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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139231
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】導線の導通確認方法
(51)【国際特許分類】
   F03D 80/30 20160101AFI20220915BHJP
   F03D 17/00 20160101ALI20220915BHJP
   H02J 50/05 20160101ALI20220915BHJP
【FI】
F03D80/30
F03D17/00
H02J50/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021039517
(22)【出願日】2021-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】500433225
【氏名又は名称】学校法人中部大学
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 直二
(72)【発明者】
【氏名】山本 和男
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA22
3H178AA43
3H178BB43
3H178BB59
3H178CC02
3H178CC23
3H178DD52Z
(57)【要約】
【課題】導線における断線の有無の検出精度の向上に貢献できる導線の導通確認方法を提供する。
【解決手段】導線の導通確認方法は、雷を受ける受雷部50とグランドに接地されている接地部としてのタワー20とをつなぐダウンコンダクタ60の導通確認方法であって、高周波電圧を印加可能な高周波電源としてのインピーダンスアナライザ75をタワー20に接続し、該インピーダンスアナライザ75に接続された電極81を受雷部50に非接触な状態で電気的に接続して、受雷部50、ダウンコンダクタ60、タワー20、インピーダンスアナライザ75、及び電極81が順に並んだ共振回路を構成する接続工程を備える。また、共振回路が構成された状態で、インピーダンスアナライザ75から共振回路の共振周波数に対応した周波数で電極81に交流電圧を印加する通電工程と、交流電圧を印加しているときに共振回路に流れる電流を検出する検出工程とを備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
雷を受ける受雷部とグランドに接地されている接地部とをつなぐ導線の導通確認方法であって、
高周波電圧を印加可能な高周波電源を前記接地部に接続するとともに、該高周波電源に接続された電極を前記受雷部に非接触な状態で電気的に接続することにより、前記受雷部、前記導線、前記接地部、前記高周波電源、及び前記電極が順に並んだ共振回路を構成する接続工程と、
前記接続工程によって前記共振回路が構成された状態で、前記高周波電源から前記共振回路の共振周波数に対応した周波数で前記電極に交流電圧を印加する通電工程と、
前記通電工程において交流電圧を印加しているときに前記共振回路に流れる電流を検出する検出工程とを備える導線の導通確認方法。
【請求項2】
前記受雷部は、風力発電装置において風を受けて回転するブレードの表面に設けられ、
前記接地部は、前記風力発電装置において前記ブレードが連結されたナセルを回転可能に支持するとともに地面に立設されているタワーを含んで構成されており、
前記導線は、前記ブレードの内部を前記受雷部から前記接地部まで引き回されている
請求項1に記載の導線の導通確認方法。
【請求項3】
前記電極は、無人で移動可能な無人移動体に設けられており、
前記接続工程では、前記無人移動体を移動させることにより、該無人移動体に設けられている前記電極を前記受雷部に非接触な状態で電気的に接続する
請求項2に記載の導線の導通確認方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導線の導通確認方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、風力発電装置に設けられる導線の導通確認方法が開示されている。特許文献1に記載の風力発電装置は、地面に立設されたタワーを有している。タワーは、金属からなり、グランドに接地されている。タワーの上端部には、ナセルが連結されている。ナセルには、風を受けて回転するブレードが連結されている。ブレードは、軽量で腐食等が生じ難い繊維強化プラスチックによって構成されている。ブレードの表面には、雷を受ける金属製の受雷部が設けられている。受雷部には、導線としてのダウンコンダクタの一端が接続されている。ダウンコンダクタは、ブレードの内部に引き回されており、その他端がタワーに接続されている。こうした風力発電装置では、ブレードの受雷部に落雷したときの電流は、ダウンコンダクタを通じてタワーへ流れ、グランドへ放電される。これにより、風力発電装置における落雷に起因した破損を抑制している。
