(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139076
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】蓄電セル
(51)【国際特許分類】
H01M 10/42 20060101AFI20220915BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20220915BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20220915BHJP
H01M 50/20 20210101ALI20220915BHJP
H01M 50/147 20210101ALI20220915BHJP
【FI】
H01M10/42 P
H01M10/48 P
H01M10/48 301
H01M10/44 P
H01M2/10 S
H01M2/04 A
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021039304
(22)【出願日】2021-03-11
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ブルートゥース
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 直剛
(72)【発明者】
【氏名】藤井 雄佑
(72)【発明者】
【氏名】田嶋 光俊
(72)【発明者】
【氏名】岡田 渉
(72)【発明者】
【氏名】松山 智
(72)【発明者】
【氏名】福本 憲作
(72)【発明者】
【氏名】矢野 準也
【テーマコード(参考)】
5H011
5H030
5H040
【Fターム(参考)】
5H011AA07
5H011DD11
5H011KK01
5H030AA10
5H030AS20
5H030BB01
5H030BB23
5H030FF22
5H030FF31
5H030FF43
5H030FF44
5H040AA39
5H040AS00
5H040AT02
5H040AY05
5H040AY06
5H040CC34
5H040DD08
5H040DD10
5H040NN03
5H040NN05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】占有スペースの大型化を抑制しつつ、無線通信する検出ユニットを備える蓄電セルを提供する。
【解決手段】電池セル100において、外装体90と、本体部50と、検出ユニット500と、を備える。本体部50は、外装体90の内側に配置されている。検出ユニット500は、外装体90の内側に少なくとも一部が配置され、蓄電セル100の状態を検出し、無線通信する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電セルであって、
外装体と、
前記外装体の内側に配置された本体部と、
前記外装体の内側に少なくとも一部が配置され、前記蓄電セルの状態を検出し、無線通信する検出ユニットとを備える、蓄電セル。
【請求項2】
前記本体部に接続された集電部をさらに備え、
前記検出ユニットは、前記集電部に電気的に接続されて給電される、請求項1に記載の蓄電セル。
【請求項3】
前記検出ユニットは、前記蓄電セルの状態を検出する回路を有する基板、および、該基板上に設けられたアンテナ部を含み、
前記外装体は、開口を有する外装缶、および、該外装缶の前記開口を封口する封口板を含み、
前記基板は、前記封口板の内面側に位置し、
前記アンテナ部は、前記封口板または前記外装体を貫通して前記外装体の外部に延出している、請求項1または請求項2に記載の蓄電セル。
【請求項4】
前記検出ユニットは、前記蓄電セルの状態を検出する回路を有する絶縁性基板、および、該絶縁性基板上に設けられたアンテナ部を含み、
前記外装体は、開口を有する外装缶を含み、
前記絶縁性基板は、前記外装缶の前記開口を封口し、
前記アンテナ部は、前記外装体の外部に位置している、請求項1または請求項2に記載の蓄電セル。
【請求項5】
蓄電セルであって、
本体部と、
前記本体部に接続された集電部と、
前記集電部に電気的に接続されて給電され、前記蓄電セルの状態を検出し、無線通信する検出ユニットとを備える、蓄電セル。
【請求項6】
前記検出ユニットは、前記蓄電セルの電圧、並びに、前記蓄電セルの内部温度および前記蓄電セルの内部圧力の少なくとも1つの状態を検出する、請求項1または請求項5に記載の蓄電セル。
【請求項7】
前記検出ユニットは、記憶部を含み、
前記記憶部は、前記蓄電セルの状態を検出したデータを記憶する、請求項6に記載の蓄電セル。
【請求項8】
前記検出ユニットは、前記蓄電セルの電圧を均等化するセルバランス部を含み、
