(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139104
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】気漏閉鎖用デバイス
(51)【国際特許分類】
A61B 17/00 20060101AFI20220915BHJP
A61B 1/267 20060101ALI20220915BHJP
A61B 1/018 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
A61B17/00 400
A61B1/267
A61B1/018 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021039345
(22)【出願日】2021-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】318010328
【氏名又は名称】KMバイオロジクス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100156111
【弁理士】
【氏名又は名称】山中 伸一郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 彰太
(72)【発明者】
【氏名】芳川 豊史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和秀
(72)【発明者】
【氏名】岡地 ▲祥▼太郎
(72)【発明者】
【氏名】竹川 佳孝
【テーマコード(参考)】
4C160
4C161
【Fターム(参考)】
4C160MM08
4C160MM18
4C161AA07
4C161GG15
(57)【要約】
【課題】これまで気管支鏡では侵入することができなかった気管支の末梢部分の気漏を閉鎖する。
【解決手段】気管支鏡の鉗子孔に挿入可能なカテーテルであって薬液注入アダプタを備えたカテーテルと、超細径内視鏡または内側カテーテルとを含む、気漏閉鎖用デバイス。本発明の気漏閉鎖用デバイスは、これまで気管支鏡では侵入することができなかった気管支の末梢部分まで内視鏡を到達させて気漏部位を確実かつ安定に観察・特定することができ、気管支の末梢部分であっても気漏閉鎖治療を行うことができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気管支鏡の鉗子孔に挿入可能なカテーテルであって薬液注入アダプタを備えたカテーテル(以下、「外側カテーテル」という)と、超細径内視鏡または内側カテーテルとを含む、気漏閉鎖用デバイス。
【請求項2】
薬液注入アダプタが、外側カテーテルの管腔から分岐した別個の管腔を設けることによって2つに分岐した管腔とその解放口とを含む構造を有する、請求項1に記載の気漏閉鎖用デバイス。
【請求項3】
薬液注入アダプタの解放口に栓が取り付けられ、超細径内視鏡または内側カテーテルを挿入する側の外側カテーテルの解放口の近傍に弁が設置されている、請求項2に記載の気漏閉鎖用デバイス。
【請求項4】
気管支鏡、気管支鏡の鉗子孔、外側カテーテル、および超細径内視鏡または内側カテーテルの直径が、気管支鏡、気管支鏡の鉗子孔、外側カテーテル、および超細径内視鏡または内側カテーテルの順に大きく、気管支鏡の鉗子孔内壁内に外側カテーテルが配置され、外側カテーテルの内壁内に超細径内視鏡または内側カテーテルが配置されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の気漏閉鎖用デバイス。
【請求項5】
気管支鏡の直径が3~6mmであり、気管支鏡の鉗子孔直径が1.7~3mmであり、外側カテーテルの直径が1.67mm以上、3mm未満であり、超細径内視鏡の直径が0.5mm以上、1mm未満であり、内側カテーテルの直径が1mm未満である、請求項4に記載の気漏閉鎖用デバイス。
【請求項6】
気管支鏡の鉗子孔に挿入可能なカテーテルであって薬液注入アダプタを備えたカテーテル(以下、「外側カテーテル」という)、および外側カテーテルの内側に挿入可能な内側カテーテルを含む、気漏閉鎖用デバイス。
【請求項7】
薬液注入アダプタが、外側カテーテルの管腔から分岐した別個の管腔を設けることによって2つに分岐した管腔とその解放口とを含む構造を有する、請求項6に記載の気漏閉鎖用デバイス。
【請求項8】
薬液注入アダプタの解放口に栓が取り付けられ、内側カテーテルを挿入する側の外側カテーテルの解放口の近傍に弁が設置されている、請求項7に記載の気漏閉鎖用デバイス。
【請求項9】
気管支鏡、気管支鏡の鉗子孔、外側カテーテル、および内側カテーテルの直径が、気管支鏡、気管支鏡の鉗子孔、外側カテーテル、および内側カテーテルの順に大きく、気管支鏡の鉗子孔内壁内に外側カテーテルが配置され、外側カテーテルの内壁内に内側カテーテルが配置されている、請求項6~8のいずれか1項に記載の気漏閉鎖用デバイス。
【請求項10】
気管支鏡の直径が3~6mmであり、気管支鏡の鉗子孔直径が1.7~3mmであり、外側カテーテルの直径が1.67mm以上、3mm未満であり、内側カテーテルの直径が1mm未満である、請求項9に記載の気漏閉鎖用デバイス。
【請求項11】
外側カテーテルと内側カテーテルがダブルルーメンカテーテルの形状を構成する、請求項6~10のいずれか1項に記載の気漏閉鎖用デバイス。
