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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139146
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】抗ウィルス性透明シート
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/00 20060101AFI20220915BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20220915BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20220915BHJP
   C08L 23/10 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
C08L23/00
B32B27/32 E
B32B27/18 Z
C08L23/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021039403
(22)【出願日】2021-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000198802
【氏名又は名称】積水成型工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】仁田 好則
(72)【発明者】
【氏名】吉田 隆充
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F100AK03A
4F100AK03B
4F100AK07B
4F100AK66B
4F100AL03B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100CA23B
4F100CA30B
4F100EH20
4F100EJ17
4F100JC00B
4F100JD06
4F100JN01
4F100YY00B
4J002AA011
4J002BB001
4J002BB111
4J002BB121
4J002DE266
4J002DJ006
4J002FA086
4J002FB076
4J002FB086
4J002FD186
4J002FD206
4J002GB01
4J002GC00
(57)【要約】
【課題】本発明は、抗ウィルス性及び透明性の優れた抗ウィルス性シートを提供する。
【解決手段】ポリオレフィン系樹脂と抗ウィルス材よりなることを特徴とする抗ウィルス性透明シート及びポリオレフィン系樹脂層の少なくとも片面にポリオレフィン系樹脂と抗ウィルス材よりなる抗ウィルス性樹脂層が積層されていることを特徴とする抗ウィルス性透明積層シート。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂と抗ウィルス材よりなることを特徴とする抗ウィルス性透明シート。
【請求項2】
ポリオレフィン系樹脂が、ホモポリプロピレン樹脂又はランダムポリプロピレン樹脂であることを特徴とする請求項1記載の抗ウィルス性透明シート。
【請求項3】
抗ウィルス材が、無機充填剤100重量部に対し抗ウィルス剤3~100重量部が担持されている抗ウィルス性粒子であり、ポリオレフィン系樹脂100重量部と抗ウィルス材1~50重量部からなることを特徴とする請求項1又は2記載の抗ウィルス性透明シート。
【請求項4】
全光線透過率が75%以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項記載の抗ウィルス性透明シート。
【請求項5】
Hazeが40%以下であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項記載の抗ウィルス性透明シート。
【請求項6】
ポリオレフィン系樹脂層の少なくとも片面にポリオレフィン系樹脂と抗ウィルス材よりなる抗ウィルス性樹脂層が積層されていることを特徴とする抗ウィルス性透明積層シート。
【請求項7】
ポリオレフィン系樹脂が、ホモポリプロピレン樹脂又はランダムポリプロピレン樹脂であることを特徴とする請求項6記載の抗ウィルス性透明積層シート。
【請求項8】
抗ウィルス材が、無機充填剤100重量部に対し抗ウィルス剤3~100重量部が担持されている抗ウィルス性粒子であり、ポリオレフィン系樹脂100重量部と抗ウィルス材1~50重量部からなることを特徴とする請求項6又は7記載の抗ウィルス性透明積層シート。