前記セルバランス部は、前記蓄電セルからの電力によって動作する、請求項1または請求項7に記載の蓄電セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、蓄電セルに関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリ監視装置の構成を開示した先行文献として、特開2020-27767号公報(特許文献1)がある。特許文献1に記載されたバッテリ監視装置は、電池モジュールに搭載された検出用基板を備えている。検出用基板は、電池モジュールの状態情報を検出する検出回路と、無線回路と、電池モジュールの状態情報を無線送信するアンテナとを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたバッテリ監視装置においては、電池モジュールに検出用基板が搭載されているため、占有スペースが大型化する。また、検出用基板に給電するための電源を配置するスペースが必要になるため、占有スペースが大型化する。
【0005】
本技術の目的は、占有スペースの大型化を抑制しつつ、無線通信する検出ユニットを備える蓄電セルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本技術の第1局面に係る蓄電セルは、外装体と、本体部と、検出ユニットとを備える。本体部は、外装体の内側に配置されている。検出ユニットは、外装体の内側に少なくとも一部が配置され、蓄電セルの状態を検出し、無線通信する。
【0007】
本技術の第2局面に係る蓄電セルは、本体部と、集電部と、検出ユニットとを備える。集電部は、本体部に接続されている。検出ユニットは、集電部に電気的に接続されて給電され、蓄電セルの状態を検出し、無線通信する。
【発明の効果】
【0008】
本技術によれば、無線通信する検出ユニットを備える蓄電セルの占有スペースの大型化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】組電池に含まれる電池セルとエンドプレートとを示す図である。
【
図4】
図3におけるIV-IV線矢印方向から見た断面図である。
【
図5】本実施の形態における電極体の構成の一例を示す概略図である。
【
図6】電池セルと検出ユニットとの電気的接続を示す回路図である。
【
図7】検出ユニットの具体例を示す機能ブロック図である。
【
図8】実施の形態1の第1変形例に係る電池セルのアンテナ部の周辺を示す部分断面図である。
【
図9】実施の形態1の第2変形例に係る電池セルの検出ユニットおよび外装体の構成を示す分解斜視図である。
【
図10】実施の形態1の第1変形例に係る電池セルの検出ユニットの構成を示す部分断面図である。
【
図11】実施の形態2に係る電池セルの外観を示す平面図である。
【
図12】実施の形態2に係る電池セルの構成を示す分解斜視図である。
【
図13】実施の形態2の変形例に係る電池セルの外観を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本技術の実施の形態について説明する。なお、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。
【0011】
なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本技術の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本技術にとって必ずしも必須のものではない。
【0012】
なお、本明細書において、「備える(comprise)」および「含む(include)」、「有する(have)」の記載は、オープンエンド形式である。すなわち、ある構成を含む場合に、当該構成以外の他の構成を含んでもよいし、含まなくてもよい。また、本技術は、本実施の形態において言及する作用効果を必ずしもすべて奏するものに限定されない。
【0013】
本明細書において、「電池」は、リチウムイオン電池に限定されず、ニッケル水素電池など他の電池を含み得る。本明細書において、「電極」は正極および負極を総称し得る。また、「電極板」は正極板および負極板を総称し得る。「集電部」は正極集電部材および負極集電部材を総称し得る。
【0014】
本明細書において、「蓄電セル」ないし「蓄電モジュール」は、電池セルないし電池モジュールに限定されず、キャパシタセルないしキャパシタモジュールを含み得る。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、組電池1の基本的構成を示す図である。
図2は、組電池1に含まれる電池セル100とエンドプレート200とを示す図である。
【0016】
図1,
図2に示すように、「蓄電モジュール」の一例としての組電池1は、電池セル100と、エンドプレート200と、拘束部材300と、樹脂プレート400とを備える。
【0017】
複数の電池セル100は、Y軸方向(配列方向)に並ぶように設けられる。これにより、電池セル100の積層体が形成される。複数の電池セル100の間には、図示しないセパレータが介装されている。2つのエンドプレート200に挟持された複数の電池セル100は、エンドプレート200によって押圧され、2つのエンドプレート200の間で拘束されている。