【請求項12】
外側カテーテルと内側カテーテルがコアキシャルタイプのダブルルーメンカテーテルを構成する、請求項11に記載の気漏閉鎖用デバイス。
【請求項13】
外側カテーテルと内側カテーテルの先端を一致させることを特徴とするダブルルーメンカテーテルである、請求項11または12に記載の気漏閉鎖用デバイス。
【請求項14】
生体組織接着剤で気漏を閉鎖するのに用いられ、生体組織接着剤が外側カテーテルおよび内側カテーテルを通じて気漏部位に送達される、請求項6~13のいずれか1項に記載の気漏閉鎖用デバイス。
【請求項15】
生体組織接着剤がフィブリン糊製剤であり、フィブリン糊製剤がフィブリノゲン液およびトロンビン液からなる、請求項14に記載の気漏閉鎖用デバイス。
【請求項16】
フィブリン糊製剤のフィブリノゲン液およびトロンビン液のそれぞれが、別々のシリンジから外側カテーテルおよび内側カテーテルのいずれか一方を通して気漏部位に送達され、気漏部位でフィブリン糊を形成して気漏を閉鎖する、請求項15に記載の気漏閉鎖用デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体組織接着剤を用いて胸腔内の気漏を閉鎖するためのデバイスに関する。さらに詳細には、本発明は、気管支鏡の鉗子孔に挿入可能なカテーテルであって薬液注入アダプタを備えたカテーテルと、超細径内視鏡とを含む、気漏閉鎖用デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
気胸は通常陰圧に保たれている胸腔内に何らかの原因で空気が流入し、胸腔内の陰圧が保てないために肺が虚脱してしまう状態のことで、多くは肺嚢胞(ブラ)からの空気漏れ(エアリーク)が原因となる。日本国内での気胸の治療件数は、年間4万例弱であり、呼吸器外科領域では一般的な疾患である。半数以上は胸腔チューブ挿入による胸腔ドレナージによる保存的な治療が選択されるが、その入院期間は平均で11.0日であり、また、初回から2回目の再発率は30~40%、2回目から3回目の再発率は70%とも言われているため、保存的治療にも多くの課題が残る。また、手術件数は約1万4千例であり、そのほとんどは胸腔鏡を用いた手術で実施され、再発率は10%以下に抑えられるものの、外科的侵襲が必要となり、その医療コストも高い。気胸の治療の目的には、呼吸障害からの回復、気漏の閉鎖(停止)、再発の予防などがある。
【0003】
気漏の閉鎖(停止)のため、気管支鏡を用いて、シリコンの詰め物やコイル、フィブリン糊等で責任気管支を塞栓する手技も開発されたが、詰め物の脱離による再発や、塞栓領域が比較的広範囲に及ぶため、肺換気機能が損なわれるなどの課題が残っている。また、これらの気管支鏡を用いた既存治療の決定的な課題は、気漏の責任気管支の確実な同定およびその末端付近での観察・処置ができ無いことによる治療の効果の不確実性であった((非特許文献1~3)。
【0004】
外科手術に用いられる生体組織接着剤としては、1978年に開発された世界発のフィブリン糊製剤であるTisseel(登録商標:Immuno AG)、日本においては1988年に開発されたベリプラスト(登録商標)P(ヘキストジャパン株式会社)、1991年に開発されたボルヒール(登録商標:KMバイオロジクス株式会社)が知られている。フィブリン糊は4成分、すなわち、(i)フィブリノゲン凍結乾燥粉末、(ii)フィブリノゲン溶解液(アプロチニンを含む)、(iii)トロンビン凍結乾燥粉末、および(iv)トロンビン溶解液(塩化カルシウムを含む)から構成され、(i)を(ii)で溶かしたA液を調製し、(iii)を(iv)で溶かしたB液を調製する。A液とB液を組織の接着面で混合することで、組織の接着や閉鎖に用いられる。
【0005】
胸腔内の気漏閉鎖のためのフィブリン糊製剤用デバイスとして、ベリプラスト(登録商標)P(CSLベーリング株式会社)コンビセットの専用付属機器の1つであるベリP内視鏡用カテーテル(住友秋田ベーク株式会社)がある。これは、遮断された2つのルート(穴)が確保された1本チューブにA液(フィブリノゲン液)とB液(トロンビン液)を別々に注入し、先端で2液が混合されるように設計されたチューブ最大外径2.5mmのカテーテルである(非特許文献4)。
【0006】
通常、気管支鏡(電子スコープまたはファイバースコープ)、すなわち、肺や気管支を診断するための先端部外径3~6mmの細くて柔らかい管から構成される肺カメラで気漏部位を特定した後、気管支鏡にある鉗子口(直径1.7~3mm程度)に上記デバイスを挿入して、フィブリン糊製剤で閉塞が施されている。したがって、直径2.5mmのベリP内視鏡用カテーテルが挿入可能な気管支鏡の先端部外径は3~6mm前後となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実公平03-047609
【特許文献2】WO1994/07420
【特許文献3】特開2001-157716
【特許文献4】特開平7-184952
【特許文献5】実登3172382
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Chest. 2005 Dec;128(6):3955-65.
【非特許文献2】Intern Med. 2011;50(11):1169-73.
【非特許文献3】Intern Med. 2020 Aug 1; 59(15): 1835-1839.
