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特開2022-139175熱中症予防冷風装置および熱中症予防冷風装置付きシルバーカー
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  • 特開-熱中症予防冷風装置および熱中症予防冷風装置付きシルバーカー 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139175
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】熱中症予防冷風装置および熱中症予防冷風装置付きシルバーカー
(51)【国際特許分類】
   F24F 1/0378 20190101AFI20220915BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20220915BHJP
   B62B 5/00 20060101ALI20220915BHJP
   F24F 11/80 20180101ALI20220915BHJP
   F24F 11/61 20180101ALI20220915BHJP
   F24F 1/04 20110101ALI20220915BHJP
【FI】
F24F1/0378
H05K7/20 H
B62B5/00 L
F24F11/80
F24F11/61
F24F1/04
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021039437
(22)【出願日】2021-03-11
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】521104403
【氏名又は名称】斉藤 悠起
(71)【出願人】
【識別番号】521104414
【氏名又は名称】斉藤 利叶子
(74)【代理人】
【識別番号】100108143
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋崎 英一郎
(71)【出願人】
【識別番号】521104425
【氏名又は名称】斉藤 理恵
(74)【代理人】
【識別番号】100108143
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋崎 英一郎
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 悠起
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 利叶子
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 理恵
(72)【発明者】
【氏名】明井 守
【テーマコード(参考)】
3D050
3L050
3L260
5E322
【Fターム(参考)】
3D050AA03
3D050EE08
3D050EE15
3D050GG06
3D050KK09
3L050BC05
3L260AA20
3L260AB20
3L260BA19
3L260BA25
3L260CA02
3L260CA32
5E322AA01
5E322AB10
5E322BA01
5E322BA03
5E322BB03
5E322BB09
5E322DC01
5E322EA04
5E322FA09
(57)【要約】
【課題】真夏時に冷風がシルバーカーの使用者の首から顔にかけて吹き付け、使用者のスイッチオン操作により冷風が止み、所定時間経過すると冷風が再び吹き出す熱中症予防冷風装置を提供すること。
【解決手段】ペルチェ素子1の吸熱面に第1のヒートシンク2を固定し筐体4に収容され、第1のヒートシンク2に外気を接触させて熱交換させ冷風吹出口4aより冷風を流出させる第1の送風ファン6を有し、取付部材8によりシルバーカー110に装着可能であり、バッテリー11と、電源スイッチ12と、冷風ストップスイッチ13と、気温センサ14と制御部15とを備え、制御部15の制御により真夏時に冷風吹出口4aから流出する冷風がシルバーカー110の使用者の首から顔にかけて吹き付け、冷風ストップスイッチ13をONにすると冷風が止み、所定時間経過すると冷風が再び吹き出すように構成した。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペルチェ素子と、
前記ペルチェ素子の吸熱面に密着固定された第1のヒートシンクと、
前記ペルチェ素子の放熱面に密着固定された第2のヒートシンクと、