【0018】
エンドプレート200は、Y軸方向において組電池1の両端に配置されている。エンドプレート200は、組電池1を収納するケースなどの基台に固定される。エンドプレート200のX軸方向(幅方向)の両端には、段差部210が形成される。
【0019】
拘束部材300は、2つのエンドプレート200を互いに接続する。拘束部材300は、2つのエンドプレート200に各々形成された段差部210に取り付けられる。
【0020】
複数の電池セル100およびエンドプレート200の積層体に対してY軸方向の圧縮力を作用させた状態で拘束部材300をエンドプレート200に係合させ、その後に圧縮力を解放することにより、2つのエンドプレート200を接続する拘束部材300に引張力が働く。その反作用として、拘束部材300は、2つのエンドプレート200を互いに近づける方向に押圧する。
【0021】
拘束部材300は、第1部材310と、第2部材320とを含む。第1部材310と第2部材320とは、たとえば突き合わせ溶接により互いに結合される。第2部材320が折り返されて形成された先端面が、Y軸方向からエンドプレート200の段差部210に当接する。
【0022】
図3は、組電池1における電池セル100を示す図である。
図4は、
図3におけるIV-IV線矢印方向から見た断面図である。
図3および
図4に示すように、電池セル100は、外装体90と、電極体50と、正極端子81と、負極端子82と、正極集電部材71と、負極集電部材72とを含む。
【0023】
外装体90は、角形(扁平直方体状)である。ただし、角形は一例である。外装体90は任意の形態を有し得る。外装体90は、たとえば円筒形であってもよいし、パウチ形であってもよい。外装体90は、たとえばAl合金製であってもよい。外装体90は、電極体50と電解液(不図示)とを収納している。外装体90は、たとえば封口板91と外装缶92とを含んでいてもよい。外装缶92は、開口を有している。封口板91は、外装缶92の開口を封口している。たとえばレーザ溶接により、封口板91と外装缶92とが接合されていてもよい。
【0024】
封口板91に、正極端子81と負極端子82とが設けられている。正極端子81は、樹脂製の絶縁部材61を介して封口板91に固定されている。負極端子82は、樹脂製の絶縁部材62を介して封口板191に固定されている。
【0025】
正極端子81は、金属製であることが好ましく、アルミニウムまたはアルミニウム合金製であることがより好ましい。負極端子82は、金属製であることが好ましく、銅または銅合金製であることがより好ましい。負極端子82は、外装体90の内部側に配置される銅または銅合金からなる領域と、外装体90の外部側に配置されるアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる領域を有するように構成されていてもよい。
【0026】
封口板91に、注入口41と、ガス排出弁42とがさらに設けられていてもよい。注入口41から外装体90の内部に電解液が注入され得る。ガス排出弁42は、外装体90内の圧力が閾値以上となった際に破断する。これにより、外装体90内の可燃性ガスが外装体90外に排出される。電極体50には、集電部が接続されている。具体的には、電極体50は、正極集電部材71によって正極端子81に接続されている。正極集電部材71は、たとえばAl板などであってもよい。電極体50は、負極集電部材72によって負極端子82に接続されている。負極集電部材72は、たとえばCu板などであってもよい。
【0027】
図5は、本実施の形態における電極体の構成の一例を示す概略図である。電池セル100の本体部である電極体50は、外装体90の内側に配置されている。電極体50は巻回型である。電極体50は、正極10、セパレータ30および負極20を含む。すなわち電池セル100は、正極10と負極20と電解液とを含む。正極10、セパレータ30および負極20は、いずれも帯状のシートである。電極体50は複数枚のセパレータ30を含んでいてもよい。電極体50は、正極10、セパレータ30および負極20がこの順に積層され、渦巻状に巻回されることにより形成されている。正極10または負極20の一方がセパレータ30に挟まれていてもよい。正極10および負極20の両方がセパレータ30に挟まれていてもよい。電極体50は、巻回後に扁平状に成形されていてもよい。なお巻回型は一例である。電極体50は、たとえば積層(スタック)型であってもよい。
【0028】
正極10は、正極基材11と正極活物質層12とを含む。正極基材11は導電性シートである。正極基材11は、たとえばAl合金箔などであってもよい。正極基材11は、たとえば10μmから30μmの厚さを有していてもよい。正極活物質層12は、正極基材11の表面に配置されている。正極活物質層12は、たとえば正極基材11の片面のみに配置されていてもよい。正極活物質層12は、たとえば正極基材11の表裏両面に配置されていてもよい。正極10の幅方向(