【非特許文献4】CSLベーリング製品情報一覧ベリプラスト(登録商標)P コンビセット組織接着用「付属機器ハンドブック」WEBサイト:https://csl-info.com/products/beriplast05(2020年12月1日確認)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
フィブリン糊製剤を用いた胸腔内の気漏閉鎖治療では、気管支鏡による気漏部位の特定が必須であるが、現在用いられている気管支鏡は先端部外径直径3~6mmであるため、この直径より小さな気管支にカメラを侵入することができなかった。このため、気漏部位が気管支鏡では侵入することができない気管支の末梢部分であった場合、気漏閉鎖治療ができないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意検討を重ねた。まず、通常の気管支鏡では侵入することができない気管支末梢部分までカメラを到達させるため、次世代超細径内視鏡(1mm径)(パナソニックi-PROセンシングソリューションズ株式会社)や超細径血管内視鏡(0.49mm)(株式会社オリヴァス)を応用することを考えた。
【0011】
気管支鏡と次世代超細径内視鏡を併用し、気管支内から気胸の責任気管支の末梢までアプローチし、ピンポイントでフィブリン糊をエアリーク発生地点(ブラ等)に注入することができれば、生体に侵襲を加えることなく(手術侵襲を避けて)、より確実に、また無気肺領域を最低限にしつつ気胸を閉鎖できる。しかしながら、気管支鏡の鉗子口(直径1.7~3mm程度)に超細径内視鏡を挿入して、超細径内視鏡にてエアリーク発生地点を確認するとともに、その発生地点付近にフィブリン糊の注入用カテーテル先端を留置し、そこにフィブリン糊の2種類の薬液を別々に送り込む必要であるが、それを同時に達成できる既存技術はなかった。また、超細径内視鏡にはレンズの洗浄機能が備わっておらず、挿入の際に、気管支壁面へ付着することにより、気管支の粘液や油分で視野が悪くなり、確実かつ安定な画像を得ることができないという問題があった。
【0012】
In vitroの実験により、フィブリン糊を用いた気管支閉塞を効果的に行うためには、フィブリン糊のフィブリノゲン液およびトロンビン液の両液を同時に注入することが重要であることが基礎実験により判明した。
【0013】
フィブリン糊のフィブリノゲン液およびトロンビン液の両液を同時に気管支鏡下で注入するためには、ダブルルーメンカテーテルが必要となるが、通常のプロキシマルルーメンおよびディスタルルーメンからなるダブルルーメンカテーテルを使用した場合、片方のルーメンには次世代内視鏡を通過させる必要があるため、直径が太くなり、気管支の末梢部(細気管支)までカテーテル先端を進入させることができなくなる。
【0014】
そこで、気管支鏡では侵入することができなかった気管支の末梢部分までカメラ(内視鏡)を到達させて気漏部位を観察・特定すべく、気管支鏡の鉗子孔に挿入可能なカテーテルと超細径カメラ(内視鏡)とを組み合わせることで、気管支の末梢部分までカメラ(内視鏡)を到達させ、確実かつ安定な画像を得ることができ、さらに、カテーテルから超細径カメラ(内視鏡)を取り外した後、該カテーテル(外側カテーテル)に別のカテーテル(内側カテーテル)を挿入し、二重管構造となった2本のカテーテルのうち、外側カテーテルを薬液注入アダプタを備えた構造とし、外側カテーテルの薬液注入アダプタと内側カテーテルとにそれぞれフィブリノゲン液およびトロンビン液の一方を注入して、気漏部位で両液が混合してフィブリン糊製剤を形成させることにより、気漏部位を閉鎖することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
したがって、本発明は以下を含む。
[1]気管支鏡の鉗子孔に挿入可能なカテーテルであって薬液注入アダプタを備えたカテーテル(以下、「外側カテーテル」という)と、超細径内視鏡または内側カテーテルとを含む、気漏閉鎖用デバイス。
[2]薬液注入アダプタが、外側カテーテルの管腔から分岐した別個の管腔を設けることによって2つに分岐した管腔とその解放口とを含む構造を有する、[1]に記載の気漏閉鎖用デバイス。
[3]薬液注入アダプタの解放口に栓が取り付けられ、超細径内視鏡または内側カテーテルを挿入する側の外側カテーテルの解放口の近傍に弁が設置されている、[2]に記載の気漏閉鎖用デバイス。
[4]気管支鏡、気管支鏡の鉗子孔、外側カテーテル、および超細径内視鏡または内側カテーテルの直径が、気管支鏡、気管支鏡の鉗子孔、外側カテーテル、および超細径内視鏡または内側カテーテルの順に大きく、気管支鏡の鉗子孔内壁内に外側カテーテルが配置され、外側カテーテルの内壁内に超細径内視鏡または内側カテーテルが配置されている、[1]~[3]のいずれか1に記載の気漏閉鎖用デバイス。
