(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139107
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】液体散布装置
(51)【国際特許分類】
B64D 1/18 20060101AFI20220915BHJP
B64C 27/08 20060101ALI20220915BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20220915BHJP
B05B 17/00 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
B64D1/18
B64C27/08
B64C39/02
B05B17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021039350
(22)【出願日】2021-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】521104333
【氏名又は名称】合同会社コトブク
(74)【代理人】
【識別番号】100189360
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 昭典
(72)【発明者】
【氏名】中島 一寿
【テーマコード(参考)】
4D074
【Fターム(参考)】
4D074AA05
4D074BB06
4D074CC09
4D074CC32
4D074CC34
4D074CC55
4D074CC56
(57)【要約】
【課題】マルチコプターが降下できない障害物がある場合に、マルチコプターをその障害物の上方で飛行させながら、その障害物の下の空間に液体を散布できる液体散布装置を提供する。
【解決手段】
本発明の液体散布装置は、散布液を散布するための第一ノズル15と第二ノズル16と、第一ノズル15と第二ノズル16にマルチコプター1に保持された散布液を供給するための第一流路を有する管11と、第一ノズル15と第二ノズル16から散布液が噴射されたときに、ノズルが揺動するのを抑える安定化機構とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
散布液を散布するためのノズルと、
前記ノズルにマルチコプターに保持された散布液を供給するための第一流路を有する管と、
前記ノズルから散布液が噴射されたときに、前記ノズルが揺動するのを抑える安定化機構と、を有することを特徴とする液体散布装置。
【請求項2】
前記ノズルとして、散布液を正面視で前記本体から略横方向に噴射させる第一ノズルを有し、
前記第一ノズルは、内部に前記第一流路と繋がる第二流路が形成された本体に、第二流路を繋がるように取り付けられ、
前記安定化機構は、前記第一ノズルが平面視で略左右対称の位置になるように取り付けられて形成されている請求項1に記載の液体散布装置。
【請求項3】
前記ノズルとして、散布液を正面視で前記本体から略下方向に噴射させる第二ノズルを有し、
前記安定化機構は、前記第二ノズルが、平面視で略左右対称の位置になるように取り付けられて形成されている請求項1又は2に記載の液体散布装置。
【請求項4】
前記安定化機構は、所定の質量の錘が前記本体に略左右対称の位置になるように取り付けられて形成されている請求項1~3のいずれか一項に記載の液体散布装置。
【請求項5】
前記本体は、円形又は多角形の枠上に形成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の液体散布装置。
【請求項6】
前記ノズルは、回転ノズルであり、前記回転ノズルが、前記第一流路と繋がるように前記管に取り付けられ、安定化機構として、前記回転ノズルの基端部に錘が取り付けられている請求項1に記載の液体散布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチコプターにより液体散布を行う際に用いられる液体散布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、日本政府は、エネルギー政策として、太陽光、風力その他非化石エネルギー源のうち、エネルギー源として永続的に利用することができるエネルギー(以下、再生可能エネルギーという)の日本国内での年間の発電電力量に占める割合を、2030年に22~24%にする目標を掲げている。