前記ペルチェ素子と前記第1,第2のヒートシンクとを収容するとともに前記第1のヒートシンクに対応する冷風吹出口および前記第2のヒートシンクに対応する熱風吹出口とを有する筐体と、
前記第1のヒートシンクに前記筐体外の外気を接触させて熱交換させ前記冷風吹出口より冷風を流出させる第1の送風ファンと、
シルバーカーのハンドルフレームに装着可能に設けられ、前記冷風吹出口から流出する冷風が前記シルバーカーの使用者の首から顔にかけて当たるように前記筐体を支持する取付部材と、
バッテリーと、
電源スイッチと、
送風停止信号を出力する冷風ストップスイッチと、
外気温を検出する気温センサと、
前記電源スイッチのON信号を入力して制御動作プログラムを実行する制御部とを備え、
前記制御動作プログラムは、
前記気温センサの検出信号を入力し前記検出信号が所定温度以上であるときは前記バッテリーの電力を前記送風ファンに給電し、前記冷風ストップスイッチから信号を入力したときは前記送風ファンへの給電を停止し、給電停止から所定時間経過後に前記気温センサから検出信号を入力し前記所定温度以上であるときは前記バッテリーの電力を前記送風ファンに再給電するように構成されている
ことを特徴とする熱中症予防冷風装置。
【請求項2】
前記制御動作プログラムにおける前記所定温度以上とは30℃以上である
ことを特徴とする請求項1に記載の熱中症予防冷風装置。
【請求項3】
前記制御動作プログラムにおける前記所定時間経過後とは3分以上である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の熱中症予防冷風装置。
【請求項4】
前記ペルチェ素子の放熱面に密着固定された第2のヒートシンクを有する
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の熱中症予防冷風装置。
【請求項5】
第1,第2のヒートシンクは、高熱伝導性材料からなり、前記ペルチェ素子に密着固定される板状部と、前記板状部よりリブ状に延設された複数のフィン部とを有する
ことを特徴とする請求項4に記載の熱中症予防冷風装置。
【請求項6】
前記第1の送風ファンは、送風方向を外方に向けて前記筐体の前記冷風吹出口に備えられ、
前記筐体の前記第1のヒートシンクのフィン部間に対応した壁面部に第1の外気取入口が開口されている、
ことを特徴とする請求項5に記載の熱中症予防冷風装置。
【請求項7】
送風方向を外方に向けて前記筐体の前記熱風吹出口に第2の送風ファンを備え、
前記筐体の前記第2のヒートシンクのフィン部間に対応した壁面部に第2の外気取入口が開口されている、
ことを特徴とする請求項6に記載の熱中症予防冷風装置。
【請求項8】
前記第1の送風ファンは、外気を吸い込み2つに分流し、一方の分流に係る外気を前記第1のヒートシンクのフィン部間の隙間に流通させ前記冷風吹出口より流通させるとともに、他方の分流に係る外気を前記第2のヒートシンクのフィン部間の隙間に流通させ前記熱風吹出口より流通させるように設けられている
ことを特徴とする請求項5項に記載の熱中症予防冷風装置。
【請求項9】
前記筐体は、前記冷風吹出口から流出する冷風が前記シルバーカーの使用者の首から顔にかけて当たるよう、俯仰角度可変に前記取付部材に設けられている
ことを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の熱中症予防冷風装置。
【請求項10】
前記冷風吹出口から流出する冷風が前記シルバーカーの使用者の首から顔にかけて当たるよう、前記冷風吹出口端部に蛇腹筒が設けられている
ことを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の熱中症予防冷風装置。
【請求項11】
前記冷風吹出口端部に指挿入防止用の格子部材が設けられている
ことを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載の熱中症予防冷風装置。
【請求項12】
前記ヒートシンクの前記フィン部に酸化チタンの被膜が形成され、前記被膜に触媒作用を生じさせる光が照射されるようになっている
ことを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1項に記載の熱中症予防冷風装置。
【請求項13】
前記筐体の少なくとも一部が日射光が差し込む透明または開口であることにより前記被膜に日射光が照射されるようになっている
ことを特徴とする請求項12に記載の熱中症予防冷風装置。
【請求項14】
前記筐体内に白色LEDが設けられ前記被膜に前記白色LEDの光が照射されるようになっている
ことを特徴とする請求項12に記載の熱中症予防冷風装置。