[5]気管支鏡の直径が3~6mmであり、気管支鏡の鉗子孔直径が1.7~3mmであり、外側カテーテルの直径が1.67mm以上、3mm未満であり、超細径内視鏡の直径が0.5mm以上、1mm未満であり、内側カテーテルの直径が1mm未満である、[4]に記載の気漏閉鎖用デバイス。
[6]気管支鏡の鉗子孔に挿入可能なカテーテルであって薬液注入アダプタを備えたカテーテル(以下、「外側カテーテル」という)、および外側カテーテルの内側に挿入可能な内側カテーテルを含む、気漏閉鎖用デバイス。
[7]薬液注入アダプタが、外側カテーテルの管腔から分岐した別個の管腔を設けることによって2つに分岐した管腔とその解放口とを含む構造を有する、[6]に記載の気漏閉鎖用デバイス。
[8]薬液注入アダプタの解放口に栓が取り付けられ、内側カテーテルを挿入する側の外側カテーテルの解放口の近傍に弁が設置されている、[7]に記載の気漏閉鎖用デバイス。
[9]気管支鏡、気管支鏡の鉗子孔、外側カテーテル、および内側カテーテルの直径が、気管支鏡、気管支鏡の鉗子孔、外側カテーテル、および内側カテーテルの順に大きく、気管支鏡の鉗子孔内壁内に外側カテーテルが配置され、外側カテーテルの内壁内に内側カテーテルが配置されている、[6]~[8]のいずれか1項に記載の気漏閉鎖用デバイス。
[10]気管支鏡の直径が3~6mmであり、気管支鏡の鉗子孔直径が1.7~3mmであり、外側カテーテルの直径が1.67mm以上、3mm未満であり、内側カテーテルの直径が1mm未満である、[9]に記載の気漏閉鎖用デバイス。
[11]外側カテーテルと内側カテーテルがダブルルーメンカテーテルの形状を構成する、[6]~[10]のいずれか1に記載の気漏閉鎖用デバイス。
[12]外側カテーテルと内側カテーテルがコアキシャルタイプのダブルルーメンカテーテルを構成する、[11]に記載の気漏閉鎖用デバイス。
[13]外側カテーテルと内側カテーテルの先端を一致させることを特徴とするダブルルーメンカテーテルである、[11]または[12]に記載の気漏閉鎖用デバイス。
[14]生体組織接着剤で気漏を閉鎖するのに用いられ、生体組織接着剤が外側カテーテルおよび内側カテーテルを通じて気漏部位に送達される、[6]~[13]のいずれか1に記載の気漏閉鎖用デバイス。
[15]生体組織接着剤がフィブリン糊製剤であり、フィブリン糊製剤がフィブリノゲン液およびトロンビン液からなる、[14]に記載の気漏閉鎖用デバイス。
[16]フィブリン糊製剤のフィブリノゲン液およびトロンビン液のそれぞれが、別々のシリンジから外側カテーテルおよび内側カテーテルのいずれか一方を通して気漏部位に送達され、気漏部位でフィブリン糊を形成して気漏を閉鎖する、[15]に記載の気漏閉鎖用デバイス。
【発明の効果】
【0016】
これまでフィブリン糊を両液同時注入可能なカテーテルが挿入できる程度の鉗子孔を備えた気管支鏡では侵入することができなかった3mm以下の気管支の末梢部分まで超細径カメラ(内視鏡)を到達させて気漏部位を確実かつ安定に観察・特定することができ、3mm以下の気管支の末梢部分であっても気漏閉鎖治療を行うことができる。さらに、コアキシャルタイプのダブルルーメンカテーテルを用いることにより、フィブリン糊製剤のフィブリノゲン液とトロンビン液とを気漏部位に同時に送達して気漏部位で有効にフィブリン糊を形成して気漏閉鎖を確実に行うことができる。さらに、コアキシャルタイプのダブルルーメンカテーテルにおいて、外側カテーテルの両末端のうち気管支鏡の鉗子孔に挿入する側とは反対の薬液を注入する側の末端を、薬液注入アダプタを備えた構造とすることで、外側カテーテルへフィブリン糊製剤のフィブリノゲン液またはトロンビン液を容易に注入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】気管支の末梢部分の気漏部位を観察・特定する態様(A)、および気漏部位にフィブリン糊製剤を塗布する態様(B)における、本発明の気漏閉鎖用デバイスを気管支鏡の鉗子孔に挿入する側から見た模式図で示す。気管支鏡1(直径4mm前後)は鉗子孔2(入口から末端まで一貫した空洞)を備えており、鉗子孔2に外側カテーテル4(直径2mm前後)が挿入される。態様Aでは外側カテーテル4に超細径内視鏡5(直径1mm)が挿入される。態様Bでは外側カテーテル4に内側カテーテル6(直径1mm未満)が挿入される。1:気管支鏡(直径4mm前後);2:鉗子孔(入口から末端まで一貫した空洞);3:カメラ;4:カテーテル(直径2mm前後);5:超細径内視鏡(直径1mm);6:内側カテーテル(直径1mm未満)。