この日本政府の目標に対し、気候変動対策に積極的に取り組む企業や自治体やNGOなどの情報発信や意見交換を強化するため設立された気候変動イニシアティブに参加している一部の企業は、高い目標を定めることにより再生可能エネルギーの導入を加速させて、気候危機の回避により積極的に貢献できるように、再生可能エネルギーの日本国内での年間の発電電力量に占める割合の目標を40~50%に引き上げることを求める共同メッセージを発表している。
しかし、2017年度の発電電力量に占める再生可能エネルギーの割合は、16.0%であり、太陽光、風力その他非化石エネルギー源の更なる活用が求められている。
【0003】
日本政府の目標を達成した場合に、再生可能エネルギーのうち、太陽光発電によるものの割合は、7.0%程度と予測されているが、2017年度での占める割合は5.2%程度である。2011年度での占める割合が0.2%であることに鑑みれば大幅にシェアを伸ばしているが、目標達成のために太陽光発電をより普及させる必要がある。
太陽光発電に用いられる太陽光発電設備は、放置しておくと、太陽光発電設備のソーラーパネルの太陽光が照射される照射面への塵やごみの付着や、ソーラーパネルの周囲から伸びた雑草による受光面への太陽光照射の妨害等の影響により、発電量が下がってしまう。そのため、発電性能を維持して同じ量の電力を発電させるためには、目視での点検や雑草の除去などの必要な措置を、定期的に行う必要がある。
この発電性能を維持するために定期的に行う必要がある措置のうち、雑草の除去は、電力の安定供給や太陽光発電設備の維持だけでなく、景観維持により太陽光発電設備の周辺の住民との調和のためにも、重要な作業である。
【0004】
しかし、太陽光発電設備を有する事業者がその発電設備の所在地と離れたところに住んでいると、雑草の除去を定期的に行うのが困難となり、太陽光発電設備の発電機能が低下して、発電量が確保出来なくなる可能性がある。
また、事業者が除草剤をソーラーパネルの周辺に直接散布すると、事業者が除草剤に曝露して健康被害が生じる可能性がある。仮に、散布作業を、事業者の代わりに他の者が行う場合には、その者に健康被害が生じる虞がある。
このような発電量の確保が難しいとなる可能性や健康被害が生じる可能性があると、太陽光発電設備の運営に参入する者が少なくなるだけでなく、太陽光発電設備の運営から撤退する者も出てくる虞がある。
【0005】
そこで、複数の回転翼によって無人で飛行可能なマルチコプターを雑草の除去に使用する試みがなされており、例えば特許文献1には、本体と、本体に取り付けられた複数本のアームと、アームに取り付けられ且つ揚力を発生させるロータと、本体の下部に装着され且つ農業に関する作業を行う作業装置と、を備え、作業装置が、本体に対して着脱可能に装着されるフレームと、フレームに対して着脱可能に装着される作業具と、を有する農業用マルチコプターが提案されている。
【0006】
特許文献1に記載の発明によれば、作業装置が、本体に対して着脱可能に装着されるフレームと、フレームに対して着脱可能に装着される作業具とを有していることから、作業の内容に応じて、作業装置を交換することができることに加えて、作業具を交換することも可能であるため、本体に対して様々な作業装置や作業具を装着することができ、農業用マルチコプターの適用可能な作業の範囲を拡げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、太陽光発電設備では、一般的には、東西方向に沿ってソーラーパネルが配列して列が形成され、その列が南北方向に並んだ状態で設置されており、その列同士は、多くの列を設けて発電量を上げるため、南北方向に隣接する他の列を構成するソーラーパネルへの太陽光の照射を邪魔しない程度の間隔だけを空けて設けられている。
この間隔は、南北方向に隣接する他の列同士の間隔の幅が十分でない場合、つまり、特許文献1の農業用マルチコプターの幅がソーラーパネルの列同士の間隔の幅よりも大きい場合が多く、その場合は、特許文献1の農業用マルチコプターで雑草の除去のため除草剤を散布しようとすると、ソーラーパネルの上方から除草剤を散布することになる。
散布剤をソーラーパネルの上方から散布すると、パネル面に除草剤を散布することになり、太陽光発電設備の発電機能の低下する虞や、太陽光発電設備の劣化を引き起こす虞がある。
また、散布剤をソーラーパネルの上方から散布すると、ソーラーパネルの周囲の地面には散布できても、その直下の地面に除草剤を散布できないので、雑草が生えるのを抑えることができず、太陽光発電設備の発電機能が低下する虞がある。
さらに、特許文献1の農業用マルチコプターをソーラーパネルが設置されている地面から高い位置で飛行させながら除草剤を散布すると、風によって除草剤が広く飛び散りすぎてしまう状態になる可能性があり、その場合に、太陽光発電設備の外にも除草剤を散布してしまう虞がある。
