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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139071
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】光検出器
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/146 20060101AFI20220915BHJP
   H01L 31/107 20060101ALI20220915BHJP
   G01J 1/02 20060101ALI20220915BHJP
   G01J 1/42 20060101ALI20220915BHJP
   G01T 1/20 20060101ALN20220915BHJP
【FI】
H01L27/146 D
H01L31/10 B
G01J1/02 Q
G01J1/42 H
G01T1/20 G
G01T1/20 E
G01T1/20 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021039297
(22)【出願日】2021-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】上野山 聡
【テーマコード(参考)】
2G065
2G188
4M118
5F849
【Fターム(参考)】
2G065AA11
2G065AB11
2G065AB15
2G065AB19
2G065BA09
2G065BA29
2G065BA34
2G065BB08
2G065BB09
2G065BE07
2G065DA10
2G188AA02
2G188BB07
2G188CC12
2G188CC23
2G188DD02
2G188DD05
2G188DD43
2G188DD44
4M118AA01
4M118AA10
4M118AB01
4M118BA09
4M118CA03
4M118CB11
4M118FA06
4M118FA26
4M118FA27
4M118GA02
4M118GB03
4M118GB07
4M118GD04
4M118GD09
4M118HA25
4M118HA31
4M118HA33
5F849AA07
5F849BA25
5F849EA05
5F849JA12
5F849LA06
(57)【要約】
【課題】メタレンズのレンズとしての機能を維持しつつ、薄型化、及び光学的なロスの低減を図ることができる光検出器を提供する。
【解決手段】光検出器4は、表面6aを有し、表面6aに沿って配置された複数のアバランシェフォトダイオードAPDを含む光検出素子6と、複数のアバランシェフォトダイオードAPDに対応するように表面6a上に配置された複数のメタレンズ部8と、を備える。複数のアバランシェフォトダイオードAPD及び複数のメタレンズ部8のうち、対応する一つのアバランシェフォトダイオードAPD及び一つのメタレンズ部8において、一つのメタレンズ部8は、表面6aに沿って配置された複数のメタレンズ9を含む。
【選択図】図10

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面を有し、前記表面に沿って配置された複数の受光領域を含む光検出素子と、
前記複数の受光領域に対応するように前記表面上に配置された複数のメタレンズ部と、を備え、
前記複数の受光領域及び前記複数のメタレンズ部のうち、対応する一つの受光領域及び一つのメタレンズ部において、前記一つのメタレンズ部は、前記表面に沿って配置された複数のメタレンズを含む、光検出器。
【請求項2】
前記光検出素子は、前記複数の受光領域のそれぞれを分離する分離領域を更に含み、
対応する前記一つの受光領域及び前記一つのメタレンズ部において、前記複数のメタレンズは、前記一つの受光領域内に光を集光するように構成されている、請求項1に記載の光検出器。
【請求項3】
前記分離領域は、トレンチである、請求項2に記載の光検出器。
【請求項4】
前記表面と前記複数のメタレンズ部との間に配置された光透過層を更に備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の光検出器。
【請求項5】
前記光透過層は、前記表面に直接形成されており、
前記複数のメタレンズ部は、前記光透過層に直接形成されている、請求項4に記載の光検出器。
【請求項6】
対応する前記一つの受光領域及び前記一つのメタレンズ部において、前記一つのメタレンズ部は、前記複数のメタレンズとして、第1メタレンズ及び複数の第2メタレンズを有し、
前記第1メタレンズの面積は、前記複数の第2メタレンズのそれぞれの面積よりも大きく、
