の外周面よりも径方向外方に突出付勢され、且つ、側面板40のロック取付け孔47を通過可能な状態にまで径方向内方側に撓み変形可能に構成されている。係止爪51には、側面板40のロック取付け孔47に対してロック部材50を後方側から挿入したとき、側面板40のロック取付け孔47の開口周縁との当接に伴って係止爪51を径方向内方に撓み変形させる傾斜面51aが形成されている。
【0024】
操作部6は、図2図3図7図8に示すように、ロック部5のロック部材50の後端部に樹脂で一体成形された操作部材60から構成されている。そのため、ロック部材50及び操作部材60が側面板40のロック取付け孔47に取付けられた状態では、ロック部材50及び操作部材60は、前後方向に沿う操作軸芯X周りで一体回動する。操作部材60は、支持基材4の側面板40の外面40aにおけるロック取付け孔47の外周側を摺接状態で回動可能な円環板状の操作鍔部61と、この操作鍔部61の外面に回動半径方向に沿って突設する操作摘み部62と、を備える。
【0025】
ロック部材50には、図1図3図7図8に示すように、ロック解除状態(図4参照)において吊りボルト1に対して前後方向から係脱自在な係脱案内溝部52と、当該係脱案内溝部52内のボルト係入位置に連通してロック位置(図5参照)への操作軸芯X周りでの回動を許容するロック案内溝部53が形成されている。そのうち、ロック案内溝部53は、係脱案内溝部52内のボルト係入位置に対して回動方向に沿って互いに逆向きに延長形成されている。
また、ロック部材50の両ロック案内溝部53の溝幅方向の両側脇部位のうち、係合凹部3の開口端3b側に位置する側脇部位の各々は、図5図7図8に示すように、係合凹部3に係入した吊りボルト1の前方側への離脱移動を当接阻止する離脱阻止部54に構成されている。
【0026】
図7図8に示すように、両離脱阻止部54におけるロック案内溝部53側の内面の各々には、ロック部材50のロック位置(図5参照)への回動に伴って吊りボルト1を両係合凹部3の奥側の内底部3aに押し付ける傾斜姿勢の押圧面55が形成されている。この押圧面55よりもロック案内溝部53のロック位置側の内面には、吊りボルト1の複数ピッチ分のネジ山部が喰い込み可能な突条56が形成されている。ロック案内溝部53のロック位置に係入した吊りボルト1の複数ピッチ分のネジ山部がロック部材50の突条56に喰い込むことにより、吊りボルト1に対して支持具Aをガタツキの無い状態で取付けることができる。
【0027】
そして、図4(a)に示すように、ロック部材50がロック解除状態にあるときには、操作部材60の操作摘み部62は、同図において右端上がりの傾斜姿勢に設定されている。さらに、図4(b)に示すように、係脱案内溝部52は上下方向に沿う縦向き姿勢にあり、吊りボルト1に対して前後方向から自由に係脱操作することができる。
また、図5(a)に示すように、ロック部材50がロック状態にあるときには、操作部材60の操作摘み部62は、同図において左端上がりの傾斜姿勢に設定されている。さらに、図5(b)に示すように、係脱案内溝部52は水平方向に沿う横向き姿勢にあり、ロック案内溝部53のロック位置及び係合凹部3内の内底部3aに位置する吊りボルト1は離脱阻止部54によって前方側への離脱移動が阻止されている。
【0028】
図2図5に示すように、支持基材4の側面板40と操作部材60の操作鍔部61との間には、操作部材60を操作軸芯X周りで90度ずつ回動操作した位置で係止保持する操作位置保持部63が設けられている。この操作位置保持部63は、操作鍔部61の外周縁の90度ずつ変位した4箇所に形成された略U字状の位置決め孔63aと、位置決め孔63aに選択的に係合可能な状態で側面板40の外面40aに突出形成された小さな半球状の位置決め突起63bと、を備える。この位置決め突起63bは、側面板40に窪み形成され、且つ、操作部材60の操作鍔部61が入り込み配置される後述の窪み部70の底面70aに形成されている。
【0029】
図4図5に示すように、操作部材60の操作摘み部62を回動操作すると、一つの位置決め孔63a内に位置する位置決め突起63bは、支持基材4の側面板40と操作部材60の操作鍔部61との間の隙間に潜り込み、次の位置決め孔63aが回動してきたときに隙間から出て係合する。これにより、ロック部材50及び操作部材60は、ロック状態とロック解除状態に交互に位置保持される。
【0030】
そして、図1図4に示すように、ケーブル等の被吊下げ物2を支持する支持具Aを吊りボルト1に装着する際、支持具Aのロック部材50をロック解除状態に設定する。この状態で、支持基材4の両係合凹部3及びロック部材50の係脱案内溝部52に対して前後方向から吊りボルト1を係入させる。次に、図5に示すように、支持基材4の側面板40の外面側に配置されている操作部材60の操作摘み部62を90度だけ回動操作して、ロック部材50をロック状態に切り替える。このロック状態では、支持基材4の両係合凹部3の内底部3a及びロック部材50のロック案内溝部53のロック位置内に係入した吊りボルト1の離脱移動を、ロック部材50の離脱阻止部54で確実に阻止することができる。
【0031】
それ故に、操作部材60を回動操作してロック部材50をロック状態又はロック解除状態に切り替えるだけであるから、吊りボルト1に対する脱着時の操作スペースの縮小化と吊りボルト1に対する取付け位置変更作業の容易化、能率化を図ることができる。
【0032】
そして、本実施形態では、図1図3に示すように、支持基材4における両係合凹部3の配設箇所に対応する部位を補強する補強部7が備えられている。