【0009】
そのため、風によって除草剤が広く飛び散りすぎてしまう状態になるような高さではなく、マルチコプターがソーラーパネルによりこれ以上は降下できないという高さから、ソーラーパネルの下の空間に効率よく除草剤を散布させることが望まれている。これは、ソーラーパネル以外の障害物の上方から液体を散布する場合も同様である。
【0010】
従って本発明が解決しようとする課題は、マルチコプターが降下できないソーラーパネルのような障害物がある場合に、マルチコプターをその障害物の上方で飛行させながら、その障害物の下の空間に液体を散布できる液体散布装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の液体散布装置は、散布液を散布するためのノズルと、ノズルにマルチコプターに保持された散布液を供給するための第一流路を有する管と、ノズルから散布液が噴射されたときに、ノズルが揺動するのを抑える安定化機構と、を有する。
【0012】
ノズルとして、散布液を正面視で本体から略横方向に噴射させる第一ノズルを有し、第一ノズルは、内部に第一流路と繋がる第二流路が形成された本体に、第二流路を繋がるように取り付けられ、安定化機構は、第一ノズルが平面視で略左右対称の位置になるように取り付けられて形成されていることが好ましい。
【0013】
ノズルとして、散布液を正面視で本体から略下方向に噴射させる第二ノズルを有し、安定化機構は、第二ノズルが、平面視で略左右対称の位置になるように取り付けられて形成されていることが好ましい。
【0014】
安定化機構は、所定の質量の錘が本体に略左右対称の位置になるように取り付けられて形成されていることが好ましい。
【0015】
本体は、円形又は多角形の枠上に形成されていることが好ましい。
【0016】
本発明の液体散布装置は、ノズルが回転ノズルであり、回転ノズルが、第一流路と繋がるように管に取り付けられ、安定化機構として、回転ノズルの基端部に、錘が取り付けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、マルチコプターが降下できないソーラーパネルのような障害物がある場合に、マルチコプターをその障害物の上方で飛行させながら、その障害物の下の空間に液体を散布できる液体散布装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の液体散布装置の一実施形態の使用状態を示す図。
【
図2】
図1に記載の液体散布装置の本体の使用状態を説明する(a)は平面図、(b)は正面図。
【
図3】他の実施形態の液体散布装置の本体の使用状態を説明する(a)は平面図、(b)は正面図。
【
図4】他の実施形態の液体散布装置の本体の使用状態を説明する(a)は平面図、(b)は正面図。
【
図5】他の実施形態の液体散布装置の本体の使用状態を説明する(a)は平面図、(b)は正面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔第一実施形態〕
以下、本発明の第一実施形態にかかる液体散布装置10を、図面を参照しながら説明する。
本実施形態の液体散布装置10は、マルチコプター1に吊り下げられて、太陽光発電設備90のソーラーパネル91が設置されている地面Gに散布液を散布するために用いられる。
具体的には、液体散布装置10は、マルチコプター1のタンク3に充填された散布液をソーラーパネル91の設置されている周囲の地面Gに散布するときに、太陽光発電設備90のソーラーパネル91の下の空間にも散布するためのものである。
本実施形態の場合は、散布液は液状の除草剤である。除草剤は公知のものを適宜用いることができる。
まず、マルチコプター1と太陽光発電設備90について説明し、その後に液体散布装置10について説明する。
【0020】
[マルチコプター1]
マルチコプター1は、複数の回転翼により無人で飛行可能な回転翼機であって、例えば、ドローンと呼ばれる飛行体である。
具体的には、マルチコプター1は、本体2と、本体2の下面に固定されたタンク3と、本体2から水平方向に放射状に伸びた複数のロータアーム4と、ロータアーム4の先端に固定された電動モータ5と、電動モータ5に接続されたプロペラ6と、本体2から左右側下方に伸びた複数の脚7と、を有する。
マルチコプター1は、内蔵されたバッテリや外部の電力源からの電力供給によって駆動する。
【0021】