【請求項15】
シルバーカーと、前記シルバーカーのハンドルフレームに装着された請求項1ないし14のいずれか1項に記載の熱中症予防冷風装置とを含んでいる
ことを特徴とする熱中症予防冷風装置付きシルバーカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気温が真夏時の気温であるときに冷風を吹き出す熱中症予防冷風装置および熱中症予防冷風装置付きシルバーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
ペルチェ素子は、2種類の金属の接合部に電流を流すと、一方の金属から他方の金属へ熱が移動するというペルティエ効果を利用した板状の半導体素子である。
【0003】
ペルチェ素子の具体的な構成は、例えば、近接して対面させる二枚のアルミニウム製の放熱板と、一方の放熱板の絶縁皮膜が形成された対向面に固着された第1の金属電極と、他方の放熱板の絶縁皮膜が形成された対向面に固着された第2,第3の金属電極と、第1の金属電極金の一端と第2の金属電極の一端とを接続しているP型半導体と、第1の金属電極金の他端と第3の金属電極の一端とを接続しているN型半導体とで直列回路が形成され、第2の金属電極の他端と第3の金属電極の他端との間に直流電流を流すと、ペルティエ効果により一方の放熱板の外側の面が吸熱し、吸熱した熱が他方の放熱板の外側の面より放熱するようになっている。
【0004】
ペルチェ素子の吸熱・放熱の原理は公知である。ペルチェ素子の吸熱面の空気を接触させて冷風を生成すること、さらにペルチェ素子の吸熱面にヒートシンクを取り付け、送風ファンでヒートシンクに空気を多く接触させ冷風を生成することも公知である(例えば特許文献1-5参照、ウキペディア)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-142402号公報
【特許文献2】特開2018-179375号公報
【特許文献3】特開2018-31101号公報
【特許文献4】特開2017-221505号公報
【特許文献5】特開2015-10788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来において、歩行が不自由な人が外気温がそれほど暑くなってない時間にシルバーカー(サポート用手押し車)を使用して外出し、その後外出中にフェーン現象により熱中症が起き易い猛暑の外気温になってしまうと、シルバーカーの使用者が自宅等に帰るまでには長い時間、猛暑の外気温に晒され熱中症に罹ることが心配される。特に、シルバーカーの使用者である歩行が不自由な人は、健常者に比べ体力が弱く体調も悪いので熱中症に罹りやすいから、何らかの対策が必要であるが、これまでのところ、有効な対策は見られない。
【0007】
上述したペルチェ素子は軽量・コンパクトな冷風生成装置を構成することができるが、これまでのところ、ペルチェ素子を利用した冷風生成装置をシルバーカーの使用者のための有効な熱中症対策は案出されていない。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、シルバーカーを使用して外出し熱中症が起き易い高い外気温になる場合に、冷風を発生させこの冷風をシルバーカーの使用者の首から顔にかけて顔にかけて吹き付け熱中症予防することができ、使用者の冷え過ぎを防止の観点から使用者が必要な時に冷風の中断を指示でき、冷風の中断後、所定時間(例えば3分間)経過する毎に、引き続き大気温が真夏温度であれば冷風を再び発生させる熱中症予防冷風装置および熱中症予防冷風装置付きシルバーカーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の第1の発明態様に係る熱中症予防冷風装置は、上記目的を達成するため、ペルチェ素子と、前記ペルチェ素子の吸熱面に密着固定された第1のヒートシンクと、前記第1のヒートシンクに対応している第1の送風ファンと、前記ペルチェ素子と前記第1,第2のヒートシンクと前記第1の送風ファンとを収容し支持する筐体と、前記筐体を支持しシルバーカーのハンドル部に固定する取付部材と、バッテリーと、電源スイッチと、冷風を一時停止させるための信号を出力する冷風ストップスイッチと、外気温を検出する気温センサと、電源スイッチのON信号を入力して制御動作プログラムを実行する制御部とを備えている。
【0010】
前記取付部材は、前記筐体を支持し前記冷風吹出口から流出する冷風が前記シルバーカーの使用者の首から顔にかけて当たるように前記シルバーカーのハンドルフレームに装着可能に設けられる。
【0011】
