(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139093
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】加湿装置
(51)【国際特許分類】
F24F 6/00 20060101AFI20220915BHJP
【FI】
F24F6/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021039329
(22)【出願日】2021-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000538
【氏名又は名称】株式会社コロナ
(72)【発明者】
【氏名】加藤 行勢
【テーマコード(参考)】
3L055
【Fターム(参考)】
3L055DA11
3L055DA14
(57)【要約】
【課題】 特別な流量センサ等が無くても流水が停止したことを検知する加湿装置を提供する。
【解決手段】 制御部45は電極64間の電圧値を検知する電圧検知手段50を有し、給水弁が開放状態において電圧検知手段50で検知した電圧が正常な範囲かつ所定時間内で所定値以上の電圧低下であったときに、電極64部における流水が無いと判断し、電極64間の電流印加を停止することにより、流水が停止したことを検知する特別な流量センサ等が無くても流水停止を検知することができる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
器具本体と、当該器具本体内に有り水を貯水する貯水室と、当該貯水室に一端が接続され配管途中に当該貯水室への給水有無を切り替え可能な給水弁を備えた給水管と、当該給水管途中に配置され銀イオンを溶出するイオン溶出手段と、前記貯水室内の水からミストを発生させるミスト発生手段と、当該ミスト発生手段により発生したミストを含む加湿空気を送風口から送風する送風ファンと、前記ミスト発生手段で発生したミストを含む加湿空気を前記送風ファンにより前記送風口から送風するミスト運転を制御すると共に、前記イオン溶出手段を制御する制御部と、を備え、
前記イオン溶出手段は、前記給水管途中の流水経路に配置された一対の電極間に前記給水弁開放時に一定の電流を印加することにより前記電極から銀イオンを溶出するもので、
前記制御部は、前記電極間の電圧値を検知する電圧検知手段を有し、前記給水弁が開放状態において前記電圧検知手段で検知した電圧が正常な範囲かつ所定時間内で所定値以上の電圧低下であったときに、前記電極部における流水が無いと判断し、前記電極間の電流印加を停止することを特徴とする加湿装置。
【請求項2】
前記貯水室に給水される水の温度を検知する温度センサを備え、
前記制御部は、前記電極間に流れる電流値を検知する電流検知手段を有し、前記電圧検知手段で検知した電圧値と当該電流検知手段で検知した電流値と前記温度センサで検知した水の温度から電気伝導度を算出する電気伝導度算出手段を有し、前記所定値を当該電気伝導度の大きさに応じて変化させることを特徴とする請求項1に記載の加湿装置。
【請求項3】
前記ミスト発生手段は、前記貯水室内の水を回転により汲み上げて外周方向へ飛散させる回転体と、当該回転体を回転可能となるように軸支した駆動軸と接続するミストモータと、前記回転体により飛散した水が衝突する衝突体とで構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の加湿装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ミストを含む加湿空気を室内へ供給する加湿装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のものでは、器具本体内に水を貯める貯水室と、当該貯水室に設置されミストを含む加湿空気を発生させるミスト発生手段と、貯水室へ水を供給する給水管途中に貯水室への給水を制御する給水弁と、当該給水管途中に金属イオンを溶出する電極と、を備えた加湿装置において、貯水室の水位が低下したら給水弁を開放すると共に電極へ電圧を印加し、貯水室内へ金属イオンを含んだ水を供給することで、貯水室周辺でのぬめりを抑制するものがあった。