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特開2022-139096プレキャストコンクリート床版の架設方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139096
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】プレキャストコンクリート床版の架設方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 21/00 20060101AFI20220915BHJP
【FI】
E01D21/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021039335
(22)【出願日】2021-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 公生
(72)【発明者】
【氏名】一宮 利通
(72)【発明者】
【氏名】藤代 勝
(72)【発明者】
【氏名】新井 崇裕
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA14
2D059CC02
2D059DD03
(57)【要約】
【課題】床版にひび割れが生じることを抑制することができると共に工期を短縮できるプレキャストコンクリート床版の架設方法を提供する。
【解決手段】一実施形態に係るプレキャストコンクリート床版の架設方法は、桁2の上に複数の支持受材6を設置する工程と、複数の支持受材6の上にプレキャストコンクリート床版3を設置する工程と、複数の支持受材6の上にプレキャストコンクリート床版3を設置した後に、桁2とプレキャストコンクリート床版3の間に充填材を注入してプレキャストコンクリート床版3と桁2とを一体化させる工程と、を備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
桁の上に複数の支持受材を設置する工程と、
前記複数の支持受材の上にプレキャストコンクリート床版を設置する工程と、
前記複数の支持受材の上に前記プレキャストコンクリート床版を設置した後に、前記桁と前記プレキャストコンクリート床版の間に充填材を注入して前記プレキャストコンクリート床版と前記桁とを一体化させる工程と、
を備えるプレキャストコンクリート床版の架設方法。
【請求項2】
前記プレキャストコンクリート床版を設置する工程は、
前記プレキャストコンクリート床版を持ち上げて前記プレキャストコンクリート床版を搬送する工程と、搬送した前記プレキャストコンクリート床版を前記支持受材の上に載せる工程と、を含んでおり、
前記プレキャストコンクリート床版を搬送する工程では、前記プレキャストコンクリート床版を搬送する自走式の架設機が、前記支持受材の上に載せられた前記プレキャストコンクリート床版の上を走行する、
請求項1に記載のプレキャストコンクリート床版の架設方法。
【請求項3】
前記一体化させる工程の前に、前記桁と前記プレキャストコンクリート床版の間から前記支持受材を撤去する工程を備える、
請求項1又は2に記載のプレキャストコンクリート床版の架設方法。
【請求項4】
前記一体化させる工程では、前記桁と前記プレキャストコンクリート床版の間に前記支持受材を残置した状態で前記桁と前記プレキャストコンクリート床版の間に充填材を注入する、
請求項1又は2に記載のプレキャストコンクリート床版の架設方法。
【請求項5】
前記プレキャストコンクリート床版に、前記桁に対する前記プレキャストコンクリート床版のずれを抑制するずれ止め部材を配置する工程を備える、
請求項1~4のいずれか一項に記載のプレキャストコンクリート床版の架設方法。
【請求項6】
前記プレキャストコンクリート床版は、厚さが180mm以下であるプレキャストコンクリート床版、及び比重が19kN/m以下であるプレキャストコンクリート床版のいずれかである、
請求項1~5のいずれか一項に記載のプレキャストコンクリート床版の架設方法。
【請求項7】
前記プレキャストコンクリート床版を設置する工程は、前記プレキャストコンクリート床版を持ち上げて前記プレキャストコンクリート床版を搬送する工程を含んでおり、
前記プレキャストコンクリート床版を搬送する工程では、自走式の架設機が前記プレキャストコンクリート床版を把持又は懸架すると共に、前記プレキャストコンクリート床版を把持又は懸架したまま旋回する、
請求項1~6のいずれか一項に記載のプレキャストコンクリート床版の架設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、道路工事の現場において行われるプレキャストコンクリート床版の架設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
実開平5-14207号公報には、橋桁に床版を設置する床版移送用のエレクターが記載されている。床版上には2本のレールが架設され、エレクターは架設された2本のレール上を走行する。エレクターは、2本のレールのそれぞれに走行自在に配置された2つの走行部と、走行部から斜め上前方に延在しており床版を吊り上げる2つの吊り上げ部と、走行部の後方に設けられておりレールを左右から挟持すると共にレールの側面に沿って転動する挟持用車輪を有する2つの挟持部と、を備える。
【0003】
