(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139136
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20220915BHJP
【FI】
H02M3/28 H
H02M3/28 W
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021039387
(22)【出願日】2021-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】宮嵜 洸一
(72)【発明者】
【氏名】國玉 博史
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730AS08
5H730BB26
5H730BB82
5H730BB85
5H730DD04
5H730FG01
5H730FG15
5H730VV03
(57)【要約】
【課題】位相シフト制御を行う電力変換装置において、D級増幅器を構成する半導体デバイスのゲート誤点弧を抑制し、ゲート位相差θが小さい場合であっても位相シフト制御を可能とする。
【解決手段】本発明の電力変換装置は、複数のD級増幅器が並列配置され、各D級増幅器の進みレグと遅れレグのスイッチング素子のON/OFF動作をゲート位相差θだけ位相をずらす位相シフト制御によりされる。この位相シフト制御において、上側D級増幅器の出力端と下側D級増幅器の出力端との間の電圧差に基づいてD級増幅器に補助電流を供給する。補助電流はスイッチング素子のドレイン-ソース間を流れる電流を補助し、これによってスイッチング素子がオフからオンの切り替わり時に変位電圧dv/dtの発生、及びこの変位電圧により生じる変調波に変位電流di/dtを抑制し、レグ内の他方のオフ状態のスイッチング素子が誤点弧することを防ぐ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側D級増幅器、及び下側D級増幅器と、
前記上側D級増幅器及び前記下側D級増幅器が備えるスイッチング素子を駆動するゲート信号のゲート位相差を制御する位相シフト制御を行う制御回路と、
前記上側D級増幅器及び前記下側D級増幅器に補助電流を供給する電流補助回路と、
を備え、
前記上側D級増幅器の入力端及び前記下側D級増幅器の入力端は、直流電源に並列接続され、
前記上側D級増幅器の出力端及び前記下側D級増幅器の出力端は、それぞれ出力トランスを介して直列接続され、
前記電流補助回路は、前記上側D級増幅器の出力端と前記下側D級増幅器の出力端との間に接続され、両D級増幅器の出力端間の電圧差に基づく電流を補助電流として前記上側D級増幅器及び前記下側D級増幅器に供給する、
電力変換装置。
【請求項2】
前記電流補助回路は、前記補助電流の電力を回生電力として回生する回生回路であり、
前記回生回路は、前記上側D級増幅器と前記下側D級増幅器との間において1次側が接続される回生トランスと、前記回生トランスの2次側に接続され、前記2次側の交流電圧を整流して回生電圧を生成する回生整流回路と、を備える、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記回生回路の回生整流回路は、前記回生トランスの出力端に接続されるダイオードブリッジ回路と、直流電源側に接続されるLC平滑回路と、を備える、
請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記電流補助回路は、前記補助電流の電力を吸収する抵抗回路であり、
前記抵抗回路は、前記上側D級増幅器と前記下側D級増幅器との間において1次側が接続される分配トランスと、前記分配トランスの2次側に接続される抵抗素子と、を備える、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記上側D級増幅器及び前記下側D級増幅器は、高電圧側のスイッチング素子及び低電圧側のスイッチング素子が直列接続された1つのレグと、2つのコンデンサを直列接続して構成されるコンデンサ分圧器とによりハーフブリッジが構成されたブリッジ回路と、を備える、
請求項1から4の何れか1つに記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記上側D級増幅器及び前記下側D級増幅器は、高電圧側のスイッチング素子及び低電圧側のスイッチング素子が直列接続された2つのレグ(20a、20b)によりフルブリッジが構成されたブリッジ回路を備える、
請求項1から4の何れか1つに記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記上側D級増幅器及び前記下側D級増幅器は、高電圧側のスイッチング素子及び低電圧側のスイッチング素子が直列接続された1つのレグと、2つのコンデンサを直列接続して構成されるコンデンサ分圧器とによりハーフブリッジが構成されたブリッジ回路と、を備え、
前記上側D級増幅器が備えるブリッジ回路のレグ及び前記下側D級増幅器が備えるブリッジ回路のレグの何れか一方は進みレグ、他方は遅れレグであり、
前記回生回路は、回生トランスと回生整流回路の回路構成を1つ備え、
前記上側D級増幅器及び前記下側D級増幅器との接続において、
前記回生トランスの一端は、前記上側D級増幅器のハーフブリッジのレグの中点に接続され、
前記回生トランスの他端は、前記下側D級増幅器のハーフブリッジのレグの中点に接続される、
請求項5に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記上側D級増幅器及び前記下側D級増幅器は、高電圧側のスイッチング素子及び低電圧側のスイッチング素子が直列接続された1つのレグと、2つのコンデンサを直列接続して構成されるコンデンサ分圧器とによりハーフブリッジが構成されたブリッジ回路と、を備え、
前記上側D級増幅器が備えるブリッジ回路のレグ及び前記下側D級増幅器が備えるブリッジ回路のレグの何れか一方は進みレグ、他方は遅れレグであり、
前記回生回路は、回生トランスと回生整流回路の回路構成を2つ備え、
前記上側D級増幅器及び前記下側D級増幅器との接続において、
一方の回生トランスは、一端が前記上側D級増幅器のコンデンサ分圧器の中点に接続され、他端が前記下側D級増幅器のコンデンサ分圧器の中点又はハーフブリッジのレグの中点に接続され、
他方の回生トランスは、一端が前記上側D級増幅器のハーフブリッジのレグの中点に接続され、他端は前記下側D級増幅器のハーフブリッジのレグの中点又はコンデンサ分圧器の中点接続される、
請求項5に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記上側D級増幅器及び前記下側D級増幅器は、高電圧側に接続された上アームのスイッチング素子及び低電圧側に接続された下アームのスイッチング素子が直列接続された進みレグ及び遅れレグの2つのレグによりフルブリッジが構成されたブリッジ回路を備え、
前記回生回路は、回生トランスと回生整流回路の回路構成を2つ備え、
前記上側D級増幅器と前記下側D級増幅器の接続において、
一方の回生トランスの一端は前記上側D級増幅器のフルブリッジ回路の進みレグの中点に接続され、他端は前記下側D級増幅器のフルブリッジ回路の遅れレグの中点に接続され、
他方の回生トランスの一端は前記上側D級増幅器のフルブリッジの遅れレグの中点に接続され、他端は前記下側D級増幅器のフルブリッジの進みレグの中点に接続される、
請求項6に記載の電力変換装置。
【請求項10】
偶数台のD級増幅器により、1つの上側D級増幅器と1つの下側D級増幅器から成る一対のD級増幅器のモジュールの複数組みと、
前記D級増幅器のモジュールの個数と同数の複数台の電流補助回路を備え、
前記一対のD級増幅器の各モジュールは、前記上側D級増幅器と前記下側D級増幅器との間にそれぞれ1つの前記電流補助回路が接続され、
一対のD級増幅器のモジュール及び1つの電流補助回路からなる回路構成を複数組み備え、
前記複数組みの回路構成の各出力端は直列接続又は並列接続される、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項11】
偶数台のD級増幅器により、1つの上側D級増幅器と1つの下側D級増幅器から成る一対のD級増幅器のモジュールの複数組みと、
1つの電流補助回路を備え、
前記一対のD級増幅器の各モジュールは、各上側D級増幅器と下側D級増幅器との間に前記1つの前記電流補助回路が接続され、
一対のD級増幅器のモジュールの複数組みの各出力端は直列接続又は並列接続される、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項12】
前記直列接続又は並列接続された電力変換装置を複数セット備え、
当該複数セットの電力変換装置は並列接続される、
請求項10又は請求項11に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数台の絶縁型変換器を位相シフト制御により出力電圧を制御する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数台の絶縁型変換器を用いた電力変換装置として、D級増幅器を備えたサブモジュールを絶縁型変換器とし、直流電源側と出力側との間に複数台のサブモジュールが並列配置された構成が知られている。各サブモジュールの1次側は直流電源側に対して並列に配置され、出力側において直列に接続される。
【0003】
この電力変換装置は、1次側において複数のサブモジュールを並列接続することにより大電流の電力を扱うことができ、2次側において複数のサブモジュールを直列接続することにより高電圧を扱うことができ、これにより低電圧の直流電力を高電圧の直流電力に変換する。(特許文献1参照)
【0004】
図36の電力変換装置100は、ハーフブリッジ回路からなる回路構成例を示している。電力変換装置100は上側D級増幅器101a及び下側D級増幅器101bの2つのD級増幅器を備える。上側D級増幅器101aは、ハイサイドデバイスのスイッチング素子Q1aとローサイドデバイスのスイッチング素子Q2aの2つスイッチング素子が直列接続されてなるレグ102aと、コンデンサC1aとコンデンサC2aの2つコンデンサの直列接続からなる中点キャパシタ103aとによりハーフブリッジを構成する。下側D級増幅器101bについても、同様に、ハイサイドデバイスのスイッチング素子Q1bとローサイドデバイスのスイッチング素子Q2bの2つのスイッチング素子が直列接続されてなるレグ102bと、コンデンサC1bとコンデンサC2bの2つのコンデンサの直列接続からなる中点キャパシタ103bとによりハーフブリッジを構成する。
【0005】
上側D級増幅器101aと下側D級増幅器101bの1次側の直流端子は直流電源に並列接続され、2次側の直流端子は直列接続される。上側D級増幅器101aの2次側直流端子は漏れインダクタンスを介して出力トランス104aに接続され、下側D級増幅器101bの2次側直流端子は漏れインダクタンスを介して出力トランス104bに接続される。出力トランス104aと出力トランス104bは直列接続されて一端を出力端とし他端を接地端としている。これにより上側D級増幅器101aのレグ102aと下側D級増幅器101bのレグ102bは、フルブリッジ回路を構成する。
【0006】
D級増幅器を用いた電力変換装置において、電力値を制御する制御方式として位相シフト制御が知られている。位相シフト制御による電力変換装置は、2つのスイッチング素子が直列接続されたレグを2つ用いてフルブリッジ回路を構成している。位相シフト方式による電圧制御では、スイッチング素子を駆動するゲート信号において、これらの2つのレグ間にゲート位相差θを設け、このゲート位相差θを変化させて位相シフトを行うことにより出力電圧を制御する。
【0007】
位相シフト制御では、各レグにおいて一方のスイッチング素子のターンオフと他方のスイッチング素子のターンオンとの間に短い遅延時間が設けられ、この遅延時間の間にソフトスイッチングが行われる。変圧器の漏れインダクタンスに蓄積されていたエネルギーは遅延時間の間に放出され、ターンオンする側のスイッチング素子の寄生ダイオードを介して電流が流れる。この電流によりスイッチング素子に係る電圧はほぼ0Vとなるため、この遅延時間の間にスイッチング素子をターンオンすることによりZVS(零電圧スイッチング)のソフトスイッチングが実現される。
【0008】
電力変換装置100において、例えば上側D級増幅器101aのレグ102aを進みレグとし、下側D級増幅器101bのレグ102bを遅れレグとして、2つのレグの間で位相シフト制御が行われる。位相シフト制御では、軽負荷時には小さなゲート位相差θに制御される。
【0009】
ブリッジ構成のD級増幅器の位相シフト制御において、遅れレグのソフトスイッチングは、変圧器の漏れインダクタンスとスイッチング素子の寄生容量の働きにより実現される。このソフトスイッチングの実現には、変圧器の漏れインダクタンスに蓄積されるエネルギーがスイッチング素子の寄生容量の充放電を完了させるに十分な大きさであることが必要である。漏れインダクタンスに蓄積されるエネルギーは負荷電流に比例する。軽負荷時にはゲート位相差θが小さく負荷電流は小さくなるため、漏れインダクタンスに蓄積されるエネルギーは小さい。そのため、ゲート位相差θが小さい場合にはシフト蓄積エネルギーによる電流はスイッチング素子の寄生容量の充放電を完了させるには不十分であり、ZVSによるソフトスイッチングを実現させることが困難となる。
【0010】
軽負荷時において遅れレグのソフトスイッチングを実現する方法として、変圧器の結合を悪くして漏れインダクタンスを大きくする方法、励磁インダクタンスを設ける方法等が知られている。しかしながら、高周波の漏れ磁束は巻き線の損失の増加を招くため効率低下の要因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ブリッジ構成のD級増幅器の位相シフト制御において、ゲート位相差θが小さい軽負荷時では、漏れインダクタンスの蓄積エネルギーが小さいことによって遅れレグのソフトスイッチングの実現に支障が生じるという課題が知られている。
【0013】
ブリッジ構成のD級増幅器の位相シフト制御には、上記したソフトスイッチングに関する課題の他、ゲート位相差θが小さい場合にスイッチング素子の半導体デバイスが誤点弧するという課題がある。
【0014】
図37は、ゲート誤点弧を説明するための図である。
図37(a)、
図37(b)はハイサイドの半導体デバイス(スイッチング素子)がオフからオンに切り替わる際の状態を示している。ハイサイドの半導体デバイスの出力容量の充放電が未完了であるときにオフからオンに切り替わると、ドレイン-ソース間電圧Vdsの電圧変化ΔV/Δt=dv/dtが大きくなるハードスイッチング状態となる。変位電圧dv/dtにより変位電流di/dtが発生する。D級増幅器を構成するレグにおいて、ハイサイドの半導体デバイスで発生した変位電流di/dtは、ローサイドの半導体デバイスのゲート-ソース間のゲート-ソース間容量Cgsをゲート-ドライバ間のゲート-ドライバ間容量Cgdを介して充電する。ゲート-ソース間容量Cgsが充電されることでゲート-ソース間電圧Vgsは上昇し、ゲートが誤点弧する。
【0015】
ゲート-ソース間電圧Vgsは、以下の式(1)で表される。
Vgs=Rg・Cgs・dVds/dt・(1-exp(-t/(Rg・(Cgd+Cgs)))) ・・・(1)
上記式(1)において、Rgはゲート抵抗、Cgdはゲート-ドライバ間容量、Cgsはゲート-ソース間容量、dVds/dtは上側のスイッチングで発生した電圧変化である。
【0016】
上記式(1)は、ゲート誤点弧によるゲート-ソース間電圧Vgsのピークは、ゲート抵抗Rg、ゲート-ドライバ間容量Cgd、及びドレイン-ソース間の電圧変化dVds/dtの3つのパラメータが支配的に影響することを示している。特に、産業用電源向けに用いられ、1MHz以上の高周波スイッチングに適用し得るRFのVD-SiMOS、SiC-MOS,GaN-HEMTなどの半導体デバイス、とりわけVD-SiMOSでは容量ゲート-ドライバ間容量Cgdが大きいため、ゲート-ソース間電圧Vgsが大きくなりゲート誤点弧が発生し易い。
図37(b)はスイッチング素子の半導体デバイスがオフからオンに切り替わったときのドレイン-ソース間電圧Vds及びゲート-ソース間電圧Vgsの電圧変化を示している。ゲート-ソース間電圧Vgsは、ドレイン-ソース間電圧Vdsの電圧変化ΔV/Δt時に上昇する。
【0017】
図37(c)は、ローサイドの半導体デバイス(スイッチング素子)がオフからオンに切り替わる際の状態を示している。ローサイドの半導体デバイスにおいても、出力容量のドレイン-ソース間電圧Vdsの充放電が未完了であるときにおいて、オフからオンに切り替わりはハードスイッチング状態で行われるため、ドレイン-ソース間電圧Vdsの電圧変化ΔV/Δt=dv/dtは大きくなり、変位電流di/dtが発生する。
【0018】
ローサイドの半導体デバイスで発生した変位電流di/dtは、ハイサイドの半導体デバイスのゲート-ソース間容量Cgsを充電させてゲート-ソース間電圧Vgsを上昇させ、ゲートを誤点弧させる。
【0019】
図38は、
図37の回路構成による電力変換装置100の波形を示している。
図38(a),
図38(b)はハイサイドのスイッチング素子Q1aのゲート信号gQ1a、電圧VQ1a及び電流IQ1aであり、
図38(c),
図38(d)はローサイドのスイッチング素子Q2aのゲート信号gQ2a、電圧VQ2a及び電流IQ2aであり、それぞれ上側D級増幅器101aの波形を示している。
【0020】
図38(e),
図38(f)はハイサイドのスイッチング素子Q1bのゲート信号gQ1b、電圧VQ1b及び電流IQ1bであり、
図38(g),
図38(h)はローサイドのスイッチング素子Q2bのゲート信号gQ2b、電圧VQ2b及び電流IQ2bであり、それぞれ下側D級増幅器101bの波形を示している。
図38(i)は電力変換装置100の出力電圧Vout及び出力電流Ioutを示している。なお、
図38中の破線は電流を表している。
【0021】
上側D級増幅器101aの波形(
図38(a)-
図38(d))において、ローサイドのスイッチング素子Q2aがオフからオンに切り替わる際に発生する電流IQ2aの電流変化(図中の数字1)により、ハイサイドのスイッチング素子Q1aのゲート信号に誤信号が発生し(図中の数字2)、誤点弧を引き起こす。スイッチング素子Q1aの誤点弧は電流IQ1aに短絡電流を発生させ(図中の数字3)、電力増幅装置の誤動作の要因となる。
【0022】
また、ハイサイドのスイッチング素子Q1aがオフからオンに切り替わる際に発生する電流IQ1aの電流変化(図中の数字4)により、ローサイドのスイッチング素子Q2aのゲート信号に誤信号が発生し(図中の数字5)、誤点弧を引き起こす。スイッチング素子Q2aの誤点弧は電流IQ2aに短絡電流を発生させ(図中の数字6)、電力増幅装置の誤動作の要因となる。
【0023】
同様に、下側D級増幅器101bの波形(
図38(e)-
図38(h))において、ローサイドのスイッチング素子Q2bがオフからオンに切り替わる際に発生する電流IQ2bの電流変化(図中の数字1)により、ハイサイドのスイッチング素子Q1bのゲート信号に誤信号が発生し(図中の数字2)、誤点弧を引き起こす。スイッチング素子Q1bの誤点弧は電流IQ1bに短絡電流を発生させ(図中の数字3)、電力増幅装置の誤動作の要因となる。
【0024】
また、ハイサイドのスイッチング素子Q1bがオフからオンに切り替わる際に発生する電流IQ1bの電流変化(図中の数字4)により、ローサイドのスイッチング素子Q2bのゲート信号に誤信号が発生し(図中の数字5)、誤点弧を引き起こす。スイッチング素子Q2bの誤点弧は電流IQ2bに短絡電流を発生させ(図中の数字6)、電力増幅装置の誤動作の要因となる。
【0025】
D級増幅器に付した上側及び下側の用語は、2つのD級増幅器からなるモジュールの各D級増幅器において、出力トランスの二次側の端部が接地されたD級増幅器には下側を付して下側D級増幅器とし、出力トランスの二次側が電力変換装置の出力端に接続されたD級増幅器には上側を付して上側D級増幅器とする。また、スイッチング素子に付したハイサイド及びローサイドの用語は、上側D級増幅器及び下側D級増幅器において、各D級増幅器を構成するブリッジ回路を構成するスイッチング素子において、高電圧側に接続されるスイッチング素子にはハイサイドを付してハイサイドスイッチング素子とし、低電圧側に接続されるスイッチング素子にはローサイドを付してローサイドスイッチング素子とする。以下、上側D級増幅器、下側D級増幅器、ハイサイドスイッチング素子、及びローサイドスイッチング素子を用いて説明する。
【0026】
図36に示す電力変換装置100は、上側及び下側の各D級増幅器をそれぞれハイサイドとローサイドの2つのスイッチング素子をハーフブリッジ構成とする回路を示しているが、各D級増幅器を2つのハイサイドスイッチング素子と2つのローサイドスイッチング素子からなる4つのスイッチング素子をフルブリッジ構成とする回路とした場合も同様にゲート誤点弧の課題がある。