図5のX軸方向)において、一方の端部に正極基材11が露出していてもよい。正極基材11が露出した部分には、正極集電部材71が接合され得る。
【0029】
たとえば、正極活物質層12と正極基材11との間に中間層(不図示)が形成されていてもよい。本実施の形態においては、中間層がある場合も、正極活物質層12が正極基材11の表面に配置されているとみなされる。中間層は、正極活物質層12に比して薄くてもよい。中間層は、たとえば0.1μmから10μmの厚さを有していてもよい。中間層は、たとえば導電材、絶縁材などを含んでいてもよい。
【0030】
正極活物質層12は、たとえば10μmから200μmの厚さを有していてもよい。正極活物質層12は、たとえば50μmから150μmの厚さを有していてもよい。正極活物質層12は、たとえば50μmから100μmの厚さを有していてもよい。
【0031】
正極活物質層12は正極活物質を含む。正極活物質は粒子群である。正極活物質層12は、正極活物質を含む限り、追加の成分をさらに含んでいてもよい。正極活物質層12は正極活物質に加えて、たとえば導電材およびバインダなどを含んでいてもよい。導電材は、任意の成分を含み得る。導電材は、たとえば、カーボンブラック、黒鉛、気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ(CNT)およびグラフェンフレークからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。導電材の配合量は、100質量部の正極活物質に対して、たとえば0.1質量部から10質量部であってもよい。バインダは、任意の成分を含み得る。バインダは、たとえば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリ(ビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン(PVdF-HFP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)およびポリアクリル酸(PAA)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。バインダの配合量は、100質量部の正極活物質に対して、たとえば0.1質量部から10質量部であってもよい。
【0032】
正極活物質層12は高密度を有し得る。正極活物質層12は、たとえば3.6g/cm3から3.9g/cm3の密度を有していてもよい。正極活物質層12は、たとえば3.65g/cm3から3.81g/cm3の密度を有していてもよい。正極活物質層12は、たとえば3.70g/cm3から3.81g/cm3の密度を有していてもよい。本明細書における活物質層の密度は、見かけ密度を示す。
【0033】
負極20は、たとえば負極基材21と負極活物質層22とを含んでいてもよい。負極基材21は導電性シートである。負極基材21は、たとえばCu合金箔などであってもよい。負極基材21は、たとえば5μmから30μmの厚さを有していてもよい。負極活物質層22は、負極基材21の表面に配置されていてもよい。負極活物質層22は、たとえば負極基材21の片面のみに配置されていてもよい。負極活物質層22は、たとえば負極基材21の表裏両面に配置されていてもよい。負極20の幅方向(
図5のX軸方向)において、一方の端部に負極基材21が露出していてもよい。負極基材21が露出した部分には、負極集電部材72が接合され得る。
【0034】
負極活物質層22は、たとえば10μmから200μmの厚さを有していてもよい。負極活物質層22は負極活物質を含む。負極活物質は任意の成分を含み得る。負極活物質は、たとえば黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、珪素、酸化珪素、珪素基合金、錫、酸化錫、錫基合金、およびリチウムチタン複合酸化物からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0035】
負極活物質層22は負極活物質に加えて、たとえばバインダなどをさらに含んでいてもよい。負極活物質層22は、たとえば質量分率で、95%から99.5%の負極活物質と、残部のバインダとを含んでいてもよい。バインダは任意の成分を含み得る。バインダは、たとえばカルボキシメチルセルロース(CMC)およびスチレンブタジエンゴム(SBR)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0036】
セパレータ30の少なくとも一部は、正極10と負極20との間に介在している。セパレータ30は、正極10と負極20とを分離している。セパレータ30は、たとえば10μmから30μmの厚さを有していてもよい。
【0037】
セパレータ30は多孔質シートである。電解液はセパレータ30を透過する。セパレータ30は、たとえば200s/100mLから400s/100mLの透気度を有していてもよい。本明細書における「透気度」は、「JIS P 8117:2009」に規定される「透気抵抗度(Air Resistance)」を示す。透気度はガーレー試験法により測定される。