上記のエレクターが用いられる現場では、橋が建設される。橋が建設されるときには、橋脚が設けられ、橋脚上に橋桁が架け渡される。そして、橋桁に数枚の床版が仮溶接される。橋桁上に仮溶接された床版上にはレールが仮設置される。次に、クレーンによって上記のエレクターが吊り上げられ、レール上にエレクターが載せられる。そして、クレーンによって床版をエレクターの前に配置し、エレクターは配置された床版を吊り上げる。床版を吊り上げたエレクターは床版を移送し、床版を露出している橋桁の上に載置する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平5-14207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した床版の架設方法では、橋桁に床版が仮溶接され、床版上に仮設置されたレール上をエレクター等の架設機が走行する。架設機の荷重はレールを介して床版の特定の箇所に局所的に集中するため、床版にひび割れが生じないようにレールの位置を設定することができる。一方で、レールの設置及び撤去が必要となるため、レールの設置及び撤去に手間がかかり工期が長期化するという問題も発生しうる。従って、レールを用いずに床版にひび割れが生じないような架設方法が望まれる。
【0006】
本開示は、床版にひび割れが生じることを抑制することができると共に工期を短縮できるプレキャストコンクリート床版の架設方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係るプレキャストコンクリート床版の架設方法は、桁の上に複数の支持受材を設置する工程と、複数の支持受材の上にプレキャストコンクリート床版を設置する工程と、複数の支持受材の上にプレキャストコンクリート床版を設置した後に、桁とプレキャストコンクリート床版の間に充填材を注入してプレキャストコンクリート床版と桁とを一体化させる工程と、を備える。
【0008】
このプレキャストコンクリート床版の架設方法では、桁の上に複数の支持受材が設置され、複数の支持受材の上にプレキャストコンクリート床版が設置される。よって、複数の支持受材の上にプレキャストコンクリート床版が設置された状態で当該プレキャストコンクリート床版の上を架設機が通ったときに、当該架設機の荷重は複数の支持受材に分散される。従って、プレキャストコンクリート床版を搬送してプレキャストコンクリート床版を設置する架設機の荷重を複数の支持受材に分散することができるので、プレキャストコンクリート床版の特定の箇所に局所的に荷重が集中することを抑制できる。プレキャストコンクリート床版に局所的な荷重が集中することを抑制できるので、プレキャストコンクリート床版にひび割れが生じないようにすることができる。また、この架設方法では、レールの設置等を不要とできるので、工期を短縮させることができる。なお、床版にひび割れが生じない範囲で、できる限り支持受材の数を削減するのが合理的である。
【0009】
プレキャストコンクリート床版を設置する工程は、プレキャストコンクリート床版を持ち上げてプレキャストコンクリート床版を搬送する工程と、搬送したプレキャストコンクリート床版を支持受材の上に載せる工程と、を含んでおり、プレキャストコンクリート床版を搬送する工程では、プレキャストコンクリート床版を搬送する自走式の架設機が、支持受材の上に載せられたプレキャストコンクリート床版の上を走行してもよい。この場合、自走式の架設機がプレキャストコンクリート床版を持ち上げてプレキャストコンクリート床版を搬送する。このとき、架設機は、支持受材の上に載せられたプレキャストコンクリート床版の上を走行する。従って、充填材を充填する前に、設置済みのプレキャストコンクリート床版の上を架設機が走行して複数のプレキャストコンクリート床版の設置を順次行うことが可能となる。よって、プレキャストコンクリート床版の設置を効率よく行って工期をより短縮させることができる。
【0010】
前述したプレキャストコンクリート床版の架設方法は、一体化させる工程の前に、桁とプレキャストコンクリート床版の間から支持受材を撤去する工程を備えてもよい。この場合、充填材の充填前に支持受材を撤去するので、支持受材を長期的な耐久性を有しないものとすることができる。すなわち、支持受材は一体化の前に取り除かれるので、支持受材として耐久的な材料を調達する必要がなく、支持受材を簡易なものとすることができる。また、前述した支持受材は、プレキャストコンクリート床版の自重を桁に伝達するだけでなく、自走式の架設機がこれから架設するプレキャストコンクリート床版を把持又は懸架した状態で当該プレキャストコンクリート床版の上を自由に動いたときに作用する荷重を桁に伝達する機構を有するものである。
【0011】
一体化させる工程では、桁とプレキャストコンクリート床版の間に支持受材を残置した状態で桁とプレキャストコンクリート床版の間に充填材を注入してもよい。この場合、桁とプレキャストコンクリート床版の間に支持受材を残置した状態で充填材を注入するので、プレキャストコンクリート床版の設置、及び充填材の注入を効率よく行うことができる。従って、更なる工期の短縮化に寄与する。
【0012】
前述したプレキャストコンクリート床版の架設方法は、プレキャストコンクリート床版に、桁に対するプレキャストコンクリート床版のずれを抑制するずれ止め部材を配置する工程を備えてもよい。この場合、プレキャストコンクリート床版の上を架設機が通ったときに桁からプレキャストコンクリート床版がずれることを抑制することができる。
【0013】
プレキャストコンクリート床版は、厚さが180mm以下であるプレキャストコンクリート床版、及び比重が19kN/m以下であるプレキャストコンクリート床版のいずれかであってもよい。この場合、プレキャストコンクリート床版が薄肉又は軽量であるため、架設機によるプレキャストコンクリート床版の搬送及び設置を容易に行うことができる。
【0014】