(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この従来のものでは、断水や給水弁の開閉不良により給水弁が開であるにも関わらず流水が停止すると、電極部に水が停滞したままになってしまい、この状態で電極へ電圧を印加すると、銀イオンの流出が過度に多くなり消費効率が低下する虞があった。また、水中の金属イオン濃度が高くなり電極に酸化金属の被膜が出来て寿命が短くなる虞があると共に、水の電気分解により発生した水素が停滞し濃度が高くなり有害な状態になる虞があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1では、器具本体と、当該器具本体内に有り水を貯水する貯水室と、当該貯水室に一端が接続され配管途中に当該貯水室への給水有無を切り替え可能な給水弁を備えた給水管と、当該給水管途中に配置され銀イオンを溶出するイオン溶出手段と、前記貯水室内の水からミストを発生させるミスト発生手段と、当該ミスト発生手段により発生したミストを含む加湿空気を送風口から送風する送風ファンと、前記ミスト発生手段で発生したミストを含む加湿空気を前記送風ファンにより前記送風口から送風するミスト運転を制御すると共に、前記イオン溶出手段を制御する制御部と、を備え、
前記イオン溶出手段は、前記給水管途中の流水経路に配置された一対の電極間に前記給水弁開放時に一定の電流を印加することにより前記電極から銀イオンを溶出するもので、
前記制御部は、前記電極間の電圧値を検知する電圧検知手段を有し、前記給水弁が開放状態において前記電圧検知手段で検知した電圧が正常な範囲かつ所定時間内で所定値以上の電圧低下であったときに、前記電極部における流水が無いと判断し、前記電極間の電流印加を停止することを特徴としている。
【0006】
また、請求項2では、前記貯水室に給水する水の温度を検知する温度センサを備え、
前記制御部は、前記電極間に流れる電流値を検知する電流検知手段を有し、前記電圧検知手段で検知した電圧値と当該電流検知手段で検知した電流値と前記温度センサで検知した水の温度から電気伝導度を算出する電気伝導度算出手段を有し、前記所定値を当該電気伝導度の大きさに応じて変化させることを特徴としている。
【0007】
また、請求項3では、前記ミスト発生手段は、前記貯水室内の水を回転により汲み上げて外周方向へ飛散させる回転体と、当該回転体を回転可能となるように軸支した駆動軸と接続するミストモータと、前記回転体により飛散した水が衝突する衝突体とで構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、イオン溶出手段を制御する制御部は、電極間の電圧値を検知する電圧検知手段を有し、給水弁が開放状態において電圧検知手段で検知した電圧が正常な範囲かつ所定時間内で所定値以上の電圧低下であったときに、電極部における流水が無いと判断し、電極間の電流印加を停止することとしたので、流水が停止したことを検知する特別な流量センサ等が無くても流水停止を検知することができる。更に、銀イオンの流出が過度に多くなることを防止することで消費効率を向上させることができる。更に、水中の金属イオン濃度が高くなることで電極に酸化金属の被膜が出来て寿命が短くなることを防止すると共に、水の電気分解により発生した水素が停滞し濃度が高くなることを防止することができる。
【0009】
また、イオン溶出手段を制御する制御部は、電極間に流れる電流値を検知する電流検知手段を有し、電圧検知手段で検知した電圧値と電流検知手段で検知した電流値と温度センサで検知した水の温度から電気伝導度を算出する電気伝導度算出手段を有し、電圧低下の所定値を電気伝導度の大きさに応じて変化させることとしたので、電気伝導度の異なる水質でも確実に流水の停止を検知することができる。
【0010】
また、ミスト発生手段は、貯水室内の水を回転により汲み上げて外周方向へ飛散させる回転体と、当該回転体を回転可能となるように軸支した駆動軸と接続するミストモータと、回転体により飛散した水が衝突することで微細ミスト及び大径ミストを発生させる衝突体とで構成されているので、貯水室内の水を回転体で汲み上げて衝突体に衝突させる簡易な構成によってミストを含む加湿空気を多量に発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】この発明の一実施形態の外観を説明する斜視図である。
【
図3】同実施形態のイオン溶出ユニットを説明する正面視断面図である。
【
図6】同実施形態の運転開始から終了までの動作を説明するフローチャートである。