【0027】
上記したように、従来構成の電力変換装置100のD級増幅器は、スイッチング素子を構成する半導体デバイスのゲート誤点弧による損質の増大により位相シフト制御を行うことができないという課題がある。
【0028】
位相シフト制御のゲート位相差θが小さい程、半導体デバイスの出力容量(ドレイン-ソース容量)Cdsがデッドタイム内の充放電が完了しない状態が高まる。ゲート位相差θの実質的な時間幅は、D級増幅器を制御する周波数に依存するため、MHz帯の高周波帯域ではゲート位相差θの実質的な時間幅は短くなり、半導体デバイスはゲート誤点弧により損失が増大するため、位相シフト制御がより困難となる。
【0029】
本発明は、上記した課題を解決し、位相シフト制御を行う電力変換装置において、D級増幅器を構成する半導体デバイスのゲート誤点弧を抑制することで半導体デバイスにおける損失を低減することを目的とする。また、位相シフト制御を行う電力変換装置において、ゲート位相差θが小さい場合であっても半導体デバイスにおける損失が低減することにより位相シフト制御を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明の電力変換装置は、複数のD級増幅器が並列配置され、各D級増幅器の進みレグと遅れレグのスイッチング素子のON/OFF動作をゲート位相差θだけ位相をずらす位相シフト制御によりされる。この位相シフト制御において、上側D級増幅器の出力端と下側D級増幅器の出力端との間の電圧差に基づいて上側D級増幅器及び下側D級増幅器に補助電流を供給する。補助電流はスイッチング素子のドレイン-ソース間を流れる電流を補助し、これによってスイッチング素子がオフからオンの切り替わり時の変位電圧dv/dtの発生、及びこれに伴う変位電流di/dtの発生を抑制し、変位電流di/dtを要因とするレグ内の他方のオフ状態のスイッチング素子が誤点弧することを防ぐ。
【0031】
(基本構成)
本発明の電力変換装置の基本構成は、上側D級増幅器及び下側D級増幅器と、上側D級増幅器及び下側D級増幅器が備えるスイッチング素子の駆動を制御する制御回路と、上側D級増幅器及び下側D級増幅器に補助電流を供給する電流補助回路とを備える。
【0032】
上側D級増幅器の入力端及び下側D級増幅器の入力端は直流電源に並列接続され、上側D級増幅器の出力端及び下側D級増幅器の出力端はそれぞれ出力トランスを介して直列接続される。
【0033】
この接続構成により、電力変換装置は、1次側において複数のD級増幅器を並列接続することにより大電流の電力を扱うことができ、2次側において複数のD級増幅器を直列接続することにより高電圧を扱うことができ、低電圧の直流電力を高電圧の直流電力に変換する。
【0034】
(D級増幅器、制御回路)
上側D級増幅器及び下側D級増幅器は、直列接続された2つのスイッチング素子からなるレグのブリッジ回路により構成される。ブリッジ回路は、1つのレグと、2つのコンデンサの直列接続で構成されるコンデンサ分圧器とにより構成されるハーフブリッジ回路、あるいはスイッチング素子からなるレグを2つ備えたフルブリッジ回路とすることができる。
【0035】
制御回路は、位相シフト制御によりD級増幅器を構成するスイッチング素子を駆動するゲート信号間のゲート位相差θを制御する。位相シフト制御は、ゲート信号の制御においてレグ間にゲート位相差θを設け、このゲート位相差θを位相シフト量として制御することにより出力電圧を制御する。位相シフト量が大きい場合には高い出力電圧が得られ、位相シフト量が小さい場合には低い出力電圧が得られる。
【0036】
D級増幅器がハーフブリッジ回路で構成される場合は、上側D級増幅器のレグと下側D級増幅器のレグの何れか一方のレグを進みレグとし、他方のレグを遅れレグとする。制御回路は、進みレグのスイッチング素子と遅れレグのスイッチング素子に印加するゲート信号間のゲート位相差θを位相シフト量として制御する。
【0037】
D級増幅器がフルブリッジ回路で構成される場合は、上側D級増幅器と下側D級増幅器の各D級増幅器において、各D級増幅器が備える2つのレグの何れか一方のレグを進みレグとし、他方のレグを遅れレグとする。制御回路は、進みレグのスイッチング素子と遅れレグのスイッチング素子に印加するゲート信号間のゲート位相差θを位相シフト量として制御する。したがって、上側D級増幅器と下側D級増幅器は各D級増幅器において位相シフト制御が行われる。両方のD級増幅器は同じ位相シフト量を用いて位相シフト制御を行う。
【0038】
(電流補助回路)
電流補助回路は、上側D級増幅器の出力端と下側D級増幅器の出力端との間に接続され、両D級増幅器の出力端間の電圧差に基づく電流を補助電流として上側D級増幅器及び下側D級増幅器に供給する。補助電流は、D級増幅器のスイッチング素子の寄生容量を充放電することにより、スイッチング素子に電流を流す。
【0039】
出力トランスの漏れインダクタンスは、スイッチング素子のオン期間に蓄積したエネルギーを放出することによりオフ期間にスイッチング素子の寄生容量を充放電する。位相シフト量が小さく漏れインダクタンスの蓄積エネルギーによる電流が少ない場合には、電流供給の時間が少ないため寄生容量の充放電が未完了となる。
【0040】
補助電流は、スイッチング素子の寄生容量の充放電を補助してスイッチング素子のドレイン-ソース間に電流を流す。スイッチング素子のドレイン-ソース間に電流が流れている間にスイッチング素子がオフからオンに切り替わることにより、ドレイン-ソース間に発生する変位電圧dv/dtの値は制限される。レグ中の一方のスイッチング素子で発生した変位電流di/dtは、レグ中の他方のオフ状態にあるスイッチング素子に流れ、ドレイン-ゲート間容量Cdgを介してゲート-ソース間容量Cgsを充電し、ゲート-ソース間電圧Vgsを上昇させる。変位電圧dv/dtの値が制限されることにより変位電流di/dtが制限され、ゲート-ソース間電圧Vgsの上昇が抑制され。ゲート-ソース間電圧Vgsの上昇抑制により、スイッチング素子の誤点弧が防止される。
【0041】
なお、D級増幅器がフルブリッジ回路で構成される場合は、上側D級増幅器の位相シフト量と下側D級増幅器の位相シフト量は同量とすることにより、電流補助回路により補助電流がD級増幅器に流れるタイミングのずれが防止される。
【0042】
電流補助回路は、補助電流を発生しスイッチング素子の寄生容量を充放電する構成、及び供給電流を終端処理する構成を備える。スイッチング素子の寄生容量を充放電した補助電流は終端処理により処理される。補助電流を終端処理する回路構成として、補助電流を電源へ回生する回生回路、補助電流を抵抗により熱放出する抵抗回路の構成を用いることができる。
【0043】
(回生回路)
電流補助回路を回生回路により構成した場合には、回生回路に取り込まれた補助電流は回生電力として電源に回生される。回生回路は上側D級増幅器と下側D級増幅器との間において1次側が接続される回生トランスと、回生トランスの2次側に接続され、2次側の交流電圧を整流して回生電圧を生成する回生整流回路とを備える。上側D級増幅器と下側D級増幅器との電圧差に基づく電流は回生トランスの1次側を流れる。回生トランスは2次側の交流電圧を回生整流回路に送る。
【0044】
回生整流回路は、回生トランスの出力端に接続されるダイオードブリッジ回路と、直流電源側に接続されるLC平滑回路により構成される。回生トランスの2次側の交流電圧は、ダイオードブリッジ回路で直流に整流された後、LC平滑回路により平滑化され回生電圧が生成される。回生トランスの巻き線比は、ゲート位相差θが0degの時の等価回路がZVS(零電圧スイッチング)の条件を満たすように設計する。
【0045】
回生回路は、補助電流の電力を回生電力として直流電源に回生することにより、電力変換装置の変換効率を高めることができる。
【0046】
(抵抗回路)
電流補助回路を抵抗回路により構成した場合には、補助電流の電力は抵抗素子において熱として放出される。抵抗回路は、上側D級増幅器と下側D級増幅器との間において1次側が接続される分配トランスと、分配トランスの2次側に接続される抵抗素子を備える。
【0047】
上側D級増幅器と下側D級増幅器との電圧差に基づく電流は、分配トランスの1次側を流れる。抵抗素子は分配トランスの2次側に接続され、分配トランスに誘導された交流電流は抵抗素子において熱として放出される。
【0048】
電流補助回路を抵抗回路とした構成では、補助電流は熱として放出されるため、電力変換装置の変換効率は低下する。
【0049】
(ブリッジ回路)
D級増幅器のブリッジ回路は、上アームのスイッチング素子と下アームのスイッチング素子の直列接続からなるレグに関して、1つのレグを備えるハーフブリッジ回路による構成、及び2つのレグを備えるフルブリッジ回路により構成とすることができる。
【0050】
・ハーフブリッジ回路
D級増幅器のブリッジ回路をハーフブリッジ回路で構成する場合には、上側D級増幅器及び下側D級増幅器は、高電圧側の上アームのスイッチング素子及び低電圧側の下アームのスイッチング素子が直列接続された1つのレグと、2つのコンデンサを直列接続して構成されるコンデンサ分圧器とによりハーフブリッジが構成される。
【0051】
ハーフブリッジ回路の構成では、上側D級増幅器のレグと下側D級増幅器のレグをそれぞれ進みレグ及び遅れレグ、又は遅れレグ及び進みレグとし、両レグをゲート位相差θのゲート信号により駆動して位相シフト制御を行う。
【0052】
・フルブリッジ回路
D級増幅器のブリッジ回路をフルブリッジ回路で構成する場合には、上側D級増幅器及び下側D級増幅器は、高電圧側の上アームのスイッチング素子及び低電圧側の下アームのスイッチング素子が直列接続された2つのレグによりフルブリッジが構成される。
【0053】
フルブリッジ回路の構成では、上側D級増幅器及び下側D級増幅器において、それぞれ2つのレグを進みレグ及び遅れレグ、又は遅れレグ及び進みレグとし、両レグをゲート位相差θのゲート信号により駆動して、上側及び下側のD級増幅器を位相シフト制御により電圧を制御する。
【0054】
(回生回路の接続)
上側D級増幅器と下側D級増幅器との間への回生回路の接続は、D級増幅器のブリッジ回路がハーフブリッジ又はフルブリッジの何れのブリッジ形態であるか、回生回路の回路構成を1つとするか又は2つとするかによって複数の形態を備える。また、回生回路の両端子とD級増幅器のブリッジ回路の出力端との接続においても異なる形態とすることができる。
【0055】
・回生回路の第1の接続形態
第1の接続形態は、ハーフブリッジのブリッジ回路を備える上側D級増幅器と下側D級増幅器の間を1つの回生回路により接続する形態である。
【0056】
第1の接続形態では、上側D級増幅器及び下側D級増幅器は、高電圧側のスイッチング素子及び低電圧側のスイッチング素子が直列接続された1つのレグと、2つのコンデンサを直列接続して構成されるコンデンサ分圧器と、によりハーフブリッジのブリッジ回路が構成される。
【0057】
ハーフブリッジのブリッジ回路は、上側D級増幅器が備えるブリッジ回路のレグ及び下側D級増幅器が備えるブリッジ回路のレグの何れか一方を進みレグとし、他方を遅れレグとする。回生回路は、回生トランスと回生整流回路からなる回路構成を1つ備える。
【0058】
上側D級増幅器及び下側D級増幅器との接続において、回生トランスの一端は上側D級増幅器のハーフブリッジのレグの中点に接続され、回生トランスの他端は下側D級増幅器のハーフブリッジのレグの中点に接続される。
【0059】
・回生回路の第2の接続形態
第1の接続形態は、ハーフブリッジのブリッジ回路を備える上側D級増幅器と、下側D級増幅器の間を2つの回生構成と、により接続する形態である。
【0060】
第2の接続形態では、第1の接続形態と同様に、上側D級増幅器及び下側D級増幅器は、高電圧側のスイッチング素子及び低電圧側のスイッチング素子が直列接続された1つのレグと、2つのコンデンサを直列接続して構成されるコンデンサ分圧器とによりハーフブリッジのブリッジ回路が構成される。
【0061】
ハーフブリッジのブリッジ回路は、上側D級増幅器が備えるブリッジ回路のレグ及び下側D級増幅器が備えるブリッジ回路のレグの何れか一方を進みレグ、他方を遅れレグとする。回生回路は、回生トランスと回生整流回路の回路構成を2つ備える。
【0062】
上側D級増幅器及び下側D級増幅器との接続において、一方の回生トランスは、一端が上側D級増幅器のコンデンサ分圧器の中点に接続され、他端は下側D級増幅器のコンデンサ分圧器の中点又はハーフブリッジのレグの中点に接続される。他方の回生トランスは、一端が上側D級増幅器のハーフブリッジのレグの中点に接続され、他端は下側D級増幅器のハーフブリッジのレグの中点又はコンデンサ分圧器の中点に接続される。
【0063】
・回生回路の第3の接続形態
第3の接続形態は、フルブリッジのブリッジ回路を備える上側D級増幅器と下側D級増幅器の間を2つの回生構成により接続する形態である。
【0064】
第3の接続形態では、上側D級増幅器及び下側D級増幅器は、高電圧側に接続された上アームのスイッチング素子及び低電圧側に接続された下アームのスイッチング素子が直列接続された進みレグ(20Ha,20La)及び遅れレグ(20Hb,20Lb)の2つのレグによりフルブリッジのブリッジ回路が構成される。回生回路(6)は回生トランスと回生整流回路の回路構成を2つ備える。
【0065】
上側D級増幅器と前記下側D級増幅器の接続において、一方の回生トランスの一端は上側D級増幅器のフルブリッジ回路の進みレグの中点に接続され、他端は下側D級増幅器のフルブリッジ回路の遅れレグの中点に接続される。他方の回生トランスの一端は上側D級増幅器のフルブリッジの遅れレグの中点に接続され、他端は下側D級増幅器のフルブリッジの進みレグの中点に接続される。
【0066】
(D級増幅器のペアの複数配列)
電力変換装置は、2つのD級増幅器を用いて、上側D級増幅器と下側D級増幅器のペアからなるモジュールを1つ備えた形態の他、偶数個数のD級増幅器を用いて、上側D級増幅器と下側D級増幅器のペアからなるモジュールを複数備え、これら複数個のモジュールが配列された形態とすることができる。
【0067】
偶数個数のD級増幅器を用いて構成される上側D級増幅器と下側D級増幅器のペアからなるモジュールが複数配された形態では、複数個数の電流補助回路を用いて各モジュールに電流補助回路が設けられる形態、あるいは一台の電流補助回路を用いて各モジュールに対して一台の電流補助回路が共用して設けられる形態とすることができる。
【0068】
・複数個数の電流補助回路を用いる形態
複数個数の電流補助回路を用い、各ペアのモジュールに電流補助回路が設けられる形態では、偶数個数のD級増幅器を備え、1つの上側D級増幅器と1つの下側D級増幅器から成る一対のD級増幅器のモジュールを複数組み備えると共に、D級増幅器のモジュールの個数と同数の複数個数の電流補助回路を備える。D級増幅器のモジュールは、1つの上側D級増幅器と1つの下側D級増幅器から構成されるため、D級増幅器の個数数は偶数個数となる。電流補助回路は各モジュールに対してそれぞれ設けられるため、電流補助回路の個数はD級増幅器のモジュールの個数と同数となる。
【0069】
一対のD級増幅器のモジュールは、上側D級増幅器と下側D級増幅器との間にそれぞれ1つの電流補助回路が接続され、複数組みの回路構成の各出力端は直列接続あるいは並列接続される。これにより、一対のD級増幅器のモジュール及び1つの電流補助回路からなる回路構成が複数組み構成される。一対のD級増幅器のモジュールのスイッチング素子には、それぞれ個別に設けられた電流補助回路により充放電のための補助電流が供給される。
【0070】
・1つの電流補助回路を用いる形態
1つの電流補助回路を用い、複数個のD級増幅器のモジュールに対して一台の電流補助回路を共用させる形態では、1つの上側D級増幅器と1つの下側D級増幅器から成る一対のD級増幅器のモジュールを複数組み備えると共に、1つの電流補助回路を備える。
【0071】
一対のD級増幅器のモジュールは、各上側D級増幅器と下側D級増幅器との間に1つの電流補助回路が接続され、一対のD級増幅器のモジュールのペアの複数組みの各出力端は直列接続あるいは並列接続される。一対のD級増幅器のモジュールは、各モジュールに共通して設けられた電流補助回路により充放電のための補助電流が供給される。この形態では、D級増幅器のモジュールの各ペアは、位相シフト制御を行うゲート信号のタイミングを同期させることにより、共通して設けられた電流補助回路に流れる電流のタイミングを同期させ、D級増幅器に流れる補助電流の電流方向を合わせることができる。
【0072】
・D級増幅器のモジュールの直列接続、及び並列接続
D級増幅器のモジュールは出力端に対して直列接続する構成、及び並列接続とする形態とすることができる。この接続形態は、複数の電流補助回路を用いる形態及び1つの電流補助回路を用いる形態の両形態に適用することができる。
【発明の効果】
【0073】
以上説明したように、本発明によれば、位相シフト制御を行う電力変換装置において、D級増幅器を構成する半導体デバイスのゲート誤点弧を抑制することができる。また、位相シフト制御を行う電力変換装置において、ゲート位相差θが小さい場合であっても、半導体デバイスの損失低減が可能となる。そのため、位相シフト制御が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【
図1】本発明の電力変換装置の概略構成を説明するための図である。
【
図2】本発明の電力変換装置のD級増幅器のモジュールを直列接続する構成例を説明するための図である。
【
図3】本発明の電力変換装置のD級増幅器のモジュールを並列接続する構成例を説明するための図である。
【
図4】本発明の電力変換装置のD級増幅器のモジュールの並列/直列接続、直列/並列接続の構成例を説明するための図である。
【
図5】本発明の電力変換装置の電流補助回路の動作例を説明するための図である。
【
図6】本発明の電力変換装置の第1の構成例の回路例を説明するための図である。
【
図7】本発明の電力変換装置の第1の構成例の信号例を説明するための図である。
【
図8】本発明の電力変換装置の第1の構成例の動作例(区間“A1”)を説明するための図である。
【
図9】本発明の電力変換装置の第1の構成例の動作例(区間“A2”)を説明するための図である。
【
図10】本発明の電力変換装置の第1の構成例の動作例(区間“B1”)を説明するための図である。
【
図11】本発明の電力変換装置の第1の構成例の動作例(区間“B2”)を説明するための図である。
【
図12】本発明の電力変換装置の第1の構成例の動作例(区間“C”)を説明するための図である。
【
図13】本発明の電力変換装置の第1の構成例の動作例(区間“D1”)を説明するための図である。
【
図14】本発明の電力変換装置の第1の構成例の動作例(区間“D2”)を説明するための図である。
【
図15】本発明の電力変換装置の第1の構成例の動作例(区間“E1”)を説明するための図である。
【
図16】本発明の電力変換装置の第1の構成例の動作例(区間“E2”)を説明するための図である。
【
図17】本発明の電力変換装置の第1の構成例の動作例(区間“F1”)を説明するための図である。
【
図18】本発明の電力変換装置の第1の構成例の動作例(区間“F2”)を説明するための図である。
【
図19】本発明の電力変換装置の第1の構成例の動作例(区間“G”)を説明するための図である。
【
図20】本発明の電力変換装置の第1の構成例の動作例(区間“H1”)を説明するための図である。
【
図21】本発明の電力変換装置の第1の構成例の動作例(区間“H2”)を説明するための図である。
【
図22】本発明の電力変換装置の第2の構成例の回路例を説明するための図である。
【
図23】本発明の電力変換装置の第2の構成例の信号例を説明するための図である。
【
図24】本発明の電力変換装置の第2の構成例の信号例を説明するための図である。
【
図25】本発明の電力変換装置の第2の構成例の動作例(区間“A”)を説明するための図である。
【
図26】本発明の電力変換装置の第2の構成例の動作例(区間“B”)を説明するための図である。
【
図27】本発明の電力変換装置の第2の構成例の動作例(区間“C”)を説明するための図である。
【
図28】本発明の電力変換装置の第2の構成例の動作例(区間“D”)を説明するための図である。
【
図29】本発明の電力変換装置の第2の構成例の動作例(区間“E”)を説明するための図である。
【
図30】本発明の電力変換装置の第2の構成例の動作例(区間“F”)を説明するための図である。
【
図31】本発明の電力変換装置の第2の構成例の動作例(区間“G”)を説明するための図である。
【
図32】本発明の電力変換装置の第2の構成例の動作例(区間“H”)を説明するための図である。
【
図33】本発明の電力変換装置の第3の構成例の回路例を説明するための図である。
【
図34】本発明の電力変換装置の回生回路の他の構成例を説明するための図である。
【
図35】本発明の電力変換装置の電流補助回路の他の構成例を説明するための図である。
【
図36】電力変換装置のハーフブリッジ回路からなる回路構成例を説明するための図である。
【
図38】
図36の回路構成による電力変換装置100の波形を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0075】