そして、前記制御動作プログラムは、前記気温センサの検出信号を入力し前記検出信号が所定温度以上であるときは前記バッテリーの電力を前記送風ファンに給電し、前記冷風ストップスイッチから信号を入力したときは前記送風ファンへの給電を停止し、給電停止から所定時間経過後に前記気温センサから検出信号を入力し前記所定温度以上であるときは前記バッテリーの電力を前記送風ファンに再給電するように構成されている。
【0012】
本願の第2の発明態様に係る熱中症予防冷風装置は、第1の発明態様に係る構成に加え、前記制御動作プログラムにおける前記所定温度以上とは30℃以上である構成である。
【0013】
本願の第3の発明態様に係る熱中症予防冷風装置は、第1または2の発明態様に係る構成に加え、前記制御動作プログラムにおける前記所定時間経過後とは3分以上である構成である。
【0014】
本願の第4の発明態様に係る熱中症予防冷風装置は、第1ないし3のいずれか1つの発明態様に係る構成に加え、前記ペルチェ素子の放熱面に密着固定された第2のヒートシンクを有する構成である。
【0015】
本願の第5の発明態様に係る熱中症予防冷風装置は、第4の発明態様に係る構成に加え、前記第1,第2のヒートシンクは、高熱伝導性材料からなり、前記ペルチェ素子に密着固定される板状部と、前記板状部よりリブ状に延設された複数のフィン部とを有する構成である。
【0016】
本願の第6の発明態様に係る熱中症予防冷風装置は、第5の発明態様に係る構成に加え、前記第1の送風ファンは、送風方向を外方に向けて前記筐体の前記冷風吹出口に備えられ、前記筐体の前記第1のヒートシンクのフィン部間に対応した壁面部に第1の外気取入口が開口されている構成である。
【0017】
本願の第7の発明態様に係る熱中症予防冷風装置は、第6の発明態様に係る構成に加え、送風方向を外方に向けて前記筐体の前記熱風吹出口に第2の送風ファンを備え、前記筐体の前記第2のヒートシンクのフィン部間に対応した壁面部に第2の外気取入口が開口されている構成である。
【0018】
本願の第8の発明態様に係る熱中症予防冷風装置は、第5の発明態様に係る構成に加え、前記第1の送風ファンは、外気を吸い込み2つに分流し、一方の分流に係る外気を前記第1のヒートシンクのフィン部間の隙間に流通させ前記冷風吹出口より流通させるとともに、他方の分流に係る外気を前記第2のヒートシンクのフィン部間の隙間に流通させ前記熱風吹出口より流通させるように設けられている構成である。
【0019】
本願の第9の発明態様に係る熱中症予防冷風装置は、第1ないし8のいずれか1つの発明態様に係る構成に加え、前記筐体は、前記冷風吹出口から流出する冷風が前記シルバーカーの使用者の首から顔にかけて当たるよう、俯仰角度可変に前記取付部材に設けられている構成である。
【0020】
本願の第10の発明態様に係る熱中症予防冷風装置は、第1ないし9のいずれか1つの発明態様に係る構成に加え、前記冷風吹出口から流出する冷風が前記シルバーカーの使用者の首から顔にかけて当たるよう、前記冷風吹出口端部に蛇腹筒が設けられている構成である。
【0021】
本願の第11の発明態様に係る熱中症予防冷風装置は、第1ないし10のいずれか1つの発明態様に係る構成に加え、前記冷風吹出口端部に指挿入防止用の格子部材が設けられている構成である。
【0022】
本願の第12の発明態様に係る熱中症予防冷風装置は、第1ないし11のいずれか1つの発明態様に係る構成に加え、前記ヒートシンクの前記フィン部に酸化チタンの被膜が形成され、前記被膜に触媒作用を生じさせる光が照射されるようになっている構成である。
【0023】
本願の第13の発明態様に係る熱中症予防冷風装置は、第12の発明態様に係る構成に加え、前記筐体の少なくとも一部が日射光が差し込む透明または開口であることにより前記被膜に日射光が照射されるようになっている構成である。
【0024】
本願の第14の発明態様に係る熱中症予防冷風装置は、第12の発明態様に係る構成に加え、前記筐体内に白色LEDが設けられ前記被膜に前記白色LEDの光が照射されるようになっている構成である。
【0025】
本願の第15の発明態様に係る熱中症予防冷風装置付きシルバーカーは、シルバーカーと、前記シルバーカーのハンドルフレームに装着された第1ないし14のいずれか1つの発明態様の熱中症予防冷風装置とを含んでいる構成である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、シルバーカーを使用して外出し熱中症が起き易い高い外気温になる場合に、冷風を発生させこの冷風をシルバーカーの使用者の首から顔にかけて顔にかけて吹き付け熱中症予防することができ、使用者の冷え過ぎを防止の観点から使用者が必要な時に冷風の中断を指示でき、冷風の中断後、所定時間(例えば3分間)経過する毎に、引き続き大気温が真夏温度であれば冷風を再び発生させる熱中症予防冷風装置および熱中症予防冷風装置付きシルバーカーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施の形態に係る熱中症予防冷風装置を示す縦断正面図である。