【
図7】同実施形態の時間経過に対する電極間電圧の変化を説明するグラフである。
【
図8】
図7に比べて電気伝導度が大きい水質における、時間経過に対する電極間電圧の変化を説明するグラフである。
【
図9】同実施形態の電気伝導度に対する所定値の変化を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、この発明の一実施形態における加湿装置を図に基づいて説明する。
【0013】
以下の説明において、「前(前面)」、「後(背面)」、「上」、「下」、「右」、及び「左」は、
図1、
図2、及び
図3における定義に従う。また、上下方向は、器具本体1の設置時における鉛直方向に対応する。前後方向及び左右方向は、器具本体1の設置時における水平方向に対応する。
【0014】
図1を参照する。1は器具本体、2は器具本体1上部に器具本体1の前面と平行な位置関係となるように形成され複数のルーバー3が設置された送風口、4は器具本体1の正面上部を構成する上面パネル、5は器具本体1の正面下部を構成する下面パネル、6は複数のスイッチが備えられ各種操作指令を行う操作部、7は図示しないブレーカーを隠すブレーカーカバーである。
【0015】
図2を参照する。8は器具本体1内の略中段高さ位置にあって所定量の水を貯水する貯水室であり、この貯水室8内には、水に下端を水没させ駆動軸9に軸支された筒状の回転体10が備えられている。
【0016】
前記回転体10は、中空逆円錐形で上方に向かって円周が徐々に拡大するものであり、駆動軸9に接続され回転体10を回転駆動させるミストモータ11を駆動させ、回転体10が回転することによる回転の遠心力で貯水室8の水を汲み上げ、回転体10の外壁及び内壁を伝わせて水を押し上げて、回転体10の外壁を伝わせて押し上げた水を周囲に飛散させると共に、回転体10の内壁を伝わせて押し上げた水を回転体10の上端に形成された複数の図示しない飛散口から外周方向へ飛散させる。
【0017】
12は回転体10の上部外周に所定間隔を離間させて位置し、回転体10と共に回転する円筒状の多孔体で、該多孔体12には、その全周壁に多数のスリットや金網やパンチングメタル等から成る衝突体としての多孔部13が設置されている。また、回転体10とミストモータ11と多孔部13とでミスト発生手段が構成されており、簡易な構成によってミストを含む加湿空気を多量に発生させることができ、ミストモータ11と駆動軸9を組み付けるだけであることから、組み付けが容易で低コストとなっている。
【0018】
前記ミスト発生部を構成するミストモータ11を駆動させ、回転体10を回転させたことで発生する遠心力で貯水室8内の水を汲み上げると共に空気を飛散させ、多孔部13を通過した水滴が破砕されることで、水を微細化して粒径がナノメートル(nm)サイズのミスト(以下、微細ミスト)が多量に生成されると共に、比較的粒径の大きな水滴(以下、大径ミスト)とが生成され、水の微細化によるレナード効果によって微細ミストに負イオンが帯電し、大径ミストに正イオンが帯電した状態となる。
【0019】
14は下面パネル5内に設置され所定の回転数で駆動することで室内の乾燥空気を吸引して器具本体1の上方向へ送風する送風ファン、15は当該送風ファン14で送風された空気を貯水室8の上部の一端(右側)に形成されミストモータ11の側面を通過して貯水室8内へ空気が流入可能な貯水室流入口16まで案内する送風経路であり、器具本体1の下部から吸い込まれた乾燥空気が前記送風経路15を通過して器具本体1の上部へ案内され、貯水室8内へ流入する。
【0020】
17は貯水室8の上方の他端(左側)に流路が鉛直上向きとなるよう接続され貯水室8内で発生した微細ミスト及び大径ミストを含む加湿空気が内部を流通する気水分離風路、18は当該気水分離風路17内の途中に複数設置され鉛直上方へ傾斜する傾斜面を備えた気水分離手段としてのバッフル板である。バッフル板18は、気水分離風路17内の上段に設置されたバッフル板18a、中段に設置されたバッフル板18b、下段に設置されたバッフル板18cで構成されている。
気水分離風路17内に加湿空気が流入すると、各バッフル板18を蛇行するように加湿空気が流通することで加湿空気中の大径ミストが傾斜面により分離され、分離された大径ミストが集まると重力の影響で傾斜面に沿ってバッフル板18の下端まで流動して貯水室8へ落下するため、送風口2へ案内される大径ミストの量を減少させると共に、微細ミストを多く含んだ加湿空気を送風口2へ案内する。