以下、
図1-
図5を用いて本発明の電力変換装置の概略構成及び動作を説明し、
図6-
図21を用いて本発明の電力変換装置の第1の構成例及び動作を説明し、
図22-
図32を用いて本発明の電力変換装置の第2の構成例及び動作を説明し、
図33を用いて本発明の電力変換装置の第3の構成例及び動作を説明し、
図34を用いて本発明の電力変換装置の回生回路の他の構成例を説明し、
図35を用いて本発明の電力変換装置の電流補助回路の他の構成例を説明する。
【0076】
[本発明の電力変換装置の概略構成]
図1は本発明の電力変換装置の概略構成を説明するための概略構成図である。
図1(a)は電力変換装置10の概略構成図である。本発明の電力変換装置10は、上側D級増幅器1H及び下側D級増幅器1LのD級増幅器と、上側D級増幅器1H及び下側D級増幅器1Lが備えるスイッチング素子の駆動を制御する制御回路3と、上側D級増幅器1H及び下側D級増幅器1Lに補助電流を供給する電流補助回路4とを備える。
【0077】
上側D級増幅器1Hの入力端及び下側D級増幅器1Lの入力端は直流電源5に並列接続され、上側D級増幅器1Hの出力端及び下側D級増幅器1Lの出力端は、それぞれ出力トランス2H,2Lを介して直列接続される。制御回路3は上側D級増幅器1H及び下側D級増幅器1Lを位相シフト制御し、ゲート位相差θを位相シフトすることにより電圧を制御する。
【0078】
上側D級増幅器1H及び下側D級増幅器1Lがハーフブリッジ回路で構成される場合には、上側D級増幅器1Hのレグと下側D級増幅器1Lのレグの何れか一方を進みレグとし他方を遅れレグとし、両レグのスイッチング素子を駆動するゲート信号の間のゲート位相差θのシフト量を制御する位相シフト制御が行われる。
【0079】
上側D級増幅器1H及び下側D級増幅器1Lがフルブリッジ回路で構成される場合には、上側D級増幅器1H及び下側D級増幅器1Lがそれぞれ備える2つのレグの何れか一方を進みレグとし他方を遅れレグとし、両レグのスイッチング素子を駆動するゲート信号の間のゲート位相差θのシフト量を制御する位相シフト制御が行われる。
【0080】
上側D級増幅器1Hの出力端と下側D級増幅器1Lの出力端との間には、電流補助回路4が接続される。位相シフト制御により、上側D級増幅器1Hのゲート信号と下側D級増幅器1Lのゲート信号との間にゲート位相差θを持たせて位相シフト制御を行うと、上側D級増幅器1Hの出力端と下側D級増幅器1Lの出力端との間の電圧差が生じる。電流補助回路4は、この電圧差に基づいて上側D級増幅器1H又は下側D級増幅器1Lに電流を流す。電流補助回路4から上側D級増幅器1H又は下側D級増幅器1Lに流れ込んだ補助電流は、スイッチング素子のドレイン-ソース間の寄生容量Cdsを充放電し、オフ状態にあるスイッチング素子に電流を流す。
【0081】
補助電流は、スイッチング素子のドレイン-ソース間を流れる電流を補助し、スイッチング素子がオフからオンの切り替わり時の変位電圧dv/dtの発生、及びこれに伴う変位電流di/dtの発生を抑制する。これによって変位電流di/dtがグ内の他方のオフ状態のスイッチング素子に流れてゲート-ソース間電圧Vgsを上昇させて誤点弧することを防ぐ。
【0082】
図1(b)は、
図1(a)の電流補助回路4として回生回路6を用いた電力変換装置10の構成例を示している。
図1(b)に示す電力変換装置10の構成は、
図1(a)に示した電力変換装置10の構成の電流補助回路4を回生回路6に置き換えたものであり、その他の構成は同様である。
【0083】
回生回路6は、回生整流回路6a及び回生トランス6bを備える。回生トランス6bは、1次側の一端が上側D級増幅器1Hの出力端に接続され、1次側の他端が下側D級増幅器1Lの出力端に接続され、2次側は回生整流回路6aに接続されている。
【0084】
シフト位相制御の間に上側D級増幅器1Hの出力端と下側D級増幅器1Lの出力端との間に電圧差が生じると、回生トランス6bの1次側の両端に電圧が発生する。回生トランス6bの2次側には、一次側の両端に発生した電圧を電圧変換した電圧が発生する。回生整流回路6aは、回生トランス6bの2次側に発生する交流電圧を直流電圧に整流し、直流電源(図示していない)に供給する。回生回路6は、上側D級増幅器1Hの出力端と下側D級増幅器1Lの出力端との間の電圧差で生じた電流を直流電源に回生する。
【0085】
[D級増幅器のペアの複数配列]
図1に示した構成例は、上側D級増幅器と下側D級増幅器の2台のD級増幅器を1ペアとしてモジュールを構成する形態を示している。
【0086】
本発明の電力変換装置は、2台のD級増幅器を用いて上側D級増幅器と下側D級増幅器の1つのペアによりモジュールを構成する形態の他、偶数個数のD級増幅器を用い、上側D級増幅器と下側D級増幅器の複数のペアからなるモジュールを配列する形態とすることができる。このとき、モジュールは上側と下側の2つのD級増幅器のペアの組み合わせから構成されるため、D級増幅器の個数は偶数個数となる。上側D級増幅器と下側D級増幅器との組み合わせから成るペアを複数配列する形態では、各ペアの出力端を直列接続することにより、それぞれの出力電圧を重畳させて出力電圧を高めることができる。
【0087】
偶数個数のD級増幅器を用い、上側D級増幅器と下側D級増幅器のペアからなるモジュールを複数配列する形態では、複数個数の電流補助回路を用いて各ペアのモジュールに電流補助回路を設ける形態、あるいは一台の電流補助回路を用いて各ペアのモジュールに対して一台の電流補助回路を共用させる形態とすることができる。さらに、各モジュールを直列接続する形態、及び各モジュールを並列接続する形態とすることができる。
【0088】
(A:複数の電流補助回路を用い、モジュールを直列接続する形態)
図2(a)は、複数個数の電流補助回路を用い、モジュールの各ペアに対して個々に電流補助回路を設けると共に、モジュールを直列接続する形態を示している。この形態の電力変換装置10Aでは、偶数個数のD級増幅器により、1つの上側D級増幅器(1H-1,・・・,1H-n)と1つの下側D級増幅器(1L-1,・・・,1L-n)から成る一対のD級増幅器のペアからなるモジュールを複数組み備えると共に、D級増幅器のモジュールの数と同数の複数個数の電流補助回路(4-1,・・・,4-n)を備え、D級増幅器の各モジュールは電流補助回路をそれぞれ備える。
【0089】
複数個数のD級増幅器の各モジュールのそれぞれには、上側D級増幅器(1H-1,・・・,1H-n)と下側D級増幅器(1L-1,・・・,1L-n)との間にそれぞれ1つの電流補助回路(4-1,・・・,4-n)が接続され、各出力端は出力トランス(2H-1,2L-1,・・・,2H-n,2L-n)を介して直列接続される。これにより、一対のD級増幅器のペアからなるモジュール及び1つの電流補助回路からなる複数の回路構成はカスケード接続される。一対のD級増幅器からなる各モジュールは、それぞれに個別に設けられた電流補助回路により充放電のための補助電流が供給され、各モジュールにおいてスイッチング素子のオフからオンに切り替わる際に発生する変位電圧及び変位電流を抑制し、レグ内で直列接続される他方のスイッチング素子の誤点弧を抑制する。
【0090】
(B:1つの電流補助回路を用い、モジュールを直列接続する形態)
図2(b)は一台の電流補助回路を用い各ペアに対して一台の電流補助回路を共用させる形態を示している。この形態の電力変換装置10Bでは、偶数個数のD級増幅器(1H-1,・・・,1H-n,1L-1,・・・,1L-n)により、1つの上側D級増幅器と1つの下側D級増幅器から成る一対のD級増幅器のペアを複数組み備えると共に、一台の電流補助回路4-zが並列接続される。D級増幅器の各ペアは一台の電流補助回路4-zを共用する。
【0091】
一対のD級増幅器の各ペアにおいて、各上側D級増幅器(1H-1,・・・,1H-n)と下側D級増幅器(1L-1,・・・,1L-n)との間に1つの電流補助回路4-zが接続され、一対のD級増幅器のペアの複数組みの各出力端は出力トランス(2H-1,2L-1,・・・,2H-n,2L-n)を介して直列接続される。一対のD級増幅器の各ペアは、各ペアに共通して設けられた電流補助回路により補助電流が供給される。
【0092】
(C:複数の電流補助回路を用い、モジュールを並列列接続する形態)
図3(a)は、複数個数の電流補助回路を用い、一対のD級増幅器からなるモジュールに対して個々に電流補助回路を設けると共に、複数個数のモジュールを並列接続する形態を示している。この形態の電力変換装置10Cでは、偶数個数のD級増幅器を用いて、1つの上側D級増幅器(1H-1,・・・,1H-n)と1つの下側D級増幅器(1L-1,・・・,1L-n)から成る一対のD級増幅器のペアからなるモジュールを複数組み備えると共に、D級増幅器のモジュールの個数数と同数の複数個の電流補助回路(4-1,・・・,4-n)を備え、D級増幅器の各モジュールに1つの電流補助回路をそれぞれ備える。
【0093】
一対のD級増幅器のモジュールは、上側D級増幅器(1H-1,・・・,1H-n)と下側D級増幅器(1L-1,・・・,1L-n)との間にそれぞれ1つの電流補助回路(4-1,・・・,4-n)が接続され、モジュールの各出力端は出力トランス(2H-1,2L-1,・・・,2H-n,2L-n)を介して並列接続される。これにより、一対のD級増幅器からなるモジュール及び1つの電流補助回路から構成される複数の回路構成の組みが並列接続される。一対のD級増幅器のモジュールは、それぞれに個別に設けられた電流補助回路により充放電のための補助電流が供給される。
【0094】
(D:1つの電流補助回路を用い、モジュールを並列接続する形態)
図3(b)は。一台の電流補助回路を用い、一対のD級増幅器からなるモジュールに対して一台の電流補助回路を共用させると共に、複数個数のモジュールを並列接続する形態を示している。この形態の電力変換装置10Dでは、偶数個数のD級増幅器(1H-1,・・・,1H-n,1L-1,・・・,1L-n)により、1つの上側D級増幅器と1つの下側D級増幅器から成る一対のD級増幅器からなるモジュールを複数組み備えると共に、一台の電流補助回路4-zが並列接続される。複数個のD級増幅器のモジュールは一台の電流補助回路4-zを共用する。
【0095】
一対のD級増幅器からなるモジュールにおいて、各上側D級増幅器(1H-1,・・・,1H-n)と下側D級増幅器(1L-1,・・・,1L-n)との間に1つの電流補助回路4-zが接続され、複数のモジュールの各出力端は出力トランス(2H-1,2L-1,・・・,2H-n,2L-n)を介して並列接続される。一対のD級増幅器のモジュールは、各ペアに共通して設けられた電流補助回路により補助電流が供給される。
【0096】
(E:モジュールの直列接続構成を並列接続する形態)
上記の(A)及び(B)で示したD級増幅器のモジュールを直列接続した構成をさらに並列接続する形態としてもよい。
図4(a)は、D級増幅器の複数個のモジュールが直列接続された構成を複数個備え、これらを並列接続した構成を示している。
図4(a)は、直列接続した回路構成を2個用いて並列接続した構成例を示しているが、並列接続する回路構成の個数は2個に限らず3個以上としてもよい。
【0097】
(F:モジュールの並列接続構成を直列接続する形態)
上記の(C)及び(D)で示したD級増幅器のモジュールを並列接続した構成をさらに直列接続する形態としてもよい。
図4(b)はD級増幅器の複数個のモジュールが並列接続された構成を複数個備え、これらを直列接続した構成を示している。
図4(b)は並列接続した回路構成を2個用いて直列接続した構成例を示しているが、直列接続する回路構成の個数は2個に限らず3個以上としてもよい。
【0098】
[電流補助回路の動作例]
図5を用いて、電流補助回路の動作例を説明する。
図5(a)は、上側D級増幅器1H及び下側D級増幅器1Lが電流補助回路4から補助電流の供給を受ける状態を示している。図中の破線は、補助電流の供給状態を模式的に示している。上側D級増幅器1H及び下側D級増幅器1Lのドレイン-ソース間の寄生容量Cdsは、電流補助回路4からの補助電流により充電状態又は放電状態となり、この充放電の間はD級増幅器のドレイン-ソース間には充電電流あるいは放電電流が流れる状態となる。
【0099】
図5(b)は、上側D級増幅器1Hのスイッチング素子がオフからオンに切り替わるスイッチング状態を示している。上側D級増幅器1Hの寄生容量Cdsが未放電状態にある場合には、上側D級増幅器1Hのスイッチング素子がオフからオンに切り替わる際に、上側D級増幅器1Hのスイッチング素子はハードスイッチング状態となりドレイン-ソース間に大きな変位電圧dv/dtが発生する。変位電圧dv/dtにより変位電流di/dtが生じる。この変位電流di/dtは下側D級増幅器1Lのスイッチング素子のゲート-ソース間電圧Vgsを上昇させ、ゲート-ソース間電圧Vgsが下側D級増幅器1Lのスイッチング素子の点弧電圧を越えると下側D級増幅器1Lのスイッチング素子は誤点弧する。
【0100】
これに対して、上側D級増幅器1Hが電流補助回路4からの補助電流の供給を受け、スイッチング素子に電流が流れる状態となると、ハードスイッチング状態は抑制され、ドレイン-ソース間の変位電圧dv/dtは抑制される。変位電圧dv/dtの抑制により変位電流di/dtも抑制される。上側D級増幅器1Hからの変位電流di/dtが抑制されることから、下側D級増幅器1Lのスイッチング素子のゲート-ソース間電圧Vgsの上昇は抑えられ、下側D級増幅器1Lのスイッチング素子の誤点弧は抑制される。
図5(b)は変位電圧dv/dt及び変位電流di/dtが抑制される状態を示している。
【0101】
図5(c)は、下側D級増幅器1Lのスイッチング素子がオフからオンに切り替わるスイッチング状態を示している。下側D級増幅器1Lのスイッチング素子の寄生容量Cdsが未放電状態にある場合には、下側D級増幅器1Lのスイッチング素子がオフからオンに切り替わる際に、下側D級増幅器1Lのスイッチング素子はハードスイッチング状態となりドレイン-ソース間に大きな変位電圧dv/dtが発生する。変位電圧dv/dtにより生じた変位電流di/dtが発生する。この変位電流di/dtは、上側D級増幅器1Hのスイッチング素子のゲート-ソース間電圧Vgsを上昇させ、ゲート-ソース間電圧Vgsがスイッチング素子の点弧電圧を越えるとスイッチング素子が誤点弧する。
【0102】
これに対して、下側D級増幅器1Lが電流補助回路4からの補助電流の供給を受け、スイッチング素子に電流が流れる状態となるとハードスイッチング状態は抑制され、ドレイン-ソース間の変位電圧dv/dtは抑制される。変位電圧dv/dtの抑制により変位電流di/dtも抑制される。下側D級増幅器1Lからの変位電流di/dtが抑制されることから、上側D級増幅器1Hのスイッチング素子のゲート-ソース間電圧Vgsの上昇は抑えられ、上側D級増幅器1Hのスイッチング素子の誤点弧は抑制される。
図5(c)は、変位電圧dv/dt及び変位電流di/dtが抑制される状態を示している。
【0103】
図5(d)は、スイッチング素子のドレイン-ソース間電圧Vdsとゲート-ソース間電圧Vgsの変化を示している。一方のD級増幅器のスイッチング素子がオフからオンの切り替わり時においてドレイン-ソース間電圧Vdsは下降する。このときの電圧変化ΔV/Δtにより発生する変位電流di/dtはドレイン-ソーク間の寄生容量Cdsに流れ、他方のD級増幅器のスイッチング素子に対する電流の流れは抑制される。他方のD級増幅器のスイッチング素子には変位電流di/dtが流れ込まないことから、他方のD級増幅器のスイッチング素子のゲートに印加されるゲート-ソース間電圧Vgsの電圧上昇は抑制され、スイッチング素子の誤点弧は抑制される。
【0104】
[本発明の第1の構成例]
本発明の第1の構成例を
図6-
図21を用いて説明する。第1の構成例は、上側D級増幅器及び下側D級増幅器がハーフブリッジで構成され、電流補助回路として1つの回生回路が設けられる構成である。
【0105】
(第1の構成例の回路例)
図6は、本発明の第1の構成例の回路例を示している。なお、ここでは上側D級増幅器1H、下側D級増幅器1L、及び回生回路6の構成のみを示している。
【0106】
電力変換装置11において、上側D級増幅器1Hは、ハイサイドのスイッチング素子Q1aとローサイドのスイッチング素子Q2aの直列接続からなる進みレグ20Hと、コンデンサC1aとコンデンサC2aの直列接続からなるコンデンサ分圧器21Hとによりなるハーフブリッジ回路を備える。進みレグ20Hを構成するハイサイドのスイッチング素子Q1aの一端は直流電源(図示していない)の高電圧側に接続され、ローサイドのスイッチング素子Q2aの一端は直流電源(図示していない)の低電圧側に接続され、ハイサイドのスイッチング素子Q1aとローサイドのスイッチング素子Q2aの各他端が接続された中点は上側D級増幅器1Hの一方の出力端であり、出力トランス2Hの1次側の一方に接続されている。なお、図中のVinは直流電源(図示していない)の電圧を示している。
【0107】
コンデンサ分圧器21Hを構成するコンデンサC1aの一端は直流電源(図示していない)の高電圧側に接続され、コンデンサC2aの一端は直流電源(図示していない)の低電圧側に接続され、コンデンサC1aとコンデンサC2aの各他端が接続された中点は上側D級増幅器1Hの他方の出力端であり、出力トランス2Hの1次側の他方に接続されている。
【0108】
進みレグ20Hの中点と出力トランス2Hとの間、及びコンデンサ分圧器21Hの中点と出力トランス2Hとの間には、出力トランス2Hの漏れインダクタンスが存在する。
【0109】
下側D級増幅器1Lは、ハイサイドのスイッチング素子Q1bとローサイドのスイッチング素子Q2bの直列接続からなる遅れレグ20Lと、コンデンサC1bとコンデンサC2bの直列接続からなるコンデンサ分圧器21Lとによりハーフブリッジ回路が構成される。遅れレグ20Lを構成するスイッチング素子Q1bの一端は直流電源(図示していない)の高電圧側に接続され、ローサイドのスイッチング素子Q2bの一端は直流電源(図示していない)の低電圧側に接続され、ハイサイドのスイッチング素子Q1bとローサイドのスイッチング素子Q2bの各他端が接続された中点は、下側D級増幅器1Lの一方の出力端であり、出力トランス2Lの1次側の一方に接続されている。
【0110】
コンデンサ分圧器21Lを構成するコンデンサC1bの一端は直流電源(図示していない)の高電圧側に接続され、コンデンサC2bの一端は直流電源(図示していない)の低電圧側に接続され、コンデンサC1bとコンデンサC2bの各他端が接続された中点は、下側D級増幅器1Lの他方の出力端であり、出力トランス2Lの1次側の他方に接続されている。
【0111】
遅れレグ20Lの中点と出力トランス2Lとの間、及びコンデンサ分圧器21Lの中点と出力トランス2Lとの間には、出力トランス2Lの漏れインダクタンスが存在する。
【0112】
回生回路6は、回生整流回路6aと回生トランス6bとを備え、D級増幅器から取り込んだ補助電流の電力を回生電力として直流電源に回生する。回生トランス6bにおいて、1次側は上側D級増幅器1Hと下側D級増幅器1Lとの間に接続され、2次側は回生整流回路6aに接続される。回生整流回路6aは、回生トランス6bの2次側の交流電圧を整流して直流の回生電圧を生成する。回生トランス6bの1次側には、上側D級増幅器1Hと下側D級増幅器1Lとの電圧差に基づいて電流が流れる。回生トランス6bは、2次側の交流電圧を回生整流回路6aに送る。回生トランスの巻き線比は、ゲート位相差θが0degの時の等価回路がZVS(零電圧スイッチング)の条件を満たすように設計する。
【0113】
回生整流回路6aは、回生トランス6bの出力端に接続されるダイオードブリッジ回路6a1と、直流電源側に接続されるLC平滑回路6a2により構成される。回生トランス6bの2次側の交流電圧は、ダイオードブリッジ回路6a1で整流された後、LC平滑回路6a2により平滑化される。平滑化された直流電圧が回生電圧として直流電源に回生される。回生回路6は、補助電流の電力を回生電力として直流電源に回生することにより、電力変換装置の変換効率を高めることができる。
【0114】
(第1の構成例の動作例)
第1の構成例の動作例について
図7の信号図を用いて説明する。
図7(a),
図7(b)は、上側D級増幅器1Hの上アーム側のハイサイドのスイッチング素子Q1aについてゲート信号gQ1a、及び電圧VQ1aの波形,電流IQ1aの波形を示し、
図7(c),
図7(d)は、上側D級増幅器1Hの下アーム側のローサイドのスイッチング素子Q2aについてゲート信号gQ2a、及び電圧VQ2aの波形,電流IQ2aの波形を示し、
図7(e),
図7(f)は、下側D級増幅器1Lの上アーム側のハイサイドのスイッチング素子Q1bについてゲート信号gQ1b、及び電圧VQ1bの波形,電流IQ1bの波形を示し、
図7(g),
図7(h)は、下側D級増幅器1Lの下アーム側のローサイドのスイッチング素子Q2bについてゲート信号gQ2b、及び電圧VQ2bの波形,電流IQ2bの波形を示している。
【0115】
図7(i)は、上側D級増幅器1Hの出力電圧Vamp1及び出力電流Iamp1を示し、