前記複数の第2メタレンズは、前記第1メタレンズを包囲するように配置されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の光検出器。
【請求項7】
対応する前記一つの受光領域及び前記一つのメタレンズ部において、前記一つのメタレンズ部から前記一つの受光領域の表面までの距離をT(μm)とし、前記一つのメタレンズ部の面積をS(μm)とするとき、
Tは、1.0S0.5以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の光検出器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、複数の受光領域を含む光検出素子と、複数の受光領域上に配置された複数のメタレンズと、を備える光検出器が記載されている。非特許文献1は、各メタレンズの透過率及び集光効率を高めること、並びに各メタレンズの焦点深度を大きくすることで、光検出素器の光検出効率等を向上させることが提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】E. Mikheeva、他12名、“CMOS-compatibleall-dielectric metalens for improving pixel photodetector arrays”、APL Photonics 5, 116105 (2020)、提出日:2020年7月17日、オンライン発行日:2020年11月13日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光検出器を薄型化する観点、及び光学的なロスを低減する観点では、各メタレンズは、光検出素子の表面に近い位置に配置されていることが望ましい。しかし、非特許文献1に記載の光検出器では、一つの受光領域に一つのメタレンズが対応しているため、一つのメタレンズから光検出素子の表面までの距離を小さくし過ぎると、一つのメタレンズの開口数が大きくなり過ぎ、メタレンズのレンズとしての機能が損なわれて、迷光が増加するおそれがある。
【0005】
本発明は、メタレンズのレンズとしての機能を維持しつつ、薄型化、及び光学的なロスの低減を図ることができる光検出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光検出器は、表面を有し、表面に沿って配置された複数の受光領域を含む光検出素子と、複数の受光領域に対応するように表面上に配置された複数のメタレンズ部と、を備え、複数の受光領域及び複数のメタレンズ部のうち、対応する一つの受光領域及び一つのメタレンズ部において、一つのメタレンズ部は、表面に沿って配置された複数のメタレンズを含む。
【0007】
本発明の光検出器では、一つの受光領域に複数のメタレンズが対応している。これにより、各メタレンズ部から光検出素子の表面までの距離を小さくした場合であっても、当該距離に応じて各メタレンズの面積等を調整することで、各メタレンズの開口数を無理なく設定することができる。また、各メタレンズ部から光検出素子の表面までの距離を小さくすることができるため、入射光の入射角度に対するロバスト性を向上させることが可能となる。よって、本発明の光検出器によれば、メタレンズのレンズとしての機能を維持しつつ、薄型化、及び光学的なロスの低減を図ることができる。
【0008】
本発明の光検出器では、光検出素子は、複数の受光領域のそれぞれを分離する分離領域を更に含み、対応する一つの受光領域及び一つのメタレンズ部において、複数のメタレンズは、一つの受光領域内に光を集光するように構成されていてもよい。これによれば、隣り合う受光領域の間においてクロストークが発生するのを抑制しつつ、光学的なロスをより確実に低減することができる。
【0009】
本発明の光検出器では、分離領域は、トレンチであってもよい。これによれば、隣り合う受光領域の間においてクロストークが発生するのを容易に且つ確実に抑制することができる。
【0010】
本発明の光検出器では、表面と複数のメタレンズ部との間に配置された光透過層を更に備えていてもよい。これによれば、各メタレンズ部から光検出素子の表面までの距離を調整することができるため、各メタレンズの開口数をより適切に設定することができる。
【0011】
本発明の光検出器では、光透過層は、表面に直接形成されており、複数のメタレンズ部は、光透過層に直接形成されていてもよい。これによれば、メタレンズ部と受光領域との間に存在する界面の数が少なくなるため、界面での反射等による光学的なロスを低減することができる。
【0012】
本発明の光検出器では、対応する一つの受光領域及び一つのメタレンズ部において、一つのメタレンズ部は、複数のメタレンズとして、第1メタレンズ及び複数の第2メタレンズを有し、第1メタレンズの面積は、複数の第2メタレンズのそれぞれの面積よりも大きく、複数の第2メタレンズは、第1メタレンズを包囲するように配置されていてもよい。これによれば、メタレンズのレンズとしての機能を維持しつつ、一つの受光領域に対応する複数のメタレンズの数を減らすことができる。