プレキャストコンクリート床版を設置する工程は、プレキャストコンクリート床版を持ち上げてプレキャストコンクリート床版を搬送する工程を含んでもよく、プレキャストコンクリート床版を搬送する工程では、自走式の架設機がプレキャストコンクリート床版を把持又は懸架すると共に、プレキャストコンクリート床版を把持又は懸架したまま旋回してもよい。この場合、自走式の架設機は、プレキャストコンクリート床版を把持又は懸架すると共に、プレキャストコンクリート床版を把持又は懸架した状態で旋回する。従って、架設機がプレキャストコンクリート床版を把持又は懸架した状態で旋回するので、架設機の旋回によってプレキャストコンクリート床版の向きを効率よく変えることができる。従って、プレキャストコンクリート床版の設置を一層容易に行うことができるので、更なる工期の短縮化に寄与する。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、床版にひび割れが生じることを抑制することができると共に工期を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係るプレキャストコンクリート床版の架設方法が適用される現場の例を示す斜視図である。
図2】現場において、自走式の架設機がプレキャストコンクリート床版を持ち上げる状態を模式的に示す斜視図である。
図3図2の架設機がプレキャストコンクリート床版を把持したまま旋回している状態を模式的に示す斜視図である。
図4図3の架設機がプレキャストコンクリート床版を把持したまま更に旋回している状態を模式的に示す斜視図である。
図5図1の現場の桁の上に複数の支持受材が配置された状態を模式的に示す斜視図である。
図6図5の桁、支持受材、高さ調整部材及びプレキャストコンクリート床版を示す斜視図である。
図7】プレキャストコンクリート床版に配置されたずれ止め部材を示す斜視図である。
図8】実施形態に係るプレキャストコンクリート床版の架設方法が適用される別の現場を示す斜視図である。
図9図8の現場においてプレキャストコンクリート床版が吊り上げられている状態を示す斜視図である。
図10図8の現場におけるプレキャストコンクリート床版の架設方法の工程を模式的に示す図である。
図11図10の工程の続きの工程を模式的に示す図である。
図12図11の工程の続きの工程を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、図面を参照しながら本開示に係るプレキャストコンクリート床版の架設方法の実施形態について説明する。なお、本開示に係るプレキャストコンクリート床版の架設方法は、後述する実施形態に限定されない。図面の説明において同一又は相当する要素には同一の符号を付し重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0018】
図1は、本実施形態に係る架設方法が適用可能な現場Aを有する橋梁Bの構造を示す図である。図1に示されるように、橋梁Bは、橋軸方向D1に延びると共に道路の幅員方向D2に沿って並ぶ複数の桁2と、複数の桁2の上において幅員方向D2に延びるように配置される複数のプレキャストコンクリート床版3とを備える。
【0019】
桁2は、例えば、上フランジ2b、ウェブ2c及び下フランジ2dを有する鋼桁である。しかしながら、桁2は鋼桁に限られず、例えば、PC桁であってもよい。更に、橋梁Bは、プレキャストコンクリート床版3の幅員方向D2の両端のそれぞれから鉛直上方に延在する防護柵4と、プレキャストコンクリート床版3の上に設けられるアスファルト5とを備える。
【0020】
現場Aは、例えば、高速道路における工事現場である。現場Aでは、例えば、プレキャストコンクリート床版3の更新工事が行われる。更新される新たなプレキャストコンクリート床版3は、例えば、超高強度繊維補強コンクリート(UFC:Ultra high strength Fiber reinforce Concrete)によって構成されるUFC床版である。すなわち、現場Aでは、UFC床版を用いた高速道路の床版更新工事が行われる。また、現場Aでは、老朽化した既設の床版の撤去が行われる。
【0021】
例えば、既設の床版は、現行の設計基準で設計されたプレキャストコンクリート床版よりも薄く且つ軽量である。これに対し、新たなプレキャストコンクリート床版3がUFC床版である場合、軽量且つ耐久性が高いプレキャストコンクリート床版3に更新することが可能となる。従って、新たなプレキャストコンクリート床版3に更新するときに、プレキャストコンクリート床版3を支える桁2、橋脚又は基礎構造等に対する補強を不要とすることが可能となるので、工期の短縮化に寄与する。
【0022】
例えば、プレキャストコンクリート床版3は、厚さが180mm以下であるプレキャストコンクリート床版である。一例として、プレキャストコンクリート床版3は、平板型UFC床版である。プレキャストコンクリート床版3の厚さの下限は、例えば、100mmである。例えば、プレキャストコンクリート床版3は、比重が19kN/m以下である。プレキャストコンクリート床版3の比重の下限は、例えば、10kN/mである。
【0023】
図2図3及び図4に示されるように、現場Aでは、例えば、旋回可能な自走式の架設機10を用いてプレキャストコンクリート床版3の搬送が行われる。架設機10は、トラックTの荷台T1からプレキャストコンクリート床版3を持ち上げてプレキャストコンクリート床版3を把持し、プレキャストコンクリート床版3を把持した状態で旋回及び走行を行う。架設機10は、例えば、複数の車輪11bを有すると共に水平方向に矩形状に延在するベース11と、ベース11の長手方向の一端及び他端のそれから上方且つ平面視におけるベース11の外側に延在する一対のアーム12と、一対のアーム12を駆動させる駆動部13とを備える。架設機10は、更に、一対のアーム12の間においてベース11の長手方向に延在する把持部材14を備える。