【0021】
19は貯水室8内に設置され貯水を加熱する加熱ヒータであり、貯水室8の外壁に設置され貯水温度を検知する貯水温度センサ20で検知される温度が所定温度となるよう、ON/OFF状態が適宜切り替えられる。
【0022】
21は貯水室8内に設置されフロートが上下することで水位を検知する水位センサであり、貯水室8内の水位が低下して所定水位以下になったらOFF信号を出力し、水位が上昇して所定水位以上になったらON信号を出力し、更に水位が上昇して貯水室8内が満水となったら満水信号を出力する。
【0023】
22は貯水室8側面に接続され貯水室8内に水を供給する給水管であり、該給水管22の配管途中には、電磁弁を開閉して貯水室8内への給水を制御する給水弁23と、給水圧を所定値まで減圧する減圧弁24と、イオン溶出手段としてのイオン溶出ユニット61と、が備えられている。
【0024】
イオン溶出ユニット61について詳述する。
図3を参照する。イオン溶出ユニット61は、ティーズ形状のケース62と、当該ケース62内にあり流入口63aから流出口63bまで通水する通水流路63と、当該通水流路63に配置され対向する2枚の銀板で構成された電極64と、前記通水流路63の外側に位置し前記電極64の端部と一端側が接続し他端側がケース62外に突出する端子65と、で構成されている。
【0025】
前記端子65の他端側に接続された図示しないリード線を介して所定の定電流が電極64に印加されることで、電極64から金属イオンである銀イオンが水中に溶出する。銀イオンが溶出した水が貯水室8内に供給されることで、貯水室8内の銀イオン濃度を目標とする所定値に保持することができる。
【0026】
図2を参照する。25は貯水室8底部に接続され貯水室8内の水を器具本体1外部に排水する排水管であり、当該排水管25の配管途中には、電磁弁を開閉して貯水室8内の水の排水を制御する排水切り替え手段としての排水弁26が備えられている。
【0027】
27は送風口2の上壁面に設置され送風口2から室内へ向けて送風される加湿空気の温度を検知する送風温度センサ、28は送風ファン14の近傍に設置され器具本体1の下部から吸い込まれた室内空気の温度を検知する吸気温度センサ、29は前記吸気温度センサ28の近傍に設置され器具本体1が設置された室内の湿度を検知する湿度センサであり、各センサで検知された温度や湿度に基づいて、ミストモータ11や送風ファン14の回転数を変化させ、加熱ヒータ19のON/OFF状態を切り替える。
【0028】
図4を参照する。操作部6には、ミスト運転の開始及び停止を指示する運転切り替え手段としての運転スイッチ30と、加熱ヒータ19のON/OFF状態を切り替えることで貯水室8内の貯水温度を変化させ、送風口2から室内に送風される加湿空気に含有可能な水分量の割合を変化させた3段階の加湿レベルと、湿度センサ29で検知された湿度が予め設定された湿度となるよう前記加湿レベルを変化させるオートモードとから選択可能な加湿スイッチ31と、ミストモータ11と送風ファン14との回転数の大小を設定可能な三段階の風量レベルと、湿度センサ29で設定された湿度が予め設定された湿度となるよう前記風量レベルを変化させるオートモードとから選択可能な風量スイッチ32と、加湿空気を室内に供給するミスト運転の開始時間と停止時間とを設定するタイマー切替スイッチ33と、前記風量スイッチ32で設定された風量で送風ファン14のみを駆動させ室内の空気清浄を行う空清モードを実施する空清スイッチ34と、現在時刻を設定する時刻設定スイッチ35と、スイッチを操作することで運転停止以外の動作を禁止するチャイルドロックスイッチ36とが備えられている。
【0029】
また、操作部6の各スイッチ上部には各スイッチに対応したランプが備えられており、運転スイッチ30が操作されたら点灯する運転ランプ37と、ミスト運転が所定時間以上継続したら開始する除菌運転時に点灯する除菌ランプ38と、加湿スイッチ31で設定された加湿レベルを1から3の数値とオートモードを示すAで表示する加湿レベルランプ39と、風量スイッチ32で設定された風量レベルを1から3の数値とオートモードを示すAで表示する風量レベルランプ40と、タイマー切替スイッチ33でミスト運転の開始及び停止が設定されたら、それぞれのランプが点灯するタイマーランプ41と、空清スイッチ34が操作され空清モードが設定されたら点灯する空清モードランプ42と、時刻設定スイッチ35で設定された現在時刻を表示する時刻表示パネル43と、チャイルドロックスイッチ36が操作されたら点灯するチャイルドロックランプ44とが備えられている。