【0013】
本発明の光検出器では、対応する一つの受光領域及び一つのメタレンズ部において、一つのメタレンズ部から一つの受光領域の表面までの距離をT(μm)とし、一つのメタレンズ部の面積をS(μm)とするとき、Tは、1.0S0.5以下であってもよい。これによれば、メタレンズ部の大きさに対して、メタレンズ部から一つの受光領域の表面までの距離を十分に小さくすることができるため、薄型化、及び光学的なロスの低減を更に図ることが可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、メタレンズのレンズとしての機能を維持しつつ、薄型化、及び光学的なロスの低減を図ることができる光検出器を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態のPET装置の構成図である。
図2図1に示される放射線検出装置の構成図である。
図3図2に示される放射線検出器の側面図である。
図4図3に示される光検出素子の平面図である。
図5図3に示される光検出器の回路図である。
図6図4に示される光検出素子の一部分の平面図である。
図7図4に示される光検出素子の一部分の断面図である。
図8図4に示される光検出素子の底面図である。
図9図3に示される光検出器の一部分の平面図である。
図10図9に示されるX-X線に沿っての光検出器の一部分の断面図である。
図11】比較例及び実施例の光検出器の電界強度の計算結果を示すグラフと、受光領域の表面における強度分布を示すグラフである。
図12】変形例の光検出器の一部分の断面図である。
図13】変形例の光検出素子の底面図である。
図14図12に示されるXIII-XIII線に沿っての光検出器の一部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
図1に示されるように、PET装置1は、クレードル101と、ガントリ102と、制御装置103と、駆動モータ104と、を備えている。クレードル101は、ガントリ102の開口を通るように配置されている。クレードル101上には、被検体105が配置される。制御装置103は、駆動モータ制御信号によって駆動モータ104を制御する。これにより、被検体105が配置されたクレードル101が移動し、ガントリ102の開口に対する被検体105の相対位置が変化する。駆動モータ104は、ガントリ102を移動させるように構成されていてもよいし、クレードル101及びガントリ102を移動させるように構成されていてもよい。
【0018】
ガントリ102は、複数の放射線検出装置106を有している。複数の放射線検出装置106は、ガントリ102の開口が貫通する方向に沿って配置されている。各放射線検出装置106は、ガントリ102の開口を包囲している。制御装置103は、各放射線検出装置106を制御する制御信号をガントリ102に入力する。ガントリ102は、各放射線検出装置106によって検出された検出信号を制御装置103に出力する。
【0019】
図2に示されるように、放射線検出装置106は、複数の放射線検出器2を含んでいる。複数の放射線検出器2は、ガントリ102の開口を囲むように円環状に配置されている。被検体105には、陽電子(ポジトロン)を放出するタイプの放射性同位元素(陽電子放出核種)が注入される。陽電子は、被検体105内の陰電子と結合して消滅γ線を発生する。消滅γ線は、被検体105内における放射性同位元素の位置Pから互いに反対方向に出射される。これにより、消滅γ線は、位置Pを挟んで対向する一対の放射線検出器2によって検出される。制御装置103は、消滅γ線の飛行時間差に基づいて位置Pを特定し、被検体105の内部情報に関する画像(断層化像)を生成する。つまり、PET装置1は、TOF-PET装置である。
【0020】
図3に示されるように、放射線検出器2は、複数の放射線検出ユニット2Aを備えている。複数の放射線検出ユニット2Aは、X軸方向及びY軸方向を行方向及び列方向としてマトリックス状に配置されている。各放射線検出ユニット2Aは、シンチレータ(発光体)3と、光検出器4と、を備えている。なお、図3において、Z軸方向は、複数の放射線検出器2が配置された円環(図2参照)の径方向であり、X軸方向は、当該円環の接線方向であり、Y軸方向は、Z軸方向及びX軸方向に垂直な方向である。
【0021】
シンチレータ3は、光検出器4に対してガントリ102の開口の中心側(以下、「光入射側」という)に配置されている(図2参照)。シンチレータ3は、消滅γ線の入射によって光(蛍光)を発する。シンチレータ3は、Lu2-xSiO:Ce(LYSO)、ガドリニウムアルミニウムガリウムガーネット(GAGG)、NaI(TI)、Pr:LuAG、LaBr、LaBr、及び(LuTb1-x-yCeAl12(すなわち、LuTAG)からなる群から選択される少なくとも一つの材料又は複数の混合材料からなる。なお、LuTAGにおいて、組成比xは0.5~1.5の範囲にあり、組成比yは0.01~0.15の範囲にある。