【0003】
特許文献1に記載の導線の導通確認方法では、まず地上に電源を配置するとともに、電源とタワーとを第1導電線を介して接続する。そして、電源に第2導電線を介して電極を接続する。電極は、無人飛行体に設けられている。その後、無人飛行体を飛行させて電極をブレードの受雷部に対し接触させる。これにより、電源、第2導電線、電極、受雷部、ダウンコンダクタ、タワー、及び第1導電線からなる閉回路を構成する。こうした状態で、電源から電圧を印加して受雷部に通電する。このときの通電状態を検出することによって、ダウンコンダクタの断線や破損の有無などを確認する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-138261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の導線の導通確認方法では、通電状態を検出するために、電極と受雷部とを接触させて閉回路を構成している。こうした構成では、ダウンコンダクタが断線している場合、該断線部分がコンデンサとして機能し得る。そのため、電源として交流電源を用いると、閉回路内を電流が流れることがあり、通電の有無に基づいた上記方法では、導線における断線の有無を適切に検出できない虞がある。特許文献1に記載の導通確認方法では、こうした点は考慮されておらず、改善の余地がある。
【0006】
本発明の目的は、導線における断線の有無の検出精度の向上に貢献できる導線の導通確認方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための導線の導通確認方法は、雷を受ける受雷部とグランドに接地されている接地部とをつなぐ導線の導通確認方法であって、高周波電圧を印加可能な高周波電源を前記接地部に接続するとともに、該高周波電源に接続された電極を前記受雷部に非接触な状態で電気的に接続することにより、前記受雷部、前記導線、前記接地部、前記高周波電源、及び前記電極が順に並んだ共振回路を構成する接続工程と、前記接続工程によって前記共振回路が構成された状態で、前記高周波電源から前記共振回路の共振周波数に対応した周波数で前記電極に交流電圧を印加する通電工程と、前記通電工程において交流電圧を印加しているときに前記共振回路に流れる電流を検出する検出工程とを備える。
【0008】
上記構成では、受雷部、導線、接地部、高周波電源、及び電極が順に並んだ共振回路を構成している。共振回路において、受雷部と電極とは、非接触な状態で電気的に接続されており、コンデンサを構成している。共振回路の共振周波数fは、以下の式(1)によって算出される。
【0009】
【数1】
ここで、「L」は共振回路のインダクタンスであり、「C」はコンデンサの静電容量である。そのため、導線が断線していない場合の共振回路の共振周波数f0は、受雷部と電極との間の静電容量を「Ct」とすると、以下の式(2)によって求められる。
【0010】
【数2】
一方で、導線が断線している場合、共振回路は、導線の断線部分に形成されたコンデンサを含む。そのため、導線が断線している場合の共振回路の共振周波数f1は、受雷部と電極との間の静電容量をCtとし、導線の断線部分の静電容量を「Cd」とすると、以下の式(3)によって求められる。
【0011】
【数3】
このように、共振回路では、導線における断線の有無によって共振周波数が変化する。すなわち、上記式(2)及び式(3)に基づけば、導線が断線した場合には、導線が断線していない場合に比して、共振回路における共振周波数は高くなる(f0<f1)。
【0012】
上記構成では、共振周波数に対応した周波数で交流電圧を印加し、共振回路に流れる電流を検出する。例えば、断線が生じていないときの共振周波数f0に対応した周波数で交流電圧を印加した場合、導線が断線していないときには流れる電流は大きくなり、導線が断線している場合には流れる電流は小さくなる。また、断線が生じているときの共振周波数f1に対応した周波数で交流電圧を印加した場合、導線が断線していないときには流れる電流は小さくなり、導線が断線している場合には流れる電流は大きくなる。このように、共振周波数に対応した周波数で交流電圧を印加したときに検出した電流の大小に基づけば、導線の断線の有無を適切に判断することが可能になる。したがって、上記構成によれば、導線における断線の有無の検出精度の向上に貢献できる。