【0038】
セパレータ30は電気絶縁性である。セパレータ30は、たとえばポリオレフィン系樹脂などを含んでいてもよい。セパレータ30は、たとえば、実質的にポリオレフィン系樹脂からなっていてもよい。ポリオレフィン系樹脂は、たとえばポリエチレン(PE)およびポリプロピレン(PP)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。セパレータ30は、たとえば単層構造を有していてもよい。セパレータ30は、たとえば、実質的にPE層からなっていてもよい。セパレータ30は、たとえば多層構造を有していてもよい。セパレータ30は、たとえばPP層とPE層とPP層とがこの順に積層されることにより形成されていてもよい。セパレータ30の表面に、たとえば耐熱層などが形成されていてもよい。
【0039】
電解液は溶媒と支持電解質とを含む。溶媒は非プロトン性である。溶媒は任意の成分を含み得る。溶媒は、たとえば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、1,2-ジメトキシエタン(DME)、メチルホルメート(MF)、メチルアセテート(MA)、メチルプロピオネート(MP)、およびγ-ブチロラクトン(GBL)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0040】
支持電解質は溶媒に溶解している。支持電解質は、たとえば、LiPF6、LiBF4、およびLiN(FSO2)2からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。支持電解質は、たとえば0.5mоl/Lから2.0mоl/Lのモル濃度を有していてもよい。支持電解質は、たとえば0.8mоl/Lから1.2mоl/Lのモル濃度を有していてもよい。
【0041】
電解液は、溶媒および支持電解質に加えて、任意の添加剤をさらに含んでいてもよい。たとえば電解液は、質量分率で、0.01%から5%の添加剤を含んでいてもよい。添加剤は、たとえば、ビニレンカーボネート(VC)、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO2F2)、フルオロスルホン酸リチウム(FSO3Li)、およびリチウムビスオキサラトボラート(LiBOB)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0042】
図4に示すように、電池セル100は、検出ユニット500をさらに備える。検出ユニット500の少なくとも一部は、外装体90の内側に配置されている。検出ユニット500は、回路基板93およびアンテナ部510を含む。
【0043】
図4に示すように、回路基板93は、封口板91の内面側に位置している。具体的には、回路基板93は、封口板91の内面に貼り付けられている。回路基板93は、電池セル100の状態を検出する回路を有する。回路基板93においては、絶縁機能を有するプリント基板上に、Siなどの半導体に形成された集積回路および電子部品が実装されている。本実施の形態においては、プリント基板上にアンテナパターンが形成されている。
【0044】
電池セル100の状態には、電池セル100の電圧、内部温度および内部圧力の少なくとも1つの状態が含まれる。すなわち、検出ユニット500は、電池セル100の電圧、並びに、電池セル100の内部温度および電池セル100の内部圧力の少なくとも1つの状態を検出する。
【0045】
アンテナ部510は、回路基板93上に設けられている。アンテナ部510は、無線通信する。本実施の形態においては、アンテナ部510は、外装体90の内側に配置されている。アンテナ部510が外装体90の内側に配置されている場合においても、正極端子81および負極端子82の周囲に配置されている絶縁部材61,62を通じてアンテナ部510は電波を送受信可能である。アンテナ部510は、たとえば、ISO/IEC18092またはISO/IEC14443などに準拠する近距離無線通信を行う際、電磁波を送受信するものであってもよい。なお、アンテナ部510は、注入口41または外装体に形成される他の孔を通じて、外装体90の外側に引き出されていてもよい。
【0046】
本実施の形態においては、近距離無線通信は、非接触で信号を伝送するブルートゥースを採用しているが、ブルートゥースに限られず、NFC(Near Field Communication)の規格の通信が採用されてもよい。NFCの規格に準拠した通信デバイスは、たとえば、乗車カードおよび電子マネーなどの非接触ICカード、または、携帯電話およびスマートフォンなどの小型モバイル機器に組み込まれるものであって、非接触で信号を伝送するものである。
【0047】