【0022】
光検出器4は、シンチレータ3で発せられた光を検出する。光検出器4は、配線基板5と、光検出素子6と、平坦化膜7と、複数のメタレンズ部8と、を有している。配線基板5は、複数の光検出器4によって共有されている。配線基板5、光検出素子6、平坦化膜7、及びメタレンズ部8は、シンチレータ3とは反対側からこの順序で配置されている。つまり、シンチレータ3は、メタレンズ部8に対して光検出素子6とは反対側に配置されている。なお、シンチレータ3は、光透過性を有する接着剤によって光検出器4に接合されている。
【0023】
図4に示されるように、光検出素子6は、二次元に配置された複数の光検出部10と、共通電極E3と、を有している。一例として、光検出素子6は、Z軸方向から見た場合に矩形状を呈している。複数の光検出部10は、X軸方向及びY軸方向を行方向及び列方向としてマトリックス状に配置されている。共通電極E3は、Z軸方向から見た場合に光検出素子6の中央に位置している。共通電極E3には、各光検出部10において発生した電荷が収集される。つまり、光検出素子6は、複数のSPAD(光検出部10)を有するSiPMである。なお、図4では、複数の光検出部10が光検出素子6の両端部の領域のみに図示されているが、複数の光検出部10は、共通電極E3を除く光検出素子6の全領域に形成されている。
【0024】
図5に示されるように、各光検出部10は、アバランシェフォトダイオードAPDと、クエンチング抵抗R1と、を有している。クエンチング抵抗R1の一端は、アバランシェフォトダイオードAPDのアノードに電気的に接続されており、クエンチング抵抗R1の他端は、光検出素子6が有する読出配線TLを介して共通電極E3に電気的に接続されている。つまり、複数の光検出部10は、並列に接続されており、各光検出部10において、アバランシェフォトダイオードAPDとクエンチング抵抗R1とは、直接に接続されている。光検出素子6では、各アバランシェフォトダイオードAPDがガイガーモードで動作させられる。ガイガーモードでは、アバランシェフォトダイオードAPDのブレイクダウン電圧よりも大きな逆方向電圧(逆バイアス電圧)がアバランシェフォトダイオードAPDに印加される。すなわち、アバランシェフォトダイオードAPDのアノードには、電位V1が印加され、アバランシェフォトダイオードAPDのカソードには、電位V1に対して正の電位V2が印加される。これらの電位の極性は相対的なものであり、例えば、いずれか一方の電位が接地電位であってもよい。
【0025】
配線基板5には、信号処理部SPが設けられている。信号処理部SPは、各光検出素子6を各チャンネルとして、各光検出素子6から出力された信号を処理する。信号処理部SPは、処理した信号(検出信号)を制御装置103(図1参照)に出力する。信号処理部SPは、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)を構成している。信号処理部SPは、各光検出素子6から出力された信号をデジタルパルスに変換するCMOS回路を含んでいてもよい。
【0026】
図6に示されるように、光検出素子6において、読出配線TLは、複数の信号線TL1と、複数の信号線TL2と、を含んでいる。一例として、各信号線TL1は、X軸方向において隣り合うアバランシェフォトダイオードAPDの間をY軸方向に延在しており、各信号線TL2は、Y軸方向おいて隣り合うアバランシェフォトダイオードAPDの間をX軸方向に延在している。複数の信号線TL1及び複数の信号線TL2は、交点で互いに接続されるように格子状に延在しており、共通電極E3に電気的に接続されている。
【0027】
各光検出部10において、クエンチング抵抗R1の一端は、電極E1に接続されており、クエンチング抵抗R1の他端は、信号線TL1に接続されている。つまり、各光検出部10において、クエンチング抵抗R1の一端は、電極E1を介してアバランシェフォトダイオードAPDのアノードに電気的に接続されており、クエンチング抵抗R1の他端は、読出配線TLを介して共通電極E3に電気的に接続されている。
【0028】
図7に示されるように、光検出素子6は、半導体層11を有している。半導体層11は、N型(第1導電型)の半導体領域(第1半導体領域)12と、N型(第1導電型)の半導体領域(第1半導体領域)13と、複数のP型(第2導電型)の半導体領域(第2半導体領域)14と、複数のP型(第2導電型)の半導体領域(第2半導体領域)15と、を含んでいる。半導体領域13は、半導体領域12における光入射側の表面に形成されている。複数の半導体領域14は、光検出素子6の表面6aに沿って半導体領域13内に形成されている。複数の半導体領域15は、光検出素子6の表面6aに沿って複数の半導体領域14内に形成されている。半導体領域12の不純物濃度は、半導体領域13の不純物濃度よりも高い。各半導体領域15の不純物濃度は、各半導体領域14の不純物濃度よりも高い。