【0024】
例えば、ベース11の長手方向の一端及び他端のそれぞれに車輪11bが設けられており、ベース11は路面に沿って旋回可能とされている。ベース11の長手方向に沿って一対のアーム12が並ぶように配置されている。アーム12は、ベース11から鉛直上方に延びる第1延在部12bと、第1延在部12bの上端からベース11の幅方向に延びる第2延在部12cとを有する。第1延在部12b及び第2延在部12cはL字状を呈する。
【0025】
アーム12の先端(第2延在部12cの第1延在部12bとは反対側の端部)に把持部材14が取り付けられている。把持部材14は、ベース11の長手方向に延びる棒状とされている。アーム12は、駆動部13から駆動力を受けて作動する。アーム12は、ベース11の長手方向に沿って延びる軸Lとして回転可能とされており、軸Lを中心としてアーム12が回転することによって把持部材14が上下移動する。
【0026】
把持部材14は、例えば、アーム12の先端に取り付けられるアタッチメントであってもよい。把持部材14は、プレキャストコンクリート床版3を把持する一対の把持部14bを有する。把持部材14では、例えば、駆動部13から駆動力を受けて一対の把持部14bがプレキャストコンクリート床版3を把持することによってプレキャストコンクリート床版3を持ち上げることが可能とされている。
【0027】
以上のように構成された架設機10は、自走式であって、プレキャストコンクリート床版3を把持すると共に、プレキャストコンクリート床版3を把持したまま走行及び旋回する。具体的には、架設機10は、トラックTが運搬してきたプレキャストコンクリート床版3を把持し、走行すると共に所定位置に搬送するためにプレキャストコンクリート床版3を把持したまま旋回する。そして、架設機10は、所定位置までプレキャストコンクリート床版3を搬送した後にプレキャストコンクリート床版3を下ろしてプレキャストコンクリート床版3の架設が行われる。
【0028】
この架設機10を用いることにより、プレキャストコンクリート床版3の搬送を効率よく行うことができるため、工期を短縮化させることができる。しかしながら、本実施形態に係る架設方法では、架設機10以外の架設機を用いることも可能であり、架設機の構成は前述した架設機10の構成に限定されない。
【0029】
図5は、プレキャストコンクリート床版3が設置される桁2を示す斜視図である。図1及び図5に示されるように、桁2の上フランジ2bには複数のスタッド2fが設置されている。複数のスタッド2fは、上フランジ2bにおいて橋軸方向D1に沿って並ぶように設置されている。
【0030】
プレキャストコンクリート床版3は、複数の貫通孔3bを有する。プレキャストコンクリート床版3において、橋軸方向D1に沿って複数の貫通孔3bが並ぶと共に、幅員方向D2に沿って複数の貫通孔3bが並んでいる。貫通孔3bは、例えば、プレキャストコンクリート床版3の長手方向に延びる長円状を呈する。
【0031】
桁2のスタッド2fは、桁2に対するプレキャストコンクリート床版3のずれ止めを行うずれ止めスタッドである。桁2の上にプレキャストコンクリート床版3が設置された状態において、プレキャストコンクリート床版3の貫通孔3bに桁2のスタッド2fが入り込む。スタッド2fが入り込んだ貫通孔3bに間詰材が充填されて間詰材が硬化することにより、桁2にプレキャストコンクリート床版3が一体化される。
【0032】
スタッド2fが入り込んだ貫通孔3bに充填される間詰材は、例えば、繊維補強コンクリートによって構成されている。当該間詰材は超高強度繊維補強充填材であってもよい。超高強度繊維補強充填材は、超高強度繊維補強コンクリート(UFC:Ultra high strength Fiber reinforce Concrete)であってもよいし、超高性能繊維補強セメント系複合材料(UHPFRC:Ultra High Performance Fiber Reinforced cement-based Composites)であってもよい。
【0033】
当該間詰材がUHPFRCである場合、間詰材を高強度とすることができるので、プレキャストコンクリート床版3の貫通孔3bの数を減らすことができる。従って、貫通孔3bの数が減ることによってプレキャストコンクリート床版3の設置作業を効率化できると共に、雨水等の侵入を低減できプレキャストコンクリート床版3の耐久性を向上させることができる。
【0034】
また、プレキャストコンクリート床版3と隣接するプレキャストコンクリート床版3との間にUHPFRCが充填されてもよく、この場合、一対のプレキャストコンクリート床版3の間の目地の幅を減らして施工サイクルを短縮化できると共に、車両が走行する領域を広く確保することができる。
【0035】
桁2(上フランジ2b)の上には複数の支持受材6が設置される。支持受材6は、プレキャストコンクリート床版3にかかる荷重を分散させるために設けられる。図5及び図6に示されるように、支持受材6の上にはプレキャストコンクリート床版3が設置される。桁2とプレキャストコンクリート床版3の間に支持受材6が介在した状態で、桁2とプレキャストコンクリート床版3の間には空間Sが形成される。支持受材6は、桁2とプレキャストコンクリート床版3の間に空間Sを形成するスペーサとしても機能する。
【0036】