【0013】
また、上記導線の導通確認方法では、前記受雷部は、風力発電装置において風を受けて回転するブレードの表面に設けられ、前記接地部は、前記風力発電装置において前記ブレードが連結されたナセルを回転可能に支持するとともに地面に立設されているタワーを含んで構成されており、前記導線は、前記ブレードの内部を前記受雷部から前記接地部まで引き回されていることが望ましい。
【0014】
上記構成では、風力発電装置における受雷部と接地部との間に設けられて、ブレードの内部を引き回されている導線の導通確認方法として適用している。このように、ブレードの内部に配置される導線における断線の有無を適切に検出することで、風力発電装置における避雷性の点検精度の向上に貢献できる。
【0015】
また、上記導線の導通確認方法では、前記電極は、無人で移動可能な無人移動体に設けられており、前記接続工程では、前記無人移動体を移動させることにより、該無人移動体に設けられている前記電極を前記受雷部に非接触な状態で電気的に接続することが望ましい。
【0016】
風力発電装置のブレードに設けられている受雷部は、高所に配置される。上記構成では、高所に配置される受雷部に作業者が近づかなくても、無人移動体を移動させることで電極を受雷部に接続して共振回路を構成することができる。そのため、作業員が受雷部に近づいて電極を接続する場合に比して、導通確認作業にかかる作業者の負荷軽減に貢献できる。
【発明の効果】
【0017】
上記導線の導通確認方法によれば、導線における断線の有無の検出精度の向上に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】風力発電装置の構成を模式的に示す側面図。
図2】風力発電装置の構成を模式的に示す正面図。
図3】一実施形態の導線の導通確認方法の手順を示すフローチャート。
図4】導線の導通確認方法において共振回路を構成した状態を示す模式図。
図5】導線が断線していない場合の共振回路の模式図。
図6】導線が断線している場合の共振回路の模式図。
図7】印加された交流電圧の周波数と共振回路内を流れる電流との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0019】
導線の導通確認方法の一実施形態について、図1図7を参照して説明する。なお、本実施形態では、風力発電装置に設けられる導線の導通確認方法を例に説明する。
図1に示すように、風力発電装置10は、地面Gに立設されたタワー20を有している。タワー20は、中空円筒状に形成されており、地面Gに近い下端部側ほど外径が拡がっている。図示を省略しているが、タワー20の内部には、作業者がメンテナンス時に昇降するための昇降機及び梯子、並びに電力変換装置等の発電に供される各種装置が収容されている。タワー20は、金属からなり、図示しない接地線を地面Gに連結することで全体がグランドに接地されている。そのため、本実施形態では、タワー20が接地部を構成している。タワー20の上端部には、ナセル30が連結されている。
【0020】
ナセル30は、タワー20の延伸方向、すなわち鉛直方向に延びる中心軸を中心として回転可能にタワー20に支持されている。ナセル30は、四角箱状に構成されている。ナセル30の内部には、発電機31が収容されている。発電機31のロータ軸31Aは、ナセル30の一端部(図1の左端部)からナセル30の外部に突出している。ロータ軸31Aにおいてナセル30の外部に突出している先端部には、ハブ40が連結されている。
【0021】
ハブ40には、複数のブレード41が固定されている。ブレード41は、例えば繊維強化プラスチック等の樹脂によって構成されており、中空形状に形成されている。ブレード41が風を受けることで、ロータ軸31Aを中心としてブレード41及びハブ40が回転する。このように、ナセル30は、ハブ40及びブレード41を回転可能に支持している。ハブ40及びブレード41と一体にロータ軸31Aが回転することで発電機31において発電が行われる。
【0022】
図2に示すように、各ブレード41の先端には、受雷部50が設けられている。受雷部50は、金属からなる。受雷部50はブレード41の表面に露出している。受雷部50の表面には図示しない保護塗膜が設けられていてもよい。また、各ブレード41の内部には、導線としてのダウンコンダクタ60が設けられている。ダウンコンダクタ60は、ブレード41の内部を通じて受雷部50からタワー20まで引き回されており、これら受雷部50とタワー20とをつないでいる。
【0023】