【請求項9】
全光線透過率が75%以上であることを特徴とする請求項6~8のいずれか1項記載の抗ウィルス性異形成形体の透明積層シート。
【請求項10】
Hazeが40%以下であることを特徴とする請求項6~9のいずれか1項記載の抗ウィルス性透明積層シート。
【請求項11】
ポリオレフィン系樹脂及びポリオレフィン系樹脂と抗ウィルス材よりなる抗ウィルス性樹脂組成物を共押出成形法により積層シートを成形した後、ポリオレフィン系樹脂が溶融している状態で金属鏡面ロールにより加圧冷却することを特徴とする請求項6~10のいずれか1項記載の抗ウィルス性透明積層シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗ウィルス性及び透明性の優れたシートに関する。
【背景技術】
【0002】
重症呼吸器感染症(SARS)ウィルス、インフルエンザウィルス、新型コロナウィルス等のウィルスが次々と社会問題となっている。これらウィルスは容易に人から人に伝染するため、人が多く集まる場所で使用する製品の抗ウィルスの向上が望まれている。
【0003】
そのため、多くの抗ウィルス性の優れた抗ウィルス性材料が提案されている。例えば、「抗菌性および抗ウィルス性のポリマー材料であって、イオンの銅の微視的粒子を有しており、該粒子が該ポリマー材料に封入され、かつその表面から突出している、ポリマー材料。」(例えば、特許文献1参照。)、「樹脂と、抗ウィルス剤と、カチオン系界面活性剤からなる表面電位制御剤を含む抗ウィルス性樹脂部材であって、前記表面電位制御剤は前記抗ウィルス性樹脂部材の表面の電位を前記樹脂単体の表面の電位よりもプラス方向に変化させることを特徴とする抗ウィルス性樹脂部材。」(例えば、特許文献2参照。)、「合成樹脂に、無機充填剤100重量部に対しスルホン酸系界面活性剤3~100重量部を担持された合成樹脂添加用の抗ウィルス剤を添加した抗ウィルス性合成樹脂組成物」(例えば、特許文献3参照。)が提案されている。
【0004】
一方、病院でこれらのウィルス患者を治療するには、入院患者を隔離すること共に入院患者の容態が急変しないか常時観察しながら治療する必要があり、抗ウィルスが優れていると共に病院内を分画しながら観察しうる透明性の優れた抗ウィルス性シートが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-229424号公報
【特許文献2】WO2013/522479号公報
【特許文献3】特開2017-218516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、抗ウィルス性及び透明性の優れた抗ウィルス性シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明は、
[1]ポリオレフィン系樹脂と抗ウィルス材よりなることを特徴とする抗ウィルス性透明シート、
[2]ポリオレフィン系樹脂が、ホモポリプロピレン樹脂又はランダムポリプロピレン樹脂であることを特徴とする上記[1]記載の抗ウィルス性透明シート、
[3]抗ウィルス材が、無機充填剤100重量部に対し抗ウィルス剤3~100重量部が担持されている抗ウィルス性粒子であり、ポリオレフィン系樹脂100重量部と抗ウィルス材1~50重量部からなることを特徴とする上記[1]又は[2]記載の抗ウィルス性透明シート、
[4]全光線透過率が75%以上であることを特徴とする上記[1]~[3]のいずれか1項記載の抗ウィルス性透明シート、
[5]Hazeが40%以下であることを特徴とする上記[1]~[4]のいずれか1項記載の抗ウィルス性透明シート、
[6]ポリオレフィン系樹脂層の少なくとも片面にポリオレフィン系樹脂と抗ウィルス材よりなる抗ウィルス性樹脂層が積層されていることを特徴とする抗ウィルス性透明積層シート。
[7]ポリオレフィン系樹脂が、ホモポリプロピレン樹脂又はランダムポリプロピレン樹脂であることを特徴とする上記[6]記載の抗ウィルス性透明積層シート、
[8]抗ウィルス材が、無機充填剤100重量部に対し抗ウィルス剤3~100重量部が担持されている抗ウィルス性粒子であり、ポリオレフィン系樹脂100重量部と抗ウィルス材1~50重量部からなることを特徴とする上記[6]又は[8]記載の抗ウィルス性透明積層シート、
[9]全線透過率が75%以上であることを特徴とする上記[6]~[8]のいずれか1項記載の抗ウィルス性異形成形体の透明積層シート、