組電池1に含まれる複数の電池セル100の各々のアンテナ部510は、電池セル100の外部に配置された監視ユニットであるバッテリ管理システム(BMS)と電気的に接続された無線通信部と無線通信可能に構成されている。バッテリ管理システム(BMS)は、セル管理コントローラ(CMC)およびバッテリ管理コントローラ(BMC)を含む。バッテリ管理システム(BMS)は、バッテリーシステム内または車両などに搭載されている。なお、バッテリ管理システム(BMS)は、CAN(Controller Area Network)プロトコルに準拠した通信によってバッテリ用ECU(Electronic Control Unit)と各種信号を送受信する。検出ユニット500は、アンテナ部510の相方向通信によって、ネットワークを通じて利用可能なクラウドと接続されていてもよい。
【0048】
図6は、電池セルと検出ユニットとの電気的接続を示す回路図である。
図6に示すように、検出ユニット500は、給電線L1に接続されている。
【0049】
給電線L1は、正極集電部材71および負極集電部材72の各々に接続されている。ただし、給電線L1は、正極集電部材71および負極集電部材72の一方にのみ接続されていてもよい。このように、検出ユニット500は、集電部に電気的に接続されて給電される。
【0050】
図7は、検出ユニットの具体例を示す機能ブロック図である。
図7に示すように、検出ユニット500は、マイコン590を含む。マイコン590は、回路基板93に実装されている。マイコン590は、電源制御部591、CPU520、クロック制御部592、電圧センサ540、アナログデジタルコンバータ593、温度センサ594、周辺機能部595、無線通信機能部596、プログラム用メモリ597、RAM(Random access memory)598、不揮発性メモリ599およびプログラム書き換え制御部580を含む。
【0051】
マイコン590は、2つの電源端子T1、アンテナ端子T2および2つのセンサ端子T3をさらに含む。一方の電源端子T1は、給電線L1によって正極端子81と電気的に接続されている。正極端子81に接続された給電線L1には、過電流対策用のヒューズ571が設けられている。他方の電源端子T1は、給電線L1によって負極端子82と電気的に接続されている。正極端子81に接続された給電線L1と、負極端子82に接続された給電線L1との間に、過電圧およびノイズ対策用の電源入力保護部品570が接続されている。
【0052】
アンテナ端子T2は、アンテナ部510と接続されている。アンテナ部510は、たとえば、回路基板93上にミアンダ状に形成されたパターンアンテナである。なお、アンテナ部510の形状および種類は適宜設定される。
【0053】
一方のセンサ端子T3は、圧力センサ550と接続されている。圧力センサ550は、電池セル100の内部に配置されて電池セル100の内部圧力を計測する。他方のセンサ端子T3は、電圧センサ560と接続されている。電圧センサ560は、電池セル100の内部に配置され、外装缶92に電気的に接続されて外装缶92の電位を計測する。
【0054】
電源制御部591は、電池セル100から給電された電力からマイコン590の動作用電力を生成する。また、電源制御部591は、マイコン590の動作モードを制御する。さらに、電源制御部591は、リセット信号を生成することができる。
【0055】
CPU520は、各種制御および演算を行なう。クロック制御部592は、内蔵発振にて動作クロックをおよび通信クロックを生成するとともに、動作クロックをおよび通信クロックを制御する。
【0056】
電圧センサ540は、一方の電源端子T1と他方の電源端子T1との間の電位差を検出することにより、電池セル100の電圧を計測する。なお、電圧センサ540は、アナログ信号である電位差の検出値をデジタル信号である電圧のパラメータ値に変換して出力する。
【0057】
アナログデジタルコンバータ593は、圧力センサ550および電圧センサ560の各々から入力されたアナログ信号の検出値をデジタル信号であるパラメータ値に変換して出力する。
【0058】
温度センサ594は、マイコン590に内蔵されており、電池セル100の内部の温度を計測する。周辺機能部595は、タイマなどのプログラム動作に必要なマイコン590の周辺機能をつかさどる。
【0059】
無線通信機能部596は、送受信可能なRF(Radio Frequency)トランシーバ回路を有している。記憶部であるプログラム用メモリ597は、マイコン590の動作用のプログラムを記憶する書き換え可能な不揮発性メモリである。RAM598は、プログラムおよびデータを一時的に記憶するワークメモリである。
【0060】
不揮発性メモリ599は、電池セル100の固有データおよび計測履歴データなどを記憶する。プログラム書き換え制御部580は、無線通信経由で、プログラム用メモリ597に記憶されているプログラムの書き換えまたはデバッグを行なう。
【0061】
マイコン590は、バッテリ管理システム(BMS)と電気的に接続された無線通信部から送信された命令信号に基づいて、電池セル100の状態の検出、および、内蔵機能の制御をすることが可能である。
【0062】