本体2は、内部に、通信手段や、加速度センサーなどの各種センサー、GPS測位手段などの位置検出器、飛行ルート等を記憶する記憶手段等の飛行制御装置が内蔵されており、遠隔操作や自動制御により、マルチコプター1の飛行姿勢や飛行ルートを制御する。
【0022】
タンク3は、内部に太陽光発電設備に散布される液状の除草剤が収容される内部空間と、内部空間に繋がる供給口と、供給口を閉蓋するための蓋を有している。
蓋は、除草剤を液体散布装置10に供給するためのポンプに繋がるチューブを固定できるように形成され、供給口に対してネジ等により着脱可能に装着される。
ポンプの吐出口にはチューブが固定されており、このチューブは途中で分岐して、左右の脚7に夫々固定される。
【0023】
[太陽光発電設備90]
太陽光発電設備90は、複数の矩形状のソーラーパネル91と、ソーラーパネル91が固定されるソーラーパネル用架台92と、を有する。
なお、本実施形態において、ソーラーパネル用架台92は、平坦な地面Gに設置されている。
以下に、構成要素ごとに説明する。
【0024】
ソーラーパネル91は、矩形状に形成されており、
図1に示すように、一般的にセルと呼ばれている複数の単位太陽電池91aを有する。
ソーラーパネル91は、一方の面に、単位太陽電池91aが直列又は並列に電気的に接続されている状態で平面上に縦横に配置されて、受光面91bが形成されている。
ソーラーパネル91は、受光面91bを空側に向けた状態で配置される。
【0025】
ソーラーパネル用架台92は、
図1に示すように、フレーム93と、フレーム93同士を結合させる結合部材と、を有する。
フレーム93は、第一脚部94と、第一脚部94よりも短い第二脚部95と、第一脚部94と第二脚部95を繋ぎソーラーパネル91が載置される矩形状の載置部96と、を有する。
【0026】
第二脚部95は、第一脚部94よりも低緯度側に配置されている。これにより、
図1に示すように、地面Gに設置されたフレーム93の載置部96にソーラーパネル91を載置させると、ソーラーパネル91の短手方向の高緯度側の端91cが高位置P1に位置して、短手方向の低緯度側の端91dが低位置P2に位置する。つまり、ソーラーパネル91は、短手方向に高緯度側よりも低緯度側が低くなるように傾斜して固定される。
第一脚部94と第二脚部95は、その間の距離が、
図1に示すように、載置部96の短辺よりも短くなるように配置されている。これにより、載置部96にソーラーパネル91が載置されると、ソーラーパネル91が載置部96からせり出した状態になる。
【0027】
以上のように構成されるフレーム93は、
図2(a)に示すように、ソーラーパネル91の長手方向の各々の端の近傍に位置するように地面Gに設置される。
【0028】
本実施形態では、
図2(a)に示すように、太陽光発電設備90は、複数の矩形状のソーラーパネル91の短辺同士が互いに隣接した状態で、東西方向に沿って配列してソーラーパネル列Lが形成されている。
ソーラーパネル列Lは、
図1に示すように、南北方向に所定の間隔Dだけ設けられた状態で、複数設置されている。具体的には、高緯度側からソーラーパネル列L1、L2、L3が形成されている。
ソーラーパネル列L1とソーラーパネル列L2の間には、作業が通行できる通路R1が形成され、同様に、ソーラーパネル列L2とソーラーパネル列L3の間には、通路R2が形成されている。
なお、ソーラーパネル列L1、L2、L3を区別しない場合には、単にソーラーパネル列Lということがある。通路R1、R2についても同様である。
【0029】
[液体散布装置10]
次に、液体散布装置10について説明する。
液体散布装置10は、
図1及び
図2(a)に示すように、マルチコプター1のタンク3の収容空間と繋がる第一流路を有する管11と、内部に第一流路と繋がる第二流路が形成された本体12と、本体12に取り付けられた第一ノズル15及び第二ノズル16と、錘17と、を有する。
液体散布装置10は、第一ノズル15、第二ノズル16及び錘17から、除草剤が噴射されたときに、本体12が揺動するのを抑える安定化機構を形成する。
以下に、液体散布装置10を構成要素ごとに説明する。
【0030】
管11は、内部に除草剤が流れる第一流路を有し、
図1に示すように、一端が脚7に固定されたチューブに接続され、他端が本体12に接続される。
なお、菅11は、その一端がチューブを介して間接的にポンプの吐出口に接続されるのではなく、直接的にポンプの吐出口に接続されていてもよい。
【0031】
管11は、可撓性を有する素材で形成されている。これにより管11を撓ませながら、マルチコプター1を離着陸時させることができる。
管11の長さは、マルチコプター1を高位置P1より上で飛行させたときに、本体12を低位置P2よりも下に位置させることができる程度であれば足りる。