図2】本発明の実施の形態に係る熱中症予防冷風装置付きシルバーカーを示す斜視図である。
図3】本発明の実施の形態に係る熱中症予防冷風装置
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の熱中症予防冷風装置および熱中症予防冷風装置付きシルバーカーに係る実施の形態について図面を参照して説明する。
【0029】
図1に示すように、熱中症予防冷風装置100は、ペルチェ素子1と、第1,第2のヒートシンク2,3と、筐体4と、第1,第2の送風ファン6,7と、取付部材8と、バッテリー11と、電源スイッチ12と、送風停止信号を出力する冷風ストップスイッチ13と、外気温を検出する気温センサと、電源スイッチ12のON信号を入力して制御動作プログラムを実行する制御部15とを備えている。
【0030】
ペルチェ素子1については、公知でありかつ具体的な構成を背景技術の記載欄で述べているので、ここでは説明しない。
【0031】
第1,第2のヒートシンク2,3は、熱伝導率が高い金属材料からなり、この実施の形態ではペルチェ素子1に密着固定される板状部2aまたは3aと、板状部2aまたは3aよりリブ状に延設された複数のフィン部2bまたは3bとを有するアルミニウム成形体である。第1のヒートシンク2の板状部2aはペルチェ素子1の吸熱面に熱伝達が良好な状態に密着固定されている。第2のヒートシンク3の板状部3aはペルチェ素子1の放熱面(吸熱面と反対側の面)に熱伝達が良好な状態に密着固定されている。
【0032】
第1,第2のヒートシンク2,3を備えることで以下にように機能する。ペルチェ素子1に電流が供給されると、ペルチェ素子1が熱を吸熱面から放熱面に移動開始する。これにより、フィン部2bの熱がペルチェ素子1の吸熱面に吸熱されるから、フィン部2bが冷却されフィン部2bとフィン部2bに触れる外気との間で熱交換し外気が冷却される。そして、ペルチェ素子1の吸熱面から放熱面に移動する熱が、さらに放熱面からに第2のヒートシンクのフィン部3bに伝熱する。フィン部3bはフィン部3bに触れる外気との間で熱交換し外気に放熱する。第2のヒートシンク3は、備えていなくてもよいが、ペルチェ素子1における吸熱面から放熱面への熱移動が円滑に行われるためには備えるている方がよい。
【0033】
筐体4は、ペルチェ素子1と第1,第2のヒートシンク2,3とを収容するとともに第1のヒートシンクに対応する冷風吹出口および第2のヒートシンクに対応する熱風吹出口とを有する筒状に設けられる。
【0034】
筐体4内は、ペルチェ素子1を固定状態に収容することで、ペルチェ素子1の周囲において両側の空間が非連通状態に仕切られている。第1のヒートシンク2を収容する空間は冷風生成空間5であり、また第2のヒートシンク3を収容する空間は熱風生成空間6である。
【0035】
筐体4は、プラスチック製であるのがよい。筐体4は、(1)筒体を筒心に沿った平面にて二つ割りされた2つのチャンネル体の組立体であるか、(2)筒体の三つの筒側面を有するチャンネル体と、チャンネル体の開口部を閉じる蓋体との組立体であるか、または(3)冷風生成空間5を形成する半体と、熱風生成空間6を形成する半体との組立体である3つの構成のいずれかであることが望ましい。
【0036】
フィン部2bが外気と熱交換することでフィン部2bに結露が生じる場合には、冷風生成空間5において結露水がペルチェ素子1の外周下部(設置状態において下側)の一か所に集められ、図示しないドレン孔を通して熱風生成空間6に流下するようになっているものとする。
【0037】
第1,第2のヒートシンク2,3は、フィン部2aまたは3aに酸化チタンの被膜が形成されていることが好ましい。これに関連して、フィン部2aまたは3aに太陽光が当たるように筐体4の全部または一部が透明なガラスまたはプラスチックで形成されていることが望ましく、さらに一部が光を取り込む開口となっていてもよい。
【0038】
このような構成は、フィン部2aまたは3aに埃が付いても太陽光と酸化チタンの被膜とによって埃を分解することができ、フィン表面における空気との熱交換効率が低減しない機能を有することに加え、フィン表面に接触する空気中を浮遊していて筐体4内に進入する細菌やウイルスを分解する機能を有する。
【0039】