図7(j)は、下側D級増幅器1Lの出力電圧Vamp2及び出力電流Iamp2を示している。
図7(k)は、回生回路の入力電圧Vrgn及び電流Irgnを示し、
図7(l),
図7(m)は、電力変換装置の出力電流Iout、及び出力電圧Voutを示している。なお、入力電圧Vrgn及び電流Irgnは回生トランス6bの一次側電圧及び一次側電流に相当する。
【0116】
なお、ここでは、上側D級増幅器1Hのハイサイドのスイッチング素子Q1a及びローサイドのスイッチング素子Q2aが構成するレグを進みレグとし、下側D級増幅器1Lのハイサイドのスイッチング素子Q1b及びローサイドのスイッチング素子Q2bが構成するレグを遅れレグとしている。また、
図7(b),
図7(d),
図7(e),
図7(g),
図7(h)-
図7(l)において、実線は電圧波形を示し、破線は電流波形を示している。
【0117】
はじめに、上側D級増幅器1Hのレグを構成するハイサイドのスイッチング素子Q1a及びローサイドのスイッチング素子Q2aにおいて、ゲート信号gQ1a、ゲート信号gQ2aがオフからオンへの切り替わる際の動作について説明する。
【0118】
ゲート信号gQ1aがオフからオンへ切り替わる時点(
図7(a)の“a1”)において、スイッチング素子Q1aがオン状態となる際に発生する変位電圧dv/dtは、スイッチング素子Q1aに電流を流すことにより抑制される。
【0119】
図7(b)の電流IQ1aの波形において“a2”は、切り替わり時の電流変動状態を示している。ゲート信号gQ1aの“a1”の時点よりも前の時点において、上側D級増幅器1Hと下側D級増幅器1Lとの電圧差により、回生トランス6bの一次側には入力電圧Vrgnが発生し、入力電圧Vrgnにより上側D級増幅器1Hに電流Irgnが流入する(
図7(k)の“a3”)。流入した電流Irgnはスイッチング素子Q1aの寄生容量Cdsを充放電する。この充放電電流によりスイッチング素子Q1aに電流が流れる(
図7(b)の“a2”)。
【0120】
この充放電電流によりスイッチング素子Q1aに発生する変位電圧dv/dtは抑制される。変位電圧dv/dtが抑制されることにより変位電流di/dtが抑制され、電流IQ1aの変動量は抑制される。電流IQ1aの変動量が抑制されることにより、同一レグ内のローサイドのスイッチング素子Q2aのゲート-ソース電圧Vgsの電圧上昇が抑制され、誤点弧が抑制される。
図7(c)のゲート信号gQ2aにおいて破線で示した信号波形は、変位電流di/dtにより誘起される誤点弧信号が抑制される状態を示している。
【0121】
また、ゲート信号gQ2aがオフからオンへ切り替わる時点(
図7(c)の“b1”)において、スイッチング素子Q2aがオン状態となる際に発生する変位電圧dv/dtは、スイッチング素子Q2aの電流を流すことにより抑制される。
【0122】
図7(d)の電流IQ2aの波形において“b2”は切り替わり時の電流変動状態を示している。ローサイドのスイッチング素子Q2aがオフからオンに切り替わった際においても、ゲート信号gQ2aの“b1”の時点よりも前の時点において、上側D級増幅器1Hと下側D級増幅器1Lとの電圧差により、回生トランス6bの一次側の入力電圧Vrgnにより上側D級増幅器1Hに電流Irgnが流入する(
図7(k)の“b3”)。流入した電流Irgnは、スイッチング素子Q2aの寄生容量Cdsを充放電する。この充放電電流によりスイッチング素子Q1aに電流が流れる(
図7(d)の“b2”)。
【0123】
この充放電電流によりスイッチング素子Q2aに発生する変位電圧dv/dtは抑制される。変位電圧dv/dtが抑制されることにより変位電流di/dtが抑制され、電流IQ2aの変動量は抑制される。電流IQ2aの変動量が抑制されることにより、同一レグ内のハイサイドのスイッチング素子Q1aのゲート-ソース電圧Vgsの電圧上昇が抑制され、誤点弧が抑制される。
図7(a)のゲート信号gQ1aにおいて破線で示した信号波形は、変位電流di/dtにより誘起される誤点弧信号が抑制される状態を示している。
【0124】
次に、下側D級増幅器1Lのレグを構成するハイサイドのスイッチング素子Q1b及びローサイドのスイッチング素子Q2bにおいて、ゲート信号gQ1b、ゲート信号gQ2bがオフからオンへの切り替わる際の動作について説明する。
【0125】
ゲート信号gQ1bがオフからオンへ切り替わる時点(
図7(e)の“c1”)において、スイッチング素子Q1bがオン状態となる際に発生する変位電圧dv/dtは、スイッチング素子Q1bに電流を流すことにより抑制される。
【0126】
図7(f)の電流IQ1bの波形において、“c2”は切り替わり時の電流変動状態を示している。ゲート信号gQ1bの“c1”の時点よりも前の時点において、上側D級増幅器1Hと下側D級増幅器1Lとの電圧差により、回生トランス6bの一次側には入力電圧Vrgnが発生し、入力電圧Vrgnにより上側D級増幅器1Hに電流Irgnが流入する(
図7(k)の“c3”)。流入した電流Irgnはスイッチング素子Q1bの寄生容量Cdsを充放電する。この充放電電流によりスイッチング素子Q1bに電流が流れる(
図7(f)の“c2”)。
【0127】
この充放電電流によりスイッチング素子Q1bに発生する変位電圧dv/dtは抑制される。変位電圧dv/dtが抑制されることにより変位電流di/dtが抑制され、電流IQ1bの変動量は抑制される。電流IQ1bの変動量が抑制されることにより、同一レグ内のローサイドのスイッチング素子Q2bのゲート-ソース電圧Vgsの電圧上昇が抑制され、誤点弧が抑制される。
図7(g)のゲート信号gQ2bにおいて破線で示した信号波形は、変位電流di/dtにより誘起される誤点弧信号が抑制される状態を示している。
【0128】
また、ゲート信号gQ2bがオフからオンへ切り替わる時点(
図7(g)の“b1”)において、スイッチング素子Q2bがオン状態となる際に発生する変位電圧dv/dtは、スイッチング素子Q2bの電流を流すことにより抑制される。
【0129】
図7(h)の電流IQ2bの波形において、“d2”は切り替わり時の電流変動状態を示している。ローサイドのスイッチング素子Q2bがオフからオンに切り替わった際においても、ゲート信号gQ2bの“d1”の時点よりも前の時点において、上側D級増幅器1Hと下側D級増幅器1Lとの電圧差により、回生トランス6bの一次側の入力電圧Vrgnにより上側D級増幅器1Hに電流Irgnが流入する(
図7(k)の“d3”)。流入した電流Irgnはスイッチング素子Q2bの寄生容量Cdsを充放電する。この充放電電流によりスイッチング素子Q2bに電流が流れる(
図7(h)の“d2”)。
【0130】
この充放電電流によりスイッチング素子Q2bに発生する変位電圧dv/dtは抑制される。変位電圧dv/dtが抑制されることにより変位電流di/dtが抑制され、電流IQ2bの変動量は抑制される。電流IQ2bの変動量が抑制されることにより、同一レグ内のハイサイドのスイッチング素子Q1bのゲート-ソース電圧Vgsの電圧上昇が抑制され、誤点弧が抑制される。
図7(e)のゲート信号gQ1bにおいて破線で示した信号波形は、変位電流di/dtにより誘起される誤点弧信号が抑制される状態を示している。
【0131】
図7(k)に示される電流Irgnは、スイッチング素子のドレイン-ソース容量Cdsを放電してスイッチング素子に流れる電流を補助する補助電流であり、上側D級増幅器1Hと下側D級増幅器1Lの差電圧に相当する入力電圧Vrgnに基づいて流れる。電流Irgnの電流方向は、入力電圧Vrgnの電圧方向に応じて変化する。
【0132】
図7において、一方のレグを構成するスイッチング素子Q1a,Q2aを駆動するゲート信号gQ1a,gQ2aと、他方のレグを構成するスイッチング素子Q1b,Q2bを駆動するゲート信号gQ1b,gQ2bとの間にはゲート位相差θが設けられ、このゲート位相差θをシフトさせることにより電圧制御が行われる。
図7は、ゲート信号gQ1a,gQ2aが印加されるスイッチング素子Q1a,Q2aのレグを進みレグとし、ゲート信号gQ1b,gQ2bが印加されるスイッチング素子Q1b,Q2bのレグを遅れレグとする例を示している。
【0133】
電力変換装置の動作態様は、ゲート信号gQ1a,gQ2a及びゲート信号gQ1b,gQ2bの組み合わせに応じて変化する。
図7において、電力変換装置は“A”-“H”の8つの区間のゲート信号に応じた動作態様を備える。
【0134】
区間“A”の各ゲート信号gQ1a,gQ2a,gQ1b,gQ2bは、スイッチング素子Q1aをオンとし、スイッチング素子Q2aをオフとし、スイッチング素子Q1bをオフとし、スイッチング素子Q2bをオンとする。区間“B”では、ゲート信号gQ1a,gQ2a,gQ1b,gQ2bは、スイッチング素子Q1a,Q2a,Q1b,Q2bをそれぞれオン,オフ,オフ,オフとし、区間“C”では、ゲート信号gQ1a,gQ2a,gQ1b,gQ2bは、スイッチング素子Q1a,Q2a,Q1b,Q2bをそれぞれオン,オフ,オン,オフとし、区間“D”では、ゲート信号gQ1a,gQ2a,gQ1b,gQ2bは、スイッチング素子Q1a,Q2a,Q1b,Q2bをそれぞれオフ,オフ,オン,オフとし、区間“E”では、ゲート信号gQ1a,gQ2a,gQ1b,gQ2bは、スイッチング素子Q1a,Q2a,Q1b,Q2bをそれぞれオフ,オン,オン,オフとし、区間“F”では、ゲート信号gQ1a,gQ2a,gQ1b,gQ2bは、スイッチング素子Q1a,Q2a,Q1b,Q2bをそれぞれオフ,オン,オフ,オフとし、区間“G”では、ゲート信号gQ1a,gQ2a,gQ1b,gQ2bは、スイッチング素子Q1a,Q2a,Q1b,Q2bをそれぞれオフ,オン,オフ,オンとし、区間“H”では、ゲート信号gQ1a,gQ2a,gQ1b,gQ2bは、スイッチング素子Q1a,Q2a,Q1b,Q2bをそれぞれオフ,オフ,オフ,オンとする。
【0135】
ここで、区間“C”及び区間“G”は位相シフト区間であり、この位相シフト区間において出力電圧が発生する。位相シフト区間の両側にある、区間“B”,区間“D”,区間“F”,及び区間“H”は何れかのレグの2つのスイッチング素子が共にオフとなるデッドタイムの区間である。位相シフト区間の区間“C”及び区間“G”を除く区間“A”,区間“E”、及び区間“B”,区間“D”,区間“F”,及び区間“H”のデッドタイムの区間は回生動作が行われる区間である。
【0136】
さらに、区間“A”,区間“B”,区間“D”,区間“E”,区間“F”,及び区間“H”は2つの区間に分けられ、それぞれ区間“A1”及び区間“A1”、区間“B1”及び区間“B1”、区間“D1及び区間“D2”、区間“E1及び区間“E2”、区間“F1”及び区間“F2”、区間“H1”及び区間“H2”を備える。これにより、動作サイクルの一周期は14区間を備える。
【0137】
表1は、各区間におけるスイッチング素子のON/OFF状態、電圧変化、及び電流変化、上側D級増幅器1H及び下側D級増幅器の出力電圧Vamp1,Vamp2及び出力電流Iamp1,Iamp2、回生回路の入力電圧Vrgn及び電流Irgn、電力変換装置の出力電圧Vout及び出力電流Iout、及び回生状態を示している。表1中の太い実線で示した箇所は、スイッチング素子がオフからオンに切り替わる際における、補助電流及びスイッチング素子に流れる電流、及び補助回路の電流Irgnの変化を示している。
【0138】
【0139】
以下、各区間“A”-“H”の動作について
図8-
図21を用いて説明する。
(区間“A”)
区間“A”はIampの方向が異なる区間“A1”及び区間“A2”に分けられる。
図8は区間“A1”の動作例を示し、
図9は区間“A2”の動作例を示している。区間“A”において、スイッチング素子Q1a,Q2a,Q1b,Q2bはそれぞれオン,オフ,オフ,オンの状態である。
【0140】
(区間“A1”)
図8は、区間“A1”の動作例を示している。区間“A1”において、スイッチング素子Q1a,Q2a,Q1b,Q2bはそれぞれオン,オフ,オフ,オンの状態である。
【0141】
(a)スイッチング素子Q1a:上側D級増幅器1Hのハイサイドのスイッチング素子Q1aはオフからオンに切り替わる(
図7(a)中の“a1”)。スイッチング素子Q1aの寄生容量の電荷の放電は完了しているが、出力トランス2Hの一次コイルのインダクタンスのエネルギーを流し続けるため、スイッチング素子Q1aの寄生ダイオードを介して電流が流れる。スイッチング素子Q1aのオフからオンへの切り替えにおいて、スイッチング素子Q1aには前区間(H2)において放電電流が流れているため(
図7(b)中の“a2”)、変位電圧dv/dtの値が制限され変位電流di/dtが制限される。これにより、ゲート-ソース間電圧Vgsの上昇が抑制され、同レグ内の他方のスイッチング素子Q2aの誤点弧が防止される(
図7(c)中において破線で示すパルス信号)。
(b)スイッチング素子Q2a:上側D級増幅器1Hのローサイドのスイッチング素子Q2aはオフである。スイッチング素子Q2aの寄生容量はVin/2で充電が完了している。
(c)スイッチング素子Q1b:下側D級増幅器1Lのハイサイドのスイッチング素子Q1bはオフである。スイッチング素子Q1bの寄生容量はVin/2で充電が完了している。
(d)スイッチング素子Q2b:下側D級増幅器1Lのハイサイドのスイッチング素子Q1bはオンである。出力トランス2Lの一次コイルのインダクタンスのエネルギーを流し続けるため、スイッチング素子Q2bの寄生ダイオードを介して電流が流れる。
【0142】
(e)回生トランス6b:上側D級増幅器1HのVamp1は、ハイサイドのスイッチング素子Q1aとローハイサイドのスイッチング素子Q2aの接続点の電位Vinと、コンデンサ分圧器21Hの中点電位Vin/2との電位差からVin/2である。一方、下側D級増幅器1LのVamp2は、ハイサイドのスイッチング素子Q1bとローハイサイドのスイッチング素子Q2bの接続点の電位0と、コンデンサ分圧器21Lの中点電位Vin/2との電位差からVin/2である。これにより、Vamp1とVamp2との間の電位差に電位差が生じ、回生トランス6bの入力端に入力電圧Vrgnが発生し、電流Irgnが流れる。
(f)出力:上側D級増幅器1Hの出力電圧Vamp1と下側D級増幅器1Lの出力電圧Vamp2の電圧方向は互いに逆方向であるため、出力電圧Voutは発生しない。
(g)回生:回生回路6の回生トランス6bには電流Irgnが流れ、回生動作が行われる。
【0143】
(区間“A2”)
図9は、区間“A2”の動作例を示している。区間“A2”において、スイッチング素子Q1a,Q2a,Q1b,Q2bはそれぞれオン,オフ,オフ,オンの状態である。
【0144】
(a)スイッチング素子Q1a:上側D級増幅器1Hのハイサイドのスイッチング素子Q1aはオンである。オン状態のスイッチング素子Q1aに電流が流れる。スイッチング素子はMOSトランジスタを用いることができるため、
図9ではスイッチング素子Q1aの電流をMOS電流の表記で示している。
(b)スイッチング素子Q2a:上側D級増幅器1Hのローサイドのスイッチング素子Q2aはオフである。スイッチング素子Q2aの寄生容量はVin/2で充電が完了している。
(c)スイッチング素子Q1b:下側D級増幅器1Lのハイサイドのスイッチング素子Q1bはオフである。スイッチング素子Q1bの寄生容量はVin/2で充電が完了している。
(d)スイッチング素子Q2b:下側D級増幅器1Lのハイサイドのスイッチング素子Q1bはオンである。オン状態のスイッチング素子Q2bに電流が流れる。
【0145】
(e)回生トランス6b:上側D級増幅器1HのVamp1は、ハイサイドのスイッチング素子Q1aとローハイサイドのスイッチング素子Q2aの接続点の電位Vinと、コンデンサ分圧器21Hの中点電位Vin/2との電位差からVin/2である。一方、下側D級増幅器1LのVamp2は、ハイサイドのスイッチング素子Q1bとローハイサイドのスイッチング素子Q2bの接続点の電位0と、コンデンサ分圧器21Lの中点電位Vin/2との電位差からVin/2である。これにより、Vamp1とVamp2との間の電位差に電位差が生じ、回生トランス6bの入力端に入力電圧Vrgnが発生し、電流Irgnが流れる。
(f)出力:上側D級増幅器1Hの出力電圧Vamp1と下側D級増幅器1Lの出力電圧Vamp2の電圧方向は互いに逆方向であるため、出力電圧Voutは発生しない。
(g)回生:回生回路6の回生トランス6bには電流Irgnが流れ、回生動作が行われる。
【0146】
(区間“B”)
区間“B”はVamp及びIampの方向が異なる区間“B1”及び区間“B2”に分けられる。
図10は区間“B1”の動作例を示し、
図11は区間“B2”の動作例を示している。区間“B”において、スイッチング素子Q1a,Q2a,Q1b,Q2bはそれぞれオン,オフ,オフ,オフの状態である。なお、区間“B”はスイッチング素子Q1bとスイッチング素子Q2bが共にオフとなるデッドタイムの区間となる。
【0147】
(区間“B1”)
(a)スイッチング素子Q1a:上側D級増幅器1Hのハイサイドのスイッチング素子Q1aはオンである。オン状態のスイッチング素子Q1aに電流(
図10ではMOS電流の表記で示している。)が流れる。
(b)スイッチング素子Q2a:上側D級増幅器1Hのローサイドのスイッチング素子Q2aはオフである。スイッチング素子Q2aの寄生容量はVin/2で充電が完了している。
(c)スイッチング素子Q1b:下側D級増幅器1Lのハイサイドのスイッチング素子Q1bはオフである。ローサイドのスイッチング素子Q2bはオフとなったが、出力トランス2Lの一次コイルのインダクタンスのエネルギーを流し続けるため、スイッチング素子Q1bの寄生容量にチャージされていた電荷の放電が始まる。
(d)スイッチング素子Q2b:下側D級増幅器1Lのローサイドのスイッチング素子Q2bはオンからオフに切り替わるため、ハイサイドのスイッチング素子Q1bの放電電流と電流Irgnによってスイッチング素子Q2bの寄生容量の電荷の充電が始まる。
【0148】
(e)回生トランス6b:上側D級増幅器1HのVamp1は、ハイサイドのスイッチング素子Q1aとローハイサイドのスイッチング素子Q2aの接続点の電位Vinと、コンデンサ分圧器21Hの中点電位Vin/2との電位差からVin/2である。一方、下側D級増幅器1LのVamp2は、ハイサイドのスイッチング素子Q1bとローハイサイドのスイッチング素子Q2bの接続点において0からVin/2に向かって上昇する電位と、コンデンサ分圧器21Lの中点電位Vin/2との電位差から-Vin/2から0に変化する。これにより、Vamp1とVamp2との間の電位差に電位差が生じ、回生トランス6bの入力端に入力電圧Vrgnが発生し、電流Irgnが流れる。
(f)出力:上側D級増幅器1Hの出力電圧Vamp1と下側D級増幅器1Lの出力電圧Vamp2から出力電圧Voutは上昇し、出力電流Ioutが発生する。
(g)回生:回生回路6の回生トランス6bには電流Irgnが流れ、回生動作が行われる。
【0149】
(区間“B2”)
(a)スイッチング素子Q1a:上側D級増幅器1Hのハイサイドのスイッチング素子Q1aはオンである。オン状態のスイッチング素子Q1aに電流(
図11ではMOS電流の表記で示している。)が流れる。
(b)スイッチング素子Q2a:上側D級増幅器1Hのローサイドのスイッチング素子Q2aはオフである。スイッチング素子Q2aの寄生容量はVin/2で充電が完了している。
(c)スイッチング素子Q1b:下側D級増幅器1Lのハイサイドのスイッチング素子Q1bはオフである。区間“B2”で開始したスイッチング素子Q1bの寄生容量にチャージされていた電荷の放電が完了する。
(d)スイッチング素子Q2b:ハイサイドのスイッチング素子Q1bの放電電流と電流Irgnによって、下側D級増幅器1Lのローサイドのスイッチング素子Q2bの寄生容量の電荷の充電が完了する。
電流Irgnを補助電流として、スイッチング素子Q1bとスイッチング素子Q2bの寄生容量の放電/充電動作を補助することにより(
図7(f)中の“c2”
図7(k)中の“c3”)、ドレイン-ソース間の変位電圧dv/dtを抑制し、区間“B2”と区間“C”との間のゲートの誤点弧動作を防ぐ。
【0150】
(e)回生トランス6b:上側D級増幅器1HのVamp1は、ハイサイドのスイッチング素子Q1aとローハイサイドのスイッチング素子Q2aの接続点の電位Vinと、コンデンサ分圧器21Hの中点電位Vin/2との電位差からVin/2である。一方、下側D級増幅器1LのVamp2は、ハイサイドのスイッチング素子Q1bとローハイサイドのスイッチング素子Q2bの接続点において0からVin/2に向かって上昇する電位と、コンデンサ分圧器21Lの中点電位Vin/2との電位差から、0からVin/2に変化する。これにより、Vamp1とVamp2との間の電位差に電位差が生じ、回生トランス6bの入力端に入力電圧Vrgnが発生し、電流Irgnが流れる。
(f)出力:上側D級増幅器1Hの出力電圧Vamp1と下側D級増幅器1Lの出力電圧Vamp2から出力電圧Voutは上昇し、出力電流Ioutが発生する。
(g)回生:回生回路6の回生トランス6bには電流Irgnが流れ、回生動作が行われる。
【0151】
(区間“C”)