【0029】
光検出素子6では、トレンチ16に囲まれた一つの半導体領域15、一つの半導体領域14、及び半導体領域12,13のうちZ軸方向において当該一つの半導体領域15に重なる領域によって、一つのアバランシェフォトダイオードAPDが構成されている。つまり、各アバランシェフォトダイオードAPDは、N型の半導体領域12と、N型の半導体領域13と、N型の半導体領域13とPN接合を構成するP型の半導体領域14と、P型の半導体領域15と、を含んでいる。本実施形態では、各アバランシェフォトダイオードAPDが受光領域として機能する。
【0030】
半導体層11における光入射側の表面には、各アバランシェフォトダイオードAPDを分離するようにトレンチ16が形成されている。つまり、トレンチ16は、受光領域である各アバランシェフォトダイオードAPDを分離する分離領域である。トレンチ16内には、例えば、シリコン酸化物等の絶縁材料、タングステン等の金属材料、ポリシリコンが配置されている。
【0031】
半導体領域13,14,15における光入射側の表面には、絶縁層17が形成されている。絶縁層17上には、共通電極E3及び読出配線TLが配置されている。共通電極E3及び読出配線TLは、絶縁層18によって覆われている。光検出素子6では、絶縁層18における光入射側の表面が、光検出素子6の表面6aに相当する。なお、各光検出部10において、クエンチング抵抗R1(図6参照)の一端は、アバランシェフォトダイオードAPDの半導体領域14,15に電気的に接続されており、クエンチング抵抗R1の他端は、読出配線TLに電気的に接続されている。
【0032】
半導体層11には、貫通孔THが形成されている。貫通孔THの内面、及び半導体領域12における光入射側とは反対側の表面には、絶縁層19が形成されている。貫通孔THの内面には、絶縁層19を介して貫通電極TEが配置されている。貫通電極TEは、貫通孔THにおける光入射側の開口において、共通電極E3に接続されている。貫通電極TE上には、アンダーバンプメタルBMを介してバンプ電極B1が配置されている。貫通電極TE及び絶縁層19は、パッシベーション膜PFによって覆われている。なお、半導体領域12における光入射側の表面のうち貫通孔THを包囲する領域には、N型の半導体領域1PCが形成されている。半導体領域1PCは、半導体領域12及び半導体領域13,14とで構成されたPN接合が貫通孔THに至るのを防止している。
【0033】
図8に示されるように、パッシベーション膜PFには、Z軸方向から見た場合に貫通孔THを包囲するように溝が形成されており、当該溝内においては、半導体領域12が露出している。当該溝内において露出した半導体領域12上には、複数のバンプ電極B2が配置されている。バンプ電極B1、及び複数のバンプ電極B2は、光検出素子6に対して複数のメタレンズ部8とは反対側に配置された配線基板5に電気的に且つ物理的に接続されている。つまり、光検出素子6は、配線基板5に電気的に且つ物理的に接続されている。
【0034】
以上のように構成された光検出素子6では、各光検出部10において、各アバランシェフォトダイオードAPDがガイガーモードで動作させられる。この状態で、表面6a側から各アバランシェフォトダイオードAPDに光が入射すると、各アバランシェフォトダイオードAPDにおいて光電変換が起こり、各アバランシェフォトダイオードAPDにおいて光電子(電荷)が発生する。光電子が発生すると、各アバランシェフォトダイオードAPDにおいてアバランシェ増倍が起こり、増幅された電子群(電荷)が、各半導体領域15及びクエンチング抵抗R1を介して共通電極E3に収集される。各光検出部10から共通電極E3に収集された電荷は、信号として配線基板20の信号処理部SP(図5参照)に入力される。
【0035】
半導体層11は、例えば、Siによって形成されている。半導体層11において、P型の不純物は、例えば、B等の3族元素であり、N型の不純物は、例えば、N、P、As等の5族元素である。これらの不純物の添加方法は、例えば、拡散法、イオン注入法である。各絶縁層17,18,19は、例えば、SiO、SiNによって形成されている。各絶縁層17,18,19の形成方法は、例えば、熱酸化法、スパッタ法である。電極E1,E3及び貫通電極TEは、例えば、アルミニウム等の金属によって形成されている。電極E1,E3及び貫通電極TEの形成方法は、例えば、スパッタ法である。クエンチング抵抗R1の抵抗率は、電極E1及び共通電極E3の抵抗率よりも高い。クエンチング抵抗R1は、例えば、ポリシリコンによって形成されている。クエンチング抵抗R1の形成方法は、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法である。クエンチング抵抗R1の材料は、例えば、SiCr、NiCr、TaNi、FeCr等であってもよい。