[10]Hazeが40%以下であることを特徴とする上記[6]~[9]のいずれか1項記載の抗ウィルス性透明積層シート、及び、
[11]ポリオレフィン系樹脂及びポリオレフィン系樹脂と抗ウィルス材よりなる抗ウィルス性樹脂組成物を共押出成形法により積層シートを成形した後、ポリオレフィン系樹脂が溶融している状態で金属鏡面ロールにより加圧冷却することを特徴とする[6]~[10]のいずれか1項記載の抗ウィルス性透明積層シートの製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の抗ウィルス性透明シートの構成は上述の通りであり、抗ウィルス性及び透明性が優れている。
【発明を実施するための形態】
【0009】
請求項1記載の本発明の抗ウィルス性透明シートは、ポリオレフィン系樹脂と抗ウィルス材よりなることを特徴とする。
【0010】
上記ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ペンテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体等が挙げられ、高密度ポリエチレン樹脂及びポリプロピレン樹脂が好ましく、より好ましくは、ポリプロピレン樹脂であり、透明性の優れたホモポリプロピレン樹脂及びランダムポリプロピレン樹脂が最も好ましい。又、2種類以上がブレンドされてもよい。
【0011】
又、上記ポリオレフィン系樹脂には、従来からポリオレフィン系樹脂の成形の際に一般に使用されている、熱安定剤、耐熱向上剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、衝撃改良剤、防曇剤、帯電防止剤、難燃剤、着色剤、顔料等の添加剤が、必要に応じて、添加されてもよい。
【0012】
尚、上記ポリオレフィン系樹脂には柔軟性を付与するために、ジオクチルフタレート、ベンジルアルキルジグリコールアジペート等の可塑剤を添加する必要がないので衛生的であり、環境を汚染することがない。
【0013】
上記抗ウィルス材は、抗ウィルス性を有する公知の任意のものが使用可能であり、例えば、抗ウィルス剤及び無機充填剤に抗ウィルス剤が担持されている抗ウィルス性粒子が挙げられる。
【0014】
上記抗ウィルス剤は、抗ウィルス性を有すればよく、従来公知の任意の抗ウィルス剤が使用可能であり、例えば、Cu、Ag、Sb、Ir、Ge、Sn、Tl、Pt、Pd、Bi、Au、Fe、Co、Ni、Zn、In、Hgなどの周期律表の第4周期から第6周期かつ8族から15族の元素のヨウ化物、1価の銅の塩化物、酢酸化合物、硫化物、ヨウ化物、臭化物、過酸化物、酸化物、チオシアン化物である銅化合物、界面活性剤等が挙げられる。
【0015】
上記ヨウ化物としては、例えば、CuI、AgI、SbI、IrI、GeI、GeI、SnI、SnI、TlI、PtI、PtI、PdI、BiI、AuI、AuI、FeI、CoI、NiI、ZnI、HgI、InI等が挙げられる。
【0016】
又、上記銅化合物としては、例えば、CuCl、Cu(CHCOO)、CuBr、CuI、CuSCN、CuS、CuO等が挙げられる。
【0017】
又、上記界面活性剤としては、抗ウィルス性を有する、従来公知の任意の界面活性剤が挙げられ、例えば、4級カチオン系界面活性剤、4級カチオンポリマー及びスルホン酸系界面活性剤が好適に挙げられる。
【0018】
上記スルホン酸系界面活性剤としては、例えばアルキルベンゼンスルホン酸系化合物、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸系化合物、アルキルナフタレンスルホン酸系化合物、アルキル硫酸エステル系化合物及びそのナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル系、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物系化合物等が挙げられ、抗ウィルス性に優れているアルキルベンゼンスルホン酸系化合物、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸系化合物及びアルキルナフタレンスルホン酸系化合物が好ましく、特に、抗ウィルス性に優れているアルキルベンゼンスルホン酸系化合物及びその金属塩がより好ましい。
【0019】
上記抗ウィルス性粒子は、無機充填剤に抗ウィルス剤が担持されているが、上記無機充填剤としては、樹脂成型品に無機充填剤として一般に使用されている任意の無機充填剤が使用でき、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、水酸化マグネシウム、タルク、マイカ、クレー等が挙げられる。