図12は、区間“C”の動作例を示している。区間“C”において、スイッチング素子Q1a,Q2a,Q1b,Q2bはそれぞれオン,オフ,オン,オフの状態である。
(a)スイッチング素子Q1a:上側D級増幅器1Hのハイサイドのスイッチング素子Q1aはオンである。オン状態のスイッチング素子Q1aに電流(
図12ではMOS電流の表記で示している。)が流れる。
(b)スイッチング素子Q2a:上側D級増幅器1Hのローサイドのスイッチング素子Q2aはオフである。スイッチング素子Q2aの寄生容量はVin/2で充電が完了している。
(c)スイッチング素子Q1b:下側D級増幅器1Lのハイサイドのスイッチング素子Q1bはオフからオンに切り替わる(
図7(e)中の“c1”)。スイッチング素子Q1bの寄生容量の電荷の放電は完了しているが、出力トランス2Lの一次コイルのインダクタンスのエネルギーを流し続けるため、スイッチング素子Q1bの寄生ダイオードを介して電流が流れる。
【0152】
スイッチング素子Q1bのオフからオンへの切り替えにおいて、スイッチング素子Q1bには前区間(B2)において放電電流が流れているため(
図7(f)中の“c2”)、変位電圧dv/dtの値が制限され変位電流di/dtが制限される。これにより、ゲート-ソース間電圧Vgsの上昇が抑制され、同レグ内の他方のスイッチング素子Q2bの誤点弧が防止される(
図7(g)中において破線で示すパルス信号)。
(d)スイッチング素子Q2b:下側D級増幅器1Lのローサイドのスイッチング素子Q2bはオフである。スイッチング素子Q2bの寄生容量はVin/2で充電が完了している。
【0153】
(e)回生トランス6b:上側D級増幅器1HのVamp1は、ハイサイドのスイッチング素子Q1aとローハイサイドのスイッチング素子Q2aの接続点の電位Vinと、コンデンサ分圧器21Hの中点電位Vin/2との電位差からVin/2である。一方、下側D級増幅器1LのVamp2は、ハイサイドのスイッチング素子Q1bとローハイサイドのスイッチング素子Q2bの接続点の電位Vinと、コンデンサ分圧器21Lの中点電位Vin/2との電位差からVin/2である。これにより、Vamp1とVamp2との間の電位差に電位差が生じないため、回生トランス6bの入力端に入力電圧Vrgnは発生せず、入力電圧Vrgnによる電流Irgnは流れない。
(f)出力:上側D級増幅器1Hの出力電圧Vamp1と下側D級増幅器1Lの出力電圧Vamp2から出力電圧Voutが発生する。
(g)回生:回生回路6の回生トランス6bには、Vamp1とVamp2の電位差による電流は流れないが、回生トランス6bのリーケージインダクタンスのエネルギーによって電流Irgnが流れ(
図7(k)中の“c3”)、回生動作が行われる。
【0154】
(区間“D”)
区間“D”はIampの方向が異なり、Vampの符号が変化する区間“D1”と区間“D2”に分けられる。
図13は、区間“D1”の動作例を示し、
図14は、区間“D2”の動作例を示している。区間“D”において、スイッチング素子Q1a,Q2a,Q1b,Q2bはそれぞれオフ,オフ,オン,オフの状態である。なお、区間“D”はスイッチング素子Q1bとスイッチング素子Q2bが共にオフとなるデッドタイムの区間となる。
【0155】
(区間“D1”)
図13は、区間“D1”の動作例を示している。区間“D1”において、スイッチング素子Q1a,Q2a,Q1b,Q2bはそれぞれオフ,オフ,オン,オフの状態である。
【0156】
(a)スイッチング素子Q1a:上側D級増幅器1Hのハイサイドのスイッチング素子Q1aはオンからオフに切り替わる。
上側D級増幅器1Hのハイサイドのスイッチング素子Q1aはオンからオフに切り替わるため、ローサイドのスイッチング素子Q2aの放電電流と電流Irgnによってスイッチング素子Q1aの寄生容量の電荷の充電が始まる。
(b)上側D級増幅器1Hのローサイドのスイッチング素子Q2aはオフである。ハイサイドのスイッチング素子Q1aはオフとなったが、出力トランス2Hの一次コイルのインダクタンスのエネルギーを流し続けるため、スイッチング素子Q2aの寄生容量にチャージされていた電荷の放電が始まる。
(c)スイッチング素子Q1b:下側D級増幅器1Lのハイサイドのスイッチング素子Q1bはオンである。区間“C”に引き続いて、出力トランス2Lの一次コイルのインダクタンスのエネルギーを流し続けるため、スイッチング素子Q1bの寄生ダイオードを介して電流が流れる。
(d)スイッチング素子Q2b:下側D級増幅器1Lのローサイドのスイッチング素子Q2bはオフである。スイッチング素子Q2bの寄生容量はVin/2で充電が完了している。
【0157】
(e)回生トランス6b:ハイサイドのスイッチング素子Q1aとローハイサイドのスイッチング素子Q2aの接続点の電位はVinからVin/2に変化する。この電位変化と、コンデンサ分圧器21Hの中点電位Vin/2との電位差から、上側D級増幅器1HのVamp1はVin/2から0に変化する。
一方、下側D級増幅器1LのVamp2は、ハイサイドのスイッチング素子Q1bとローハイサイドのスイッチング素子Q2bの接続点の電位Vinと、コンデンサ分圧器21Lの中点電位Vin/2との電位差からVin/2である。これにより、Vamp1とVamp2との間の電位差に電位差が生じ、回生トランス6bの入力端に入力電圧Vrgnが発生し、電流Irgnが流れる。
(f)出力:上側D級増幅器1Hの出力電圧Vamp1と下側D級増幅器1Lの出力電圧Vamp2から出力電圧Voutが発生する。出力電圧VoutはVinから下降する。
(g)回生:回生回路6の回生トランス6bには電流Irgnが流れ、回生動作が行われる。
【0158】
(区間“D2”)
図14は、区間“D2”の動作例を示している。区間“D2”において、スイッチング素子Q1a,Q2a,Q1b,Q2bはそれぞれオン,オフ,オン,オフの状態である。
【0159】
(a)スイッチング素子Q1a:上側D級増幅器1Hのハイサイドのスイッチング素子Q1aはオンからオフに切り替わる。
ローサイドのスイッチング素子Q2aの放電電流と電流Irgnによって、上側D級増幅器1Hのハイサイドのスイッチング素子Q1aの寄生容量の電荷の充電が行われる。
電流Irgnを補助電流として、スイッチング素子Q1aとスイッチング素子Q2aの寄生容量の放電/充電動作を補助することにより(
図7(d)中の“b2”
図7(k)中の“b3”)、ドレイン-ソース間の変位電圧dv/dtを抑制し、区間“D2”と区間“E1”との間のゲートの誤点弧動作を防ぐ。
(b)スイッチング素子Q2a:上側D級増幅器1Hのハイサイドのスイッチング素子Q2aはオフである。スイッチング素子Q2aには、区間“D1”に引き続いて、出力トランス2Hの一次コイルのインダクタンスのエネルギーが流し続けられ、スイッチング素子Q2aの寄生容量にチャージされていた電荷の放電が行われる。
(c)スイッチング素子Q1b:下側D級増幅器1Lのハイサイドのスイッチング素子Q1bはオンである。区間“D1”に引き続いて、出力トランス2Lの一次コイルのインダクタンスのエネルギーを流し続けるため、スイッチング素子Q1bの寄生ダイオードを介して電流が流れる。
(d)スイッチング素子Q2b:下側D級増幅器1Lのローサイドのスイッチング素子Q2bはオフである。スイッチング素子Q2bの寄生容量はVin/2で充電が完了している。
【0160】
(e)回生トランス6b:ハイサイドのスイッチング素子Q1aとローハイサイドのスイッチング素子Q2aの接続点の電位はVin/2から0に変化する。この電位変化と、コンデンサ分圧器21Hの中点電位Vin/2との電位差から、上側D級増幅器1HのVamp1は0から-Vin/2に変化する。
一方、下側D級増幅器1LのVamp2は、ハイサイドのスイッチング素子Q1bとローハイサイドのスイッチング素子Q2bの接続点の電位Vinと、コンデンサ分圧器21Lの中点電位Vin/2との電位差からVin/2である。これにより、Vamp1とVamp2との間の電位差に電位差が生じ、回生トランス6bの入力端に入力電圧Vrgnが発生し、電流Irgnが流れる。
(f)出力:上側D級増幅器1Hの出力電圧Vamp1と下側D級増幅器1Lの出力電圧Vamp2から出力電圧Voutが発生する。出力電圧VoutはVin/2から0に向かって下降する。
(g)回生:回生回路6の回生トランス6bには電流Irgnが流れ(
図7(k)中の“b3”)、回生動作が行われる。
【0161】
(区間“E”)
区間“E”はIampの方向が異なる区間“E1”及び区間“E2”に分けられる。
図15は区間“E1”の動作例を示し、
図16は区間“E2”の動作例を示している。区間“E”において、スイッチング素子Q1a,Q2a,Q1b,Q2bはそれぞれオフ,オン,オン,オフの状態である。
【0162】
(区間“E1”)
図15は、区間“E1”の動作例を示している。区間“E1”において、スイッチング素子Q1a,Q2a,Q1b,Q2bはそれぞれオフ,オン,オン,オフの状態である。
【0163】
(a)スイッチング素子Q1a:上側D級増幅器1Hのハイサイドのスイッチング素子Q1aはオフである。区間“D2”の充電動作に続いて、ローサイドのスイッチング素子Q2aの放電電流と電流Irgnによって、上側D級増幅器1Hのハイサイドのスイッチング素子Q1aの寄生容量の電荷の充電が完了する。
(b)スイッチング素子Q2a:上側D級増幅器1Hのローサイドのスイッチング素子Q2aはオフからオンに切り替わる(
図7(c)中の“b1”)。スイッチング素子Q1bの寄生容量の電荷の放電は完了しているが、出力トランス2Hの一次コイルのインダクタンスのエネルギーを流し続けるため、スイッチング素子Q2aの寄生ダイオードを介して電流が流れる。
スイッチング素子Q2aのオフからオンへの切り替えにおいて、スイッチング素子Q2aには前区間(D2)において放電電流が流れているため(
図7(d)中の“b2”)、変位電圧dv/dtの値が制限され変位電流di/dtが制限される。これにより、ゲート-ソース間電圧Vgsの上昇が抑制され、同レグ内の他方のスイッチング素子Q1aの誤点弧が防止される(
図7(a)中において破線で示すパルス信号)。
(c)スイッチング素子Q1b:下側D級増幅器1Lのハイサイドのスイッチング素子Q1bはオンである。区間“D2”に引き続いて、出力トランス2Lの一次コイルのインダクタンスのエネルギーを流し続けるため、スイッチング素子Q1bの寄生ダイオードを介して電流が流れる。
(d)スイッチング素子Q2b:下側D級増幅器1Lのローサイドのスイッチング素子Q2bはオフである。スイッチング素子Q2bの寄生容量はVin/2で充電が完了している。
【0164】
(e)回生トランス6b:ハイサイドのスイッチング素子Q1aとローハイサイドのスイッチング素子Q2aの接続点の電位は0である。この接続点の0電位と、コンデンサ分圧器21Hの中点電位Vin/2との電位差から、上側D級増幅器1HのVamp1は-Vin/2である。
一方、下側D級増幅器1LのVamp2は、ハイサイドのスイッチング素子Q1bとローハイサイドのスイッチング素子Q2bの接続点の電位Vinと、コンデンサ分圧器21Lの中点電位Vin/2との電位差からVin/2である。これにより、Vamp1とVamp2との間の電位差に電位差が生じ、回生トランス6bの入力端に入力電圧Vrgnが発生し、電流Irgnが流れる。
(f)出力:上側D級増幅器1Hの出力電圧Vamp1と下側D級増幅器1Lの出力電圧Vamp2の電圧方向は互いに逆方向であるため、出力電圧Voutは発生しない。
(g)回生:回生回路6の回生トランス6bには電流Irgnが流れ、回生動作が行われる。
【0165】
(区間“E2”)
図16は、区間“E2”の動作例を示している。区間“E2”において、スイッチング素子Q1a,Q2a,Q1b,Q2bはそれぞれオフ,オン,オン,オフの状態である。
【0166】
(a)スイッチング素子Q1a:上側D級増幅器1Hのハイサイドのスイッチング素子Q1aはオフである。スイッチング素子Q1aの寄生容量の電荷の充電は完了している。
(b)スイッチング素子Q2a:上側D級増幅器1Hのローサイドのスイッチング素子Q2aはオンである。出力トランス2Hの一次コイルのインダクタンスのエネルギーの転流動作が終了し、スイッチング素子Q2aに電流が流れる。
(c)スイッチング素子Q1b:下側D級増幅器1Lのハイサイドのスイッチング素子Q1bはオンである。出力トランス2Lの一次コイルのインダクタンスのエネルギーの転流動作が終了し、スイッチング素子Q1bに電流が流れる。
(d)スイッチング素子Q2b:下側D級増幅器1Lのローサイドのスイッチング素子Q2bはオフである。スイッチング素子Q2bの寄生容量はVin/2で充電が完了している。
【0167】
(e)回生トランス6b:ハイサイドのスイッチング素子Q1aとローハイサイドのスイッチング素子Q2aの接続点の電位は0である。この接続点の0電位と、コンデンサ分圧器21Hの中点電位Vin/2との電位差から、上側D級増幅器1HのVamp1は-Vin/2である。
一方、下側D級増幅器1LのVamp2は、ハイサイドのスイッチング素子Q1bとローハイサイドのスイッチング素子Q2bの接続点の電位Vinと、コンデンサ分圧器21Lの中点電位Vin/2との電位差からVin/2である。これにより、Vamp1とVamp2との間の電位差に電位差が生じ、回生トランス6bの入力端に入力電圧Vrgnが発生し、電流Irgnが流れる。
(f)出力:上側D級増幅器1Hの出力電圧Vamp1と下側D級増幅器1Lの出力電圧Vamp2の電圧方向は互いに逆方向であるため、出力電圧Voutは発生しない。
(g)回生:回生回路6の回生トランス6bには電流Irgnが流れ、回生動作が行われる。
【0168】
(区間“F”)
区間“F”はIampの方向が異なり、Vampの符号が変化する区間“D1”と区間“D2”に分けられる。
図17は区間“F1”の動作例を示し、
図18は区間“F2”の動作例を示している。区間“F”において、スイッチング素子Q1a,Q2a,Q1b,Q2bはそれぞれオフ,オン,オフ,オフの状態である。なお、区間“F”はスイッチング素子Q1bとスイッチング素子Q2bが共にオフとなるデッドタイムの区間となる。
【0169】
(区間“F1”)
図17は、区間“F1”の動作例を示している。区間“F1”において、スイッチング素子Q1a,Q2a,Q1b,Q2bはそれぞれオフ,オン,オフ,オフの状態である。
(a)スイッチング素子Q1a:上側D級増幅器1Hのハイサイドのスイッチング素子Q1aはオフである。スイッチング素子Q1aの寄生容量の電荷の充電は完了している。
(b)スイッチング素子Q2a:上側D級増幅器1Hのローサイドのスイッチング素子Q2aはオフからオンに切り替わる。オン状態のスイッチング素子Q1aに電流(
図12ではMOS電流の表記で示している。)が流れる。
(c)スイッチング素子Q1b:下側D級増幅器1Lのハイサイドのスイッチング素子Q1bはオンからオフに切り替わる。下側D級増幅器1Lのハイサイドのスイッチング素子Q1bはオンからオフに切り替わるため、ローサイドのスイッチング素子Q2bの放電電流と電流Irgnによってスイッチング素子Q1bの寄生容量の電荷の充電が始まる。
(d)スイッチング素子Q2b:下側D級増幅器1Lのローサイドのスイッチング素子Q2bはオフである。ハイサイドのスイッチング素子Q1bはオフとなったが、出力トランス2Lの一次コイルのインダクタンスのエネルギーを流し続けるため、スイッチング素子Q2bの寄生容量にチャージされていた電荷の放電が始まる。
【0170】
(e)回生トランス6b:ハイサイドのスイッチング素子Q1aとローハイサイドのスイッチング素子Q2aの接続点の電位は0である。この電位0と、コンデンサ分圧器21Hの中点電位Vin/2との電位差から、上側D級増幅器1HのVamp1は-Vin/2となる。
一方、ハイサイドのスイッチング素子Q1bとローハイサイドのスイッチング素子Q2bの接続点の電位はVinからVin/2に下降する。下側D級増幅器1LのVamp2は、接続点の電位とコンデンサ分圧器21Lの中点電位Vin/2との電位差から、VinからVin/2に変化する。
これにより、Vamp1とVamp2との間の電位差に電位差が生じ、回生トランス6bの入力端に入力電圧Vrgnが発生し、電流Irgnが流れる。
(f)出力:上側D級増幅器1Hの出力電圧Vamp1と下側D級増幅器1Lの出力電圧Vamp2から出力電圧Voutが発生する。出力電圧Voutは0から下降する。
(g)回生:回生回路6の回生トランス6bには電流Irgnが流れ、回生動作が行われる。
【0171】
(区間“F2”)
図18は、区間“F2”の動作例を示している。区間“F2”において、スイッチング素子Q1a,Q2a,Q1b,Q2bはそれぞれオフ,オン,オフ,オフの状態である。
(a)スイッチング素子Q1a:上側D級増幅器1Hのハイサイドのスイッチング素子Q1aはオフである。スイッチング素子Q1aの寄生容量の電荷の充電は完了している。
(b)スイッチング素子Q2a:上側D級増幅器1Hのローサイドのスイッチング素子Q2aはオンである。オン状態のスイッチング素子Q1aに電流(
図12ではMOS電流の表記で示している。)が流れる。
(c)スイッチング素子Q1b:下側D級増幅器1Lのハイサイドのスイッチング素子Q1bはオフである。ローサイドのスイッチング素子Q2bの放電電流と電流Irgnによってスイッチング素子Q1bの寄生容量の電荷の充電が行われる。
電流Irgnを補助電流として、スイッチング素子Q1bとスイッチング素子Q2bの寄生容量の放電/充電動作を補助することにより(
図7(h)中の“d2”
図7(k)中の“d3”、)、ドレイン-ソース間の変位電圧dv/dtを抑制し、区間“F2”と区間“G”との間のゲートの誤点弧動作を防ぐ。
(d)スイッチング素子Q2b:下側D級増幅器1Lのローサイドのスイッチング素子Q2bはオフである。ハイサイドのスイッチング素子Q1bはオフとなったが、出力トランス2Lの一次コイルのインダクタンスのエネルギーを流し続け、スイッチング素子Q2bの寄生容量にチャージされていた電荷の放電が完了する。
【0172】
(e)回生トランス6b:ハイサイドのスイッチング素子Q1aとローハイサイドのスイッチング素子Q2aの接続点の電位は0である。この電位0と、コンデンサ分圧器21Hの中点電位Vin/2との電位差から、上側D級増幅器1HのVamp1は-Vin/2となる。
一方、ハイサイドのスイッチング素子Q1bとローハイサイドのスイッチング素子Q2bの接続点の電位はVin/2から0に下降する。下側D級増幅器1LのVamp2は、接続点の電位とコンデンサ分圧器21Lの中点電位Vin/2との電位差から、0から-Vin/2に変化する。
これにより、Vamp1とVamp2との間の電位差に電位差が生じ、回生トランス6bの入力端に入力電圧Vrgnが発生し、電流Irgnが流れる。入力電圧Vrgnは0に向かって減少する。
(f)出力:上側D級増幅器1Hの出力電圧Vamp1と下側D級増幅器1Lの出力電圧Vamp2から出力電圧Voutが発生する。出力電圧Voutは-Vinとなる。
(g)回生:回生回路6の回生トランス6bには電流Irgnが流れ、回生動作が行われる。
【0173】
(区間“G”)
図19は、区間“G”の動作例を示している。区間“G”において、スイッチング素子Q1a,Q2a,Q1b,Q2bはそれぞれオフ,オン,オフ,オンの状態である。
(a)スイッチング素子Q1a:上側D級増幅器1Hのハイサイドのスイッチング素子Q1aはオフである。スイッチング素子Q1aの寄生容量はVin/2で充電が完了している。
(b)スイッチング素子Q2a:上側D級増幅器1Hのローサイドのスイッチング素子Q2aはオンである。オン状態のスイッチング素子Q2aに電流(
図19ではMOS電流の表記で示している。)が流れる。
(c)スイッチング素子Q1b:下側D級増幅器1Lのハイサイドのスイッチング素子Q1bはオフである。スイッチング素子Q1bの寄生容量はVin/2で充電が完了している。
(d)スイッチング素子Q2b:下側D級増幅器1Lのローサイドのスイッチング素子Q2bはオフからオンに切り替わる(
図7(g)中の“d1”)。スイッチング素子Q1bの寄生容量の電荷の放電は完了しているが、出力トランス2Lの一次コイルのインダクタンスのエネルギーを流し続けるため、スイッチング素子Q2bの寄生ダイオードを介して電流が流れる。
スイッチング素子Q2bのオフからオンへの切り替えにおいて、スイッチング素子Q2bには前区間(F2)において放電電流が流れているため(
図7(h)中の“d2”)、変位電圧dv/dtの値が制限され変位電流di/dtが制限される。これにより、ゲート-ソース間電圧Vgsの上昇が抑制され、同レグ内の他方のスイッチング素子Q1bの誤点弧が防止される(
図7(e)中において破線で示すパルス信号)。
【0174】
(e)回生トランス6b:上側D級増幅器1HのVamp1は、ハイサイドのスイッチング素子Q1aとローハイサイドのスイッチング素子Q2aの接続点の電位0と、コンデンサ分圧器21Hの中点電位Vin/2との電位差からVin/2である。一方、下側D級増幅器1LのVamp2は、ハイサイドのスイッチング素子Q1bとローハイサイドのスイッチング素子Q2bの接続点の電位0と、コンデンサ分圧器21Lの中点電位Vin/2との電位差からVin/2である。これにより、Vamp1とVamp2との間の電位差に電位差が生じないため、回生トランス6bの入力端に入力電圧Vrgnは発生せず、入力電圧Vrgnによる電流Irgnは流れない。