ダウンコンダクタ60は、受雷部50からハブ40の内部に至る複数の分岐線部61と、該ハブ40内において第1連結点C1において各分岐線部61が連結された集合線部62とを有している。集合線部62は、ロータ軸31Aの内部を通じてナセル30内まで至り、第2連結点C2においてタワー20に連結されている。
【0024】
次に、本実施形態の導線の導通確認方法について説明する。
図3のフローチャートに示すように、本実施形態では、接続工程(ステップS31)、通電工程(ステップS32)、及び検出工程(ステップS33)を順に行う。
【0025】
ステップS31の接続工程では、高周波電圧を印加可能な高周波電源をタワー20に接続するとともに、該高周波電源に接続された後述する電極81を受雷部50に非接触な状態で電気的に接続する。これにより、受雷部50、ダウンコンダクタ60、タワー20、高周波電源、及び電極81が順に並んだ後述する共振回路70を構成する。
【0026】
ステップS32の通電工程では、接続工程によって共振回路70が構成された状態で、高周波電源から共振回路70の共振周波数に対応した周波数で電極81に交流電圧を印加する。ステップS33の検出工程では、通電工程において交流電圧を印加しているときに共振回路70に流れる電流を検出する。
【0027】
すなわち、図4に示すように、ダウンコンダクタ60の導通確認を行う作業者はまず、インピーダンスアナライザ75を地上に配置する。インピーダンスアナライザ75は、印加する交流電圧の周波数を所定の範囲(例えば1MHz~100MHz)で調節可能に構成された公知の構成を有している。そのため、インピーダンスアナライザ75は、上記高周波電源として機能する。また、インピーダンスアナライザ75は、交流電圧を印加しているときに共振回路70に流れる電流を検出可能に構成されている。そのため、インピーダンスアナライザ75は、高周波電源としてだけではなく、交流電流計としても機能する。作業者は、インピーダンスアナライザ75を第1導電線76を介してタワー20に接続する。これにより、高周波電源がタワー20に接続される。
【0028】
その後、作業者は、インピーダンスアナライザ75に、第2導電線77の第1端を接続する。第2導電線77の第2端は、上述した電極81に接続されている。換言すれば、電極81は、第2導電線77を介して高周波電源に接続されている。電極81は、例えば薄い箔形状に形成されている。本実施形態では、電極81の下面に絶縁紙82の上面が重なるように積層されている。なお、電極81の大きさは、絶縁紙82からはみ出さない大きさに設定されている。電極81及び絶縁紙82は、無人で移動可能な無人移動体としてのドローン80に設けられている。ドローン80は、複数のプロペラ80Aを有しており、各プロペラ80Aの駆動を制御することにより無人で自律飛行可能な公知な構成を有している。
【0029】
作業者は、ドローン80と通信可能な公知な構成を備える携帯端末を所持している。携帯端末としては、例えばタブレットPC等を採用できる。接続工程では、作業者が携帯端末を通じて地上に配置したドローン80の飛行開始操作を行うことで、ドローン80を自律飛行させる。ドローン80は自動飛行を開始すると、まずブレード41と同じ高さまで上昇する。これにより、ドローン80に設けられている電極81及び絶縁紙82は、ブレード41に接近した位置に配置される。本実施形態では、ドローン80はその後、絶縁紙82の下面を受雷部50に接触させるとともに、この状態を維持するように飛行を継続する。これにより、電極81は、絶縁紙82を介して受雷部50に重ねられ、受雷部50に非接触な状態に維持される。一方で、電極81と受雷部50とは、絶縁紙82の厚さ(例えば数μm)に等しい距離しか離れておらず、第1コンデンサ78を構成する。このため、電極81と受雷部50とは非接触な状態で電気的に接続された状態となる。
【0030】
こうした状態では、受雷部50、ダウンコンダクタ60、タワー20、インピーダンスアナライザ75、及び電極81が順に並んだ共振回路70が構成されている。この共振回路70では、インピーダンスアナライザ75によって高周波電圧が電極81に印加されることで、電流が発生する。
【0031】
図5には、ダウンコンダクタ60が断線していない場合の共振回路70を示している。共振回路70は、インピーダンスアナライザ75を備えており、高周波電源と交流電流計とを有している。また、共振回路70は、受雷部50と電極81とによって構成される第1コンデンサ78を備える。また、共振回路70中のインダクタンスを「L」として示し、抵抗を「R」として示している。また、第1コンデンサ78の静電容量を「Ct」として示している。
【0032】
一般に、共振回路70の共振周波数fは、以下の式(1)によって算出される。
【0033】
【数4】