支持受材6の上面6bは、平坦状とされている。支持受材6は、例えば、直方体状を呈する。一例として、支持受材6は、角材である。このように、支持受材6としては簡易で入手しやすいものを用いることが可能である。支持受材6によって形成された空間Sには、充填材が注入される。そして、この充填材が硬化することによって桁2及びプレキャストコンクリート床版3が一体化する。この充填材としては、前述した間詰材と同様、UFC又はUHPFRCを用いることが可能である。
【0037】
例えば、プレキャストコンクリート床版3は、桁2に対するプレキャストコンクリート床版3の高さを調整する高さ調整部材7を有する。高さ調整部材7は、例えば、プレキャストコンクリート床版3から上下に突出する高さ調整ボルトを有する。高さ調整部材7は、例えば、プレキャストコンクリート床版3に対してねじ込み可能とされている。
【0038】
プレキャストコンクリート床版3に対する高さ調整部材7のねじ込み度合を調整して下方に延びる高さ調整部材7の突出量を調整することにより、プレキャストコンクリート床版3の高さを調整可能である。
【0039】
例えば、プレキャストコンクリート床版3の上からプレキャストコンクリート床版3に高さ調整部材7をねじ込んで高さ調整部材7の下方への突出量を長くすることにより、高さ調整部材7によってプレキャストコンクリート床版3が支持される。以上、高さ調整部材7について説明したが、場合によっては高さ調整部材7を省略することも可能である。
【0040】
前述したように、桁2のスタッド2fは、プレキャストコンクリート床版3の貫通孔3bに入り込む。図7に示されるように、プレキャストコンクリート床版3に、桁2に対するプレキャストコンクリート床版3のずれを抑制するずれ止め部材8が配置されてもよい。
【0041】
ずれ止め部材8は、例えば、スタッド2fと貫通孔3bの間に入り込む楔であってもよい。一例として、複数のスタッド2fと貫通孔3bを画成する内周面3dとの間にずれ止め部材8が入り込む。例えば、橋軸方向D1に沿って並ぶように一対のずれ止め部材8がスタッド2fと内周面3dの間に挿入され、これにより、桁2に対するプレキャストコンクリート床版3の橋軸方向D1へのずれを抑制することが可能である。
【0042】
次に、本実施形態に係るプレキャストコンクリート床版の架設方法の工程の例について説明する。まず、図5に示されるように、桁2の上に複数の支持受材6を設置する(支持受材を設置する工程)。そして、例えば架設機10を用いてプレキャストコンクリート床版3を持ち上げてプレキャストコンクリート床版3を搬送する(プレキャストコンクリート床版を搬送する工程)。
【0043】
図2図4に示されるように、架設機10はプレキャストコンクリート床版3を把持又は懸架すると共にプレキャストコンクリート床版3を把持又は懸架したまま旋回する。これにより、プレキャストコンクリート床版3の長手方向の向きを幅員方向D2に合わせてプレキャストコンクリート床版3を設置可能な向きに旋回することができる。
【0044】
架設機10は、プレキャストコンクリート床版3を設置位置に搬送する。その後、架設機10は、複数の支持受材6の上にプレキャストコンクリート床版3を設置する(プレキャストコンクリート床版を設置する工程)。このとき、図6及び図7に示されるように、架設機10は、複数の支持受材6の上に搬送したプレキャストコンクリート床版3を載せる(プレキャストコンクリート床版を支持受材の上に載せる工程)。そして、プレキャストコンクリート床版3に、桁2に対するプレキャストコンクリート床版3のずれを抑制するずれ止め部材8を配置する(ずれ止め部材を配置する工程)。
【0045】
例えば、複数の支持受材6の上に複数のプレキャストコンクリート床版3を順次載せていく。このとき、プレキャストコンクリート床版3を搬送する架設機10は、支持受材6の上に載せられたプレキャストコンクリート床版3の上を走行する。複数のプレキャストコンクリート床版3を複数の支持受材6の上に載せた後には、例えば、高さ調整部材7をねじ込みによって下方に突出させて桁2に対するプレキャストコンクリート床版3の高さを調整する(プレキャストコンクリート床版の高さを調整する工程)。
【0046】
例えば、支持受材6からプレキャストコンクリート床版3の下面を浮かせた状態として、桁2とプレキャストコンクリート床版3の間から支持受材6を撤去する(支持受材を撤去する工程)。なお、支持受材6を撤去せずに、残置してもよい。この場合、支持受材6は、例えば、充填材と共に埋設可能な材料によって構成されている。また、支持受材6を残置する場合、前述した高さを調整する工程を不要にできる。
【0047】
支持受材6の撤去、又は支持受材6の残置の後には、桁2とプレキャストコンクリート床版3の間に充填材を注入してプレキャストコンクリート床版3と桁2とを一体化させる(プレキャストコンクリート床版と桁とを一体化させる工程)。このとき、空間Sに充填された充填材が硬化することによって桁2及びプレキャストコンクリート床版3が一体化する。その後、一連の工程が終了する。
【0048】
次に、本実施形態に係るプレキャストコンクリート床版の架設方法から得られる作用効果について詳細に説明する。本実施形態に係るプレキャストコンクリート床版の架設方法では、桁2の上に複数の支持受材6が設置され、複数の支持受材6の上にプレキャストコンクリート床版3が設置される。
【0049】
よって、複数の支持受材6の上にプレキャストコンクリート床版3が設置された状態でプレキャストコンクリート床版3の上を架設機10が通ったときに、架設機10の荷重は複数の支持受材6に分散される。従って、プレキャストコンクリート床版3を搬送してプレキャストコンクリート床版3を設置する架設機10の荷重を複数の支持受材6に分散することができるので、プレキャストコンクリート床版3の特定の箇所に局所的に荷重が集中することを抑制できる。プレキャストコンクリート床版3に局所的な荷重が集中することを抑制できるので、プレキャストコンクリート床版3にひび割れが生じないようにすることができる。また、この架設方法では、レールの設置等を不要とできるので、工期を短縮させることができる。