なお、筐体4内に白色LEDが設けられ被膜に白色LEDの光が照射されるようになっていてもよい。
【0040】
第1の送風ファン6は、駆動されると、外気を筐体4のフィン部2bの隙間に対応する側面部に設けられた外気取入口4dを通して筐体4内に取り込み、この外気を第1のヒートシンク2間に接触通流させて熱交換させ冷風とし、この冷風を冷風吹出口4aより上方の使用者の首から顔にかけて吹き出す。第2の送風ファン7は、駆動されると、外気を筐体4のフィン部3bの隙間に対応する側面部に設けられた外気取入口4eを通して筐体4内に取り込み、この外気をフィン部3b間に接触流通させて熱交換して熱風とし、この熱風を熱風吹出口4bより路面方向に吹き出す。第2の送風ファン7は、必要構成要素ではないが備えている方が、ペルチェ素子1において吸熱面から放熱面への移動が円滑になるので好ましい。
【0041】
取付部材8は、長方形のプレートよりなり、金属製、プラスチック製、木製のいずれでもよく、この例では、中央部に筐体4を挿通可能な筐体通し孔8aを有する。取付部材8は、両端部をシルバーカー110のハンドルフレーム111に載置され、ハンドルフレーム111を下側から跨いで取付部材8の下面にねじ止めされるUバンド17により固定される。
【0042】
取付部材8は、シルバーカー110に装着された状態において、俯仰角度を調整自在に設定できるように筐体4を支持している。具体的には、取付部材8の筐体通し孔8aに挿通される筐体4の2つの両側面に2つのブラケット9A,9Bを合わせ、各ブラケット9A,9Bを取付部材8の上面にねじ固定し、かつ筐体4の2つの両側面に2つのブラケット9A,9Bを合わせる際に、筐体4の側面に凸設したピボット軸4cをブラケット9A,9Bに設けた軸孔9aに挿通することにより、筐体4を2つのブラケット9A,9Bにより両端軸支し、さらに、ブラケット9A,9Bの上部に設けたねじ孔(符号なし)につまみ付きねじ10をねじ込んでねじ先端を筐体4に当接し締め付けるようになっている。
【0043】
これにより、筐体4は、ブラケット9A,9Bにより両端支持され、第1の送風ファン6によって冷風吹出口4aから流出する冷風がシルバーカー110の使用者の首から顔にかけて当たるように角度設定してから、つまみ付きねじ10をねじ込んでねじ先端を筐体4に当接し締め付けると角度設定が固定される。もって、冷風吹出口4aから流出する冷風がシルバーカー110の使用者の首から顔にかけて当たるように調整できる。
【0044】
なお、冷風吹出口4aから流出する冷風がシルバーカー110の使用者の首から顔にかけて当たるよう、冷風吹出口4a端部に蛇腹筒が設けられてもよい。
【0045】
冷風吹出口4aおよび熱風吹出口4bの端部に指挿入防止用の格子部材16A,16Bが設けられているのが好ましい。
【0046】
バッテリー11は、リチウムイオン二次電池であることが望ましいがこれに限定されない。バッテリー11の電力は、ペルチェ素子1への給電と第1,第2の送風ファン6,7を駆動するための給電に消費される。バッテリー11は、交換のため筐体4外面に設けられるバッテリーボックスに収容されるか、または、筐体4から離れて取付部材8に設けられるバッテリーボックスに収容される構成のいずれであってもよい。
【0047】
バッテリー11の電力供給は、ペルチェ素子1と第1,第2の送風ファン6,7に対しマイクロプロセッサの各別に割り当てられたアナログ端子からの給電もできなくはないが、一般的には、基板に、ペルチェ素子1と第1,第2の送風ファン6,7のそれぞれに対応してパワートランジスタを設置して、各パワートランジスタのベースにオンオフ電流を送って電力側の電流をソースからドレインに流して供給するように構成される。
【0048】
電源スイッチ12と冷風ストップスイッチ13と気温センサ14は、筐体4外面、または筐体から離れて取付部材8に設けられる。電源スイッチ12と冷風ストップスイッチ13は、オンオフ操作しやすく、かついずれのスイッチであるかを判別しやすい2種類のスイッチが選ばれ、シルバーカーの使用者にとってどこにあるのか見やすい位置に取り付けられる。
【0049】
電源スイッチ12は、スイッチオンにより、ON信号を制御部15に入力する。制御部15は、実行プログラムを動作するようになっており、電源スイッチ12のON信号を入力するとパワートランジスタ(不図示)を駆動しバッテリー11の電力をペルチェ素子1への給電させるようになっている。
【0050】
第1,第2の送風ファン6,7は、電源スイッチ12のスイッチオンによってはバッテリー11の電力を給電されず、制御部15の実行プログラムによる他のパワートランジスタ(不図示)の駆動により給電される。
【0051】