【0020】
無機充填剤の大きさには特に限定されないが、本発明の抗ウィルス性透明シートは透明性が優れているので、オレフィン系樹脂に添加した際の分散性が優れているのが好ましく、取り扱いやすさとの兼ね合いで、一般に、平均粒子径が0.01~100μmが好ましく、オレフィン系樹脂に添加した際の分散性が優れているのが好ましく0.02~30μmがより好ましく、更に、0.02~10μmが更に好ましい。
【0021】
無機充填剤に抗ウィルス剤を担持させる方法としては、特に限定されず、例えば、無機充填剤の水懸濁液に、抗ウィルス剤を添加する湿式処理方法、無機充填剤の粉体と抗ウィルス剤を攪拌混合する乾式処理方法等が挙げられる。
【0022】
無機充填剤に抗ウィルス剤を担持させる量は、無機充填剤100重量部に対し抗ウィルス剤3~100重量部が好ましく、より好ましくは5~70重量部であり、更に好ましくは6~50重量部である。3重量部未満では抗ウィルス性が乏しくなり、100重量部以上では担持させるのが困難となる。
【0023】
上述の通り、本発明の抗ウィルス性透明シートは、ポリオレフィン系樹脂と抗ウィルス材よりなる抗ウィルス性のポリオレフィン系樹脂透明シートであり、ポリオレフィン系樹脂シートにおける抗ウィルス剤の添加量は、少なくなると抗ウィルス性が低下し、多くなると、成形性が低下したり、オレフィン系樹脂シートから抗ウィルス剤がマイグレーションし漏出したり、剥離脱落して得られたオレフィン系樹脂シートの表面性が低下するので、オレフィン系樹脂100重量部重量部に対し0.1~25重量部であり、好ましくは0.1~5重量部である。上記抗ウィルス粒子の添加量は、抗ウィルス剤の上記添加量の範囲に入るように決定されればよく、オレフィン系樹脂100重量部に対し1~50重量部であり、好ましくは1~10重量部である。
【0024】
又、上記ポリオレフィン系樹脂透明シートは、透明性が優れているのが好ましく、全光線透過率は75%以上が好ましい。更に、Hazeは40%以下が好ましい。尚、本発明において、全光線光透過率はJIS K 7361-1:1997に準拠して測定した値であり、HazeはJIS K 7136:2000に準拠して測定した値である。
【0025】
又、上記ポリオレフィン系樹脂透明シートの厚さは、特に限定されないが、薄くなりすぎると、シートの製造が困難になり、シートの機械的強度が小さくなり、使用の際に取り扱いにくくなる。厚くなっても抗ウィルス性がより向上することはなく、使用する抗ウィルス剤の添加量が多くなり経済性が低下するので、一般に5~1000μmであり、好ましくは、10~600μmである。
【0026】
上記ポリオレフィン系樹脂透明シートの製造方法は特に限定されず、従来公知の任意の方法が採用されてよく、例えば、ロール成形法、プレス成形法、溶融押出法、カレンダー成形法、インフレーション成形法等が挙げられ、溶融押出法及びインフレーション成形法が好ましい。又、透明性を向上させるために、溶融押出成形した後に、ポリオレフィン系樹脂が溶融している状態で金属鏡面ロールにより加圧冷却するのが好ましい。
【0027】
請求項6記載の本発明の抗ウィルス性透明積層シートは、ポリオレフィン系樹脂層の少なくとも片面にポリオレフィン系樹脂と抗ウィルス材よりなる抗ウィルス性樹脂層が積層されていることを特徴とする。
【0028】
上記ポリオレフィン系樹脂、抗ウィルス材等は、前記請求項1記載の抗ウィルス性透明シートの記載と同一であるので、以下は異なる点のみ記載する。
【0029】
上記ポリオレフィン系樹脂層は、抗ウィルス材を含有しないポリオレフィン系樹脂からなる層であり、片面又は両面にポリオレフィン系樹脂と抗ウィルス材よりなる抗ウィルス性樹脂層が積層されている。
【0030】
又、上記抗ウィルス性透明積層シートは、透明性が優れているのが好ましく、全光線透過率は75%以上が好ましい。更に、Hazeは40%以下が好ましい。
【0031】
上記ポリオレフィン系樹脂層の厚さは、特に限定されないが、薄くなりすぎると、シートの製造が困難になり、シートの機械的強度が小さくなり、使用の際に取り扱いにくくなる。厚くなっても抗ウィルス性がより向上することはなく、使用する抗ウィルス剤の添加量が多くなり経済性が低下するので、一般に5~1000μmであり、好ましくは、10~600μmである。
【0032】