【0050】
プレキャストコンクリート床版を設置する工程は、プレキャストコンクリート床版3を持ち上げてプレキャストコンクリート床版3を搬送する工程と、搬送したプレキャストコンクリート床版3を支持受材6の上に載せる工程と、を含んでおり、プレキャストコンクリート床版3を搬送する工程では、プレキャストコンクリート床版3を搬送する自走式の架設機10が、支持受材6の上に載せられたプレキャストコンクリート床版3の上を走行してもよい。この場合、自走式の架設機10がプレキャストコンクリート床版3を持ち上げてプレキャストコンクリート床版3を搬送する。このとき、架設機10は、支持受材6の上に載せられたプレキャストコンクリート床版3の上を走行する。従って、充填材を充填する前に、設置済みのプレキャストコンクリート床版3の上を架設機10が走行して複数のプレキャストコンクリート床版3の設置を順次行うことが可能となる。よって、プレキャストコンクリート床版3の設置を効率よく行って工期をより短縮させることができる。
【0051】
本実施形態に係るプレキャストコンクリート床版の架設方法は、一体化させる工程の前に、桁2とプレキャストコンクリート床版3の間から支持受材6を撤去する工程を備えてもよい。この場合、充填材の充填前に支持受材6を撤去するので、支持受材6を、木材等、調達しやすいものとすることができる。すなわち、支持受材6は一体化の前に取り除かれるので、支持受材6として特殊な材料のものを調達する必要がなく、支持受材6を簡易なものとすることができる。
【0052】
一体化させる工程では、桁2とプレキャストコンクリート床版3の間に支持受材6を残置した状態で桁2とプレキャストコンクリート床版3の間に充填材を注入してもよい。この場合、桁2をプレキャストコンクリート床版3の間に支持受材6を残置した状態で充填材を注入するので、プレキャストコンクリート床版3の設置、及び充填材の注入を効率よく行うことができる。従って、更なる工期の短縮化に寄与する。
【0053】
本実施形態に係るプレキャストコンクリート床版の架設方法は、プレキャストコンクリート床版3に、桁2に対するプレキャストコンクリート床版3のずれを抑制するずれ止め部材8を配置する工程を備えてもよい。この場合、プレキャストコンクリート床版3の上を架設機10が通ったときに桁2からプレキャストコンクリート床版3がずれることを抑制することができる。
【0054】
プレキャストコンクリート床版3は、厚さが180mm以下であるプレキャストコンクリート床版、及び比重が19kN/m以下であるプレキャストコンクリート床版のいずれかであってもよい。この場合、プレキャストコンクリート床版3が薄肉又は軽量であるため、架設機10によるプレキャストコンクリート床版3の搬送及び設置を容易に行うことができる。
【0055】
図2図4に示されるように、プレキャストコンクリート床版3を設置する工程は、プレキャストコンクリート床版3を持ち上げてプレキャストコンクリート床版3を搬送する工程を含んでもよく、プレキャストコンクリート床版3を搬送する工程では、自走式の架設機10がプレキャストコンクリート床版3を把持又は懸架すると共に、プレキャストコンクリート床版3を把持又は懸架したまま旋回してもよい。この場合、自走式の架設機10は、プレキャストコンクリート床版3を把持又は懸架すると共に、プレキャストコンクリート床版3を把持又は懸架した状態で旋回する。従って、架設機10がプレキャストコンクリート床版3を把持又は懸架した状態で旋回するので、架設機10の旋回によってプレキャストコンクリート床版3の向きを効率よく変えることができる。従って、プレキャストコンクリート床版3の設置を一層容易に行うことができるので、更なる工期の短縮化に寄与する。
【0056】
次に、変形例に係る現場Gにおけるプレキャストコンクリート床版3の架設方法について説明する。図8に示されるように、現場Gは、高速道路のランプに設けられる。現場Gの道路は、高速道路への出入口であり、例えば、傾斜している。現場Gは、道路の一車線である。現場Gでは、例えば、前述した現場Aと同様、プレキャストコンクリート床版3の更新工事が行われる。なお、変形例に係る現場Gにおける架設方法の一部は、前述した現場Aにおける架設方法の一部と重複するため、以下では、前述した内容と重複する説明を適宜省略する。
【0057】
図9に示されるように、現場Gでは、薄肉(例えば厚さが180mm以下)又は軽量(例えば比重が19kN/m以下)のプレキャストコンクリート床版3を架設機で架設済みのプレキャストコンクリート床版3の上を移動させながら設置(又は撤去)する。現場Gでは、例えば、前述と同様の架設機10が用いられる。
【0058】
現場Gのような狭隘な現場では、クレーンによるプレキャストコンクリート床版3の設置が困難となる場合がある。このような場合、プレキャストコンクリート床版3を設置する車線の幅員のスペースを用いてプレキャストコンクリート床版3の設置を行うが、一方通行でしか設置ができない場合、設置したプレキャストコンクリート床版3の上を架設機10が通過して新設のプレキャストコンクリート床版3を搬送する必要がある。一例として、現場Gにおける道路の幅員(有効幅員)は5.45mである。
【0059】
現場Gでは、門形のフレーム21と、電動チェーンブロック22と、床版把持部23とを備えた荷卸し設備20が用いられる。荷卸し設備20は、トラックTに積載されたプレキャストコンクリート床版3をトラックTの荷台T1から持ち上げて、持ち上げたプレキャストコンクリート床版3を保持する機能を有する。トラックTは、一例として、10トントラックである。