式(1)において、「C」はコンデンサの静電容量である。そのため、ダウンコンダクタ60が断線していない場合の共振回路70の共振周波数f0は、上述したように受雷部50と電極81との間の静電容量を「Ct」とすると、以下の式(2)によって求められる。
【0034】
【数5】
また、図6に示すように、ダウンコンダクタ60が断線した場合、ダウンコンダクタ60の断線部分には第2コンデンサ79が形成される。そのため、共振回路70は、高周波電源及び交流電流計を備えるとともに、第1コンデンサ78及び第2コンデンサ79を備えることとなる。なお、図6には、第2コンデンサ79の静電容量を「Cd」として示している。図6に示す共振回路70におけるインダクタンス及び抵抗は、図5に示す共振回路70の上述したインダクタンス及び抵抗と同じである。
【0035】
そのため、ダウンコンダクタ60が断線している場合の共振回路70の共振周波数f1は、以下の式(3)によって求められる。
【0036】
【数6】
このように、ダウンコンダクタ60における断線の有無によって共振回路70における共振周波数が変化する。上記式(2)及び式(3)に基づけば、ダウンコンダクタ60が断線した場合には、ダウンコンダクタ60が断線していない場合に比して、共振回路70における共振周波数は高くなる(f0<f1)。
【0037】
すなわち、図7に実線で示すように、ダウンコンダクタ60が断線していないときには、インピーダンスアナライザ75から印加する交流電圧の周波数が共振周波数f0に対応している領域において、共振回路70を流れる電流が大きくなる。一方で、図7に一点鎖線で示すように、ダウンコンダクタ60が断線しているときには、インピーダンスアナライザ75から印加する交流電圧の周波数が共振周波数f1に対応している領域において、共振回路70を流れる電流が大きくなる。このように、断線が生じていないときの共振周波数f0に対応した周波数で高周波電圧を印加した場合、ダウンコンダクタ60が断線していないときには流れる電流は大きくなり、ダウンコンダクタ60が断線している場合には流れる電流は小さくなる。また、断線が生じているときの共振周波数f1に対応した周波数で高周波電圧を印加した場合、ダウンコンダクタ60が断線していないときには流れる電流は小さくなり、ダウンコンダクタ60が断線している場合には流れる電流は大きくなる。このように、ダウンコンダクタ60における断線の有無によって電流が大きくなる周波数が異なる。
【0038】
そのため、次に通電工程に移行し、作業者は、接続工程によって上述した共振回路70が構成された状態で、インピーダンスアナライザ75から共振回路70の共振周波数に対応した周波数で電極81に交流電圧を印加する。本実施形態の通電工程では、インピーダンスアナライザ75において、共振周波数f0及び共振周波数f1を含む高周波の範囲で、周波数の低い交流電圧から周波数の高い交流電圧まで周波数を変えながら交流電圧を印加する。
【0039】
その後、検出工程に移行して、作業者は、交流電圧を印加しているときに共振回路70に流れる電流をインピーダンスアナライザ75によって検出する。ダウンコンダクタ60において断線が生じていない場合には、共振周波数f0に対応した周波数で交流電圧を印加したときに検出電流が最大となる。一方で、ダウンコンダクタ60において断線が生じている場合には、共振周波数f1に対応した周波数で交流電圧を印加したときに検出電流が最大となる。そのため、作業者は、検出電流の最大値と印加した交流電流の周波数と基づいて、ダウンコンダクタ60における断線の有無を判断する。
【0040】
作業者は、こうして接続工程、通電工程、及び検出工程を順に行うことにより、ダウンコンダクタ60の導通確認を行うと、導線の導通確認作業を終了する。
本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0041】
(1)本実施形態では、インピーダンスアナライザ75をタワー20に接続するとともに、該インピーダンスアナライザ75に接続された電極81を受雷部50に非接触な状態で電気的に接続する。これにより、受雷部50、ダウンコンダクタ60、タワー20、インピーダンスアナライザ75、及び電極81が順に並んだ共振回路70を構成する。そして、共振回路70が構成された状態で、インピーダンスアナライザ75から共振回路70の共振周波数に対応した周波数で電極81に交流電圧を印加する。また、交流電圧を印加しているときに共振回路70に流れる電流をインピーダンスアナライザ75によって検出する。
【0042】
共振回路70では、ダウンコンダクタ60における断線の有無によって共振周波数が変化する。そのため、本実施形態のように、インピーダンスアナライザ75によって共振周波数に対応した周波数で交流電圧を印加したときに検出した電流の大小に基づけば、ダウンコンダクタ60における断線の有無を適切に判断することが可能になる。したがって、ダウンコンダクタ60における断線の有無の検出精度を高めることに貢献できる。