本実施形態では、
図2(a)に示すように、2つの管11が用いられている。
【0032】
本体12は、
図2(a)に示すように、平面視で略十字状に形成されている。
本体12は、第一ノズル15が端に設置される第一ノズル設置部13と、第二ノズル16が設置される第二ノズル設置部14と、管継手18と、を有する。
【0033】
第一ノズル設置部13は、
図2(a)に示すように、第一直線部13aと、第二直線部13bと、を有する。
第一直線部13aと第二直線部13bは、その一端が、一般的に「クロス」と称されている4方向分岐の十字状の管継手18aの開口部に、略同一直線状に位置するように繋がっている。
第一直線部13aと第二直線部13bの管継手18aと繋がっていない他端は、一般的に「チーズ」と称される3方向分岐のT形の管継手18bの、他の2つと直交している開口部と繋がっている。
【0034】
第一ノズル設置部13は、
図2(a)に示すように、使用時に、その軸が進行方向Pに沿うように位置するように、第一直線部13aと第二直線部13bの中程とマルチコプター1とが紐19で繋げられている。
第一ノズル設置部13は、直線状の形状を維持できる程度の剛性を有する熱硬化性樹脂製である。後述する第二ノズル設置部14も同様である。
【0035】
第二ノズル設置部14は、
図2(a)に示すように、第一直線部14aと、第二直線部14bと、第三直線部14cと、第四直線部14dと、を有する。
第一直線部14aと第二直線部14bは、管継手18bにより、同一直線状で繋がっている。この管継手18bの残りの開口部は、管11と繋がっている。第三直線部14cと第四直線部14dも、同様である。
【0036】
第二直線部14bと第三直線部14cの管継手18bと繋がっていない側の端は、管継手18aの開口部に、第一ノズル設置部13と直交して略同一直線状に位置するように繋がっている。具体的には、第二直線部14bと第三直線部14cは、管継手18aの残りの開口部に繋がることで、同一直線状に繋がっている。これにより、管11から第二ノズル設置部14に流入した除草剤は、第一ノズル設置部13にも流入する。
【0037】
第一直線部14aと第四直線部14dの管継手18bと繋がっていない側の端は、一般に「エルボ」と称されるL形の管継手18cの開口部と繋がっている。
【0038】
以上のように構成される本体12は、使用される太陽光発電設備の間隔Dよりも小さくなるように調整される。
具体的には、第二ノズル設置部14を構成する直線部14a~14dの何れか一つ又は複数を、長さの異なる他の直線部と交換することにより、調整できる。
【0039】
第一ノズル15は、除草剤を正面視で重力が働く方向と直交する水平方向、又は略水平方向であって、平面視で南北方向に噴射させるためのものである。
第一ノズル15は、円形状に噴射する充円錐型ノズルである。例えば、株式会社いけうち社製の充円錐型ノズル(商品名:充円錐ノズル JJXP、型番:1/8M JJXP 005 S303W)を好適に用いることができる。
第一ノズル15が充円錐型ノズルであることにより、
図2(b)に示すように、噴霧距離を稼ぐことができ、ソーラーパネル91の下の空間に向けて除草剤を確りと噴射することができ、除草剤を散布される第一散布領域Xを形成することができる。第一散布領域Xは、マルチコプター1が進行方向Pに沿って移動するごとに逐次形成される。
【0040】
第一ノズル15は、
図2(a)に示すように、除草剤が噴射されたときに除草剤が噴射される方向と反対方向に生じる反力を考慮して、平面視で左右対称に取り付けられている。第二ノズル16も同様である。
このように第一ノズル15と第二ノズル16を平面視で左右対称に位置させることで安定化機構が形成される。
【0041】
第二ノズル16は、
図2(a)及び(b)に示すように、除草剤を本体21が通っている通路Rに向けて噴射するためのものである。第二ノズル16は、第一散布領域Xが形成されない通路Rに向くように噴射口が設置されている。
第二ノズル16は、扇状に噴射する扇型ノズルである。例えば、株式会社いけうち社製の扇型ノズル(商品名:山形扇形ノズル VVP、型番:1/8M VVP 11503 S303W)を好適に用いることができる。
第二ノズル16が扇型ノズルであることにより、少ない数で第一散布領域Xが形成されない通路Rに向けて確りと噴射でき、第二散布領域Yを形成させることができる。第二散布領域Yは、マルチコプター1が進行方向Pに沿って移動するごとに逐次形成される。
【0042】
錘17は、第一ノズル15と第二ノズル16から散布液が噴射されたときに、本体12が揺動するのを抑えるためのものである。