【0060】
フレーム21は、例えば、地面に載置されると共に道路の幅員方向D2に沿って並ぶ一対の支持部21bと、各支持部21bから鉛直上方に延在する複数の柱部21cと、複数の柱部21cの間において幅員方向D2に延在する複数の梁部21dと、プレキャストコンクリート床版3が仮置きされる仮置きフレーム21fとを有する。幅員方向D2に沿って並ぶ一対の柱部21cの間隔WはトラックTの幅Xよりも広く、梁部21dの高さHはトラックTの高さYよりも高い。
【0061】
更に、間隔Wは架設機10の幅よりも広く、梁部21dの高さHは架設機10の高さよりも高い。従って、荷卸し設備20では、一対の柱部21cと梁部21dとの間をトラックT及び架設機10がくぐれるようになっている。仮置きフレーム21fは、例えば、トラックT及び架設機10がくぐる領域における幅員方向D2の両端のそれぞれに設けられる。
【0062】
電動チェーンブロック22は、梁部21dから吊り下げられるようにフレーム21に支持されている。電動チェーンブロック22は、梁部21dに吊り下げられる第1フック22bと、第1フック22bの下部に位置するハウジング22cと、ハウジング22cから下方に延びる鎖22dと、鎖22dの下端に位置する第2フック部22fとを有する。電動チェーンブロック22では、ハウジング22cから下方に延びる鎖22dを介して接続された第2フック部22fの高さ位置が調整されることにより、吊り下げられたプレキャストコンクリート床版3の高さを調整可能となっている。
【0063】
床版把持部23は、第2フック部22fに吊り下げられると共にプレキャストコンクリート床版3を把持する部位である。床版把持部23は、第2フック部22fに引っ掛けられる複数(一例として4本)の紐23bを有する。複数の紐23bがプレキャストコンクリート床版3に引っ掛けられることによって床版把持部23にプレキャストコンクリート床版3が把持される。また、荷卸し設備20では、床版把持部23によって把持及び吊り下げられたプレキャストコンクリート床版3を旋回させることが可能である。
【0064】
次に、変形例に係るプレキャストコンクリート床版3の架設方法の工程について説明する。まず、図10に示されるように、プレキャストコンクリート床版3を積載したトラックTが荷卸し設備20のフレーム21の内側に進入する(トラックが荷卸し設備に進入する工程)。次に、荷卸し設備20の床版把持部23でプレキャストコンクリート床版3を把持して、電動チェーンブロック22によって床版把持部23と共にプレキャストコンクリート床版3を吊り上げる(プレキャストコンクリート床版を吊り上げる工程)。
【0065】
荷卸し設備20がプレキャストコンクリート床版3を吊り上げて、吊り上げられたプレキャストコンクリート床版3の高さがトラックTの高さよりも高い状態で、図11に示されるように、トラックTが荷卸し設備20から退出する(荷卸し設備からトラックが退出する工程)。
【0066】
その後、プレキャストコンクリート床版3を90°旋回させる(プレキャストコンクリート床版を旋回させる工程)。具体的には、プレキャストコンクリート床版3は、トラックTによって搬送された状態ではプレキャストコンクリート床版3の長手方向が道路の橋軸方向D1に沿うように配置されている。長手方向が橋軸方向D1に沿うように配置されたプレキャストコンクリート床版3を、長手方向が幅員方向D2に沿うように90°回転させる。
【0067】
図11及び図12に示されるように、架設機10が荷卸し設備20の内側をくぐる(架設機が荷卸し設備の内側をくぐる工程)。一方、荷卸し設備20は、荷卸し設備20の仮置きフレーム21fにプレキャストコンクリート床版3を仮置きする(プレキャストコンクリート床版を仮置きする工程)。
【0068】
架設機10は、仮置きされたプレキャストコンクリート床版3を把持する(架設機がプレキャストコンクリート床版を把持する工程)。そして、架設機10は、プレキャストコンクリート床版3を把持した状態で設置済みのプレキャストコンクリート床版3の上を走行する(架設機がプレキャストコンクリート床版の上を走行する工程)。
【0069】
一方、プレキャストコンクリート床版3が設置される桁2の上に、図5に示されるように、複数の支持受材6を設置する(支持受材を設置する工程)。そして、支持受材6が設置された部位まで架設機10が走行し、複数の支持受材6の上に架設機10がプレキャストコンクリート床版3を設置する(プレキャストコンクリート床版を設置する工程)。
【0070】
プレキャストコンクリート床版3の設置を終えた架設機10は、図11及び図12に示されるように、再び設置済みのプレキャストコンクリート床版3の上を走行して荷卸し設備20の位置まで退避する(架設機が退避する工程)。支持受材6の上に所定枚数のプレキャストコンクリート床版3を設置した後には、前述と同様、桁2とプレキャストコンクリート床版3の間に充填材を注入してプレキャストコンクリート床版3と桁2とを一体化させる(プレキャストコンクリート床版と桁とを一体化させる工程)。その後、架設方法の一連の工程が完了する。
【0071】
以上、変形例に係るプレキャストコンクリート床版の架設方法では、桁2の上に複数の支持受材6が設置され、複数の支持受材6の上にプレキャストコンクリート床版3が設置される。そして、桁2とプレキャストコンクリート床版3との間には充填材が注入され、注入された充填材が硬化してプレキャストコンクリート床版3と桁2とが一体化する。従って、複数の支持受材6の上にプレキャストコンクリート床版3が設置された状態でプレキャストコンクリート床版3の上を架設機10が通ったときに、架設機10の荷重は複数の支持受材6に分散される。