【
図2】マルチルーメンカテーテルの一例を示す写真である。参考URL:https://www.kango-roo.com/mv/272/(2020年12月1日確認)
【
図3】本発明の気漏閉鎖用デバイスの各構成部品と、気管、気管支、細気管支、および終末細気管支との関係を示す模式図である。
【
図4】気漏治療1週間後のミニブタ肺のComputed Tomography像を示す写真である。
【
図6】気管支鏡の鉗子孔に挿入する側とは反対の薬液を注入する側の外側カテーテルが薬液注入アダプタを備えた構造を有することを示す模式図である。A:薬液注入アダプタ側のゴム栓。B:逆流防止弁。C:超細径内視鏡または内側カテーテルを挿入する側のカテーテルの解放口。
【
図7】気管支鏡の鉗子孔に挿入する側とは反対の薬液を注入する側の外側カテーテルの薬液注入アダプタにおける管腔部分を示す模式図である。A:薬液注入アダプタ側のゴム栓;B:逆流防止弁。陰影部分は管腔となる部分である。
【
図8】気管支鏡の鉗子孔に挿入する側とは反対の薬液を注入する側の外側カテーテルにおいて、外側カテーテル中に超細径内視鏡を挿入した状態を示す模式図である。A:薬液注入アダプタ側のゴム栓;B:逆流防止弁;D:超細径内視鏡。
【
図9】
図8に記載の超細径内視鏡を挿入した状態の外側カテーテルの薬液注入アダプタにおいて、薬液注入アダプタの開放口から送水による超細径内視鏡のレンズ洗浄/送気によるリークテストを行う際の状態を示す模式図である。A:送水による超細径内視鏡のレンズ洗浄/送気;B:超細径内視鏡。陰影部分は気体・液体が通るラインである。
【
図10】本発明の気漏閉鎖用デバイスにおいてシングルルーメンカテーテルからダブルーメンカテーテルへ切り替えた際の状態を示す模式図である。外側カテーテルから超細径内視鏡を引き抜いた後、外側カテーテル中に内側カテーテルを挿入した状態を示す。上段の図は、外側カテーテル中に内側カテーテルを挿入しつつある状態、下段の図は、外側カテーテル中に内側カテーテルを挿入後の状態をそれぞれ示す。A:内側カテーテル。
【
図11】
図10の外側カテーテル中に内側カテーテルを挿入した状態の気漏閉鎖用デバイスにおいて、フィブリン糊塗布の際の状態を示す模式図である。内側カテーテルにトロンビン液、外側カテーテルの薬液注入アダプタにフィブリノゲン液をそれぞれ注入する場合の態様を示す。A:フィブリノゲン液;B:トロンビン液。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、第一の態様において、気管支鏡の鉗子孔に挿入可能なカテーテルであって薬液注入アダプタを備えたカテーテル(以下、「外側カテーテル」ともいう)と、超細径内視鏡とを含む、気漏閉鎖用デバイスを提供する。この態様の本発明のデバイスは、気漏の責任気管支の同定およびその末端付近での観察を行うために用いる。この態様では、超細径内視鏡をカテーテル内に配置してシングルルーメンで使用する。本発明の気漏閉鎖用デバイスは、気管支鏡、気管支鏡の鉗子孔、薬液注入アダプタを備えたカテーテル、および超細径内視鏡の直径が、気管支鏡、気管支鏡の鉗子孔、薬液注入アダプタを備えたカテーテル、および超細径内視鏡の順に大きく、気管支鏡の鉗子孔の内壁内にカテーテルが配置され、カテーテルの内壁内に超細径内視鏡が配置される。この態様の気漏閉鎖用デバイスは、気管支末端のエアリーク部までアプローチを行うのに用いる。その際、肺の拡張の妨げとならないよう、超細径内視鏡を挿入する側の開放口には弁(逆流防止弁)が設置され、もう一方の薬液注入アダプタの開放口には栓(ゴム栓)を取り付け、脱気を防止する。また、これらはカテーテル内への気管支内の粘液等の流入を防ぐ効果がある。弁を設置する位置は、超細径内視鏡を挿入する側の開放口の近傍であれば特に限られないが、開放口から5mm~30mm程度であってよい。さらに、この態様の気漏閉鎖用デバイスでは、外側カテーテル中に超細径内視鏡を挿入した状態で、薬液注入アダプタの開放口から送水による超細径内視鏡のレンズ洗浄/送気によるリークテストを行うことができる。送水・送気はシリンジ以外からも可能である。送水の主な目的は、超細径内視鏡の洗浄である。気管支内の粘液や油分で視野が悪くなった際、送水を行うことで超細径内視鏡のレンズの曇りを改善させることができる。送気は、エアリークポイントの特定や、フィブリン糊等の生体組織接着剤注入後のリーク試験を主な目的としている。送気はまた、フィブリン糊等の生体組織接着剤注入を行う目的部位が、粘液や血液等が多量に存在することで塞栓の妨げとなることが予測される場合、その吸引目的でも使用することができる。ただし、カテーテル内の汚れにも繋がるため、吸引目的での使用後は、十分な管腔内の洗浄が必要となる。これらの操作にも、設置された逆流防止弁が有効となる。本発明の気漏閉鎖用デバイスでは、フィブリン糊を使用する際、薬剤の通液抵抗の観点から気管支鏡の鉗子口先端の直径が1.7~3mm(当該鉗子孔を有する気管支鏡の先端部外径は3mmから6mm程度)、カテーテルの直径が1.67mm以上、3mm未満、超細径内視鏡の直径が0.5mm以上、1mm未満であるのが好ましい。