錘17は、
図2(a)に示すように、平面視で進行方向Pに沿って、本体の重心を通る線を基準に左右対称又は略左右対称の位置に取り付けられている。このように取り付けられることで、安定化機構が形成される。なお、安定化機構が形成することができるのであれば、錘17を上述した左右対称又は略左右対称の位置以外にも取り付けることができる。
【0043】
錘17の質量は、その目的を果たすことができるのであれば、除草剤と錘17の合計の質量が、マルチコプター1が離陸できる最大の質量を超えない範囲で、適宜設定することができる。
【0044】
以上のように構成される液体散布装置10は、マルチコプター1のタンク3内の除草剤が、ポンプにより管11を介して本体12に送られ、本体12に取り付けられた第一ノズル15と第二ノズル16から噴射される。
そして、第一ノズル15と第二ノズル16から除草剤を噴射させた状態で、マルチコプター1が通路R1の上空を東西方向の東側の端から西側の端に飛行すると、マルチコプター1の飛行に伴い、通路R1と、ソーラーパネル列L1とソーラーパネル列L2を構成するソーラーパネル91の下の空間に向けて、除草剤が噴射される。
通路R1の東西方向の西側の端に到達したマルチコプター1は、通路R2の西側の端に移動する。そして、第一ノズル15と第二ノズル16から除草剤を噴射させた状態で、東側の端に向けて飛行する。その際には、マルチコプター1の飛行に伴い、通路R2と、ソーラーパネル列L2とソーラーパネル列L3を構成するソーラーパネル91の下の空間に向けて、除草剤が噴射される。
なお、マルチコプター1が通路R1の端から通路R2の端に移動する間は、除草剤が噴射される状態を維持しなくてもよい。
【0045】
次に、液体散布装置10により奏する効果について説明する。
液体散布装置10は、マルチコプター1のタンク3の収容空間と繋がる第一流路を有する管11と、内部に第一流路と繋がる第二流路が形成された本体12と、本体12に取り付けられた第一ノズル15と、を有する。これにより、ソーラーパネル91が障害となって、ソーラーパネル91の上方からは、除草剤を噴射できないソーラーパネル91の下側の空間に噴射させることができる。
また、液体散布装置10は、第二ノズル16を有する。これにより、ソーラーパネル91の下側の空間とともに、通路Rに向けても除草剤を噴射できる。
さらに、液体散布装置10は、第一ノズル15、第二ノズル16及び錘17から、除草剤が噴射されたときに、本体12が揺動するのを抑える安定化機構が形成されている。これにより、本体21が太陽光発電設備90に引っ掛かるのを極力抑えることができる。
【0046】
〔第二実施形態〕
次に、第二実施形態について説明する。
第一実施形態と同様の構成要素には、第一実施形態と同じ符号を付し、説明を省略する。
本実施形態の液体散布装置10Aは、
図3に示すように、第一実施形態の液体散布装置10の本体12が平面視で略十字状であるのに対し、本体12Aが平面視で略等脚台形の枠状に形成されている。
また、管11が、第一実施形態では2つ設けられていたのに対し、本実施形態では、
図3(a)及び(b)に示すように、4つ設けられている。具体的には、第一実施形態と同様にマルチコプター1の脚7に固定された2本のチューブに接続される官11が途中で分岐していることで4つ設けられている。なお、ポンプの吐出口に固定されたチューブが4つに分岐して、それぞれのチューブに対応するように4つの管11が設けられていてもよい。
【0047】
本体12Aは、
図3(a)に示すように、環状部21と、環状部21を略等脚台形にするための支持部22と、を有する。
【0048】
環状部21は、第一実施形態の液体散布装置10の本体12の第一ノズル設置部13と第二ノズル設置部14が、直線状の形状を維持できる程度の剛性を有する熱硬化性樹脂で形成されているのに対し、管11と同様に、容易に撓むことができる程度の可撓性を有する素材で形成されている。
【0049】
支持部22は、側面時で略L字状、又は略コの字状の棒状部材により、略等脚台形の枠状に形成されている。
具体的には、支持部22は、
図3(a)に示すように、上辺部23と、上辺部23と対向する下辺部24と、上辺部と下辺部を繋ぐ一対の脚部25と、を有する。
上辺部23、下辺部24、及び脚部25は、直線状の形状を維持できる程度の剛性を有する熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などの合成樹脂製でもよく、鉄やアルミニウムなどの金属製でもよい。金属製の場合には、錘17を設ける必要がない場合もある。