支持基材4における両係合凹部3の配設箇所に対応する部位を補強部7で補強することにより、両係合凹部3の形成箇所の機械的強度を向上することができる。これにより、例えば、支持基材4の上面板41の載置面41aに載置されるケーブル等の長尺の被吊下げ物2の横架作業時に、引張操作される被吊下げ物2を介して支持基材4に引張力(曲げモーメント)が作用しても、支持基材4が係合凹部3の内底部3a側を支点として折れ曲がることを抑制することができる。
【0033】
本実施形態では、図1図3に示すように、補強部7は、支持基材4における係合凹部3の配設箇所に対応する部位の断面形状を異ならせることで補強している。
支持基材4における両係合凹部3の配設箇所に対応する部位での断面形状を、他の部位の断面形状と異ならせることにより、支持基材4の断面係数を高めて曲げモーメントに対する抵抗力を向上することができる。
したがって、支持基材4における係合凹部3の配設箇所に対応する部位の断面形状の改造で済むので、支持基材4の補強をコスト面で有利に実施することができる。
【0034】
次に、補強部7について詳述する。
補強部7は、図1図3図6に示すように、支持基材4の側面板40における操作部6の操作鍔部61の配設箇所、つまり、支持基材4の側面板40におけるロック取付け孔47の外周側部位を、バーリング加工により、その配設箇所に連続する側面板40の外面40aよりも両係合凹部3の内底部3a側に窪む円形状の窪み部70を形成して構成されている。
ロック部5を操作する操作部6が配設される部位は、支持基材4における係合凹部3の内底部3a側を支点として折れ曲がり易い部位にあるので、この操作部6の配設箇所を窪み部70で補強することにより、支持基材4が係合凹部3の内底部3a側を支点として折れ曲がることをより効果的に抑制することができる。
【0035】
図2図5に示すように、一体形成されているロック部5及び操作部6は、操作部6の操作鍔部61を窪み部70の底面70aに当接させた状態で側面板40のロック取付け孔47に取付けられている。そのため、図6に示すように、支持基材4の上面板41に切欠き形成される係合凹部3の内底部3aの位置と、支持基材4の下面板42に切欠き形成される係合凹部3の内底部3aの位置の各々は、窪み部70の窪み深さHに対応して各係合凹部3の開口端3b側に偏位させてある。つまり、窪み部70の窪み深さHの分だけロック部5及び操作部6が係合凹部3の開口端3b側に偏位するため、各係合凹部3の内底部3aの位置を、ロック部材50のロック案内溝部53におけるロック位置に対応した位置に配置してある。
【0036】
上述のように、操作部6の配設箇所を係合凹部3の内底部3a側に窪む窪み部70を形成して、この窪み部70の周壁(フランジ)70Aによって操作部6の配設箇所の断面係数を高める。これにより、曲げモーメントに対する抵抗力を向上することができる。しかも、図6に示すように、支持基材4の窪み部70に操作部6を配置した状態では、操作部6と一体のロック部5が、窪み部70の窪み深さHの分だけ係合凹部3の開口端3b側に移動する。これに伴って、係合凹部3の内底部3aの位置は、窪み部70の窪み深さHに対応して係合凹部3の開口端3b側に偏位することになる。これにより、支持基材4の側面板40の外面40aから各係合凹部3の内底部3aまでの間隔Wが大きくなり、支持基材4における両係合凹部3の形成箇所の機械的強度を一層向上することができる。
【0037】
窪み部70の周壁70Aの内周面70bは、操作部6の窪み配置部位である操作鍔部61の直径よりも大きく、且つ、操作鍔部61の外面回動軌跡となる外周面61aに近接する同心円の輪郭形状に形成されている。
窪み部70の内周面70bの輪郭形状を、操作部6の回動操作に干渉しない範囲で操作部6の操作鍔部61の外面回動軌跡となる外周面61aに近接させるので、支持基材4の小型化を図りながら窪み部70の加工スペースを確保することができる。
【0038】
〔別実施形態〕
(1)上述の実施形態では、窪み部70の内周面70bの輪郭形状を、操作部6の操作鍔部61の外周面61aよりも少し大きな円形状の輪郭形状に形成した。しかし、この窪み部70の内周面70bの輪郭形状は、操作部6の回動操作に干渉しない範囲であれば四角形、五角形、六角形等の任意の輪郭形状に形成することができる。
【0039】
(2)上述の実施形態では、支持基材4の側面板40における操作部6の操作鍔部61の配設箇所に、補強部7として、係合凹部3の内底部3a側に窪む窪み部70を形成したが、この構成に限定されない。例えば、支持基材4の側面板40における操作部6の操作鍔部61の配設箇所の外周側近傍位置に、係合凹部3の内底部3a側に窪む又は側面板40の外面40a側に突出する円環状の補強リブをプレス成型で打ち出し形成してもよい。
さらに、支持基材4の上面板41及び下面板42で、且つ、側面板40の外面40aと係合凹部3の内底部3aとの間に位置する部位に、下方又は上方に突出する直線状又は曲線状の補強リブをプレス成型で打ち出し形成してもよい。
【0040】
(3)上述の実施形態では、側面板40の両傾斜面の上端部を、載置面41aの左右方向両端部よりも少し左右方向中央位置側に偏位した位置に設定したが、この構成に限定されない。例えば、側面板40の両傾斜面の上端部を、載置面41aの左右方向両端部相当位置に設定してもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 吊りボルト
3 係合凹部
3a 内底部
3b 開口端
4 支持基材
5 ロック部
6 操作部
7 補強部
40a 外面
61 窪み配置部位(操作鍔部)
70 窪み部
70b 内周面
H 窪み深さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8