【0036】
図3図9及び図10に示されるように、複数のメタレンズ部8は、平坦化膜7に設けられている。複数のメタレンズ部8は、平坦化膜7を介して光検出素子6の表面6a上に配置されている。各メタレンズ部8は、Z軸方向(表面6aに交差する方向)から見た場合に各アバランシェフォトダイオードAPD(すなわち、各光検出部10)に重なるように二次元に配置されている。つまり、一つのアバランシェフォトダイオードAPDに一つのメタレンズ部8が対応している(Z軸方向において対向している)。なお、図9及び図10では、光検出器4のうち一つの光検出部10に対応する部分のみが図示されている。
【0037】
各メタレンズ部8は、光検出部10が有する一つのアバランシェフォトダイオードAPDに対して、複数のメタレンズ9を有している。各メタレンズ9は、平坦化膜7の表面7aに形成されたメタサーフェスレンズである。メタレンズ9は、例えば、a-Si、HfO、Nb、TiO等のメタレンズ材料によって形成されている。メタレンズ9の形成方法は、例えば、平坦化膜7にエッチング処理を施して、平坦化膜7に複数の溝を形成する方法である。複数のメタレンズ9は、対応する一つの光検出部10のアバランシェフォトダイオードAPD内に光を集光するように構成されている。
【0038】
メタレンズ9は、例えば、フレネルレンズの位相設計に基づいて構成されている。メタレンズ9の外径は、例えば、数μm~数十μmである。メタレンズ9の外径は、メタレンズ9を有するメタレンズ部8に対応する光検出部10のサイズに応じて設計される。Z軸方向におけるメタレンズ部8の厚さは、例えば、500nm程度である。メタレンズ部8の単一周期は、光Lの波長以下であり、例えば、250nm程度である。
【0039】
平坦化膜7は、光検出素子6の表面6aと複数のメタレンズ部8との間に配置されている。平坦化膜7は、表面6aに直接形成された光透過層である。平坦化膜7は、例えば、SiO、GaAs、GaP、Si、SiC等によって形成されている。平坦化膜7の形成方法は、例えば、熱酸化法、スパッタ法である。平坦化膜7の厚さは、例えば、数μmである。
【0040】
図10に示されるように、Z軸方向において対向する一つのアバランシェフォトダイオードAPD及び一つのメタレンズ部8において、各メタレンズ9は、対応するアバランシェフォトダイオードAPDにおける光入射側の表面(すなわち、対応する一つの半導体領域15の表面15a)に光Lを集光する。
【0041】
Z軸方向における一つのアバランシェフォトダイオードAPDにおける光入射側の表面(すなわち、半導体領域15の表面15a)とメタレンズ部8との距離をT(μm)とし、一つのアバランシェフォトダイオードAPDに対応するメタレンズ部8の面積をS(μm)とするとき、下記式(1)が成立する。
T≦1.0S0.5…(1)
【0042】
メタレンズ部8の面積は、例えば、数百μm~数千μmである。そのため、Z軸方向における一つのアバランシェフォトダイオードAPDにおける光入射側の表面とメタレンズ部8との距離を数十μm以下にすることができる。
【0043】
以上説明したように、光検出器4では、一つのアバランシェフォトダイオードAPDに対して複数のメタレンズ9が対応している。これにより、各メタレンズ部8から光検出素子6の表面6aまでの距離を小さくした場合であっても、当該距離に応じて各メタレンズ9の面積等を調整することで、各メタレンズ9の開口数を無理なく設定することができる。また、各メタレンズ部8から光検出素子6の表面6aまでの距離を小さくすることができるため、光Lの入射角度に対するロバスト性を向上させることが可能となる。よって、光検出器4によれば、メタレンズ9のレンズとしての機能を維持しつつ、薄型化、及び光学的なロスの低減を図ることができる。
【0044】
光検出器4では、光検出素子6が、各アバランシェフォトダイオードAPDを分離するトレンチ16を含んでおり、対応する一つのアバランシェフォトダイオードAPD及び一つのメタレンズ部8において、複数のメタレンズ9が、一つのアバランシェフォトダイオードAPD内に光を集光するように構成されている。これにより、隣り合うアバランシェフォトダイオードAPDの間においてクロストークが発生するのを抑制しつつ、光学的なロスをより確実に低減することができる。
【0045】