【0019】
本発明は、第二の態様において、気管支鏡の鉗子孔に挿入可能な二重管構造のカテーテルであって薬液注入アダプタを備えたカテーテルを含む、気漏閉鎖用デバイスを提供する。この態様の本発明の気漏閉鎖用デバイスは、気漏の責任気管支の同定後、生体組織接着剤で気漏部位を閉鎖するために用いる。すなわち、本発明の第二の態様の気漏閉鎖用デバイスは、第一の態様の気漏閉鎖用デバイスにおいて、超細径内視鏡をカテーテルから取り外した後に、カテーテルを通じて生体組織接着剤を気漏部位に送達するのに用いる。ここで、カテーテルは、外側カテーテルの内部に内側カテーテルを配置したコアキシャルタイプのダブルルーメンカテーテルとするのが好ましい。第一の態様の気漏閉鎖用デバイスではカテーテルはシングルルーメンであり、超細径内視鏡の外筒を兼ね、先端を目的部位に留置する目的で使用するものであるが、1つのルーメン中にフィブリン糊の両液を注入すると、カテーテルのルーメン内で凝固が進んでしまい、カテーテルが閉塞してしまう。これを避けるためにはカテーテルは2つ以上のルーメンを保有する必要があるが、一方で使用目的から細径化も同時に達成する必要がある。この両立は、超細径内視鏡を引き抜いた後、カテーテル(外側カテーテル)中にさらに直径の小さなカテーテル(内側カテーテル)を挿入してダブルルーメンカテーテルとすることで可能となる。ここで内側カテーテルの直径は1mm未満であるのが好ましい。斯かるダブルルーメンカテーテルにおいて、内側カテーテルへは薬液は特に問題なく行うことができるが、外側カテーテルへの薬液の注入は、外側カテーテルの内部と内側カテーテルの外部とが占める狭い空間への注入であるため、そのままでは薬液を有効に注入することが困難である。そこで、本発明では、外側カテーテルへの薬液の注入を容易にすべく、外側カテーテルの薬液を注入する側(気管支鏡の鉗子孔に挿入する側とは反対の側)に「薬液注入アダプタ」という構造を設けた。この「薬液注入アダプタ」は、本来のカテーテルの管腔から分岐した別個の管腔を設けることによって、2つに分岐した管腔を有する構造としたものであり、解放口と、解放口から外側カテーテルの内部に通じる管腔を有している。薬液は解放口から管腔を経て外側カテーテルの内部に注入される。このように外側カテーテルに「薬液注入アダプタ」なる構造を設けることにより、2種類の薬液をそれぞれ混じり合うことなく、外側カテーテルと内側カテーテルとに別々に注入することが容易になる。
図11では、内側カテーテルにトロンビン液、外側カテーテルの薬液注入アダプタにフィブリノゲン液をそれぞれ注入する場合の態様を示しているが、逆に、内側カテーテルにフィブリノゲン液、外側カテーテルの薬液注入アダプタにトロンビン液をそれぞれ注入することもできる。生体組織接着剤としては、フィブリノゲン液およびトロンビン液からなるフィブリン糊製剤が好ましい。フィブリン糊製剤のフィブリノゲン液およびトロンビン液のそれぞれが、ダブルルーメンの各ルーメンから別々に気漏部位に送達され、気漏部位でフィブリン糊を形成して気漏が閉鎖される。
【0020】
気管支鏡:
本発明の気漏閉鎖用デバイスは、気管支鏡の鉗子孔に挿入可能なカテーテルであって薬液注入アダプタを備えたカテーテル(外側カテーテル)、および超細径内視鏡を含む。このうち、気管支鏡(電子スコープまたはファイバースコープ)は、気管支内を観察すると共に、組織や細胞を採取して正確な診断をつけたり(気管支鏡検査)、気管支が狭くなる病気の治療(気管支鏡下治療)に用いられたりするものである。気管支鏡は直径3~6mmの細くて柔らかい管で、胸の奥深くにある肺につながる気管支の中をのぞき見る器械である。通常、気管支鏡には鉗子孔と呼ばれる一貫した穴が開いており、鉗子孔の入口(鉗子口)から様々な処置具を挿通して内視鏡の鉗子孔先端から処置具を出すことができる。処置具も様々に開発され、その種類は約500種類にもなるといわれている。気管支鏡は胃カメラと同じ構造であるが、胃カメラと比べると大変細くできている。気管支鏡検査は、気管支鏡(気管支ファイバースコープ)を用いて肺または気管支など呼吸器の病気を正確に診断するために行われるものであり、口または鼻からのどを通して気管支鏡(気管支ファイバースコープ)を気管や気管支の中に挿入して内腔を観察したり、組織や細胞、分泌物などの検体を採取するのに用いられるものである。