又、抗ウィルス性樹脂層の厚さも、特に限定されないが、厚くなっても抗ウィルス性がより向上することはなく、使用する抗ウィルス剤の添加量が多くなり経済性が低下するので、一般に500μm以下であり、好ましくは、200μm以下である。
【0033】
上記抗ウィルス性透明積層シートの製造方法は特に限定されず、従来公知の任意の方法が採用されてよく、例えば、従来から公知の、ロール成形法、プレス成形法、溶融押出法、カレンダー成形法、インフレーション成形法等により、ポリオレフィン系樹脂シート及び抗ウィルス性樹脂シートを作成し、次いで両シートを積層し、粘接着剤で粘接着する方法や熱融着する方法が挙げられる。
【0034】
しかしながら、上記抗ウィルス性透明積層シートは、透明性が優れているのが好ましいので、ポリオレフィン系樹脂及びポリオレフィン系樹脂と抗ウィルス材よりなる抗ウィルス性樹脂組成物を共押出成形法により押出成形することにより、積層シートを成形した後、ポリオレフィン系樹脂が溶融している状態で金属鏡面ロールにより加圧冷却して製造する方法が好ましい。
【0035】
又、上記抗ウィルス性透明積層シートは使用時に温度による形状変化(カールやそり)を防止するために、ポリオレフィン系樹脂を内層とし、ポリオレフィン系樹脂と抗ウィルス材よりなる抗ウィルス性樹脂組成物をその両外層に、共押出成形法により三層押出成形する方が更に好ましい。
【実施例0036】
次に、本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0037】
抗ウィルス性粒子(1)の製造
無機充填剤である炭酸カルシウム(白石工業社製、粒子径0.08μm)100重量部の水懸濁液にスルホン酸系界面活性剤であるアルキルベンゼンスルホン酸ソーダ50重量部を添加し撹拌した後に乾燥して無機充填剤にスルホン酸系界面活性剤を担持させた抗ウィルス性粒子(1)を得た。
【0038】
抗ウィルス性粒子(2)の製造
無機充填剤であるゼオライト(粒子径0.75μm)100重量部の水懸濁液に銀イオンを有する銀系抗ウィルス剤50重量部を添加し撹拌した後に乾燥して無機充填剤に銀系抗ウィルス剤を担持させた抗ウィルス性粒子(2)を得た。
【0039】
(実施例1~4)
表1に示した所定量の得られた抗ウィルス性粒子(1)又は(2)とホモポリプロピレン樹脂100重量部をヘンシェルミキサーで攪拌し、一軸押出機にて溶融混錬後、ストランドカットし、抗ウィルス性ペレットを得た。
【0040】
所定量の得られた抗ウィルス性ペレットとホモポリプロピレン樹脂を一軸押出機に供給して、250℃で溶融混錬して押出成形し、次いで、30℃に設定されている金属鏡面ロール/鏡面シボロールで圧着すると共に冷却して表1に示した厚さの抗ウィルス性透明シートを得た。
尚、実施例4は同様の方法を用い溶融混錬して押出して、金属鏡面ロール/スリーブベルトにより圧着し抗ウィルス性透明シートを得た。
【0041】
(実施例5~13)
表2及び3に示した所定量のホモポリプロピレン樹脂、抗ウィルス性粒子(1)及び抗ウィルス性粒子(2)をヘンシェルミキサーで攪拌し、ドライブレンドし外層用の抗ウィルス性樹脂組成物を得た。
【0042】
得られた抗ウィルス性樹脂組成物を外層用一軸押出機に供給し、表2及び3に示した内層用のポリプロピレン樹脂を内装用一軸押出機に供給し、それぞれ250℃で溶融混錬して、フィードブロックを用い3層共押出し、次いで、30℃に設定されている金属鏡面ロール/金属ベルトでプレスすると共に冷却して表2及び3に示した厚さの3層構造の抗ウィルス性透明積層シートを得た。
【0043】
得られた抗ウィルス性透明シート及び抗ウィルス性透明積層シートの全光線透過率及びHazeを測定し、結果を表1~3に示した。
【0044】
抗ウィルス性試験
得られた抗ウィルス性透明シート及び抗ウィルス性透明積層シートを切り出して、5cm×5cmの正方形の試験サンプルを得た。
試験ウィルスは、インフルエンザAウィルス A/Hong Kong /8/68/(H3N2)株及びネコカリシウィルスを使用した。
【0045】
上記試験サンプルと試験ウィルスを使用し、ISO 21702 に準拠して抗ウィルス性試験を行い、抗ウィルス活性値を測定して結果を表1~3に示した。尚、表1~3では抗ウィルス活性値が2.0以上のものを○で示した。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の抗ウィルス性透明シート及び透明積層シートは上記の通りであり、得られた異形成形体は抗ウィルスが高く、透明性が優れている。従って、清潔性や透明性が要求される病院や食物の製造工場等の間仕切りシートカバーシートとして好適に使用される。