【0072】
よって、プレキャストコンクリート床版3を搬送してプレキャストコンクリート床版3を設置する架設機10の荷重を複数の支持受材6に分散することができるので、プレキャストコンクリート床版3の特定の箇所に局所的に荷重が集中することを抑制できる。このように、変形例に係るプレキャストコンクリート床版の架設方法では、前述した現場Aにおけるプレキャストコンクリート床版の架設方法と同様の作用効果が得られる。
【0073】
また、変形例に係るプレキャストコンクリート床版の架設方法では、プレキャストコンクリート床版3の設置場所と荷卸し設備20との間を架設機10が往復移動しながら架設機10がプレキャストコンクリート床版3の設置を行う。このようにプレキャストコンクリート床版3の上を架設機10が往復走行する場合であっても、架設機10の荷重を複数の支持受材6に分散することができるので、プレキャストコンクリート床版3の特定の箇所に局所的に荷重が集中することを抑制できる。
【0074】
更に、変形例に係るプレキャストコンクリート床版の架設方法では、一車線の道路に荷卸し設備20を設置し、荷卸し設備20の内側を架設機10がくぐってプレキャストコンクリート床版3の搬送及び設置を行う。従って、一車線上に荷卸し設備20及び架設機10を並べて施工を行うことができる。具体的には、一車線で狭い現場Gであっても、荷卸し設備20の内側を架設機10がくぐりながらプレキャストコンクリート床版3の搬送及び設置を行うことにより、プレキャストコンクリート床版3の搬送及び設置を効率よく行うことができる。
【0075】
以上、本開示に係るプレキャストコンクリート床版の架設方法の実施形態及び変形例について説明した。しかしながら、本開示に係るプレキャストコンクリート床版の架設方法は、前述の実施形態又は変形例に限定されず、特許請求の範囲に記載した要旨の範囲内において更に変更可能である。すなわち、プレキャストコンクリート床版の架設方法の工程の内容及び順序は、上記の要旨の範囲内において適宜変更可能である。
【0076】
例えば、前述の実施形態及び変形例では、ベース11、アーム12、駆動部13及び把持部材14を備える架設機10を用いてプレキャストコンクリート床版3を搬送及び設置する例について説明した。しかしながら、架設機の構成は上記の架設機10の構成に限られず、架設機としては種々の機械を用いることが可能である。
【0077】
例えば、架設機は、小型クレーンであっても、治具付きのフォークリフトであってもよい。一例として、治具付きのフォークリフトは、車体の前部に位置するマストに対して上下移動するバックレストから前方に延びるフックにワイヤを介して把持部材14が取り付けられた架設機である。この架設機であっても、把持部材14にプレキャストコンクリート床版3を把持させた状態でバックレストが把持部材14を上下移動させることにより、プレキャストコンクリート床版3を上下移動させることが可能である。このように、架設機の種類及び構成は特に限定されない。
【0078】
前述の実施形態では、高さ調整部材7を有するプレキャストコンクリート床版3について説明した。しかしながら、例えば精緻な測量によってプレキャストコンクリート床版3の高さが調整可能な場合には、高さ調整部材7を省略する(又は高さ調整部材7の数を減らす)ことも可能である。
【0079】
また、前述したように貫通孔3bを有しない(又は貫通孔3bの数が少ない)プレキャストコンクリート床版3であってもよい。高さ調整部材7を有しないプレキャストコンクリート床版3の場合、高さ調整部材7を有するプレキャストコンクリート床版3よりも強度を高くすることができる。貫通孔3bを有しないプレキャストコンクリート床版3の場合も、貫通孔3bを有するプレキャストコンクリート床版3よりも強度を高めることができる。
【0080】
前述の実施形態では、プレキャストコンクリート床版3が超高強度繊維補強コンクリート(UFC:Ultra high strength Fiber reinforce Concrete)によって構成されるUFC床版である例について説明した。しかしながら、本開示に係るプレキャストコンクリート床版の架設方法が適用可能なプレキャストコンクリート床版は、UFC床版に限られない。すなわち、本開示に係るプレキャストコンクリート床版の架設方法は、UFC床版以外の種々の床版に対して適用可能である。
【符号の説明】
【0081】
2…桁、2b…上フランジ、2c…ウェブ、2d…下フランジ、2f…スタッド、3…プレキャストコンクリート床版、3b…貫通孔、3d…内周面、4…防護柵、5…アスファルト、6…支持受材、6b…上面、7…高さ調整部材、8…ずれ止め部材、10…架設機、11…ベース、11b…車輪、12…アーム、12b…第1延在部、12c…第2延在部、13…駆動部、14…把持部材、14b…把持部、20…荷卸し設備、21…フレーム、21b…支持部、21c…柱部、21d…梁部、21f…仮置きフレーム、22…電動チェーンブロック、22b…第1フック、22c…ハウジング、22d…鎖、22f…第2フック部、23…床版把持部、23b…紐、A…現場、B…橋梁、D1…橋軸方向、D2…幅員方向、G…現場、L…軸、S…空間、T…トラック、T1…荷台、W…間隔、X…幅。
図1
図2
図3
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図6
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図10
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図12