【0043】
(2)本実施形態では、風力発電装置10のブレード41の内部に引き回されているダウンコンダクタ60における導通確認を行っている。このように、ブレード41の内部に配置されるダウンコンダクタ60における断線の有無を適切に検出することで、風力発電装置10における避雷性の点検精度の向上に貢献できる。
【0044】
(3)本実施形態では、電極81をドローン80に設け、接続工程では、ドローン80を移動させることにより、電極81を受雷部50に非接触な状態で電気的に接続している。そのため、作業員は高所に配置される受雷部50に近づかなくても、電極81を受雷部50に接続することができる。そのため、作業員が受雷部50に近づいて電極81を接続する場合に比して、導通確認作業にかかる作業者の負荷軽減に貢献できる。
【0045】
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、無人移動体として無人飛行可能なドローン80を用いた例を説明した。無人移動体はドローン80に限らない。例えば、無人移動体として、ブレード41上を這いながら移動可能なロボットを採用することもできる。こうした構成では、ロボットに電極81を設けるとともに、該ロボットをブレード41上に取り付ける。そして、接続工程では、ロボットをブレード41の先端まで無人で移動させることで、電極81を受雷部50に非接触な状態で電気的に接続して共振回路70を構成する。こうした構成であっても、作業員は受雷部50に近づかずにダウンコンダクタ60の導通確認を行うことが可能である。そのため、上記(3)に記載の作用及び効果と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0046】
・上記実施形態では、電極81を絶縁紙82を介して受雷部50に重ねた構成とすることで、電極81を受雷部50に非接触な状態で電気的に接続する例を示した。絶縁紙82は必ずしも設ける必要はない。絶縁紙82を省略した場合、例えば、電極81が受雷部50と非接触な状態となるようにドローン80を飛行させる。電極81と受雷部50との距離は、例えば10mm程度となるまで離間させることができる。なお、上記距離は、電極81と受雷部50とによって第1コンデンサ78を構成し、これらが電気的に接続可能な距離であれば適宜変更することができる。なお、絶縁紙82を設ける場合であっても、絶縁紙82を受雷部50に接触させないようにしてもよい。
【0047】
・上記実施形態では、電極81を有する無人移動体を移動させることによって接続工程を行うようにした。こうした構成は変更が可能である。例えば、接続工程では、高周波電源に接続された電極81を作業員が所持し、該作業員が受雷部50に近づくことで、電極81を受雷部50に非接触な状態で電気的に接続するようにしてもよい。こうした構成によれば、導体の導通確認作業を行うときに無人移動体を用意する必要はない。
【0048】
・上記実施形態では、接続工程において電極81を受雷部50に電気的に接続して共振回路70を構成した後に、通電工程においてインピーダンスアナライザ75から電極81に交流電圧を印加するようにした。インピーダンスアナライザ75から電極81に交流電圧を印加するタイミングは適宜変更が可能である。例えば、インピーダンスアナライザ75から電極81に交流電圧を印加している状態でドローン80を飛行させて電極81を受雷部50に電気的に接続するようにしてもよい。こうした構成であっても、共振回路70が構成された状態で、電極81に交流電圧を印加することはできる。
【0049】
・上記実施形態では、インピーダンスアナライザ75から電極81に交流電圧を印加する際に、印加する交流電圧の周波数を変化させる構成を例示したが、印加する交流電圧の周波数を変化させない構成としてもよい。すなわち、例えば、インピーダンスアナライザ75によって電極81に印加する交流電圧の周波数を共振周波数f0に対応する周波数に固定する。この場合、検出電流が予め設定されている第1閾値以上であるときに、ダウンコンダクタ60が導通していると判断することができる。第1閾値としては、ダウンコンダクタ60が断線してないときに共振周波数f0で交流電圧を印加したときの検出電流の最小値以下の値であって、ダウンコンダクタ60が断線しているときに共振周波数f0で交流電圧を印加したときの検出電流の最大値よりも大きい値に設定することが望ましい。また、インピーダンスアナライザ75によって電極81に印加する交流電圧の周波数を共振周波数f1に対応する周波数に固定してもよい。この場合、検出電流が予め設定されている第2閾値以上であるときに、ダウンコンダクタ60が断線していると判断することができる。第2閾値としては、ダウンコンダクタ60が断線していないときに共振周波数f1で交流電圧を印加したときの検出電流の最大値よりも大きい値であって、ダウンコンダクタ60が断線しているときに共振周波数f1で交流電圧を印加したときの検出電流の最小値よりも小さい値に設定することが望ましい。第1閾値及び第2閾値は、予め実験やシミュレーションを行うことによって求めることができる。