なお、錘17を設ける場合には、環状部21ではなく、支持部22に取り付けることができる。
【0050】
本体12Aは、
図3(a)に示すように、進行方向Pの前側に上辺部に位置し、上辺部よりも進行方向Pの後側に下辺部が位置する状態で使用される。この状態で使用すると、上辺部と下辺部を繋ぐ一対の対脚部が、平面視で内側から外側に傾斜した状で使用されることになるので、仮に脚部が第一脚部94や第二脚部95に接触したとしても、引っ掛かるのを防ぐことができる。
【0051】
〔第三実施形態〕
次に、第三実施形態について説明する。
第一実施形態と同様の構成要素には、第一実施形態と同じ符号を付し、説明を省略する。
本実施形態の液体散布装置10Bは、第一実施形態の液体散布装置10の本体12が平面視で略十字状であるのに対し、
図4に示すように、本体12Bが略円形の枠状に形成されている。
また、管11が、第一実施形態では2つ設けられていたのに対し、本実施形態では、1つ設けられている。
【0052】
本体12Bには、端部が形成されていないので、端部が第一脚部94や第二脚部95に接触したとしても、端部が引っ掛かるという事態が発生するのを防ぐことができる。
【0053】
〔第四実施形態〕
次に、第四実施形態について説明する。
第一実施形態と同様の構成要素には、第一実施形態と同じ符号を付し、説明を省略する。
本実施形態の液体散布装置10Cは、第一実施形態では第一ノズル15と第二ノズル16が用いられるのに対し、
図5(a)に示すように、管11と繋がる本体部19aと、本体部19aの先端側に周方向に回転自在に支持された回転ヘッド部19bと、を有する第三ノズル19が用いられている。
また、第一実施形態の液体散布装置10では、第一ノズル15と第二ノズル16が本体12に取り付けられているのに対し、本実施形態では、第三ノズル19が管11に取り付けられている。
【0054】
回転ヘッド部19bは、本体部19aから供給される除草剤が噴射口から噴出することにより、自転する。
噴出口は、
図5(a)及び(b)に示すように、除草剤が散布される第三散布領域Zが形成されるように、形成されている。
第三ノズル19は、例えば、株式会社いけうち社製の回転ノズル(商品名:回転洗浄ノズル、型番:1/8F ES 01N S316L)を好適に用いることができる。
なお、第三ノズル19は、回転ヘッド部19bがモータにより回転駆動するものであってもよい。
【0055】
第三散布領域Zは、回転ヘッド部19bの回転により、
図5(b)に示すように、円形状に形成される。
第三散布領域Zの直径は、2つの第一散布領域Xと一つの第二散布領域Yの合計に略等しい。つまり、第三ノズル19を用いることで、第一ノズル15と第二ノズル16という種類の異なるノズルを用いることなく、ソーラーパネル91の下の空間と、通路Rに向けて、除草剤を確りと噴射することができる。
【0056】
第三ノズル19は、1つでも足りるが、マルチコプター1が備えるポンプを複数備える場合には、そのポンプと同じ数でもよい。また、ポンプの吐出口に固定されているチューブが途中で分岐している場合は、その分岐している数と同じ数でもよい。
【0057】
液体散布装置10Cは、安定化機構として、錘17aを有している。
錘17aは、板状であり表裏を貫通する孔が形成されている。つまり、錘17aは、環状に形成されている。
錘17aは、その孔に管11が通されると、液体散布装置10Cを使用するためにマルチコプター1を飛行させたときに、重力が働く方向に移動して、第三ノズル19の基端部の近傍に位置する。これにより、第三ノズル19から散布液が噴射したときに、第三ノズル19が揺動するのを抑えることができる。
【0058】
錘17aの質量は、その目的を果たすことができるのであれば、除草剤と錘17aの合計の質量が、マルチコプター1が離陸できる最大の質量を超えない範囲で、適宜設定することができる。
【0059】
錘17aは、上述した目的を果たす質量を有するものであれば、どのような素材で形成されていてもよいが、本体部19aが永久磁石の吸着する金属製である場合には、ネオジウム磁石などの永久磁石を好適に用いることができる。
【0060】
なお、本実施形態では、錘17aが板状である例を挙げて説明したが、錘17aの形状はこれに限られない。錘17aは、略球状、略半球状などで形成されていてもよい。
また、本実施形態では、錘17aは孔が設けられ環状に形成されているが、平面視で略C字状の形状に形成されていてもよい。
さらに、管11は、直線状の形状を維持できる程度の剛性を有する素材により形成されていてもよい。これにより、第三ノズル19から散布液が噴射したときに、第三ノズル19が揺動するのを抑えることができる。