【0021】
気管支鏡(気管支ファイバースコープ)は胃カメラと比べると大変細いものではあるが、カテーテル等の処置具を挿入可能なチャンネルを装備するものでは先端部外径が3~6mmであり、比較的細い気管支、細気管支および終末細気管支内にまで挿入することはできない。そこで、本発明では、気管支末端付近での観察・処置は、気管支鏡(気管支ファイバースコープ)自体のカメラで行うのではなく、気管支鏡の鉗子孔内に配置したカテーテル、さらにカテーテル内に配置した超細径内視鏡により、行う。
【0022】
カテーテル:
カテーテルとは、医療用に用いられる柔らかい管のことであり、胸腔や腹腔などの体腔、消化管や尿管などの管腔部または血管などに挿入し、体液の排出、薬液や造影剤などの注入点滴に用いられるものである。カテーテル操作の際、ガイドワイヤを併用する場合があり、その際はガイドワイヤが先行し、ガイドワイヤに導かれてカテーテルが進行する。
【0023】
カテーテルには、血管造影用カテーテル(マイクロカテーテルを含む)、バルーンカテーテル、心臓カテーテル (心臓カテーテル検査、血管内治療(カテーテル治療)に用いられる)、肺動脈カテーテル(スワンガンツカテーテル)、脳血管カテーテル、血管留置カテーテル、吸引留置カテーテル (ドレイン)、内視鏡散布チューブが含まれ、いずれも本発明に用いることができる。
【0024】
本発明では、カテーテルは、気管支鏡(気管支ファイバースコープ)の鉗子孔内に配置することができ、かつ、その内壁内に超細径内視鏡を配置することができるものであれば、いかなるカテーテルも用いることができるが、ダブルルーメンカテーテルを用いるのが好ましい。カテーテルには投与経路が1つのシングルルーメンカテーテル、2つのダブルルーメンカテーテル、3つのトリプルルーメンカテーテル、4つのクワッドルーメンカテーテルがあり、ダブルルーメン以上のカテーテルのそれぞれの投与経路は独立しており、カテーテル内で薬液等が混ざることはない。本発明では、第一の態様では投与経路が1つのシングルルーメンカテーテル、第二の態様では投与経路が2つのダブルルーメンカテーテルを用いる。しかしながら、ダブルルーメンカテーテルを用いる場合、通常のプロキシマルルーメンおよびディスタルルーメンからなるダブルルーメンカテーテルでは、片方のルーメンには次世代内視鏡を通過させる必要があるため、直径が太くなり、気管支の末梢部(細気管支)までカテーテル先端を進入させることができなくなる。それゆえ、本発明の第二の態様においては、コアキシャルタイプのダブルルーメンカテーテルを用いることが特に好ましい。すなわち、直径の異なる2つのカテーテルのうち、直径の大きい方のカテーテル(例えば、直径2mmのカテーテル)の内部に直径の小さい方のカテーテル(例えば、直径1mmのカテーテル)を通すことでコアキシャルタイプのダブルルーメンカテーテルとすることができる。例えば、内径が1.0mm超のカテーテルの内部に外径が1.0mm未満のカテーテルを配置することができる。このようなコアキシャルタイプのダブルルーメンカテーテルを構成することにより、直径の大きい方のカテーテル(以下、「外側カテーテル」という)と直径の小さい方のカテーテル(以下、「内側カテーテル」という)とのそれぞれに、フィブリノゲン液またはトロンビン液を別個に通液し、両液を気漏部位に同時に注入することで気漏部位をフィブリン糊でピンポイントで閉塞することができる。カテーテルを気管支鏡(気管支ファイバースコープ)内に配置するには、例えば、気管支鏡の処置具を通すためのアクセスポートである鉗子孔にカテーテルを通せばよい。なお、下記に記載するように、気管支鏡の鉗子孔に挿入する側とは反対の薬液を注入する側の外側カテーテルは、「薬液注入アダプタ」を備えた構造を有する。
【0025】
超細径内視鏡(カメラ):
本明細書において、超細径内視鏡とは、内視鏡のうち直径が通常の内視鏡よりも極めて小さいものをいう。具体的には、一般に、直径が0.5mm以上、1mm未満であるものが含まれるが、前記外側カテーテル内に配置できる限り、この直径の範囲でなくてもよい。
【0026】
本発明の気漏閉鎖用デバイスにおいて、超細径内視鏡はカテーテル内に配置され、カテーテルは気管支鏡内に配置される。超細径内視鏡は直径が極めて小さいため(0.5mm以上、1mm未満)、通常の気管支鏡では侵入することができない気管支末梢部分までカメラを到達させることができ、気管支末梢部分で気漏部位を特定することが可能となる。超細径内視鏡としては、パナソニックi-PROセンシングソリューションズ株式会社が開発した直径1.8mmの血管内視鏡の改良版である超細径内視鏡(1mm径)や超細径血管内視鏡(0.49mm)(株式会社オリヴァス)を用いることができるが、これに限られない。