【0050】
・上記実施形態において、ナセル30をタワー20に電気的に接続することで、ナセル30とタワー20との双方によって接地部を構成するようにしてもよい。この構成では、ダウンコンダクタ60をナセル30及びタワー20の何れかに連結することで、受雷部50と接地部とをつなぐことができる。
【0051】
・上記実施形態では、風力発電装置10において受雷部50がブレード41の先端に設けられている構成を例に説明したが、受雷部50の位置は適宜変更が可能である。例えば、ブレード41における先端と基端との間の中間位置に受雷部50が設けられている風力発電装置10であっても、上記実施形態と同様の方法によって導線の導通確認を行うことは可能である。また、風力発電装置10において1つのブレード41に設けられる受雷部50の数は1つに限らず複数であってもよい。
【0052】
また、風力発電装置10において、ダウンコンダクタ60を分岐線部61と集合線部62とによって構成したが、ダウンコンダクタ60の構成はこれに限らない。例えば、ダウンコンダクタ60をブレード41の内部に配置された導線部分と、ハブ40の内部に配置された導線部分と、ナセル30の内部に配置された導線部分と、タワー20の内部に配置された導線部分とからなる分割構成とする。そして、各導線部分の接続部分をカーボンブラシ等によって導通する。こうした構成であっても、受雷部50とタワー20とをつなぐ導線を実現することは可能である。なお、上述した導線の構成において、各導線部分の少なくとも2つを1つの導線部として連続した構成とすることも可能である。また、導線が受雷部50から接地部まで一続きの構成をなすのであれば、ナセル30の内部に配置された導線部分と、タワー20の内部に配置された導線部分との少なくとも1つを省略することも可能である。
【0053】
・高周波電源として、インピーダンスアナライザ75とは異なる交流電源装置を用いてもよい。また、インピーダンスアナライザ75とは異なる交流電流計を用いてもよい。
・上記実施形態では、高周波電源及び交流電流計を地上に配置した例を説明した。高周波電源及び交流電流計の位置は地上に限らない。例えば、無人移動体に高周波電源を設けてもよいし、タワー20の内部に高周波電源を設けてもよい。また、交流電流計を無人移動体に設けてもよいし、タワー20の内部に設ける等してもよい。なお、共振回路70を流れる電流を検出する検出器としては、交流電流計に限らず、例えば電圧計や磁力計を採用してもよい。
【0054】
・上記実施形態では、風力発電装置10に設けられる導線の導通確認方法を例に説明した。導線の導通確認方法は、風力発電装置10に設けられる導線以外にも適用可能である。例えば、ビルなどの高層建築物においては、屋上に受雷部としての避雷針が設けられ、該避雷針と接地部との間をつなぐ導線がビルの内部に引き回されている場合等がある。こうした構成であっても、接地部と高周波電源とを接続した状態とするとともに、該電源に接続された電極を避雷針に非接触な状態で電気的に接続して、避雷針、導線、接地部、高周波電源、及び電極が順に並んだ共振回路を構成する接続工程を実行する。また、高周波電源から共振回路の共振周波数に対応した周波数で電極に交流電圧を印加する通電工程と、交流電圧を印加しているときに共振回路に流れる電流を検出する検出工程とを実行する。このように、上記実施形態と同様の導通確認方法を、高層建築物等に設けられる導線の導通確認方法に適用することによっても、上記(1)に記載の作用及び効果と同様の作用及び効果を得ることは可能である。
【符号の説明】
【0055】
10…風力発電装置
20…タワー(接地部)
30…ナセル
31…発電機
31A…ロータ軸
40…ハブ
41…ブレード
50…受雷部
60…ダウンコンダクタ(導線)
61…分岐線部
62…集合線部
70…共振回路
75…インピーダンスアナライザ
76…第1導電線
77…第2導電線
78…第1コンデンサ
79…第2コンデンサ
80…ドローン(無人移動体)
80A…プロペラ
81…電極
82…絶縁紙
G…地面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7