(f)出力:上側D級増幅器1Hの出力電圧Vamp1と下側D級増幅器1Lの出力電圧Vamp2から出力電圧Voutが発生する。出力電圧Voutは-Vinとなる。
(g)回生:回生回路6の回生トランス6bには、Vamp1とVamp2の電位差による電流は流れないが、回生トランス6bのリーケージインダクタンスのエネルギーによって電流Irgnが流れ(
図7(k)中の“d3”)、回生動作が行われる。
【0175】
(区間“H”)
区間“H”はIampの方向が異なり、Vampの符号が変化する区間“H1”と区間“H2”に分けられる。
図20は区間“H1”の動作例を示し、
図21は区間“H2”の動作例を示している。区間“H”において、スイッチング素子Q1a,Q2a,Q1b,Q2bはそれぞれオフ,オフ,オフ,オンの状態である。なお、区間“H”はスイッチング素子Q1bとスイッチング素子Q2bが共にオフとなるデッドタイムの区間となる。
【0176】
(区間“H1”)
図20は、区間“H1”の動作例を示している。区間“H1”において、スイッチング素子Q1a,Q2a,Q1b,Q2bはそれぞれオフ,オフ,オフ,オンの状態である。
(a)スイッチング素子Q1a:上側D級増幅器1Hのハイサイドのスイッチング素子Q1aはオフである。ローサイドのスイッチング素子Q2aはオフとなったが、出力トランス2Hの一次コイルのインダクタンスのエネルギーを流し続けるため、スイッチング素子Q1aの寄生容量にチャージされていた電荷の放電が始まる。
(b)スイッチング素子Q2a:上側D級増幅器1Hのローサイドのスイッチング素子Q2aはオンからオフに切り替わる。上側D級増幅器1Hのローサイドのスイッチング素子Q2aはオンからオフに切り替わるため、ハイサイドのスイッチング素子Q1aの放電電流と電流Irgnによってスイッチング素子Q2aの寄生容量の電荷の充電が始まる。
(c)スイッチング素子Q1b:下側D級増幅器1Lのハイサイドのスイッチング素子Q1bはオフである。スイッチング素子Q1bの寄生容量はVin/2で充電が完了している。
(d)スイッチング素子Q2b:下側D級増幅器1Lのローサイドのスイッチング素子Q2bはオンである。区間“G”に引き続いて、出力トランス2Lの一次コイルのインダクタンスのエネルギーを流し続けるため、スイッチング素子Q2bの寄生ダイオードを介して電流が流れる。
【0177】
(e)回生トランス6b:ハイサイドのスイッチング素子Q1aとローハイサイドのスイッチング素子Q2aの接続点の電位は0からVin/2に変化する。この電位変化と、コンデンサ分圧器21Hの中点電位Vin/2との電位差から、上側D級増幅器1HのVamp1は-Vin/2から0に変化する。
一方、下側D級増幅器1LのVamp2は、ハイサイドのスイッチング素子Q1bとローハイサイドのスイッチング素子Q2bの接続点の電位0と、コンデンサ分圧器21Lの中点電位Vin/2との電位差からVin/2である。これにより、Vamp1とVamp2との間の電位差に電位差が生じ、回生トランス6bの入力端に入力電圧Vrgnが発生し、電流Irgnが流れる。
(f)出力:上側D級増幅器1Hの出力電圧Vamp1と下側D級増幅器1Lの出力電圧Vamp2から出力電圧Voutが発生する。出力電圧Voutは-Vinから上昇する。
(g)回生:回生回路6の回生トランス6bには電流Irgnが流れ、回生動作が行われる。
【0178】
(区間“H2”)
図21は、区間“H2”の動作例を示している。区間“H2”において、スイッチング素子Q1a,Q2a,Q1b,Q2bはそれぞれオフ,オフ,オフ,オンの状態である。
(a)スイッチング素子Q1a:上側D級増幅器1Hのハイサイドのスイッチング素子Q1aはオフである。ローサイドのスイッチング素子Q2aはオフとなったが、出力トランス2Hの一次コイルのインダクタンスのエネルギーを流し続けるため、スイッチング素子Q1aの寄生容量にチャージされていた電荷の放電が始まる。
(b)スイッチング素子Q2a:上側D級増幅器1Hのローサイドのスイッチング素子Q2aはオフである。ハイサイドのスイッチング素子Q1aの放電電流と電流Irgnによってスイッチング素子Q2aの寄生容量の電荷の充電が行われる。
電流Irgnを補助電流として、スイッチング素子Q1aとスイッチング素子Q2aの寄生容量の放電/充電動作を補助することにより(
図7(b)中の“a2”
図7(k)中の“a3”)、ドレイン-ソース間の変位電圧dv/dtを抑制し、区間“H2”と区間“A1”との間のゲートの誤点弧動作を防ぐ。
(c)スイッチング素子Q1b:下側D級増幅器1Lのハイサイドのスイッチング素子Q1bはオフである。スイッチング素子Q1bの寄生容量はVin/2で充電が完了している。
(d)スイッチング素子Q2b:下側D級増幅器1Lのローサイドのスイッチング素子Q2bはオンである。区間“H1”に引き続いて、出力トランス2Lの一次コイルのインダクタンスのエネルギーを流し続けるため、スイッチング素子Q2bの寄生ダイオードを介して電流が流れる。
【0179】
(e)回生トランス6b:スイッチング素子Q1aの放電が完了することにより、ハイサイドのスイッチング素子Q1aとローハイサイドのスイッチング素子Q2aの接続点の電位はVinとなる。この接続点の電位Vinと、コンデンサ分圧器21Hの中点電位Vin/2との電位差から、上側D級増幅器1HのVamp1は0からVin/2に変化する。
一方、下側D級増幅器1LのVamp2は、ハイサイドのスイッチング素子Q1bとローハイサイドのスイッチング素子Q2bの接続点の電位0と、コンデンサ分圧器21Lの中点電位Vin/2との電位差からVin/2である。これにより、Vamp1とVamp2との間の電位差に電位差が生じ、回生トランス6bの入力端に入力電圧Vrgnが発生し、電流Irgnが流れる。
(f)出力:上側D級増幅器1Hの出力電圧Vamp1と下側D級増幅器1Lの出力電圧Vamp2から出力電圧Voutが発生する。出力電圧Voutは0に向かって上昇する。
(g)回生:回生回路6の回生トランス6bには電流Irgnが流れ、回生動作が行われる。
【0180】
[本発明の第2の構成例]
(第2の構成例の回路例)
本発明の第2の構成例を
図22-
図32を用いて説明する。第2の構成例は、上側D級増幅器及び下側D級増幅器がそれぞれ4つのスイッチング素子をフルブリッジ構成とし、電流補助回路として2つの回生回路が設けられる構成である。
【0181】
図22は、本発明の第2の構成例の回路例を示している。なお、ここでは上側D級増幅器、下側D級増幅器、及び回生回路の構成のみを示している。
【0182】
電力変換装置12において、上側D級増幅器1Hは、ハイサイドのスイッチング素子Q1aとローサイドのスイッチング素子Q2aの直列接続からなる進みレグ20Haと、ハイサイドのスイッチング素子Q3aとローサイドのスイッチング素子Q4aの直列接続からなる遅れレグ20Hbとによりフルブリッジ回路が構成される。なお、進みレグ20Haと遅れレグ20Hbは逆の関係としてもよい。
【0183】
進みレグ20Haを構成するスイッチング素子Q1aの一端は、直流電源(図示していない)の高電圧側に接続され、スイッチング素子Q2aの一端は直流電源(図示していない)の低電圧側に接続され、スイッチング素子Q1aとスイッチング素子Q2aの各他端は接続され、その接続点は上側D級増幅器1Hの一方の出力端であり、出力トランス2Hの1次側の一方に接続されている。
【0184】
遅れレグ20Hbを構成するスイッチング素子Q3aの一端は、直流電源(図示していない)の高電圧側に接続され、スイッチング素子Q4aの一端は直流電源(図示していない)の低電圧側に接続され、スイッチング素子Q3aとスイッチング素子Q4aの各他端は接続され、その接続点は上側D級増幅器1Hの一方の出力端であり、出力トランス2Hの1次側の他方に接続されている。
【0185】
進みレグ20Haの中点と出力トランス2Hとの間、及び遅れレグ20Hbの中点と出力トランス2Hとの間には出力トランス2Hの漏れインダクタンスが存在する。
【0186】
下側D級増幅器1Lは、ハイサイドのスイッチング素子Q1bとローサイドのスイッチング素子Q2bの直列接続からなる進みレグ20Laと、ハイサイドのスイッチング素子Q3bとローサイドのスイッチング素子Q4bの直列接続からなる遅れレグ20Lbとによりフルブリッジ回路が構成される。進みレグ20Laを構成するスイッチング素子Q1bの一端は直流電源(図示していない)の高電圧側に接続され、スイッチング素子Q2bの一端は直流電源(図示していない)の低電圧側に接続され、スイッチング素子Q1bとスイッチング素子Q2bの各他端は接続され、その接続点は下側D級増幅器1Lの一方の出力端であり、出力トランス2Lの1次側の一方に接続されている。
【0187】
遅れレグ20Lbを構成するスイッチング素子Q3bの一端は、直流電源(図示していない)の高電圧側に接続され、スイッチング素子Q4bの一端は直流電源(図示していない)の低電圧側に接続され、スイッチング素子Q3bとスイッチング素子Q4bの接続点は下側D級増幅器1Lの一方の出力端であり、出力トランス2Lの1次側の一方に接続されている。
【0188】
遅れレグ20Lbの中点と出力トランス2Lとの間、及び進みレグ20Laの各他端は接続され、その接続点と出力トランス2Lとの間には出力トランス2Lの漏れインダクタンスが存在する。
【0189】
回生回路6は、第1回生回路6αと第2回生回路6βの2つの回生回路を備え、取り込んだ補助電流の電力を回生電力として直流電源(図示していない)に回生する。第1回生回路6αは回生整流回路6αaと回生トランス6αbを備え、第2回生回路6βは回生整流回路6βaと回生トランス6βbを備える。
【0190】
回生トランス6αbは、1次側は上側D級増幅器1Hの遅れレグ20Hbの中点の出力端と下側D級増幅器1Lの遅れレグ20Lbの中点の出力端との間に接続され、2次側は第1回生回路6αの回生整流回路6αaに接続される。一方、回生トランス6βbは、1次側は上側D級増幅器1Hの進みレグ20Haの中点の出力端と下側D級増幅器1Lの進みレグ20Laの中点の出力端との間に接続され、2次側は第2回生回路6βの回生整流回路6βaに接続される。
【0191】
回生整流回路6αaは、回生トランス6αbの2次側の交流電圧を整流して回生電圧を生成する。回生整流回路6βaは回生トランス6βbの2次側の交流電圧を整流して回生電圧を生成する。
【0192】
上側D級増幅器1Hと下側D級増幅器1Lとの電圧差に基づいて、回生トランス6αb及び回生トランス6βbの1次側に電流が流れる。回生トランス6αb及び回生トランス6βbは、2次側の交流電圧をそれぞれ回生整流回路6αa及び回生整流回路6βaに送る。回生トランス6αb,6βbの巻き線比は、ゲート位相差θが0degの時の等価回路がZVS(零電圧スイッチング)の条件を満たすように設計する。
【0193】
回生整流回路6αa,6βaは、ダイオードブリッジ回路6αa1と直流電源側に接続されるLC平滑回路6a2、及びダイオードブリッジ回路6βa1と直流電源側に接続されるLC平滑回路6a2により構成され、それぞれ回生トランス6αb,6βbの出力端に接続される。回生整流回路6αa,6βaは、LC平滑回路6a2を共通して備える。
【0194】
回生トランス6αbの2次側の交流電圧は、ダイオードブリッジ回路6αa1で整流された後、LC平滑回路6a2により平滑化された回生電圧となり、回生トランス6βbの2次側の交流電圧は、ダイオードブリッジ回路6βa1で整流された後、LC平滑回路6a2により平滑化された回生電圧となる。
【0195】
回生回路6は、補助電流の電力を回生電力として直流電源に回生することにより、電力変換装置の変換効率を高めることができる。
【0196】
(第2の構成例の動作例)
電力変換装置において、第2の構成例は、上側D級増幅器1Hのスイッチング素子Q1a-Q4aを駆動するゲート信号gQ1a-gQ4a、及び下側D級増幅器1Lのスイッチング素子Q1b-Q4bを駆動するゲート信号gQ1b-gQ4bの組み合わせに応じて動作する。第2の構成例の動作態様は、第1の構成例と同様に、区間“A”-区間“H”の8つの区間のゲート信号の組み合わせに応じた動作態様を備える。
【0197】
なお、第1の構成例の動作態様では、区間“A”、区間“B”,区間“D”,区間“E”、区間“F”,及び区間“H”の各区間は2つの区間に分けて説明しているが、第2の構成例の動作態様では、これらの区間内において電圧Vrgn及び電流Irgnに変化は無いため、2つの区間に分けることなく1つの区間として説明する。
【0198】
第2の構成例の動作例について
図23,
図24の信号図を用いて説明する。
上側D級増幅器1Hの信号図:
図23(a),
図23(i)は、上側D級増幅器1Hの進みレグ20Haの上アーム側のハイサイドのスイッチング素子Q1aについて、ゲート信号gQ1a、及び電圧VQ1aの波形,電流IQ1aの波形を示している。
図23(b),
図23(j)は、上側D級増幅器1Hの進みレグ20Haの下アーム側のローサイドのスイッチング素子Q2aについて、ゲート信号gQ2a、及び電圧VQ2a,電流IQ2aを示している。
図23(c),
図21(k)は、上側D級増幅器1Hの遅れレグ20Hbの上アーム側のハイサイドのスイッチング素子Q3aについて、ゲート信号gQ3a、及び電圧VQ3aの波形,電流IQ3aの波形を示している。
図21(d),
図21(h)は、上側D級増幅器1Hの遅れレグ20Hbの下アーム側のローサイドのスイッチング素子Q4aについてゲート信号gQ4a、及び電圧VQ4aの波形,電流IQ4aの波形を示している。
【0199】
下側D級増幅器1Lの信号図:
図23(e),
図23(m)は、下側D級増幅器1Lの進みレグ20Laの上アーム側のハイサイドのスイッチング素子Q1bについて、ゲート信号gQ1b、及び電圧VQ1bの波形,電流IQ1bの波形を示している。
図23(f),
図23(n)は、下側D級増幅器1Lの進みレグ20Laの下アーム側のローサイドのスイッチング素子Q2bについて、ゲート信号gQ2b、及び電圧VQ2b,電流IQ2bを示している。
図23(g),
図23(o)は、下側D級増幅器1Lの遅れレグ20Lbの下アーム側のハイサイドのスイッチング素子Q3bについて、ゲート信号gQ3b、及び電圧VQ3bの波形,電流IQ3bの波形を示している。
図23(h),
図23(p)は、下側D級増幅器1Lの遅れレグ20Lbの下アーム側のローサイドのスイッチング素子Q4bについてゲート信号gQ4b、及び電圧VQ4b の波形,電流IQ4bの波形を示している。
【0200】
図24(a)-
図24(b)は、上側D級増幅器1HのVamp1、Iamp、及び下側D級増幅器1LのVamp2、Iamp2を示している。
図24(c)は、第1回生回路6αの回生回路の入力電圧Vrgn1及び電流Irgn1を示し、
図21(d)は、第2回生回路6βの入力電圧Vrgn2及び電流Irgn2を示しており。なお、入力電圧Vrgn1及び電流Irgn1は回生トランス6αbの一次側電圧及び一次側電流に相当し、入力電圧Vrgn2及び電流Irgn2は回生トランス6βbの一次側電圧及び一次側電流に相当する。
図24(e)は出力電圧Vout及び出力電流Ioutを示している。
【0201】
なお、ここでは、上側D級増幅器1Hにおいて、ハイサイドのスイッチング素子Q1a及びローサイドのスイッチング素子Q2aが構成するレグを進みレグ20Haとし、ハイサイドのスイッチング素子Q3a及びローサイドのスイッチング素子Q4aが構成するレグを遅れレグ20Hbとしている。また、下側D級増幅器1Lにおいて、ハイサイドのスイッチング素子Q1b及びローサイドのスイッチング素子Q2bが構成するレグを進みレグ20Laとし、ハイサイドのスイッチング素子Q3b及びローサイドのスイッチング素子Q4bが構成するレグを遅れレグ20Lbとしている。また、
図23(i)-
図23(p)、及び
図24において、実線は電圧波形を示し、破線は電流波形を示している。
【0202】
以下、上側D級増幅器1Hのスイッチング素子Q1a―スイッチング素子Q4aがオフからオンへの切り替わり、及び下側D級増幅器1Lのスイッチング素子Q1b―スイッチング素子Q4bがオフからオンへの切り替わる際の動作について説明する。
【0203】
(ゲート信号gQ2a,gQ3aの切り替わり時点の動作)
上側D級増幅器1Hのスイッチング素子Q2a及びスイッチング素子Q3aに印加されるゲート信号gQ2a及びゲート信号gQ3aが、オフからオンへの切り替わる際の動作について説明する。この切り替え動作は
図23中の区間“B”から区間“C”に切り替わる状態に対応している。
【0204】
区間“B”において、上側D級増幅器1HのVamp1(
図24(a)の“a15”)と下側D級増幅器1LのVamp2(
図24(b)の“a16”)との電圧差により、第1回生回路6αには入力電圧Vrgn1及び電流Irgn1(
図24(c)の“a17”)が発生し、第2回生回路6βには入力電圧Vrgn2及び電流Irgn2(
図24(d)の“a18”)が発生する。
【0205】
(電流Irgn1の作用)
電流Irgn1は、スイッチング素子Q3aの寄生容量Cdsを放電する補助電流として作用する(
図23(l)の“a14”)。この補助電流によりスイッチング素子Q3aに発生する変位電圧dv/dtは抑制される。変位電圧dv/dtが抑制されることにより変位電流di/dtが抑制され、電流IQ3aの変動量は抑制される。電流IQ3aの変動量が抑制されることにより、同一レグ内のローサイドのスイッチング素子Q4aのゲート-ソース電圧Vgsの電圧上昇が抑制され、誤点弧が抑制される。
図23(d)のゲート信号gQ4aにおいて破線で示した信号波形は、変位電流di/dtにより誘起される誤点弧信号が抑制される状態を示している。
【0206】
(電流Irgn2の作用)
電流Irgn2はスイッチング素子Q2aの寄生容量Cdsを充電する補助電流として作用する(
図23(i)の“a13”)。
この補助電流により、スイッチング素子Q2aに発生する変位電圧dv/dtは抑制される。変位電圧dv/dtが抑制されることにより変位電流di/dtが抑制され、電流IQ2aの変動量は抑制される。電流IQ2aの変動量が抑制されることにより、同一レグ内のハイサイドのスイッチング素子Q1aのゲート-ソース電圧Vgsの電圧上昇が抑制され、誤点弧が抑制される。
図23(a)のゲート信号gQ1aにおいて破線で示した信号波形は、変位電流di/dtにより誘起される誤点弧信号が抑制される状態を示している。
【0207】
(ゲート信号gQ1a,gQ4aの切り替わり時点の動作)
上側D級増幅器1Hのスイッチング素子Q1a及びスイッチング素子Q4aに印加されるゲート信号gQ1a及びゲート信号gQ4aが、オフからオンへの切り替わる際の動作について説明する。この切り替え動作は、
図23中の区間“F”から区間“G”に切り替わる状態に対応している。
【0208】
区間“F”において、上側D級増幅器1HのVamp1(
図24(a)の“c15”)と下側D級増幅器1LのVamp2(
図24(b)の“c16”)との電圧差により、第1回生回路6αには入力電圧Vrgn1及び電流Irgn1(
図24(c)の“c17”)が発生し、第2回生回路6βには入力電圧Vrgn2及び電流Irgn2(
図24(d)の“c18”)が発生する。
【0209】
(電流Irgn1の作用)
電流Irgn1は、スイッチング素子Q4aの寄生容量Cdsを放電する補助電流として作用する(
図23(l)の“c14”)。
この補助電流によりスイッチング素子Q4aに発生する変位電圧dv/dtは抑制される。変位電圧dv/dtが抑制されることにより変位電流di/dtが抑制され、電流IQ4aの変動量は抑制される。電流IQ4aの変動量が抑制されることにより、同一レグ内のハイサイドのスイッチング素子Q3aのゲート-ソース電圧Vgsの電圧上昇が抑制され、誤点弧が抑制される。
図23(c)のゲート信号gQ3aにおいて破線で示した信号波形は、変位電流di/dtにより誘起される誤点弧信号が抑制される状態を示している。
【0210】
(電流Irgn2の作用)
電流Irgn2は、スイッチング素子Q1aの寄生容量Cdsを放電する補助電流として作用する(
図23(i)の“c13”)。
この補助電流によりスイッチング素子Q1aに発生する変位電圧dv/dtは抑制される。変位電圧dv/dtが抑制されることにより変位電流di/dtが抑制され、電流IQ2aの変動量は抑制される。電流IQ1aの変動量が抑制されることにより、同一レグ内のハイサイドのスイッチング素子Q2aのゲート-ソース電圧Vgsの電圧上昇が抑制され、誤点弧が抑制される。
図23(b)のゲート信号gQ2aにおいて破線で示した信号波形は、変位電流di/dtにより誘起される誤点弧信号が抑制される状態を示している。
【0211】
(ゲート信号gQ1b,gQ4bの切り替わり時点の動作)
下側D級増幅器1Lのスイッチング素子Q1b及びスイッチング素子Q4bに印加されるゲート信号gQ1b及びゲート信号gQ4bが、オフからオンへの切り替わる際の動作について説明する。この切り替え動作は
図23中の区間“D”から区間“E”に切り替わる状態に対応している。
【0212】
区間“D”において、上側D級増幅器1HのVamp1(