冷風ストップスイッチ13は、スイッチオンにより、ON信号を制御部15に入力するようになっている。このON信号は、実行プログラムに対し第1,第2の送風ファン6,7を一時停止するように割り込み処理する信号である。
【0052】
気温センサ14は、外気温を検出し検出信号を制御部15に入力するようになっている。制御部15に入力する外気温の検出信号は、第1,第2の送風ファン6,7を駆動する判断情報となる信号である。
【0053】
制御部15は、電源スイッチ12のON信号を入力して制御動作プログラムを実行する。
【0054】
制御動作プログラムは、バッテリー11の電圧をペルチェ素子1に給電し、気温センサ14の検出信号を入力し検出信号が所定温度以上であるときはバッテリー11の電力を第1,第2の送風ファン6,7に給電し、冷風ストップスイッチ13から信号を入力したときは送風ファン6,7への給電を停止し、給電停止から所定時間経過後に気温センサ14から検出信号を入力し所定温度以上であるときはバッテリー11の電力を第1,第2の送風ファン6,7に再給電するように構成されている。
【0055】
続いて、制御動作プログラムを詳細に説明する。電源スイッチ12のスイッチオンにより実行プログラムがスタートする(Step1)。
【0056】
まず、パワートランジスタ(不図示)を駆動してバッテリー10の電力を該パワートランジスタを通してペルチェ素子1に所要の大きさの電流を給電するとともに、温度センサ9と冷風ストップスイッチ13に機能を持たせるための電流を給電する(Step2)。
【0057】
なお、Step2において、ペルチェ素子1に対応するパワートランジスタ(不図示)を駆動して該パワートランジスタを通してペルチェ素子1に所要の大きさの電流を給電するようにして後述するStep5、Step8におけるペルチェ素子1への給電を行わない、プログラム構成としてもよい。この構成にすると、電源スイッチ9をオンにするとオフにするまでの間、常にペルチェ素子1への給電が確保されるので、第1のファン7Aを駆動しないときには冷風を吹き出さないものの、第1のヒートシンク2に冷熱が伝わっているから、第1のファン7Aを駆動すると直ぐに冷風を吹き出すことができる。
【0058】
次いで、温度センサ9の信号を入力する(Step3)。そして、温度センサ9の信号が30℃以上であるか否かを判断する(Step4)。Step4の判断で、30℃未満であるときは(NOの判定)、再度Step3にリターンする。
【0059】
Step4の判断で、30℃以上であるときは(YESの判定)、パワートランジスタ(不図示)を駆動してバッテリー10の電力を該パワートランジスタを通してペルチェ素子1に所要の大きさの電流を給電するとともに、別のパワートランジスタ(不図示)を駆動してバッテリー10の電力を該別のパワートランジスタを通して第1,第2の送風ファン6,7に給電する(Step5)。
【0060】
これにより、上述したように、筐体4の冷風送出口4aから冷風が吹き出されるとともに熱風送出口4aから熱風が地面に向けて吹き出される。
【0061】
次いで、冷風ストップスイッチ13のスイッチオンの信号が入力したか否かを判断する(Step6)。Step6の判断で、信号が入力していないと判断したときは(NOの判定)、続いて、気温センサ14から検出信号を入力し30℃以上であるか否かを判断する(Step7)。Step7の判断で、30℃以上であると判定したときは(YESの判定)、再度Step6にリターンする。
【0062】
なお、Step7は無くてもよい。Step7が無い場合は、冷風を発生させ、首から顔にかけて冷風が当たり、冷えすぎると感じるときには、冷風ストップスイッチ13をスイッチオンすることで後述するように冷風の送風を停止できるが、Step7があると、日陰などで外気温が3℃未満まで下がったときには冷風ストップスイッチ13をスイッチオンすることなく冷風の送風を停止できることになる。
【0063】
次いで、Step6の判断で冷風ストップスイッチ13のスイッチオンの信号が入力したと判定したとき(YESの判定)、並びにStep7の判断で30℃以上であると判定したとき(YESの判定)は、ペルチェ素子1および第1,第2の送風ファン6,7への給電を停止する(Step8)。ここでの給電停止は、シルバーカーの使用者の意志により冷風ストップスイッチ13のスイッチオンする場合と、外気温が熱中症が起きにくい温度まで下がったことに基づいて自動的により行われることを示している。
【0064】
第1,第2の送風ファン6,7が停止すると、シルバーカーの使用者に冷風が当たらなくなるから体温が上がり始める。そこで、外気温が熱中症が起きやすい30℃以上になったか否かを判断するための時間経過として3分間を設定している。