電池セル100の状態の検出対象として、電圧センサ540が検出する電池セル100の電圧、電圧センサ560が検出する外装缶92の電位、温度センサ594が検出する電池セル100の内部の温度、および、圧力センサ550が検出する電池セル100の内部圧力が含まれる。
【0063】
マイコン590が各種処理を実行することにより、電池セル100の状態情報が、A/D変換されるとともに各種信号処理が実行されて、バッテリ管理システム(BMS)に送信される。また、各種計測値および計測履歴は、不揮発性メモリ599に記憶される。
【0064】
なお、バッテリ管理システム(BMS)は、組電池1内の複数の電池セル100から受信した検出電圧にばらつきがある場合は、各電池セル100の電圧を均等化させるセルバランスを行なう命令信号を発信する。具体的には、電圧値の高い電池セル100に、マイコン590を動作させる、または、無線通信させる命令信号を送信する。命令信号を受信した電池セル100のマイコン590が動作するまたは無線通信することによって電力が消費されることにより、組電池1内の複数の電池セル100の電圧が均等化される。本実施の形態においては、マイコン590自体または無線通信機能部596が、蓄電セルの電圧を均等化するセルバランス部となる。
【0065】
本実施の形態に係る電池セル100においては、検出ユニット500が外装体90の内部に配置されていることにより、無線通信する検出ユニット500を備える電池セル100の占有スペースの大型化を抑制することができる。
【0066】
本実施の形態に係る電池セル100においては、検出ユニット500が集電部に電気的に接続されて給電されていることにより、検出ユニット500に給電する電源を別途配置する必要がないため、無線通信する検出ユニット500を備える電池セル100の占有スペースの大型化を抑制することができる。
【0067】
正極集電部材71と負極集電部材72との間に接続された電圧センサ540によって電池セル100の電圧を計測することにより、電池セル100同士を接続するバスバーを介して電池セル100の電圧を計測する場合に比較して、電池セル100の電圧を高精度に計測することができる。
【0068】
電池セル100の内部に配置された圧力センサ550によって、電池セル100の内部の圧力を計測することにより、電池セル100の内部の圧力を高精度に計測することができる。
【0069】
電池セル100の内部に配置された温度センサ594によって、電池セル100の内部の温度を計測することにより、従来の電池セルに比較して電極体50に近い位置で温度を計測することができ、ひいては、電池セル100の内部の温度を高精度に計測することができる。なお、回路基板94に樹脂でコーティングまたはポッティングの絶縁処理を施してもよい。この絶縁処理によって、金属片などによる電池セル100の内部短絡を防止することができる。
【0070】
以下、本実施の形態に係る電池セルの変形例について説明する。以下の変形例の説明においては、実施の形態1に係る電池セル100と同様の構成については説明を繰り返さない。
【0071】
図8は、実施の形態1の第1変形例に係る電池セルのアンテナ部の周辺を示す部分断面図である。
図8に示すように、実施の形態1の第1変形例に係る電池セルにおいては、アンテナ部510aは、封口板91を貫通して外装体90の外部に延出している。なお、アンテナ部510aと封口板91との間は、図示しない絶縁性シール部材で封止されている。
【0072】
本変形例によれば、回路基板93を外装体90の内側に配置しつつアンテナ部510aの先端のみ外装体90の外部に配置することにより、電池セルの占有スペースの大型化を抑制しつつ検出ユニット500Aの無線通信特性を向上することができる。
【0073】
図9は、実施の形態1の第2変形例に係る電池セルの検出ユニットおよび外装体の構成を示す分解斜視図である。
図10は、実施の形態1の第1変形例に係る電池セルの検出ユニットの構成を示す部分断面図である。
【0074】
図9および
図10に示すように、実施の形態1の第2変形例に係る電池セルにおいては、検出ユニット500Bは、電池セルの状態を検出する回路を有する絶縁性回路基板93B、および、絶縁性回路基板93B上に設けられたアンテナ部510を含む。絶縁性回路基板93Bは、外装缶92の開口を封口している。アンテナ部510は、外装体の外部に位置している。
【0075】
絶縁性回路基板93Bは、たとえば、ガラスエポキシ樹脂などの絶縁性樹脂で構成されている。本変形例においては、正極端子81および負極端子82の各々は、絶縁性回路基板93Bからなる封口板に直接固定されている。絶縁性回路基板93Bと外装缶92とは、図示しない接合材で互いに気密に接合されている。
【0076】
本変形例によれば、絶縁性回路基板93Bを外装体の内側に配置しつつアンテナ部510を外装体の外部に配置することにより、電池セルの占有スペースの大型化を抑制しつつ検出ユニット500Bの無線通信特性を向上することができる。さらに、絶縁部材61および絶縁部材62を不要にして部品点数を削減することができる。