【0030】
図5を参照する。45は各センサで検知された検知値や操作部6上に備えられた各スイッチでの設定内容に基づき、運転内容や弁の開閉を制御するマイコンで構成された制御部である。制御部45は、ミストモータ11を所定の回転数で駆動させるミストモータ制御手段46と、送風ファン14を所定の回転数で駆動させる送風ファン制御手段47と、加熱ヒータ19のON/OFF状態を切り替えて貯水室8内の水温を制御する加熱ヒータ制御手段48と、電極64へ印加する定電流値を制御する定電流回路49と、電極64間に印加される電圧値を検知する電圧検知手段50と、電極64間に流れる電流値を検知する電流検知手段51と、電圧検知手段50で検知した電圧値と電流検知手段51で検知した電流値と貯水温度センサ20で検知した貯水温度から電気伝導度を算出する電気伝導度算出手段52と、が備えられている。
【0031】
定電流回路49は、商用電源80から供給された電源が図示しない整流回路、スイッチング電源等の直流安定化電源回路を介した後に、電極64と接続されている。
また、定電流回路49は電極64間の抵抗値に依らず一定値の電流を電極64へ送り続けるため、電圧検知手段50で検知した電圧値は電極64間の抵抗値に応じて変化する。
【0032】
図2を参照する。53は器具本体1の前面下方に形成され室内空気を器具本体1内に取り込む吸気口である。
【0033】
55は気水分離風路17の壁面を貫通し送風経路15から分岐して貯水室8をバイパスするバイパス経路54を流通する空気が流入可能なバイパス流入口である。当該バイパス流入口55は、送風口2に最も近い位置にある気水分離風路17内の最上段に設置されたバッフル板18aの上方へ傾斜した傾斜面と対向し、かつ気水分離風路17の壁面を貫通するように形成されており、バイパス流入口55から気水分離風路17内へ空気が流入することで、貯水室8から上昇してきた加湿空気の風量を増大させ、送風口2から室内へ送風される加湿空気の送風量を上昇させることができる。
【0034】
次に、この一実施形態での運転開始から終了までの動作について
図6のフローチャートに基づいて説明する。
まず、操作部6の運転スイッチ30が操作されたか、もしくはタイマー切替スイッチ33で設定された運転開始時刻になったら、制御部45は、排水弁26を開放して貯水室8内の水を排水し、水位センサ21でOFF信号が検知されたら、給水弁23を開放して貯水室8内を水で洗い流すクリーニング動作を行い、所定時間経過したら排水弁26を閉止する。排水弁26閉止の後、イオン溶出ユニット61内にある電極64へ定電流を印加することで銀イオンを溶出し、給水管22を介して貯水室8へ銀イオンを含んだ水を流入させる。そして、水位センサ21でON信号が検知されたら、所定量の水が貯水室8内に供給されたとして給水弁23を閉止し、電極64への定電流印加を停止する水入替モードを行う(ステップS101)。
【0035】
ステップS101の水入替モードが終了したら、制御部45は、貯水温度センサ20で検知される貯水温度が室温と同値になるまで加熱ヒータ制御手段48で加熱ヒータ19をON状態にして、ミストモータ11及び送風ファン14が所定の回転数となるようミストモータ制御手段46及び送風ファン制御手段47で制御する立ち上げ動作を実行する立ち上げモードを行う(ステップS102)。
【0036】
ステップS102の立ち上げモードが終了したら、制御部45は、加湿スイッチ31及び風量スイッチ32で設定された加湿レベルと風量レベルとに基づいて、ミストモータ11と送風ファン14とが所定の回転数で駆動するようミストモータ制御手段46と送風ファン制御手段47とで回転数を制御し、加熱ヒータ19のON/OFF状態を加熱ヒータ制御手段48で切り替えて制御して、加湿レベルと風量レベルとに合わせた所定の温度範囲内にするミスト運転を実行する通常運転モードを行う(ステップS103)。
【0037】
この通常運転モード時、貯水室8内の水位が低下し水位センサ21でOFF信号が検知されたら、制御部45は、給水弁23を開放すると共にイオン溶出ユニット61内にある電極64へ所定の定電流値を印加し、貯水室8内に所定濃度の銀イオンを含んだ水を供給する。これにより、貯水室8内の水への抗菌作用が働き、貯水室8周辺でのぬめり発生を抑制することができる。