光検出器4では、対応する一つのアバランシェフォトダイオードAPD及び一つのメタレンズ部8において、複数のメタレンズ9が、トレンチ16を避けて光を集光するように構成されている。光検出器4において、メタレンズ部8が複数のメタレンズ9を含むことから、位相設計の自由度を向上させることができるため、トレンチ16を避けて光を集光するように設計することが容易となる。また、光検出器4において、メタレンズ部8が複数のメタレンズ9を含むことから、位相設計の自由度を向上させることができるため、アバランシェフォトダイオードAPDの特定の領域(例えば、受光領域でも特に高感度の領域)に向かって光を集光するように設計することも可能である。メタレンズ9は、例えば、アバランシェフォトダイオードAPDを光入射側から見たときに、アバランシェフォトダイオードAPDの中央領域に向かって光を集光するように設計することができる。アバランシェフォトダイオードAPDの中央領域とは、アバランシェフォトダイオードAPDを光入射側から見たときに、アバランシェフォトダイオードAPD内に存在し、アバランシェフォトダイオードAPDの重心と同じ重心を有する領域を意味する。アバランシェフォトダイオードAPDの中央領域は、例えば、アバランシェフォトダイオードAPDの形状と略相似の形状を有している。アバランシェフォトダイオードAPDの中央領域が、受光領域でも特に高感度の領域であってよい。これにより、隣り合うアバランシェフォトダイオードAPDの間においてクロストークが発生するのを抑制しつつ、光学的なロスをより確実に低減することができる。
【0046】
光検出器4では、光検出素子6の表面6aと複数のメタレンズ部8との間に平坦化膜7が配置されている。これにより、各メタレンズ部8から光検出素子6の表面6aまでの距離を調整することができるため、各メタレンズ9の開口数をより適切に設定することができる。
【0047】
光検出器4では、平坦化膜7が、光検出素子6の表面6aに直接形成されており、複数のメタレンズ部8が、平坦化膜7に直接形成されている。これにより、メタレンズ部8とアバランシェフォトダイオードAPDとの間に存在する界面の数が少なくなるため、界面での反射等による光学的なロスを低減することができる。
【0048】
光検出器4では、対応する一つのアバランシェフォトダイオードAPD及び一つのメタレンズ部8において、一つのメタレンズ部8からアバランシェフォトダイオードAPDにおける光入射側の表面までの距離をT(μm)とし、一つのメタレンズ部8の面積をS(μm)とするとき、Tは1.0S0.5以下である。これによれば、メタレンズ部8の大きさに対して、メタレンズ部8からアバランシェフォトダイオードAPDにおける光入射側の表面までの距離を十分に小さくすることができるため、光検出器4の薄型化、及び光学的なロスの低減を更に図ることが可能である。
【0049】
光検出器4では、対応する一つのアバランシェフォトダイオードAPD及び一つのメタレンズ部8において、一つのメタレンズ部8からアバランシェフォトダイオードAPDにおける光入射側の表面までの距離をT(μm)とし、メタレンズ部8における一つのメタレンズ9の外径をD(μm)とするとき、一つのメタレンズ9の集光角度θはtan-1(D/2T)である。メタレンズ部8における複数のメタレンズ9のそれぞれは、メタレンズ部8からアバランシェフォトダイオードAPDにおける光入射側の表面までの距離に応じて、各メタレンズ9の外径を調整することができるため、各メタレンズ9の集光角度θが大きくなりすぎることを防ぐことが可能となる。これによれば、一つのメタレンズ部8からアバランシェフォトダイオードAPDにおける光入射側の表面までの距離が小さくなることで、メタレンズの集光角度が大きくなることに起因した迷光の発生を抑制することができる。
【0050】
図11(a)は、対応する一つの受光領域と一つのメタレンズ部において、メタレンズ部が一つのメタレンズ(外径50μm)を含む比較例の光検出器の電界強度の計算結果を示すグラフと、一つのメタレンズに対する受光領域の表面(Z=5μm)における強度分布を示すグラフである。図11(b)は、対応する一つの受光領域と一つのメタレンズ部において、メタレンズ部が複数(一つの受光領域に対して25個)のメタレンズ(外径10μm)を含む実施例の電界強度の計算結果と、光検出器の一つのメタレンズに対する受光領域の表面(Z=5μm)における強度分布を示すグラフである。比較例及び実施例の光検出器において、メタレンズから受光領域表面までの距離は、いずれも5μmとし、各メタレンズはメタレンズの中心(X=0μm)に光を集光するように設計した。図11(a)及び図11(b)における電界強度の計算結果を示すグラフは、波長404nmの光を受光領域に対して垂直に照射したときの一つのメタレンズの中心(X=0μm)からメタレンズの外周までの範囲における電界強度をFDTD法により計算した結果である。図11(a)に示されるように、メタレンズ部が一つのメタレンズを含む場合、メタレンズの中心における強度と、メタレンズの中心以外の位置における強度とを比べると、顕著な差はみられず、メタレンズの中心以外の位置における迷光が確認された。一方、図11(b)に示されるように、メタレンズ部が複数のメタレンズを含む場合、メタレンズの中心における強度と、メタレンズの中心以外の位置における強度とを比べると、顕著な差がみられ、メタレンズの中心以外の位置における迷光を抑制することができた。これは、メタレンズから受光領域表面までの距離に応じて、メタレンズの外径を調整することにより、メタレンズの集光角度が大きくなりすぎることを防ぎ、迷光の発生を抑制できたためである。