【0077】
(実施の形態2)
以下、実施の形態2に係る電池セルについて図を参照して説明する。実施の形態2に係る電池セルは、外装体がパウチ型であり、本体部である電極体が積層型である点が、実施の形態1に係る電池セル100と異なるため、実施の形態1に係る電池セル100と同様の構成については説明を繰り返さない。
【0078】
図11は、実施の形態2に係る電池セルの外観を示す平面図である。
図12は、実施の形態2に係る電池セルの構成を示す分解斜視図である。
図11および
図12に示すように、実施の形態2に係る電池セル100Aは、外装体600と、電極体50Aと、検出ユニット500とを備える。
【0079】
外装体600は、2枚のシュリンクフィルムが貼り合わされて構成されている。シュリンクフィルムは、たとえば、アルミ箔と樹脂フィルムとを積層したアルミラミネートフィルムである。電極体50Aは、外装体600の内側に配置されている。外装体600の内側に図示しない電解液が充填されている。
【0080】
電極体50Aは、正極700、セパレータ900および負極800がこの順に積層されて構成されている。正極700の一部である正極集電部710、および、負極800の一部である負極集電部810の各々は、外装体600の外側に引き出されている。
【0081】
セパレータ900の少なくとも一部は、正極700と負極800との間に介在している。セパレータ900は、正極700と負極800とを分離している。セパレータ900は多孔質シートである。電解液はセパレータ900を透過する。セパレータ900は電気絶縁性である。
【0082】
検出ユニット500は、外装体600の内部において、負極800上に配置されている。検出ユニット500は、負極800と電気的に接続されて給電される。アンテナ部の無線通信を可能とするために、外装体600においてアンテナ部を覆う部分に位置するアルミ箔に開口が設けられていてもよいし、アンテナ部の先端のみ外装体600の外部に位置していてもよい。なお、アンテナ部は、外装体600に形成される孔を通じて、外装体600の外側に引き出されていてもよい。
【0083】
本実施の形態に係る電池セル100Aにおいては、検出ユニット500が外装体600の内部に配置されていることにより、無線通信する検出ユニット500を備える電池セル100Aの占有スペースの大型化を抑制することができる。また、外装缶を有する外装体に比べてパウチ型の外装体600は小型になるため、電池セル100Aの占有スペースの大型化を効果的に抑制することができる。
【0084】
以下、本実施の形態に係る電池セルの変形例について説明する。以下の変形例の説明においては、実施の形態2に係る電池セル100Aと同様の構成については説明を繰り返さない。
【0085】
図13は、実施の形態2の変形例に係る電池セルの外観を示す平面図である。
図13に示すように、実施の形態2の変形例に係る電池セル100Bの検出ユニット500は、負極集電部810上に配置されている。検出ユニット500は、負極集電部810に電気的に接続されて給電される。
【0086】
本変形例に係る電池セル100Bにおいては、検出ユニット500が集電部に電気的に接続されて給電されていることにより、検出ユニット500に給電する電源を別途配置する必要がないため、無線通信する検出ユニット500を備える電池セル100Bの占有スペースの大型化を抑制することができる。アンテナ部を外装体600の外部に配置することにより、検出ユニット500の無線通信特性を向上することができる。
【0087】
以上、本技術の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本技術の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0088】
1 組電池、10,700 正極、11 正極基材、12 正極活物質層、20,800 負極、21 負極基材、22 負極活物質層、30,900 セパレータ、41 注入口、42 ガス排出弁、50,50A 電極体、61,62 絶縁部材、71 正極集電部材、72 負極集電部材、81 正極端子、82 負極端子、90,600 外装体、91,191 封口板、92 外装缶、93 回路基板、93B 絶縁性回路基板、100,100A,100B 電池セル、200 エンドプレート、210 段差部、300 拘束部材、310 第1部材、320 第2部材、400 樹脂プレート、500,500A,500B 検出ユニット、510,510a アンテナ部、540,560 電圧センサ、550 圧力センサ、570 電源入力保護部品、571 ヒューズ、580 プログラム書き換え制御部、590 マイコン、591 電源制御部、592 クロック制御部、593 アナログデジタルコンバータ、594 温度センサ、595 周辺機能部、596 無線通信機能部、597 プログラム用メモリ、598 RAM、599 不揮発性メモリ、710 正極集電部、810 負極集電部、L1 給電線、T1 電源端子、T2 アンテナ端子、T3 センサ端子。