【0027】
薬液注入アダプタ:
本明細書において、薬液注入アダプタとは、カテーテルのうち、気管支内に挿入される側と反対側の末端において、本来のカテーテルの管腔から分岐した別個の管腔を設けることによって、2つに分岐した管腔を有する構造としたものをいう(
図6~11参照)。斯かる構造を有する薬液注入アダプタは、本来のカテーテルの管腔からの開口部とは別に新たに設けられた別個の管腔からの開口部を提供する。本来のカテーテルの管腔からの開口部には、本発明の第一の態様においては超細径内視鏡が挿入され、本発明の第二の態様においては内側カテーテルが挿入される。本来のカテーテルの管腔からの開口部には、肺の拡張の妨げとならないように逆流防止弁が設置され、新たに設けられた別個の管腔からの開口部には、肺の拡張の妨げとならないようにゴム栓を取り付け、脱気を防止する。これら逆流防止弁やゴム栓は、カテーテル内への気管支内の粘液等の流入を防ぐ効果がある。第一の態様の気漏閉鎖用デバイスでは、カテーテル中に超細径内視鏡を挿入した状態で、薬液注入アダプタの開放口から送水による超細径内視鏡のレンズ洗浄/送気によるリークテストを行うことができる。送水・送気はシリンジ以外からも可能である。送水の主な目的は、超細径内視鏡の洗浄である。気管支内の粘液や油分で視野が悪くなった際、送水を行うことでレンズの曇りを改善させることができる。送気は、エアリークポイントの特定や、フィブリン糊等の生体組織接着剤注入後のリーク試験を主な目的としている。送気はまた、フィブリン糊等の生体組織接着剤注入を行う目的部位が、粘液や血液等が多量に存在することで塞栓の妨げとなることが予測される場合、その吸引目的でも使用することができる。ただし、カテーテル内の汚れにも繋がるため、吸引目的での使用後は、十分な管腔内の洗浄が必要となる。これらの操作にも、設置された逆流防止弁が有効となる。
【0028】
気漏閉鎖用デバイス:
本発明の気漏閉鎖用デバイスは、気管支鏡の鉗子孔に挿入可能な薬液注入アダプタを備えたカテーテル、超細径内視鏡および内側カテーテルを含む。超細径内視鏡は、ディスポーザプル製品を用いる場合は、キット構成に含まれるが、繰り返し使用製品を用いる場合は含まなくてもよい。いくつかの実施形態では、キットの内容物は滅菌され密封されている。
【0029】
生体組織接着剤:
本発明の気漏閉鎖用デバイスは、生体組織接着剤で気管支内の気漏を閉鎖するのに用いられる。生体組織接着剤は組織の接着や閉鎖に使用される薬剤であり、シート状組織接着剤や液状組織接着剤を含むが、本発明においては液状組織接着剤、とりわけ、フィブリン糊製剤が好ましい。具体的には、ボルヒール(登録商標)組織接着用製剤を用いることができる。フィブリン糊は4成分、すなわち、(i)フィブリノゲン凍結乾燥粉末、(ii)フィブリノゲン溶解液(アプロチニンを含む)、(iii)トロンビン凍結乾燥粉末、および(iv)トロンビン溶解液(塩化カルシウムを含む)から構成され、(i)を(ii)で溶かしたA液を調製し、(iii)を(iv)で溶かしたB液を調製する。A液とB液を気管支内の気漏部位に送達、混合することで、気漏部位の接着・閉鎖を行うことができる。
【0030】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0031】
材料、機器、方法等:
フィブリン糊製剤として、ボルヒール(登録商標)組織接着用3mL製剤を用いた。パナソニックi-PROセンシングソリューションズ株式会社が開発した直径1.8mmの血管内視鏡の改良版である超細径内視鏡(1mm径)を、細径気管支鏡の処置具を通すためのアクセスポートである鉗子孔を通じて、気管支に挿入した。
【実施例0032】
超細径内視鏡、細径気管支鏡とカテーテルを組み合わせた気漏閉鎖用デバイスの構成:
図1に本発明の気漏閉鎖用デバイスの構成を示す。気管支鏡の中でも細い直径4mmの細径気管支鏡の処置具を通すためのアクセスポートである鉗子孔に直径2mmのカテーテルを通し、このカテーテル内部に直径1mmの超細径内視鏡を通した構成で、気管支に挿入し、気漏部位の確実かつ安定な観察・特定を行う。
【0033】
気漏部位で直径2mmのカテーテル先端を固定し、超細径内視鏡をカテーテルから引き抜く。直径2mmのカテーテルの内部にもう一本直径1mmのカテーテルを通すことで、ダブルルーメンカテーテルに再構成する。この際、直径2mmと直径1mmの両カテーテルの先端を一致させた。直径2mmのカテーテルにフィブリン糊製剤のA液を注入し、直径1mmのカテーテルにフィブリン糊製剤のB液を注入することで、両カテーテルの先端でA液とB液が混合し、フィブリンを形成することができる。