【0061】
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
例えば、上述した第一実施例~第三実施例では、第一ノズルとして充円錐型ノズルを用い、第二ノズルとして扇型ノズルを用いているが、本発明はこれに限定されない。第一ノズルとして扇型ノズルを用い、第二ノズルとして充円錐型ノズルを用いてもよい。また、環状に噴霧する空円錐型ノズル等、異なる種類のノズルを適宜用いることもできる。
【0062】
また、上述した第一実施例~第三実施例では、第一ノズルと第二ノズルが平面視で進行方向Pに沿って、本体の重心を通る線を基準に左右対称又は略左右対称に設けられていたが、本発明はこれに限定されない。散布液を噴射する際の反力により本体が揺動しないのであれば、平面視で左右対称又は略左右対称に設けられていなくてもよい。
【0063】
さらに、上述した第一実施例~第三実施例では、直接、第一ノズルと第二ノズルが管継手に接続されているが、本発明はこれに限定されない。
第一ノズルと第二ノズルがボールジョイントを介して管継手に接続されていてもよい。これにより、液体散布装置を使用する場所に応じて、第一ノズルと第二ノズルの角度を調節することができる。
【0064】
上述した第一実施例~第三実施例では、本体12~12Bにノズルが取り付けられていたが、本発明はこれに限定されない。本体にノズルが取り付けられていなくてもよい。その場合は、本体に噴出孔を形成させることができる。また、本体が端部を有する場合には、端部に噴出口を形成させ第二流路を端部に向けて狭くなるように形成させたりすることができる。さらに、散布液が斜め上の方向に噴射されるように端部を上に曲げてもよい。
【0065】
上述した第一実施例と第三実施例では、本体は熱硬化性樹脂製の管で形成されていたが、本発明はこれに限定されない。
本体は、熱硬化性樹脂製のものの他に、熱可塑性樹脂製のもの、又は鉄、アルミニウムなどの金属製のものを用いることができ、特にステンレス処理された金属を用いるのが好ましい。これにより、錘を付けなくても安定させることができる。
【0066】
また、本発明の液体散布装置は、太陽光発電設備に引っ掛かった本体がマルチコプター1により引っ張られたときに、本体と管が切り離すことができる接続部材を介して、本体と管が繋がっていてもよい。
【0067】
さらに、散布液を噴射した時の本体の揺動を抑えることができるのであれば、錘を設けなくてもよい。
【0068】
上述した第一実施例から第四実施例では、液体散布装置を真南に向けられたソーラーパネル91が東西方向に沿って配列してソーラーパネル列Lを形成し、ソーラーパネル列Lは、南北方向に所定の間隔Dだけ設けられた状態で複数設置されて通路Rが形成されている太陽光発電設備に使用する例を用いて説明したが、本発明はこれに限定されない。ソーラーパネル91が南東など他の方位を向いていてもよく、通路Rが東西方向に沿って形成されるのでなく、南北方向や他の方向に沿って形成されるようにソーラーパネル列Lが設置されていても、好適に用いることができる。
【0069】
さらに、第一実施例から第四実施例では、液体散布装置を太陽光発電設備に除草作業で使用する例を用いて説明したが、本発明はこれに限定されない。マルチコプターが降下できない障害物がある場合に、マルチコプターをその障害物の上方で飛行させながら、その障害物の下の空間に散布液を散布することができる。
マルチコプターが降下できない障害物がある場合としては、例えば、果樹園や、駐輪場を挙げることができる。
果樹園の場合には、果樹の葉が障害物に該当し、散布液は、除草剤の他に、肥料、水とすることもできる。
駐輪場の場合は、屋根が障害物に該当し、散布液は、殺菌剤にすることができる。
【0070】
また、第一実施例~第三実施例では、本体は第一ノズルと第二ノズルを有しているが、本発明はこれに限定されない。使用する場所や、散布液を散布する目的によっては、第一ノズルと第二ノズルのどちらか一方のみで足りる場合があるし、例えば、果樹園で葉の裏への農薬散布が求められる場合のように、水平方向よりも上向きに散布剤の噴射が求められる場合には、本体に上向きに取り付けられる第四ノズルなど、他のノズルを更に有することがある。
さらに、本体が地面の近くに位置させた状態で使用する場合には、錘として車輪が取り付けられていてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 マルチコプター
10 液体散布装置
90 太陽光発電設備
L ソーラーパネル列
R 通路
G 地面
X 第一散布領域
Y 第二散布領域
Z 第三散布領域