【0051】
本発明は、上記実施形態に限定されない。例えば、平坦化膜7は、読出配線TLを覆う絶縁層であってもよく、絶縁層17における光入射側の表面が、光検出素子6の表面6aであってもよい。また、図12に示されるように、複数のメタレンズ部8は、光透過基板21の表面21a上に配置されて、光透過基板21が光検出素子6の表面6a上に形成された光透過性の粘着剤層22を介して、表面6aと接合されてされていてもよい。メタレンズ部8を光透過基板21上に形成する方法は、例えば、光透過基板21の表面21aに、メタレンズ材料からなる膜が形成し、次いでEBリソグラフィ法によって当該膜上にEBマスク層を形成し、次いで当該膜及び当該層にエッチング処理を施すことにより、光透過基板21の表面21aに複数のメタレンズ部8を形成する方法である。
【0052】
光透過基板21の厚さは、例えば、数十μm~数百μmである。対応する一つのアバランシェフォトダイオードAPD及び一つのメタレンズ部8において、光透過基板21の表面21a上に配置されたメタレンズ9のサイズは、メタレンズ部8からアバランシェフォトダイオードAPDにおける光入射側の表面までの距離に応じて調整することができる。
【0053】
また、図13及び図14に示されるように、メタレンズ部8は、複数のメタレンズ9として、第1メタレンズ91と、複数の第2メタレンズ92と、を有していてもよい。Z軸方向から見た場合に、第1メタレンズ91の面積は、第2メタレンズ92のそれぞれの面積よりも大きい。また、Z軸方向から見た場合に、複数の第2メタレンズ92は、第1メタレンズ91を包囲するように配置されている。これにより、メタレンズ9のレンズとしての機能を維持しつつ、一つのアバランシェフォトダイオードAPDに対応する複数のメタレンズ9の数を減らすことができる。また、メタレンズ部8における複数のメタレンズ9のそれぞれの形状、面積、配置位置等は、規則性及び/又は均一性を有さなくてもよく、これらは受光領域の形状等に応じて設計することができる。なお、図13及び図14では、光検出器4のうち一つの光検出部10に対応する部分のみが図示されている。
【0054】
また、複数のSPAD(光検出部10)を有するSiPMとしての光検出素子6は、N型の半導体領域とP型の半導体領域との配置が逆の構成等、他の構成を有していてもよい。また、光検出素子6は、複数の受光領域として、アバランシェフォトダイオードAPD以外の構成を有するものを有していてもよい。また、各メタレンズ9は、対応するアバランシェフォトダイオードAPDにおける光入射側の表面以外の位置に光Lを集光させてもよく、例えば、受光領域の深さ方向(アバランシェフォトダイオードAPDにおける光入射側の表面に対して、光入射側とは反対方向)に光Lを集光させてもよい。各メタレンズ9は、例えば、受光領域の内部(例えば、半導体領域15の領域内)に光Lを集光させてもよい。各メタレンズ9が受光領域の内部に光を集光させることにより、各メタレンズ9の焦点距離をメタレンズ部8からアバランシェフォトダイオードAPDにおける光入射側の表面までの距離T(μm)以上にすることができる。そのため、各メタレンズ9の外径をD(μm)とする場合、集光角度θはtan-1(D/2T)であることから、受光領域の表面に光を集光させる場合に比べて集光角度をより小さくすることができる。これにより、迷光の発生をより抑制することができる。また、光検出素子6は、表面入射型に限定されず、裏面入射型であってもよい。また、光検出素子6は、トレンチ16の代わりに、第1導電型の半導体領域、第2導電型の半導体領域、遮光膜等によって構成された分離領域を有していてもよい。光検出素子6は、各アバランシェフォトダイオードAPDを分離する分離領域を有していなくてもよい。
【0055】
また、放射線検出器2の検出対象は、消滅γ線に限定されず、X線等、他の放射線であってもよい。また、放射線検出器2において、放射線の入射によって光を発する発光体は、シンチレータ3に限定されず、チェレンコフ輻射体等、他の発光体であってもよい。
【符号の説明】
【0056】
4…光検出器、6…光検出素子、6a…表面、7…平坦化膜、8…メタレンズ部、9…メタレンズ、16…トレンチ、21…光透過基板、91…第1メタレンズ、92…第2メタレンズ、APD…アバランシェフォトダイオード(受光領域)L…光。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14