【0038】
ステップS103の通常運転モード中に運転スイッチ30が操作され運転終了の指示があったと判断したら、制御部45は、ミストモータ11を停止させてから排水弁26を開弁して貯水室8内の水を排水し、所定時間経過したら給水弁23を開放すると共に、イオン溶出ユニット61内にある電極64へ定電流を印加し、貯水室8内を洗浄してから排水弁26を閉止して貯水室8内に所定量だけ貯水する水入替運転を行う。その後、加熱ヒータ19をON状態にして水を加熱することで除菌を行う除菌運転を所定時間行い、その後、所定時間経過後に貯水室8内を冷却する冷却運転を実行し、貯水温度が所定温度以下になったら排水弁26を開放して排水するクリーニングモードを行う(ステップS104)。
【0039】
ステップS104のクリーニングモードが終了したら、制御部45は、送風ファン14が所定の回転数(例えば、800rpm)で駆動するよう送風ファン制御手段47で制御し、貯水室8や送風経路15に送風して乾燥させることで菌の増殖を防止する乾燥モードを行い(ステップS105)、送風ファン14の駆動時間が所定時間(例えば、3時間)をカウントしたか判断し、3時間カウントしたら、送風ファン14を停止させて運転を終了する。
【0040】
次に、電極64間の電圧を検知することで、流水が無いと判断する制御内容について、
図7に基づいて説明する。
【0041】
図7は、ある電気伝導度を有した水質における、時間経過に対する電極64間電圧の変化を示す。
【0042】
通常運転モードにおいて、制御部45の指令により給水弁23が開放しており、イオン溶出ユニット61内の電極64へ定電流を印加している状態では、電極64間には電圧Va1が検知されている。このとき、電極64において流水が正常であり、電極64自体に異常がなく、電極64に定電流を供給する電気回路(図示せず)にも異常がなければ、流水の電気伝導度はほぼ一定であり大きく変わらないため、電極64間の電圧Va1はほぼ一定である。
【0043】
一方で、断水や給水弁23の開閉不良により時刻t1で電極64における流水が停止した場合、制御部45は給水弁23に開放指令を送り続けると共に、電極64へ定電流を印加し続けるため、イオン溶出ユニット61から銀イオンが溶出し続ける。このとき、電極64周辺に銀イオンが停滞するので、電極64間の電気伝導度は大きく抵抗は小さくなるが、電極64へは定電流が流れているため電極64間の電圧は低下し、時刻t2にはVa2まで低下する。
【0044】
ここで、通常の流水時における電極64間の電圧Va1、及び流水停止により低下した電極64間の電圧Va2は、それぞれ正常な電圧範囲内の値となっている。つまり、
図7において異常検知閾値上限であるVmaxより小さく、異常検知閾値下限であるVminより大きい範囲であり、流水停止以外の異常がない範囲である。なお、Vmaxで検知する異常は電極64の消耗に起因する電圧上昇などであり、Vminで検知する異常は電極64に定電流を供給する電気回路(図示せず)の短絡に起因する電圧低下などである。
【0045】
このとき、制御部45は電圧検知手段51によって検知した電圧Va1及びVa2が正常な電圧範囲であることを検知し、かつ所定時間Δt=t2-t1内で電圧低下ΔVa=Va1-Va2が所定値Vs1以上であった場合は、電極64における流水が停止したと判断する。これにより、給水管22途中に流水の有無を検知するための流量センサ等を用いることなく、流水が停止したことを検知することができる。更に、制御部45は流水停止を検知した後、電極64への定電流の印加を停止することで、銀イオンの流出が過度に多くなることを防止すると共に、水の電気分解により発生した水素が停滞し水素の濃度が高くなることを防止することができる。
【0046】
次に、電極64における電気伝導度の大きさに応じて電圧低下の所定値を変化させる制御内容について、
図7、
図8及び
図9に基づいて説明する。
【0047】
図8は、
図7よりも電気伝導度が大きい水質における、時間経過に対する電極64間電圧の変化を示す。
【0048】
図8において、通常の流水時における電極64間の電圧Vb1は、
図7におけるVa1よりも小さい値となっている。これは、
図8の方が電極64間の電気伝導度が大きく抵抗が小さいため、通常時の電圧Vb1が小さくなっている。ここで、時刻t1で電極64における流水が停止した場合、前述した