図24(a)の“b15”)と下側D級増幅器1LのVamp2(
図24(b)の“b16”)との電圧差により、第1回生回路6αには入力電圧Vrgn1及び電流Irgn1(
図24(c)の“b17”)が発生し、第2回生回路6βには入力電圧Vrgn2及び電流Irgn2(
図24(d)の“b18”)が発生する。
【0213】
(電流Irgn1の作用)
電流Irgn1は、スイッチング素子Q1bの寄生容量Cdsを放電する補助電流として作用する(
図23(m)の“b13”)。
この補助電流によりスイッチング素子Q1bに発生する変位電圧dv/dtは抑制される。変位電圧dv/dtが抑制されることにより変位電流di/dtが抑制され、電流IQ1bの変動量は抑制される。電流IQ1bの変動量が抑制されることにより、同一レグ内のハイサイドのスイッチング素子Q2bのゲート-ソース電圧Vgsの電圧上昇が抑制され、誤点弧が抑制される。
図23(f)のゲート信号gQ2bにおいて破線で示した信号波形は、変位電流di/dtにより誘起される誤点弧信号が抑制される状態を示している。
【0214】
(電流Irgn2の作用)
電流Irgn2は、スイッチング素子Q4bの寄生容量Cdsを放電する補助電流として作用する(
図23(p)の“b14”)。
この補助電流によりスイッチング素子Q4bに発生する変位電圧dv/dtは抑制される。変位電圧dv/dtが抑制されることにより変位電流di/dtが抑制され、電流IQ4bの変動量は抑制される。電流IQ4bの変動量が抑制されることにより、同一レグ内のハイサイドのスイッチング素子Q3bのゲート-ソース電圧Vgsの電圧上昇が抑制され、誤点弧が抑制される。
図23(g)のゲート信号gQ3bにおいて破線で示した信号波形は、変位電流di/dtにより誘起される誤点弧信号が抑制される状態を示している。
【0215】
(ゲート信号gQ2b,gQ3bの切り替わり時点の動作)
下側D級増幅器1Lのスイッチング素子Q2b及びスイッチング素子Q3に印加されるゲート信号gQ2b及びゲート信号gQ3bが、オフからオンへの切り替わる際の動作について説明する。この切り替え動作は
図23中の区間“H”から区間“A”に切り替わる状態に対応している。
【0216】
区間“H”において、上側D級増幅器1HのVamp1(
図24(a)の“d15”)と下側D級増幅器1LのVamp2(
図24(b)の“d16”)との電圧差により、第1回生回路6αには入力電圧Vrgn1及び電流Irgn1(
図24(c)の“d17”)が発生し、第2回生回路6βには入力電圧Vrgn2及び電流Irgn2(
図24(d)の“d18”)が発生する。
【0217】
(電流Irgn1の作用)
電流Irgn1は、スイッチング素子Q2bの寄生容量Cdsを放電する補助電流として作用する(
図23(n)の“d13”)。
この補助電流によりスイッチング素子Q2bに発生する変位電圧dv/dtは抑制される。変位電圧dv/dtが抑制されることにより変位電流di/dtが抑制され、電流IQ2bの変動量は抑制される。電流IQ2bの変動量が抑制されることにより、同一レグ内のハイサイドのスイッチング素子Q1bのゲート-ソース電圧Vgsの電圧上昇が抑制され、誤点弧が抑制される。
図23(e)のゲート信号gQ1bにおいて破線で示した信号波形は、変位電流di/dtにより誘起される誤点弧信号が抑制される状態を示している。
【0218】
(電流Irgn2の作用)
電流Irgn2は、スイッチング素子Q3bの寄生容量Cdsを放電する補助電流として作用する(
図23(o)の“d14”)。
この補助電流によりスイッチング素子Q3bに発生する変位電圧dv/dtは抑制される。変位電圧dv/dtが抑制されることにより変位電流di/dtが抑制され、電流IQ3bの変動量は抑制される。電流IQ3bの変動量が抑制されることにより、同一レグ内のハイサイドのスイッチング素子Q4bのゲート-ソース電圧Vgsの電圧上昇が抑制され、誤点弧が抑制される。
図23(h)のゲート信号gQ4bにおいて破線で示した信号波形は、変位電流di/dtにより誘起される誤点弧信号が抑制される状態を示している。
【0219】
表2は、各区間におけるスイッチング素子Q1a-Q4a,Q1b-Q4bのON/OFF状態、電圧変化、及び電流変化、上側D級増幅器1H及び下側D級増幅器の出力電圧Vamp1,Vamp2及び出力電流Iamp1,Iamp2、回生回路の入力電圧Vrgn及び電流Irgn、電力変換装置の出力電圧Vout及び出力電流Iout、及び回生状態を示している。表2中の太い実線で示した箇所は、スイッチング素子がオフからオンに切り替わる際の、補助電流及びスイッチング素子に流れる電流、及び補助回路の電流Irgnの変化を示している。
【0220】
【0221】
以下、各区間“A”-“H”の動作について
図25-
図32を用いて説明する。
【0222】
(区間“A”)
図25は、区間“A”の動作状態を示している。区間“A”において、上側D級増幅器1Hのスイッチング素子Q1a,Q2a,Q3a,Q4aはそれぞれオン,オフ,オン,オフの状態であり、下側D級増幅器1Lのスイッチング素子Q1b,Q2b,Q3b,Q4bはそれぞれオフ,オン,オン,オフの状態である。
【0223】
(a)スイッチング素子Q1a:上側D級増幅器1Hのハイサイドのスイッチング素子Q1aはオンである。スイッチング素子Q1aを通して電流が流れる。
(b)スイッチング素子Q2a:上側D級増幅器1Hのローサイドのスイッチング素子Q2aはオフである。スイッチング素子Q2aの寄生容量は、ハイサイドのスイッチング素子Q1aが導通しているため端子間にはVinの電圧が印加され、Vinで充電が完了している。
(c)スイッチング素子Q3a:上側D級増幅器1Hのハイサイドのスイッチング素子Q3aはオフである。スイッチング素子Q3aの寄生容量は、ローサイドのスイッチング素子Q4aが導通しているためVinの電圧が印加され、Vinで充電が完了している。
(d)スイッチング素子Q4a:上側D級増幅器1Hのローサイドのスイッチング素子Q4aはオンである。スイッチング素子Q4aを通して電流が流れる。
【0224】
(e)スイッチング素子Q1b:下側D級増幅器1Lのハイサイドのスイッチング素子Q1bはオフである。スイッチング素子Q1bの寄生容量は、ローサイドのスイッチング素子Q2bが導通しているためVinの電圧が印加され、Vinで充電が完了している。
(f)スイッチング素子Q2b:下側D級増幅器1Lのローサイドのスイッチング素子Q2bはオンである。スイッチング素子Q2bの寄生容量の電荷の放電は完了しているが、出力トランス2Lの一次コイルのインダクタンスのエネルギーを流し続けるため、スイッチング素子Q2bの寄生ダイオードを介して電流が流れる。
スイッチング素子Q2bのオフからオンへの切り替えにおいて、スイッチング素子Q2bには前区間(H)において放電電流が流れているため(
図23(n)中の“d13”)、変位電圧dv/dtの値が制限され変位電流di/dtが制限される。これにより、ゲート-ソース間電圧Vgsの上昇が抑制され、同レグ内の他方のスイッチング素子Q1bの誤点弧が防止される(
図23(e)中において破線で示すパルス信号)。
(g)スイッチング素子Q3b:下側D級増幅器1Lのハイサイドのスイッチング素子Q3bはオンである。スイッチング素子Q3bの寄生容量の電荷の放電は完了しているが、出力トランス2Lの一次コイルのインダクタンスのエネルギーを流し続けるため、スイッチング素子Q3bの寄生ダイオードを介して電流が流れる。
スイッチング素子Q3bのオフからオンへの切り替えにおいて、スイッチング素子Q3bには前区間(H)において放電電流が流れているため(
図23(o)中の“d14”)、変位電圧dv/dtの値が制限され変位電流di/dtが制限される。これにより、ゲート-ソース間電圧Vgsの上昇が抑制され、同レグ内の他方のスイッチング素子Q4bの誤点弧が防止される(
図23(h)中において破線で示すパルス信号)。
(h)スイッチング素子Q4b:下側D級増幅器1Lのローサイドのスイッチング素子Q4bはオフである。スイッチング素子Q4bの寄生容量は、ハイサイドのスイッチング素子Q3bとローサイドのスイッチング素子Q2bが導通しているためVin/2の電圧が印加され、Vin/2で充電が完了している。
【0225】
(i)回生トランス6αb:上側D級増幅器1HのVamp1と下側D級増幅器1LのVamp2との電位差により回生トランス6αbの入力端に入力電圧Vrgn1が発生して電流Irgn1が流れる。上側D級増幅器1Hと下側D級増幅器1Lとの間にはVinの電位差が生じている。
(j)回生トランス6βb:上側D級増幅器1HのVamp1と下側D級増幅器1LのVamp2との電位差により回生トランス6βbの入力端に入力電圧Vrgn2が発生して電流Irgn2が流れる。上側D級増幅器1Hと下側D級増幅器1Lとの間にはVin/2の電位差が生じている。
(k)出力:上側D級増幅器1Hの出力電圧Vamp1と下側D級増幅器1Lの出力電圧Vamp2の電圧方向は互いに逆方向であるため、出力電圧Voutは発生しない。
(l)回生:回生回路6の回生トランス6αbには電流Irgn1が流れ、回生トランス6βbには電流Irgn2が流れ、回生動作が行われる。
【0226】
(区間“B”)
図26は、区間“B”の動作状態を示している。区間“B”において、上側D級増幅器1Hのスイッチング素子Q1a,Q2a,Q3a,Q4aはそれぞれオン,オフ,オン,オフの状態であり、下側D級増幅器1Lのスイッチング素子Q1b,Q2b,Q3b,Q4bはそれぞれオフ,オン,オン,オフの状態である。
【0227】
(a)スイッチング素子Q1a:上側D級増幅器1Hのハイサイドのスイッチング素子Q1aはオンからオフに切り替わる。スイッチング素子Q1aの寄生容量は、ローサイドのスイッチング素子Q2aの放電電流と電流Irgn2によって充電が始まる。
(b)スイッチング素子Q2a:上側D級増幅器1Hのローサイドのスイッチング素子Q2aはオフである。スイッチング素子Q1aはオフとなっているが、出力トランス2Hの一次コイルのインダクタンスのエネルギーを流し続けるため、スイッチング素子Q2aの寄生容量にチャージされていた電荷の放電が始まる。また、電流Irgn2はスイッチング素子Q2aを放電する補助電流として作用する。
(c)スイッチング素子Q3a:上側D級増幅器1Hのハイサイドのスイッチング素子Q3aはオフである。スイッチング素子Q4aはオフとなっているが、出力トランス2Hの一次コイルのインダクタンスのエネルギーを流し続けるため、スイッチング素子Q3aの寄生容量にチャージされていた電荷の放電が始まる。また、電流Irgn1はスイッチング素子Q3aを放電する補助電流として作用する。
(d)スイッチング素子Q4a:上側D級増幅器1Hのローサイドのスイッチング素子Q4aはオンからオフに切り替わる。スイッチング素子Q4aの寄生容量は、ハイサイドのスイッチング素子Q3aの放電電流と電流Irgn1によって充電が始まる。
【0228】
(e)スイッチング素子Q1b:下側D級増幅器1Lのハイサイドのスイッチング素子Q1bはオフである。スイッチング素子Q1bの寄生容量は、スイッチング素子Q2bがオンであるため、Vinで充電が完了している。
(f)スイッチング素子Q2b:下側D級増幅器1Lのローサイドのスイッチング素子Q2bはオンである。スイッチング素子Q3b及びスイッチング素子Q2bを通して電流が流れる。
(g)スイッチング素子Q3b:下側D級増幅器1Lのハイサイドのスイッチング素子Q3bはオンである。スイッチング素子Q3b及びスイッチング素子Q2bを通して電流が流れる。
(h)スイッチング素子Q4b:下側D級増幅器1Lのローサイドのスイッチング素子Q4bはオフである。スイッチング素子Q4bの寄生容量は、スイッチング素子Q3bがオンであるため、Vinで充電が完了している。
【0229】
(i)回生トランス6αb:上側D級増幅器1HのVamp1と下側D級増幅器1LのVamp2との電位差により回生トランス6αbの入力端に入力電圧Vrgn1が発生して電流Irgn1が流れる。上側D級増幅器1Hと下側D級増幅器1Lとの間にはVin/2の電位差が生じている。
(j)回生トランス6βb:上側D級増幅器1HのVamp1と下側D級増幅器1LのVamp2との電位差により回生トランス6βbの入力端に入力電圧Vrgn2が発生して電流Irgn2が流れる。上側D級増幅器1Hと下側D級増幅器1Lとの間にはVin/2の電位差が生じている。
(k)出力:上側D級増幅器1Hの出力電圧Vamp1と下側D級増幅器1Lの出力電圧Vamp2の電圧方向は同方向であるため、出力電圧Voutが発生する。
(l)回生:回生回路6の回生トランス6αbには電流Irgn1が流れ、回生トランス6βbには電流Irgn2が流れ、回生動作が行われる。
【0230】
(区間“C”)
図27は、区間“C”の動作状態を示している。区間“C”において、上側D級増幅器1Hのスイッチング素子Q1a,Q2a,Q3a,Q4aはそれぞれオフ,オン,オン,オフの状態であり、下側D級増幅器1Lのスイッチング素子Q1b,Q2b,Q3b,Q4bはそれぞれオフ,オン,オン,オフの状態である。
【0231】
(a)スイッチング素子Q1a:上側D級増幅器1Hのハイサイドのスイッチング素子Q1aはオフである。スイッチング素子Q1aの寄生容量は、スイッチング素子Q2aがオンであるため、Vinで充電が完了している。
(b)スイッチング素子Q2a:上側D級増幅器1Hのローサイドのスイッチング素子Q2aはオフからオンに切り替わる。スイッチング素子Q2aの寄生容量の電荷の放電は完了しているが、出力トランス2Hの一次コイルのエネルギーを流し続けるため、スイッチング素子Q2aの寄生ダイオードを介して電流が流れる。
(c)スイッチング素子Q3a:上側D級増幅器1Hのハイサイドのスイッチング素子Q3aはオフからオンに切り替わる。スイッチング素子Q3aの寄生容量の電荷の放電は完了しているが、出力トランス2Hの一次コイルのエネルギーを流し続けるため、スイッチング素子Q3aの寄生ダイオードを介して電流が流れる。
(d)スイッチング素子Q4a:上側D級増幅器1Hのローサイドのスイッチング素子Q4aはオフである。スイッチング素子Q4aの寄生容量は、スイッチング素子Q3aがオンであるため、Vinで充電が完了している。
【0232】
(e)スイッチング素子Q1b:下側D級増幅器1Lのハイサイドのスイッチング素子Q1bはオフである。スイッチング素子Q1bの寄生容量は、スイッチング素子Q2bがオンであるため、Vinで充電が完了している。
(f)スイッチング素子Q2b:下側D級増幅器1Lのローサイドのスイッチング素子Q2bはオンである。スイッチング素子Q3b及びスイッチング素子Q2bを通して電流が流れる。
(g)スイッチング素子Q3b:下側D級増幅器1Lのハイサイドのスイッチング素子Q3bはオンである。スイッチング素子Q3b及びスイッチング素子Q2bを通して電流が流れる。
(h)スイッチング素子Q4b:下側D級増幅器1Lのローサイドのスイッチング素子Q4bはオフである。スイッチング素子Q4bの寄生容量は、スイッチング素子Q3bがオンであるため、Vinで充電が完了している。
【0233】
(i)回生トランス6αb:上側D級増幅器1HのVamp1と下側D級増幅器1LのVamp2との電位差は生じないが、回生トランス6αbのリーケージインダクタンスのエネルギーによって電流Irgn1が流れる。
(j)回生トランス6βb:上側D級増幅器1HのVamp1と下側D級増幅器1LのVamp2との電位差は生じないが、回生トランス6βbのリーケージインダクタンスのエネルギーによって電流Irgn2が流れる。
(k)出力:上側D級増幅器1Hの出力電圧Vamp1と下側D級増幅器1Lの出力電圧Vamp2の電圧方向は同方向であるため、出力電圧Vout=2・Vinが発生する。
(l)回生:回生回路6の回生トランス6αbには電流Irgn1が流れ、回生トランス6βbには電流Irgn2が流れ、回生動作が行われる。
【0234】
(区間“D”)
図28は、区間“D”の動作状態を示している。区間“D”において、上側D級増幅器1Hのスイッチング素子Q1a,Q2a,Q3a,Q4aはそれぞれオフ,オン,オン,オフの状態であり、下側D級増幅器1Lのスイッチング素子Q1b,Q2b,Q3b,Q4bはそれぞれオフ,オフ,オフ,オフの状態である。
(a)スイッチング素子Q1a:上側D級増幅器1Hのハイサイドのスイッチング素子Q1aはオフである。スイッチング素子Q1aの寄生容量は、スイッチング素子Q2aがオンであるため、Vinで充電が完了している。
(b)スイッチング素子Q2a:上側D級増幅器1Hのローサイドのスイッチング素子Q2aはオンである。スイッチング素子Q3a及びスイッチング素子Q2aを通して電流が流れる。
(c)スイッチング素子Q3a:上側D級増幅器1Hのハイサイドのスイッチング素子Q3aはオンである。スイッチング素子Q3a及びスイッチング素子Q2aを通して電流が流れる。
(d)スイッチング素子Q4a:上側D級増幅器1Hのローサイドのスイッチング素子Q4aはオフである。スイッチング素子Q4aの寄生容量は、スイッチング素子Q3aがオンであるため、Vinで充電が完了している。
【0235】
(e)スイッチング素子Q1b:下側D級増幅器1Lのハイサイドのスイッチング素子Q1bはオフである。スイッチング素子Q2bはオフとなったが、出力トランス2Lの一次コイルのインダクタンスのエネルギーを流し続けるため、スイッチング素子Q1bの寄生容量にチャージされていた電荷の放電が始まる。また、電流Irgn1はスイッチング素子Q1bを放電する補助電流として作用する。
(f)スイッチング素子Q2b:下側D級増幅器1Lのローサイドのスイッチング素子Q2bはオンからオフに切り替わる。スイッチング素子Q2bの寄生容量は、ハイサイドのスイッチング素子Q1bの放電電流と電流Irgn1によって充電が始まる。
(g)スイッチング素子Q3b:下側D級増幅器1Lのハイサイドのスイッチング素子Q3bはオンからオフに切り替わる。スイッチング素子Q3bの寄生容量は、ローサイドのスイッチング素子Q4bの放電電流と電流Irgn2によって充電が始まる。
(h)スイッチング素子Q4b:下側D級増幅器1Lのローサイドのスイッチング素子Q4bはオフである。スイッチング素子Q3bはオフとなったが、出力トランス2Lの一次コイルのインダクタンスのエネルギーを流し続けるため、スイッチング素子Q4bの寄生容量にチャージされていた電荷の放電が始まる。また、電流Irgn2はスイッチング素子Q4bを放電する補助電流として作用する。
【0236】
(i)回生トランス6αb:上側D級増幅器1HのVamp1と下側D級増幅器1LのVamp2との電位差により回生トランス6αbの入力端に入力電圧Vrgn1が発生して電流Irgn1が流れる。上側D級増幅器1Hと下側D級増幅器1Lとの間の電位差はVinからVin/2に変化する。
(j)回生トランス6βb:上側D級増幅器1HのVamp1と下側D級増幅器1LのVamp2との電位差により回生トランス6βbの入力端に入力電圧Vrgn2が発生して電流Irgn2が流れる。上側D級増幅器1Hと下側D級増幅器1Lとの間の電位差はVinからVin/2に変化する。
(k)出力:下側D級増幅器1Lの出力電圧Vamp2の電圧変化に伴って出力電圧Voutは降下する。
(l)回生:回生回路6の回生トランス6αbには電流Irgn1が流れ、回生トランス6βbには電流Irgn2が流れ、回生動作が行われる。
【0237】
(区間“E”)
図29は、区間“E”の動作状態を示している。区間“E”において、上側D級増幅器1Hのスイッチング素子Q1a,Q2a,Q3a,Q4aはそれぞれオフ,オン,オン,オフの状態であり、下側D級増幅器1Lのスイッチング素子Q1b,Q2b,Q3b,Q4bはそれぞれオン,オフ,オフ,オンの状態である。
【0238】
(a)スイッチング素子Q1a:上側D級増幅器1Hのハイサイドのスイッチング素子Q1aはオフである。スイッチング素子Q1aの寄生容量は、ローサイドのスイッチング素子Q2aが導通しているため端子間にはVinの電圧が印加され、Vinで充電が完了している。
(b)スイッチング素子Q2a:上側D級増幅器1Hのローサイドのスイッチング素子Q2aはオンである。スイッチング素子Q2aを通して電流が流れる。
(c)スイッチング素子Q3a:上側D級増幅器1Hのハイサイドのスイッチング素子Q3aはオンである。スイッチング素子Q3aを通して電流が流れる。
(d)スイッチング素子Q4a:上側D級増幅器1Hのローサイドのスイッチング素子Q4aはオフである。スイッチング素子Q4aの寄生容量は、ハイサイドのスイッチング素子Q3aが導通しているためVinの電圧が印加され、Vinで充電が完了している。
【0239】
(e)スイッチング素子Q1b:下側D級増幅器1Lのハイサイドのスイッチング素子Q1bはオフからオンに切り替わる。スイッチング素子Q1bの寄生容量の電荷の放電は完了しているが、出力トランス2Lの一次コイルのインダクタンスのエネルギーを流し続けるため、スイッチング素子Q1bの寄生ダイオードを介して電流が流れる。
スイッチング素子Q1bのオフからオンへの切り替えにおいて、スイッチング素子Q1bには前区間(D)において放電電流が流れているため(
図23(m)中の“b13”)、変位電圧dv/dtの値が制限され変位電流di/dtが制限される。これにより、ゲート-ソース間電圧Vgsの上昇が抑制され、同レグ内の他方のスイッチング素子Q2bの誤点弧が防止される(