【0065】
そこで、第1,第2の送風ファン6,7が停止したら3分経過したか否かを判断する(Step9)。Step9の判断において、3分経過したと判定したときは(YESの判定)、Step3にリターンする。
【0066】
また、Step9の判断において、3分経過していないと判定したときは(NOの判定)、電源スイッチ9をスイッチオフしたOFF信号を入力したか否かを判断する(Step10)。
【0067】
Step10の判断において、OFF信号を入力していないと判定した場合(NOの判定)、Step9にリターンする。これにより、3分経過するごとに外気温が30℃以上になったか、または電源スイッチ9のスイッチオフの操作が行われたかを判断する。
【0068】
Step10の判断において、OFF信号を入力したと判定した場合(YESの判定)、実行プログラムは終了となる(Step11)。
【0069】
[変形例]
この変形例は、送風ファンに関する。上記の実施の形態では、第1の送風ファン6と第2の送風ファン7の2つを備え、第1の送風ファン6は、外気を第1の外気吸込口を通して筐体4内に取り込み、第1のヒートシンク2間を通流させ、冷風吹出口4aより吹き出す機能を有する配置であり、第2の送風ファン7についても同様の外気の流れを実現する配置になっている。
【0070】
この変形例では、第1の送風ファン6と第2の送風ファン7の役目を1つの送風ファンで達成する構成について説明する。送風ファンと筐体以外の構成は上記実施の形態と同一である。
【0071】
1つの送風ファンは、第1のヒートシンク2と第2のヒートシンク3に共通する側方位置に配置される。そして、筐体は配管部品のチーズの形態をしている。冷風吹出口と熱風吹出口を上記実施の形態と同様の配置に備え、冷風吹出口と熱風吹出口の中間位置に対応する側方位置に送風ファンを収容するとともに送風ファンが外気を筐体内に取り込むための外気取入口がある。
【0072】
そして、送風ファンが筐体内に取り込んだ外気を筐体内に設ける隔壁により2つに分流させ、一方の分流に係る外気を第1のヒートシンクのフィン部間の隙間に流通させ冷風吹出口より流通させるとともに、他方の分流に係る外気を第2のヒートシンクのフィン部間の隙間に流通させ熱風吹出口より流通させるように設けられている。
【0073】
本願の発明の対象は熱中症予防冷風装置だけでなく、図2に示すように、熱中症予防冷風装置付きシルバーカーを含んでいる。熱中症予防冷風装置付きシルバーカーは、シルバーカー110と、上記実施の形態で設営したシルバーカー110のハンドルフレーム111に装着された熱中症予防冷風装置100とを含んでなる。設置する際は、熱中症予防冷風装置100の取付部材8をUバンド17,17でハンドルフレーム111に固定してから、熱中症予防冷風装置100の各構成要素を取付部材8に装着しても良いし、取付部材8を含めて熱中症予防冷風装置100として組み立ててから取付部材8をUバンド17,17でハンドルフレーム111に固定しても良い。
【0074】
以上説明してきた本発明の実施の形態によれは、シルバーカー110を使用して外出し熱中症が起き易い高い外気温(30℃以上)になる場合に、ペルチェ素子のペルチェ効果を利用して冷熱を第1のヒートシンクに伝え、第1のヒートシンクに外気を当てて冷風を発生させ、この冷風をシルバーカーの使用者の首から顔にかけて顔にかけて吹き付け熱中症予防することができ、そして、使用者の冷え過ぎを防止の観点から使用者が必要な時に冷風ストップスイッチを押すことで冷風を中断させることができ、冷風の中断後は使用者が操作をしなくても、所定時間(例えば3分間)経過する毎に、引き続き大気温が真夏温度であれば冷風を再び発生させることができ、引き続き、冷風ストップスイッチを押すことによる冷風の中断と、3分間経過後に30℃以上であれば冷風の再開とを交互におこなうことができる熱中症予防冷風装置および熱中症予防冷風装置付きシルバーカーを提供することができる。
【符号の説明】
【0075】
1…ペルチェ素子
2…第1のヒートシンク
2a…板状部
2b…フィン部
3…第2のヒートシンク
3a…板状部
3b…フィン部
4…筐体
4a…冷風吹出口
4b…熱風吹出口
4c…ピボット軸
4d,4e…外気取入口
5A…冷風生成空間
5B…熱風生成空間
6…送風ファン
7…送風ファン
8…取付部材
8a…筐体通し孔
9A,9B…ブラケット
9a…軸孔
10…つまみ付きねじ
11…バッテリー
12…電源スイッチ
13…冷風ストップスイッチ
14…気温センサ
15…制御部
16A,16B…格子部材
17…Uバンド
100…熱中症予防冷風装置
110…シルバーカー
111…ハンドルフレーム
図1
図2
図3