図7の場合と同様に電圧低下ΔVb=Vb1-Vb2が発生するが、
図8の方が電極64間の電気伝導度が大きく抵抗が小さいため、ΔVbは
図7におけるΔVaよりも小さくなっている。また、制御部45で流水停止を判断するための所定値であるVs2も同様の考え方により、
図7におけるVs1よりも小さい。
【0049】
つまり、電気伝導度が異なる水質の場合でも制御部45が確実に流水停止を判定するためには、電気伝導度の大きさに応じて電圧低下の所定値Vsを変化させる必要がある。
【0050】
そこで、
図9に示すような関係を用いて、水の電気伝導度κに応じて電圧低下の所定値Vsを設定する。つまり、電気伝導度κが小さい場合は所定値Vsを大きくし、電気伝導度κが大きい場合は所定値Vsを小さくすることで、貯水室8内に供給する水の水質が異なる場合においても、確実に流水の停止を検知することができる。
【0051】
電気伝導度κは制御部45内の電気伝導度算出手段52によって算出する。電気伝導度算出手段52は、電極64へ定電流を印加している際に電圧検知手段50で検知した電圧値と、電流検知手段51で検知した電流値と、貯水室8に貯水された後に貯水温度センサ20で検知した貯水温度と、を用いて電気伝導度κを算出する。算出した電気伝導度κから、
図8により電圧低下の所定値Vsを決定する。
【0052】
また、
図9の電気伝導度κと電圧低下の所定値Vsの関係は、実験的に求めることができる。つまり、異なる電気伝導度を有する水質の水に対し、実際の電気伝導度κを電気伝導度算出手段52による前述の算出方法で算出し、一方で流水が停止した状態において、電極64へ定電流を印加し電圧検出手段50により電極64間電圧の低下量を検知することにより、電気伝導度κと電圧低下の所定値Vsの関係を求めることができる。
【0053】
以上のように、制御部45は電極64間の電圧値を検知する電圧検知手段50を有し、給水弁が開放状態において電圧検知手段50で検知した電圧が正常な範囲かつ所定時間内で所定値以上の電圧低下であったときに、電極64部における流水が無いと判断し、電極64間の電流印加を停止することにより、流水が停止したことを特別な流量センサ等が無くても検知することができる。更に、銀イオンの流出が過度に多くなることを防止することで消費効率を向上させることができる。更に、水中の金属イオン濃度が高くなることで電極に酸化金属の被膜が出来て寿命が短くなることを防止すると共に、水の電気分解により発生した水素が停滞し濃度が高くなることを防止することができる。
【0054】
更に、制御部45は電極64間に流れる電流値を検知する電流検知手段51を有し、電圧検知手段50で検知した電圧値と電流検知手段51で検知した電流値と貯水温度センサ20で検知した貯水温度から電気伝導度を算出する電気伝導度算出手段52を有し、電圧低下の所定値を電気伝導度の大きさに応じて変化させることにより、貯水室8内に供給する水が電気伝導度の異なる水質でも、確実に流水の停止を検知することができる。
【0055】
なお、貯水温度センサ20の代わりに貯水室8に給水される水の温度を検知する手段として、給水管22の途中に給水温度センサを設けても良い。
【0056】
また、電気伝導度算出手段52による電気伝導度の算出は運転開始から通常運転モードS103開始直後までに行うことが望ましい。つまり、運転開始の初期段階で電気伝導度の算出を行うことで、通常運転中に流水の停止が発生した際に確実に流水停止を検知することができる。
【0057】
また、
図9では電気伝導度κと電圧低下の所定値Vsの関係を略直線で表したが、これに限られるものではなく、単調減少している関係であれば曲線で表されるものでも良い。
【0058】
また、本実施形態で用いたその他の構成は一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図しておらず、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
1 器具本体
8 貯水室
10 回転体
11 ミストモータ
13 多孔部(衝突体)
14 送風ファン
20 貯水温度センサ(温度センサ)
22 給水管
23 給水弁
45 制御部
50 電圧検知手段
51 電流検知手段
52 電気伝導度算出手段
61 イオン溶出ユニット(イオン溶出手段)
64 電極