図23(f)中において破線で示すパルス信号)。
(f)スイッチング素子Q2b:下側D級増幅器1Lのローサイドのスイッチング素子Q2bはオフである。スイッチング素子Q2bの寄生容量は、ハイサイドのスイッチング素子Q1bが導通しているためVinの電圧が印加され、Vinで充電が完了している。
(g)スイッチング素子Q3b:下側D級増幅器1Lのハイサイドのスイッチング素子Q3bはオフである。スイッチング素子Q3bの寄生容量は、ローサイドのスイッチング素子Q4bが導通しているためVinの電圧が印加され、Viで充電が完了している。
(h)スイッチング素子Q4b:下側D級増幅器1Lのローサイドのスイッチング素子Q4bはオンである。スイッチング素子Q4bの寄生容量の電荷の放電は完了しているが、出力トランス2Lの一次コイルのインダクタンスのエネルギーを流し続けるため、スイッチング素子Q4bの寄生ダイオードを介して電流が流れる。
スイッチング素子Q4bのオフからオンへの切り替えにおいて、スイッチング素子Q4bには前区間(D)において放電電流が流れているため(
図23(p)中の“b14”)、変位電圧dv/dtの値が制限され変位電流di/dtが制限される。これにより、ゲート-ソース間電圧Vgsの上昇が抑制され、同レグ内の他方のスイッチング素子Q3bの誤点弧が防止される(
図23(g)中において破線で示すパルス信号)。
【0240】
(i)回生トランス6αb:上側D級増幅器1HのVamp1と下側D級増幅器1LのVamp2との電位差により回生トランス6αbの入力端に入力電圧Vrgn1が発生して電流Irgn1が流れる。上側D級増幅器1Hと下側D級増幅器1Lとの間にはVinの電位差が生じている。
(j)回生トランス6βb:上側D級増幅器1HのVamp1と下側D級増幅器1LのVamp2との電位差により回生トランス6βbの入力端に入力電圧Vrgn2が発生して電流Irgn2が流れる。上側D級増幅器1Hと下側D級増幅器1Lとの間にはVinの電位差が生じている。
(k)出力:上側D級増幅器1Hの出力電圧Vamp1と下側D級増幅器1Lの出力電圧Vamp2の電圧方向は互いに逆方向であるため、出力電圧Voutは発生しない。
(l)回生:回生回路6の回生トランス6αbには電流Irgn1が流れ、回生トランス6βbには電流Irgn2が流れ、回生動作が行われる。
【0241】
(区間“F”)
図30は、区間“F”の動作状態を示している。区間“F”において、上側D級増幅器1Hのスイッチング素子Q1a,Q2a,Q3a,Q4aはそれぞれオン,オフ,オン,オフの状態であり、下側D級増幅器1Lのスイッチング素子Q1b,Q2b,Q3b,Q4bはそれぞれオン,オフ,オフ,オンの状態である。
【0242】
(a)スイッチング素子Q1a:上側D級増幅器1Hのハイサイドのスイッチング素子Q1aはオフである。スイッチング素子Q2aはオフとなっているが、出力トランス2Hの一次コイルのインダクタンスのエネルギーを流し続けるため、スイッチング素子Q1aの寄生容量にチャージされていた電荷の放電が始まる。また、電流Irgn2はスイッチング素子Q2aを放電する補助電流として作用する。
(b)スイッチング素子Q2a:上側D級増幅器1Hのローサイドのスイッチング素子Q2aはオンからオフに切り替わる。スイッチング素子Q2aの寄生容量は、ハイサイドのスイッチング素子Q1aの放電電流と電流Irgn2によって充電が始まる。
(c)スイッチング素子Q3a:上側D級増幅器1Hのハイサイドのスイッチング素子Q3aはオンからオフに切り替わる。スイッチング素子Q3aの寄生容量は、ローサイドのスイッチング素子Q4aの放電電流と電流Irgn1によって充電が始まる。
(d)スイッチング素子Q4a:上側D級増幅器1Hのローサイドのスイッチング素子Q4aはオフである。スイッチング素子Q3aはオフとなっているが、出力トランス2Hの一次コイルのインダクタンスのエネルギーを流し続けるため、スイッチング素子Q4aの寄生容量にチャージされていた電荷の放電が始まる。また、電流Irgn1はスイッチング素子Q3aを放電する補助電流として作用する。
【0243】
(e)スイッチング素子Q1b:下側D級増幅器1Lのハイサイドのスイッチング素子Q1bはオンである。スイッチング素子Q1b及びスイッチング素子Q4bを通して電流が流れる。
(f)スイッチング素子Q2b:下側D級増幅器1Lのローサイドのスイッチング素子Q2bはオフである。スイッチング素子Q2bの寄生容量は、スイッチング素子Q1bがオンであるため、Vinで充電が完了している。
(g)スイッチング素子Q3b:下側D級増幅器1Lのハイサイドのスイッチング素子Q3bはオフである。スイッチング素子Q3bの寄生容量は、スイッチング素子Q4bがオンであるため、Vinで充電が完了している。
(h)スイッチング素子Q4b:下側D級増幅器1Lのローサイドのスイッチング素子Q4bはオンである。スイッチング素子Q1b及びスイッチング素子Q4bを通して電流が流れる。
【0244】
(i)回生トランス6αb:上側D級増幅器1HのVamp1と下側D級増幅器1LのVamp2との電位差により回生トランス6αbの入力端に入力電圧Vrgn1が発生して電流Irgn1が流れる。
(j)回生トランス6βb:上側D級増幅器1HのVamp1と下側D級増幅器1LのVamp2との電位差により回生トランス6βbの入力端に入力電圧Vrgn2が発生して電流Irgn2が流れる。
(k)出力:上側D級増幅器1Hの出力電圧Vamp1と下側D級増幅器1Lの出力電圧Vamp2とから出力電圧Voutが発生する。
(l)回生:回生回路6の回生トランス6αbには電流Irgn1が流れ、回生トランス6βbには電流Irgn2が流れ、回生動作が行われる。
【0245】
(区間“G”)
図31は、区間“G”の動作状態を示している。区間“G”において、上側D級増幅器1Hのスイッチング素子Q1a,Q2a,Q3a,Q4aはそれぞれオン,オフ,オフ,オンの状態であり、下側D級増幅器1Lのスイッチング素子Q1b,Q2b,Q3b,Q4bはそれぞれオン,オフ,オフ,オンの状態である。
【0246】
(a)スイッチング素子Q1a:上側D級増幅器1Hのハイサイドのスイッチング素子Q1aはオフからオンに切り替わる。スイッチング素子Q2aの寄生容量の電荷の放電は完了しているが、出力トランス2Hの一次コイルのエネルギーを流し続けるため、スイッチング素子Q1aの寄生ダイオードを介して電流が流れる。
(b)スイッチング素子Q2a:上側D級増幅器1Hのローサイドのスイッチング素子Q2aはオフである。スイッチング素子Q2aの寄生容量は、スイッチング素子Q1aがオンであるため、Vinで充電が完了している。
(c)スイッチング素子Q3a:上側D級増幅器1Hのハイサイドのスイッチング素子Q3aはオフである。スイッチング素子Q3aの寄生容量は、スイッチング素子Q4aがオンであるため、Vinで充電が完了している。
(d)スイッチング素子Q4a:上側D級増幅器1Hのローサイドのスイッチング素子Q4aはオフからオンに切り替わる。スイッチング素子Q3aの寄生容量の電荷の放電は完了しているが、出力トランス2Hの一次コイルのエネルギーを流し続けるため、スイッチング素子Q4aの寄生ダイオードを介して電流が流れる。
【0247】
(e)スイッチング素子Q1b:下側D級増幅器1Lのハイサイドのスイッチング素子Q1bはオンである。スイッチング素子Q1b及びスイッチング素子Q4bを通して電流が流れる。
(f)スイッチング素子Q2b:下側D級増幅器1Lのローサイドのスイッチング素子Q2bはオフである。スイッチング素子Q2bの寄生容量は、スイッチング素子Q1bがオンであるため、Vinで充電が完了している。
(g)スイッチング素子Q3b:下側D級増幅器1Lのハイサイドのスイッチング素子Q3bはオフである。スイッチング素子Q3bの寄生容量は、スイッチング素子Q4bがオンであるため、Vinで充電が完了している。
(h)スイッチング素子Q4b:下側D級増幅器1Lのローサイドのスイッチング素子Q4bはオンである。スイッチング素子Q1b及びスイッチング素子Q4bを通して電流が流れる。
【0248】
(i)回生トランス6αb:上側D級増幅器1HのVamp1と下側D級増幅器1LのVamp2との電位差は生じないが、回生トランス6αbのリーケージインダクタンスのエネルギーによって電流Irgn1が流れる。
(j)回生トランス6βb:上側D級増幅器1HのVamp1と下側D級増幅器1LのVamp2との電位差は生じないが、回生トランス6βbのリーケージインダクタンスのエネルギーによって電流Irgn2が流れる。
(k)出力:上側D級増幅器1Hの出力電圧Vamp1と下側D級増幅器1Lの出力電圧Vamp2の電圧方向は同方向であるため、出力電圧Vout=-2・Vinが発生する。
(l)回生:回生回路6の回生トランス6αbには電流Irgn1が流れ、回生トランス6βbには電流Irgn2が流れ、回生動作が行われる。
【0249】
(区間“H”)
図32は、区間“H”の動作状態を示している。区間“H”において、上側D級増幅器1Hのスイッチング素子Q1a,Q2a,Q3a,Q4aはそれぞれオン,オフ,オフ,オンの状態であり、下側D級増幅器1Lのスイッチング素子Q1b,Q2b,Q3b,Q4bはそれぞれオフ,オフ,オフ,オフの状態である。
【0250】
(a)スイッチング素子Q1a:上側D級増幅器1Hのハイサイドのスイッチング素子Q1aはオンである。スイッチング素子Q1a及びスイッチング素子Q4aを通して電流が流れる。
(b)スイッチング素子Q2a:上側D級増幅器1Hのローサイドのスイッチング素子Q2aはオフである。スイッチング素子Q2aの寄生容量は、スイッチング素子Q1aがオンであるため、Vinで充電が完了している。
(c)スイッチング素子Q3a:上側D級増幅器1Hのハイサイドのスイッチング素子Q3aはオフである。スイッチング素子Q3aの寄生容量は、スイッチング素子Q4aがオンであるため、Vinで充電が完了している。
(d)スイッチング素子Q4a:上側D級増幅器1Hのローサイドのスイッチング素子Q4aはオンである。スイッチング素子Q1a及びスイッチング素子Q4aを通して電流が流れる。
【0251】
(e)スイッチング素子Q1b:下側D級増幅器1Lのハイサイドのスイッチング素子Q1bはオンからオフに切り替わる。スイッチング素子Q1bの寄生容量は、ローサイドのスイッチング素子Q2bの放電電流と電流Irgn1によって充電が始まる。
(f)スイッチング素子Q2b:下側D級増幅器1Lのローサイドのスイッチング素子Q2bはオフである。スイッチング素子Q1bはオフとなったが、出力トランス2Lの一次コイルのインダクタンスのエネルギーを流し続けるため、スイッチング素子Q2bの寄生容量にチャージされていた電荷の放電が始まる。また、電流Irgn1はスイッチング素子Q2bを放電する補助電流として作用する。
(g)スイッチング素子Q3b:下側D級増幅器1Lのハイサイドのスイッチング素子Q3bはオフである。スイッチング素子Q4bはオフとなったが、出力トランス2Lの一次コイルのインダクタンスのエネルギーを流し続けるため、スイッチング素子Q3bの寄生容量にチャージされていた電荷の放電が始まる。また、電流Irgn2はスイッチング素子Q3bを放電する補助電流として作用する。
(h)スイッチング素子Q4b:下側D級増幅器1Lのローサイドのスイッチング素子Q4bはオンからオフに切り替わる。スイッチング素子Q4bの寄生容量は、ローサイドのスイッチング素子Q3bの放電電流と電流Irgn2によって充電が始まる。
【0252】
(i)回生トランス6αb:上側D級増幅器1HのVamp1と下側D級増幅器1LのVamp2との電位差により回生トランス6αbの入力端に入力電圧Vrgn1が発生して電流Irgn1が流れる。上側D級増幅器1Hと下側D級増幅器1Lとの間の電位差は0から-Vin/2に変化する。
(j)回生トランス6βb:上側D級増幅器1HのVamp1と下側D級増幅器1LのVamp2との電位差により回生トランス6βbの入力端に入力電圧Vrgn2が発生して電流Irgn2が流れる。上側D級増幅器1Hと下側D級増幅器1Lとの間の電位差は0からVin/2に変化する。
(k)出力:下側D級増幅器1Lの出力電圧Vamp2の電圧変化に伴って出力電圧Voutは電圧0に向かって上昇する。
(l)回生:回生回路6の回生トランス6αbには電流Irgn1が流れ、回生トランス6βbには電流Irgn2が流れ、回生動作が行われる。
【0253】
[本発明の第3の構成例]
(第3の構成例の回路例)
本発明の第3の構成例を、
図33を用いて説明する。第3の構成例は、上側D級増幅器及び下側D級増幅器がフルブリッジで構成され、電流補助回路として2つの回生回路が設けられる構成である。上側D級増幅器及び下側D級増幅器がブリッジで構成される点、及び電流補助回路が2つの回生回路で構成される点において、第3の構成例は第2の構成例と同様である。第3の構成例は、下側D級増幅器と出力トランスとの接続関係、上側D級増幅器と下側D級増幅器との接続関係、及び出力トランスの特性において第2の構成例と相違する。
【0254】
図33は、本発明の第3の構成例の回路例を示している。なお、ここでは上側D級増幅器、下側D級増幅器、及び回生回路の構成のみを示している。
電力変換装置13の第3の構成例は、上側D級増幅器1H、下側D級増幅器1L、及び回生回路6の構成は
図19に示す第2の構成例の回路と同様であり、下側D級増幅器1Lと出力トランスとの接続関係、上側D級増幅器と下側D級増幅器との接続関係、及び出力トランスの特性において相違している。以下では、上側D級増幅器1H、及び回生回路6の構成の説明を略し、相違する下側D級増幅器1Lに係る構成のみを説明する。
【0255】
(下側D級増幅器1Lの構成)
下側D級増幅器1Lは、ハイサイドのスイッチング素子Q1bとローサイドのスイッチング素子Q2bの直列接続からなる進みレグ20Laと、ハイサイドのスイッチング素子Q3bとローサイドのスイッチング素子Q4bの直列接続からなる遅れレグ20Lbとによりフルブリッジ回路が構成される。進みレグ20Laを構成するハイサイドのスイッチング素子Q1bの一端は直流電源(図示していない)の高電圧側に接続され、ローサイドのスイッチング素子Q2bの一端は直流電源(図示していない)の低電圧側に接続され、ハイサイドのスイッチング素子Q1bとローサイドのスイッチング素子Q2bの各他端は接続され、その接続点は下側D級増幅器1Lの一方の出力端であり、出力トランス2Lの1次側の一方に接続されている。
【0256】
遅れレグ20Lbを構成するハイサイドのスイッチング素子Q3bの一端は、直流電源(図示していない)の高電圧側に接続され、ローサイドのスイッチング素子Q4bの一端は、直流電源(図示していない)の低電圧側に接続され、ハイサイドのスイッチング素子Q3bとローサイドのスイッチング素子Q4bの接続点は、下側D級増幅器1Lの一方の出力端であり、出力トランス2Lの1次側の一方に接続されている。
【0257】
第3の構成例の下側D級増幅器1Lは、進みレグ20Laの中点は出力トランス2Lの1次側の低電圧側に接続され、遅れレグ20Lbの中点は出力トランス2Lの1次側の高電圧側に接続される。これに対して、第3の構成例の下側D級増幅器1Lは、進みレグ20Laの中点は出力トランス2Lの1次側の高電圧側に接続され、遅れレグ20Lbの中点は出力トランス2Lの1次側の低電圧側に接続される。さらに、第3の構成例の出力トランス2Lの一次側及び二次側の電圧方向は、第2の構成例の出力トランス2Lの一次側及び二次側の電圧方向と逆方向である。
【0258】
第3の構成例は下側D級増幅器1Lと出力トランス2Lとの接続関係を入れ替えた構成であり、この構成により出力電圧Vamp2の電圧方向は第3の構成例とは逆方向になる。第3の構成例は、その出力トランス2Lの出力特性を第2の構成例の出力トランス2Lの出力特性と逆方向とすることにより、出力トランス2Lの出力電圧の電圧方向を第2の構成例と同様となる。
【0259】
遅れレグ20Lbの中点と出力トランス2Lとの間、及び進みレグ20Laの各他端は接続され、その接続点と出力トランス2Lとの間には出力トランス2Lの漏れインダクタンスが存在する。
【0260】
第3の構成例においても第2の構成例と同様に、上側D級増幅器1Hと下側D級増幅器1Lとの電圧差に基づいて、回生トランス6αb及び回生トランス6βbの1次側に電流が流れる。回生トランス6αb及び回生トランス6βbは2次側の交流電圧をそれぞれ回生整流回路6αa及び回生整流回路6βaに送る。回生トランス6αb,6βbの巻き線比は、ゲート位相差θが0degの時の等価回路がZVS(零電圧スイッチング)の条件を満たすように設計する。
【0261】
(第3の構成例の動作例)
第3の構成例の上側D級増幅器1Hは、第2の構成例の上側D級増幅器1Hと同様の動作態となる。一方、第3の構成例の下側D級増幅器1Lは、出力トランス2Lとの接続関係において、第2の構成例の下側D級増幅器1Lとは進みレグと遅れレグとが逆の関係にある。この接続関係の相違により、第3の構成例の動作態様と第2の構成例の動作態様とは、各区間において各点の電位関係が逆の関係にある。
【0262】
そこで、第3の構成例においては、下側D級増幅器1Lと回生トランス6αb,6βbとの接続関係を逆とすることにより、上側D級増幅器と下側D級増幅器との接続関係を逆とすると共に、出力トランス2Lの1コイルと2次コイルとの間に電圧特性を逆とする。これにより、第2の構成例の動作例と同様の出力を得られる。
【0263】
[回生回路の他の構成]
回生回路の他の構成例を
図34を用いて説明する。ここでは、回生回路6が備える回生整流回路6aの変形例を示している。
図34(a)及び
図34(b)の構成例のダイオードブリッジ回路6a1は全波整流回路であり、
図34(c)及び
図34(d)の構成例のダイオードブリッジ回路6a1は半坡整流回路である。
【0264】
図34(a)の構成例において、回生整流回路6aはダイオードブリッジ回路6a11とLC平滑回路6a21とを備える。ダイオードブリッジ回路6a11はフルブリッジ構成された4個のダイオードを備えた全波整流回路である。LC平滑回路6a21は直流電源に対して直列接続されたインダクタンスLと並列接続されたコンデンサCを備える。
【0265】
図34(b)の構成例において、回生整流回路6aは、ダイオードブリッジ回路6a11とLC平滑回路6a22とを備える。ダイオードブリッジ回路6a11は、
図34(a)の構成例と同様の4個のダイオードのフルブリッジ構成の全波整流回路であり、LC平滑回路6a21は、直流電源に対して並列接続されたコンデンサC直列接続されたインダクタンスLとを備える。
【0266】
図34(c)の構成例において、回生整流回路6aは、ダイオードブリッジ回路6a12とLC平滑回路6a21とを備える。ダイオードブリッジ回路6a12は、フルブリッジ構成された4個のダイオードを備えた半波整流回路である。LC平滑回路6a21は、
図34(a)の構成例と同様の構成であり、直流電源に対して直列接続されたインダクタンスLと並列接続されたコンデンサCを備える。
【0267】
図34(d)の構成例において、回生整流回路6aは、ダイオードブリッジ回路6a12とLC平滑回路6a22とを備える。ダイオードブリッジ回路6a12は、フルブリッジ構成された4個のダイオードを備えた半波整流回路である。LC平滑回路6a22は、
図34(b)の構成例と同様の構成であり、直流電源に対して並列接続されたコンデンサCと直列接続されたインダクタンスLとを備える。
【0268】
[電流補助回路の他の構成]
電流補助回路の他の構成を、
図35を用いて説明する。
(抵抗回路による構成)
図35は、電流補助回路として抵抗回路7を備える構成例である。抵抗回路7は、抵抗素子7aと分配トランス7bとからなる。分配トランス7bは、上側D級増幅器1Hと下側D級増幅器1Lとの間に接続される。分配トランス7bの1次側に、上側D級増幅器1Hと下側D級増幅器1Lとの電圧差により入力電圧Vrgnが発生すると、分配トランス7bの2次側に電圧が発生する。抵抗素子7aには分配トランス7bの2次側電圧により電流が流れる。抵抗素子7aは、流れた電流を熱として放出する。
【0269】
なお、上記実施の形態における記述は、本発明に係るパルス化高周波モニタの一例であり、本発明は各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形することが可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0270】
本発明の電力変換装置は、半導体製造装置や液晶パネル製造装置等に用いられる高周波電源(RFジェネレ-タ)に適用することができる。
【符号の説明】
【0271】
1H 上側D級増幅器
1L 下側D級増幅器
2H,2L 出力トランス
3 制御回路
4 電流補助回路
5 直流電源
6 回生回路
6a 回生整流回路
6a1 ダイオードブリッジ回路
6a2 LC平滑回路
6b 回生トランス
7 抵抗回路
7a 抵抗素子
7b 分配トランス
10,11,12,13 電力変換装置
10A,10B,10C,10D 電力変換装置
20,20a,20b レグ
20H,20Ha,20La 進みレグ
20L,20Hb,20Lb 遅れレグ
21H,21L コンデンサ分圧器